(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170745
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】釣糸切断具
(51)【国際特許分類】
A01K 97/24 20060101AFI20241204BHJP
【FI】
A01K97/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087435
(22)【出願日】2023-05-29
(71)【出願人】
【識別番号】000002495
【氏名又は名称】グローブライド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097559
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 浩司
(74)【代理人】
【識別番号】100196829
【弁理士】
【氏名又は名称】中澤 言一
(72)【発明者】
【氏名】西守 雅人
(57)【要約】
【課題】操作性や取扱性の良い釣糸切断具を提供する。
【解決手段】本発明の釣糸切断具1は、外筒10と、外筒10に収納可能な中筒30とを備えている。外筒10の内面と中筒30の外面は、中筒30を外筒10に収納した際、収納状態を保持する表面形状を有することを特徴とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外筒と、外筒に収納可能な中筒とを備え、
前記外筒の内面と中筒の外面は、前記中筒を外筒に収納した際、収納状態を保持する表面形状を有することを特徴とする釣糸切断具。
【請求項2】
前記表面形状は、前記外筒の内面、及び/又は、前記中筒の外面に軸方向に沿って形成されるテーパ面を有することを特徴とする請求項1に記載の釣糸切断具。
【請求項3】
前記中筒の端部に、径方向外方に突出するフランジを形成したことを特徴とする請求項1又は2に記載の釣糸切断具。
【請求項4】
前記中筒の端部に、前記外筒に保持されている中筒を軸方向に押し下げ操作可能な押し下げ部を形成したことを特徴とする請求項1に記載の釣糸切断具。
【請求項5】
前記押し下げ部は、他物を取り付け可能な係止構造を有することを特徴とする請求項4に記載の釣糸切断具。
【請求項6】
前記中筒は、前記外筒に対して、収納された状態及び軸方向に移動させて前記外筒に対して軸方向に突出した状態になることを特徴とする請求項1に記載の釣糸切断具。
【請求項7】
前記外筒の端部に着脱可能な閉塞部材を取り付け、前記中筒を外筒から取り出し可能であることを特徴とする請求項6に記載の釣糸切断具。
【請求項8】
前記中筒は、熱可塑性樹脂で一体成形された中空構造であることを特徴とする請求項1又は6に記載の釣糸切断具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、実釣時において、仕掛けが障害物等に絡まった際、リールから繰り出される釣糸を切断するのに用いられる釣糸切断具に関する。
【背景技術】
【0002】
リールを用いて魚釣りをしている際、根がかり等、仕掛けが障害物と絡まることがあり、巻き取り操作できないことがある。このような状況において、釣竿を無理やり撓ませると、釣竿が折損する可能性がある。或いは、釣竿を寝かせて釣糸を引っ張ると、引張力が大きいため、リールの構成要素であるベール支持部やラインローラ部分に大きな負荷が作用して変形等が生じることがあり、リールを損傷することもある。
【0003】
このため、釣人は、釣糸が障害物と絡まって巻き取りできなくなった際、釣糸を引き抜いて切断できる釣糸切断具(例えば、特許文献1参照)を携行することがある。また、このような釣糸切断具はラインブレイカーとも称されており、例えば、非特許文献1に紹介されているような二重の筒構造にした構成も知られている。このような二重の筒構造のラインブレイカーは、外側の筒体(外筒)と内側の筒体(中筒)を分離し、各筒体にラインを巻回して所定の操作をすることで、ラインシステムの結束具として使用することが可能であり、ノットの結束力を高める、結束部のコブやヒゲをぎりぎりまで小さくする等、ノットの締め込みに使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3006622号
【非特許文献1】https://valleyhill.taniyamashoji.co.jp/3854
