(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170675
(43)【公開日】2024-12-10
(54)【発明の名称】ステータアッシー、および、ステータアッシーの組み立て方法
(51)【国際特許分類】
H02K 3/46 20060101AFI20241203BHJP
【FI】
H02K3/46 B
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024163327
(22)【出願日】2024-09-20
(62)【分割の表示】P 2022563577の分割
【原出願日】2021-07-29
(31)【優先権主張番号】P 2020191334
(32)【優先日】2020-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内藤 修
(72)【発明者】
【氏名】古屋 美幸
(57)【要約】 (修正有)
【課題】薄型かつ絶縁信頼性が高いステータアッシーを提供する。
【解決手段】U相、V相、W相の各相のコイル導体は、端子用配線導体、第1ティースに巻回される第1ティース用導体、わたり線導体、第2ティースに巻回される第2ティース用導体、および、中性点接続導体の順に繋がる構成を備える。端子用配線導体は、インシュレータの上側で第1ティース用導体に繋がる。わたり線導体は、ステータコアに配置されたインシュレータの上側で、且つ、他の相のティースの外側に沿って配置される。中性点接続導体は、インシュレータの下側で第2ティース用導体に繋がる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状に配置されたバックヨーク、および、前記バックヨークから前記環状の中心軸に向かって延びる複数のティースを備えたステータコアと、
絶縁性材料からなり、前記ステータコアを上下から挟むように配置されたインシュレータと、
前記インシュレータの下面に配置された円環状のバスバー導体と、
前記インシュレータにおける前記複数のティースを覆う部分に巻回されたコイル導体と、を備え、
前記複数のティースは、U相、V相、W相毎に、Nを自然数とする第1から第NまでのN個のティースを有し、各相のティースが前記環状に沿って順に繰り返し配置されており、
前記コイル導体は、
前記U相、前記V相、前記W相毎にコイル導体を有し、
各相のコイル導体は、一端が端子用配線導体、他端が中性点接続導体となり、その間が前記N個のティースのうち、各ティースに巻回されるティース用導体と、該各ティースに巻回されるティース用導体をわたるわたり線導体で、繋がっており、
前記端子用配線導体は、前記インシュレータの上側で前記N個のティースのうち、第1ティース用導体に繋がり、
前記わたり線導体は、前記ステータコアに配置されたインシュレータの上側で、且つ、他の相のティースの外側に沿って配置され、
前記中性点接続導体は、前記インシュレータの下側で前記N個のティースのうち、N番目のティース用導体に繋がり、前記インシュレータの下面側において前記バスバー導体に接続されるとともに、
前記バスバー導体は、前記ティース用導体の最下端よりも上側の位置に配置されており、
前記インシュレータは、
前記ティースの外側の位置に、前記インシュレータの上面から下面に繋がる貫通孔を有し、
前記端子用配線導体は、前記貫通孔を挿通する、
ステータアッシー。
【請求項2】
前記バスバー導体は、上面視または下面視において、前記ステータコアにおける前記バックヨークに重なって配置され、
前記中性点接続導体は、前記バスバー導体と導電性接合材にて接続される、
請求項1に記載のステータアッシー。
【請求項3】
前記複数のティースは、
上面視して、第1のU相ティースを基準にして、第1のU相ティース、第1のV相ティース、第1のW相ティースの順で、順次、第NのU相ティース、第NのV相ティース、第NのW相ティースまで環状に配列され、
前記コイル導体は、
U相コイル導体、V相コイル導体、および、W相コイル導体を含み、
前記U相コイル導体は、前記第1のU相ティースに巻回される第1U相ティース用導体から、前記第NのU相ティースに巻回される第NU相ティース用導体まで接続するU相用わたり線導体を有し、
前記V相コイル導体は、前記第1のV相ティースに巻回される第1V相ティース用導体から、前記第NのV相ティースに巻回される第NV相ティース用導体まで接続するV相用わたり線導体を有し、
前記W相コイル導体は、前記第1のW相ティースに巻回される第1W相ティース用導体から、前記第NのW相ティースに巻回される第NW相ティース用導体まで接続するW相用わたり線導体を有し、
