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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170735
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】異常検知装置
(51)【国際特許分類】
   G08B 17/00 20060101AFI20241204BHJP
   G01S 17/88 20060101ALI20241204BHJP
   G01S 17/42 20060101ALI20241204BHJP
【FI】
G08B17/00 C
G01S17/88
G01S17/42
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087417
(22)【出願日】2023-05-29
(71)【出願人】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100188514
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 隆裕
(74)【代理人】
【識別番号】100217021
【弁理士】
【氏名又は名称】馬場 進吾
(72)【発明者】
【氏名】吉井 裕二
【テーマコード(参考)】
5G405
5J084
【Fターム(参考)】
5G405AA01
5G405AB02
5G405CA04
5G405EA27
5J084AA05
5J084AA10
5J084AB07
5J084AB08
5J084BA03
5J084BB28
(57)【要約】
【課題】火災監視エリアでの異常状態の検知にLiDAR技術による距離計測結果を適用した異常検知装置を得る。
【解決手段】火災監視エリアに設置され、LiDAR技術を用いてあらかじめ決められた1以上の方向における反射物体までの距離データを計測する距離計測部(11)と、距離計測部により計測された距離データの時間的な遷移状態に基づいて、火災監視エリアにおいて異常状態が発生したか否かを判断する制御部(12)とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
火災監視エリアに設置され、LiDAR技術を用いてあらかじめ決められた1以上の方向における反射物体までの距離データを計測する距離計測部と、
前記距離計測部により計測された前記距離データの時間的な遷移状態に基づいて、前記火災監視エリアにおいて異常状態が発生したか否かを判断する制御部と
を備える異常検知装置。
【請求項2】
前記距離計測部は、前記火災監視エリアである筐体に設置され、前記筐体に取り付けられている部品までの距離を前記距離データとして計測し、
前記制御部は、前記距離データの時間的な遷移状態に基づいて、前記部品が欠落した状態、発熱の影響で前記部品に歪みが発生した状態、および前記筐体の内部で煙が発生した状態の少なくともいずれか1つの状態が前記筐体で生じた際に、前記火災監視エリアにおいて異常状態が発生したとして判断する
請求項1に記載の異常検知装置。
【請求項3】
前記火災監視エリアで前記異常状態が発生していない状態において前記距離計測部により計測された前記距離データを基準データとして記憶する記憶部をさらに備え、
前記制御部は、異常状態監視モードにおいて前記距離計測部により計測された前記距離データと、前記記憶部に記憶された前記基準データとを比較し、許容差分値以上の変位が発生した場合には、前記火災監視エリアにおいて異常状態が発生したと判断する
請求項1または2に記載の異常検知装置。
【請求項4】
前記距離計測部による計測結果に基づいて、前記1以上の方向のそれぞれについて一定期間にわたる時系列距離データを記憶する記憶部をさらに備え、
前記制御部は、
前記距離計測部により前記1以上の方向のそれぞれについて定期的に計測された前記距離データにより、前記記憶部に記憶されている前記時系列距離データを順次更新し、
更新後の最新の時系列距離データのばらつき度を算出し、前記ばらつき度が許容閾値以上となった場合には、前記火災監視エリアにおいて異常状態が発生したと判断する
請求項1または2に記載の異常検知装置。
【請求項5】
前記火災監視エリアで前記異常状態が発生していない状態において前記距離計測部により計測された前記距離データを基準データとして記憶するとともに、異常状態監視モードにおける前記距離計測部による計測結果に基づいて、前記1以上の方向のそれぞれについて一定期間にわたる時系列距離データを記憶する記憶部をさらに備え、
前記制御部は、
前記異常状態監視モードにおいて前記距離計測部により計測された前記距離データと、前記記憶部に記憶された前記基準データとを比較し、許容差分値以上の変位が発生した場合には、前記距離計測部により前記1以上の方向のそれぞれについて定期的に計測された前記距離データにより、前記記憶部に記憶されている前記時系列距離データを順次更新し、
