(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024017073
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】虐待検知装置、虐待検知方法、及び、虐待検知プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/22 20240101AFI20240201BHJP
G06Q 50/10 20120101ALI20240201BHJP
【FI】
G06Q50/22
G06Q50/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022119469
(22)【出願日】2022-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【弁理士】
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100149618
【弁理士】
【氏名又は名称】北嶋 啓至
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 昇
(72)【発明者】
【氏名】江草 僚介
(72)【発明者】
【氏名】山下 敦史
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 有子
(72)【発明者】
【氏名】重 有香
(72)【発明者】
【氏名】前田 健太郎
【テーマコード(参考)】
5L049
5L099
【Fターム(参考)】
5L049CC11
5L099AA15
(57)【要約】
【課題】虐待の対象者に対して潜在的に行われている虐待を適切に検知する。
【解決手段】虐待検知装置40は、対象者の発育に関する特徴を表す発育特性情報411と、当該対象者の行動に関する特徴を表す行動特性情報412とを取得する取得部41と、発育特性情報411と行動特性情報412とが虐待が存在する可能性があるか否かを判定するための判定基準420を満たす場合、当該対象者に対する虐待が存在する可能性があると判定する判定部42と、判定部42による判定結果430を出力する出力部43と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象者の発育に関する特徴を表す発育特性情報と、前記対象者の行動に関する特徴を表す行動特性情報とを取得する取得手段と、
前記発育特性情報と前記行動特性情報とが虐待が存在する可能性があるか否かを判定するための判定基準を満たす場合、前記対象者に対する虐待が存在する可能性があると判定する判定手段と、
前記判定手段による判定結果を出力する出力手段と、
を備える虐待検知装置。
【請求項2】
前記判定基準は、前記発育特性情報が示す前記対象者の発育指標の値が、前記対象者と同年齢及び同性の人の前記発育指標の平均値から閾値以上低いこと、あるいは、前記対象者と同年齢及び同性の人の前記発育指標の分布において下位側の所定の割合の領域に含まれることを表す、
請求項1に記載の虐待検知装置。
【請求項3】
前記発育指標は、体重及び身長の少なくともいずれかを表す、
請求項2に記載の虐待検知装置。
【請求項4】
前記判定基準は、前記発育特性情報が、前記対象者の虫歯の本数が閾値以上であること、前記対象者の怪我の頻度が閾値以上であること、及び、前記対象者の傷跡の数が閾値以上であることの少なくともいずれかを含むことを表す、
請求項1または請求項2に記載の虐待検知装置。
【請求項5】
前記判定基準は、前記行動特性情報が、前記対象者が万引きをした経験があること、前記対象者が他人あるいは動物に対する虐待を行った経験があること、前記対象者が自傷行為を行った経験があること、前記対象者の服装が基準を満たさないこと、前記対象者が無料の予防接種を受けている回数が閾値以下であること、前記対象者が家庭において基準以上の大きさの声を出す頻度が閾値以上であることの少なくともいずれかを含むことを表す、
請求項1または請求項2に記載の虐待検知装置。
【請求項6】
前記判定基準は、前記対象者と前記対象者の兄弟姉妹との間において、前記発育特性情報及び前記行動特性情報に関する類似度が閾値以上であることを表す、
請求項1または請求項2に記載の虐待検知装置。
【請求項7】
