(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170688
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】ケーブル終端接続構造
(51)【国際特許分類】
H02G 15/064 20060101AFI20241204BHJP
【FI】
H02G15/064
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021172184
(22)【出願日】2021-10-21
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145872
【弁理士】
【氏名又は名称】福岡 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100187643
【弁理士】
【氏名又は名称】白鳥 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】助川 琢也
(72)【発明者】
【氏名】荒木 祐起
【テーマコード(参考)】
5G375
【Fターム(参考)】
5G375AA02
5G375BA23
5G375BB03
5G375CB10
5G375CB36
5G375DA32
5G375DA34
5G375DA36
(57)【要約】
【課題】ケーブル終端接続構造における密封性の不具合を容易に検知する。
【解決手段】ケーブル終端接続構造は、導体を有する電力ケーブルと、鉛直方向に沿って立設され、電力ケーブルが挿入された碍管と、碍管の軸方向の上端における開口を塞ぎ、導体が固定される上側金具と、電力ケーブルの外周を囲むように設けられ、碍管の上端と反対側の下端における開口を塞ぐ下側金具と、を備え、電力ケーブルを除く碍管の内部には、絶縁油および絶縁ガスの両方が充填されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体を有する電力ケーブルと、
鉛直方向に沿って立設され、前記電力ケーブルが挿入された碍管と、
前記碍管の軸方向の上端における開口を塞ぎ、前記導体が固定される上側金具と、
前記電力ケーブルの外周を囲むように設けられ、前記碍管の前記上端と反対側の下端における開口を塞ぐ下側金具と、
を備え、
前記電力ケーブルを除く前記碍管の内部には、絶縁油および絶縁ガスの両方が充填されている
ケーブル終端接続構造。
【請求項2】
前記碍管内で前記電力ケーブルの外周を囲むように設けられ、前記電力ケーブルの周囲の電界を緩和する絶縁筒を備え、
前記絶縁油は、前記碍管内に前記絶縁筒の軸方向の下端よりも鉛直下側に充填されている
請求項1に記載のケーブル終端接続構造。
【請求項3】
前記上側金具と前記碍管の前記上端との間の間隙を封止するOリングを備え、
前記碍管は、前記Oリングの開口中心側に接するように、前記絶縁油を保持可能に構成されている
請求項1又は請求項2に記載のケーブル終端接続構造。
【請求項4】
前記絶縁油および前記絶縁ガスは、大気圧よりも高い圧力で前記碍管内に充填されている
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のケーブル終端接続構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブル終端接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電力ケーブルと架空送電線等とを接続するために、ケーブル終端接続構造(気中終端接続部、気中終端接続箱)が設けられる。ケーブル終端接続構造は、電力ケーブルが挿入される碍管を有している。電力ケーブルを除く碍管内には、絶縁媒体が充填される(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、ケーブル終端接続構造における密封性の不具合を容易に検知することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、
導体を有する電力ケーブルと、
鉛直方向に沿って立設され、前記電力ケーブルが挿入された碍管と、
前記碍管の軸方向の上端における開口を塞ぎ、前記導体が固定される上側金具と、
前記電力ケーブルの外周を囲むように設けられ、前記碍管の前記上端と反対側の下端における開口を塞ぐ下側金具と、
を備え、