前記U相用わたり線導体、前記V相用わたり線導体、および、前記W相用のわたり線導体は、前記第1のU相ティースを基準として、前記第NのW相ティース、前記第NのV相ティースの順で並ぶ方向に沿って引き回される、
請求項1または請求項2に記載のステータアッシー。
【請求項4】
前記インシュレータは、前記ステータコアに重なる上側で、且つ、前記複数のティース突出する部分に、上面から突出する複数の鍔部を備え、
前記複数の鍔部は、それぞれに中央に凹部を有し、
前記端子用配線導体は、前記凹部を介して、前記ティース側に導かれる、
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のステータアッシー。
【請求項5】
前記わたり線導体は、前記複数の鍔部の外面に沿って配置される、
請求項4に記載のステータアッシー。
【請求項6】
前記インシュレータは、前記凹部に重なる部分の一部に、前記鍔部よりも低い突出部を備え、
前記端子用配線導体は、前記突出部の側面側に配置され、
前記わたり線導体は、前記突出部の上面側に配置される、
請求項4または請求項5に記載のステータアッシー。
【請求項7】
前記各相のわたり線は、互いに並走する、
請求項1乃至請求項6のいずれかに記載のステータアッシー。
【請求項8】
環状に配置されたバックヨーク、および、前記バックヨークから前記環状の中心軸に向かって延びる複数のティースを備えたステータコアと、
絶縁性材料からなり、前記ステータコアを上下から挟むように配置されたインシュレータと、
前記インシュレータにおける前記複数のティースを覆う部分に巻回されたコイル導体と、を備えるステータアッシーの組み立て方法であって、
前記複数のティースを、U相、V相、W相毎に、Nを自然数として第1から第NまでのN個のティースで構成し、各相のティースを前記環状に沿って順に繰り返し配置し、
前記U相、前記V相、前記W相毎の前記コイル導体を、一端が端子用配線導体、他端が中性点接続導体となり、その間を前記N個のティースのうち、各ティースに巻回されるティース用導体と、該各ティースに巻回されるティース用導体間をわたるわたり線導体で繋ぎ、
前記端子用配線導体を、前記インシュレータの上側で前記N個のティースのうち、第1ティース用導体に繋ぎ、
前記わたり線導体を、前記ステータコアに配置されたインシュレータの上側で、且つ、他の相のティースの外側に沿って配置し、
前記インシュレータの下面に円環状のバスバー導体を配置し、
前記中性点接続導体を、前記インシュレータの下側で前記N個のティースのうち、N番目のティース用導体に繋ぎ、前記インシュレータの下面側において前記バスバー導体に接続し、
前記バスバー導体を、前記ティース用導体の最下端よりも上側の位置に配置し、
前記ティースの外側の位置に形成された前記インシュレータの上面から下面に繋がる貫通孔に、前記端子用配線導体を挿通する、
ステータアッシーの組み立て方法。
【請求項9】
既に別相の第1ティース用導体が巻き付けられているティースに対して、前記別相の第1ティース用導体から前記別相の次のティース用導体にわたり線導体が配線される側と反対側に隣接して配置されたティースに、新たに巻回させる相の第1ティース用導体を巻き付ける、
請求項8に記載のステータアッシーの組み立て方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3相ブラシレスモータ用のステータアッシーに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、3相モータ用の固定子(ステータ)の構造が記載されている。特許文献1に記載の固定子は、所定の角度(30°)間隔で配置された12個のティースを備える。12個のティースは、それぞれ4個ずつ、U相用、V相用、W相用として用いられる。そして、U相用のU1ティース、U相用のU2ティース、V相用のV1ティース、V相用のV2ティース、W相用のW1ティース、W相用のW2ティース、U相用のU3ティース、U相用のU5ティース、V相用のV3ティース、V相用のV4ティース、W相用のW3ティース、W相用のW4ティースの順に、環状(例えば反時計回り)に配置される。
【0003】
U相を構成するティースには、U相用の線状導体が巻き付けられ、V相を構成するティースには、V相用の線状導体が巻き付けられ、W相を構成するティースには、W相用の線状導体が巻き付けられる。
【0004】
U相を構成する複数のティースのうち隣り合わないティースのU相用の線状導体は、U相用のわたり線(導体)で繋げられ、V相を構成するティースのうち隣り合わないティースのV相用の線状導体は、V相用のわたり線(導体)で繋げられ、W相を構成するティースのうち隣り合わないティースのW相用の線状導体は、W相用のわたり線(導体)で繋げられる。そして、U相用の線状導体、V相用の線状導体、および、W相用の線状導体は、複数のティースが配列される環形の構造体の所定位置において、中性点に接続される。
