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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170647
(43)【公開日】2024-12-10
(54)【発明の名称】消火システム
(51)【国際特許分類】
   A62C 35/60 20060101AFI20241203BHJP
   A62C 35/64 20060101ALI20241203BHJP
   A62C 37/12 20060101ALI20241203BHJP
   A62C 35/62 20060101ALI20241203BHJP
【FI】
A62C35/60
A62C35/64
A62C37/12
A62C35/62
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024160101
(22)【出願日】2024-09-17
(62)【分割の表示】P 2021574592の分割
【原出願日】2021-01-12
(31)【優先権主張番号】P 2020011510
(32)【優先日】2020-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020011511
(32)【優先日】2020-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】390010342
【氏名又は名称】エア・ウォーター防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】後藤 秀晃
(57)【要約】      (修正有)
【課題】必要な個所に必要な方式のスプリンクラーシステムを設けることができる消火システムを提供する。
【解決手段】第一の領域、および、第一の領域と異なる第二の領域に設けられた消火システムであって、第一の領域に設けられた負圧スプリンクラーシステム(100b)と、第二の領域に設けられた常圧または加圧スプリンクラーシステム(200a)とを備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の領域、および、前記第一の領域と異なる第二の領域に設けられた消火システムであって、
前記第一の領域に設けられた負圧スプリンクラーシステムと、
前記第二の領域に設けられた常圧または加圧スプリンクラーシステムとを備える、消火システム。
【請求項2】
前記第二の領域の常圧または加圧スプリンクラーシステムは、スプリンクラーヘッドを備え、前記スプリンクラーヘッド内の金属が火災の熱で溶融することで感知器からの信号無しで前記スプリンクラーヘッドから水を放出する、請求項1に記載の消火システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の消火システムの製造方法であって、
前記第一の領域には常圧または加圧スプリンクラーシステムが設けられており、
その常圧または加圧スプリンクラーシステムのスプリンクラー用配管からの漏水箇所を特定して、前記スプリンクラー用配管の外側に前記漏水箇所を塞ぐように補修材を付着させたのちに前記スプリンクラー用配管に負圧ポンプを接続することで前記負圧スプリンクラーシステムを構成する、消火システムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消火システムおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、湿式スプリンクラーは、特許第3264939号に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3264939号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のスプリンクラーシステムでは、スプリンクラーヘッドが故障した場合に、スプリンクラーヘッドから水が放水されるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一つの局面に従った消火システムは、第一の領域、および、第一の領域と異なる第二の領域に設けられた消火システムであって、第一の領域に設けられた負圧スプリンクラーシステムと、第二の領域に設けられた常圧または加圧スプリンクラーシステムとを備える。
【0006】
このように構成された消火システムにおいては、必要な個所に必要な方式のスプリンクラーシステムを設けることができる。
【0007】
好ましくは、第二の領域の常圧または加圧スプリンクラーシステムは、スプリンクラーヘッドを備え、スプリンクラーヘッド内の金属が火災の熱で溶融することで感知器からの信号無しでスプリンクラーヘッドから水を放出する。
【0008】
