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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170731
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】非常放送システム
(51)【国際特許分類】
   G08B 27/00 20060101AFI20241204BHJP
   G08B 17/00 20060101ALI20241204BHJP
   H04R 27/00 20060101ALI20241204BHJP
   H04H 20/59 20080101ALI20241204BHJP
【FI】
G08B27/00 B
G08B17/00 F
H04R27/00 C
H04H20/59
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087404
(22)【出願日】2023-05-29
(71)【出願人】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127845
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 壽彦
(72)【発明者】
【氏名】和井田 優太
【テーマコード(参考)】
5C087
5G405
【Fターム(参考)】
5C087AA37
5C087DD04
5C087DD20
5C087EE14
5C087FF01
5C087FF02
5C087FF04
5C087GG07
5C087GG08
5C087GG09
5C087GG45
5C087GG66
5C087GG68
5C087GG82
5C087GG84
5G405AA08
5G405AB02
5G405AD06
5G405CA25
5G405CA28
(57)【要約】
【課題】火災断定後の火災放送を行った後に、更に避難誘導の効果を向上させる非常放送システムを提供する。
【解決手段】本発明に係る非常放送システム1は、防災対象エリア11の各所に設けられた非常放送用スピーカー3と、火災時に非常放送用スピーカー3を通じて非常放送を行う非常放送制御部9とを備えたものであって、非常放送用スピーカー3に対応して設けられ、人の所在を感知する人感センサ5をさらに備え、非常放送制御部9は、各人感センサ5の感知情報を監視し、いずれかの人感センサ5の感知エリア内にいる人が特定の状態にある場合には、当該人感センサ5の感知エリアに対応する非常放送用スピーカー3からの非常放送を停止すると共に、該非常放送用スピーカー3から前記特定の状態にある人に対して個別誘導放送を行うことを特徴とする。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
防災対象エリアの各所に設けられた非常放送用スピーカーと、火災時に前記非常放送用スピーカーを通じて非常放送を行う非常放送制御部とを備えた非常放送システムであって、
前記非常放送用スピーカーに対応して設けられ、人の所在を感知する人感センサをさらに備え、
前記非常放送制御部は、
各人感センサの感知情報を監視し、いずれかの人感センサの感知エリア内にいる人が特定の状態にある場合には、当該人感センサの感知エリアに対応する非常放送用スピーカーからの非常放送を停止すると共に、該非常放送用スピーカーから前記特定の状態にある人に対して個別誘導放送を行うことを特徴とする非常放送システム。
【請求項2】
防災対象エリアの各所に設けられた非常放送用スピーカーと、火災時に前記非常放送用スピーカーを通じて非常放送を行う非常放送制御部とを備えた非常放送システムであって、
前記非常放送用スピーカーに対応して設けられ、人の所在を感知する人感センサと、
該人感センサの感知エリアに対応して設けられた指向性スピーカーと、をさらに備え、
前記非常放送制御部は、
各人感センサの感知情報を監視し、いずれかの人感センサの感知エリア内にいる人が特定の状態にある場合には、当該人感センサの感知エリアに対応する指向性スピーカーから前記特定の状態にある人に対して個別誘導放送を行うことを特徴とする非常放送システム。
【請求項3】
前記指向性スピーカーの指向方向を制御する指向性スピーカー制御部をさらに有し、
該指向性スピーカー制御部は、前記人感センサの感知情報に応じて前記指向性スピーカーの指向方向を制御することを特徴とする請求項2に記載の非常放送システム。
【請求項4】
前記特定の状態とは、一つの人感センサの感知エリア内に一定時間滞留している状態であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の非常放送システム。
【請求項5】
