(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170730
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】走行経路生成装置、走行経路生成方法、走行経路生成プログラムおよび自動化施工システム
(51)【国際特許分類】
G05D 1/43 20240101AFI20241204BHJP
E02F 9/20 20060101ALI20241204BHJP
【FI】
G05D1/02 H
E02F9/20 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087402
(22)【出願日】2023-05-29
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】後藤 洸一
(72)【発明者】
【氏名】青木 浩章
【テーマコード(参考)】
2D003
5H301
【Fターム(参考)】
2D003AA06
2D003AB01
2D003BA01
2D003BA03
2D003BA07
2D003DA04
5H301AA03
5H301AA10
5H301BB02
5H301BB03
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301DD06
5H301DD07
5H301DD17
5H301GG07
5H301GG12
5H301GG14
5H301GG16
(57)【要約】
【課題】走行経路を容易に生成することができる走行経路生成装置、走行経路生成方法、走行経路生成プログラムおよび自動化施工システムを提供する。
【解決手段】本発明は、建設機械の作業範囲を決める複数の目印の位置情報を取得する位置情報取得部21と、取得した位置情報に基づいて建設機械の走行経路を生成する走行経路生成部22と、を備える走行経路生成装置2Aである。走行経路生成部22は、作業範囲から所定量だけ内側に離隔した走行範囲において走行経路を生成することが好ましい。走行経路生成部22は、走行経路上に所定間隔で経路点を設定することが好ましい。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設機械の作業範囲を決める複数の目印の位置情報を取得する位置情報取得部と、
前記取得した位置情報に基づいて前記建設機械の走行経路を生成する走行経路生成部と、を備える、走行経路生成装置。
【請求項2】
前記走行経路生成部は、前記作業範囲から所定量だけ内側に離隔した走行範囲において前記走行経路を生成する、請求項1に記載の走行経路生成装置。
【請求項3】
前記走行経路生成部は、
前記走行経路上に所定間隔で経路点を設定する、請求項1に記載の走行経路生成装置。
【請求項4】
前記走行経路が、複数の車線で構成されており、
車線変更時の走行経路である車線変更経路を生成する車線変更経路生成部、をさらに備える請求項1に記載の走行経路生成装置。
【請求項5】
前記建設機械が前記作業範囲の外側を走行した場合に走行停止する第1走行停止部、をさらに備える請求項1に記載の走行経路生成装置。
【請求項6】
位置情報を取得可能な障害物が前記作業範囲に進入した場合に走行停止する第2走行停止部、をさらに備える請求項1に記載の走行経路生成装置。
【請求項7】
建設機械の作業範囲を決める複数の目印の位置情報を取得するステップと、
前記取得した位置情報に基づいて前記建設機械の走行経路を生成するステップと、を備える、走行経路生成方法。
【請求項8】
請求項7に記載の走行経路生成方法をコンピュータに実行させるための走行経路生成プログラム。
【請求項9】
請求項1に記載の走行経路生成装置と、
前記建設機械の自動走行を支援する自動走行支援装置と、を備える自動化施工システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行経路生成装置、走行経路生成方法、走行経路生成プログラムおよび自動化施工システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、振動ローラにセンサ類を搭載させて、転圧エリアに設定された走行経路に沿って振動ローラを走行させることにより施工を行う技術が開発されている(例えば、特許文献1ないし特許文献4を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-067126号公報
【特許文献2】特開2016-126625号公報
【特許文献3】特開2017-204089号公報
【特許文献4】特開2019-218817号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の自動化施工機械の走行経路の設定方法には、例えば、人の操縦によって走行した車両の座標を予め記録してそれに追従するように行うものや、設計図面や測量結果に基づいて走行させるべき経路の座標を計算して行うものがあった。しかし、これらの方法によれば、自動化施工のオペレータは複雑な操作や煩雑な計算を行う必要があるという問題点があった。
このような観点から、本発明は、走行経路を容易に生成することができる走行経路生成装置、走行経路生成方法、走行経路生成プログラムおよび自動化施工システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決する本発明は、建設機械の作業範囲を決める複数の目印の位置情報を取得する位置情報取得部と、前記取得した位置情報に基づいて前記建設機械の走行経路を生成する走行経路生成部と、を備える、走行経路生成装置である。
また、本発明は、建設機械の作業範囲を決める複数の目印の位置情報を取得するステップと、前記取得した位置情報に基づいて前記建設機械の走行経路を生成するステップと、を備える、走行経路生成方法である。
