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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170739
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】火災感知器の試験装置
(51)【国際特許分類】
   G08B 17/00 20060101AFI20241204BHJP
【FI】
G08B17/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087422
(22)【出願日】2023-05-29
(71)【出願人】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100188514
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 隆裕
(74)【代理人】
【識別番号】100217021
【弁理士】
【氏名又は名称】馬場 進吾
(72)【発明者】
【氏名】中島 博明
【テーマコード(参考)】
5G405
【Fターム(参考)】
5G405AA10
5G405BA01
5G405CA13
5G405CA53
5G405FA17
(57)【要約】
【課題】種々の作業現場において火災感知器単体での電気的な動作試験を容易に実施できる操作性に優れた火災感知器の試験装置を得る。
【解決手段】感知器IDが割り付けられており、一対の信号線を介して感知器IDを含む火災信号を上位装置に出力することで火災発生場所を報知する機能を備えた火災感知器の動作試験を実施するために用いられる火災感知器の試験装置であって、試験装置本体に内蔵されているバッテリ電源部と、動作試験の試験対象となる火災感知器の一対の信号線と接続される一対の端子部と、バッテリ電源部から供給される電力により駆動され、操作入力に基づいて感知器IDを含む試験信号を生成し、一対の信号線を介して試験対象となる火災感知器に対して試験信号を出力し、試験信号を受信した試験対象となる火災感知器を強制的に点灯動作させることで動作試験を電気的に実施する制御部とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固有の識別情報である感知器IDが割り付けられており、火災の発生を感知した場合には一対の信号線を介して前記感知器IDを含む火災信号を上位装置に出力することで火災発生場所を報知する機能を備えた火災感知器に関して、電気的な動作試験を実施するために用いられる火災感知器の試験装置であって、
前記動作試験を実施するために使用される電力を供給するために試験装置本体に内蔵されているバッテリ電源部と、
前記動作試験の試験対象となる火災感知器の前記一対の信号線と接続される一対の端子部と、
前記バッテリ電源部から供給される前記電力により駆動され、試験員による操作入力に基づいて前記感知器IDを含む試験信号を生成し、前記一対の端子部に接続された前記一対の信号線を介して前記試験対象となる火災感知器に対して前記試験信号を出力し、前記試験信号を受信した前記試験対象となる火災感知器を強制的に点灯動作させることで前記動作試験を電気的に実施する制御部と
を備える火災感知器の試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、火災感知器の単体での動作試験を実施するために適した火災感知器の試験装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、防災システムにおける火災感知器に関して、少なくとも二人の作業点検者によって点検作業が行われる。具体的には、一方の点検作業者が、施設内に据え置かれている火災受信機を操作し、点検対象の火災感知器に対して擬似的な火災を発生させる。また、他方の点検作業者が、点検対象の火災感知器付近で待機し、当該火災感知器が正しく発報動作を行うかを確認する。
【0003】
各点検作業者は、全ての点検対象の火災感知器に対し、相互に連絡を取り合いながら上記の作業を繰り返し行う。
【0004】
また、火災感知器の点検作業を、携帯端末を用いて支援するシステムが開示されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に係る点検支援システムにおいて、点検作業者は、所持している携帯端末に対し、当該火災感知器のアドレスを入力する。
【0005】
点検作業者によってアドレスが入力された携帯端末は、当該アドレスを、外部のサーバ装置、および施設内の通信端末を介して、火災受信機まで送信する。火災受信機は、受信したアドレスに対応する火災感知器に対して、点検用のコマンドを発行する。
【0006】
