(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170661
(43)【公開日】2024-12-10
(54)【発明の名称】容器
(51)【国際特許分類】
B65D 81/38 20060101AFI20241203BHJP
【FI】
B65D81/38 N
B65D81/38 F
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024161395
(22)【出願日】2024-09-18
(62)【分割の表示】P 2020187042の分割
【原出願日】2020-11-10
(71)【出願人】
【識別番号】591006944
【氏名又は名称】三甲株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】高木 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】河端 健
(57)【要約】
【課題】内側部材と外側部材との二重構造であり高剛性な容器を提供すること。
【解決手段】本開示に係る容器1は,外側容器部材2と,外側容器部材2の内側に配置される内側容器部材3とを有し,外側容器部材2および内側容器部材3がいずれも合成樹脂で構成され,内側容器部材3は,内側底壁構成部30の縁辺部の上方に設けられた内側側壁構成部31と,内側側壁構成部31における内側底壁構成部30より上方の位置の外側から下向きに延びて形成された第1対向壁部33と,内側側壁構成部31の外面に連結して設けられた規制部34とを有し,外側容器部材2は,外側底壁構成部20の縁辺部の上方に設けられ,内側容器部材3と組付けられた状態では上端22が第1対向壁部33と規制部34との間に位置する外側側壁構成部21を有する。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側容器部材と,前記外側容器部材の内側に配置される内側容器部材とを有する容器であって,
前記外側容器部材および前記内側容器部材がいずれも合成樹脂で構成され,
前記内側容器部材は,
内側底壁構成部と,
前記内側底壁構成部の縁辺部の上方に設けられた内側側壁構成部と,
前記内側側壁構成部における前記内側底壁構成部より上方の位置の外側から下向きに延びて形成された第1対向壁部と,
前記内側側壁構成部の外面に連結して設けられた規制部とを有し,
前記外側容器部材は,
外側底壁構成部と,
前記外側底壁構成部の縁辺部の上方に設けられ,前記内側容器部材と組付けられた状態では上端が前記第1対向壁部と前記規制部との間に位置する外側側壁構成部とを有する容器。
【請求項2】
請求項1に記載の容器であって,
前記内側容器部材は,前記内側側壁構成部における前記内側底壁構成部より上方の位置の外側から下向きに延びて形成され,前記内側側壁構成部と前記第1対向壁部との間に位置する第2対向壁部を有し,
前記規制部は,前記第2対向壁部の内面にも連結しており,
前記規制部の外端と前記第2対向壁部の外面とが段差なく繋がっている容器。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の容器であって,
前記内側容器部材は,前記規制部における下端から外端に掛けての範囲に設けられ,下から上へ向かうにつれて内側から外側に張り出す傾斜部を有する容器。
【請求項4】
外側容器部材と,前記外側容器部材の内側に配置される内側容器部材とを有する容器であって,
前記外側容器部材および前記内側容器部材がいずれも合成樹脂で構成され,
前記内側容器部材は,
内側底壁構成部と,
前記内側底壁構成部の縁辺部の上方に設けられた内側側壁構成部と,
前記内側側壁構成部における前記内側底壁構成部より上方の位置の外側から下向きに延びて形成された第1対向壁部と,
前記内側側壁構成部における前記内側底壁構成部より上方の位置から外向きに設けられた横壁部とを有し,
前記第1対向壁部は,前記横壁部における前記内側側壁構成部より外側の部位から下向きに延びて形成されており,
前記外側容器部材は,