前記電力ケーブルを除く前記碍管の内部には、絶縁油および絶縁ガスの両方が充填されている
ケーブル終端接続構造が提供される。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、ケーブル終端接続構造における密封性の不具合を容易に検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、本開示の第1実施形態に係るケーブル終端接続構造を示す概略断面図である。
【
図2】
図2は、本開示の第2実施形態に係るケーブル終端接続構造の一部を拡大した概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[本開示の実施形態の説明]
<発明者等の得た知見>
まず、発明者等の得た知見について説明する。
【0009】
ケーブル終端接続構造の碍管内に充填される絶縁媒体として、例えば、絶縁ガスが用いられることがある。絶縁ガスは軽量であるため、ケーブル終端接続構造を据え付ける架台をコンパクトにすることができる利点がある。
【0010】
この場合、絶縁ガスは、碍管内に加圧状態で充填される。当該ケーブル終端接続構造において、碍管と周辺部材との間に間隙が生じ、密封性が低下すると、絶縁ガスが漏洩する。絶縁ガスが漏洩すると、碍管内の絶縁ガスの圧力が低下する。その結果、碍管内の絶縁性が低下するおそれがある。
【0011】
このため、従来では、碍管内の絶縁ガスの圧力を圧力計により計測することで、ケーブル終端接続構造における密封性の不具合を検知していた。すなわち、圧力計により計測される絶縁ガスの圧力が低下したときに、ケーブル終端接続構造に密封性の不具合が生じていたものと判断していた。
【0012】
しかしながら、圧力計による密封性の管理では、温度が変化した場合に、以下のような課題が生じる可能性があった。
【0013】
例えば、温度が低下している場合には、温度の低下に起因して碍管内の絶縁ガスの圧力が低下する。このため、実際には、密封性の不具合が生じていなくても、圧力計が計測した圧力の低下に基づいて、密封性の不具合が生じたものと誤認してしまう可能性があった。これとは反対に、密封性の不具合が生じていたとしても、絶縁ガスの圧力の低下が、温度の低下によるものであると誤認してしまう可能性もあった。
【0014】
一方で、例えば、温度が上昇している場合には、温度の上昇に起因して碍管内の絶縁ガスの圧力が上昇する。しかし、密封性の不具合が生じていたとしても、絶縁ガスの圧力が低下していない場合には、絶縁ガスは漏れていないと誤認してしまう可能性があった。
【0015】
上述のように、圧力計による密封性の管理では、温度変化の影響に起因して、密封性の不具合を正確に検知することが困難であった。特に、密封性の不具合が生じた初期段階の検知が困難となっていた。
【0016】
本発明は、本発明者等が見出した上記知見に基づくものである。
【0017】
<本開示の実施態様>
次に、本開示の実施態様を列記して説明する。
【0018】
[1]本開示の一態様に係るケーブル終端接続構造は、
導体を有する電力ケーブルと、
鉛直方向に沿って立設され、前記電力ケーブルが挿入された碍管と、
前記碍管の軸方向の上端における開口を塞ぎ、前記導体が固定される上側金具と、
前記電力ケーブルの外周を囲むように設けられ、前記碍管の前記上端と反対側の下端における開口を塞ぐ下側金具と、
を備え、
前記電力ケーブルを除く前記碍管の内部には、絶縁油および絶縁ガスの両方が充填されている。
この構成によれば、ケーブル終端接続構造における密封性の不具合を容易に検知することができる。
【0019】
[2]上記[1]に記載のケーブル終端接続構造において、
前記碍管内で前記電力ケーブルの外周を囲むように設けられ、前記電力ケーブルの周囲の電界を緩和する絶縁筒を備え、
前記絶縁油は、前記碍管内に前記絶縁筒の軸方向の下端よりも鉛直下側に充填されている。
この構成によれば、電力ケーブルが直流に適用される場合に、電界の集中を抑制することができる。
【0020】
[3]上記[1]又は[2]に記載のケーブル終端接続構造において、
前記上側金具と前記碍管の前記上端との間の間隙を封止するOリングを備え、
前記碍管は、前記Oリングの開口中心側に接するように、前記絶縁油を保持可能に構成されている。
この構成によれば、ケーブル終端接続構造の鉛直上側における密封性の不具合を早く検知することができる。
【0021】
