(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170732
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】自動給餌システム、映像解析装置、自動給餌調整装置、自動給餌方法、映像解析プログラム、自動給餌調整プログラム及び記録媒体
(51)【国際特許分類】
A01K 61/85 20170101AFI20241204BHJP
【FI】
A01K61/85
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087408
(22)【出願日】2023-05-29
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003166
【氏名又は名称】弁理士法人山王内外特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐賀 郁哉
【テーマコード(参考)】
2B104
【Fターム(参考)】
2B104AA01
2B104CA01
2B104CF01
2B104CF28
2B104EA05
2B104ED36
2B104GA01
(57)【要約】
【課題】生簀内の養殖魚を適切なサイズに成長させることができない場合が生じる。
【解決手段】自動給餌システムは、複数のネットワークカメラ10それぞれにより撮影された映像に基づく映像データを合成した水槽100全体の画像データに水槽100内に飼育されている養殖魚全体の分布状態を示す分布情報を重ね合わせた養殖魚分布画像データを作成する映像解析装置50と、設定された自動給餌情報を映像解析装置50からの養殖魚全体の分布状態を示す分布情報を用いて自動給餌調整情報を作成する自動給餌調整装置60を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが生簀の異なる領域を撮影し、生簀全体を撮影する複数のネットワークカメラと、
前記複数のネットワークカメラそれぞれにより撮影された映像に基づく映像データを合成した前記生簀全体の画像データに前記生簀内に飼育されている養殖魚全体の分布状態を示す分布情報を重ね合わせた養殖魚分布画像データを作成する映像解析装置と、
設定された自動給餌情報が入力され、入力された自動給餌情報を前記映像解析装置からの前記養殖魚全体の分布状態を示す分布情報を用いて自動給餌調整情報を作成する自動給餌調整装置と、
を備える自動給餌システム。
【請求項2】
前記映像解析装置は、前記複数のネットワークカメラそれぞれにより撮影された映像に基づく映像データを合成した前記生簀全体の画像データの作成、前記複数のネットワークカメラそれぞれにより撮影された映像に基づく映像データから得た前記生簀内に飼育されている養殖魚の検出結果による前記生簀全体における養殖魚の分布情報の算出、及び、作成された前記生簀全体の画像データに前記算出された生簀全体における養殖魚の分布情報を重ね合わせた養殖魚分布画像データの作成を実施する請求項1に記載の自動給餌システム。
【請求項3】
前記映像解析装置は、前記複数のネットワークカメラそれぞれにより撮影された映像に基づく映像データを合成して前記生簀全体の画像データを得る画像合成部と、
前記複数のネットワークカメラそれぞれにより撮影された映像に基づく映像データから前記生簀内に飼育されている養殖魚を検出する養殖魚検出部と、
前記養殖魚検出部により前記複数のネットワークカメラそれぞれによる映像データ毎に検出された養殖魚を計測し、当該映像データ毎の魚数を計測する魚数計測部と、
前記魚数計測部により算出された前記複数のネットワークカメラそれぞれによる映像データ毎の魚数により前記生簀内に飼育されている養殖魚全体の分布状態を示す分布情報を算出する分布算出部と、
前記画像合成部により得た画像データに前記分布算出部により算出された分布情報を重ね合わせた養殖魚分布画像データを作成する養殖魚分布画像データ作成部と、
を備える請求項1に記載の自動給餌システム。
【請求項4】
それぞれが前記生簀に対して異なった位置に配置され、それぞれが前記生簀内に養殖魚の給餌を実施する複数の自動給餌機を備え、
前記自動給餌調整装置は前記設定された自動給餌情報である養殖魚に対する給餌情報を前記映像解析装置からの分布情報を用いて前記複数の自動給餌機に対する給餌調整情報を作成する給餌情報調整部を備える、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の自動給餌システム。
【請求項5】
それぞれが前記生簀に対して異なった位置に配置され、それぞれが前記生簀内に異なった水流を発生させる複数のポンプを備え、
前記自動給餌調整装置は前記設定された自動給餌情報であるポンプ制御情報を前記映像解析装置からの分布情報を用いて前記複数のポンプに対するポンプ制御調整情報を作成するポンプ制御情報調整部を備える、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の自動給餌システム。
【請求項6】
複数のネットワークカメラそれぞれにより撮影された映像に基づく映像データを合成して生簀全体の画像データを得る画像合成部と、
前記複数のネットワークカメラそれぞれにより撮影された映像に基づく映像データから前記生簀内に飼育されている養殖魚を検出する養殖魚検出部と、
前記養殖魚検出部により前記複数のネットワークカメラそれぞれによる映像データ毎に検出された養殖魚を計測し、当該映像データ毎の魚数を計測する魚数計測部と、
前記魚数計測部により算出された前記複数のネットワークカメラそれぞれによる映像データ毎の魚数により前記生簀内に飼育されている養殖魚全体の分布状態を示す分布情報を算出する分布算出部と、
前記画像合成部により得た画像データに前記分布算出部により算出された分布情報を重ね合わせた養殖魚分布画像データを作成する養殖魚分布画像データ作成部と、
を備える自動給餌システムの映像解析装置。
【請求項7】
それぞれが前記生簀に対して異なった位置に配置される複数の自動給餌機に対する養殖魚への設定された給餌情報を、それぞれが生簀の異なる領域を撮影する複数のネットワークカメラそれぞれにより撮影された映像に基づく前記生簀内に飼育されている養殖魚全体の分布状態を示す分布情報を用いて前記複数の自動給餌機に対する給餌調整情報を作成する給餌情報調整部と、
それぞれが前記生簀に対して異なった位置に配置される複数のポンプに対する設定されたポンプ制御情報を、前記分布情報を用いて前記複数のポンプに対するポンプ制御調整情報を作成するポンプ制御情報調整部と、
を備える自動給餌システムの自動給餌調整装置。