過去における虐待の被害者に関する前記発育特性情報と前記行動特性情報とを用いて、前記発育特性情報及び前記行動特性情報と虐待が存在する可能性との関係を学習することによって、前記判定基準を生成あるいは更新する学習手段をさらに備える、
請求項1または請求項2に記載の虐待検知装置。
【請求項8】
前記発育特性情報及び前記行動特性情報によって示される前記対象者に対する虐待を解消するための対応策を提案する提案部をさらに備える、
請求項1または請求項2に記載の虐待検知装置。
【請求項9】
情報処理装置によって、
対象者の発育に関する特徴を表す発育特性情報と、前記対象者の行動に関する特徴を表す行動特性情報とを取得し、
前記発育特性情報と前記行動特性情報とが虐待が存在する可能性があるか否かを判定するための判定基準を満たす場合、前記対象者に対する虐待が存在する可能性があると判定し、
前記対象者に対する虐待が存在する可能性に関する判定結果を出力する、
虐待検知方法。
【請求項10】
対象者の発育に関する特徴を表す発育特性情報と、前記対象者の行動に関する特徴を表す行動特性情報とを取得する取得処理と、
前記発育特性情報と前記行動特性情報とが虐待が存在する可能性があるか否かを判定するための判定基準を満たす場合、前記対象者に対する虐待が存在する可能性があると判定する判定処理と、
前記判定処理による判定結果を出力する出力処理と、
をコンピュータに実行させるための虐待検知プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、虐待検知装置、虐待検知方法、及び、虐待検知プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
人々の健康を増進するために、対象者の行動履歴、生体情報、健康診断結果等から、例えば生活習慣病あるいは認知症などの対象者の健康に関する問題を検知して、検知した問題に対する対応策を提示する技術が期待されている。
【0003】
上述の技術に関連して、特許文献1には、人々の健康状態の兆候、健康を脅かす危険及び健康上の懸念がある状態の兆候を、家庭又は職場で観察する支援ロボットが開示されている。このロボットは、人々の危険な状況を回避する措置を取り、健康上の問題を診断し、援助の要請に応え、人々の医学的状態を定期的に処理又は分析する。このロボットは、人々のジェスチャ、衣服、感情、時刻、姿勢認識、動作認識及びその他の観察データを組み合わせて、人々の医学的状態、現在の活動及び今後意図される活動及び意思を理解する。
【0004】
また、特許文献2には、緊急事態であるか否かを高い信頼性で判断し、緊急事態の場合は自動的に緊急通報を行う端末装置が開示されている。この端末装置は、管理条件が保存された記憶部を備える。この端末装置は、第1のデータを出力する第1のセンサと、当該保存された管理条件を用いて、第1のデータを判定する。この端末装置は、当該第1のデータが当該管理条件に含まれる閾値の範囲外にある場合、その旨を通知すると共に、第2のセンサから取得した第2のデータを用いて所定の状態であるか否かを判定する。そして、この装置は、当該通知に応じて新たな管理条件を受信した場合は、当該保存された管理条件を、その新たな管理条件に更新する。
【0005】
また、特許文献3には、認知症患者の症状の特性を考慮して、単独での外出行動を安全かつ適切にサポートする認知症患者外出支援システムが開示されている。このシステムは、患者の外出行動において、遅延・逸脱により外出スケジュールへの復帰が不可能となった場合には、次善の変更スケジュールと帰宅用スケジュールとを再計算して患者に提示して、患者の選択によるナビゲーションを実行する。そして、このシステムは、パラメータテーブルに定義された認知症の症状を判定した場合に、所定のサポート音声を患者用端末から出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2021-525421号公報
【特許文献2】特開2015-111450号公報
【特許文献3】特開2021-060772号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以前から、例えば、家庭において子供に対して潜在的に行われている虐待が社会問題となっている。尚、虐待とは、子供に対する暴力に加えて、育児放棄(ネグレクト)なども含む。そして、人々の健康を増進することの取り組みにおいて、そのような子供などに対する潜在的な(即ち顕在化していない)虐待を検知することによって、虐待の対象者を虐待から守ることができる。即ち、虐待の対象者に対する潜在的な虐待を適切に検知することが課題である。特許文献1乃至3は、このような課題には特に言及していない。