また、本発明は、前記走行経路生成方法をコンピュータに実行させるための走行経路生成プログラムである。
また、本発明は、前記走行経路生成装置と、前記建設機械の自動走行を支援する自動走行支援装置と、を備える自動化施工システムである。
【0006】
かかる構成によれば、目印として、例えばGNSSアンテナを備えた三角コーンを所望の位置に配置すれば、作業範囲の幾何情報を設定できる。よって、測量や図面からの割り出しによる座標設定作業が不要になる。また、作業範囲が決まれば、所定のルールに従って走行経路は自在に設定できる。よって、走行経路を容易に生成することができる。また、目印の配置次第で作業範囲の形状を自在に設定でき、しかも、そのような作業範囲であっても走行経路は生成可能であるため、現場状況に応じた柔軟な自動化施工を実現できる。また、目印は現場の作業員に対して作業範囲を明示し、作業員を注意喚起する役割を果たすので、自動化施工の安全性を向上させることができる。
【0007】
また、前記走行経路生成部は、前記作業範囲から所定量だけ内側に離隔した走行範囲において前記走行経路を生成する、ことが好ましい。
これにより、建設機械による自動化施工が行われる範囲を確実に設定できる。よって、例えば、作業範囲及び走行範囲に囲まれた範囲に建設機械が進入した場合の制御内容(例:自動化施工に異常が発生した可能性を報知)を容易に設定できる。また、目印を走行範囲から除外できる。
【0008】
また、前記走行経路生成部は、前記走行経路上に所定間隔で経路点を設定する、ことが好ましい。
これにより、自動走行中の建設機械に対して任意に与えられた1点(例:重心)が経路点を通過するように建設機械を制御できるため、生成した走行経路上を建設機械が確実に自動走行できる。
【0009】
また、前記走行経路が、複数の車線で構成されており、車線変更時の走行経路である車線変更経路を生成する車線変更経路生成部、をさらに備えることが好ましい。
これにより、車線変更を適切に行うことができる。
【0010】
また、前記建設機械が前記作業範囲の外側を走行した場合に走行停止する第1走行停止部、をさらに備えることが好ましい。
これにより、作業範囲の外側にいる作業員に対して、自動化施工の安全性を向上させることができる。
【0011】
また、位置情報を取得可能な障害物が前記作業範囲に進入した場合に走行停止する第2走行停止部、をさらに備えることが好ましい。
これにより、作業範囲の内側にいる作業員に対して、自動化施工の安全性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、走行経路を容易に作成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態に係る自動化施工システムの全体図である。
【
図2】走行経路ファイルを生成する処理の流れ、および、自動走行を実現する処理の流れを示した図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る走行経路生成装置の機能構成図である。
【
図5】走行経路データのフォーマットの例示である。
【
図6】走行経路の計算手順の説明図(その1)である。
【
図7】走行経路の計算手順の説明図(その2)である。
【
図8】走行経路の計算手順の説明図(その3)である。
【
図9】走行経路の計算手順の説明図(その4)である。
【
図10】走行経路の計算手順の説明図(その5)である。
【
図12】本発明の実施形態に係る振動ローラの外観図である。
【
図13】振動ローラのアーティキュレート機構の概略図であり、(a)は直進時の状態を示し、(b)は旋回時の状態を示す。
【
図14】振動ローラの自動制御を実現する自動制御システムの概略図である。
【
図15】本発明の実施形態に係る走行経路生成方法の工程を示すフローチャートの例示である。
【
図16】本発明の実施形態に係る自動走行方法の工程を示すフローチャートの例示である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施をするための形態を、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。各図は、本発明を十分に理解できる程度に、概略的に示してあるに過ぎない。よって、本発明は、図示例のみに限定されるものではない。なお、各図において、共通する構成要素や同様な構成要素については、同一の符号を付し、それらの重複する説明を省略する。
【0015】
[構成]
実施形態に係る自動化施工システム100の全体図を
図1に示す。
図1に示す自動化施工システム100は、建設機械を自動走行させて施工現場の地面を締め固めるものである。本実施形態では、施工現場として道路の舗装工事を想定して説明する。自動化施工システム100は、施工現場を自動走行しながら地面を転圧する振動ローラ1と、自動化施工システム100を管理する管理システム2と、を備えて構成されている。管理システム2は、例えば、一つまたは複数のPC(Personal Computer)を備える。なお、振動ローラ1は、建設機械の一例である。
【0016】
振動ローラ1および管理システム2は、無線通信を用いて通信可能である。また、振動ローラ1は、測位用衛星3から発信される電波(測位用信号)を受信可能である。なお、自動化施工システム100の構成はここで示すものに限定されず、例えば、振動ローラ1が管理システム2の一部の機能を有していてもよい(つまり、管理システム2を含めて振動ローラ1であってもよい)。
【0017】
<測位用衛星>