このように構成された消火システムにおいては、第二の領域の常圧または加圧スプリンクラーシステムは感知器と連動しないため、スプリンクラーヘッドの金属が火災の熱で溶けた場合に二次配管内の水がスプリンクラーヘッドから放出される。このシステムでは第一および第二領域の協調制御をする必要が無いため低コストで実現できる。導入コストが安くなる。
【0009】
上記の消火システムの製造方法は、第一の領域には常圧または加圧スプリンクラーシステムが設けられており、その常圧または加圧スプリンクラーシステムのスプリンクラー用配管からの漏水箇所を特定して、スプリンクラー用配管の外側に漏水箇所を塞ぐように補修材を付着させたのちにスプリンクラー用配管に負圧ポンプを接続することで負圧スプリンクラーシステムを構成する。
【0010】
このように構成された消火システムの製造方法においては、第一の領域におけるスプリンクラーシステムを補修することにより負圧スプリンクラーシステムを構成することができる。その結果、低コストで負圧スプリンクラーシステムを製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】消火システムの製造方法を説明するための図である。
図2】補修前の消火システムの模式図である。
図3】補修後の消火システムの模式図である。
図4図3および5におけるVで囲んだ部分を拡大して示す漏水箇所の断面図である。
図5】別の局面に従った消火システムの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
(消火システムの製造方法)
図1は、消火システムの製造方法を説明するための図である。図1で示すように、消火システムの製造方法においては、スプリンクラーシステムの二次配管からの流体の漏れを特定する(ステップS301)。スプリンクラーシステムは、二次配管が負圧とされないスプリンクラーシステムである。スプリンクラーシステムは、二次配管に液体が満たされる湿式スプリンクラーシステムであってもよい。スプリンクラーシステムは、二次配管に気体が満たされる乾式スプリンクラーシステムであってもよい。
【0013】
さらに、このスプリンクラーシステムは少なくとも第一の領域および第二の領域の2つの領域に用いられる。たとえば、スプリンクラーシステムは2階以上の建物に用いられる。建物の第一の階、および、第一の階よりも上または下の第二の階にスプリンクラーシステムが設けられる。なお、二つの領域は必ずしも上下に位置する必要はない。2つの領域が同じフロアまたは同じ地面に設けられていてもよい。
【0014】
スプリンクラーシステムの二次配管とはスプリンクラーヘッドに接続される配管をいう。これに対して水ポンプからバルブまでの配管をスプリンクラーシステムの一次配管という。
【0015】
二次配管からの漏れを特定する方法としては、たとえは二次配管に水が充填されている場合にはその水が漏れて建物にシミができるので、そのシミの近くの二次配管を調査すれば漏れの箇所を特定できる。二次配管に気体が充填されている場合には二次配管に圧力センサを設け、圧力の単位時間あたりの減少量が大きい場合に漏れがあるものとして二次配管を調査することで漏れの箇所を特定できる。
【0016】
一般的には二次配管の肉厚が薄い部分から漏れが発生しやすい。例えば二次配管の端部はねじ切られて継ぎ手と接続されていることがおおい。ねじ切られた部分は薄肉になりやすいのでこの部分から漏れが発生することがある。
【0017】
漏れを特定できた後は、二次配管内の液体を除去する。二次配管内が気体で満たされている場合にはこの気体を除去しなくてもよい。
【0018】
通常の加圧式または無加圧式のスプリンクラーシステムの配管から漏水は、以下のメカニズムで進行する。スプリンクラーシステムを設置した後に長期間が経過すると配管内の水分により配管内側から配管外側に向かって腐食が進行し、ついには配管内側から外側に貫通する孔が形成される。
【0019】
漏れを二次配管の外側から補修する(ステップS302)。漏れを補修する方法としては有機または無機材料からなるテープを二次配管の外側から貼る、漏れの箇所を二次配管の外側から溶接する、ゲルまたはゾル状物質を二次配管の外側から漏れの箇所に注入する、粘性の高い流体を二次配管の外側から漏れの箇所に注入した後その流体を硬化させる、などがある。漏れの箇所を二次配管の外側から補修するのは、後の工程において二次配管内を負圧にするため二次配管の外側から漏れの箇所を補修すると補修材が内側へ引き込まれる力を受け、補修材が外れにくくなるから、二次配管の内側からの補修は実質上不可能だから、二次配管を取り替えるよりも二次配管を外側から補修することが低コストであるから、等の理由による。
【0020】
漏れを補修するのは第一領域および第二領域のうち漏れが発生した一つの領域であり、他の領域では二次配管は補修されない。
【0021】