外側底壁構成部と,
前記外側底壁構成部の縁辺部の上方に設けられ,前記内側容器部材と組付けられた状態では上端が前記第1対向壁部と前記内側側壁構成部との間に位置する外側側壁構成部とを有し,さらに,
前記内側容器部材に設けられた,少なくとも前記横壁部の下面と前記第1対向壁部の内面とに連結し,前記外側容器部材と前記内側容器部材とを組付けた状態で前記外側側壁構成部の上端と前記横壁部の下面との間に隙間を形成させるリブと,
前記外側容器部材に設けられた,前記外側側壁構成部の上端に連結し,前記外側容器部材と前記内側容器部材とを組付けた状態で前記外側側壁構成部の上端と前記横壁部の下面との間に隙間を形成させる凸部との少なくとも一方を有する容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示技術は,容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の容器の一例として,特許文献1に記載されている「通函」を挙げることができる。同文献の通函は,内装体と外装体との間に断熱層を設けたものである。内装体および外装体はいずれも合成樹脂製である。同文献の技術では,内装体と外装体との接合箇所を嵌合溝に嵌合突部を嵌入させる構造としている。これにより嵌合箇所におけるビス止めの必要性を廃している。内装体と外装体との間の空間への水等の侵入の可能性を減らすためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら前記した従来の技術には,次のような問題点があった。上記公報の通函は,内装体と外装体との二重構造であるのに剛性が低いのである。内装体と外装体との間の断熱層が,内装体および外装体のいずれに対しても,単に接触しているのみで接合されておらず,強度メンバーとして機能しないためである。
【0005】
本開示技術は,前記した従来の技術が有する問題点を解決するためになされたものである。すなわちその課題とするところは,内側部材と外側部材との二重構造であり高剛性な容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示技術の一態様における容器は,外側容器部材と,外側容器部材の内側に配置される内側容器部材とを有する容器であって,外側容器部材および内側容器部材がいずれも合成樹脂で構成され,内側容器部材は,内側底壁構成部と,内側底壁構成部の縁辺部の上方に設けられた内側側壁構成部と,内側側壁構成部における内側底壁構成部より上方の位置の外側から下向きに延びて形成された第1対向壁部と,内側側壁構成部の外面に連結して設けられた規制部とを有し,外側容器部材は,外側底壁構成部と,外側底壁構成部の縁辺部の上方に設けられ,内側容器部材と組付けられた状態では上端が第1対向壁部と規制部との間に位置する外側側壁構成部とを有するものである。
【0007】
上記態様における容器ではさらに,内側容器部材は,内側側壁構成部における内側底壁構成部より上方の位置の外側から下向きに延びて形成され,内側側壁構成部と第1対向壁部との間に位置する第2対向壁部を有し,規制部は,第2対向壁部の内面にも連結しており,規制部の外端と第2対向壁部の外面とが段差なく繋がっていることが望ましい。
【0008】
前述の態様の容器ではまた,内側容器部材は,規制部における下端から外端に掛けての範囲に設けられ,下から上へ向かうにつれて内側から外側に張り出す傾斜部を有することが望ましい。
【0009】