[4]上記[1]から[3]のいずれか1つに記載のケーブル終端接続構造において、
前記絶縁油および前記絶縁ガスは、大気圧よりも高い圧力で前記碍管内に充填されている。
この構成によれば、絶縁性を確保することができる。
【0022】
[本開示の実施形態の詳細]
次に、本開示の実施形態を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0023】
<本発明の第1実施形態>
(1)ケーブル終端接続構造
本実施形態に係るケーブル終端接続構造10について、
図1を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係るケーブル終端接続構造を示す概略断面図である。
図1において、電力ケーブル100は、断面ではなく側面が示されている。また、
図1の断面の一部のハッチングを省略している。
【0024】
以下の説明において、電力ケーブル100の「軸方向」とは、電力ケーブル100の中心軸の方向のことをいい、「長手方向」と言い換えることができる。また、電力ケーブル100の「径方向」とは、電力ケーブル100の中心軸から外周に向かう方向のことをいい、場合によっては「短手方向」と言い換えることができる。また、電力ケーブル100の「周方向」とは、電力ケーブル100の外周または内周に沿った方向のことをいう。
【0025】
なお、筒状の碍管200などについても、電力ケーブル100と同様の用語を用いることができる。
【0026】
図1に示すように、本実施形態のケーブル終端接続構造(気中終端接続部、気中終端接続箱、EB-A)10は、電力ケーブル100と架空送電線(不図示)等とを接続するよう構成されている。具体的には、ケーブル終端接続構造10は、例えば、電力ケーブル100と、碍管200と、上側金具320と、下側金具510と、を備えている。
【0027】
[電力ケーブル]
図1に示すように、電力ケーブル100は、高電圧の送電ケーブルである固体絶縁ケーブルとして構成されている。電力ケーブル100としては、例えば、CVケーブル(Crosslinked polyethylene insulated PVC sheathed cable、XLPEケーブルともいう)などが挙げられる。
【0028】
電力ケーブル100は、例えば、導体(ケーブル導体)110、ケーブル内部半導電層(不図示)、ケーブル絶縁層130、ケーブル外部半導電層140、ケーブル遮蔽層(ケーブル金属層、不図示)、およびケーブルシース160を、導体110の中心軸側から外周側に向けてこの順で有している。
【0029】
電力ケーブル100は、導体110の軸方向の先端から反対側に向けて段階的に剥がされている(いわゆる“段剥ぎ”されている)。すなわち、導体110、ケーブル内部半導電層、ケーブル絶縁層130、ケーブル外部半導電層140、ケーブル金属管、およびケーブルシース160は、導体110の先端側から反対側に向けてこの順で露出している。
【0030】
[電力ケーブル付属部材]
段階的に剥がされた電力ケーブル100には、例えば、導体引出棒310と、絶縁筒(ストレスリリーフコーン、プレモールド絶縁体、絶縁ゴムブロック)400と、金属筒(油止金具)600と、が装着されている。電力ケーブル100は、ケーブル終端接続構造10において、鉛直方向に沿って立ち上げられた状態で固定される。
【0031】
(導体引出棒)
導体引出棒310は、先端に架空送電線等が接続されるよう構成されている。導体引出棒310の先端と反対の基端側には、露出した導体110の先端が圧縮接続されている。導体引出棒310と導体110の先端との接続部の周囲には、シール部(符号不図示)が設けられている。
【0032】
(絶縁筒)
絶縁筒400は、碍管200内で電力ケーブル100の外周を囲むように設けられ、段階的に剥がされた電力ケーブル100の周囲の電界を緩和するよう構成されている。
【0033】
具体的には、絶縁筒400は、例えば、絶縁体420と、半導電層440と、を有している。これらは、一体として筒状にモールド成形されている。絶縁体420は、例えば、絶縁性ゴムからなっている。一方、半導電層440は、例えば、半導電性ゴムからなっている。また、半導電層440は、テーパ形状を有しており、絶縁筒400の軸方向の下端側から上端に向かう方向に拡径するように設けられている(いわゆるストレスコーンを形成している)。
【0034】