補修をする際には補修材が二次配管の外側に付着しやすいように二次配管の外側を洗浄した後に補修をすることが好ましい。洗浄方法として界面活性剤を用いた洗浄、酸またはアルカリによる洗浄、砥石による表面研削の洗浄などがある。
【0022】
漏水箇所を特定し、二次配管の外部から孔を補修する。漏水箇所を含む配管を取り外すことも考えられるが、配管の取り外しとなると、大規模な改修であり、防護区画内を養生する手間が増える。さらに、施工費も高くなる。そのため、外部から孔を補修材で補修することで、漏水を停止させる。後に負圧スプリンクラーシステムを構築するため、補修材が負圧により孔に向かって吸引されることは有っても、孔から外側に向かって補修材が加圧されることはない。そのため、補修材が剥がれることはない。
【0023】
補修された二次配管に負圧ポンプを接続する(ステップS303)。負圧ポンプを二次配管に接続することで二次配管内を負圧にすることができる。二次配管を負圧にすると二次配管の外側に設けられた補修材が二次配管の内側に引き込まれるため、補修材が漏れの箇所に固定される。
【0024】
二次配管に負圧ポンプが接続された領域では二次配管が負圧のスプリンクラーとして機能するように制御システムが変更される。二次配管内は負圧であり液体が充填されていなくてもよく、液体が充填されていてもよい。二次配管内が負圧で二次配管に液体が充填される場合にはその領域は湿式負圧スプリンクラーとして機能する。他の領域は負圧でないスプリンクラーとして機能する。二次配管内が負圧で二次配管に液体が充填されない場合にはその領域は乾式負圧スプリンクラーとして機能する。他の領域は負圧でないスプリンクラーとして機能する。
【0025】
湿式負圧プリンクラーの場合には二次配管内に液体が満たされており、かつ二次配管内は負圧とされるため二次配管内から液体が蒸発する。蒸発した液体を補填するためには二次配管と一次配管との境界に設けられたバルブを開き、一次配管から二次配管へ液体を流入される。このような制御が可能なように、二次配管内の液体量を検出するセンサ、そのセンサに基づいて一次配管から二次配管へ必要に応じて液体を供給するためにバルブを開く制御装置を新たに設ける必要がある。そして火災発生時には負圧ポンプによる吸引を停止するか、または吸引力を弱めることで、二次配管内の液体が負圧ポンプ側へ流れずに二次配管内の水がスプリンクラーのみから放出されるようにすることも可能である。
【0026】
乾式負圧スプリンクラーの場合には上記のような二次配管内の液体の減少を考慮する必要が無いため、二次配管内の液体の減少を防止するためのバルブの制御は不要である。しかしながら、そして火災発生時には負圧ポンプによる吸引を停止するか、または吸引力を弱めることで、二次配管内の液体が負圧ポンプ側へ流れずに二次配管内の水がスプリンクラーのみから放出されるようにすることも可能である。
【0027】
このように特定の領域のみ負圧のスプリンクラーシステムとすることのメリットは、まずすべての領域を負圧のスプリンクラーシステムとする場合と比較して改修費用が安くなることである。
【0028】
次に負圧のスプリンクラーシステムとすることで二次配管の外側から補修工事が可能であり、工事費が安くなる。
【0029】
補修された配管を残し、加圧式または無加圧式のスプリンクラーシステムでのみ用いる部材を除去する。加圧式または無加圧式のスプリンクラーシステムと負圧スプリンクラーシステムでは多くの構成部品が異なる。そのため、加圧式または無加圧式のスプリンクラーシステムでのみ用いる機器を除去する。
【0030】
(負圧スプリンクラーシステムの説明)
負圧スプリンクラーシステムは、たとえば、医療施設、原子力発電所、リチウム電池工場などの水分を嫌う環境で用いられる。負圧スプリンクラーシステムは建物に設けられる。建物は、下層階である第一区画と、上層階である第二区画とを有する。なお、負圧スプリンクラーシステムは必ずしも水分を嫌う環境で用いられる必要はなく、加圧式または無加圧式スプリンクラーシステムが用いられる環境で用いられるものでもよい。
【0031】
負圧スプリンクラーシステムは、一次配管と、一次配管に接続された二次配管と、二次配管に設けられたスプリンクラーヘッドと、一次配管と二次配管との境界に設けられたバルブと一次配管に水を送るための水ポンプとを有する。
【0032】
一次配管には水が充填されている。この水は、水ポンプにより加圧されている。水ポンプには消火水槽から水が供給される。建物の最上階の高架水槽から水ポンプに水が供給されてもよい。一次配管は、水ポンプから建物の最上部まで垂直に立ち上がり、各階で分岐されている。建物の階は2階に限定されない。一次配管の水は、バルブで止められており、バルブが開くことで一次配管の水が二次配管へ送られる。バルブの開閉は、コンピューターにより制御される。
【0033】
二次配管はバルブに接続されている。二次配管は消火のための区画に配置されている。二次配管は区画の天井に配置されている。二次配管には複数のスプリンクラーヘッドが設けられている。スプリンクラーヘッドの数は、区画の広さによって決定される。