本開示技術の別の一態様における容器は,外側容器部材と,外側容器部材の内側に配置される内側容器部材とを有する容器であって,外側容器部材および内側容器部材がいずれも合成樹脂で構成され,内側容器部材は,内側底壁構成部と,内側底壁構成部の縁辺部の上方に設けられた内側側壁構成部と,内側側壁構成部における内側底壁構成部より上方の位置の外側から下向きに延びて形成された第1対向壁部と,内側側壁構成部における内側底壁構成部より上方の位置から外向きに設けられた横壁部とを有し,第1対向壁部は,横壁部における内側側壁構成部より外側の部位から下向きに延びて形成されており,外側容器部材は,外側底壁構成部と,外側底壁構成部の縁辺部の上方に設けられ,内側容器部材と組付けられた状態では上端が第1対向壁部と内側側壁構成部との間に位置する外側側壁構成部とを有し,さらに,内側容器部材に設けられた,少なくとも横壁部の下面と第1対向壁部の内面とに連結し,外側容器部材と内側容器部材とを組付けた状態で外側側壁構成部の上端と横壁部の下面との間に隙間を形成させるリブと,外側容器部材に設けられた,外側側壁構成部の上端に連結し,外側容器部材と内側容器部材とを組付けた状態で外側側壁構成部の上端と横壁部の下面との間に隙間を形成させる凸部との少なくとも一方を有するものである。
【発明の効果】
【0010】
本開示技術によれば,内側部材と外側部材との二重構造であり高剛性な容器が提供されている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】
図1の容器を逆さに伏せて示す斜視図である。
【
図3】
図1の容器を構成する外側容器部材の斜視図である。
【
図4】
図1の容器を構成する内側容器部材の斜視図である。
【
図5】
図4の内側容器部材を逆さに伏せて示す斜視図である。
【
図8】外側側壁構成部と内側側壁構成部との上端同士の突き合わせ箇所を,断熱部材を省略して側方から見て示す拡大断面図である。
【
図9】
図4の内側容器部材の横壁部を下方から見た斜視図である。
【
図10】
図3の外側容器部材の上端付近を示す斜視図である。
【
図11】外側側壁構成部と内側側壁構成部との上端同士の突き合わせ箇所を,断熱部材を省略して上方から見て示す断面図である。
【
図12】
図1の容器を蓋とともに一部切開して示す斜視図である。
【
図13】変形例に係る外側容器部材の上端部分の形状を示す部分拡大正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下,本開示技術を具体化した実施の形態について,添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本形態は,
図1および
図2に示す容器1として本開示技術を具体化したものである。
図1および
図2に示される容器1は,長方形状の底壁部とその四辺の上方に設けられた側壁とを有する形状のものである。容器1は,
図3に示す外側容器部材2と,
図4および
図5に示す内側容器部材3とを有する二重構造のものである。外側容器部材2を逆さに伏せた状態は
図2とほぼ同じである。外側容器部材2および内側容器部材3はいずれも,ポリオレフィン系樹脂(例えばポリエチレン,ポリプロピレン等)で構成されている。
【0013】
外側容器部材2は,外側底壁構成部20と,外側側壁構成部21とを有する形状のものである。外側底壁構成部20は上方から見て長方形である。外側側壁構成部21は,外側底壁構成部20の縁辺部から上方に延びて形成されている。内側容器部材3も,長方形の内側底壁構成部30と,その縁辺部から上方に延びて形成された内側側壁構成部31とを有している。
【0014】
図6および
図7に示すように,容器1においては,内側容器部材3が外側容器部材2の内側に位置している。内側容器部材3と外側容器部材2との間には断熱部材4が配置されている。
図6は長辺と平行な切断面による断面図であり,
図7は短辺と平行な切断面による断面図である。
図6および
図7のいずれでも,図中左半分には断熱部材4を形成する前の状況を示し,図中右半分には断熱部材4を形成した後の状況を示している。
図6および
図7から分かるように容器1では,内側容器部材3と外側容器部材2とが側壁構成部21,31の上端部同士で突き合わせられている。内側容器部材3と外側容器部材2との間には空間5があり,その空間5に断熱部材4が配置されている。断熱部材4と内側容器部材3の外面および外側容器部材2の内面とは,単に接触しているだけでなく接合されている。内側容器部材3の外面および外側容器部材2の内面に,後述する活性化表面処理済み領域が形成されているためである。
【0015】