【請求項8】
映像解析装置において、
画像合成部が複数のネットワークカメラそれぞれにより撮影された映像に基づく映像データを合成して生簀全体の画像データを得るステップと、
養殖魚検出部が前記複数のネットワークカメラそれぞれにより撮影された映像に基づく映像データから前記生簀内に飼育されている養殖魚を検出するステップと、
魚数計測部が、前記複数のネットワークカメラそれぞれによる映像データ毎に検出された養殖魚を計測し、当該映像データ毎の魚数を計測するステップと、
分布算出部が、前記複数のネットワークカメラそれぞれによる映像データ毎の魚数により前記生簀内に飼育されている養殖魚全体の分布状態を示す分布情報を算出するステップと、
養殖魚分布画像データ作成部が、前記画像データに前記分布情報を重ね合わせた養殖魚分布画像データを作成するステップと、を備え、
自動給餌調整装置において、
ポンプ制御情報調整部が、それぞれが前記生簀に対して異なった位置に配置される複数のポンプに対する設定されたポンプ制御情報を、前記分布情報を用いて前記複数のポンプに対するポンプ制御調整情報を作成するステップと、
給餌情報調整部が、それぞれが前記生簀に対して異なった位置に配置される複数の自動給餌機に対する養殖魚への設定された給餌情報を、前記分布情報を用いて前記複数の自動給餌機に対する給餌調整情報を作成するステップと、を備える
自動給餌方法。
【請求項9】
複数のネットワークカメラそれぞれにより撮影された映像に基づく映像データを合成して生簀全体の画像データを得る手順と、
前記複数のネットワークカメラそれぞれにより撮影された映像に基づく映像データから前記生簀内に飼育されている養殖魚を検出する手順と、
前記複数のネットワークカメラそれぞれによる映像データ毎に検出された養殖魚を計測し、当該映像データ毎の魚数を計測する手順と、
前記複数のネットワークカメラそれぞれによる映像データ毎の魚数により前記生簀内に飼育されている養殖魚全体の分布状態を示す分布情報を算出する手順と、
前記画像データに前記分布情報を重ね合わせた養殖魚分布画像データを作成する手順と、
をコンピュータに実行させる自動給餌システムの映像解析プログラム。
【請求項10】
それぞれが生簀に対して異なった位置に配置される複数の自動給餌機に対する養殖魚への設定された給餌情報を、それぞれが前記生簀の異なる領域を撮影する複数のネットワークカメラそれぞれにより撮影された映像に基づく前記生簀内に飼育されている養殖魚全体の分布状態を示す分布情報を用いて前記複数の自動給餌機に対する給餌調整情報を作成する手順と、
それぞれが前記生簀に対して異なった位置に配置される複数のポンプに対する設定されたポンプ制御情報を、前記分布情報を用いて前記複数のポンプに対するポンプ制御調整情報を作成する手順と、
をコンピュータに実行させる自動給餌システムの自動給餌調整プログラム。
【請求項11】
複数のネットワークカメラそれぞれにより撮影された映像に基づく映像データを合成して生簀全体の画像データを得る手順と、
前記複数のネットワークカメラそれぞれにより撮影された映像に基づく映像データから前記生簀内に飼育されている養殖魚を検出する手順と、
前記複数のネットワークカメラそれぞれによる映像データ毎に検出された養殖魚を計測し、当該映像データ毎の魚数を計測する手順と、
前記複数のネットワークカメラそれぞれによる映像データ毎の魚数により前記生簀内に飼育されている養殖魚全体の分布状態を示す分布情報を算出する手順と、
前記画像データに前記分布情報を重ね合わせた養殖魚分布画像データを作成する手順と、
をコンピュータに実行させる自動給餌システムの映像解析プログラムを記憶してある記録媒体。
【請求項12】
それぞれが生簀に対して異なった位置に配置される複数のポンプに対する設定されたポンプ制御情報を、それぞれが前記生簀の異なる領域を撮影する複数のネットワークカメラそれぞれにより撮影された映像に基づく前記生簀内に飼育されている養殖魚全体の分布状態を示す分布情報を用いて前記複数のポンプに対するポンプ制御調整情報を作成する手順と、
それぞれが前記生簀に対して異なった位置に配置される複数の自動給餌機に対する養殖魚への設定された給餌情報を、前記分布情報を用いて前記複数の自動給餌機に対する給餌調整情報を作成する手順と、
をコンピュータに実行させる自動給餌システムの自動給餌調整プログラムを記憶してある記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、生簀内に飼育されている養殖魚に自動的に給餌する自動給餌システムなどに関する。
【背景技術】
【0002】
養殖分野において、養殖魚の自動給餌方法及び自動給餌システムが特許文献1に示されている。
特許文献1に、自動給餌機と、自動給餌機の作動を制御する制御装置と、養殖魚の様子、特に捕食(摂餌)状況をリアルタイムに撮影するネットワークカメラと、環境センサーと、制御装置と通信ネットワーク(インターネット)を介して接続され、人工知能(AI)が内蔵されたクラウドサーバと、クラウドサーバと通信ネットワークを介して接続されたユーザー通信端末を備えた自動給餌システムが示されている。
【0003】
特許文献1に示された自動給餌システムにおいて、クラウドサーバが、人工知能を用いて機械学習することにより、1日当りの給餌量と給餌時間(タイミング)を自動的に決定(算出)し、養殖魚における捕食時の活性判定、つまり、捕食時における養殖魚の活性が高い(餌を食べている)か低い(餌を食べていない)かをネットワークカメラがリアルタイムに撮影したライブ映像(動画)の解析により行い、その判定結果に基づき自動給餌機の制御装置を制御(管理)し、その自動給餌機から養殖魚に投与する給餌の量や時間(タイミング)を自動的に調整する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に示された自動給餌システム及び自動給餌方法では、捕食時における養殖魚の活性が高いか低いかを用いて養殖魚に投与する給餌の量や時間を自動的に調整しているものの、養殖魚の捕食時において、生簀内に飼育されている養殖魚の分布に偏りがあると、養殖魚における捕食時の活性判定を誤判定する場合が生じる。
その結果、生簀内の養殖魚を均一なサイズに成長させることができない場合が生じる。
【0006】
