(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170747
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】ワイヤーハーネス用クランプ及びその取付構造
(51)【国際特許分類】
H02G 3/30 20060101AFI20241204BHJP
F16B 2/08 20060101ALI20241204BHJP
【FI】
H02G3/30
F16B2/08 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087438
(22)【出願日】2023-05-29
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【弁理士】
【氏名又は名称】森 太士
(72)【発明者】
【氏名】浅野 正良志
【テーマコード(参考)】
3J022
5G363
【Fターム(参考)】
3J022DA12
3J022EA15
3J022EB02
3J022EB05
3J022EB14
3J022EC02
3J022EC14
3J022EC22
3J022FB30
5G363AA16
5G363BA02
5G363DA13
5G363DA16
5G363DC02
(57)【要約】
【課題】クランプにおける採寸基準となる位置を容易に認識でき、クランプ間の寸法を精度良く採寸が可能なワイヤーハーネス用クランプ及びその取付構造を提供する。
【解決手段】ワイヤーハーネスを、テープ又はバンドを巻き付けた状態で保持するクランプ本体を備え、クランプ本体には、前記ワイヤーハーネスの寸法を計測する際の基準位置において突出する凸部が少なくとも1つ設けられている、ワイヤーハーネス用クランプ、及び該ワイヤーハーネス用クランプを、取付対象となる取付凹部に取り付ける取付構造であって、ワイヤーハーネス用クランプと、取付凹部とが凹凸の関係で嵌合するように、前記取付凹部の形状が設定されている、ワイヤーハーネス用クランプの取付構造である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤーハーネスを、テープ又はバンドを巻き付けた状態で保持するクランプ本体を備え、前記クランプ本体には、前記ワイヤーハーネスの寸法を計測する際の基準位置において突出する凸部が少なくとも1つ設けられている、ワイヤーハーネス用クランプ。
【請求項2】
前記凸部は、前記ワイヤーハーネスの長手方向の位置において、前記基準位置と同じ位置に、メジャーの先端部が係合し得る係合部を有する、請求項1に記載のワイヤーハーネス用クランプ。
【請求項3】
前記クランプ本体に立設され、取付対象の孔部に挿入されるアンカー部をさらに備える、請求項1又は2に記載のワイヤーハーネス用クランプ。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のワイヤーハーネス用クランプを、取付対象となる取付凹部に取り付ける取付構造であって、
前記ワイヤーハーネス用クランプと、前記取付凹部とが凹凸の関係で嵌合するように、前記取付凹部の形状が設定されている、ワイヤーハーネス用クランプの取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤーハーネス用クランプ及びその取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両内においては、電源供給及び信号通信のためワイヤーハーネスが配策される。車両内においてワイヤーハーネスを配策するとき、車両への固定用のクランプを複数用いるのが一般的である。そして、配策するワイヤーハーネスに対し、クランプ間の長さを正確に採寸することが重要である。例えば、ワイヤーハーネスがクランプ間の長さよりも短く採寸された場合、配策することができなくなる。逆に、ワイヤーハーネスがクランプ間の寸法よりも長く採寸された場合、ワイヤーハーネスが余長となり、その分、無駄にスペースを消費してしまう。そのため、ワイヤーハーネス用クランプの採寸基準位置にマーカー等の目印が付され、その目印に基づきクランプ間のワイヤーハーネスの寸法を適切な長さとすることが一般に行われる(特許文献1参照)。また、そのような採寸基準位置は、クランプのアンカー部の中心とすること一般的である。
【0003】
ところが、アンカー部の中心は、ワイヤーハーネスの採寸時にはワイヤーハーネスに隠れて視認することができないか、又は視認することが困難となる。また、採寸基準位置はクランプによって異なり一様ではない。そのため、通常は採寸箇所を事前に調べ、採寸基準位置を目測で計り、おおよその位置から採寸を行う。従って、従来のワイヤーハーネス用クランプは、人による誤差や見方による誤差が発生し易い構造であると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような従来技術が有する課題に鑑みてなされたものである。そして本発明の目的は、クランプにおける採寸基準となる位置を容易に認識でき、クランプ間の寸法を精度良く採寸が可能なワイヤーハーネス用クランプ及びその取付構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様に係るワイヤーハーネス用クランプは、ワイヤーハーネスを、テープ又はバンドを巻き付けた状態で保持するクランプ本体を備え、クランプ本体には、ワイヤーハーネスの寸法を計測する際の基準位置において突出する凸部が少なくとも1つ設けられている。