【0008】
本発明の主たる目的は、虐待の対象者に対して潜在的に行われている虐待を適切に検知することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係る虐待検知装置は、対象者の発育に関する特徴を表す発育特性情報と、前記対象者の行動に関する特徴を表す行動特性情報とを取得する取得手段と、前記発育特性情報と前記行動特性情報とが虐待が存在する可能性があるか否かを判定するための判定基準を満たす場合、前記対象者に対する虐待が存在する可能性があると判定する判定手段と、前記判定手段による判定結果を出力する出力手段と、を備える。
【0010】
上記目的を達成する他の見地において、本発明の一態様に係る虐待検知方法は、情報処理装置によって、対象者の発育に関する特徴を表す発育特性情報と、前記対象者の行動に関する特徴を表す行動特性情報とを取得し、前記発育特性情報と前記行動特性情報とが虐待が存在する可能性があるか否かを判定するための判定基準を満たす場合、前記対象者に対する虐待が存在する可能性があると判定し、前記対象者に対する虐待が存在する可能性に関する判定結果を出力する。
【0011】
また、上記目的を達成する更なる見地において、本発明の一態様に係る虐待検知プログラムは、対象者の発育に関する特徴を表す発育特性情報と、前記対象者の行動に関する特徴を表す行動特性情報とを取得する取得処理と、前記発育特性情報と前記行動特性情報とが虐待が存在する可能性があるか否かを判定するための判定基準を満たす場合、前記対象者に対する虐待が存在する可能性があると判定する判定処理と、前記判定処理による判定結果を出力する出力処理と、をコンピュータに実行させる。
【0012】
更に、本発明は、係る虐待検知プログラム(コンピュータプログラム)が格納された、コンピュータ読み取り可能な、不揮発性の記録媒体によっても実現可能である。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、虐待の対象者に対して潜在的に行われている虐待を適切に検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る虐待検知システム1の構成を示すブロック図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態に係る虐待検知装置10の動作を示すフローチャートである。
【
図3】本発明の第2の実施形態に係る虐待検知装置40の構成を示すブロック図である。
【
図4】本発明の第2の実施形態に係る虐待検知装置40の動作を示すフローチャートである。
【
図5】本発明の各実施形態に係る虐待検知装置を実現可能な情報処理装置900の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0016】
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る虐待検知システム1の構成を示すブロック図である。虐待検知システム1は、例えば、家庭などにおいて、子供(虐待の対象者)に対して潜在的に行われている虐待を検知するシステムである。尚、本実施形態における虐待とは、対象者に対する暴力に加えて、育児放棄(ネグレクト)なども含むこととする。
【0017】
虐待検知システム1は、大別して、虐待検知装置10、教育機関のシステム21、医療機関のシステム22、警察のシステム23を有する。虐待検知装置10、教育機関のシステム21、医療機関のシステム22、警察のシステム23は、通信ネットワーク30を介して通信可能に接続されている。通信ネットワーク30は、例えばインターネットである。
【0018】
教育機関のシステム21は、例えば1以上のサーバなどの情報処理装置を含み、当該情報処理装置は、虐待を検出する対象である個々の対象者に関する健康診断結果211と行動履歴212とを記憶している。尚、教育機関は、例えば自治体における教育委員会等の組織を含む。
【0019】