【0005】
各層のわたり線は、前記構造体に設けられた複数のピンに絡げられる。複数のピンは、構造体の上面から突出する形状であり、環状に沿って間隔を空けて配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に示す構成では、例えば、W相用のわたり線(導体)と、V相用の線状導体を中性点に接続する導体とが交差する等、電位差を有する導体同士が交差する箇所が必然的に存在してしまう。これにより、固定子の絶縁信頼性が低下してしまう。また、巻線を絡げるためのピンが必要になり、低背化が難しい。
【0008】
したがって、本発明の目的は、薄型かつ絶縁信頼性が高いステータアッシーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明のステータアッシーは、環状に配置されたバックヨークおよび環状の中心軸に向かって延びる複数のティースを備えたステータコアと、絶縁性材料からなり、ステータコアを上下から挟むように配置されたインシュレータと、インシュレータにおける複数のティースを覆う部分に巻回されたコイル導体と、を備える。
【0010】
複数のティースは、U相、V相、W相毎に、第1ティースおよび第2ティースを有し、各相のティースが環状に沿って順に繰り返し配置されている。
【0011】
コイル導体は、U相、V相、W相毎にコイル導体を有する。各相のコイル導体は、端子用配線導体、第1ティースに巻回される第1ティース用導体、わたり線導体、第2ティースに巻回される第2ティース用導体、および、中性点接続導体の順に繋がる。
【0012】
端子用配線導体は、インシュレータの上側で第1ティース用導体に繋がる。わたり線導体は、ステータコアに配置されたインシュレータの上側で、且つ、他の相のティースの外側に沿って配置される。
【0013】
中性点接続導体は、インシュレータの下側で第2ティース用導体に繋がり、インシュレータの下面側においてバスバー導体に接続される。バスバー導体は、ティース用導体の最下端よりも上側の位置に配置されている。インシュレータは、ティースの外側の位置に、インシュレータの上面から下面に繋がる貫通孔を有する。端子用配線導体は、貫通孔を挿通する。
【0014】
この構成では、各相のコイル導体の制御信号印加端子側(中性点と反対側)の部分、および、複数のティースに巻回されたコイル導体を接続する部分と、各相のコイル導体を中性点に接続側の部分とは、ステータコアおよびインシュレータを挟んで離間する。これにより、電位差の大きな導体が近接することは、抑制される。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、絶縁信頼性の高いステータアッシーを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係るステータアッシーを含むモータの等価回路図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態に係るステータアッシーの斜視図である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態に係るステータアッシーの上面図である。
【
図4】
図4は、第1の実施形態に係るステータアッシーの下面図である。
【
図5】
図5は、第1の実施形態に係るステータアッシーの側面視の展開図である。
【
図6】
図6(A)、
図6(B)、
図6(C)、
図6(D)は、第1の実施形態に係るステータアッシーの製造過程の各状態を示す上面図である。
【
図7】
図7は、第2の実施形態に係るステータアッシーの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態に係るステータアッシーについて、図を参照して説明する。
【0018】
(ステータアッシーを含むモータの回路構成)
図1は、第1の実施形態に係るステータアッシーを含むモータの等価回路図である。
【0019】
図1に示すように、第1の実施形態に係るステータアッシー10を含むモータは、U相、V相、W相を有する3相交流モータ(ブラシレスモータ)である。このモータは、U相コイル101U、V相コイル101V、および、W相コイル101Wを備える。
【0020】
U相コイル101Uの一方端は、U相交流の入力端子102Uに接続する。V相コイル101Vの一方端は、V相交流の入力端子102Vに接続する。W相コイル101Wの一方端は、W相交流の入力端子102Wに接続する。
【0021】
U相コイル101Uの他方端、V相コイル101Vの他方端、および、W相コイル101Wの他方端は、中性点103に接続する。