測位用衛星3は、全球測位衛星システム(GNSS:Global Navigation Satellite System)で使用される衛星であって、自身の位置情報(軌道位置情報)や時刻情報を、振動ローラ1に対して周期的に送信する。測位用衛星3は、例えば、GPS(Global Positioning System)衛星、GLONASS(Global Navigation Satellite System)衛星、Galileo衛星、準天頂衛星などであってよい。測位用衛星3から送信される情報は、振動ローラ1において、例えば、位置(緯度、経度、標高)の制御に使用される。なお、測位用衛星3に代えてトータルステーションやSLAM(Simultaneous Localization And Mapping)を用いて振動ローラ1の位置の制御を行ってもよい。つまり、振動ローラ1の位置を求める方法は限定されず、様々な技術を用いることができる。
【0018】
<三角コーン、作業員>
三角コーン4(#1~#4)は、振動ローラ1の施工現場に配置される目印である。三角コーン4は、例えば、GNSSアンテナ、マイコン、および電源を備えており、測位用衛星3から発信される電波(測位用信号)を受信可能である。三角コーン4および管理システム2は、無線通信を用いて通信可能である。管理システム2は、三角コーン4の位置情報を三角コーン4から取得できる。オペレータが三角コーン4を所望の位置に配置することで、三角コーン4を4隅とする振動ローラ1の作業範囲を形成できる。三角コーン4が配置される4隅は必ずしも直角である必要はない。
作業員5は、振動ローラ1の施工現場で建設作業を行う者である。作業員5は、例えば、位置情報を取得可能なデバイス(例:スマートフォン)を所持しており、測位用衛星3から発信される電波(測位用信号)を受信可能である。作業員5のデバイスおよび管理システム2は、無線通信を用いて通信可能である。管理システム2は、作業員5の位置情報を作業員5から取得できる。
なお、説明の便宜上、振動ローラの位置情報、三角コーン4の位置情報、および作業員5の位置情報は2次元とするが、3次元であってもよい。
【0019】
<管理システム>
図2に示すように、管理システム2は、走行経路生成装置2Aと、自動走行支援装置2Bとを主に備える。
図2は、走行経路ファイルを生成する処理の流れ、および、自動走行を実現する処理の流れを示した図である。なお、走行経路生成装置2Aと自動走行支援装置2Bとが一つの装置として構成されてもよい。
走行経路生成装置2Aは、振動ローラ1が走行する経路(走行経路)を生成する装置である。走行経路生成装置2Aが有する走行経路生成に関する機能は、例えばROM(Read Only Memory)等に格納された走行経路生成プログラムをCPU(Central Processing Unit)が実行処理することにより実現される。走行経路生成装置2Aは、三角コーン4の位置情報を読み込み、走行経路ファイルに生成して、当該走行経路ファイルを出力する。
【0020】
走行経路ファイルには、振動ローラ1が走行する走行経路に関する情報(走行経路データ)が含まれており、例えば「CSV(Comma Separated Value)形式」のデータである。例えば、走行経路生成装置2Aは、タブレット端末とすることができる。タブレット端末には、走行経路生成プログラム(アプリ)がインストールされている。施工現場にいるオペレータはタブレット端末を操作して、三角コーン4の位置情報を取得できる。タブレット端末は、取得した三角コーン4の位置情報から走行経路ファイルを生成できる。つまり、施工現場で走行経路を決定できる。
自動走行支援装置2Bは、振動ローラ1の自動走行を支援する装置である。自動走行支援装置2Bが有する自動走行支援に関する機能は、例えばROM等に格納された自動走行支援プログラムをCPUが実行処理することにより実現される。自動走行支援装置2Bは、走行経路ファイルを読み込み、振動ローラ1を自動走行させるために必要な情報を作成し、振動ローラ1に送信する。このようにして、自動走行支援装置2Bは、振動ローラ1による自動走行を間接的に制御することで、振動ローラ1による自動走行を支援する。
【0021】
<走行経路生成装置>
図3を参照して、走行経路生成装置2Aについて説明する。
図3は、走行経路生成装置2Aの機能構成図である。
走行経路生成装置2Aは、位置情報取得部21と、走行経路生成部22と、車線変更経路生成部23と、第1走行停止部24と、第2走行停止部25とを備えている。
位置情報取得部21は、施工現場に配置された三角コーン4の位置情報を取得する。例えば、位置情報取得部21が三角コーン4に要求を送信すると、三角コーン4自身の位置情報を含む応答を三角コーン4から受信することができる。また、位置情報取得部21は、振動ローラ1の位置情報を振動ローラ1から取得できる。また、位置情報取得部21は、作業員5の位置情報を作業員5のデバイスから取得できる。
【0022】
走行経路生成部22は、位置情報取得部21が取得した三角コーン4の位置情報に基づいて振動ローラ1の走行経路を生成する。具体的には、走行経路生成部22は、4つの三角コーン4を4隅とする矩形状の作業範囲を設定する。また、走行経路生成部22は、設定した作業範囲から所定量だけ内側に離隔した走行範囲を設定する。また、走行経路生成部22は、設定した走行範囲において走行経路を設定する。走行経路は、振動ローラ1が辿る車線であり、複数本設定される。また、走行経路生成部22は、各走行経路上に所定間隔で経路点を設定する。つまり、経路点は走行経路を分割する。
【0023】
車線変更経路生成部23は、走行経路が複数の車線で構成されている場合、車線変更時の走行経路である車線変更経路を生成する。
第1走行停止部24は、振動ローラ1が作業範囲の外側を走行した場合に走行停止する。具体的には、第1走行停止部24は、走行停止用の制御信号を自動走行支援装置2Bに送信する。自動走行支援装置2Bは制御信号に従い、振動ローラ1を走行停止させる。
第2走行停止部25は、位置情報を取得可能な障害物が作業範囲に進入した場合に走行停止する。作業員5は、位置情報を取得可能な障害物の例である。例えば、作業員5が所持する、位置情報を取得可能なデバイスから取得した作業員5の位置情報が作業範囲内を示したことで、走行経路生成装置2Aが作業員5の作業範囲への進入を検知した場合、第2走行停止部25は、自動走行中の振動ローラ1を停止する。具体的には、第2走行停止部25は、走行停止用の制御信号を自動走行支援装置2Bに送信する。自動走行支援装置2Bは制御信号に従い、振動ローラ1を走行停止させる。