特許文献1に係る点検支援システムにおいては、火災受信機に対する操作および火災感知器の動作試験を、点検作業者の居場所に関わらず携帯端末を利用して行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2014-71659号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の点検支援システムによれば、点検作業者は、火災感知器の動作試験を、火災感知器の設置場所において、携帯端末を利用して行うことができる。しかしながら、新築の現場において、このような動作試験を実施するためには、防災システム全体の構築が完了することが必要となる。
【0009】
火災感知器の動作試験は、定期点検時、保守点検時ばかりでなく、新築の現場において竣工直前にも実施される。このような現場では、防災システム全体の構築が完了する前に、個々の火災感知器の設置時に動作試験を行うこともある。特に、高所などの天井面に設置された火災感知器については、現場の足場が残っているときに動作試験を実施できれば作業効率が上がる。
【0010】
しかしながら、個々の火災感知器を設置している段階では、防災システム全体の構築が完了していないため、従来技術のように火災受信機を用いた動作試験を行うことはできない。
【0011】
また、足場を用いながら設置した火災感知器についての個々の動作試験を実施する際には、防災システム全体としての配線が終了していないこともあり、目視あるいはテスタ等により断線不良がないことを確認することにとどまり、火災感知器が電気的に動作することに伴うランプ点灯動作までは行えていないのが現状である。
【0012】
足場が撤去された後の竣工直前においては、ランプ点灯も含めた動作試験を実施することが可能である。しかしながら、竣工直前に動作試験を実施した結果、配線不良、ランプ点灯不良等が確認された場合には、足場を再構築する必要が生じ、修復のための作業効率が著しく低下するおそれがあった。
【0013】
従って、足場などを用いて火災感知器を設置するごとに、その場で、火災感知器単体での動作確認を電気的に実施することができれば、配線不良、ランプ点灯不良等が確認された場合にも、修復のための作業効率の低下を抑制することができる。
【0014】
換言すると、高所など、種々の作業現場において火災感知器単体での電気的な動作試験を容易に実施できる操作性に優れた試験装置が望まれる。
【0015】
本開示は、上記の課題を解決するためになされたものであり、種々の作業現場において火災感知器単体での電気的な動作試験を容易に実施できる操作性に優れた火災感知器の試験装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本開示に係る火災感知器の試験装置は、固有の識別情報である感知器IDが割り付けられており、火災の発生を感知した場合には一対の信号線を介して感知器IDを含む火災信号を上位装置に出力することで火災発生場所を報知する機能を備えた火災感知器に関して、電気的な動作試験を実施するために用いられる火災感知器の試験装置であって、動作試験を実施するために使用される電力を供給するために試験装置本体に内蔵されているバッテリ電源部と、動作試験の試験対象となる火災感知器の一対の信号線と接続される一対の端子部と、バッテリ電源部から供給される電力により駆動され、試験員による操作入力に基づいて感知器IDを含む試験信号を生成し、一対の端子部に接続された一対の信号線を介して試験対象となる火災感知器に対して試験信号を出力し、試験信号を受信した試験対象となる火災感知器を強制的に点灯動作させることで動作試験を電気的に実施する制御部とを備えるものである。
【発明の効果】
【0017】
本開示によれば、種々の作業現場において火災感知器単体での電気的な動作試験を容易に実施できる操作性に優れた火災感知器の試験装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本開示の実施の形態1に係る動作試験対象となる火災感知器を含む自動火災報知設備の全体構成図である。
図2】本開示の実施の形態1に係る火災感知器の試験装置、および動作試験対象となる火災感知器の機能ブロック図である。
図3】本開示の実施の形態1における火災感知器の試験装置を用いた動作試験の一連操作を示したフロー図である。
図4】本開示の実施の形態1に係る火災感知器の試験装置において、配置図表示を用いた選択処理により試験対象となる火災感知器を設定する手法1に関する説明図である。
図5】本開示の実施の形態1に係る火災感知器の試験装置において、一覧表示を用いた選択処理により試験対象となる火災感知器を設定する手法2に関する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本開示の火災感知器の試験装置の好適な実施の形態につき、図面を用いて説明する。
本開示に係る火災感知器の試験装置は、火災感知器が火災受信機等の上位装置に対して火災信号を送信する際に用いる一対の信号線を活用して、自身に割り付けられた感知器IDを含む試験信号に基づく点灯動作試験を、火災感知器単体で電気的に容易に実施することができることを技術的特徴とするものである。
【0020】
実施の形態1.