【0022】
この回路構成によって、モータは、Y結線(スター結線)を実現する。
【0023】
(ステータアッシーの構造)
図2は、第1の実施形態に係るステータアッシーの斜視図である。
図3は、第1の実施形態に係るステータアッシーの上面図である。
図4は、第1の実施形態に係るステータアッシーの下面図である。
図5は、第1の実施形態に係るステータアッシーの側面視の展開図である。
【0024】
図2、
図3、
図4、
図5に示すように、ステータアッシー10は、ステータコア21、インシュレータ30、バスバー導体70、および、複数のコイル導体(コイル導体410、コイル導体510、および、コイル導体610)を備える。
【0025】
ステータコア21は、バックヨークと、複数のティース(ティース221、ティース222、ティース223、ティース224、ティース225、および、ティース226)とを備える。
【0026】
バックヨークは、磁性体である。例えば、具体的には、バックヨークは、軟磁性体材料である電磁鋼板を複数枚積層させて形成される。バックヨークは、所定の幅、高さを有する環状である。
【0027】
複数のティース(ティース221、ティース222、ティース223、ティース224、ティース225、および、ティース226)は、磁性体である。複数のティースは、バックヨークの内側、すなわち、バックヨークによって形成される環状の中心軸側に配置される。複数のティースは、バックヨークの内壁面から中心軸に向かって延びる柱状体である。複数のティースは、所定の角度間隔で配置される。より具体的には、
図3、
図4に示すように、ティース221、ティース222、ティース223、ティース224、ティース225、および、ティース226は、この順で、約60°の角度間隔で、上面視において反時計回り、下面視において時計回りで、配置される。複数のティースは、例えば、バックヨークと同一材料で形成される。
【0028】
これにより、ステータコア21は、同一材料で形成されたバックヨークと複数のティースによって構成される。
【0029】
インシュレータ30は、絶縁性材料からなる。インシュレータ30は、ステータコア21を上下から挟むように配置される。より具体的には、インシュレータ30は、上側カバー31と下側カバー33とを備える。上側カバー31は、ステータコア21を、上面側から側面の所定高さまで覆う。下側カバー33は、ステータコア21を、下面側から側面の所定高さまで覆う。
【0030】
インシュレータ30は、複数の鍔部を備える。より具体的には、インシュレータ30の上側カバー31は、複数の鍔部(鍔部311、鍔部312、鍔部313、鍔部314、鍔部315、および、鍔部316)を備える。複数の鍔部(鍔部311、鍔部312、鍔部313、鍔部314、鍔部315、および、鍔部316)は、上側カバー31におけるステータコア21のバックヨークに重なる部分に配置される。
【0031】
複数の鍔部(鍔部311、鍔部312、鍔部313、鍔部314、鍔部315、および、鍔部316)は、上側カバー31の上面(ステータコア21のバックヨークに当接する面と反対側の面)から突出する形状であり、ステータコア21のバックヨークの内周端に沿った板状である。
【0032】
複数の鍔部は、ステータコア21におけるバックヨークと複数のティースとが繋がる部分に配置される。より具体的には、鍔部311は、バックヨークとティース221とが繋がる部分に配置され、鍔部312は、バックヨークとティース222とが繋がる部分に配置され、鍔部313は、バックヨークとティース223とが繋がる部分に配置される。鍔部314は、バックヨークとティース224とが繋がる部分に配置され、鍔部315は、バックヨークとティース225とが繋がる部分に配置され、鍔部316は、バックヨークとティース226とが繋がる部分に配置される。
【0033】
鍔部311は、鍔部311を2つに分ける凹部3110を有し、鍔部312は、鍔部312を2つに分ける凹部3120を有し、鍔部313は、鍔部313を2つに分ける凹部3130を有する。鍔部314は、鍔部314を2つに分ける凹部3140を有し、鍔部315は、鍔部315を2つに分ける凹部3150を有し、鍔部316は、鍔部316を2つに分ける凹部3160を有する。
【0034】
インシュレータ30は、複数の突出部を備える。より具体的には、インシュレータ30の上側カバー31は、複数の突出部(突出部321、突出部322、突出部323、突出部324、突出部325、および、突出部326)を備える。複数の突出部は、上側カバー31の上面(ステータコア21のバックヨークに当接する面と反対側の面)から突出する形状である。複数の突出部は、複数の鍔部よりも外方に配置される。