【0024】
走行経路生成装置2Aは、走行経路生成用のGUI(Graphic User Interface)を提供できる。
図4は、走行経路生成画面の例示である。走行経路生成画面600は、例えば、走行経路表示領域610、座標表示領域620、走行条件入力領域630、経路生成ボタン640、および保存ボタン650を備えている。
【0025】
走行経路表示領域610は、振動ローラ1の走行経路を表示する領域である。走行経路表示領域610は、二次元モデル化した矩形状の作業範囲611を表示できる。作業範囲611の4隅の位置は、三角コーン4の位置を示している。走行経路表示領域610は、三角コーン4を「#1」~「#4」で表示できる。また、走行経路表示領域610は、作業範囲611に対して複数本の走行経路612を表示できる。また、走行経路表示領域610は、走行経路612の各々に対して、複数の経路点613を表示できる。また、走行経路表示領域610は、作業範囲611に対して重機614(振動ローラ1に対応)を表示できる。なお、走行経路表示領域610は、作業範囲611に対して走行範囲を表示してもよいし、(視認性向上等の観点から)表示しなくてもよい。
【0026】
座標表示領域620は、測位用衛星3で測位される対象物の二次元座標を表示する領域である。座標表示領域620には、座標取得ボタン621が表示されている。オペレータが座標取得ボタン621をタップすると、位置情報取得部21が三角コーン4の座標、および重機614の座標を取得する。また、座標表示領域620は、三角コーン4の座標622-1~622-4を表示できる。また、座標表示領域620は、三角コーン4に対して角選択領域623を表示できる。
角選択領域623は、重機の自動走行を決定するために三角コーン4の座標の特性を選択するための領域である。角選択領域623には、「基」、「前」、「横」で示される3種類のラジオボタンボックスが表示されている。「基」は、最初の走行経路での走行を開始する角を象徴する。「前」は、各走行経路での進行方向の角を象徴する。「横」は、最後の走行経路での走行を開始する角を象徴する。
図4では、「#1」の三角コーン4に対して「前」が選択されており、「#2」の三角コーン4に対して「基」が選択されており、「#3」の三角コーン4に対して「横」が選択されており、「#4」の三角コーン4に対しては選択無しである。「基」、「前」および「横」の何れも選択されていない「#4」は、必然的に走行経路の終点となる。よって、作業範囲611(又は走行範囲)において、「#2」の近傍から「#1」の近傍まで延在する最初の走行経路、「#3」の近傍から「#4」の近傍まで延在する最後の走行経路、および最初の走行経路と最後の走行経路の間に複数本の走行経路が生成される。
また、座標表示領域620は、重機の座標624を表示できる。
なお、座標表示領域620は、作業員5の座標を表示してもよいし、(視認性向上等の観点から)表示しなくてもよい。
【0027】
走行条件入力領域630は、走行条件に関する情報が入力される領域である。例えば、走行条件入力領域630には、「転圧輪の幅」、「オーバーラップ幅」、「前後クリアランス」、「左右クリアランス」、「点の間隔」で示されるスピンボタンが表示されている。「転圧輪の幅」は、自動走行をする重機の転圧輪の幅(軸長)を象徴する。「オーバーラップ幅」は、隣接する転圧路が重なる領域の横断方向の幅である。「前後クリアランス」は、作業範囲611と走行範囲との間にある前後方向(概ね走行経路に沿う方向)のクリアランスを象徴する。「左右クリアランス」は、作業範囲611と走行範囲との間にある左右方向(概ね走行経路に直交する方向)のクリアランスを象徴する。「点の間隔」は走行経路上に設定される経路点の間隔を象徴する(ただし一般的には、各走行経路の全長は異なるので相対的な値であり、各走行経路に設定される経路点の個数を象徴するとしてもよい)。走行条件は、作業範囲611(又は走行範囲)に用意される走行経路の本数、向き、各走行経路上の経路点の数を規定する。
【0028】
経路生成ボタン640は、オペレータが走行経路生成装置2Aに対して走行経路の生成を指示するボタンである。オペレータは、座標表示領域620および走行条件入力領域630に入力した状態で、経路生成ボタン640をタップする。すると、走行経路表示領域610に走行経路612が表示される。
保存ボタン650は、オペレータが走行経路生成装置2Aに対して生成した走行経路の保存を指示するボタンである。オペレータは、走行経路表示領域610に表示された走行経路を確認して保存ボタン650をタップする。すると、走行経路データが、走行経路生成装置2Aの記憶部に記憶される。
【0029】
図5は、走行経路データのフォーマットの例示である。走行経路データは、「無振動転圧回数」、「有振動転圧回数」、「計測走行回数」の値を含む。「無振動転圧回数」は、振動ローラ1が無振動で転圧を行った回数を示す。「有振動転圧回数」は、振動ローラ1が有振動で転圧を行った回数を示す。「計測走行回数」は、振動ローラ1が締固め度の計測を伴う転圧を行った回数を示す。
また、走行経路データは、「走行可能エリア」の値を含む。「走行可能エリア」は、三角コーン4で囲まれた作業範囲の内側にある矩形状の走行範囲であり、「点番号」、「X座標」、「Y座標」の値を含む。「点番号」は、走行範囲の4隅を識別する番号を示す。「X座標」は、仮想的な二次元座標系上にある走行範囲の4隅の各々のX座標の値を示す。「Y座標」は、仮想的な二次元座標系上にある走行範囲の4隅の各々のY座標の値を示す。