健康診断結果211は、対象者が通学する学校において行われた健康診断の結果を表し、より具体的には、例えば、身長、体重、問診の内容、虫歯の本数等を含む歯科検診の結果等を表す。
【0020】
行動履歴212は、対象者が通学する学校において対象者を含む児童あるいは生徒に対して行われたアンケートが示す情報、及び、教師などの学校の職員が対象者を観察することによって得られた情報等を表す。行動履歴212は、より具体的には、例えば、ある対象者が別の対象者に対して行ったいじめの実績、動物に対して行った虐待の実績等を含む。
【0021】
医療機関のシステム22は、例えば1以上のサーバなどの情報処理装置を含み、当該情報処理装置は、虐待を検出する対象である個々の対象者に関する診察履歴221を記憶している。
【0022】
診察履歴221は、病院あるいは診療所等の医療機関において対象者に対して行われた診察の結果を表し、より具体的には、例えば、対象者の怪我あるいは病気の状態等を表す。
【0023】
警察のシステム23は、例えば1以上のサーバなどの情報処理装置を含み、当該情報処理装置は、虐待を検出する対象である個々の対象者に関する犯罪履歴231を記憶している。
【0024】
犯罪履歴231は、対象者が犯した犯罪の履歴を表し、より具体的には、例えば、対象者が小売店において犯した万引き事件、あるいは他人に対する傷害事件等の履歴を表す。犯罪履歴231は、また、対象者の家庭の近隣の住民から警察に通報された、対象者の家庭において発生した虐待に関する情報を含む。
【0025】
虐待検知装置10は、取得部11、判定部12、出力部13、学習部14、提案部15、記憶部16を備える。取得部11、判定部12、出力部13、学習部14、提案部15は、順に、取得手段、判定手段、出力手段、学習手段、提案手段の一例である。
【0026】
記憶部16は、例えば、
図5を参照して後述するRAM(Random Access Memory)903あるいはハードディスク904のような記憶デバイスである。記憶部16は、発育特性情報161、行動特性情報162、判定基準163、判定結果164、対応策生成基準165、対応策166を記憶している。記憶部16に記憶されたこれらの情報に関しては後述する。
【0027】
取得部11は、教育機関のシステム21から健康診断結果211及び行動履歴212を、医療機関のシステム22から診察履歴221を、警察のシステム23から犯罪履歴231を、通信ネットワーク30を介して取得する。取得部11は、取得した健康診断結果211及び診察履歴221を、発育特性情報161として記憶部16に格納する。取得部11は、取得した行動履歴212及び犯罪履歴231を、行動特性情報162として記憶部16に格納する。
【0028】
判定部12は、取得部11によって取得された発育特性情報161及び行動特性情報162が判定基準163を満たすか否かを判定する。但し、判定基準163は、対象者に対する虐待が存在する可能性があるか否かを判定するための基準である。判定部12は、発育特性情報161及び行動特性情報162が判定基準163を満たす場合、対象者に対する虐待が存在する可能性があると判定する。
【0029】
判定基準163は、例えば下記の基準を表す。尚、判定基準163が表す基準は、下記に限定されず、下記に示す基準を含まなくてもよく、あるいは、下記とは異なる基準を含んでもよい。
・発育特性情報161によって示される体重、身長等の発育指標の値が、対象者と同年齢及び同性の人の平均値と比較して著しく低い。より具体的には、例えば、対象者の当該発育指標の値から対象者と同年齢及び同性の人の発育指標の平均値から閾値以上低い。あるいは、当該発育指標の値が、対象者と同年齢及び同性の人に関する分布において、下位側の所定の割合の領域(例えば下位3%の領域)に含まれている。この発育指標に関する基準は、対象者が食事を十分に与えられていないことを示す基準である。
・発育特性情報161によって示される虫歯の本数が閾値以上である。この虫歯の本数に関する基準は、対象者に対する歯磨きに関する保護者のフォローが十分に行われていないことを示す基準である。
・発育特性情報161によって示される怪我の頻度あるいは体における傷跡の数が閾値以上である。この怪我の頻度あるいは傷跡の数に関する基準は、対象者に対する暴力が頻繁に行われていることを示す基準である。