まず始めに、本開示の動作試験対象となる火災感知器が含まれた自動火災報知設備の全体像について説明する。
【0021】
図1は、本開示の実施の形態1に係る動作試験対象となる火災感知器を含む自動火災報知設備の全体構成図である。火災受信機10は、信号線SG1を介して、アドレッサブル発信機20、火災感知器31、32、感知器用中継器40、および防排煙制御用中継器50と接続されている。
【0022】
感知器用中継器40には、火災感知器が複数台接続されている。図1では、感知器用中継器40に対して2台の火災感知器41、42が接続されている場合を例示している。また、防排煙制御用中継器50には、防火戸51、排煙機52、シャッタ53、およびたれ壁54が接続されている。
【0023】
また、火災受信機10は、信号線SG2を介して、音響装置61、62、および音響装置用中継器70と接続されている。さらに、音響装置用中継器70には、音響装置が複数台接続されている。図1では、音響装置用中継器70に対して2台の音響装置71、72が接続されている場合を例示している。
【0024】
また、火災受信機10は、非常放送盤80とも接続されている。非常放送盤80には、スピーカが複数台接続されている。図1では、非常放送盤80に対して2台のスピーカ81、82が接続されている場合を例示している。
【0025】
ここで、火災感知器31、32、および火災感知器41、42は、あらかじめ設定されたそれぞれの火災監視エリアにおいて火災の発生を感知する複数の火災感知器に相当する。複数の火災感知器により感知器群が構成される。また、感知器群に含まれる個々の火災感知器が、本開示において動作試験対象となる火災感知器である。
【0026】
また、防火戸51、排煙機52、シャッタ53、およびたれ壁54は、複数の火災感知器のそれぞれの感知結果と連動して動作し、火災、煙等の拡散を防止するために機能する複数の防排煙設備に相当する。複数の防排煙設備により、防排煙設備群が構成される。
【0027】
また、音響装置61、62、および音響装置71、72は、あらかじめ設定されたそれぞれの地区において火災の発生を報知する複数の地区音響装置に相当する。複数の地区音響装置により、音響設備群が構成される。
【0028】
また、スピーカ81、82は、あらかじめ設定されたそれぞれの地区において火災の発生、避難誘導などのメッセージ出力を行う複数の放送設備に相当する。複数の放送設備により、放送設備群が構成される。
【0029】
複数の火災感知器のそれぞれは、個々の火災感知器を識別するためのアドレス情報が感知器IDとしてあらかじめ割り付けられている。そして、複数の火災感知器のそれぞれは、火災を感知した場合には、自身に割り付けられたアドレス情報を含めた信号として、火災信号を火災受信機10に対して送信することができる。一方、火災受信機10は、アドレス情報を付加して情報伝送を行うことで、所望の火災感知器に対して必要な情報を送信することができる。
【0030】
また、複数の防排煙設備のそれぞれにも、個々の防排煙設備を識別するためのアドレス情報があらかじめ割り付けられている。従って、火災受信機10は、アドレス情報を付加して情報伝送を行うことで、所望の防排煙設備を稼働させる起動指令を送信することができる。
【0031】
また、複数の音響装置のそれぞれにも、個々の音響装置を識別するためのアドレス情報があらかじめ割り付けられている。従って、火災受信機10は、アドレス情報を付加して情報伝送を行うことで、所望の音響装置を鳴動させる起動指令を送信することができる。
【0032】
さらに、複数の放送設備のそれぞれにも、個々の放送設備を識別するためのアドレス情報があらかじめ割り付けられている。従って、火災受信機10は、アドレス情報を付加して情報伝送を行うことで、非常放送盤80を介して、所望の放送設備から所望の音声メッセージを出力させる起動指令を送信することができる。
【0033】
このような構成により、火災受信機10は、あらかじめ決められた種々の火災監視エリアに設置されている複数の火災感知器、およびアドレッサブル発信機20から火災信号を収集する。そして、火災受信機10は、収集した火災信号に基づいて、火災警報を行うとともに、防排煙設備群を作動させることができる。
【0034】