外側側壁構成部21と内側側壁構成部31との上端同士の突き合わせ箇所における内側容器部材3の構造について
図4,
図5,
図8により説明する。内側容器部材3には,横壁部32と第1対向壁部33とが設けられている。横壁部32は,内側側壁構成部31における内側底壁構成部30より上方の位置(
図8中では上端)から外向きに形成されている。第1対向壁部33は,横壁部32における内側側壁構成部31より外側の部位(
図8中では外端)から下向きに延びて形成されている。第1対向壁部33は,内側側壁構成部31における内側底壁構成部30より上方の位置から繋がって設けられている部位である。
【0016】
内側容器部材3にはさらに,規制部34と第2対向壁部35とが設けられている。これらは,上方から見ると横壁部32および第1対向壁部33の陰となり見えない場所にある。規制部34は,内側側壁構成部31の外面の上端付近に連結して設けられた縦壁片状の部位である。規制部34は,横壁部32の下面にも連結されている。規制部34における下端から外端に掛けての範囲は,下から上へ向かうにつれて内側から外側に張り出す傾斜辺36となっている。
図5から分かるように規制部34は,周方向に対して離散的に設けられている。
【0017】
第2対向壁部35は,横壁部32における内側側壁構成部31と第1対向壁部33との間の部位から下向きに延びて形成されている。第2対向壁部35は,内側側壁構成部31における内側底壁構成部30より上方の位置から繋がって設けられ,内側側壁構成部31と第1対向壁部33との間に位置している部位である。第2対向壁部35の下端は,規制部34の下端より上方に位置しており,傾斜辺36の上端よりも上方に位置している。
【0018】
第2対向壁部35の外面と規制部34の外端とは,段差なく繋がっている。第1対向壁部33の内面と第2対向壁部35の外面との間に,外側側壁構成部21の上端22が下から挿し込まれている。第1対向壁部33の内面と規制部34の外端との間に外側側壁構成部21の上端22が下から挿し込まれている,と言ってもよい。
【0019】
図9に示すように,横壁部32の下面には,リブ37が設けられている。リブ37は,横壁部32の下面に設けられた下向きの凸状部である。リブ37は,横壁部32の下面と第1対向壁部33の内面とに連結された部位である。リブ37は周方向に対して離散的に形成されている。リブ37は周方向に対して,規制部34が設けられている位置と同じ位置に設けられている。ただし,規制部34とリブ37とが必ずしも一対一で対応していなくてもよい。
【0020】
外側側壁構成部21と内側側壁構成部31との上端同士の突き合わせ箇所における外側容器部材2の構造について
図8,
図10により説明する。外側容器部材2には,フランジ部23と段リブ24とが設けられている。フランジ部23は,外側側壁構成部21の外面に外向きに設けられた凸状部である。フランジ部23は,外側側壁構成部21の上端22よりやや低い位置に設けられている。上端22とフランジ部23の上面との高さの差は,第1対向壁部33の垂れ下がり長さとだいたい同じくらいである。フランジ部23の上面側における外側側壁構成部21との連絡箇所には,寄せ凸部28が形成されている。
【0021】
段リブ24は,外側側壁構成部21の外面のうちフランジ部23より上の部分に設けられている凸状部である。段リブ24および寄せ凸部28の外側側壁構成部21からの突出量は,フランジ部23の突出量より小さい。段リブ24は,外側側壁構成部21における2水準の高さ位置に互い違いに断続的に形成されている。
【0022】
図10に示されるように,外側側壁構成部21の内面には,縦リブ25が形成されている。縦リブ25は,上下方向に形成された凸状部である。縦リブ25の外側側壁構成部21からの突出量は,縦リブ25の中でも上方ほど大きい。縦リブ25は,周方向に対して離散的に設けられている。
図11に示すように縦リブ25は,内側容器部材3と外側容器部材2とを組付けた状態にて,周方向に対して規制部34の位置と異なる位置に配置されている。
図11は,
図8に示される状態の内側容器部材3および外側容器部材2を,フランジ部23より少し上のレベルの水平面で切断して上方から見た断面図である。