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の二重の筒構造の釣糸切断具は、金属材料を円筒形状にして表面にラバーチューブを被着した構造のため、重量が重くなってしまう。また、外筒と中筒は、ネジによる接続構造となっているため、操作が面倒であり、砂噛み、錆などが生じると中筒が外筒に対して回転し難くなり、操作性が低下する。
【0006】
本発明は、上記した問題に着目してなされたものであり、操作性や取扱性の良い釣糸切断具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的を達成するために、本発明に係る釣糸切断具は、外筒と、外筒に収納可能な中筒とを備え、前記外筒の内面と中筒の外面は、前記中筒を外筒に収納した際、収納状態を保持する表面形状を有することを特徴とする。
【0008】
上記した釣糸切断具は、外筒の内面と中筒の外面が、中筒の収納状態を保持するような表面形状を備えているので、中筒を外筒に対して軸方向に相対移動するだけで、中筒を外筒に対して移動させることが可能となる。すなわち、従来のようなネジの螺合構造によって中筒の収納状態を解除する構成ではないので、操作性及び取扱性の向上が図れる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、釣糸の切断、及び、釣糸同士を結束する際に用いられる釣糸切断具に関し、操作性及び取扱性の良い構成が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係る釣糸切断具の第1の実施形態を示す斜視図。
【
図2】
図1に示した釣糸切断具において、外筒から中筒を取り外した状態を示す斜視図。
【
図3】外筒の内面と中筒の外面に関し、中筒を外筒に収納した際、収納状態を保持する表面形状の一例を説明する断面図。
【
図4】(a)及び(b)は、
図1に示す構成において、外筒から中筒を取り出す操作方法を順に説明する図。
【
図5】(a)~(d)図は、
図1に示した釣糸切断具を用いて、釣糸同士を結束する結束具としての使用例を示す図。
【
図6】本発明に係る釣糸切断具の第2の実施形態を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は側面図。
【
図7】
図6に示す釣糸切断具を示す図であり、(a)は
図6(b)を別の方向から見た側面図、(b)は図(a)のA-A線に沿った断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本発明に係る釣糸切断具の実施形態について説明する。
図1から
図3は、釣糸切断具の第1の実施形態を示す図であり、
図1は斜視図、
図2は、
図1に示した釣糸切断具において、外筒から中筒を取り外した状態を示す斜視図、
図3は、外筒の内面と中筒の外面に関し、中筒を外筒に収納した際、収納状態を保持する表面形状の一例を説明する断面図である。
【0012】
本実施形態に係る釣糸切断具1は、略円筒形状に形成された外筒10と、外筒10よりも小径で、外筒10内に収納される略円筒形状に形成された中筒30とを備えている。前記外筒10は、軽量で高強度な材料、例えば、硬質樹脂や高強度の金属材(アルミなど)によって形成されており、軸方向の一端部(
図1に示す状態で上端)の開口部分に補強リング11が取着、或いは、一体形成されている。この補強リング11は、外筒10の開口部分の口割れ等を防止する機能を備えている。或いは、外筒10と異なる材料で形成したり、色彩を付したり、或いは、周方向に沿うように窪み11aを形成する等して、全体として意匠性を高めることも可能である。
【0013】
前記外筒10の外面10aには、柔軟性のある素材、例えば、熱可塑性エラストマー等で形成された樹脂シート12が被着されている。この外面10aは、釣糸を切断する際に、釣糸を巻回する部分であることから、比較的柔らかい素材を設けておくことで、巻回する釣糸に損傷を与えないようにすることが可能となる。なお、外筒10の下端には、フランジ10bが形成されており、巻回して被着される樹脂シート12が安定するようにしている。
【0014】
前記中筒30は、軽量な材料、例えば、熱可塑性樹脂をインジェクション成形する等で一体成形されている。通常、中筒30は、使用頻度が低く、外筒10の内部に収納されることから、軽量な材料で形成されていることが好ましい。特に、中空構造で一体成形することで、低コスト化が図れると共に、軽量化を図ることが可能となる。
【0015】
前記外筒10の内面10cと、中筒30の外面30aは、前記中筒30を外筒10に収納した際、その収納状態が保持されるような表面形状を備えている。すなわち、
図1及び