【0034】
スプリンクラーヘッドは、閉鎖型のスプリンクラーヘッドであり、水を放出する孔が複数設けられている。スプリンクラーヘッドは感熱機構(可溶金属片)を有する。常態では、水を放出する孔と、二次配管との間はスプリンクラーヘッド内で遮蔽されている。感熱機構が火災時の火炎により溶融すると遮断が開放されて一次配管を経由して水がスプリンクラーヘッドの孔から放出される。
【0035】
負圧システムは、二次配管に接続される負圧用配管と、負圧用配管内を負圧にする負圧ポンプと、を有する。負圧用配管と二次配管とを接続するだけで、負圧のスプリンクラーシステムを実現することができる。
【0036】
負圧ポンプは負圧を発生させる。負圧ポンプは主機および予備機により構成されてもよい。この場合には、故障時、メンテナンス時にも施設全体の使用量を賄える。医療施設で用いる場合には吸引された細菌およびバクテリアを含む空気は大気を汚染しないよう、吸引フィルターによってこれらが採集される。
【0037】
負圧ポンプに接続された負圧用配管は負圧ポンプから建物の最上階まで垂直に立ち上がり、各階で分岐されている。各階において負圧用配管が分岐して各部屋に負圧用配管が張り巡らされている。負圧ポンプが負圧用配管に接続される。
【0038】
負圧用配管と二次配管とは接続点で接続されている。これにより、常態において、二次配管内は負圧とされている。
【0039】
負圧スプリンクラーシステムが湿式負圧スプリンクラーシステムである場合には、常態では、二次配管内が負圧とされ、二次配管内に水が存在する。負圧とすることで、仮にスプリンクラーヘッドが破損したとしてもスプリンクラーヘッドから水が放出されることを防止できる。水が二次配管から負圧管へ移動することを防止するために、接続点付近に水蒸気は通過させるが水を通過させない膜または気液分離装置などを設けてもよい。二次配管内が負圧であるため水は蒸発する。水を補充するために、水が減少すればバルブを開いて二次配管に水を補充してもよい。
【0040】
負圧スプリンクラーシステムが乾式負圧スプリンクラーシステムである場合には状態では二次配管内が負圧とされ、二次配管内に水が存在しない。
【0041】
検知システムは、火災検知器およびコンピューターを有する。防護区画内で火災が発生すると、その熱または煙を火災検知器が検知する。コンピューターとバルブとが信号線により接続されている。コンピューターと水ポンプとが信号線により接続されている。
【0042】
消火システムは、スプリンクラーヘッドと、スプリンクラーヘッドに水を供給するためのスプリンクラー用配管としての二次配管とを有し、二次配管が常態で負圧状態に維持されている負圧スプリンクラーシステムと、負圧用配管と、二次配管と負圧用配管に負圧を供給するための負圧装置としての負圧ポンプとを備える。
【0043】
図2は、補修前の消火システムの模式図である。図2で示すように、補修前の消火システムとしてのスプリンクラーシステム1は、第一領域(第一防護区画)としての一階100、および第二領域(第二防護区画)としての二階200に設けられる。一階100には加圧スプリンクラーシステム100aが設けられている。二階200には加圧スプリンクラーシステム200aが設けられている。加圧スプリンクラーシステム100a,200aは負圧式でない他のスプリンクラーシステムに置き換えられてもよい。
【0044】
水ポンプ2には一次配管4が接続されている。水ポンプ2の出力は制御装置3により制御される。水ポンプ2の出力は連続的に変化可能である。水ポンプ2には図示しない水槽から水が供給される。この水には不純物が添加されていなくてもよく、さび止めなどが添加されていてもよい。
【0045】
一次配管4から一階100用の一次配管101が枝分かれしている。一次配管101は一次配管101と二次配管102との境界に位置するバルブ105に接続されている。バルブ105の開閉は制御装置3により制御される。
【0046】
複数のスプリンクラーヘッド103が二次配管102に設けられる。スプリンクラーヘッド103は一階100に設けられる。スプリンクラーヘッド103は火災時の熱で溶融する部分を有する。火災時にはこの部分が溶融して二次配管102からスプリンクラーヘッド103を経由して一階100に消火剤である液体(水)が供給される。
【0047】
二次配管102には水が充填されていてもよく、充填されていなくてもよい。
一階100には熱を感知するための感知器104が設けられている。感知器104が熱を感知するとその信号が制御装置3に送られる。制御装置3は水ポンプ2の出力を増加させるように水ポンプ2に指示を与える。制御装置3はバルブ105を開く。二次配管102に水が充填されていない場合であってもバルブ105が開くことで二次配管102に水が充填される。ただし、二次配管102内の空気が圧縮されて二次配管102内に溜まる。二次配管102に事前に水が充填されている場合にはバルブ105が開くことで二次配管102内の水圧が高まる。