ケーブル終端接続構造10では、絶縁筒400は、碍管200内に配置される。絶縁体420は、露出したケーブル絶縁層130の外周面と接し、半導電層440は、露出したケーブル外部半導電層140の外周面と接するよう配置される。このような構成により、露出したケーブル外部半導電層140の周辺において、拡径した半導電層440により等電位線を均等に分布させ、電界集中を抑制することができる。
【0035】
(金属筒)
金属筒600は、絶縁筒400よりも鉛直下側において、電力ケーブル100の外周を囲むように設けられている。金属筒600は、下側シール部620および上側シール部640のそれぞれによって、ケーブル外部半導電層140と当該金属筒600自身との間の間隙が封止された状態で、ケーブル外部半導電層140に固定されている。
【0036】
[碍管]
碍管200は、電力ケーブル100の外周を囲むように設けられ、段階的に剥がされた電力ケーブル100の周辺の絶縁性を確保するよう筒状に構成されている。碍管200は、例えば、磁器またはポリマにより構成されている。
【0037】
碍管200は、鉛直方向に沿って立設され、架台(不図示)等に固定されている。碍管200内には、導体引出棒310の一部と、段階的に剥がされた電力ケーブル100と、絶縁筒400と、金属筒600の一部とが挿入されている。電力ケーブル100は、碍管200の中心軸に沿って直線状に配置されている。
【0038】
また、碍管200は、径方向に拡径した複数の鍔部(ひだ部)210を有している。複数の鍔部210は、碍管200の軸方向に所定の間隔で配置されている。これにより、導体引出棒310とアースとの間の絶縁距離(沿面距離)が確保されている。
【0039】
本実施形態では、電力ケーブル100を除く碍管200内には、絶縁媒体20として、絶縁油24および絶縁ガス22の両方が充填されている。この点については、後述する。
【0040】
[上側金具]
上側金具320は、例えば、円盤状に構成され、碍管200の軸方向の上端における開口を塞ぐよう構成されている。上側金具320は、例えば、Oリングを介して、碍管200の軸方向の上端に接している。当該Oリングにより、上側金具320と碍管200の上端との間の間隙が封止されている。
【0041】
また、上側金具320は、導体110が固定されるよう構成されている。具体的には、上側金具320は、例えば、中心に挿通孔(符号不図示)を有し、当該挿通孔内には、導体引出棒310が挿通されている。導体引出棒310は、所定の治具により、上側金具320に固定されている。このような構成により、上側金具320には、導体引出棒310を介して導体110が固定されている。
【0042】
[上側金具付属部材]
上側金具320の上側には、例えば、上部カバー330が設けられている。これにより、雨水が上側金具320と導体引出棒310との接続部を介して碍管200内に浸入することが抑制されている。
【0043】
[下側金具]
下側金具510は、例えば、円盤状に構成され、碍管200の軸方向の下端における開口を塞ぐよう構成されている。下側金具510は、上側金具320と同様に、例えば、Oリング(不図示)を介して、碍管200の軸方向の下端に接している。当該Oリングにより、下側金具510と碍管200の下端との間の間隙が封止されている。
【0044】
また、下側金具510は、例えば、電力ケーブル100の外周を囲むように設けられている。具体的には、下側金具510は、例えば、中心に挿通孔(符号不図示)を有し、当該挿通孔内には、金属筒600が外嵌された電力ケーブル100が挿通されている。下側金具510の挿通孔の内周面には、Oリング(不図示)が設けられている。当該Oリングにより、下側金具510と金属筒600との間の間隙が封止されている。
【0045】
このような構成により、下側金具510は、電力ケーブル100と自身との間の間隙が封止された状態を維持しながら、電力ケーブル100の軸方向の伸縮を許容するように構成されている。
【0046】
[下側金具付属部材]
下側金具510の下側には、例えば、防護管560が設けられている。防護管560は、露出したケーブル外部半導電層140の下部などを保護するよう構成されている。
【0047】
(2)絶縁媒体
電力ケーブル100を除く碍管200内には、上述のように、絶縁媒体20が充填されている。なお、ここでいう「電力ケーブル100を除く碍管200内」とは、碍管200内のうち、碍管200の内周面と、電力ケーブル100、絶縁筒400および金属筒600のそれぞれとの間の領域をいう。
【0048】