【0035】
インシュレータ30を側面視して、複数の突出部は、複数の鍔部の凹部の一部に重なるように配置される。より具体的には、突出部321は、鍔部311の凹部3110の一部に重なり、突出部322は、鍔部312の凹部3120の一部に重なり、突出部323は、鍔部313の凹部3130の一部に重なる。突出部324は、鍔部314の凹部3140の一部に重なり、突出部325は、鍔部315の凹部3150の一部に重なり、突出部326は、鍔部316の凹部3160の一部に重なる。
【0036】
図3、
図4に示すように、インシュレータ30は、貫通孔391、貫通孔392、貫通孔393を有する。貫通孔391、貫通孔392、貫通孔393は、インシュレータ30(上側カバー31および下側カバー33)を上面から下面に貫通する。
【0037】
ステータコア21におけるバックヨークと複数のティースとが繋がる部分の外方には、凹み290が形成されており、貫通孔391、貫通孔392、および、貫通孔393は、インシュレータ30における凹み290に配置された部分に形成される。より具体的には、貫通孔391は、ステータコア21におけるバックヨークとティース221とが繋がる部分の凹み290のインシュレータ30に形成され、貫通孔392は、ステータコア21におけるバックヨークとティース222とが繋がる部分の凹み290のインシュレータ30に形成され、貫通孔393は、ステータコア21におけるバックヨークとティース223とが繋がる部分の凹み290のインシュレータ30に形成される。
【0038】
バスバー導体70は、所定の幅を有する環状の平板である。バスバー導体70は、上面視または下面視において、ステータコア21におけるバックヨークに重なる。バスバー導体70は、インシュレータ30の下側カバー33の表面、すなわち、ステータコア21におけるバックヨークに当接する側と反対側の面に、配置される。
【0039】
複数のコイル導体は、それぞれに、1本の導体からなり、端子用配線導体、複数のティース用導体、わたり線導体、および、中性点接続導体によって構成される。
【0040】
より具体的には、コイル導体410は、1本の導体からなり、機能的な部分として、端子用配線導体411、第1ティース用導体41、わたり線導体412、第2ティース用導体42、および、中性点接続導体413によって構成される。コイル導体510は、1本の導体からなり、機能的な部分として、端子用配線導体511、第1ティース用導体51、わたり線導体512、第2ティース用導体52、および、中性点接続導体513によって構成される。コイル導体610は、1本の導体からなり、機能的な部分として、端子用配線導体611、第1ティース用導体61、わたり線導体612、第2ティース用導体62、および、中性点接続導体613によって構成される。
【0041】
(コイル導体410の具体的な配置(引き回し))
コイル導体410は、より具体的に次に示すように配置される。
【0042】
端子用配線導体411は、貫通孔391を挿通して、ステータコア21のバックヨークの下側から上側に引き回される。さらに、端子用配線導体411は、インシュレータ30におけるステータコア21のバックヨークに重なる部分の上面の上を通じ、凹部3110を挿通して、ティース221におけるティース222側に導かれ、第1ティース用導体41に繋がる。
【0043】
第1ティース用導体41は、ティース221に対して、インシュレータ30を間に挟んで、巻回される。第1ティース用導体41における端子用配線導体411に繋がる側と反対側の端部は、鍔部311におけるティース226側の側端に沿って、インシュレータ30がステータコア21のバックヨークに重なる部分の上面側に引き回される。この端部が、わたり線導体412に接続する。
【0044】
わたり線導体412は、鍔部311の外面、突出部321の上面上を通じて、ティース222側に引き回される。わたり線導体412は、鍔部312、および、鍔部313の外面に沿い、鍔部314における鍔部313側の部分まで、ステータコア21のバックヨークの形状と同様に、略弧状に引き回される。わたり線導体412は、鍔部314における鍔部313側の部分の外面から凹部3140を挿通して、ティース224におけるティース225側に導かれ、第2ティース用導体42に繋がる。
【0045】
第2ティース用導体42は、ティース224に対して、インシュレータ30を間に挟んで、巻回される。第2ティース用導体42におけるわたり線導体412に繋がる側と反対側の端部は、ティース224の下方に引き出され、中性点接続導体413に繋がる。
【0046】
中性点接続導体413は、バスバー導体70におけるティース224とティース225との間の位置まで引き回され、バスバー導体70に、導電性接合材等によって接続される。