また、走行経路データは、「走向計画」の値を含む。「走向計画」は、振動ローラ1が走行範囲内をどのような経路で自動走行するかを示す。「走向計画」は、「レーン番号」、「点番号」、「X座標」、「Y座標」の値を含む。「レーン番号」は、走行範囲内に設定された複数本の走行経路を識別する番号を示す。「点番号」は、走行経路上に設定された複数の経路点を識別する番号を示す。「X座標」は、仮想的な二次元座標系上にある経路点の各々のX座標の値を示す。「Y座標」は、仮想的な二次元座標系上にある経路点の各々のY座標の値を示す。振動ローラ1は、「レーン番号」の番号順、かつ、「点番号」の番号順に経路点を通過することによって、走行経路に沿った自動走行を実現する。なお、経路点の識別情報として、「レーン番号」の値と「点番号」の値を併せた通し番号を用いてもよい。
【0030】
<走行経路の生成手順>
走行経路生成装置2Aによる走行経路の計算手順について説明する。
図6~
図10は、走行経路の計算手順の説明図(その1)~(その5)である。まず、オペレータは、走行経路生成装置2Aに対して以下の(A)~(G)を入力する。
(A):走行を開始する角(角選択領域623の「基」を選択)
(B):進行方向の角(角選択領域623の「前」を選択)
(C):三角コーン4と走行経路端との横断方向の離隔(走行条件入力領域630の「左右クリアランス」の値を選択)
(D):三角コーン4と走行経路端との進行方向の離隔(走行条件入力領域630の「前後クリアランス」の値を選択)
(E):車幅(走行条件入力領域630の「転圧輪の幅」の値を選択)
(F):ラップ幅(走行条件入力領域630の「オーバーラップ幅」の値を選択)
(G):経路点間距離(走行条件入力領域630の「点の間隔」の値を選択)
【0031】
次に、4つの三角コーン4(「#1」~「#4」)の座標を取得する。取得した「#1」~「#4」の座標は、以下の式1に示す通りであったとする。
図6は、座標が取得された「#1」~「#4」の幾何情報を示す。
図6に示すように、「#1」~「#4」を角とする矩形状の作業範囲が設定される。
【0032】
【0033】
次に、走行を開始する角(始点)、および進行方向の角(終点)を設定する。本説明では始点を「#2」とし、終点を「#1」とする。
図7は、始点および終点を示す。
次に、三角コーン4と走行経路端との離隔に従って、走行範囲を設定する。
図8は、走行範囲の幾何情報を示す。
図8に示すように、走行範囲(斜線ハッチ)は、作業範囲から所定量だけ内側に離隔して設定される。走行範囲は、「#1’」~「#4’」を角とする矩形状を呈する。「#1’」~「#4’」の座標は、以下の式2に示す通りであったとする。また、三角コーン4と走行経路端との離隔を用いると、「#1」~「#4」と「#1’」~「#4’」の間には以下の式3の関係式が成り立つ。なお、式3中、c
a1~c
a4, c
b1~c
b4はそれぞれ、「#1」~「#4」を起点とし、作業領域の4辺に沿う単位ベクトルである。
【0034】
【0035】
【0036】
次に、車幅およびラップ幅に従って、走行範囲に車線を定義する。#2’と#3’間の距離を{#2’:#3’}とし、#1’と#4’間の距離を{#1’:#4’}とする。{#2’:#3’}および{#1’:#4’}のうち長いほうの値を(車幅 - ラップ幅)で除した数値を、小数点第1位で繰り上げた数Nを車線分割数とする。次に、{#2’:#3’}および{#1’:#4’}をそれぞれ等間隔でN分割する。次に、N分割した点同士を、#2’,#1’から順に結ぶことで、式4に示すように、N+1本の車線が得られる。
図9は、走行範囲に定義したN+1本の車線を示す。
【0037】
【0038】
n(n = 0.1,…,N)番目の車線の始点および終点をそれぞれ、Ln0,Ln1と表記すると、「#1’」~「#4’」は、以下の式5で示される。また、Ln0,Ln1は、以下の式6で計算できる。なお、各車線の始点側における車線間の距離と、終点側における車線間の距離は、三角コーン4の囲繞形状に依存するため必ずしも同一でない。
【0039】
【0040】
【0041】
次に、経路点間距離に従って、各車線に経路点を定義する。#2’と#1’間の距離を{#2’:#1’}とし、#3’と#4’間の距離を{#3’:#4’}とする。{#2’:#1’}および{#3’:#4’}のうち長いほうの値を経路点間距離で除した数値を、小数点第1位で繰り上げた数Mを経路点分割数とする。次に、N+1本の車線を等間隔でM分割する。すると、各車線において、M+1個の経路点が得られる。n番目の車線のm(m = 0.1,…,M)番目の経路点をP
nmと表記すると、P
n0 = L
n0、P
nM = L
n1である。また、P
nmは、以下の式7で計算できる。得られた経路点P
nm(n = 0.1,…,N、m = 0.1,…,M)の座標が走行経路データとして出力される(
図5参照)。
図10において、図示の便宜上、0番目の車線およびN番目の車線に経路点P
nmを●で示す。
【数7】
・・・式7
【0042】
<車線変更>
図11を参照して、車線変更経路の生成処理の一例について説明する。
図11は、車線変更動作を説明するための図である。
図11において、図示の便宜上、始点、終点、経路点を○で示す。
車線変更経路生成部27は、第nの車線から第n+1の車線へ車線変更する場合、第nの車線の終点を第nの車線から退出する退出点とし、第n+1の車線の終点から予め決められた点間(例えば、2点間)だけ戻った経路点P
n+1 M-2を、第n+1の車線に進入するための進入点とする。例えば、
図11に示すように、第0の車線から第1の車線へ車線変更する場合の車線変更を想定すると、第0の車線の終点L
01を退出点とし、第1の車線の終点L
11から2点間だけ戻った経路点P
1 M-2を進入点とする。そして、車線変更経路生成部27は、退出点を始点とし、進入点を終点として結んだ経路を車線変更経路として生成する。つまり、進入点は、車線変更前に走行していた変更前車線の終点に対応する以外の経路点となる。車線変更経路に関する情報は、走行経路データとは別に作成されてもよいし、走行経路データに車線変更経路に関する情報を含めてもよい。