【0007】
本発明の別の態様に係るワイヤーハーネス用クランプの取付構造は、上記本発明の態様に係るワイヤーハーネス用クランプを、取付対象となる取付凹部に取り付ける取付構造である。そして、ワイヤーハーネス用クランプと、取付凹部とが凹凸の関係で嵌合するように、取付凹部の形状が設定されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、クランプにおける採寸基準となる位置を容易に認識でき、クランプ間の寸法を精度良く採寸が可能なワイヤーハーネス用クランプ及びその取付構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態に係るワイヤーハーネス用クランプの一例を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示すワイヤーハーネス用クランプにワイヤーハーネスを保持した状態を示す斜視図である。
【
図3】
図2に示す、ワイヤーハーネスを保持したワイヤーハーネス用クランプの上面図である。
【
図4A】
図2に示すワイヤーハーネス用クランプの凸部にメジャーの係合爪を係合した状態を示す上面図である。
【
図4B】
図4Aに示すワイヤーハーネス用クランプの側面図である。
【
図5A】ワイヤーハーネス用クランプの凸部の変形例を示す上面図である。
【
図5B】ワイヤーハーネス用クランプの凸部の変形例を示す上面図である。
【
図5C】ワイヤーハーネス用クランプの凸部の変形例を示す上面図である。
【
図6】ワイヤーハーネス用クランプと、取付部とを取り付ける様子を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を用いて本実施形態に係るワイヤーハーネス用クランプについて詳細に説明する。なお、図面の寸法比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率と異なる場合がある。
【0011】
<ワイヤーハーネス用クランプ>
本実施形態のワイヤーハーネス用クランプは、ワイヤーハーネスを、テープ又はバンドを巻き付けた状態で保持するクランプ本体を備える。そして、クランプ本体には、ワイヤーハーネスの寸法を計測する際の基準位置において突出する凸部が少なくとも1つ設けられている。
以下、本実施形態のワイヤーハーネス用クランプについて図面を参照して説明する。
【0012】
図1~
図3は、本実施形態のワイヤーハーネス用クランプの一例を示している。
図1は、ワイヤーハーネスを保持する前の状態を示す。また、
図2及び
図3は、
図1に示すワイヤーハーネス用クランプ10にワイヤーハーネス20を保持した状態を示し、
図2は斜視図、
図3は上面図である。
【0013】
図1に示すワイヤーハーネス用クランプ10は、プレート形状のクランプ本体12と、アンカー部18とを備える。クランプ本体12は、側面の略中央部において突出する凸部14及び凸部16を備える。より詳細には、凸部14及び凸部16は、ワイヤーハーネスの寸法を計測する際の基準位置Xにおいて突出している。なお、
図1においては、基準位置Xはクランプ本体12の中心に位置しているが、必ずしも中心に位置する必要はなく、ワイヤーハーネスの寸法計測における基準となる位置であればよく、任意に設定することができる。
アンカー部18は、クランプ本体12の下方に向くように立設され、不図示の取付対象の孔部に挿入され、ワイヤーハーネス用クランプ10が取付対象に固定される。取付対象としては、自動車内のパネル、取付金具、支持具等が挙げられる。また、アンカー部18は、寸法を計測する際の基準位置Xに設けられている。なお、本実施形態のワイヤーハーネス用クランプにおいては、アンカー部は必ずしも必要ではなく、アンカー部が存在しない場合は別の固定手段により取付対象に固定される。
【0014】
ワイヤーハーネス20は、
図2及び
図3に示すように、クランプ本体12の上面に載置され、テープ22及び24により巻き付けられた状態で保持される。
図2及び
図3においては、テープ22及び24によりワイヤーハーネス20を保持する例を示したが、テープの代わりにバンドにより保持してもよい。なお、本実施形態において、テープ及びバンドとしては、特に限定はなく、ワイヤーハーネスを固定することを目的として汎用されているものを使用することができる。
【0015】
本実施形態においては、