・行動特性情報162が、万引きを犯した経験があることを示している。この万引きの経験に関する基準は、虐待により食事を十分に与えられておらずお金も所持していない人は、空腹を満たすために万引きを犯す傾向があることに基づく基準である。
・行動特性情報162が、他人に対するいじめの経験があることを示している。この他人に対するいじめの経験に関する基準は、虐待を受けている人は、自分より弱い立場にある他人を虐待する傾向があることに基づく基準である。
・行動特性情報162が、動物に対する虐待の経験があることを示している。この動物に対する虐待の経験に関する基準は、虐待を受けている人は、自分より弱い動物を虐待する傾向があることに基づく基準である。
・行動特性情報162が、自傷行為を行った経験があることを示している。この自傷行為の経験に関する基準は、虐待を受けている人は自殺願望がある傾向があることに基づく基準である。
・行動特性情報162が、日常的におびえた表情をしていることを示している。この表情に関する基準は、虐待を受けている人は、日常的に行われている虐待におびえていることに基づく基準である。
・行動特性情報162が、服装(身なり)が基準を満たさないことを示している。服装が基準を満たさないとは、より具体的には、例えば、季節に合わない服装(夏に冬の服装、あるいは、冬に夏の服装)をしている、あるいは、服装の破損の度合いが基準以上であること等を表す。この服装に関する基準は、虐待により適切な服装を保護者等から提供してもらえないことに基づく基準である。
・行動特性情報162が、公的支援による無料の予防接種を受けている回数が閾値以下である(全く受けていないことも含む)ことを示している。この予防接種の回数に関する基準は、虐待により無料であっても予防接種を受けさせてもらえないことに基づく基準である。
・行動特性情報162が、対象者が家庭において基準以上の大きさの声を出す頻度が閾値以上であることを示している。この家庭における声に関する基準は、虐待によって対象者が泣き声や悲鳴を頻繁に発することに基づく基準である。
・対象者の兄弟姉妹に関して、発育特性情報161及び行動特性情報162の少なくともいずれが、対象者と類似している(即ち、類似度が閾値以上である)ことを示している。この対象者の兄弟姉妹に関する基準は、家庭内において、対象者の兄弟姉妹も対象者と同様の虐待を受ける傾向があることに基づく基準である。
【0030】
判定基準163は、例えば、上述した発育特性情報161及び行動特性情報162に関する個々の基準を満たす度合いをスコア化(数値化)し、個々の基準に関するスコアの合計値に基づいて、対象者に対する虐待が存在する可能性を判定する基準であってもよい。この場合、判定基準163は、当該スコアが高ければ高いほど、対象者に対する虐待が存在する可能性が高くなることを表す。判定基準163は、あるいは、当該スコアが高ければ高いほど、対象者に対する虐待がひどい(重大である)ことを表す。判定基準163は、また、上述した個々の基準ごとに、スコア化に関して重み付けが施された基準であってもよい。
【0031】
判定基準163は、例えば、虐待検知装置10の管理者等によって与えられてもよいし、通信ネットワーク30を介して通信可能に接続された外部の装置から取得されてもよい。あるいは、学習部14が、過去における虐待の被害者に関する発育特性情報161と行動特性情報162とを用いて、発育特性情報161及び行動特性情報162と虐待が存在する可能性との関係を学習することによって、判定基準163を生成あるいは更新するようにしてもよい。この場合、判定基準163は、発育特性情報161及び行動特性情報162に含まれる上述した指標を説明変数とし、対象者に対する虐待の存在の可能性を示す値を目的変数とする、機械学習の結果を表す。
【0032】
判定部12は、対象者に対する虐待が存在する可能性に関する判定結果164を記憶部16に格納する。
【0033】
出力部13は、例えば教育機関のシステム21に判定結果164を出力(送信)する。出力部13は、判定結果164が示す対象者に対する虐待のひどさ(重大さ)に応じて、警察のシステム23に判定結果164を出力してもよい。
【0034】