【0023】
図8から,縦リブ25の上端が規制部34の下端より高いレベルに達していることが分かる。つまり容器1では,縦リブ25と規制部34とのいずれもが存在している高さレベルが存在する。
図3から,縦リブ25は,外側側壁構成部21のうち上寄りの範囲に形成されていることが分かる。
【0024】
図3および
図5に示すように,外側容器部材2には外側底壁構成部20の上面に位置決め部26が形成されており,内側容器部材3には内側底壁構成部30の下面に位置決め部38が形成されている。
図3に示すように外側底壁構成部20には,注入口27が形成されている。
【0025】
本形態の容器1の製造方法を説明する。容器1は,外側容器部材2と内側容器部材3とを組付けて断熱部材4を形成することで製造される。本形態の製造方法では,外側容器部材2および内側容器部材3は既に成形済みのものとして,その状態から次の各工程を経て容器1を製造する。
1.表面処理工程
2.組付け工程
3.注入工程
【0026】
上記「1.」の表面処理工程について説明する。表面処理工程は,外側容器部材2および内側容器部材3の表面に,断熱部材4との接合のための反応活性を付与することを目的として行う工程である。したがって表面処理の対象面は,断熱部材4と接することとなる面である。これは,内側容器部材3の外面および外側容器部材2の内面である。
【0027】
表面処理の内容は,もともと活性度の低いポリオレフィン系樹脂の表面を活性化させるものである。このような表面処理としては,フレーム処理,コロナ放電処理,プラズマ処理,を挙げることができる。これらの処理を施すことで,ポリオレフィン系樹脂の表面を,活性基やダングリングボンドが露出している高活性面とすることができる。本開示においては,外側容器部材2および内側容器部材3の表面のうち前述の表面処理を施して活性化した部分を活性化表面処理済み領域という。活性化表面処理済み領域は,後の注入工程で形成される断熱部材4に対して強く接合されることとなる。
【0028】
本工程では,内側容器部材3の外面および外側容器部材2の内面の全体を活性化表面処理済み領域としてもよいし,一部分のみを活性化表面処理済み領域としてもよい。一部分のみを対象とする場合,
図1の正置状態にて上寄りとなる部分を対象とする方がよりよい。組み付け後の容器1の全体としての剛性には,上寄りの部分での内側容器部材3と断熱部材4との密着および外側容器部材2と断熱部材4との密着が,より強く寄与するからである。本形態の容器1では内側容器部材3と外側容器部材2とが上端部同士で突き合わせられているからである。外側容器部材2の内面では例えば,
図3中に破線L1で示すレベルより上の部分を表面処理の対象領域とすることが望ましい。内側容器部材3の外面では例えば,倒置状態の
図5中に破線L2で示すレベルより下の部分を表面処理の対象領域とすることが望ましい。前述の縦リブ25は,その全部または一部が,表面処理の対象領域となる範囲内に形成されているものである。
【0029】
図3中の破線L1,
図5中の破線L2およびそれらに付した矢印は,表面処理の対象領域とすべき領域の境目を示すために図中に便宜的に描いた仮想的なものであり,容器部材に実際にそれらの図形が形成されていることを意味するものではない。破線L1,L2のレベルは任意である。破線L1,L2を正置状態にて低いレベルに設定するほど,表面処理の対象面積が広いことになる。反面処理コストは嵩む。破線L1,L2を正置状態にて高いレベルに設定するほど,表面処理の対象面積が狭いことになる。反面処理コストは少なくて済む。一般的には,側壁の縦方向寸法の40%以上が処理対象領域となるように設定することが望ましい。破線L1のレベルと破線L2のレベルとは,一致していなくてもよい。本工程の表面処理は,設定した対象領域内の全面に対してムラなく実施してもよいし,対象領域内に対して斑状に実施してもよい。
【0030】
上記「2.」の組付け工程について説明する。組付け工程は,外側容器部材2と内側容器部材3とを組付けて一体化する工程である。
図6および
