(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170695
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】卓上仏りん
(51)【国際特許分類】
A47G 33/00 20060101AFI20241204BHJP
G10K 1/06 20060101ALI20241204BHJP
【FI】
A47G33/00 L
G10K1/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087363
(22)【出願日】2023-05-29
(71)【出願人】
【識別番号】392031790
【氏名又は名称】株式会社小泉製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100114074
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 嘉一
(74)【代理人】
【識別番号】100222324
【弁理士】
【氏名又は名称】西野 千明
(72)【発明者】
【氏名】小泉 俊博
(57)【要約】
【課題】音の響きに特徴がある卓上型の仏りんの提供を目的とする。
【解決手段】開口部を有する小型の仏りんであって、耐熱ガラス製であることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有する小型の仏りんであって、耐熱ガラス製であることを特徴とする仏りん。
【請求項2】
前記小型の仏りんは外径が30~70mmで高さが10~60mmの小型であることを特徴とする請求項1記載の仏りん。
【請求項3】
前記耐熱ガラスはシリカガラス(石英ガラス)であることを特徴とする請求項2記載の仏りん。
【請求項4】
上部が開口した略お椀型又は略コップ型であり、開口部がリング状に光ることを特徴とする請求項3記載の仏りん。
【請求項5】
底部に当該仏りんの振動を誘導するサポート部材を有することを特徴とする請求項4記載の仏りん。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仏具の1つとして葬祭用具等に用いられる仏りんに関し、特に小型のガラス製である仏りんに係る。
【背景技術】
【0002】
仏りんは、葬儀や法事等を行う際に、りん棒で打ち鳴らして使用する仏具の1つである。
従来は、銅や鉄等の金属製であったが、近年は小型の仏りんに対するニーズが増し、小型でありながら特徴のある音色が要求されるようになってきている。
【0003】
例えばチベット仏教等において、クリスタルガラスからなるクリスタルシンギングボウルが使用されているようであるが、これらは外径が150mm以上を有する中型,大型の形状からなる。
その理由は、小型にすると音が小さく、仏りんとして使用できないからである。
しかし、近年は家庭に設置される仏壇が小さくなり、それに合せて壇上に設置する仏りんの大きさも他の仏具と同様に小型化が要求されている。
クリスタルガラスは珪砂,カリウム,ソーダ等のガラス主成分に酸化鉛を添加した鉛ガラスであり、ソーダガラスに比べて透明度と屈折率が高く、輝く透明なガラスとの意味で一般的にクリスタルと称されている。
このクリスタルガラスは、ソーダガラスよりも溶解温度が低く、成形が容易になる特徴があるものの、軟化温度が700℃以下と耐熱性に劣り、線膨張率が8.5~9.0×10-6/K(常温~350℃)と音の響きが弱く、小型化すると仏りんにならない。
これに対して、SiO2の純度が高く、石英ガラス等とも称されるシリカガラスは耐熱性に優れ、線熱膨張率が4.7~6.9×10-7/K(30~600℃)とクリスタルガラスよりも小さく、音の響きが良くなることが推定される。
不純物が10~100ppm以下のSiO2のみからなるシリカガラスは、これまで光ファイバーや光学ガラスとして使用されているが、仏りんに利用された例はない。
【0004】
例えば、特許文献1には透明なガラスで構成される風鈴を開示するが、音が鳴るものではあっても、仏りんではなく、光を通すのが目的となっていることから、一般的なガラスである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、音の響きに特徴がある卓上型の仏りんの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る仏りんは、開口部を有する小型の仏りんであって、耐熱ガラス製であることを特徴とする。