提案部15は、判定結果164が対象者に対する虐待が存在する可能性を示す場合、発育特性情報161及び行動特性情報162によって示される対象者に対する虐待を解消するための対応策166を、対応策生成基準165に基づいて生成する。対応策生成基準165は、例えば、過去において発生した、発育特性情報161及び行動特性情報162によって示される対象者に対する虐待を解消するために行われた対応策の実績を表す。対応策166は、例えば、教育機関の職員、及び必要に応じて警察官などが、虐待を受けている可能性がある対象者の家庭に訪問すること等を表す。
【0035】
出力部13は、提案部15によって生成された対応策166を、判定結果164とともに、教育機関のシステム21、及び、必要に応じて警察のシステム23に出力する。
【0036】
次に
図2のフローチャートを参照して、本実施形態に係る虐待検知装置10の動作(処理)について詳細に説明する。
【0037】
取得部11は、教育機関のシステム21から取得した健康診断結果211、及び、医療機関のシステム22から取得した診察履歴221を、発育特性情報161として記憶部16に格納する(ステップS101)。取得部11は、教育機関のシステム21から取得した行動履歴212、及び、警察のシステム23から取得した犯罪履歴231を、行動特性情報162として記憶部16に格納する(ステップS102)。判定部12は、発育特性情報161及び行動特性情報162が判定基準163を満たすか判定する(ステップS103)。
【0038】
発育特性情報161及び行動特性情報162が判定基準163を満たす場合(ステップS104でYes)、判定部12は、対象者に対する虐待が存在する可能性があることを示す判定結果164を生成し、生成した判定結果164を記憶部16に格納する(ステップS105)。提案部15は、対象者に対する虐待を解消するための対応策166を対応策生成基準165に基づいて生成し、生成した対応策166を記憶部に格納する(ステップS106)。出力部13は、判定結果164及び対応策166を、教育機関のシステム21、及び必要に応じて警察のシステム23に出力し(ステップS107)、全体の処理は終了する。
【0039】
発育特性情報161及び行動特性情報162が判定基準163を満たさない場合(ステップS104でNo)、判定部12は、対象者に対する虐待が存在する可能性がないことを示す判定結果164を生成する(ステップS108)。出力部13は、判定結果164を教育機関のシステム21に出力し(ステップS109)、全体の処理は終了する。
【0040】
本実施形態に係る虐待検知装置10は、虐待の対象者に対して潜在的に行われている虐待を適切に検知することができる。その理由は、虐待検知装置10は、対象者に関する発育特性情報161及び行動特性情報162が判定基準163を満たすか否かを判定することによって、虐待の対象者に対して潜在的に行われている虐待を検知するからである。
【0041】
以下に、本実施形態に係る虐待検知装置10によって実現される効果について、詳細に説明する。
【0042】
以前から、例えば、家庭において子供に対して潜在的に行われている虐待が社会問題となっている。そして、人々の健康を増進することの取り組みにおいて、そのような子供などに対する潜在的な(即ち顕在化していない)虐待を検知することによって、虐待の対象者を虐待から守ることができる。即ち、虐待の対象者に対する潜在的な虐待を適切に検知することが課題である。
【0043】
このような問題に対して、本実施形態に係る虐待検知装置10は、対象者の発育に関する特徴を表す発育特性情報161と、当該対象者の行動に関する特徴を表す行動特性情報162とを取得する。虐待検知装置10は、発育特性情報161と行動特性情報162とが判定基準163を満たす場合、当該対象者に対する虐待が存在する可能性があると判定する。そして、虐待検知装置10は、当該対象者に対する虐待が存在する可能性に関する判定結果164を出力する。これにより、虐待検知装置10は、虐待の対象者に対して潜在的に行われている虐待を適切に検知することができる。
【0044】
また、本実施形態に係る判定基準163は、発育特性情報161が示す対象者の発育指標(例えば体重及び身長の少なくともいずれか)の値から対象者と同年齢及び同性の人の発育指標の平均値を減算した値が閾値以下であることを表す。また、判定基準163は、発育特性情報161が示す対象者の虫歯の本数が閾値以上であること、及び、発育特性情報161が示す対象者の怪我の頻度が閾値以上であることの少なくともいずれかを表す。また、判定基準163は、行動特性情報162が、対象者が万引きをした経験があること、及び、他人あるいは動物に対する虐待を行った経験があることの少なくともいずれかを含むことを表す。また、判定基準163は、対象者とその対象者の兄弟姉妹との間において、発育特性情報161及び行動特性情報162に関する類似度が閾値以上であることを表す。虐待検知装置10は、このような虐待の対象者に一般的にみられる特性に基づく判定基準163を用いることにより、虐待の対象者に対して潜在的に行われている虐待を適切に検知することができる。