図3に示す中筒30の収納状態では、中筒30の軸方向の移動が規制され、使用時等に、不用意に分離することが無いように構成されている。
【0016】
このような収納状態の保持は、外筒10の内面10c、及び/又は、中筒30の外面30aの表面を、互いに係合するような形状にすることで構成することが可能であり、例えば、軸方向に沿ったテーパ面を形成することで構成可能である。
本実施形態では、外筒10の端部(下端部)10dを略ストレート形状に形成し、前記中筒30の端部(下端部)30dを、下方に移行するに連れて拡径するテーパ面30eに構成している。このような一方のテーパ面形状にすることで、中筒30を外筒10内に挿入することができ、かつ、中筒30を外筒内に収納すると、両者が圧入構造となって、中筒30を外筒10に対して保持することが可能となる。
【0017】
また、上記のように外筒10の内面10cの端部にテーパ面30eを形成しておくことで、中筒30の着脱操作が容易に行え、使い勝手が良くなる。特に、このようなテーパ面30eは、外筒10に対して中筒30を圧入すると、テーパ部分で反発するように圧力が生じ、強い圧着力で両者の係合が成されるため、中筒30が不用意に外筒10から抜け難くなる。
【0018】
なお、互いに係合して収納状態を保持する機能を発揮する表面形状については、テーパ面を外筒10の内面10cのみ、或いは、中筒30の外面30aのみに形成しても良く、両面に形成しても良い。また、テーパ面による係合部分は、中筒30の挿脱操作がし易いように、端部で係合させる等、その係合位置については限定されることはない。また、係合がされる表面形状については、軸方向に沿ったテーパ面に限られず、周方向に沿った凹凸形状、径方向に突出する突起部(でっぱり)や凹部、或いは、僅かな径差にした圧入構造にする等、適宜変形することが可能である。
【0019】
前記中筒30の端部には、径方向外方に突出するフランジ30Aを形成しておくことが好ましい。
このようなフランジ30Aを形成しておくことで、中筒30を摘まんで外筒10から取り外すきっかけを与えることができ、また、取り外し操作がし易くなる。このフランジ30Aについては、360°に亘って形成しても良いし、周方向に所定間隔をおいて複数個所形成する等、適宜変形することが可能である。
【0020】
本実施形態の外筒10は、
図3に示すように、両端が開口する開口部10A,10Bを備えており、上端の開口部10A部分で中筒30の端部(円板状の平面)32が露出する構成となっている。この中筒30の端部には、外筒10に保持された状態にある中筒30を軸方向に移動させるための部材を設けておくことが好ましい。この移動させる部材は、中筒30を外筒10に対して相対移動させる際に指で摘まむ(引き上げる)、或いは、押圧する(押し下げる)ものであれば良い。本実施形態では、支障なく押し下げ操作できるように、端部32の表面から軸方向に突出する突出部材(以下、押し下げ部35とも称する)として形成されている。
【0021】
前記押し下げ部35については、
図4(a)(b)に示すように、外筒10を握持した状態で、その親指で矢印方向(下方向)に押圧すると、上記した外筒10と中筒30の保持機能が解除され、中筒30が下方向に移動して外筒10に対して分離される。
【0022】
なお、本実施形態の押し下げ部35は、他物、例えば、カラビナ式のフック60が装着できるように、フック60が挿通される開口35aを備えた係止構造を備えている。このフック60は、実釣時において、釣人の衣服に引っ掛けるために取り付けられる。前記開口35aにフック60を取り付けると、フックが外筒10の開口部10Aに対して径方向外方にはみ出るため、中筒30が不用意に落下等することが防止される。なお、係止構造は、図に示すようなブリッジ状以外にも、フレーム状に構成したり、板部材に孔を形成する等、適宜変形することが可能である。
【0023】
次に、上記した構成の釣糸切断具1の使用例及び作用効果について説明する。
実釣時に仕掛けが根がかり等して、リールで釣糸が巻き取れなくなった際、釣糸を外筒10に巻回し、引張力を与えて仕掛けの切断操作を行なう。外筒10の外面10aには、樹脂シート12が被着されているので、柔軟性があり、かつ、滑り止め機能も有することから、巻回した釣糸が樹脂シート部分で切れるようなこともない。
【0024】
また、上記の釣糸切断具1は、釣糸同士を結束する際の道具(結束具)として使用することが可能である。
図4に示したように、前記押し下げ部35を押し下げ操作して、外筒10と中筒30を分離し、外筒10に対してリール側の釣糸S1を巻回し(