図7のそれぞれ左半分に示される状況を得ることが,本工程の目的である。本工程では,表面処理工程を経た内側容器部材3および外側容器部材2を対象とする。
【0031】
本工程ではまず,位置決め部38と位置決め部26とを少し嵌め込む。内側容器部材3と外側容器部材2との位置決めのためである。むろん,内側容器部材3と外側容器部材2とを,長辺同士および短辺同士がいずれも平行になるようにする。位置決め部38と位置決め部26との位置決めができたら,内側容器部材3と外側容器部材2とをさらに接近させる。これにより,内側容器部材3の内側側壁構成部31と第1対向壁部33との間に外側容器部材2の外側側壁構成部21の上端22を進入させる。
【0032】
このとき,規制部34および第2対向壁部35により,外側側壁構成部21は,内側側壁構成部31と第1対向壁部33との間の空間の内の第1対向壁部33に近い側,つまり外寄りに押し出された状態となる。これは,外側側壁構成部21の内倒れ,すなわち外側側壁構成部21の上端22が内側に寄ってしまうことが防止されるということである。
【0033】
この進入操作に際して,傾斜辺36により,上端22は自然に第1対向壁部33と第2対向壁部35との間に導かれることになる。第2対向壁部35の下端が傾斜辺36の上端よりも上方に位置しており,規制部34と第2対向壁部35とが段差なく繋がっていることから,上端22が第2対向壁部35に引っ掛かることもない。縦リブ25と規制部34とが干渉することもない。縦リブ25と規制部34とは,周方向に対して互いに異なる位置に存在しているからである。このようにして
図8に示した突き合わせ状態が得られ,外側容器部材2と内側容器部材3とが一体化する。一体化した外側容器部材2および内側容器部材3を,逆さに伏せた状態とする。つまり
図2に示す倒置状態である。
【0034】
上記「3.」の注入工程について説明する。注入工程は,外側容器部材2と内側容器部材3との間の空間5に断熱部材4を形成することを目的とする工程である。本工程では,空間5に,断熱部材4の原料液を注入し,固形化させて断熱部材4とする。倒置状態とされている容器1では注入口27が上を向いている。本工程ではこの状態で,注入口27から原料液を注入する。本形態では原料液として,未硬化のポリウレタン系樹脂を使用する。
【0035】
注入口27から注入された原料液は,空間5内で倒置状態での下部まで到達する。原料液の注入量は,表面処理工程の対象となった活性化表面処理済み領域が全部原料液に浸る程度で十分である。ただし,空間5を全部原料液で満たしてしまってもよい。
図6の右半分は,空間5を全部原料液で満たした場合の例を示している。空間5のうち倒置状態での最下部とは,
図8中では最上部であり,内側側壁構成部31と第2対向壁部35との間の辺りである。原料液はここまで特に邪魔されることなく到達する。規制部34は周方向に対して離散的に存在しているにすぎないからである。注入後には注入口27を適当なキャップで塞ぐ。
【0036】
原料液を硬化させることで,ポリウレタン系樹脂の断熱部材4が形成される。硬化の方法は,原料液のメーカーにより指定されている方法でよい。例えば,注入後の容器1を専用型に入れて所定の温度で所定の時間保持する。これにより未硬化のポリウレタン系樹脂がキュアリング(硬化)され,断熱部材4となる。硬化の際に,特に活性化表面処理済み領域においては,断熱部材4と外側容器部材2とが,また断熱部材4と内側容器部材3とが強く接合された状態となる。活性化表面処理済み領域の前述の高い反応活性のためである。この強い接合は,接着剤によるものではない。硬化は,容器1を正置状態に戻して行ってもよい。
【0037】
かくして本形態の容器1が出来上がる。このようにして製造された容器1は,外側容器部材2と内側容器部材3との二重構造でありながら高剛性であるという特徴を有している。断熱部材4と,内側容器部材3および外側容器部材2とが前述のようにしてかなりの広い面積にわたって強く接合されているからである。組付け工程で一体に組付けただけの状態での容器は人が手で押すだけでかなり歪むが,注入工程を経て完成した容器1は,人が手で押した程度ではほとんど歪まない。