本実施形態では、碍管200内には、絶縁媒体20として、例えば、絶縁油24および絶縁ガス22の両方が充填されている。絶縁油24としては、例えば、シリコーンオイルなどが挙げられる。絶縁ガス22は、例えば、大気よりも絶縁性が高いガスである。絶縁ガス22としては、例えば、六フッ化硫黄(SF6)ガスである。このような構成により、ケーブル終端接続構造10において、漏出した絶縁油24を目視で確認することができ、密封性の不具合を早く検知することができる。
【0049】
なお、絶縁油24としてのシリコーンオイルは透明であるが、シリコーンオイルが碍管200から漏出した場合には、金属部材の表面におけるシリコーンオイルに干渉縞が生じ、すなわち、シリコーンオイルの漏出部が虹色を有することとなる。これにより、シリコーンオイルの漏出部が視認可能となる。
【0050】
また、本実施形態では、絶縁油24は、例えば、碍管200の鉛直下側における下側金具510上に貯留されている。これにより、例えば、碍管200と下側金具510との間、下側金具510と金属筒600との間のうち少なくともいずれかに、間隙が生じた場合に、当該間隙から絶縁油24が漏出することで、密封性の不具合を早く検知することができる。
【0051】
さらに、本実施形態では、絶縁油24は、例えば、碍管200内に絶縁筒400の軸方向の下端よりも鉛直下側に充填されている。つまり、本実施形態のケーブル終端接続構造10において、主絶縁は、絶縁ガス22となる。これにより、電力ケーブル100が直流に適用される場合に、電界の集中を抑制することができる。
【0052】
また、本実施形態では、絶縁ガス22は、加圧されている。すなわち、絶縁油24および絶縁ガス22は、例えば、大気圧よりも高い圧力で碍管200内に充填されている。具体的には、碍管200内の絶縁油24および絶縁ガス22のゲージ圧は、例えば、0.005MPa以上0.6MP以下である。なお、ここでいう「ゲージ圧」とは、大気圧を基準とした圧力であり、単位を「MPa・G」と記載することもある。このような圧力とすることにより、絶縁性を確保することができる。
【0053】
(3)ケーブル終端接続構造の製造方法(ケーブル終端接続方法)
次に、本実施形態に係るケーブル終端接続構造の製造方法について説明する。
【0054】
(S1:準備工程)
まず、本実施形態のケーブル終端接続構造10を取り付けるための架台を設置する。
【0055】
次に、終端接続する電力ケーブル100を準備する。該電力ケーブル100を架台から鉛直方向に沿って立設させる。具体的には、架台の周りを囲むように足場を組む。足場を組んだら、電力ケーブル100を鉛直方向に沿って立ち上げる。このとき、足場の支柱間に単管パイプ等で渡りを作り、該渡りに対して電力ケーブル100を固定し、この状態を維持させる。
【0056】
次に、防護管560を電力ケーブル100に通し、鉛直下側に逃がしておく。
【0057】
次に、電力ケーブル100を導体110の先端から軸方向に段階的に剥がし、導体110、ケーブル絶縁層130およびケーブル外部半導電層140をこの順で露出させる。
【0058】
電力ケーブル100を段階的に剥がしたら、電力ケーブル100の外周に金属筒600を外嵌させ、金属筒600を露出したケーブル外部半導電層140の基端付近に配置する。電力ケーブル100の外周に金属筒600を外嵌させたら、金属筒600の軸方向の下端に下側シール部620を形成する。これにより、電力ケーブル100と金属筒600との間を封止するとともに、電力ケーブル100に対して金属筒600を固定する。
【0059】
(S2:下側金具配置工程)
次に、電力ケーブル100の外周を囲むように、下側金具510を配置する。具体的には、下側金具510の挿通孔の内周面にOリングを配置し、当該下側金具510の挿通孔内に、金属筒600が外嵌された電力ケーブル100を挿通させる。
【0060】
下側金具510の取り付けが完了したら、予め電力ケーブル100に通しておいた防護管560を、ボルトによって下側金具510に固定する。なお、ここでの防護管560の固定等は、金属筒600および下側金具510の取り付け以降であれば、どのタイミングで実施してもよい。
【0061】
(S3:絶縁筒配置工程)
電力ケーブル100に金属筒600および下側金具510を装着したら、電力ケーブル100の外周に絶縁筒400を外嵌させ、絶縁筒400をケーブル外部半導電層140の先端付近に配置する。
【0062】
絶縁筒400を配置したら、金属筒600の軸方向の上端と絶縁筒400との間に上側シール部640を追加する。