また、火災受信機10は、収集した火災信号に基づいて、警報が必要な地区に設置された音響装置のベルを鳴動させることができ、音声メッセージによる避難誘導が必要な地区に設置された放送設備から所望の音声メッセージを出力させることができる。なお、複数の音響装置のそれぞれ、および複数の放送設備のそれぞれは、どの火災感知器の感知結果と連動して動作するかがあらかじめ規定されている。
【0035】
また、図示は省略しているが、火災受信機10は、収集した火災信号に基づいて、移報信号を出力し、消火設備を起動して消火作業を開始したり、ネットワークを介して上位装置に対して火災信号を伝送したりすることができる。
【0036】
図1に示した感知器群に含まれる個々の火災感知器は、それぞれの火災監視エリアにおいて、必要に応じて、構築された足場などを利用した高所作業により、天井面などに設置される。
【0037】
冒頭で説明したように、新築の現場において個々に設置した火災感知器については、テスタ等により断線不良がないことを確認することにとどまり、火災感知器が電気的に動作することに伴うランプ点灯動作までは確認していない。
【0038】
図1に示したような自動火災報知設備は、新築の火災監視エリアで構築された後に、火災受信機10を用いて電気的な動作試験が実施され、感知器群に関しても、ランプ点灯動作を含めた動作試験が行われていた。竣工直前のこのような動作試験時には、個々の火災感知器を設置するために用いられた足場などは、順次撤去されているのが一般的であり、修復のための作業効率が著しく低下するおそれがあった。。
【0039】
本実施の形態1に係る火災感知器の試験装置は、個々に火災感知器を設置する段階において、火災感知器単体での点灯動作試験を電気的に容易に実施することができることを技術的特徴としている。そこで、図2を用いて、本実施の形態1に係る火災感知器の試験装置が有する機能について、詳細に説明する。
【0040】
図2は、本開示の実施の形態1に係る火災感知器の試験装置、および動作試験対象となる火災感知器の機能ブロック図である。試験装置100は、バッテリ電源部101、制御部102、および一対の端子部103を備えて構成されている。
【0041】
一方、火災感知器200は、コントローラ201、および表示部202を備えて構成されている。ここで、火災感知器200は、図1に示した感知器群に含まれる個々の火災感知器に相当する。
【0042】
火災感知器200は、固有の識別情報であるアドレス情報が感知器IDとして割り付けられている。火災感知器200は、火災の発生を感知した場合には、一対の信号線SL+、SL-を介して、感知器IDを含む火災信号を出力することで、自身の設置場所を火災発生場所として報知する機能を備えている。
【0043】
図1に示した自動火災報知設備の全体構成図においては、感知器群に含まれるそれぞれの火災感知器から出力された火災信号が、上位装置に相当する火災受信機10で受信され、火災受信機において火災発生場所を検知できることとなる。
【0044】
バッテリ電源部101は、動作試験を実施するために使用される電力を供給するために、試験装置100の本体に内蔵されている。従って、試験装置100は、外部からAC100Vなどの電源供給が不要であり、容易に持ち運びができることとなる。
【0045】
また、一対の端子部103には、動作試験の試験対象となる火災感知器200の一対の信号線SL+、SL-のそれぞれが接続される。
【0046】
制御部102は、バッテリ電源部101から供給される電力により駆動され、試験員による操作入力に基づいて感知器IDを含む試験信号を生成する。さらに、制御部102は、一対の端子部103に接続された一対の信号線SL+、SL-を介して、火災感知器200に対して試験信号を出力する。
【0047】
火災感知器200から出力される火災信号、および試験装置100から出力される試験信号のそれぞれは、一対の信号線SL+、SL-を介してDC24V信号として送信される。
【0048】
従って、バッテリ電源部101としては、制御部102を駆動して試験信号を出力できる容量を備えたDC24V電源として実現できる。この結果、試験装置100は、比較的小容量のコンパクトなバッテリ電源部101を備えたハンディタイプとして、高所作業等にも適用可能な軽量化を実現できる。
【0049】
火災感知器200内のコントローラ201は、自身に割り付けられた感知器IDを含む試験信号を受信したと判断した場合には、火災を擬似的に感知したとして表示部202によるランプ点灯動作を実行する。