更新後の最新の時系列距離データのばらつき度を算出し、前記ばらつき度が許容閾値以上となった場合には、煙が発生することに起因して前記火災監視エリアにおいて異常状態が発生したと判断する
請求項1または2に記載の異常検知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、火災監視に適用され、LiDAR技術を用いて火災監視エリアの異常状態を検知する異常検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
国土交通省が推進する「ICT施工の普及に向けた取組」の報告の中で、携帯電話のLiDAR(Light Detection and Ranging)機能を使った測量技術が紹介されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
LiDARは、レーザ照射によって対象物までの距離を計測する技術である。LiDAR機能が搭載された携帯電話が普及しており、安価な装置により、LiDAR機能を用いて対象物の3次元データを容易に生成することができるようになってきた。
【0004】
国土交通省では、ICT(Information and Communication Technology:情報通信技術)を用いた効率的な建設業務の推進を目指しており、その一環として、安価な装置によるLiDAR技術の活用を推奨している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】国土交通省、「ICT施工の普及に向けた取組」(URL: https://www.mlit.go.jp/common/001415324.pdf)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
LiDAR技術を活用することで、建築分野では、3次元データを容易に取得することができ、設計業務等に有効活用できるメリットがある。また、LiDARは、距離の計測においては、他のセンサの認識精度を凌駕する技術を有しており、車の自動運転技術などにおいても利用されている。
【0007】
しかしながら、現状では、火災監視を行う防災分野において、LiDAR技術による距離計測結果を活用することまでは行われていない。防災分野においても、本来と異なる異常状態によって距離に異変が生じたことを検知できれば、LiDAR技術による距離計測結果を有効活用できることが期待される。
【0008】
本開示は、上記の課題を解決するためになされたものであり、火災監視エリアでの異常状態の検知にLiDAR技術による距離計測結果を適用した異常検知装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示に係る異常検知装置は、火災監視エリアに設置され、LiDAR技術を用いてあらかじめ決められた1以上の方向における反射物体までの距離データを計測する距離計測部と、距離計測部により計測された距離データの時間的な遷移状態に基づいて、火災監視エリアにおいて異常状態が発生したか否かを判断する制御部とを備えるものである。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、火災監視エリアでの異常状態の検知にLiDAR技術による距離計測結果を適用した異常検知装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示の実施の形態1に係る異常検知装置の機能ブロック図である。
図2】本開示の実施の形態1に係る異常検知装置によって、部屋内の火災監視エリアが正常時において計測された距離データを例示した説明図である。
図3】本開示の実施の形態1に係る異常検知装置によって、火災監視エリアで煙が発生した異常時において計測された距離データを例示した説明図である。
図4】本開示の実施の形態1に係る異常検知装置によって、火災監視エリアで遮蔽物が存在する状態において計測された距離データを例示した説明図である。
図5】本開示の実施の形態1に係る異常検知装置によって、制御盤内の火災監視エリアが正常時において計測された距離データを例示した説明図である。
図6】本開示の実施の形態1に係る異常検知装置によって、火災監視エリアで部品の欠落が発生した異常時において計測された距離データを例示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の異常検知装置の好適な実施の形態につき、図面を用いて説明する。
本開示に係る異常検知装置は、火災監視エリア内において、LiDAR技術を用いて1以上の方向における反射物体までの距離データを計測し、距離データの時間的な遷移状態に基づいて火災監視エリアにおいて異常状態が発生したか否かを判断する機能を備えたことを技術的特徴とするものである。
【0013】
実施の形態1.