前記特定の状態とは、適切な避難方向と反対方向に移動している状態であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の非常放送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火災時に非常放送を行う非常放送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物内で火災が発生した際に、在館者に火災を知らせて避難を促す非常放送システムが知られている。
非常放送システムは、建物内の火災感知器が発報すると、発報した火災感知器の設置階及びその直上階のスピーカーから「ただいま〇〇階の火災感知器が作動しました。現在確認中ですので・・・」という音声を放送する(感知器発報放送)。
【0003】
そして、火災が発生したと断定される場合、例えば、感知器発報から所定の時間が経過した場合や防災センターの係員等が現場で火災を確認し、発信機の押しボタン操作をした場合などには、建物内の全てのスピーカーから「火事です。火事です。〇〇階で火災が発生しました。落ち着いて避難してください」という音声を放送する(火災放送)。
【0004】
このような非常放送システムの例が特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-144419号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
火災断定後に放送される火災放送は館内の全スピーカーから一斉に放送するので、館内のすべての人に迅速に火災の発生を伝えることができ、避難活動の初期にとても有効である。
しかし、火災の発生と避難の必要性が伝えられた後、人々は避難を開始するが、避難行動は区々であり、同じ音声の繰り返しである火災放送では、避難行動開始後には放送効果は薄くなる。
この点、火災放送用のスピーカーは建物内のいたるところに設置されており、避難者に対して音声で情報伝達ができる有効な設備であるため、人命救助の観点から更なる活用が望まれていた。
【0007】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、火災断定後の火災放送を行った後に、更に避難誘導の効果を向上させる非常放送システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明に係る非常放送システムは、防災対象エリアの各所に設けられた非常放送用スピーカーと、火災時に前記非常放送用スピーカーを通じて非常放送を行う非常放送制御部とを備えたものであって、
前記非常放送用スピーカーに対応して設けられ、人の所在を感知する人感センサをさらに備え、
前記非常放送制御部は、
各人感センサの感知情報を監視し、いずれかの人感センサの感知エリア内にいる人が特定の状態にある場合には、当該人感センサの感知エリアに対応する非常放送用スピーカーからの非常放送を停止すると共に、該非常放送用スピーカーから前記特定の状態にある人に対して個別誘導放送を行うことを特徴とするものである。
【0009】
(2)また、本発明に係る非常放送システムは、防災対象エリアの各所に設けられた非常放送用スピーカーと、火災時に前記非常放送用スピーカーを通じて非常放送を行う非常放送制御部とを備えたものであって、
前記非常放送用スピーカーに対応して設けられ、人の所在を感知する人感センサと、
該人感センサの感知エリアに対応して設けられた指向性スピーカーと、をさらに備え、
前記非常放送制御部は、
各人感センサの感知情報を監視し、いずれかの人感センサの感知エリア内にいる人が特定の状態にある場合には、当該人感センサの感知エリアに対応する指向性スピーカーから前記特定の状態にある人に対して個別誘導放送を行うことを特徴とするものである。
【0010】
(3)また、上記(2)に記載のものにおいて、前記指向性スピーカーの指向方向を制御する指向性スピーカー制御部をさらに有し、
該指向性スピーカー制御部は、前記人感センサの感知情報に応じて前記指向性スピーカーの指向方向を制御することを特徴とするものである。
【0011】
(4)また、上記(1)乃至(3)のいずれかに記載のものにおいて、前記特定の状態とは、一つの人感センサの感知エリア内に一定時間滞留している状態であることを特徴とするものである。
【0012】
(5)また、上記(1)乃至(3)のいずれかに記載のものにおいて、前記特定の状態とは、適切な避難方向と反対方向に移動している状態であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明においては、人感センサと指向性スピーカーを備えたことにより、避難が困難な人を検知して個別に避難誘導を行うことができる。これにより、全館一斉放送の火災放送で在館者全員に避難を促した後に、避難困難者を個別にサポートすることができるようになり、非常放送における人命救助の効果が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施の形態にかかる非常放送システムを説明するためのブロック図である。