本開示は、上記した点に鑑みてなされたものであり、生簀内に飼育されている養殖魚における捕食のばらつきを軽減し、生簀内に飼育されている養殖魚における育成の偏りを抑えて成長させることができる自動給餌システムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る自動給餌システムは、それぞれが生簀の異なる領域を撮影し、生簀全体を撮影する複数のネットワークカメラと、複数のネットワークカメラそれぞれにより撮影された映像に基づく映像データを合成した生簀全体の画像データに生簀内に飼育されている養殖魚全体の分布状態を示す分布情報を重ね合わせた養殖魚分布画像データを作成する映像解析装置と、設定された自動給餌情報を映像解析装置からの養殖魚全体の分布状態を示す分布情報を用いて自動給餌調整情報を作成する自動給餌調整装置を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、生簀内に飼育されている養殖魚における育成の偏りを抑えて成長させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態1に係る自動給餌システムを示す構成図である。
【
図2】実施の形態1に係る自動給餌システムに用いられる水槽において、水平面の領域を示す図である
【
図3】実施の形態1に係る自動給餌システムにおける映像解析装置を示すブロック図である。
【
図4】実施の形態1に係る自動給餌システムにおいて、水槽内に飼育している養殖魚全体の分布状態の一例を説明するため図である。
【
図5】実施の形態1に係る自動給餌システムにおける自動給餌調整装置を示すブロック図である。
【
図6】実施の形態1に係る自動給餌システムにおける自動給餌調整装置を用いたポンプによる水槽内の水流の制御を説明するための図である。
【
図7】実施の形態1に係る自動給餌システムにおける自動給餌調整装置を用いた自動給餌機による給餌量の制御を説明するための図である。
【
図8】実施の形態1に係る自動給餌システムにおける映像解析装置の動作を説明するフローチャートである。
【
図9】実施の形態1に係る自動給餌システムにおける自動給餌調整装置の動作を説明するフローチャートである。
【
図10】実施の形態1に係る自動給餌システムにおける映像解析装置、自動給餌調整装置のハード構成を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
実施の形態1に係る自動給餌システムを
図1から
図10に基づいて説明する。
実施の形態1に係る自動給餌システムは、生簀である水槽100内に飼育されている多数の養殖魚に自動に餌を給餌するシステムである。
なお、生簀として水槽に限られるものではないが、以下、水槽100として説明する。
実施の形態1に係る自動給餌システムは、
図1に示すように、複数のネットワークカメラ10と、データ振り分けスイッチ20と、映像解析装置30と、表示・操作端末40と、自動給餌調整装置50と、制御装置60と、複数の自動給餌機70と、複数のポンプ80を備える。
【0011】
複数のネットワークカメラ10はそれぞれ、リアルタイムに生簀である水槽100内に飼育されている養殖魚を撮影する。
複数のネットワークカメラ10それぞれは画角が重ならないように設置されて水槽の異なる領域を撮影し、複数のネットワークカメラ10すべてによって水槽100全体が撮影される。
【0012】
なお、画角が重ならないように設置とは、画角が完全に重ならないことを意味しているのではなく、隣接するネットワークカメラ10同士の周辺において、水槽100全体を撮影するために必要とする重なり部分及び設計裕度の範囲で重なっている設置状態を含むものである。
【0013】
複数のネットワークカメラ10は、例えば、
図2に示すように、1つのネットワークカメラ10が撮影できる撮影範囲に応じて複数行複数列(M行N列)に水槽100における水平面の領域を複数行複数列の領域に分割し、各領域に対して各ネットワークカメラ10を対応させて配置する。
【0014】
図2に示した例は、水平面において5行5列に水槽100を分割し、領域R
11から領域R
55に対応させてネットワークカメラ10
11からネットワークカメラ10
55が配置され、ネットワークカメラ10
11からネットワークカメラ10
55が対応した水槽100の領域R
11から領域R
55を撮影する例を、理解を助けるために示しているが、水槽100の平面は丸ではなく矩形など任意な形状で良い。
また、複数のネットワークカメラ10によって水槽100全体が撮影されればよく、水槽に合わせて複数のネットワークカメラ10は任意に配置される。
【0015】
複数のネットワークカメラ10それぞれにより撮影された映像に基づく映像データはデータ振り分けスイッチ20を経由して、映像解析装置30にデータ伝送される。
データ振り分けスイッチ20は、L2スイッチ又はL3スイッチなどネットワークに接続される一般に知られているデータ振り分けスイッチである。
【0016】
映像解析装置30は、設定されるタイミングにおいて、データ振り分けスイッチ20を経由して受信した複数のネットワークカメラ10それぞれにより撮影された映像に基づく映像データ(以下、単に複数の映像データと略称する)を合成した水槽100全体の映像データ(以下、画像データという)に、水槽100全体における養殖魚の分布情報を重ね合わせた養殖魚分布画像データを作成する。
設定されるタイミングは、例えば、複数の自動給餌機70により水槽100内に飼育されている養殖魚に給餌するタイミングである。
【0017】
映像解析装置30は、複数の映像データを合成した水槽100全体の画像データの作成、複数の映像データから得た養殖魚の検出結果による水槽100全体における養殖魚の分布情報の算出、及び、作成された水槽100全体の画像データに水槽100全体における養殖魚の分布情報を重ね合わせた養殖魚分布画像データの作成を実施する。
映像解析装置30は本例において映像解析サーバである。
【0018】
映像解析装置30は、
図3に示すように、映像受信部31と、画像合成部32と、合成画像記憶部33と、養殖魚検出部34と、魚数計測部35と、魚数計測結果記憶部36と、分布算出部37と、分布記憶部38と、養殖魚分布画像データ作成部39と、表示部30Aを備える。
映像受信部31は、複数のネットワークカメラ10それぞれからデータ振り分けスイッチ20を経由して配信された複数のネットワークカメラ10それぞれにより撮影された映像に基づく映像データを受信する。
【0019】
画像合成部32は、映像受信部31により受信した複数のネットワークカメラ10それぞれによる映像データを合成し、水槽100全体の映像データ(画像データ)を作成する。
画像合成部32は、複数のネットワークカメラ10それぞれからの映像データに対して各ネットワークカメラ10のレンズ情報を基準にゆがみ補正を施し、水槽100の対応した水平面における領域R11~R55を上部から俯瞰した映像データ(以下、ゆがみ補正映像データという)に変換する。
【0020】