図1は、本開示の実施の形態1に係る異常検知装置の機能ブロック図である。本実施の形態1に係る異常検知装置10は、距離計測部11、制御部12、および記憶部13を備えて構成されている。
【0014】
距離計測部11は、火災監視エリアに設置されており、LiDAR技術を用いてあらかじめ決められた1以上の方向における反射物体までの距離データを計測するセンサである。具体的には、距離計測部11は、距離計測を行いたいターゲットに対してレーザ光を照射し、反射光を受光する。
【0015】
そして、距離計測部11は、レーザ光を照射した時刻と、反射光を受光した時刻との差分から、ターゲットまでの距離データを計測する。レーザ光の波長によって、検出できるターゲットの大きさが異なる。また、一般には、波長よりも短い散乱光に対しては感度が小さくなる。従って、本開示では、火災に伴う煙の発生もターゲットとするため、波長が0.5μm~1μm程度のレーザ光を使用することが推奨される。
【0016】
制御部12は、距離計測部11により計測された距離データを逐次、記憶部13に記憶させる。そして、制御部12は、距離データの時間的な遷移状態に基づいて、火災監視エリアにおいて異常状態が発生したか否かを判断する。
【0017】
異常状態として、次の2つのケースを例に、具体的な異常状態の検知手法について説明する。
ケース1:建物内の1つの部屋を火災監視エリアとして、部屋内で煙が発生したことを異常状態として検知する場合
ケース2:制御盤内を火災監視エリアとして、制御盤内に取り付けられていた部品が欠落したことを異常状態として検知する場合
【0018】
<ケース1の詳細>
ケース1では、建物内の1つの部屋を火災監視エリアZ1とし、部屋内で煙が発生した状態を異常状態として検知する場合について、図2図4を用いて具体的に説明する。
【0019】
図2は、本開示の実施の形態1に係る異常検知装置10によって、部屋内の火災監視エリアZ1が正常時において計測された距離データを例示した説明図である。図2(A)は、火災監視エリアZ1内に異常検知装置10が設置され、距離計測部11により、部屋内の周囲までの距離を計測した状態を示している。
【0020】
図2(A)では、部屋内に何も障害物がなく、部屋を囲っている壁面までの距離データが測定される状態を、部屋の上面から見た図として示している。
【0021】
なお、LiDARの具体的な構成に関する図示は省略するが、制御部12によって距離計測部11を以下のように制御することで、図2(A)による距離データの測定が可能となる。
【0022】
・変調されたレーザ光が回転する鏡で反射され、ターゲットに向けて照射される。
・鏡の回転角を制御することで、レーザ光が左右に首を振ることで走査され、あらかじめ決められた1以上の方向に対して、順次照射される。
・反射したレーザ光が検出器で捕らえられることで、それぞれの方向における距離データを計測する。
【0023】
なお、火災監視エリア内において、監視対象が1箇所である場合には、レーザを走査することなしに、1方向における反射物体までの距離データの計測結果に基づいて異常状態が発生したか否かを判断することができる。すなわち、火災監視エリア内の監視対象の位置に応じて、本開示に係る異常検知装置の設置位置および走査範囲を適切に設定することができる。
【0024】
図2(B)は、図2(A)に示した状態で距離計測部11によって計測された複数の方向における距離データから求められた点群を黒丸●として示している。制御部12は、距離計測部11の位置から、点群を構成するそれぞれの点までの距離データを、記憶部13に記憶させる。
【0025】
すなわち、火災監視エリアZ1で異常状態が発生していない状態において、距離計測部11により計測された距離データが、基準データとして記憶部13に記憶されることとなる。
【0026】
図3は、本開示の実施の形態1に係る異常検知装置10によって、火災監視エリアZ1で煙が発生した異常時において計測された距離データを例示した説明図である。図3(A)では、先の図2(A)に示した正常時に対して、煙Sが監視対象エリアZ1内で局部的に発生した状態を示している。
【0027】
図3(B)は、図3(A)に示した状態で距離計測部11によって計測された複数の方向における距離データから求められた点群を黒丸●として示している。制御部12は、距離計測部11の位置から、点群を構成するそれぞれの点までの距離データを、記憶部13に記憶させる。
【0028】
すなわち、異常状態監視モードにおいて火災監視エリアZ1で煙が発生した状態において、距離計測部11により計測された距離データを収集することができ、必要に応じて監視時データとして記憶部13に記憶させることができる。
【0029】
なお、記憶部13に記憶させておく監視時データは、一定期間にわたる最新の時系列距離データとして構成することができる。すなわち、制御部12は、距離計測部11により1以上の方向のそれぞれについて定期的に計測された距離データにより、記憶部13に記憶されている時系列距離データを順次更新することができる。