【0045】
また、本実施形態に係る虐待検知装置10は、過去における虐待の被害者に関する発育特性情報161と行動特性情報162とを用いて、発育特性情報161及び行動特性情報162と虐待が存在する可能性との関係を学習することによって、判定基準163を生成あるいは更新する。これにより、虐待検知装置10は、発育特性情報161と行動特性情報162とに基づいて、虐待の対象者に対して潜在的に行われている虐待を検知する精度を次第に高めることができる。
【0046】
また、本実施形態に係る虐待検知装置10は、発育特性情報161及び行動特性情報162によって示される対象者に対する虐待を解消するための対応策166を提案する。これにより、虐待検知装置10は、検知した対象者に対する虐待を解消することを、適切に支援することができる。
【0047】
<第2の実施形態>
図3は、本発明の第2の実施形態に係る虐待検知装置40の構成を示すブロック図である。
【0048】
本実施形態に係る虐待検知装置40は、取得部41、判定部42、出力部43を備えている。取得部41、判定部42、出力部43は、順に、取得手段、判定手段、出力手段の一例である。
【0049】
取得部41は、対象者の発育に関する特徴を表す発育特性情報411と、当該対象者の行動に関する特徴を表す行動特性情報412とを取得する。発育特性情報411は、例えば、第1の実施形態に係る発育特性情報161と同様な情報である。行動特性情報412は、例えば、第1の実施形態に係る行動特性情報162と同様な情報である。取得部41は、例えば、第1の実施形態に係る取得部11と同様に動作する。
【0050】
判定部42は、発育特性情報411と行動特性情報412とが虐待が存在する可能性があるか否かを判定するための判定基準420を満たす場合、当該対象者に対する虐待が存在する可能性があると判定する。判定基準420は、例えば第1の実施形態に係る判定基準163と同様な基準である。判定部42は、例えば、第1の実施形態に係る判定部12と同様に動作する。
【0051】
出力部43は、判定部42による判定結果430を出力する。判定結果430は、例えば、第1の実施形態に係る判定結果164と同様な情報である。出力部43は、例えば、第1の実施形態に係る出力部13と同様に動作する。
【0052】
次に
図4のフローチャートを参照して、本実施形態に係る虐待検知装置40の動作(処理)について詳細に説明する。
【0053】
取得部41は、対象者に関する発育特性情報411及び行動特性情報412を取得する(ステップS201)。判定部12は、発育特性情報411及び行動特性情報412が判定基準420を満たすか否か判定する(ステップS202)。
【0054】
発育特性情報411及び行動特性情報412が判定基準420を満たす場合(ステップS203でYes)、出力部43は、対象者に対する虐待が存在する可能性があることを示す判定部42による判定結果430を出力し(ステップS204)、全体の処理は終了する。
【0055】
発育特性情報411及び行動特性情報412が判定基準420を満たさない場合(ステップS203でNo)、出力部43は、対象者に対する虐待が存在する可能性がないことを示す判定部42による判定結果430を出力し(ステップS205)、全体の処理は終了する。
【0056】
本実施形態に係る虐待検知装置40は、虐待の対象者に対して潜在的に行われている虐待を適切に検知することができる。その理由は、虐待検知装置40は、対象者に関する発育特性情報411及び行動特性情報412が判定基準420を満たすか否かを判定することによって、虐待の対象者に対して潜在的に行われている虐待を検知するからである。
【0057】
<ハードウェア構成例>
上述した各実施形態において
図1、及び、
図4に示した虐待検知装置における各部は、専用のHW(HardWare)(電子回路)によって実現することができる。また、