図5(a)参照)、中筒30に対して仕掛け側の釣糸S2を巻回する(
図5(b)参照)。この状態で、釣糸S1とS2を結束し(
図5(c)参照)、外筒10と中筒30を両側に引っ張ることで、釣糸S1とS2を結束することができる(
図5(d)参照)。この引張によって、ノット65が締め付けられ、ノットを小さくして、きつく結束することが可能となる。
【0025】
上記した釣糸切断具1によれば、従来のように、外筒10と中筒30をネジ式で結合させないので、ネジの部分で砂噛みや錆などのトラブルが生じることもなく、使い勝手の向上が図れる。また、外筒10は、軽量で高強度な材料で形成されており、釣糸を巻回する部分に樹脂シート12が被着されているので、ラインブレイカーとしての使用に十分耐えることができる。
【0026】
また、中筒30は、中空構造となっており、切削品ではなく樹脂製で一体形成したことで軽量化が図れ、ノット65の締め付け操作がし易くなると共に、低コスト化が図れる。さらに、外筒10と中筒30は、テーパ面によって係合、保持されており、単に押し下げ部35を押し込み操作するだけで両者を分離できるので、操作性の向上が図れる。
【0027】
図6及び
図7は、釣糸切断具の第2の実施形態を示す図であり、
図6(a)は斜視図、(b)は側面図、
図7は、
図6に示す釣糸切断具を示す図であり、
図7(a)は
図6(b)を別の方向から見た側面図、
図7(b)は
図7(a)のA-A線に沿った断面図である。
なお、本実施形態を説明するに際し、前記第1の実施形態と同様な構成要素については同一の参照符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0028】
本実施形態の釣糸切断具1Aは、中筒30が外筒10に対して、収納された状態、及び、軸方向に移動して(引き上げて)外筒10に対して軸方向に突出した状態になるように構成されている(伸縮構造となっている)。前記中筒30の外面30aと外筒10の内面10cは、相対的に軸方向に摺動可能となっており、中筒30の外面30aには、下端側に円周状の突起30fが形成され、最下端に円周状の突起30gが形成されている。
【0029】
これらの突起30f,30gを備えた表面形状は、外筒10の内面10cに摺動可能に当接しており、中筒30を外筒10に収納した際、その収納状態が保持されるようになっている。また、中筒30の突出部材35を引き上げ操作した際、外筒10の補強リング11の内面(開口部10A)に係合して、中筒30の停止機能を備えている。すなわち、本実施形態の中筒30は、突起30fを開口部10Aに係合させるか、突起30gを開口部10Aに係合させるかで、外筒10に対して段階的に伸縮できるように構成されている。
【0030】
このような構成では、釣糸切断具として、外筒10のみの短い状態で使用できると共に、必要に応じて中筒30を引き出して、外筒10及び中筒30による長い状態で使用することが可能となる。
【0031】
また、前記外筒10の下端部には、その開口を閉塞する着脱可能な閉塞部材(キャップ状の蓋体)38を取り付けて、中筒30を外筒10から取り出し可能にすることが好ましい。
このように構成することで、上記した実施形態と同様、釣糸結束具として使用することも可能となる。
【0032】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記した実施形態に限定されることはなく種々変形することが可能である。
前記外筒10及び中筒30の断面形状については、適宜変形することが可能である。また、中筒30は、開口部10A側からも挿入できるように構成しても良い。
【0033】
前記外筒10と中筒30の表面状態については、柔軟性〈硬度〉が異なる部材を被着することで、使用する釣糸の種類、太さ等によって使い分けすることも可能である。例えば、リール側に細い釣糸(PE)を用い、仕掛け(餌)側に太い釣糸(リーダ;フロロ、ナイロン)を用いる構成において、両釣糸を結束する場合、細い釣糸を柔らかい素材に巻き付けるとめり込んでしまう。このため、細い釣糸と太い釣糸を結束する(ノット締めする)際には、リール側の細い釣糸を、表面の硬度が高い筒体に巻回し、仕掛け側の太い釣糸を、表面の硬度が低い筒体に巻回して結束するのが好ましい。なお、リール側が細い釣糸、餌側が太い釣糸の関係であれば、仕掛けの切断操作時に釣糸がめり込まないように、中筒30の表面に対して外筒10の表面が硬い関係になっていることが好ましい。
【符号の説明】
【0034】
1,1A 釣糸切断具
10 外筒
30 中筒
35 押し下げ部(突出部材)
35a 開口(係止構造)
60 カラビナ式のフック(他物)