画像合成部32は、各ネットワークカメラ10における設置時のカメラ固定位置の座標情報を基準に世界座標(共通座標)に変換し、各ゆがみ補正映像データに対して世界座標を紐づけする。
複数のネットワークカメラ10の内の一つのネットワークカメラ10の世界座標における特定座標を合成するための合成基準点とし、合成基準点に基づき、各ネットワークカメラ10の世界座標に基づいて複数のネットワークカメラ10に対するゆがみ補正映像データを用いて合成し、水槽100の上部から俯瞰した水槽100全体の画像データを得る。
合成画像記憶部33は画像合成部32からの画像データを記憶する。
【0021】
養殖魚検出部34は、映像受信部31により受信した複数のネットワークカメラ10それぞれによる映像データから水槽100内に飼育されている養殖魚を検出する。
養殖魚検出部34による検出は、学習モデルを用いた人工知能(AI)による物体検知技術を用いた検出である。
学習モデルの作成は、いわゆる既知の手法である「教師あり学習」を用い、事前に養殖魚が映っている複数の映像に基づく映像データを学習データとして学習させることにより、人工知能による物体検知技術を用いて養殖魚を検出する。
【0022】
魚数計測部35は養殖魚検出部34により複数のネットワークカメラ10それぞれによる映像データ毎に検出された養殖魚を計測、つまり検出された養殖魚を積算し、当該映像データ毎に映像データが示す映像内に映る魚数を計測する。
魚数計測部35は養殖魚検出部34による養殖魚の検出結果を積算することにより、各ネットワークカメラ10の画角内の養殖魚の魚数を計測する。
【0023】
魚数計測部35はネットワークカメラ10毎に得た養殖魚の魚数を積算し、水槽100内に飼育されている養殖魚全体の魚数の総数を算出する。
魚数計測部35は複数のネットワークカメラ10における隣接するネットワークカメラ10同士の周辺において画角が重なる部分について、各ネットワークカメラ10の映像データに対してマスク処理を実施する。
【0024】
魚数計測部35が画角の重なる部分についてマスク処理を実施することにより、養殖魚における二重計測が避けられる。
魚数計測結果記憶部36は魚数計測部35により計測されたネットワークカメラ10毎に得た養殖魚の魚数及び水槽100内に飼育されている養殖魚全体の魚数の総数を記憶する。
【0025】
分布算出部37は、魚数計測部35により算出された複数のネットワークカメラ10それぞれによる映像データ毎の魚数により水槽100内に飼育されている養殖魚全体の分布状態を示す分布情報を算出する。
分布算出部37は、魚数計測結果記憶部36に記憶された複数のネットワークカメラ10それぞれによる映像データ毎の魚数及び水槽100内に飼育されている養殖魚全体の魚数の総数を読み出し、各ネットワークカメラ10における設置時のカメラ固定位置に紐づけされた世界座標を用いて水槽100内に飼育されている養殖魚全体の分布状態を示す分布情報を算出する。
【0026】
分布算出部37は、例えば、記憶部に記憶された第1の閾値Th1から第4の閾値Th4の4つの閾値を有し、「低い」、「やや低い」、「普通」、「やや高い」、「高い」の5段階に分類される養殖魚の密度の度合い、つまり分布状態を示す分布情報を算出する。
第1の閾値Th1から第4の閾値Th4はそれぞれ魚数を示す。
「低い」は第1の閾値Th1未満、「やや低い」は第1の閾値Th1以上第2の閾値Th2未満、「普通」は第2の閾値Th2以上第3の閾値Th3未満、「やや高い」は第3の閾値Th3以上第4の閾値Th4未満、「高い」は第4の閾値Th4以上とする。
【0027】
分布算出部37は、魚数計測結果記憶部36に記憶されたネットワークカメラ10毎の魚数と第1の閾値Th1から第4の閾値Th4と比較し、第1の閾値Th1から第4の閾値Th4に応じて各ネットワークカメラ10により撮影された領域における養殖魚の密度の度合いに応じて区分された分布状態を得、水槽100内に飼育されている養殖魚全体の分布状態を示す分布情報を得る。
【0028】
分布算出部37により得た養殖魚の分布状態の一例を
図4に示す。
例えば、
図4において、養殖魚の分布は3つのグループに分類わけされ、第1のグループG
1は「高い」、「やや高い」、「普通」、「やや低い」の密度を示す分布状態を示し、第2のグループG
2は「高い」、「やや高い」の密度を示す分布状態を示し、第3のグループG
3は「普通」、「やや低い」の密度を示す分布状態を示している。
【0029】
分布算出部37における閾値Th1~Th4は水槽100の大きさ及び水槽100内に飼育されている養殖魚全体の魚数の総数などにより、閾値の値及び閾値の数が決定され、ユーザーが表示・操作端末40のユーザインタフェースから閾値Th1~Th4を入力し、分布算出部37における記憶部に記憶させる。
分布記憶部38は分布算出部37により得られた分布状態を示す分布情報を記憶する。
【0030】
養殖魚分布画像データ作成部39は画像合成部32により得た画像データに分布算出部37により算出された分布情報を重ね合わせた養殖魚分布画像データを作成する。
養殖魚分布画像データ作成部39は、合成画像記憶部33に記憶された水槽100の上部から俯瞰した水槽100全体の画像データに分布記憶部38に記憶された水槽100内に飼育されている養殖魚全体の水槽100内における養殖魚の密度状態を示す分布状態である分布情報を重ね合わせた養殖魚分布画像データを作成する。
【0031】
表示部30Aは養殖魚分布画像データ作成部39からの養殖魚分布画像データが入力され、入力された養殖魚分布画像データに基づいた養殖魚分布画像を表示する。
養殖魚分布画像データ作成部39からの養殖魚分布画像データは表示・操作端末40及び自動給餌調整装置に送信される。
表示部30Aはディスプレイである。
表示部30Aは表示・操作端末40の表示装置であってもよい。
【0032】
表示・操作端末40は、複数のネットワークカメラ10が撮影した映像に基づく映像データを取得して表示部に表示して複数のネットワークカメラ10による映像の確認、画像合成部32が作成した水槽100全体の画像データを取得して表示部に表示して水槽100全体の画像の確認、ユーザインタフェースから入力される分布算出部37における閾値Th1~Th4の設定、及び養殖魚分布画像データ作成部39からの養殖魚分布画像データを取得して表示部に表示して養殖魚分布画像の確認、つまり、映像解析装置30の解析結果の確認を実施するために用いられる。
【0033】
自動給餌調整装置50は、表示・操作端末40のユーザインタフェースから入力される自動給餌情報(設定された自動給餌情報)がデータ振り分けスイッチ20を経由して入力され、設定された自動給餌情報を映像解析装置30の解析結果、つまり、分布算出部37からの水槽100内に飼育されている養殖魚全体の分布状態を示す分布情報を用いて調整した自動給餌調整情報を作成する。