【0048】
スプリンクラーヘッド103の可溶融部分が熱により溶融すると、二次配管102の水がスプリンクラーヘッド103を経由して一階100に放出される。
【0049】
一次配管4は、一次配管4と二次配管202との境界に位置するバルブ205に接続されている。バルブ205の開閉は制御装置3により制御される。一次配管4は他の一次配管101,201に接続されている。
【0050】
複数のスプリンクラーヘッド203が二次配管202に設けられる。スプリンクラーヘッド203は二階200に設けられる。スプリンクラーヘッド203は火災時の熱で溶融する部分を有する。火災時にはこの部分が溶融して二次配管202からスプリンクラーヘッド203を経由して一階100に消火剤である水が供給される。二次配管202には水が充填されていてもよく、充填されていなくてもよい。
【0051】
二階200には熱を感知するための感知器204が設けられている。感知器204が熱を感知するとその信号が制御装置3に送られる。制御装置3は水ポンプ2の出力を増加させるように水ポンプ2に指示を与える。制御装置3はバルブ205を開く。二次配管202に水が充填されていない場合であってもバルブ205が開くことで二次配管202に水が充填される。ただし、二次配管202内の空気が圧縮されて二次配管202内に溜まる。二次配管202に事前に水が充填されている場合にはバルブ205が開くことで二次配管202内の水圧が高まる。
【0052】
負圧でないスプリンクラーシステムと負圧スプリンクラーシステム100bとにおいて感知器104を再利用できる場合には再利用する。
【0053】
スプリンクラーヘッド203の可溶融部分が熱により溶融すると、二次配管202の水がスプリンクラーヘッド203を経由して二階200に放出される。
【0054】
図3は、補修後の消火システムの模式図である。図3で示すように、二次配管102に漏水箇所110が発生したとする。その場合には、漏水箇所110を外側から補修する。さらに、二次配管102を負圧ポンプ5に接続する。二次配管102と負圧ポンプ5との間には負圧管109が介在する。これにより、二次配管102内を負圧にすることが可能である。
【0055】
図4は、漏水箇所の断面図である。図4で示すように漏水箇所110においては二次配管102に孔1020が空いている。これを二次配管102の外側から補修材111で塞いでいる。
【0056】
この例では一階100に漏水箇所110が発生する例を示したが、二階200の二次配管202に漏水箇所が発生することもある。その場合には二次配管202を外側から補修しつつ、二次配管202を負圧ポンプ5に接続する。
【0057】
一階100の二次配管102を負圧としつつ、二次配管102内に水を充填してもよく、水を充填しなくてもよい。水を充填する場合には二次配管102が負圧のため水が蒸発しやすい。二次配管102内の水が蒸発して水位が減少すると、バルブ105を開くことで二次配管102内に水を補填する。
【0058】
二次配管202内に水を充填しない場合には乾式の負圧スプリンクラーとして作動する。
【0059】
スプリンクラーシステム1においては、一階100には負圧のスプリンクラーシステムが設けられて、二階200には負圧でないスプリンクラーシステムが設けられる。なお、一階100が負圧でないスプリンクラーシステム、二階が負圧のスプリンクラーシステムであってもよい。
【0060】
そして一階100の二次配管102だけでなく二階200の二次配管202にも漏水箇所が発生した場合にはその漏水箇所を二次配管202の外部から補修し、二次配管202を負圧ポンプ5に接続することで二階200にも負圧のスプリンクラーシステムを構成できる。
【0061】
配管内の水に含まれる酸素等によりピンホールとしての孔1020が形成される。孔1020が存在することで水が孔1020から流出する。孔1020の位置を特定した後に外側から補修材111で孔1020を防ぐことができる。
【0062】
補修材111としては、アルミテープ、ガラス繊維布にレジンを含ませたテープ、ガムテープがある。さらに金属板を二次配管102に溶接して補修材111を構成することも可能である。
【0063】
負圧スプリンクラーシステム100bは、元は加圧式または無加圧式のスプリンクラーシステムであり、孔1020が形成されたことで孔1020を塞ぎ、負圧式に改修されたものである。
【0064】
スプリンクラーシステム1は、スプリンクラーヘッド103と、スプリンクラーヘッド103に水を供給する内部が負圧の二次配管102とを有する負圧スプリンクラーシステム100bと、負圧スプリンクラーシステム100bを常態で負圧状態に維持する負圧ポンプ5とを備え、二次配管102には二次配管102を厚み方向に貫通する孔1020が形成されており、孔1020の開口を二次配管の外側から封止する補修材111をさらに備える。