【0047】
(コイル導体510の具体的な配置(引き回し))
コイル導体510は、より具体的に次に示すように配置される。
【0048】
端子用配線導体511は、貫通孔392を挿通して、ステータコア21のバックヨークの下側から上側に引き回される。さらに、端子用配線導体511は、インシュレータ30におけるステータコア21のバックヨークに重なる部分の上面の上を通じ、凹部3120を挿通して、ティース222におけるティース223側に導かれ、第1ティース用導体51に繋がる。
【0049】
第1ティース用導体51は、ティース222に対して、インシュレータ30を間に挟んで、巻回される。第1ティース用導体51における端子用配線導体511に繋がる側と反対側の端部は、鍔部312におけるティース221側の側端に沿って、インシュレータ30がステータコア21のバックヨークに重なる部分の上面側に引き回される。この端部が、わたり線導体512に接続する。
【0050】
わたり線導体512は、鍔部312の外面、突出部322の上面上を通じて、ティース223側に引き回される。わたり線導体512は、鍔部313、および、鍔部314の外面に沿い、鍔部315における鍔部314側の部分まで、ステータコア21のバックヨークの形状と同様に、略弧状に引き回される。わたり線導体512は、鍔部315における鍔部314側の部分の外面から凹部3150を挿通して、ティース225におけるティース226側に導かれ、第2ティース用導体52に繋がる。
【0051】
第2ティース用導体52は、ティース225に対して、インシュレータ30を間に挟んで、巻回される。第2ティース用導体52におけるわたり線導体512に繋がる側と反対側の端部は、ティース225の下方に引き出され、中性点接続導体513に繋がる。
【0052】
中性点接続導体513は、バスバー導体70におけるティース225とティース226との間の位置まで引き回され、バスバー導体70に、導電性接合材等によって接続される。
【0053】
(コイル導体610の具体的な配置(引き回し))
コイル導体610は、より具体的に次に示すように配置される。
【0054】
端子用配線導体611は、貫通孔393を挿通して、ステータコア21のバックヨークの下側から上側に引き回される。さらに、端子用配線導体611は、インシュレータ30におけるステータコア21のバックヨークに重なる部分の上面の上を通じ、凹部3130を挿通して、ティース223におけるティース224側に導かれ、第1ティース用導体61に繋がる。
【0055】
第1ティース用導体61は、ティース223に対して、インシュレータ30を間に挟んで、巻回される。第1ティース用導体61における端子用配線導体611に繋がる側と反対側の端部は、鍔部313におけるティース222側の側端に沿って、インシュレータ30がステータコア21のバックヨークに重なる部分の上面側に引き回される。この端部が、わたり線導体612に接続する。
【0056】
わたり線導体612は、鍔部313の外面、突出部323の上面上を通じて、ティース224側に引き回される。わたり線導体612は、鍔部314、および、鍔部315の外面に沿い、鍔部316における鍔部315側の部分まで、ステータコア21のバックヨークの形状と同様に、略弧状に引き回される。わたり線導体612は、鍔部316における鍔部315側の部分の外面から凹部3160を挿通して、ティース226におけるティース221側に導かれ、第2ティース用導体62に繋がる。
【0057】
第2ティース用導体62は、ティース226に対して、インシュレータ30を間に挟んで、巻回される。第2ティース用導体62におけるわたり線導体612に繋がる側と反対側の端部は、ティース226の下方に引き出され、中性点接続導体613に繋がる。
【0058】
中性点接続導体613は、バスバー導体70におけるティース226とティース221との間の位置まで引き回され、バスバー導体70に、導電性接合材等によって接続される。
【0059】
この構成において、例えば、ティース221およびティース224をU相用のティースとし、コイル導体410をU相用のコイル導体に設定する。ティース222およびティース225をV相用のティースとし、コイル導体510をV相用のコイル導体に設定する。ティース223およびティース226をW相用のティースとし、コイル導体610をW相用のコイル導体とする。これにより、ステータアッシー10は、上述の
図1に示す回路(結線)を実現できる。
【0060】