【0030】
制御部12は、異常状態監視モードにおいて距離計測部11により計測された距離データと、記憶部13に記憶された基準データとを比較し、差分値を算出する。さらに、制御部12は、算出した差分値が許容差分値以上である場合には、火災監視エリアZ1において異常な変位による異常状態が発生したと判断する。
【0031】
図4は、本開示の実施の形態1に係る異常検知装置10によって、火災監視エリアZ1で遮蔽物が存在する状態において計測された距離データを例示した説明図である。図4(A)では、先の図2(A)に示した正常時に対して、遮蔽物Eが監視対象エリアZ1内で局部的に存在した状態を示している。遮蔽物Eとしては、例えば、部屋内への人物の侵入などが挙げられる。
【0032】
図4(B)は、図4(A)に示した状態で距離計測部11によって計測された複数の方向における距離データから求められた点群を黒丸●として示している。制御部12は、距離計測部11の位置から、点群を構成するそれぞれの点までの距離データを、記憶部13に記憶させる。
【0033】
すなわち、異常状態監視モードにおいて火災監視エリアZ1で遮蔽物Eが存在した状態において、距離計測部11により計測された距離データを収集することができ、必要に応じて監視時データとして記憶部13に記憶させることができる。
【0034】
なお、記憶部13に記憶させておく監視時データは、一定期間にわたる最新の時系列距離データとして構成することができる。すなわち、制御部12は、距離計測部11により1以上の方向のそれぞれについて定期的に計測された距離データにより、記憶部13に記憶されている時系列距離データを順次更新することができる。
【0035】
制御部12は、異常状態監視モードにおいて距離計測部11により計測された距離データと、記憶部13に記憶された基準データとを比較し、差分値を算出する。さらに、制御部12は、算出した差分値が許容差分値以上である場合には、火災監視エリアZ1において異常な変位による異常状態が発生したと判断する。
【0036】
なお、遮蔽物Eに関しては、例えば、夜間などに異常状態監視モードが実行されており、人物の侵入があった場合も異常状態として検出したい場合には、制御部12は、図3による煙Sに起因する異常状態の検知と、図4による遮蔽物Eに起因する異常状態の検知とを、区別することなしに、異常検知と判断することができる。
【0037】
一方、例えば、日中に異常状態監視モードが実行されており、人物の侵入は通常起こり得るため、異常状態として検出したくない場合がある。このような場合には、制御部12は、図3による煙Sに起因する異常状態の検知と、図4による遮蔽物Eに起因する異常状態の検知とを、識別する必要がある。そこで、この識別方法について補足説明する。
【0038】
煙Sは、火災監視エリアZ1内で、時間経過とともにランダムに流動する特性があり、、LiDAR技術によって検知される煙Sの位置は、一定の位置でとどまることなく、時系列的にランダムに変化し、時系列距離データのばらつき度が比較的大きくなる傾向がある。
【0039】
そこで、制御部12は、以下の手順で距離データの解析を行うことにより、異常状態が検知された際に、煙Sに起因する異常状態の検知であるか否かを識別することができる。
【0040】
手順1)制御部12は、異常状態監視モードにおいて距離計測部11により計測された距離データと、記憶部13に記憶された基準データとの差分値が許容差分値以上である場合には、あらかじめ決められた一定期間にわたり、時系列距離データを収集し、記憶部13に記憶させる。制御部12は、必要に応じて、記憶部13に記憶されている時系列距離データを順次更新する。
【0041】
手順2)制御部12は、更新後の最新の時系列距離データのばらつき度を算出し、ばらつき度が許容閾値以上となった場合には、火災監視エリアにおいて煙Sに起因した異常状態が発生したと判断する。一方、制御部12は、ばらつき度が許容閾値未満である場合には、火災監視エリアにおいて煙Sに起因した異常状態が発生していないと判断する。
【0042】
なお、煙Sに起因した異常状態であるか否かを判断するための指標値となるばらつき度としては、時系列距離データの分散値、あるいは、時系列距離データ内の最大値と最小値との差分値などを用いることができる。
【0043】
<ケース2の詳細>
ケース2では、制御盤内を火災監視エリアZ2とし、制御盤内に取り付けられている部品が欠落した状態を、火災を誘発する異常状態として検知する場合について、図5図6を用いて具体的に説明する。
【0044】
図5は、本開示の実施の形態1に係る異常検知装置10によって、制御盤内の火災監視エリアZ2が正常時において計測された距離データを例示した説明図である。図5(A)は、制御盤内である火災監視エリアZ2内に異常検知装置10が設置され、距離計測部11により、制御盤内の周囲に実装された部品X1~X6のそれぞれまでの距離を計測した状態を示している。