【0065】
負圧スプリンクラーシステム100bの動作について説明する。防護区画の一部分である一階100で火災が発生すると、火災による熱または煙を感知器104が検知する。検知された情報は感知器104からコンピューターである制御装置3に送られる。制御装置3はバルブ105を開くようにバルブ105に信号を与える。制御装置3は水ポンプ2を駆動させるか、水ポンプ2の駆動力を増大させる。これにより、乾式の負圧スプリンクラーシステム100bにおいては常態では水が存在せず負圧状態であった二次配管102内に水が充填される。湿式の負圧スプリンクラーシステム100bにおいては常態では二次配管102内は負圧状態で水が充填される。このとき、負圧ポンプ5の駆動力を定常状態よりも弱めてもよい。
【0066】
火災による熱は、スプリンクラーヘッド103の感熱機構を溶融させる。これにより、スプリンクラーヘッド103の水放出用の孔と二次配管102とが接続される。バルブ105が開かれたことでスプリンクラーヘッド103の水放出用の孔からは水が放出されて消火することができる。
【0067】
常態において二次配管内が常圧の乾式スプリンクラーシステム(予作動式スプリンクラーシステム)と比較して、実施の形態に従った負圧スプリンクラーシステム100bは以下の効果がある。常圧乾式スプリンクラーシステムでは、火災時にポンプが作動して二次配管内に水が充填されるが、この時、二次配管内の空気が水で圧縮されるため、スムーズに(短時間で)二次配管内に水が充填されない。これに対して、湿式の負圧スプリンクラーシステム100bでは二次配管102内が負圧で水が充填されているため、早期にスプリンクラーヘッド103から散水できる。そのため、従来の乾式のスプリンクラー(予作動式スプリンクラー)の欠点であった、スプリンクラーヘッドからの水の散水が遅れるという問題を解決することができる。乾式の負圧スプリンクラーシステム100bの場合であっても二次配管102内が負圧であるため早急に二次配管102内に水が充填されるため早期にスプリンクラーヘッド103から散水できる。
【0068】
二次配管102は加圧式または無加圧式のスプリンクラーシステムで用いられていたものであるため新たに設置するものと比較して製造コストを低減させることができる。さらに二次配管102の外側に補修材111を張り付けているが、二次配管102内が常態では負圧であるため孔1020から再度水が漏れることが無い。
【0069】
消火システムとしてのスプリンクラーシステム1は、第一の領域としての一階100、および、第一の領域と異なる第二の領域としての二階200に設けられた消火システムであって、一階100に設けられた負圧スプリンクラーシステム100bと、二階200に設けられた常圧または加圧スプリンクラーシステム200aとを備える。一階100が第二の領域であり、二階200が第一の領域であってもよい。
【0070】
このように構成された消火システムにおいては、必要な個所に必要な方式のスプリンクラーシステムを設けることができる。なお、製造方法として孔1020を補修材111で補修する方法を示したが、必ずしも孔1020は設けられていなくてもよい。孔1020が設けられない場合には補修材111も設けられない。
【0071】
図5は、別の局面に従った消火システムの模式図である。図5で示すように、別の局面に従った消火システム1においては二階200に感知器が設けられていない点において、図3および4で示す消火システム1と異なる。二階200の常圧または加圧スプリンクラーシステム200aは、スプリンクラーヘッド203を備え、スプリンクラーヘッド203内の金属が火災の熱で溶融することで感知器からの信号無しでスプリンクラーヘッド203から水を放出する。すなわち、スプリンクラーヘッド203は制御装置3に接続されていない。なお、この実施の形態においても、図3および図4の実施の形態と同様に一階100が第二の領域であり、二階200が第一の領域であってもよい。さらに、二次配管102の孔1020が設けられてこれを補修材111で補修して製造する方法で製造されてもよい。また、二次配管102の孔1020は設けられていなくてもよい。孔1020が設けられない場合には補修材111も設けられない。
【0072】
スプリンクラーヘッド203が感知器および制御装置3からの信号無しで水を放出する場合には、二階200のスプリンクラーヘッド203からの水の放出条件を決定する要因がスプリンクラーヘッド203内の金属の溶融温度のみとなり、放水条件の制御が簡単になる。そのため、低コストでスプリンクラーシステム1を導入することができる。
【0073】