【0034】
なお、水槽100内に飼育されている養殖魚全体の分布状態を示す分布情報として、養殖魚分布画像データ作成部39からの養殖魚分布画像データから抜き出した養殖魚全体の分布状態を示す分布情報を用いてもよい。
表示・操作端末40のユーザインタフェースから入力される自動給餌情報は給餌情報とポンプ制御情報を有する。
【0035】
給餌情報は複数の自動給餌機70それぞれに対する1日当たりの給餌量もしくは1回当たりの給餌量及び1日当たりの給餌回数、給餌を行う給餌タイミング、給餌開始から給餌停止までの給餌を行う給餌時間、残餌量など水槽100への給餌を示す情報である。
複数の自動給餌機70それぞれは、水槽100に対して異なった位置に配置され、それぞれが水槽100内に養殖魚の給餌を実施する。
複数の自動給餌機70それぞれに対する給餌情報の初期設定は同じである。
【0036】
ポンプ制御情報は複数のポンプ80それぞれに対する、例えば、回転数の制御を示す制御情報である。
複数のポンプ80それぞれは、水槽100に対して異なった位置に配置され、それぞれが水槽100内に異なった水流を発生させる。
複数のポンプ80それぞれに対するポンプ制御情報の初期設定は同じであり、初期設定において、各ポンプ80による水槽100内の水流を起こす力は同じである。
る。
【0037】
自動給餌調整装置50は、
図5に示すように、自動給餌情報記憶部51と、ポンプ制御情報調整部52と、ポンプ制御情報記憶部53と、給餌情報調整部54と、給餌情報記憶部55を備える。
自動給餌情報記憶部51は表示・操作端末40のユーザインタフェースから入力される自動給餌情報を記憶する。
【0038】
ポンプ制御情報調整部52は、自動給餌情報記憶部51に記憶された自動給餌情報におけるポンプ制御情報と映像解析装置30における分布算出部37からの分布情報を受け、ポンプ制御情報を、分布情報を用いて複数のポンプ80に対する調整したポンプ制御情報を作成する。
ポンプ制御情報調整部52は、水槽100において、養殖魚の密度の高い領域は水流が強く、養殖魚の密度の低い領域は水流が弱くなるように、複数のポンプ80それぞれに対する調整したポンプ制御調整情報を作成する。
【0039】
今、複数のポンプ80が、一例として
図6に示すように、水槽100における4隅に配置されており、ポンプ制御情報調整部52により作成される複数のポンプ80
1~80
4に対する調整されたポンプ制御情報は、例えば、分布算出部37からの分布情報により得られる水槽100における養殖魚の分布状態が
図4に示す分布状態と仮定すると、
図6に示すように、第1のポンプ80
1に対して水流を弱くするポンプ制御情報とし、第2のポンプ80
2に対して水流を強くするポンプ制御情報とし、第3のポンプ80
3に対して水流を弱くするポンプ制御情報とし、第4のポンプ80
4に対して水流を強くするポンプ制御情報とする。
【0040】
すなわち、水槽100における養殖魚の分布状態において、第1のポンプ801に対して密度の低い状態を示しているので水流を弱くし、第2のポンプ802に対して第3のグループG3における「普通」の密度を示しているので水流を強くし、第3のポンプ803に対して第1のグループG1における「やや低い」の密度を示しているので水流を弱くし、第4のポンプ804に対して第2のグループG2における「高い」の密度を示しているので水流を強くする。
【0041】
第1のポンプ80
1から第4のポンプ80
4により、水槽100において、養殖魚の密度の高い領域は水流が強く、養殖魚の密度の低い領域は水流が弱くなるので、養殖魚は水流の強い領域から弱い領域に移動するため、養殖魚の密集は少なくなる。
第1のポンプ80
1から第4のポンプ80
4が制御され、一例として、第1のポンプ80
1から第4のポンプ80
4による水槽100内における水流が安定し、養殖魚の動きが少なくなる例えば5分後の水槽100における養殖魚の分布状態を
図7に示す。
【0042】
例えば、
図7において、第1のグループG
11は「普通」、「やや低い」の密度を示す分布状態を示し、第2のグループG
21は「高い」、「やや高い」、「普通」の密度を示す分布状態を示し、第3のグループG
31は「やや低い」の密度を示す分布状態を示している。
【0043】
図7に示す養殖魚の分布状態は、
図4に示す養殖魚の分布状態に対して、密度の「高い」領域が減少し、密度が「普通」及び「やや低い」の領域が広がっている。
分布算出部37からの分布情報を用いて第1のポンプ80
1から第4のポンプ80
4を制御することにより、水槽100における養殖魚の分布状態に応じて第1のポンプ80
1から第4のポンプ80
4により水槽100内の水流の状態の最適化が可能になる。
このように、養殖魚の密集が改善された分布状態において、自動給餌機70により給餌を行うことにより、水槽100内に飼育されている養殖魚における捕食のばらつきが軽減され、養殖魚に対する育成の偏りを抑えることができ、共食いも防止できる。
【0044】
なお、養殖魚の密度の高い領域は水流が強く、養殖魚の密度の低い領域は水流を弱くしているが、養殖魚の密度の度合いを分類わけした分類に合わせて、水流の強さを複数段階になるように、複数のポンプ80を制御するポンプ制御調整情報をポンプ制御情報調整部52が作成するようにしてもよい。
また、初期設定されたポンプ制御情報を基準情報として、養殖魚の分布状態、つまり、各ポンプ80に対する養殖魚の密度の度合いに応じて基準情報を基準に無段階に水流の強さを強くする又は弱くするためのポンプ制御調整情報をポンプ制御情報調整部52が作成するようにしてもよい。
【0045】
また、複数のポンプ80は4台に限るものではなく、水槽100の大きさに応じて複数台設置すればよい。
ポンプ制御情報記憶部53はポンプ制御情報調整部52により作成される複数のポンプ801~804に対する調整されたポンプ制御調整情報をポンプ801~804に対応づけて記憶する。
【0046】
給餌情報調整部54は、自動給餌情報記憶部51に記憶された自動給餌情報における養殖魚に対する給餌情報(設定給餌情報)と映像解析装置30における分布算出部37からの分布情報を受け、分布情報を用いて複数の自動給餌機70に対する給餌調整情報を作成する。
給餌情報調整部54は、水槽100において、養殖魚の密度の高い領域は設定給餌情報の値より1回当たりの給餌量を多く、養殖魚の密度の低い領域は設定給餌情報の値より1回当たりの給餌量を少なくなるように、複数の自動給餌機70それぞれに対する給餌調整情報を作成する。