そして、この構成では、複数のコイル導体における複数のティース間をわたらせる部分は、ステータコア21のバックヨークおよびインシュレータ30の上面側に引き回され、ティースから中性点に接続する部分は、ティースからバックヨークの内側を通じて、ステータコア21のバックヨークおよびインシュレータ30の下面側に引き回される。また、複数のコイル導体における端子からティースまでの部分は、インシュレータ30の外面から上面を通じて配置される。これにより、複数のコイル導体における電位差の大きな部分が近接することは、抑制される。したがって、ステータアッシー10は、高い絶縁信頼性を実現できる。
【0061】
また、この構成では、わたり線導体412が突出部321の上面側を通り、端子用配線導体411が突出部321の側面側を通ることで、わたり線導体412と端子用配線導体411とを所定距離で離間できる。わたり線導体512が突出部322の上面側を通り、端子用配線導体511が突出部322の側面側を通ることで、わたり線導体512と端子用配線導体511とを所定距離で離間できる。わたり線導体612が突出部323の上面側を通り、端子用配線導体611が突出部323の側面側を通ることで、わたり線導体612と端子用配線導体611とを所定距離で離間できる。
【0062】
これにより、第1ティース用導体41の両端が交差する際に接触することがなく、近接を抑制できる。同様に、第1ティース用導体51の両端が交差する際に接触することがなく、近接を抑制でき、第1ティース用導体61の両端が交差する際に接触することがなく、近接を抑制できる。したがって、ステータアッシー10は、さらに高い絶縁信頼性を実現できる。
【0063】
また、この構成では、鍔部312から、鍔部313における鍔部312側の端部までの区間で、わたり線導体412とわたり線導体512とは、並走する。鍔部313から、鍔部314における鍔部313側の部分までの区間では、わたり線導体412、わたり線導体512、および、わたり線導体612は、並走する。鍔部314における鍔部315側の部分から、鍔部315における鍔部314側の部分までの区間では、わたり線導体512とわたり線導体612とは、並走する。このように、それぞれ別の相を構成する複数のコイル導体は、並走して引き回されるが、いずれも各ティース用導体の終端同士である。各ティース用導体の終端同士の電位差は、各ティース用導体の始端と終端との間の電位差に比較して、小さい。したがって、各ティース用導体が並走している箇所があっても、絶縁の問題は生じない。これにより、ステータアッシー10は、さらに高い絶縁信頼性を実現できる。
【0064】
また、この構成では、端子用配線導体411、端子用配線導体511、および、端子用配線導体611は、インシュレータ30の貫通孔391、貫通孔392、および、貫通孔393を挿通して、ステータコア21およびインシュレータ30の上面側から下面側に引き回される。これにより、駆動信号の印加端子は、ステータアッシー10の下面側に配置できる。したがって、駆動信号の印加端子を、複数のコイル導体のわたり線導体から離間して配置できる。
【0065】
この際、貫通孔391、貫通孔392、および、貫通孔393を挿通させることで、ステータアッシー10は、端子用配線導体411、端子用配線導体511、および、端子用配線導体611とステータコア21との短絡を抑制できる。
【0066】
(ステータアッシー10の組み立て方法)
上述の構成のステータアッシー10は、例えば、次に示すように組み立てられる。
図6(A)、
図6(B)、
図6(C)、
図6(D)は、第1の実施形態に係るステータアッシーの製造過程の各状態を示す上面図である。なお、
図6(A)、
図6(B)、
図6(C)、
図6(D)は、図を見やすくするため、適宜符号の記載を省略しており、
図6(A)、
図6(B)、
図6(C)、
図6(D)に記載されていない符号については、
図4を参照して説明する。
【0067】
(1) バックヨークと複数のティースとからなるステータコア21を用意し、コアにインシュレータ30を装着する。
【0068】
(2)
図6(A)に示すように、コイル導体610(端子用配線導体611)を貫通孔393に挿通させ、凹部3130を挿通させて、ティース223に導く。コイル導体610(第1ティース用導体61)を、インシュレータ30を挟んでティース223に巻き付ける。
【0069】
(3)
図6(B)に示すように、コイル導体610(わたり線導体612)を、鍔部313、鍔部314、鍔部315、および、鍔部316の鍔部315側の部分に沿って配線し、凹部3160を挿通させて、ティース226に導く。コイル導体610(第2ティース用導体62)を、インシュレータ30を挟んでティース226に巻き付ける。コイル導体610(中性点接続導体613)をティース226の下側に引き出す。
【0070】
(4) コイル導体610が巻き付けられたティース223に対してわたり線導体612が引き出される側と反対側に隣接するティース222に対して、コイル導体510を巻き付ける。具体的には、