なお、進入点に戻った振動ローラ1は、第1の車線の始点L
10にまで走行して戻る。その後、振動ローラ1は、第1の車線に沿って転圧作業をする。このとき、進入点から第1の車線の始点L
10にまでの走行は転圧回数として計数しないことが好ましい。以降、転圧と車線変更を繰り返し、最終車線の転圧を完了させる。
【0043】
<振動ローラ>
図12を参照して、振動ローラ1の構成について説明する。振動ローラ1は、転圧を行う建設機械の一例である。振動ローラ1は、車体10と、車体10の前後に取り付けられた二つの鉄輪11,11と、車体10の下部に配置されたアーティキュレート機構12と、車体10の上部に設置された測位用アンテナ13および通信アンテナ14と、制御装置15と、機体情報取得手段S(
図14参照)とで構成されている。振動ローラ1は、鉄輪11,11の回転方向を変更することで、前進および後進が可能である。
【0044】
車体10は、振動ローラ1の本体となるものである。車体10は、内部に図示しない駆動手段を収容する。以下では、「ローラの方位角G」といった場合には、車体10の方向を意味する。
鉄輪11は、図示しない振動を発生する装置を備え、振動しながら回転することで地面を転圧する。以下では、前側の鉄輪11を前輪11aと呼び、後側の鉄輪11を後輪11bと呼ぶ場合がある。
【0045】
アーティキュレート機構12は、振動ローラ1を旋回させるための機構であり、車体10の下部に設置される。アーティキュレート機構12は、前輪11aを回転自在に保持する前輪保持部12aと、後輪11bを回転自在に保持する後輪保持部12bと、前輪保持部12aおよび後輪保持部12bを連結するセンターピン12cと、前輪保持部12aと後輪保持部12bとの間に介設されるステアリングシリンダ(図示せず)とを備えている。制御装置15から進行方向を修正する制御指令(ステアリング角度θを制御指令角度とする制御指令)を受信すると、ステアリング角度θに応じてステアリングシリンダが伸縮する。そして、ステアリングシリンダが伸縮すると、センターピン12cを中心に前輪保持部12aおよび後輪保持部12bが屈折し、それに伴い前輪11aおよび後輪11bの方向が変化する。
【0046】
測位用アンテナ13は、測位用衛星3(
図1参照)から発信される電波を受信するものである。具体的には、振動ローラ1の制御装置15は、測位用アンテナ13を介して測位用衛星3から軌道位置情報や時刻情報などを受信する。制御装置15は、測位用衛星3から軌道位置情報や時刻情報を用いて振動ローラ1の位置を計算する。
ここで、前輪11aに後輪11bが追従するというアーティキュレート機構12の特性を考慮して、自動走行制御を行う基準点を振動ローラ1が進んでいる側の鉄輪11の回転軸の中心位置または回転軸の中心位置を通る鉛直線上に設けることが好ましい。そのため、本実施形態では、振動ローラ1の位置を振動ローラ1が進んでいる側の鉄輪11の回転軸の中心位置の真上になるように演算により補正を行うことにする。つまり、振動ローラ1は、前後進を繰り返す往復走行により所定の回数だけ転圧を行うので、前進時には前輪11aが基準点となり、後進時には後輪11bが基準点となるように補正を行う。そして、振動ローラ1の制御を行う際に基準となる方向(基準方向)は、基準点を設定した側の鉄輪11(前輪11aまたは後輪11b)の向きθJとする。
【0047】
図13を参照して、振動ローラ1の自動走行制御を行う際の基準点および基準方向について説明する。
図13は、振動ローラ1のアーティキュレート機構12の概略図であり、(a)は直進時の状態を示し、(b)は旋回時の状態を示す。振動ローラ1は、上記説明した通り前後進を行うことが可能であるが、ここでは前進する場合を想定して説明を行う。そのため、基準点としての振動ローラ1の位置は、前輪11aの回転軸の中心位置に補正される。なお、詳細は後記するが、振動ローラ1の車体10の向き(方位角G(deg))は、姿勢検出センサS1(
図14参照)によって検出される。また、アーティキュレート機構12のステアリング角度θ(deg)は、ステア角度検出センサS3(
図14参照)によって検出される。
【0048】
図13(a)に示すように、直進時(ステアリング角度θが0°の状態)では、前輪保持部12aおよび後輪保持部12bが進行方向に対して直線状になっているので、前輪11aおよび後輪11bの回転軸が平行になる。つまり、振動ローラ1の方位角G(車体10の向き)と前輪11aの向きθJとは同じ方向になる。
一方、
図13(b)に示すように、右旋回時(ステアリング角度θが0°でない状態)では、センターピン12cを中心にして前輪保持部12aが進行方向に対して右側に屈折し、それに伴い前輪11aの右側が後輪11bに近接する方向に傾斜する。左旋回時の場合も同様にして、センターピン12cを中心にして前輪保持部12aが進行方向に対して左側に屈折し、それに伴い前輪11aの左側が後輪11bに近接する方向に傾斜する。これにより、前輪11aおよび後輪11bが同じ軌跡を通過する。この場合、振動ローラ1の方位角G(車体10の向き)と前輪11aの向きθJとは違う方向になる。旋回時における振動ローラ1の前輪11aの向きθJは、地面と前輪11aとの間の摩擦を無視した場合、振動ローラ1の方位角G(deg)にステアリング角度θ(deg)を加算(または減算)した値になる。
【0049】
なお、図示しないが、後進時における基準点は、後輪11bの回転軸の中心位置または回転軸の中心位置を通る鉛直線上に設定される。つまり、後進時においては、振動ローラ1の位置が後輪11bの回転軸の中心位置または回転軸の中心位置を通る鉛直線上に補正される。また、後進時における振動ローラ1の後輪11bの向き(基準方向)θJは、直進時,旋回時に関わらず振動ローラ1の方位角G(車体10の向き)の反対方向になる。