【0047】
1回当たりの給餌量の調整は給餌開始から給餌停止までの給餌時間は初期設定の給仕時間と同じにして餌の量を初期設定の餌の量に対して増減を行う、餌の量は初期設定の餌の量と同じにして給餌時間を初期設定の給仕時間に対して増減を行う、又は、給仕時間及び餌の量を初期設定の給仕時間及び餌の量に対して増減を行うことで実現できる。
【0048】
今、複数の自動給餌機70が、一例として
図7に示すように、水槽100における4隅に配置されており、給餌情報調整部54により作成される複数の自動給餌機70
1~70
4に対する調整された給餌調整情報は、例えば、分布算出部37からの分布情報により得られる水槽100における養殖魚の分布状態が第1のポンプ80
1から第4のポンプ80
4が制御され、水槽100内における水流が安定し、養殖魚の動きが少なくなる例えば5分後の水槽100における養殖魚の分布状態と仮定すると、
図7に示すように、第1の自動給餌機70
1に対して1回当たりの給餌量を設定された1回当たりの給餌量より少なくする給餌情報とし、第2の自動給餌機70
2に対して1回当たりの給餌量を設定された1回当たりの給餌量より多くする給餌情報とし、第3の自動給餌機70
3に対して1回当たりの給餌量を設定された1回当たりの給餌量より少なくする給餌情報とし、第4の自動給餌機70
4に対して1回当たりの給餌量を設定された1回当たりの給餌量より多くする給餌情報とする。
【0049】
すなわち、水槽100における養殖魚の分布状態において、第1の自動給餌機701に対して密度がやや低い状態を示しているので1回当たりの給餌量を少なくし、第2の自動給餌機702に対して密度がやや低いからやや高い状態を示しているので1回当たりの給餌量を多くし、第3の自動給餌機703に対して密度がやや低いから普通の状態を示しているので1回当たりの給餌量を少なくし、第4の自動給餌機704に対して密度が高い状態を示しているので1回当たりの給餌量を多くする。
【0050】
養殖魚の密度が高い領域に対して第2の自動給餌機702及び第4の自動給餌機704が1回当たりの給餌量を多くし、養殖魚の密度が低い領域に対して第1の自動給餌機701及び第3の自動給餌機703が1回当たりの給餌量を少なくしているので、養殖魚1匹当たりの餌の捕食のばらつきを軽減できる。
分布算出部37からの分布情報を用いて第1の自動給餌機701から第4の自動給餌機704を制御することにより、水槽100における養殖魚の分布状態に応じて第1の自動給餌機701から第4の自動給餌機704により水槽100内の養殖魚に対する給餌量の最適化が可能になる。
【0051】
このように分布算出部37からの分布情報を用いて第1の自動給餌機701から第4の自動給餌機704を制御することにより、水槽100における養殖魚の分布状態を加味して自動給餌機70からの1回当たりの給餌量が調整されるので、水槽100内に飼育されている養殖魚における捕食のばらつきが軽減され、養殖魚に対する育成の偏りを抑えることができ、共食いも防止できる。
【0052】
なお、養殖魚の密度の高い領域は1回当たりの給餌量が多く、養殖魚の密度の低い領域は1回当たりの給餌量を少なくしているが、養殖魚の密度の度合い応じて1回当たりの給餌量の多さを複数段階になるように、複数の自動給餌機70を制御する給餌調整情報を給餌情報調整部54が作成するようにしてもよい。
また、初期設定された1回当たりの給餌量を示す給餌情報を基準情報として、養殖魚の分布状態、つまり、各自動給餌機70に対する養殖魚の密度の度合いに応じて基準情報を基準に無段階に1回当たりの給餌量を多くする又は少なくするための給餌調整情報を給餌情報調整部54が作成するようにしてもよい。
【0053】
また、複数の自動給餌機70は4台に限るものではなく、水槽100の大きさに応じて複数台設置すればよい。
給餌情報記憶部55は給餌情報調整部54により作成される複数の自動給餌機701~704に対する調整された給餌調整情報を自動給餌機701~704に対応づけて記憶する。
【0054】
表示・操作端末40は、ユーザインタフェースから入力されて自動給餌情報記憶部51に記憶される自動給餌情報の設定、ポンプ制御情報記憶部53に記憶されたポンプ制御調整情報の確認、及び給餌情報記憶部55に記憶された給餌調整情報の確認、つまり、自動給餌調整装置50の解析結果の確認を実施するために用いられる。
【0055】
制御装置60は、自動給餌調整装置50からの自動給餌調整情報が入力され、入力された自動給餌調整情報を自動給餌調整信号に変換して自動給餌装置を構成する自動給餌機70及びポンプ80に出力する。
制御装置60はポンプ制御部61と自動給餌機制御部62を備える。
ポンプ制御部61はポンプ制御情報記憶部53に記憶されたポンプ制御調整情報を読み出し、複数のポンプ80それぞれを制御するポンプ制御信号を複数のポンプ80それぞれに出力する。
各ポンプ80は制御装置60からの対応するポンプ制御信号により制御されて動作する。
【0056】
自動給餌機制御部62は給餌情報記憶部55に記憶された給餌調整情報を読み出し、複数の自動給餌機70それぞれを制御する給餌信号を複数の自動給餌機70それぞれに出力する。
各自動給餌機70は制御装置60からの対応する給餌信号により制御され、給餌信号により指示された1回当たりの給餌量により給餌を実施する。
【0057】
次に、実施の形態1に係る自動給餌システムの動作について
図8から
図10を用いて説明する。
最初に、映像解析装置30の動作について
図8を用いて説明する。
ステップST10において、映像受信部31が、複数のネットワークカメラ10それぞれからデータ振り分けスイッチ20を経由して配信された複数のネットワークカメラ10それぞれにより同じ時刻に撮影された映像に基づく映像データを受信する。
受信した各映像データは各ネットワークカメラ10における設置時のカメラ固定位置の座標情報が紐づけされている。
【0058】
ステップST11において、受信した各映像データを画像合成部32が各ネットワークカメラ10のレンズ情報を基準にゆがみ補正を施す。
ステップST12において、ゆがみ補正した各映像データを画像合成部32が上部から俯瞰した映像データ(ゆがみ補正映像データ)に変換する。
ステップST12において、画像合成部32が受信した各映像データに紐づけされている座標情報を世界座標に変換し、各ゆがみ補正映像データに対して世界座標を紐づけする。
【0059】
ステップST12において、画像合成部32が合成基準点を設定し、合成基準点に基づき、各ゆがみ補正映像データを合成し、水槽100の上部から俯瞰した水槽100全体の俯瞰映像である画像データを得る。