図2】個別避難誘導の対象となる例を説明する図である。
図3図3(a)は、図2のパターンAにおける個別避難誘導の説明図であり、図3(b)及び図3(c)は、図2のパターンBにおける個別避難誘導の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施の形態に係る非常放送システム1は、図1に示すように、非常放送用スピーカー3と、人感センサ5と、指向性スピーカー7と、非常放送制御部9とを備えている。非常放送用スピーカー3、人感センサ5及び指向性スピーカー7は複数階建ての防災対象エリア11の各所に設けられ、非常放送制御部9は防災センター13に設けられる。
【0016】
非常放送用スピーカー3は、従来行われている非常放送、即ち感知器発報放送や火災放送を行うものであり、防災基準に基づき、壁から10m以内の位置に10m間隔で防災対象エリア11の各所に設置されている。
【0017】
また各非常放送用スピーカー3には、所定エリア内の人の所在を感知する人感センサ5と、特定の方向に向けて音を発する指向性スピーカー7がそれぞれ設けられている。なお、人感センサ5と指向性スピーカー7は各非常放送用スピーカー3に対応して設けられていればよく、非常放送用スピーカー3自体に取り付けても良いし、非常放送用スピーカー3の近傍にそれぞれ単体で設置されていてもよい。いずれの場合も、指向性スピーカー7からの音声が届く範囲に人感センサ5の感知範囲が含まれるようにする。
防災対象エリア11内に設けられた全ての非常放送用スピーカー3、人感センサ5及び指向性スピーカー7はそれぞれ回線を介して非常放送制御部9と接続されている。
【0018】
防災対象エリア11及び防災センター13には、図示しない火災監視システムが設けられており、非常放送制御部9は火災監視システムの信号に基づいて非常放送を行う。
火災監視システムは、防災対象エリア11に設けられた火災感知器、発信機及び防災センター13に設けられた受信機によって構成される。
火災感知器は、例えば煙感知器等からなり、火災を感知すると発報信号を受信機に送信する。
発信機は、押しボタン操作によって火災発生を通知するものであり、操作されると火災信号を受信機に送信する。
受信機は、火災感知器から発報信号を受信すると、感知器発報信号を非常放送制御部9に送信する。また、発信機から火災信号を受信すると、火災確定信号を非常放送制御部9に送信する。
【0019】
非常放送制御部9は、受信機から感知器発報信号を受信すると、発報した火災感知器が設置された階及びその直上階に設けられた非常放送用スピーカー3から感知器発報放送を行う。
【0020】
非常放送制御部9は、感知器発報放送を行った後、以下のいずれかの条件が満たされた場合には、館内に設けられた全ての非常放送用スピーカー3から一斉に火災放送を行う。
(条件1)火災確定信号を受信する
(条件2)第1報の感知器発報信号を受信した後に第2報の感知器発報信号を受信する
(条件3)第1報の感知器発報信号から一定時間が経過する
なお、感知器発報信号を受信することなく火災確定信号を受信した場合には、感知器発報放送を行うことなく火災放送を行う。
【0021】
非常放送制御部9は、火災放送を開始後、館内各所の人感センサ5を一斉に作動させる。
人感センサ5は、感知エリア内の人の所在を感知し、その感知情報を非常放送制御部9に送信する。非常放送制御部9は、非常放送用スピーカー3からの火災放送を続けると共に、各人感センサ5の感知エリア内の人の数や動きを監視する(図1の(1))。
【0022】
非常放送制御部9は、各人感センサ5の感知情報から、いずれかの人感センサ5の感知エリア内にいる人が特定の状態にあると判断した場合には、当該人感センサ5に対応する指向性スピーカー7から個別誘導放送を行う。この個別誘導放送の対象となる特定の状態について図2を用いて説明する。図2の「人感センサ検出範囲」内の点は、人感センサ5によって検出された人を示している。
【0023】
例えば、図2のパターンAのように、一つの人感センサ5の感知エリア内に一定時間一人で滞留している状態の人を個別誘導放送の対象とする。非常放送制御部9は、パターンAの状態にある人を検知すると、当該人感センサ5の感知エリアに対応する指向性スピーカー7から個別誘導放送を行う(図1の(2))。パターンAにおける個別誘導放送の様子を図3(a)に示す。
【0024】
パターンAにおける個別誘導放送としては、例えば「煙を吸わないよう低い姿勢で移動を開始してください」という音声を放送し、滞留している人15に安全な避難を促す。
【0025】