このようにして位置の補正を行うことにより、振動ローラ1の基準点の座標は、前進時の前輪11aの回転軸の中心位置または後進時の後輪11bの回転軸の中心位置である。そのため、自動走行の制御において、ステアリング動作に遅れが発生しにくい。なお、振動ローラ1の基準点はこれに限定されるものではなく、例えばセンターピン12cの位置またはセンターピン12cを通る鉛直線上に設けてもよい。
【0050】
図12に通信アンテナ14は、管理システム2との通信を行うものである。具体的には、振動ローラ1の制御装置15は、通信アンテナ14を介して管理システム2から走行経路や走行条件などの情報を受信する。また、制御装置15は、通信アンテナ14を介して管理システム2に対して振動ローラ1の機体情報を送信する。
【0051】
図14を参照して、機体情報取得手段Sの構成について説明する。
図14は、振動ローラ1の自動制御を実現する自動制御システムM1の概略図である。機体情報取得手段Sは、姿勢検出センサS1と、速度検出センサS2と、ステア角度検出センサS3と、前方探査センサS4とで構成されている。
姿勢検出センサS1は、振動ローラ1の方位角G(deg)を検出するものである。姿勢検出センサS1は、例えば、ジャイロであって、車体10の内部に設置される。方位角G(deg)は、制御装置15に受け渡され、慣性航法(INS)を用いた現在位置の算出などに用いられる。なお、測位用衛星3から送信された情報に基づいて計算した位置情報は、姿勢検出センサS1のドリフトの補正に用いられてもよい。
【0052】
速度検出センサS2は、振動ローラ1が前進および後進する速度V(km/h)を検出するものである。速度検出センサS2は、例えば、ロータリーエンコーダであって、後輪11bに設置される。速度V(km/h)は、制御装置15に受け渡され、慣性航法(INS)を用いた現在位置の算出などに用いられる。
【0053】
ステア角度検出センサS3は、アーティキュレート機構12のステアリング角度θ(deg)を検出するものである。ステア角度検出センサS3は、例えば、ポテンショメータであって、アーティキュレート機構12のセンターピン12cに設置される。ステアリング角度θ(deg)は、制御装置15に受け渡され、振動ローラ1の走行方向の修正などに用いられる。なお、ステアリングシリンダのロッドの進退量を検出するセンサをステア角度検出センサS3としてもよい。
【0054】
前方探査センサS4は、振動ローラ1の前方方向の物体情報Q(座標)を検出するものである。前方探査センサS4は、例えば、2Dや3Dのスキャナであって、車体10の前方上部に設置される。物体情報Q(座標)は、制御装置15に受け渡され、障害物の検知および停止制御などに用いられる。
【0055】
図14に示す制御装置15は、機体情報取得手段Sが取得した情報や管理システム2から受信した情報などを用いて、設定された走行経路に沿った自動走行の制御を行うものである。制御装置15は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等により構成される。
施工管理者は、走行経路ファイルを自動走行支援装置2B(
図2参照)に読み込み、車線ごとの走行回数や走行速度などの設定を行う。施工管理者は、設定が完了した後で、走行開始ボタンを押下することで振動ローラ1は自動走行を開始する。振動ローラ1は、経路点P
nmを目標点とすることで、経路点P
nmを順番に通過しながら走行する。これにより、曲線を有する車線であっても、曲線を短い連続した直線として走行する。そのため、点間距離Lが過大であると、直線と方向転換が目立ち振動ローラ1の動きが滑らかにならない。曲率半径が100m程度であれば「L=2~5m」程度に設定することで実用上は問題ないことが確認された。
【0056】
振動ローラ1は、ある車線を規定回数だけ転圧したのち、車線変更を行う。車線変更では、次の車線上の経路点Pnmから適当な進入点を選択し、該時点での目標点(現在の車線の終端点)から選択した経路点Pnmに向かって走行するように制御を行う。ここで、進入点の定義方法は、例えば車線端点から規定の点数だけ反対側に遷移した点とすることができる。または、現在位置(端点)とは反対側の、次の車線にある端点としてもよい。上記動作を最終車線まで繰り返すことにより、走行を完了する。
【0057】
[処理]
<走行経路生成方法>
図15を参照して(適宜、
図3を参照)、本発明の実施形態に係る走行経路生成方法について説明する。
図15は、走行経路生成方法の工程を示すフローチャートの例示である。
最初に、走行経路生成装置2Aの位置情報取得部21は、三角コーン4の位置情報を取得する(ステップS11)。三角コーン4の位置情報から作業範囲がきまる。次に、走行経路生成部22は、走行経路生成装置2Aのオペレータから入力された走行条件を取得する(ステップS12)。次に、走行経路生成部22は、三角コーン4の位置情報および走行条件に基づいて走行範囲を計算する(ステップS13)。次に、走行経路生成部22は、計算した走行範囲内に設ける車線を計算する(ステップS14)。次に、走行経路生成部22は、計算した車線に設ける経路点を計算する(ステップS15)。最後に、走行経路生成部22は、ステップS13~S15の計算結果を含む走行経路ファイル(
図5参照)を出力する(ステップS16)。
【0058】
<自動走行方法>
図16を参照して(適宜、
図3を参照)、本発明の実施形態に係る自動走行方法について説明する。
図16は、自動走行方法の工程を示すフローチャートの例示である。