図1、及び、
図4において、少なくとも、下記構成は、プロセッサによって実行される命令を含むソフトウェアプログラムの機能(処理)単位(ソフトウェアモジュール)と捉えることができる。
・取得部11及び41、
・判定部12及び42、
・出力部13及び43、
・学習部14、
・提案部15、
・記憶部16における記憶制御機能。
【0058】
但し、これらの図面に示した各部の区分けは、説明の便宜上の構成であり、実装に際しては、様々な構成が想定され得る。この場合のハードウェア環境の一例を、
図5を参照して説明する。
【0059】
図5は、本発明の各実施形態に係る虐待検知装置を実現可能な情報処理装置900(コンピュータ)の構成を例示的に説明する図である。即ち、
図5は、
図1、及び、
図3に示した虐待検知装置を実現可能なコンピュータ(情報処理装置)の構成であって、上述した実施形態における各機能を実現可能なハードウェア環境を表す。
【0060】
図5に示した情報処理装置900は、構成要素として下記を備えている。
・CPU(Central_Processing_Unit)901、
・ROM(Read_Only_Memory)902、
・RAM(Random_Access_Memory)903、
・ハードディスク(記憶装置)904、
・通信インタフェース905、
・バス906(通信線)、
・CD-ROM(Compact_Disc_Read_Only_Memory)等の記録媒体907に格納されたデータを読み書き可能なリーダライタ908、
・モニターやスピーカ、キーボード等の入出力インタフェース909。
【0061】
即ち、上記構成要素を備える情報処理装置900は、これらの構成がバス906を介して接続された一般的なコンピュータである。情報処理装置900は、CPU901を複数備える場合もあれば、マルチコアにより構成されたCPU901を備える場合もある。
【0062】
そして、上述した実施形態を例に説明した本発明は、
図5に示した情報処理装置900に対して、次の機能を実現可能なコンピュータプログラムを供給する。その機能とは、その実施形態の説明において参照したブロック構成図(
図1及び
図3)における上述した構成、或いはフローチャート(
図2及び
図4)の機能である。本発明は、その後、そのコンピュータプログラムを、当該ハードウェアのCPU901に読み出して解釈し実行することによって達成される。また、当該装置内に供給されたコンピュータプログラムは、読み書き可能な揮発性のメモリ(RAM903)、または、ROM902やハードディスク904等の不揮発性の記憶デバイスに格納すれば良い。
【0063】
また、前記の場合において、当該ハードウェア内へのコンピュータプログラムの供給方法は、現在では一般的な手順を採用することができる。その手順としては、例えば、CD-ROM等の各種記録媒体907を介して当該装置内にインストールする方法や、インターネット等の通信回線を介して外部よりダウンロードする方法等がある。そして、このような場合において、本発明は、係るコンピュータプログラムを構成するコード或いは、そのコードが格納された記録媒体907によって構成されると捉えることができる。
【0064】
以上、上述した実施形態を模範的な例として本発明を説明した。しかしながら、本発明は、上述した実施形態には限定されない。即ち、本発明は、本発明のスコープ内において、当業者が理解し得る様々な態様を適用することができる。
【符号の説明】
【0065】
1 虐待検知システム
10 虐待検知装置
11 取得部
12 判定部
13 出力部
14 学習部
15 提案部
16 記憶部
161 発育特性情報
162 行動特性情報
163 判定基準
164 判定結果
165 対応策生成基準
166 対応策
21 教育機関のシステム
211 健康診断結果
212 行動履歴
22 医療機関のシステム
221 診察履歴
23 警察のシステム
231 犯罪履歴
30 通信ネットワーク
40 虐待検知装置
41 取得部
411 発育特性情報
412 行動特性情報
42 判定部
420 判定基準
43 出力部
430 判定結果
900 情報処理装置
901 CPU
902 ROM
903 RAM
904 ハードディスク(記憶装置)
905 通信インタフェース
906 バス
907 記録媒体
908 リーダライタ
909 入出力インタフェース