ここで、小型の仏りんは外径が30~70mmで高さが10~60mmの小型であるのが好ましい。
【0008】
ここで、耐熱ガラスとは二酸化ケイ素のみからなり、不純物が100ppm以下と非常に純度の高いガラスである。
軟化点は1000℃を大きく超え、曲げ強度が低下し始める耐熱温度は800~1000℃であり、熱膨張率が4.7~6.9×10-7/K(30~600℃)と小さく、耐衝撃性に優れることから、クリスタルガラスよりも音の響きがよい。
ここで、耐熱ガラスは、シリカガラス(石英ガラス)が好ましい。
このようなガラスは、光ファイバー用材料にも使用され、光の透過率が高く、仏りんに使用すると、仏りんの開口部の一の端部から入射された光は他の端部に伝達されるので、開口部端部がリング状に光る現象が現れる。
【0009】
よって、本発明に係る仏りんは、クリスタルガラスよりも耐熱性が優れ、音の響きもよい。
【0010】
本発明において、仏りんの形状に特に制限はないが、例えば上部が開口した略お椀型又は略コップ型であってもよい。
また、底部に当該仏りんの振動を誘導するサポート部材を有していてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る仏りんは、小型であって透明であることから、小型の仏壇等に合せて小さいスペースに納まる。
仏壇には、ろうそく立て,花立て,香炉等の他の仏具も置かれている。
本発明に係る仏りんは、透明であることから、周囲の仏具が仏りんを透過して見えたり、ろうそくの炎の揺れが仏りんにて屈折し、厳かな雰囲気を醸し出したり、周囲の仏具を照らし出す効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】(a)~(d)に他の仏りんの形状例を示す。
【
図3】(a)~(d)に他の仏りんの形状例を示す。
【
図4】(a)~(d)に他の仏りんの形状例を示す。
【
図5】(a)~(d)に他の仏りんの形状例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る仏りんは、二酸化ケイ素のみを成分とする純度の高いシリカガラス(石英ガラス)で構成され、
図1~
図5にそれぞれ仏りんの形状例を示す。
代表して
図1(a)に基づいて説明すると、本発明に係る仏りん10は、上部に開口部11を有する器形状である。
中心軸Oを中心にした回転体であり、正面図のみ示す。
外径(外形)は30~70mm,高さ10~60mmの範囲の卓上型の仏りんである。
外壁13と内壁14との間の厚みTは、1~5mmとなっている。
底部12は、
図1(a),(b)に示すように平坦部を有していてもよく、
図1(c),(d)に示すように緩やかな凸面になっていて、揺動可能であってもよい。
この際に、
図1(b),(d)に示すようにサポート部材20,21を仏りん本体の底部に設けると、りん棒で打ち鳴らす際に仏りん本体の揺動が誘導され、大きく長い響きとなる。
材質としては、柔らかい小さな布,樹脂,ゴム等であってよい。
【0014】
形状としては、
図1(a)等のお椀型、
図1(b),
図5(a)等のコップ型、
図2(b),
図3(c),
図5(b)等に示したグラス型、
図1(c),
図2(c),
図4(b),(c)等に示した食器のボール型、
図5(c)に示した皿形等が例として挙げられる。
【0015】
本発明に係る仏りんは、例えば
図6に示したりん棒の上部,つまみ部を指で摘まみ、軽く仏りんの側壁を打つことで音が鳴る。
図1(a)に示す形状の仏りんを、鉛ガラスと本発明のシリカガラスとでそれぞれ製作し、
図6に示したりん棒で鳴らし比べをした。
モニター5人が仏りんの見えないように仕切り、両者の音を比較したところ、本発明に係る仏りんの音は、従来のガラスとは異なっていると5人とも回答した。
また、シリカガラスを用いたので、開口部11のリング状の端部が白っぽく発光する現象が現れる。
これは、開口部11の一の端部から入射した光が、仏りんの壁を通じて他の端部に伝達されることで、全体として白っぽく光るためである。
このことは、他の仏具と一緒に仏壇に本発明に係る仏りんを載置すると、ろうそく立てのろうそく等の灯りを受けて、仏りんの開口部が白く映し出され、厳かな雰囲気を醸し出す。
【符号の説明】
【0016】
10 仏りん
11 開口部
12 底部