【0038】
表面処理工程をやっていなかった場合には,注入工程を経て断熱部材4を形成したとしても,表面処理工程を実施した場合ほどの剛性向上効果はない。形成される断熱部材4が,内側容器部材3および外側容器部材2に対して単に接触しているだけで接合されてはいない状態となるからである。表面処理工程による活性化表面処理済み領域の反応活性は,安定したものではなく,時間の経過とともに減衰していく傾向がある。このため,表面処理工程の実施から注入工程に至るまで円滑に工程を進行できるようにしておいた方がよい。
【0039】
注入工程で原料液の注入量を上記よりも少なくした場合には,硬化も倒置状態で行うことで,空間5のうち倒置状態での下部,すなわち正置状態での上部にのみ断熱部材4が形成される。この場合における断熱部材4が形成される領域は,外側容器部材2,内側容器部材3が必ず活性化表面処理済み領域とされる領域と一致している。このため,断熱部材4の量は少なくても,断熱部材4と外側容器部材2および内側容器部材3との接合面積はかなり大きい。したがって,空間5の全体を断熱部材4で充填した場合と比較してあまり遜色ない剛性が得られる。ただし断熱効果は,空間5を全部断熱部材4で満たした場合と比べて低い。
【0040】
注入工程における各形状部の作用を説明する。ここで説明するのは主として,リブ37の作用および縦リブ25の作用である。
【0041】
リブ37の作用は,空気抜き路の形成である。注入口27から原料液を注入する際,空間5の中にもともと存在していた空気が脱出する必要がある。原料液が硬化する際に発生するガスも同様に脱出する必要がある。その脱出の経路となるのは,
図8に示した突き合わせ箇所における外側容器部材2と内側容器部材3との間のわずかな隙間である。もし横壁部32の下面にリブ37が設けられていないと,横壁部32の下面と外側側壁構成部21の上端22とが密着してしまう可能性がある。原料液の注入時には外側容器部材2と内側容器部材3とが上下方向にある程度型締めされるからである。また,樹脂の成型による量産品である外側容器部材2および内側容器部材3にはある程度の寸法誤差がありうるからである。横壁部32と上端22とが密着していると,空気が脱出できず,原料液が空間5内に十分行き渡らないおそれがある。
【0042】
リブ37が離散的に設けられていることで,リブ37のない箇所に,横壁部32の下面と上端22との間の隙間ができる。上下方向にある程度の押圧力が掛かっていてもこの隙間が塞がれることはない。この隙間が空気抜き路となる。このため本形態では,注入工程での空気抜け性がよく,断熱部材4の形成が良好になされる。
【0043】
本形態では特に,リブ37と規制部34とが周方向に対して同じ位置に設けられているので,さらに注入時の空気抜け性が良くなっている。注入時の空気抜け性には,前述の横壁部32と上端22との間の箇所だけでなく,外側側壁構成部21の内面と第2対向壁部35の外面との間の箇所も関与するからである。規制部34のある箇所では第2対向壁部35が変形しにくいので,外側側壁構成部21の内面と第2対向壁部35の外面との間に隙間ができにくい。規制部34のない箇所では外側側壁構成部21の内面と第2対向壁部35の外面との間にある程度の隙間ができ,この隙間が空気抜き路となる。その箇所にはリブ37もなく横壁部32と上端22との間も隙間となっているので,空気抜け性がよいのである。
【0044】
外側側壁構成部21の外面と第1対向壁部33の内面との間では,段リブ24により,空気抜き路が形成されている。第1対向壁部33の下端とフランジ部23の上面との間は,
図8では密着しているように見えるが,空気抜きの支障にはあまりならない。実際にはこの場所にはあまり強い圧接力が掛からないからである。寄せ凸部28は,第1対向壁部33の下端が内向きに変形して空気抜き路を塞ぐことを防止している。段リブ24には,外部からの水の侵入を阻止する役割もある。
【0045】
縦リブ25の作用は,外側側壁構成部21の内面と断熱部材4との接触面積の増大である。縦リブ25による接触面積の増大の分,容器1の剛性向上に貢献している。表面処理の対象領域を