一つの局面に従った消火システムは、第一の領域、および、前記第一の領域と異なる第二の領域の少なくともいずれかに設けられた消火システムであって、スプリンクラーヘッドと、前記スプリンクラーヘッドに水を供給する内部が負圧の二次配管とを有する負圧スプリンクラーシステムと、前記負圧スプリンクラーシステムを常態で負圧状態に維持する負圧ポンプとを備え、前記二次配管には前記二次配管を厚み方向に貫通する孔が形成されており、前記孔の開口を前記二次配管の外側から封止する補修材をさらに備える。
【0074】
このように構成された消火システムにおいては、孔の開口を二次配管の外側から封止する補修材を備えているので、二次配管内が負圧とされた場合であっても孔から外気が導入されることがない。
【0075】
一つの局面に従った消火システムの製造方法は、常態で水が溜められるスプリンクラー用配管を有するスプリンクラーシステムが建物の第一の階、および、前記第一の階よりも上または下の第二の階に設けられており、前記第一の階および前記第二の階のいずれかの前記スプリンクラー用配管からの漏水箇所を特定して、前記スプリンクラー用配管の外側に前記漏水箇所を塞ぐように補修材を付着させたのちに前記スプリンクラー用配管に負圧ポンプを接続することで負圧スプリンクラーシステムを構成する工程を備える。
【0076】
このように構成された消火システムの製造方法においては、常態で水が溜められるスプリンクラーシステムを補修することにより負圧スプリンクラーシステムを構成することができる。その結果、低コストで負圧スプリンクラーシステムを製造できる。
【0077】
別の曲面に従った消火システムの製造方法は、常態で水が溜められていないスプリンクラー用配管を有するスプリンクラーシステムが建物の第一の階、および、前記第一の階よりも上または下の第二の階に設けられており、前記第一の階および前記第二の階のいずれかの前記スプリンクラー用配管からの漏れの箇所を特定して、前記スプリンクラー用配管の外側に前記漏れの箇所を塞ぐように補修材を付着させたのちに前記スプリンクラー用配管に負圧ポンプを接続することで負圧スプリンクラーシステムを構成する工程を備える。
【0078】
このように構成された消火システムの製造方法においては、常態で水が溜められていないスプリンクラーシステムを補修することにより負圧スプリンクラーシステムを構成することができる。その結果、低コストで負圧スプリンクラーシステムを製造できる。
【0079】
付記1は、第一の領域、および、前記第一の領域と異なる第二の領域の少なくともいずれかに設けられた消火システムであって、スプリンクラーヘッドと、前記スプリンクラーヘッドに水を供給する内部が負圧の二次配管とを有する負圧スプリンクラーシステムと、前記負圧スプリンクラーシステムを常態で負圧状態に維持する負圧ポンプとを備え、前記二次配管には前記二次配管を厚み方向に貫通する孔が形成されており、前記孔の開口を前記二次配管の外側から封止する補修材をさらに備えた、消火システムである。
【0080】
付記2は、常態で水が溜められるスプリンクラー用配管を有するスプリンクラーシステムが第一の領域、および、前記第一の領域と異なる第二の領域に設けられており、前記第一の領域および前記第二の領域のいずれかの前記スプリンクラー用配管からの漏水箇所を特定して、前記スプリンクラー用配管の外側に前記漏水箇所を塞ぐように補修材を付着させたのちに前記スプリンクラー用配管に負圧ポンプを接続することで負圧スプリンクラーシステムを構成する、消火システムの製造方法である。
【0081】
付記3は、常態で水が溜められていないスプリンクラー用配管を有するスプリンクラーシステムがの第一の領域、および、前記第一の領域と異なる第二の領域に設けられており、前記第一の領域および前記第二の領域のいずれかの前記スプリンクラー用配管からの漏れの箇所を特定して、前記スプリンクラー用配管の外側に前記漏れの箇所を塞ぐように補修材を付着させたのちに前記スプリンクラー用配管に負圧ポンプを接続することで負圧スプリンクラーシステムを構成する、消火システムの製造方法である。
【0082】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態ではなく請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0083】
1 スプリンクラーシステム、2 水ポンプ、3 制御装置、4,101,201 一次配管、5 負圧ポンプ、100 一階、100a,200a 加圧スプリンクラーシステム、100b 負圧スプリンクラーシステム、102,202 二次配管、103,203 スプリンクラーヘッド、104,204 感知器、105,205 バルブ、109 負圧管、110 漏水箇所、111 補修材、200 二階、1020 孔、S301,S302,S303 ステップ。
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2024-09-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の領域、および、前記第一の領域と異なる第二の領域に設けられた消火システムであって、前記第一の領域と前記第二の領域とは同一の建物に設けられ、