図6(C)に示すように、コイル導体510(端子用配線導体511)を貫通孔392に挿通させ、凹部3120を挿通させて、ティース222に導く。コイル導体510(第1ティース用導体51)を、インシュレータ30を挟んでティース222に巻き付ける。
【0071】
(5)
図6(C)に示すように、コイル導体510(わたり線導体512)を、鍔部312、鍔部313、鍔部314、および、鍔部315の鍔部314側の部分に沿って配線し、凹部3150を挿通させて、ティース225に導く。コイル導体510(第2ティース用導体52)を、インシュレータ30を挟んでティース225に巻き付ける。コイル導体510(中性点接続導体513)をティース225の下側に引き出す。
【0072】
(6) コイル導体510が巻き付けられたティース222に対してわたり線導体512が引き出される側と反対側に隣接するティース221に対して、コイル導体410を巻き付ける。具体的には、
図6(D)に示すように、コイル導体410(端子用配線導体411)を貫通孔391に挿通させ、凹部3110を挿通させて、ティース221に導く。コイル導体410(第1ティース用導体41)を、インシュレータ30を挟んでティース221に巻き付ける。
【0073】
(7)
図6(D)に示すように、コイル導体410(わたり線導体412)を、鍔部311、鍔部312、鍔部313、および、鍔部314の鍔部313側の部分に沿って配線し、凹部3140を挿通させて、ティース224に導く。コイル導体410(第2ティース用導体42)を、インシュレータ30を挟んでティース224に巻き付ける。コイル導体410(中性点接続導体413)をティース224の下側に引き出す。
【0074】
(8) コイル導体410(中性点接続導体413)、コイル導体510(中性点接続導体513)、および、コイル導体610(中性点接続導体613)を、バスバー導体70に接続する。
【0075】
すなわち、各相を構成するコイル導体410、コイル導体510、コイル導体610は、環状に順に巻き付けられる。この際、各相のコイル導体における第1ティース用導体が巻き付けられるティースは、すでに巻き付けられている別相の第1ティース用導体が巻き付けられたティースに対して、この別相の第1ティース用導体から第2ティース用導体にわたり線導体を配線させる側と反対側のティースを用いる。これにより、各相のわたり線導体が並走する構成であって、各相のティース用導体が環状に順に配置される構成であっても、容易に且つ確実に、各相のコイル導体を巻き付けることができる。
【0076】
このような組み立て方法を用いることによって、上述の構成のステータアッシー10を、容易に組み立てることができる。
【0077】
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態に係るステータアッシーについて、図を参照して説明する。
【0078】
図7は、第2の実施形態に係るステータアッシーの斜視図である。
図7に示すように、第2の実施形態に係るステータアッシー10Aは、第1の実施形態に係るステータアッシー10に対して、複数の突出部を省略した点で異なる。ステータアッシー10Aのその他の構成は、ステータアッシー10と同様であり、同様の箇所の説明は省略する。
【0079】
このような構成であっても、ステータアッシー10Aは、各相を構成する複数のコイル導体における最も電圧差の大きな箇所の近接を防ぎ、高い絶縁信頼性を実現できる。
【0080】
なお、上述の説明では、3相×2個のティースおよびコイル導体を用いる態様を示した。しかしながら、3相×m個=N個(m、Nはそれぞれ自然数)のティースおよびコイル導体を用いる態様にも、わたり線導体の引き回し等の上述の構成は適用できる。
【符号の説明】
【0081】
10、10A:ステータアッシー
21:ステータコア
30:インシュレータ
31:上側カバー
33:下側カバー
41:第1ティース用導体
42:第2ティース用導体
51:第1ティース用導体
52:第2ティース用導体
61:第1ティース用導体
62:第2ティース用導体
70:バスバー導体
101U:U相コイル
101V:V相コイル
101W:W相コイル
102U、102V、102W:入力端子
103:中性点
221、222、223、224、225、226:ティース
290:凹み
311、312、313、314、315、316:鍔部
321、322、323、324、325、326:突出部
391、392、393:貫通孔
410、510、610:コイル導体
411、511、611:端子用配線導体
412、512、612:線導体
413、513、613:中性点接続導体
3110、3120、3130、3140、3150、3160:凹部