【0063】
(S4:導体引出棒接続工程)
さらに、導体110の軸方向の先端を導体引出棒310の基端側に圧縮接続する。
【0064】
(S5:碍管内挿入工程)
次に、碍管200内に電力ケーブルを挿入し、碍管200を鉛直方向に沿って立設させる。
【0065】
碍管200を立設したら、碍管200の軸方向の下端における開口を下側金具510により塞ぐ。具体的には、碍管200の軸方向の下端に下側金具510をボルトなどによって固定する。これにより、碍管200の下端における開口が下側封止部50によって封止され、碍管200が架台に固定される。
【0066】
(S6:上側金具配置工程)
碍管内挿入工程S5が完了したら、導体110を上側金具320に固定し、碍管200の下端と反対側の上端における開口を上側金具320により塞ぐ。
【0067】
(S7:絶縁媒体充填工程)
次に、本実施形態では、電力ケーブル100を除く碍管200の内部に、絶縁媒体20として、絶縁油24および絶縁ガス22の両方を充填する。
【0068】
具体的には、例えば、以下の手順で、碍管200内に絶縁媒体20を充填する。
【0069】
まず、碍管200の鉛直上側から碍管200内を真空引きする。
【0070】
碍管200の鉛直下側から、碍管200内に絶縁媒体20としての絶縁油24を一定量充填する。このとき、碍管200内の全体に絶縁油24を充填せず、絶縁油24を、碍管200内に絶縁筒400の軸方向の下端よりも鉛直下側に充填する。なお、碍管200の鉛直上側から絶縁油24を充填してもよい。
【0071】
碍管200内が充分に排気されたら、碍管200の鉛直上側から、碍管200内に絶縁媒体20としての絶縁ガス22を、大気圧よりも高い所定圧力となるまで注入する。
【0072】
絶縁油24および絶縁ガス22の圧力が所定圧力となったら、絶縁ガス22の注入を停止する。
【0073】
絶縁ガス22の注入が終了したら、上側金具320の上側に上部カバー330を取り付ける。
【0074】
以上により、本実施形態のケーブル終端接続構造10が製造される。
【0075】
(4)本実施形態に係る効果
本実施形態によれば、以下に示す1つ又は複数の効果を奏する。
【0076】
(a)本実施形態では、電力ケーブル100を除く碍管200の内部には、絶縁油24および絶縁ガス22の両方が充填されている。このような構成により、ケーブル終端接続構造10において、密封性の不具合が生じた場合に、絶縁ガス22が碍管200から漏れる前に絶縁油24が漏れることで、漏出した絶縁油24を目視で確認することができる。その結果、ケーブル終端接続構造10における密封性の不具合を容易に検知することができる。
【0077】
(b)本実施形態では、上述の構成を有することで、ケーブル終端接続構造10において、密封性の不具合が生じた場合に、絶縁ガス22が碍管200から漏れる前に、粘性の高い絶縁油24をゆっくり漏出させることができる。言い換えれば、主絶縁となる絶縁ガス22が、碍管200から即座に漏出することを抑制することができる。これにより、万一、ケーブル終端接続構造10の密封性の不具合が生じたとしても、碍管200内の絶縁性能に影響するまでの時間を延ばすことができる。
【0078】
上述したように絶縁油24をゆっくり漏出させることで、絶縁油24が漏出している間に、漏出した絶縁油24を容易に目視で確認することができる。すなわち、絶縁油24の漏出検知時間を充分に確保することができる。
【0079】
これらの結果、ケーブル終端接続構造10の絶縁性能を安定的に維持することが可能となる。
【0080】
(c)本実施形態では、絶縁油24は、碍管200内に絶縁筒400の軸方向の下端よりも鉛直下側に充填されている。これにより、電力ケーブル100が直流に適用される場合に、電界の集中を抑制することができる。
【0081】
ここで、絶縁ガス22の絶縁抵抗は、絶縁油24の絶縁抵抗よりも高い(例えば、10倍以上の差がある)。絶縁抵抗が高い絶縁ガス22のほうが、絶縁油24よりも電界を引き寄せる(等電位線が密になる)傾向がある。
【0082】
このため、電力ケーブル100が直流に適用される場合に、絶縁油24が、碍管200内に絶縁筒400の軸方向の下端よりも鉛直上方まで充填されていると、絶縁筒400の軸方向の下端よりも鉛直上方で、電界が集中してしまう。その結果、絶縁筒400の電界緩和効果が得られなくなる可能性がある。
【0083】