【0050】
このような一連動作により、試験装置100を用いることで、試験対象となる火災感知器200を、火災が発生していない状態において強制的に点灯動作させることができ、火災感知器200ごとに個別の動作試験を電気的に実施することが可能となる。
【0051】
次に、試験員により、試験装置100を用いて単体の火災感知器200に対する動作試験を実施する際の一連処理について、図3を用いて説明する。図3は、本開示の実施の形態1における火災感知器の試験装置100を用いた動作試験の一連操作を示したフロー図である。図3では、試験員1と、試験装置100と、火災感知器200とによる連動した一連動作がフロー図として示されている。
【0052】
ステップS301において、試験員1は、火災感知器200の単体での動作試験を実施するために、火災感知器200の一対の信号線SL+、SL-を、試験装置100の一対の端子部103に接続する。
【0053】
試験員1は、足場を利用して火災感知器200を高所に設置した状態においても、ハンディタイプとして構成された試験装置100を用いて、容易に動作試験の準備を行うことができる。
【0054】
次に、ステップS302において、試験員1は、試験装置100をON状態としてバッテリ電源部101により制御部102を稼動させ、試験装置100に対して、試験対象となる火災感知器200の感知器IDを設定するとともに、動作試験をスタートさせる操作入力を行う。
【0055】
次に、ステップS303において、試験装置100内の制御部102は、試験員1による操作入力を受信する。さらに、ステップS304において、制御部102は、操作入力に基づいて感知器IDを含む試験信号を生成し、一対の信号線SL+、SL-を介して試験対象となる火災感知器200に対して試験信号を出力する。
【0056】
なお、ステップS302において試験員1が試験対象となる火災感知器200の感知器IDを設定する際の操作性の改善を図った上で、ステップS303、ステップS304において制御部102により試験信号を生成するために、以下のような手法1、手法2を活用することも考えられる。
【0057】
<手法1:配置図表示を用いた選択処理>
図4は、本開示の実施の形態1に係る火災感知器の試験装置において、配置図表示を用いた選択処理により試験対象となる火災感知器を設定する手法1に関する説明図である。
【0058】
図4に示した配置図データは、防火対象施設の1階のレイアウトを示した一例である。このような配置図データをあらかじめ作成しておき、試験装置100の表示部に表示させることで、試験員1は、試験対象となる火災感知器を配置図データの中から選択することで、容易に設定することができる。
【0059】
配置図データには、店舗A、店舗B、事務室など、エリアごとの用途を表すデータが含まれている。また、配置図データには、階段、エレベータを示す図形データが含まれている。また、配置図データには、手洗い場、非常口、発信機、およびAED(Automated External Defibrillator)を示すアイコンのデータが含まれている。
【0060】
さらに、配置図データには、火災感知器200の設置場所を表す感知器アイコン200A~200Gのデータが含まれている。感知器アイコン200A~200Gは、例えば、ボタン形式など、試験員1によって選択可能なアイコン画像データとなっている。
【0061】
制御部102は、あらかじめ作成されて記憶部に記憶されている配置図データを読み出すことにより、検査対象となる火災感知器200の設置位置がわかる配置図を表示する。配置図内の感知器アイコン200A~200Gは、感知器アイコン200A~200Gの描画領域内に指先などが接触することにより、選択される。
【0062】
また、記憶部には、各感知器アイコン200A~200Gと各火災感知器200の感知器IDとが対応付けられたテーブルが記憶されている。従って、制御部102は、試験員1が選択した感知器アイコン200A~200Gのいずれかについて、テーブルを参照することで感知器IDに変換し、試験信号を生成することができる。
【0063】
すなわち、配置図データおよびテーブルをあらかじめ作成して記憶部に記憶させておくことで、試験員1は、感知器IDを入力することなしに、試験対象となる火災感知器を容易に選択することができ、制御部102は、試験員1による操作入力に基づいて試験信号を容易に生成することができる。