さらに、図2のパターンBのように、適切な避難方向(例えば避難口がある方向)と反対方向に移動している状態の人を個別誘導放送の対象としてもよい。パターンBの状態にある人を検知した場合も、非常放送制御部9は、当該人感センサ5の感知エリアに対応する指向性スピーカー7から個別誘導放送を行う(図1の(2))。パターンBにおける個別誘導放送の様子を図3(b)に示す。
【0026】
パターンBにおける個別誘導放送としては、例えば「避難口から離れています」や「反対方向に進んでください」という音声を放送し、避難する人15を正しい避難方向に誘導する。
【0027】
また、指向範囲(音声が届く範囲)が人感センサ5の感知範囲よりも小さい指向性スピーカー7を用いることもできる。
その場合、指向性スピーカー7の指向方向を制御する指向性スピーカー制御部をさらに設け、人感センサ5の感知情報、具体的には人の位置情報に基づき、該人のいる方向に指向性スピーカー7の指向方向を向けて個別誘導放送を行うようにする。
【0028】
例えば、避難口から離れる方向に移動する人15(パターンB)を検知した場合には、この人15の動きに追従するように指向方向を制御しつつ、「避難口から離れています」という音声を放送する(図3(b))。また、この音声を聞いて人15が避難口方向へ進行方向を変えた場合には、この動きに追従するように指向方向を制御しつつ、「避難口に近づいています」や「避難口まであと〇〇mです」という音声を放送して避難をサポートする(図3(c))。
【0029】
なお、パターンCのように、パターンA及びBのどちらにも該当しない場合には、非常放送用スピーカー3からの火災放送(全館鳴動)を継続する。全館で火災放送が行われている中で、一部のエリアでのみ個別誘導放送を同時に行うが、指向性スピーカー7はある一方向にだけ直線的に音を飛ばすため、個別誘導放送の音声が全館一斉放送の火災放送の音声に混ざることがなく、対象者は個別誘導放送を明瞭に聞くことができる。
【0030】
また、指向性スピーカー7から個別誘導放送を行う際に、同エリアに対応する非常放送用スピーカー3からの非常放送(火災放送)を停止するとなおよい。個別誘導放送を行うエリアのみ火災放送を停止することで、対象者は個別誘導放送をより明瞭に聞きやすくなる。
【0031】
非常放送制御部9は、指向性スピーカー7からの個別誘導放送を続けると共に、人感センサ5の感知情報を監視する(図1の(3))。
個別誘導放送の対象者が人感センサ5の感知エリアから出た場合には、非常放送制御部9はこれを検知し、当該エリアに対応する指向性スピーカー7から個別誘導放送を停止する。そして、当該エリアに対応する非常放送用スピーカー3からの非常放送(火災放送)を再開する(図1の(4))。
【0032】
以上のように、本実施の形態においては、人感センサ5と指向性スピーカー7を備えたことにより、避難が困難な人を検知して個別に避難誘導を行うことができる。これにより、全館一斉放送の火災放送で在館者全員に避難を促した後に、避難困難者を個別にサポートすることができるようになり、非常放送における人命救助の効果が向上する。
【0033】
なお、本発明の個別誘導放送を行う対象は、検知した避難困難者の数が一人である場合に限らない。図2に例示したパターンA、Bにおいて、同様の状態にある避難者をエリア内に複数人感知した場合にも、前述したような個別誘導放送を行う。
一方で検知した避難困難者の数が一人である場合に限定して個別誘導放送を行うようにしても良い。一人で行動している場合、より不安を感じているため、優先して個別誘導放送を行う。
【0034】
また、図1は非常放送用スピーカー3と指向性スピーカー7を別体で構成した例であるが、両スピーカーが一体的に構成されていてもよい。例えば、非常放送用スピーカー3の機能と指向性スピーカー7の機能を一つのスピーカーに持たせ、放送に応じて指向性の有無を切り替えるようにしてもよい。
【0035】
また、上記実施の形態は、指向性スピーカー7を用いて個別誘導放送を行う例であったが、指向性スピーカー7を備えずに非常放送用スピーカー3から個別誘導放送を行うようにしてもよい。その場合、下記のように個別誘導放送を実施する。
非常放送制御部9は、各人感センサ5の感知情報を監視し、いずれかの人感センサ5の感知エリア内にいる人が特定の状態(図2のパターンAやパターンB)にある場合には、当該人感センサ5の感知エリアに対応する非常放送用スピーカー3からの非常放送を停止する。そして、当該非常放送用スピーカー3から上記特定の状態にある人に対し、前述したような個別誘導放送を行う。
このように、非常放送用スピーカー3からの放送内容を切り替えるようにして、個別誘導放送を行ってもよい。
【符号の説明】
【0036】
1 非常放送システム
3 非常放送用スピーカー
5 人感センサ
7 指向性スピーカー
9 非常放送制御部
11 防災対象エリア
13 防災センター
15 人
図1
図2
図3