【0045】
図5(A)では、制御盤内での各部品X1~X6の欠落やずれがない正常状態での距離データが測定される状態を、制御盤の上面から見た図として示している。
【0046】
図5(B)は、図5(A)に示した状態で距離計測部11によって計測された複数の方向における距離データから求められた点群を黒丸●として示している。なお、図5(B)では、点群の位置を明確化するために、部品X1~X6の外形を破線として追記している。制御部12は、距離計測部11の位置から、点群を構成するそれぞれの点までの距離データを、記憶部13に記憶させる。
【0047】
すなわち、火災監視エリアZ2で異常状態が発生していない状態において、距離計測部11により計測された距離データが、基準データとして記憶部13に記憶されることとなる。
【0048】
図6は、本開示の実施の形態1に係る異常検知装置10によって、火災監視エリアZ2で部品X2の欠落が発生した異常時において計測された距離データを例示した説明図である。図6(A)では、先の図5(A)に示した正常時に対して、監視対象エリアZ2内で部品X2の欠落が発生した状態を示している。
【0049】
図6(B)は、図6(A)に示した状態で距離計測部11によって計測された複数の方向における距離データから求められた点群を黒丸●として示している。制御部12は、距離計測部11の位置から、点群を構成するそれぞれの点までの距離データを、記憶部13に記憶させる。
【0050】
すなわち、異常状態監視モードにおいて火災監視エリアZ2で部品X2の欠落が発生した状態において、距離計測部11により計測された距離データを収集することができ、必要に応じて監視時データとして記憶部13に記憶させることができる。なお、記憶部13に記憶させておく監視時データは、一定期間にわたる最新の時系列距離データとして構成することができる。
【0051】
制御部12は、異常状態監視モードにおいて距離計測部11により計測された距離データと、記憶部13に記憶された基準データとを比較し、差分値を算出する。さらに、制御部12は、算出した差分値が許容差分値以上である場合には、火災監視エリアZ2において異常な変位による異常状態が発生したと判断する。
【0052】
なお、図5図6を用いた例では、部品が欠落した状態を異常状態として検知する場合を説明したが、発熱などの影響で部品に歪み、膨脹などが発生して距離が変化した場合にも、許容差分値を適切な値に設定しておくことで、異常状態として検知することが可能となる。
【0053】
また、制御盤内においても、ケース1の場合と同様に煙が発生する場合も考えられる。詳細な説明は省略するが、制御盤内で煙が発生した場合にも、ケース1で説明した煙Sに起因した異常状態であるか否かを判断する手法を提供することで、煙を検知することができる。
【0054】
また、火災監視エリアZ2としては、制御盤には限定されず、火災受信機、防災盤などのその他の筐体を火災監視対象とすることができ、この場合には、筐体に距離計測部11を設置することとなる。
【0055】
また、距離データとしては、2次元的なデータばかりでなく、3次元的なデータを採用することもできる。3次元的なデータを採用する場合には、レーザ光を上下左右に走査できる機構を利用することとなる。
【0056】
また、制御部12は、異常状態を検知した場合に、外部装置を介して異常状態を報知する、あるいは上位装置に対して通信手段により異常状態を報知することができる。
【0057】
以上のように、実施の形態1によれば、火災監視エリア内において、LiDAR技術を用いて1以上の方向における反射物体までの距離データを計測し、距離データの時間的な遷移状態に基づいて火災監視エリアにおいて異常状態が発生したか否かを判断する機能を実現できる。
【0058】
また、時系列距離データのばらつき度を考慮することで、煙に起因した異常状態が発生したか否かを特定することができる。この結果、火災監視エリアでの異常状態の検知にLiDAR技術による距離計測結果を適用した異常検知装置を得ることができる。
【0059】
特に、筐体を火災監視エリアとして、距離計測部を筐体に設置し、筐体に取り付けられている部品までの距離を距離データとして計測した場合には、制御部は、距離データの時間的な遷移状態に基づいて、部品が欠落した状態、発熱の影響で部品に歪みが発生した状態、および筐体の内部で煙が発生した状態の少なくともいずれか1つの状態が筐体で生じた際に、火災監視エリアにおいて異常状態が発生したとして判断することができる。
【符号の説明】
【0060】
10 異常検知装置、11 距離計測部、12 制御部、13 記憶部、E 遮蔽物、S 煙、X1~X6 部品、Z1、Z2 火災監視エリア。
図1
図2
図3
図4
図5
図6