【0064】
<手法2:一覧表示を用いた選択処理>
図5は、本開示の実施の形態1に係る火災感知器の試験装置において、一覧表示を用いた選択処理により試験対象となる火災感知器を設定する手法2に関する説明図である。なお、図5に示した一覧表示は、図4に示した配置図表示に対応しており、1階のフロアに7つの火災感知器が配置されている場合を例示している。
【0065】
図5に示した一覧表データを試験装置100の表示部に表示させることで、試験員1は、試験対象となる火災感知器を一覧表データの中から選択することで、容易に設定することができる。
【0066】
一覧表データには、先の図4の配置図内に表示された感知器アイコン200A~200Gに対応する7つの火災感知器が、NO1~NO7として表示されている。そして、一覧表データには、NOに対応した、設置階および設置場所が含まれている。一覧表データ内のNO1~NO7は、例えば、タッチパネル形式など、試験員1によって選択可能なデータとなっている。
【0067】
制御部102は、あらかじめ作成されて記憶部に記憶されている一覧表データを読み出すことにより、検査対象となる火災感知器200の設置位置がわかる一覧表示を行う。一覧表示内のNO1~NO7は、NO1~NO7の描画領域内に指先などが接触することにより、選択される。
【0068】
また、記憶部には、各NO1~NO7と各火災感知器200の感知器IDとが対応付けられたテーブルが記憶されている。従って、制御部102は、試験員1が選択したNO1~NO7のいずれかについて、テーブルを参照することで感知器IDに変換し、試験信号を生成することができる。
【0069】
すなわち、一覧表データおよびテーブルをあらかじめ作成して記憶部に記憶させておくことで、試験員1は、感知器IDを入力することなしに、試験対象となる火災感知器を容易に選択することができ、制御部102は、試験員1による操作入力に基づいて試験信号を容易に生成することができる。
【0070】
なお、手法1による配置図データは、手法2による一覧表データよりも、試験対象となる火災感知器を容易に特定できるメリットがある。一方、手法2による一覧表データは、手法1による配置図データよりも、容易に作成することができるメリットがある。
【0071】
次に、ステップS305において、火災感知器200内のコントローラ201は、一対の信号線SL+、SL-を介して受信した試験信号に含まれている感知器IDが自身に割り付けられている感知器IDと一致しているかを判断する受信処理を実行する。
【0072】
次に、ステップS306において、コントローラ201は、試験信号に含まれている感知器IDが自身に割り付けられている感知器IDと一致していると判断した場合には、火災受信機から試験信号を受信したときと同様に、火災を擬似的に感知したとして表示部202によるランプ点灯処理を実行する。
【0073】
次に、ステップS307において、試験員1は、操作入力に対する応答として、火災感知器200のランプが点灯したことを視認することで、設置した火災感知器200が電気的に正常であると判断する。
【0074】
そして、最後に、ステップS308において、試験員1は、一対の端子部103に接続されている火災感知器200の一対の信号線SL+、SL-を取り外し、火災感知器200の単体での動作試験を終了させる。
【0075】
以上のように、実施の形態1によれば、火災感知器が火災受信機等の上位装置に対して火災信号を送信する際に用いる一対の信号線を活用して、自身に割り付けられた感知器IDを含む試験信号に基づく点灯動作試験を、火災感知器単体で電気的に容易に実施する試験装置となっている。
【0076】
この結果、種々の作業現場において火災感知器単体での電気的な動作試験を容易に実施できる操作性に優れた火災感知器の試験装置を実現できる。
【符号の説明】
【0077】
10 火災受信機(上位装置)、31、32 火災感知器、41、42 火災感知器、100 試験装置、101 バッテリ電源部、102 制御部、103 一対の端子部、200 火災感知器、200A~200G 感知器アイコン、201 コントローラ、202 表示部、SL+、SL- 一対の信号線。
図1
図2
図3
図4
図5