これに対し、本実施形態では、絶縁油24が、碍管200内に絶縁筒400の軸方向の下端よりも鉛直下側に充填されている。すなわち、碍管200内において、絶縁性が必要とされる絶縁筒400が配置された部分には、主絶縁としての絶縁ガス22が充填され、絶縁性が必要とされない底部分には、抵抗が低い絶縁油24が充填されている。
【0084】
これにより、電界を引き寄せ易い絶縁ガス22を、絶縁筒400の全体を覆うように配置することができる。言い換えれば、絶縁抵抗が互いに異なる絶縁筒400、絶縁ガス22および絶縁油24の3つが重なる点(3重点)が絶縁筒400の周囲に形成されることを抑制することができる。このような配置により、電力ケーブル100が直流に適用される場合に、絶縁筒400周辺における電界の集中を抑制することが可能となる。
【0085】
(d)本実施形態では、絶縁油24および絶縁ガス22は、大気圧よりも高い圧力で碍管200内に充填されている。これにより、絶縁性を確保することができる。
【0086】
ここで、従来のケーブル終端接続構造では、碍管内に絶縁油が充填される場合に、碍管の鉛直上側の一部に、大気を含む気体層が設けられることがあった。これにより、絶縁油の膨張や収縮による圧力変化を気体層により吸収させていた。しかしながら、従来構造での気体層には、上述の圧力緩衝層としての役割を担うため、絶縁ガスが加圧されることはなく、気体層を構成するガスが主絶縁となることはなかった。
【0087】
これに対し、本実施形態では、碍管200内の絶縁油24の上方に、大気よりも絶縁性が高い絶縁ガス22が充填され、当該絶縁ガス22が加圧されている。これにより、加圧された主絶縁としての絶縁ガス22により、ケーブル終端接続構造10の絶縁性を充分に確保することが可能となる。
【0088】
<本発明の第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。以下、上述の実施形態と異なる要素についてのみ説明し、上述の実施形態で説明した要素と実質的に同一の要素には、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0089】
上述の第1実施形態では、ケーブル終端接続構造10の鉛直下側における密封性の不具合を検知する構成について説明したが、本開示はこの場合に限られない。以下の本実施形態のように、ケーブル終端接続構造10の鉛直上側における密封性の不具合を検知する構成を採用してもよい。
【0090】
図2を参照し、本実施形態のケーブル終端接続構造10について説明する。
図2は、本実施形態に係るケーブル終端接続構造の一部を拡大した概略断面図である。
【0091】
図2に示すように、本実施形態の碍管200は、例えば、Oリング220の開口中心側に接するように、絶縁油24を保持可能に構成されている。
【0092】
具体的には、碍管200は、例えば、Oリング溝260と、油貯留溝280と、を有している。
【0093】
Oリング溝260は、例えば、碍管200の上端において碍管200の周方向に沿って設けられている。Oリング溝260には、Oリング220が嵌合している。当該Oリング220の一部は、Oリング溝260から突出し、上側金具320の下面に当接している。これにより、Oリング220は、上側金具320と碍管200の上端との間の間隙を封止するように構成されている。
【0094】
油貯留溝280は、例えば、碍管200の上端においてOリング溝260よりも碍管200の中心軸側に設けられ、碍管200の周方向に沿って設けられている。油貯留溝280は、例えば、絶縁油24を貯留可能に構成されている。油貯留溝280内に貯留された絶縁油24は、例えば、Oリング220の開口中心側に接している。
【0095】
なお、碍管200の中空部内には、絶縁ガス22が充填されている。
【0096】
[本実施形態の効果]
(a)本実施形態では、碍管200は、Oリング220の開口中心側に接するように、絶縁油24を保持可能に構成されている。これにより、例えば、碍管200と上側金具320との間に間隙が生じた場合に、当該間隙から絶縁ガス22が漏れる前に絶縁油24が漏れることで、漏出した絶縁油24を目視で確認することができる。その結果、ケーブル終端接続構造10の鉛直上側における密封性の不具合を容易に検知することができる。
【0097】