図3,
図5中の破線L1,L2のように限定した場合でも,縦リブ25の全部または少なくとも一部が活性化表面処理済み領域の中にあり,剛性向上効果が高い。内側側壁構成部31の外面と断熱部材4との間では,前述の規制部34および第2対向壁部35が接触面積の増大に貢献している。第2対向壁部35には,原料液注入時の液漏れを防止する役割もある。
【0046】
本形態の容器1は,
図12に示すように蓋6とともに使用することができる。容器1の内側容器部材3では
図8に示したように,内側側壁構成部31と横壁部32との継ぎ目の所を,中間横壁部39を設けてステップ状にしている。
図12の状態での蓋6の位置決めのためである。このことは必須ではなく,内側側壁構成部31と横壁部32とが直に繋がる形状であってもかまわない。そのような形状でも蓋6とともに使用することはできる。本形態の容器1は,蓋6とともに段積みすることができる。蓋6を用いず容器1のみで段積みすることもできる。
【0047】
以上詳細に説明したように本実施の形態によれば,ポリオレフィン系樹脂の外側容器部材2および内側容器部材3による二重構造の容器において,外側容器部材2および内側容器部材3における断熱部材4と接することとなる面に表面処理を施して活性化表面処理済み領域を形成してから,組付け,注入を行うこととしている。これにより,外側容器部材2および内側容器部材3とそれらの間の断熱部材4とがしっかりと接合された高剛性な容器1がその製造方法とともに実現されている。このため本形態の容器1では,外側容器部材2と内側容器部材3との突き合わせ箇所を溶接等の事後処理で接合する必要は特にない。ただし接合してもかまわない。
【0048】
本実施の形態は単なる例示にすぎず,本開示技術を何ら限定するものではない。したがって本開示技術は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。例えば,リブ37に相当する形状を,横壁部32の下面に設ける代わりに外側側壁構成部21の上端22に設けてもよい(
図13)。このような構造でも,凸部29以外の場所では横壁部32の下面と外側側壁構成部21の上端22との間に隙間ができる。この構造の場合でも,凸部29と規制部34とが周方向に対して同じ位置に設けられることが望ましい。リブ37と凸部29との両方を設けてもよい。
【0049】
容器1の全体形状は,上方から見て長方形に限らず他の形状でもよい。正方形,他の多角形,円形,楕円形などでもよい。縦リブ25は,上下方向に形成される代わりに水平方向に形成されていたとしても,外側側壁構成部21の内面と断熱部材4との接触面積を増大させる効果はある。
【0050】
前記形態では外側容器部材2および内側容器部材3はいずれもポリオレフィン系樹脂(ポリプロピレン)で構成されていることとしたが,外側容器部材2と内側容器部材3とのうち一方はポリオレフィン系以外の合成樹脂(例えばABS樹脂,AES樹脂,アクリル樹脂,ポリカーボネート等)であってもよい。その場合,表面処理工程での活性化表面処理済み領域の形成は,ポリオレフィン系樹脂で構成されている容器部材を対象とすればよい。ポリオレフィン系以外の合成樹脂で構成されている容器部材に対して表面処理工程を実施するか否かは任意である。外側容器部材2および内側容器部材3のいずれもがポリオレフィン系樹脂のものである場合でも,いずれか一方のみを表面処理工程の対象とすることとしてもよい。外側容器部材2および内側容器部材3のいずれもがポリオレフィン系樹脂のものである場合,異なる種類のポリオレフィン系樹脂(例えば,外側容器部材2がポリプロピレンで内側容器部材3がポリエチレン)であってもよい。
【符号の説明】
【0051】
1 容器 29 凸部
2 外側容器部材 30 内側底壁構成部
3 内側容器部材 31 内側側壁構成部
4 断熱部材 32 横壁部
5 空間 33 第1対向壁部
20 外側底壁構成部 34 規制部
21 外側側壁構成部 35 第2対向壁部
22 上端 36 傾斜辺(傾斜部)
25 縦リブ(凸状部) 37 リブ
27 注入口