ステップST11及びステップST12が、画像合成部32が複数のネットワークカメラ10それぞれにより撮影された映像に基づく映像データを合成して水槽100全体の画像データを得るステップである。
画像データは撮影された時刻に紐づけされて合成画像記憶部33に記憶される(ステップST13)。
【0060】
ステップST21において、ステップST10において映像受信部31が受信した各映像データから養殖魚検出部34が水槽100内に飼育されている養殖魚を、学習モデルを用いたAIによる物体検知技術を用いて検出する。
ステップST21は、養殖魚検出部34が複数のネットワークカメラ10それぞれにより撮影された映像に基づく映像データから水槽100内に飼育されている養殖魚を検出するステップである。
【0061】
ステップST22において、魚数計測部35が映像データ毎に検出された養殖魚を計測し、当該映像データ毎に映像データが示す映像内に映る魚数を計測する。
ステップST22において、魚数計測部35が映像データ毎に得た養殖魚の魚数を積算し、水槽100内に飼育されている養殖魚全体の魚数の総数を算出する。
ステップST22は、魚数計測部35が複数のネットワークカメラ10それぞれによる映像データ毎に検出された養殖魚を計測し、映像データ毎の魚数を計測するステップである。
【0062】
ステップST23において、映像データ毎に得た養殖魚の魚数は各映像データに対応する世界座標及び撮影された時刻に紐づけされて魚数計測結果記憶部36に記憶される。
ステップST23において、養殖魚全体の魚数の総数は撮影された時刻に紐づけされて魚数計測結果記憶部36に記憶される。
【0063】
ステップST24において、分布算出部37が、映像データ毎に得た養殖魚の魚数と設定された閾値Th
1~Th
4と比較し、養殖魚の密度の度合いに応じて区分された分布状態を得、映像データ毎に紐づけされた世界座標を基に水槽100内に飼育されている養殖魚全体の分布状態を示す分布情報を得る。分布算出部37により得た養殖魚の分布状態の一例を
図4に示す。
ステップST24は、分布算出部37が、複数のネットワークカメラ10それぞれによる映像データ毎の魚数により水槽100内に飼育されている養殖魚全体の分布状態を示す分布情報を算出するステップである。
【0064】
ステップST25において、水槽100内に飼育されている養殖魚全体の分布状態を示す分布情報は撮影された時刻に紐づけされて分布記憶部38に記憶される一方、自動給餌調整装置50にネットワークを介して送信される。
【0065】
ステップST30において、養殖魚分布画像データ作成部39が、ステップST12において画像合成部32により得た水槽100の上部から俯瞰した水槽100全体の画像データにステップST24において分布算出部37により算出された水槽100内に飼育されている養殖魚全体の水槽100内における養殖魚の密度状態を示す分布情報を重ね合わせた養殖魚分布画像データを作成する。
養殖魚分布画像データは表示部30Aに入力され、養殖魚分布画像として表示部30Aに表示される。
また、養殖魚分布画像データは表示・操作端末40にネットワークを介して送信される。
【0066】
映像解析装置30は、サーバ型のコンピュータによるハードウェア構成により実現され、
図10に示すように、CPU(Central Processing Unit)101と、大容量の半導体メモリ(RAM:Random Access Memory)102と、ハードディスク装置又はSSD装置などの不揮発性記録装置などの記憶装置(ROM:Read only memory)103と、入力インタフェース部104と、出力インタフェース部105と、信号路(バス)106を備える。
【0067】
映像解析装置30が有する機能ブロックである、画像合成部32と養殖魚検出部34と魚数計測部35と分布算出部37と養殖魚分布画像データ作成部39は、CPU101がROM103に記憶されたプログラムをRAM102にロードし、CPU101がRAM102にロードされたプログラムに基づき処理を実行されることにより機能する構成要素である。
合成画像記憶部33と魚数計測結果記憶部36と分布記憶部38はRAM102により構成される構成要素である。
映像受信部31と複数のネットワークカメラ10と表示・操作端末40は入力部200に相当し、表示部30Aと表示・操作端末40と自動給餌調整装置50は出力部に相当する。
【0068】
ROM103に記憶されたプログラムは、複数のネットワークカメラそれぞれにより撮影された映像に基づく映像データを合成して生簀全体の画像データを得る手順と、複数のネットワークカメラそれぞれにより撮影された映像に基づく映像データから生簀内に飼育されている養殖魚を検出する手順と、複数のネットワークカメラそれぞれによる映像データ毎に検出された養殖魚を計測し、当該映像データ毎の魚数を計測する手順と、複数のネットワークカメラそれぞれによる映像データ毎の魚数により生簀内に飼育されている養殖魚全体の分布状態を示す分布情報を算出する手順と、画像データに分布情報を重ね合わせた養殖魚分布画像データを作成する手順を備える自動給餌システムの映像解析プログラムである。
【0069】
次に、自動給餌調整装置50の動作について
図8及び
図9を用いて説明する。
事前ステップであるステップST40において、表示・操作端末40のユーザインタフェースから入力される自動給餌情報を自動給餌情報記憶部51が記憶する。
まず、自動給餌調整装置50におけるポンプ制御情報調整部52が動作する。
【0070】
ステップST41において、ポンプ制御情報調整部52が、自動給餌情報記憶部51に記憶された自動給餌情報におけるポンプ制御情報と映像解析装置30における分布算出部37からの分布情報を受け、ポンプ制御情報を、分布情報を用いて養殖魚の密度の高い領域は水流が強く、養殖魚の密度の低い領域は水流が弱くなるように複数のポンプ80に対する調整したポンプ制御情報を作成する。ポンプ80による水槽100内における水流が安定し、養殖魚の動きが少なくなる例えば5分後の水槽100における養殖魚の分布状態を
図7に示す。
【0071】
ステップST41は、ポンプ制御情報調整部52が、複数のポンプ80に対する設定されたポンプ制御情報を、分布情報を用いて複数のポンプ80に対するポンプ制御調整情報を作成するステップである。
ステップST42において、複数のポンプ80に対する調整されたポンプ制御調整情報は複数のポンプ80にそれぞれに対応づけて紐づけされてポンプ制御情報記憶部53に記憶される一方、制御装置60及び表示・操作端末40にネットワークを介して送信される。
【0072】
ポンプ制御情報調整部52の動作が終了し、例えば、5分後に給餌情報調整部54が動作を開始する。