(b)本実施形態では、上述の構成を有することで、ケーブル終端接続構造10の鉛直上側において、密封性の不具合が生じた場合に、絶縁ガス22が碍管200から漏れる前に、粘性の高い絶縁油24をゆっくり漏出させることができる。これにより、万一、ケーブル終端接続構造10の鉛直上側における密封性の不具合が生じたとしても、碍管200内の絶縁性能に影響するまでの時間を延ばすことができる。
【0098】
<本発明の他の実施形態>
以上、本発明の実施形態について具体的に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0099】
上述の実施形態では、電力ケーブル100が直流に適用される場合を一例として説明したが、電力ケーブル100は、交流に適用されるよう構成されていてもよい。
【0100】
上述の実施形態では、絶縁油24が透明である場合を一例として説明したが、本開示はこの場合に限られない。絶縁油24は、例えば、着色されていてもよい。これにより、碍管200から漏出した絶縁油24を、容易かつ確実に目視で確認することができる。
【0101】
上述の第1実施形態では、ケーブル終端接続構造10の鉛直下側における密封性の不具合を検知する構成について説明し、上述の第2実施形態では、ケーブル終端接続構造10の鉛直上側における密封性の不具合を検知する構成について説明した。第1および第2実施形態のうち少なくともいずれかの構成を有していれば、ケーブル終端接続構造10の鉛直下側および鉛直上側の少なくともいずれか一方における密封性の不具合を検知することができる。
【0102】
一方で、例えば、第1および第2実施形態の両方の構成を有していてもよい。これにより、ケーブル終端接続構造10の鉛直下側および鉛直上側の両方における密封性の不具合を検知することができる。
【0103】
上述の第2実施形態では、碍管200自体が油貯留溝280を有する場合について説明したが、碍管200は、例えば、複数の部材により構成されていてもよい。具体的には、碍管200は、例えば、筒状の碍管本体と、碍管本体の上部と上側金具とを接続するフランジと、を有し、フランジが油貯留溝を有していてもよい。
【0104】
<本発明の好ましい態様>
以下、本発明の好ましい態様を付記する。
【0105】
(付記1)
導体を有する電力ケーブルと、
鉛直方向に沿って立設され、前記電力ケーブルが挿入された碍管と、
前記碍管の軸方向の上端における開口を塞ぎ、前記導体が固定される上側金具と、
前記電力ケーブルの外周を囲むように設けられ、前記碍管の前記上端と反対側の下端における開口を塞ぐ下側金具と、
を備え、
前記電力ケーブルを除く前記碍管の内部には、絶縁油および絶縁ガスの両方が充填されている
ケーブル終端接続構造。
【0106】
(付記2)
前記碍管内で前記電力ケーブルの外周を囲むように設けられ、前記電力ケーブルの周囲の電界を緩和する絶縁筒を備え、
前記絶縁油は、前記碍管内に前記絶縁筒の軸方向の下端よりも鉛直下側に充填されている
付記1に記載のケーブル終端接続構造。
【0107】
(付記3)
前記上側金具と前記碍管の前記上端との間の間隙を封止するOリングを備え、
前記碍管は、前記Oリングの開口中心側に接するように、前記絶縁油を保持可能に構成されている
付記1又は付記2に記載のケーブル終端接続構造。
【0108】
(付記4)
前記絶縁油および前記絶縁ガスは、大気圧よりも高い圧力で前記碍管内に充填されている
付記1から付記3のいずれか1つに記載のケーブル終端接続構造。
【0109】
(付記5)
導体を有する電力ケーブルを準備する工程と、
前記電力ケーブルの外周を囲むように下側金具を配置する工程と、
碍管内に前記電力ケーブルを挿入し、前記碍管を鉛直方向に沿って立設させ、前記碍管の軸方向の下端における開口を前記下側金具により塞ぐ工程と、
前記導体を上側金具に固定し、前記碍管の前記下端と反対側の上端における開口を前記上側金具により塞ぐ工程と、
前記電力ケーブルを除く前記碍管の内部に、絶縁油および絶縁ガスの両方を充填する工程と、
を備える
ケーブル終端接続構造の製造方法。
【符号の説明】
【0110】
10 ケーブル終端接続構造
20 絶縁媒体
22 絶縁ガス
24 絶縁油
50 下側封止部
100 電力ケーブル
110 導体
130 ケーブル絶縁層
140 ケーブル外部半導電層
160 ケーブルシース
200 碍管
210 鍔部
220 Oリング
260 Oリング溝
280 油貯留溝
310 導体引出棒
320 上側金具
330 上部カバー
400 絶縁筒
420 絶縁体
440 半導電層
510 下側金具
560 防護管
600 金属筒
620 下側シール部
640 上側シール部