最初に、自動走行支援装置2Bは、走行経路ファイルを読み込み(ステップS21)、施工管理者は、車線ごとの走行回数や走行速度などの設定を行う(ステップS22)。施工管理者は、設定が完了した後で、走行開始ボタンを押下することで振動ローラ1は自動走行を開始する。振動ローラ1は、一つの車線の転圧作業を実施し(ステップS23)、作業範囲を逸脱することも無く(ステップS31で“No”)、作業員5による作業範囲への進入検知も無ければ(ステップS32で“No”)、実施後に全ての車線の転圧作業を完了したか否かを判定する(ステップS24)。全ての車線の転圧作業が完了していない場合(ステップS24で“No”)、振動ローラ1は車線変更を実施し(ステップS25)、次の車線の転圧作業を実施する(ステップS23)。全ての車線の転圧作業が完了している場合(ステップS24で“Yes”)、転圧作業が完了となる。一方、振動ローラ1が作業範囲を逸脱した場合(ステップS31で“Yes”)、自動走行支援装置2Bは、走行経路生成装置2Aの第1走行停止部24を利用して、振動ローラ1の走行を停止し(ステップS33)、転圧作業を終了する。また一方、作業員5による作業範囲への進入検知があった場合(ステップS32で“Yes”)、自動走行支援装置2Bは、走行経路生成装置2Aの第1走行停止部24を利用して、振動ローラ1の走行を停止し(ステップS33)、転圧作業を終了する。
【0059】
なお、自動走行支援装置2Bは、自動走行中の振動ローラ1に対して任意に与えられた1点(例:重心)が経路点を通過するように振動ローラ1を制御できるため、生成した走行経路上を振動ローラ1が確実に自動走行できる。例えば、振動ローラ1の重心と最寄りの経路点との距離が所定値以上となった場合、重心が経路点を通過するように振動ローラ1の進行方向を調整できる。
【0060】
[まとめ]
本実施形態によれば、目印として、例えばGNSSアンテナを備えた三角コーン4を所望の位置に配置すれば、作業範囲の幾何情報を設定できる。よって、測量や図面からの割り出しによる座標設定作業が不要になる。また、作業範囲が決まれば、所定のルールに従って走行経路は自在に設定できる。よって、走行経路を容易に生成することができる。また、目印の配置次第で作業範囲の形状を自在に設定でき、しかも、そのような作業範囲であっても走行経路は生成可能であるため、現場状況に応じた柔軟な自動化施工を実現できる。また、目印は現場の作業員に対して作業範囲を明示し、作業員を注意喚起する役割を果たすので、自動化施工の安全性を向上させることができる。
また、作業範囲から所定量だけ内側に離隔した走行範囲において走行経路を生成することで、振動ローラ1による自動化施工が行われる範囲を確実に設定できる。よって、例えば、作業範囲及び走行範囲に囲まれた範囲に建設機械が進入した場合の制御内容(例:自動化施工に異常が発生した可能性を報知)を容易に設定できる。また、三角コーン4を走行範囲から除外できる。
また、走行経路上に所定間隔で経路点を設定することで、自動走行中の建設機械に対して任意に与えられた1点(例:重心)が経路点を通過するように建設機械を制御できるため、生成した走行経路上を建設機械が確実に自動走行できる。
また、車線変更を適切に行うことができる。
また、作業範囲の外側にいる作業員に対して、自動化施工の安全性を向上させることができる。
また、作業範囲の内側にいる作業員に対して、自動化施工の安全性を向上させることができる。
【0061】
[変形例]
(a):作業範囲を設定するための目印は、三角コーン4に限らず、例えば、GNSSセンサを備えた看板や標識でもよい。また、GNSSセンサを組み込んだデジタルサイネージでもよい。また、作業範囲を設定するための目印は、4つに限らず、3つ以下でもよいし、5つ以上でもよい。また、作業範囲の形状は、矩形状に限らず、閉じた平面状を呈するようにしてもよい。また、作業範囲と走行範囲は相似である必要はない。走行範囲内に生成する走行経路は、曲線であってもよい。例えば、移動不可能な障害物を含む走行範囲を設定する場合、その障害物を迂回する走行経路を生成してもよい。曲線の走行経路は、複数の経路点からなる折れ線として近似してもよい。走行範囲内に生成する複数の走行経路を平行な直線とする場合、各走行経路は走行範囲の辺と平行でなくてもよい。この場合、走行範囲のうち複数の走行経路でカバーしきれない余った範囲に対して転圧するための走行経路を別途生成してもよい。
(b):本実施形態で示すような、矩形状の走行範囲に複数本の走行経路を生成する場合、各走行経路の始点および終点を設定すれば十分であり、走行経路の途中に経路点を設定する計算は省略できる。
(c):本実施形態では、第1走行停止部24および第2走行停止部25を走行経路生成装置2Aが備えるようにしたが、自動走行支援装置2Bが備えるようにしてもよい。
(d):本実施形態では、車線変更の際、走行範囲内に進入点を設定するようにした(
図11参照)。しかし、例えば、作業範囲の内側かつ走行範囲の外側に進入点を設定してもよい。
(e):本実施形態では、振動ローラ1、三角コーン4、作業員5の位置情報は、測位用衛星3から取得するようにした。しかし、例えば、作業範囲全体を上方から撮影する撮影装置を導入し、撮影画像を解析することで振動ローラ1、三角コーン4、作業員5の位置情報を取得するようにしてもよい。
【0062】
(f):本実施形態で説明した種々の技術を適宜組み合わせた技術を実現することもできる。
(g):本実施形態で説明したソフトウェアをハードウェアとして実現することもでき、ハードウェアをソフトウェアとして実現することもできる。
(h):その他、ハードウェア、ソフトウェア、フローチャートなどについて、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
【符号の説明】
【0063】
1 振動ローラ(建設機械)
2 管理システム
2A 走行経路生成装置
2B 自動走行支援装置
3 測位用衛星
10 車体
11a 前輪(鉄輪)
11b 後輪(鉄輪)
12 アーティキュレート機構
12c センターピン
13 測位用アンテナ
14 通信アンテナ
15 制御装置
S 機体情報取得手段
21 位置情報取得部
22 走行経路生成部
23 車線変更経路生成部
24 第1走行停止部
25 第2走行停止部
100 自動化施工システム
600 走行経路生成画面
610 走行経路表示領域
620 座標表示領域
630 走行条件入力領域
640 経路生成ボタン
650 保存ボタン