ステップST51において、給餌情報調整部54が、自動給餌情報記憶部51に記憶された自動給餌情報における養殖魚に対する給餌情報(設定給餌情報)と映像解析装置30における分布算出部37からの分布情報を受け、分布情報を用いて養殖魚の密度の高い領域は設定給餌情報の値より1回当たりの給餌量を多く、養殖魚の密度の低い領域は設定給餌情報の値より1回当たりの給餌量を少なくなるように、複数の自動給餌機70に対する給餌調整情報を作成する。
【0073】
ステップST51は、給餌情報調整部54が、複数の自動給餌機70に対する養殖魚への設定された給餌情報を、分布情報を用いて複数の自動給餌機70に対する給餌調整情報を作成するステップである。
ステップST52において、複数の自動給餌機70に対する調整された給餌調整情報は複数の自動給餌機70にそれぞれに対応づけて紐づけされて給餌情報記憶部55に記憶される一方、制御装置60及び表示・操作端末40にネットワークを介して送信される。
【0074】
自動給餌調整装置50は、サーバ型のコンピュータによるハードウェア構成により実現され、
図10に示すように、CPU(Central Processing Unit)101と、大容量の半導体メモリ(RAM:Random Access Memory)102と、ハードディスク装置又はSSD装置などの不揮発性記録装置などの記憶装置(ROM:Read only memory)103と、入力インタフェース部104と、出力インタフェース部105と、信号路(バス)106を備える。
【0075】
自動給餌調整装置50が有する機能ブロックであるポンプ制御情報調整部52と給餌情報調整部54は、CPU101がROM103に記憶されたプログラムをRAM102にロードし、CPU101がRAM102にロードされたプログラムに基づき処理を実行されることにより機能する構成要素である。
自動給餌情報記憶部51とポンプ制御情報記憶部53と給餌情報記憶部55はRAM102により構成される構成要素である。
映像解析装置30における分布算出部と表示・操作端末40は入力部200に相当し、制御装置60と表示・操作端末40は出力部300に相当する。
【0076】
ROM103に記憶されたプログラムは、それぞれが生簀に対して異なった位置に配置される複数の自動給餌機に対する養殖魚への設定された給餌情報を、それぞれが生簀の異なる領域を撮影する複数のネットワークカメラそれぞれにより撮影された映像に基づく生簀内に飼育されている養殖魚全体の分布状態を示す分布情報を用いて複数の自動給餌機に対する給餌調整情報を作成する手順と、それぞれが生簀に対して異なった位置に配置される複数のポンプに対する設定されたポンプ制御情報を、分布情報を用いて複数のポンプに対するポンプ制御調整情報を作成する手順をコンピュータに実行させる自動給餌システムの自動給餌調整プログラムである。
【0077】
映像解析装置30の動作及び自動給餌調整装置50の動作に次いで、制御装置60におけるポンプ制御部61は、ポンプ制御情報記憶部53に記憶された自動給餌調整装置50からの自動給餌調整情報におけるポンプ制御調整情報を読み出し、複数のポンプ80それぞれを制御するポンプ制御信号を複数のポンプ80それぞれに出力する。
複数のポンプ80それぞれは、養殖魚の密度の度合いに応じたポンプ制御部61からのポンプ制御信号により動作し、水槽100内の水流を変化させて養殖魚の密集を改善させる。
【0078】
次に、制御装置60における自動給餌機制御部62は、水槽100内における水流が安定し、養殖魚の動きが少なくなると予想される時刻に、給餌情報記憶部55に記憶された自動給餌調整装置50からの自動給餌調整情報における給餌調整情報を読み出し、複数の自動給餌機70それぞれを制御する給餌信号を複数の自動給餌機70それぞれに出力する
【0079】
以上のように、実施の形態1に係る自動給餌システムは、複数のネットワークカメラ10それぞれにより撮影された映像に基づく映像データを合成した水槽100全体の画像データに水槽100内に飼育されている養殖魚全体の分布状態を示す分布情報を重ね合わせた養殖魚分布画像データを作成する映像解析装置30と、設定された自動給餌情報を映像解析装置30からの養殖魚全体の分布状態を示す分布情報を用いて自動給餌調整情報を作成する自動給餌調整装置50を備えたので、水槽100内に飼育されている養殖魚における捕食のばらつきが軽減され、養殖魚に対する育成の偏りを抑えることができる。
【0080】
また、実施の形態1に係る自動給餌システムにおける映像解析装置30は、複数のネットワークカメラ10それぞれにより撮影された映像に基づく映像データを合成した水槽100全体の画像データの作成、複数のネットワークカメラ10による映像データから得た水槽100内に飼育されている養殖魚の検出結果による水槽100全体における養殖魚の分布情報の算出、及び、水槽100全体の画像データに分布情報を重ね合わせた養殖魚分布画像データの作成を実施するので、水槽100内の養殖魚の分布を取得でき、養殖魚の水槽100内のばらつきを加味した給餌を可能にする。
【0081】
また、実施の形態1に係る自動給餌システムにおける自動給餌調整装置は、複数のポンプ80に対する設定されたポンプ制御情報を、養殖魚全体の分布状態を示す分布情報を用いて複数のポンプ80に対するポンプ制御調整情報を作成するポンプ制御情報調整部を備えるので、水槽100内の水流の強さを調整制御させて水槽100内の養殖魚の密集を改善でき、養殖魚における捕食のばらつきが軽減でき、養殖魚に対する育成の偏りを抑えることができる。
【0082】
また、実施の形態1に係る自動給餌システムにおける自動給餌調整装置は、複数の自動給餌機70に対する養殖魚への設定された給餌情報を、養殖魚全体の分布状態を示す分布情報を用いて複数の自動給餌機70に対する給餌調整情報を作成する給餌情報調整部を備えるので、養殖魚の密度の度合い応じて給餌量が調整され、養殖魚における捕食のばらつきが軽減でき、養殖魚に対する育成の偏りを抑えることができる。
【符号の説明】
【0083】
10 ネットワークカメラ、20 データ振り分けスイッチ、30 映像解析装置、31 映像受信部、32 画像合成部、33 合成画像記録部、34 養殖魚検出部、35 魚数計測部、36 魚数計測結果記録部、37 分布算出部、38 分布記録部、39 養殖魚分布画像データ作成部、40 表示・操作端末、50 自動給餌調整装置、51 自動給餌情報記憶部、52 ポンプ制御情報調整部、53 ポンプ制御情報記憶部、54 給餌情報調整部と、55 給餌情報記憶部、60 制御装置、61 ポンプ制御部、62 自動給餌器制御部、70、701~704 自動給餌器、80、801~804 ポンプ、100 水槽。