前記消火システムは、前記第一の領域に設けられた負圧スプリンクラーシステムと、前記第二の領域に設けられた常圧または加圧スプリンクラーシステムとを備える、消火システム。
【請求項2】
前記第二の領域の常圧または加圧スプリンクラーシステムは、スプリンクラーヘッドを備え、前記スプリンクラーヘッド内の金属が火災の熱で溶融することで感知器からの信号無しで前記スプリンクラーヘッドから水を放出する、請求項1に記載の消火システム。
【請求項3】
前記負圧スプリンクラーシステムは、負圧ポンプと、前記負圧ポンプに接続される二次配管とを備え、前記二次配管は孔を有し、前記二次配管の外側から補修材により前記孔が封止される、請求項1または2に記載の消火システム。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0011】
図1】消火システムの製造方法を説明するための図である。
図2】補修前の消火システムの模式図である。
図3】補修後の消火システムの模式図である。
図4図3および5におけるIVで囲んだ部分を拡大して示す漏水箇所の断面図である。
図5】別の局面に従った消火システムの模式図である。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0025
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0025】
湿式負圧プリンクラーの場合には二次配管内に液体が満たされており、かつ二次配管内は負圧とされるため二次配管内から液体が蒸発する。蒸発した液体を補填するためには二次配管と一次配管との境界に設けられたバルブを開き、一次配管から二次配管へ液体を流入される。このような制御が可能なように、二次配管内の液体量を検出するセンサ、そのセンサに基づいて一次配管から二次配管へ必要に応じて液体を供給するためにバルブを開く制御装置を新たに設ける必要がある。そして火災発生時には負圧ポンプによる吸引を停止するか、または吸引力を弱めることで、二次配管内の液体が負圧ポンプ側へ流れずに二次配管内の水がスプリンクラーのみから放出されるようにすることも可能である。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0050
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0050】
複数のスプリンクラーヘッド203が二次配管202に設けられる。スプリンクラーヘッド203は二階200に設けられる。スプリンクラーヘッド203は火災時の熱で溶融する部分を有する。火災時にはこの部分が溶融して二次配管202からスプリンクラーヘッド203を経由して二階200に消火剤である水が供給される。二次配管202には水が充填されていてもよく、充填されていなくてもよい。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0058
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0058】
二次配管02内に水を充填しない場合には乾式の負圧スプリンクラーとして作動する。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0061
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0061】
配管内の水に含まれる酸素等によりピンホールとしての孔1020が形成される。孔1020が存在することで水が孔1020から流出する。孔1020の位置を特定した後に外側から補修材111で孔1020を塞ぐことができる。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0077
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0077】
別の面に従った消火システムの製造方法は、常態で水が溜められていないスプリンクラー用配管を有するスプリンクラーシステムが建物の第一の階、および、前記第一の階よりも上または下の第二の階に設けられており、前記第一の階および前記第二の階のいずれかの前記スプリンクラー用配管からの漏れの箇所を特定して、前記スプリンクラー用配管の外側に前記漏れの箇所を塞ぐように補修材を付着させたのちに前記スプリンクラー用配管に負圧ポンプを接続することで負圧スプリンクラーシステムを構成する工程を備える。
【手続補正9】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図1
【補正方法】変更
【補正の内容】
図1