図2及び
図3に示すように、ワイヤーハーネス用クランプ10にワイヤーハーネス20を保持した状態において、クランプ間のワイヤーハーネス20の寸法を計測する際、凸部14及び/又は凸部16を目印として利用する。すなわち、凸部14及び凸部16は、ワイヤーハーネス20の寸法を計測する際の基準位置Xに設けられているため、ワイヤーハーネス20の寸法を計測する際の基準位置となる。そして、凸部14及び/又は凸部16を基準位置として他のクランプまでの寸法を計測することで、基準位置Xからの正確な採寸が可能となる。そのため、クランプ間において、ワイヤーハーネス20が短くなったり、長くなったりすることを防止することができる。また、クランプ本体12に採寸する際の基準位置Xがマーキングされている場合において、当該マーキングがワイヤーハーネス20により隠れたとしても、凸部14及び凸部16は、ワイヤーハーネス20とは干渉しないように設けられているため採寸に支障はない。
なお、
図1~
図3においては、クランプ本体12の側面の両側に凸部14及び凸部16の2が設けられている形態を示したが、採寸する際の基準位置が認識可能であれば、凸部は1つであってもよい。
【0016】
一方、
図3に示すように、凸部14及び凸部16には、それぞれ、ワイヤーハーネス20の長手方向において、ワイヤーハーネスの寸法を計測する際の基準位置と同じ位置に、メジャーの先端部が係合し得る係合部14A、16Aを有する。係合部14A、16Aは、ワイヤーハーネスの長手方向を法線とする面内に形成されている。すなわち、係合部14A、16Aは、クランプ本体12の側面に対して垂直に延在する面からなる。そして、
図4A、
図4Bに示すように、メジャー26の先端部の係合爪28を、凸部16の係合部16Aに係合させることで、係合爪28は基準位置と同じ位置であるため寸法の計測を容易に、かつ、正確に行うことができる。なお、係合部14A、16Aは、メジャー26の先端部の係合爪28を係合させるに際しては面状が好ましいが、メジャーの先端部が係合することができれば、面状でなくてもよい。
また、
図3に示すように、凸部14及び凸部16のいずれにも係合部14A、16Aを有する。そして、メジャー26の係合爪28を係合させる場合において、平面視において直角三角形形状の凸部14及び凸部16はそれぞれ逆向きとなる。また、凸部14及び凸部16の係合部14A、16Aの反対側は、係合部の面から傾斜しており、メジャー26の係合爪28は係合しない。係合部14A、16Aの反対側にはメジャーの係合爪が係合しない、すなわち基準位置から外れた位置には係合しない。すなわち、メジャーの先端部は、凸部の係合部のみにしか係合しないため、基準位置のみにメジャーの先端部を係合させることができ、寸法の計測誤差を防ぐことができる。
【0017】
本実施形態おいて、メジャーとしては、ワイヤーハーネスの寸法を計測でき、かつ、先端が凸部の係合部に係合し得るものであれば特に制限はない。例えば、鋼製巻尺、コンベックス等が挙げられる。また、メジャーの先端部が0mm(基準点)であってもよいし、先端部から所定の間隔空けた位置に0mm(基準点)が設定されたものであってもよい。
【0018】
以上、凸部14及び凸部16としては、上方からの平面視で直角三角形のものを示したが、
図5A、
図5B、
図5Cに示す形状としてもよい。
図5Aに示す凸部15Aは穴17を設けた形状であり、
図5Bに示す凸部15Bは多角形形状であり、
図5Cに示す凸部15Cは曲線形状である。いずれも、凸部の相違により、他のワイヤーハーネス用クランプと識別することができる。既存のクランプには複数の形状の違いがあり、近似する形状は生産時の組付けにおいて、誤ったものが用いられることが懸念される。しかし、
図5A等のように、他の凸部と識別できるような形状とすることで、組付けの誤りを抑制することができる。
【0019】
<ワイヤーハーネス用クランプの取付構造>
本実施形態のワイヤーハーネス用クランプの取付構造は、以上説明した本実施形態のワイヤーハーネス用クランプを、取付対象となる取付凹部に取り付ける取付構造である。そして、ワイヤーハーネス用クランプと、取付凹部とが凹凸の関係で嵌合するように、取付凹部の形状が設定されている。
【0020】
図6は、本実施形態のワイヤーハーネス用クランプの取付構造について説明するための斜視図である。ワイヤーハーネス用クランプ10は、取付対象となる被取付部材30の取付凹部31に嵌合する。すなわち、ワイヤーハーネス用クランプ10のクランプ本体12は取付凹部31に、クランプ本体12の凸部14は凹部32に、凸部16は凹部34に、それぞれ嵌合するように凹凸の関係が設定されている。また、アンカー部は、貫通穴36に嵌って固定される。このように、ワイヤーハーネス用クランプ10と、取付凹部31とが凹凸の関係で嵌合するように設定されることで、誤って、他のワイヤーハーネス用クランプが取り付けられるといったことを防止することができる。
【0021】
以上、本実施形態を説明したが、本実施形態はこれらに限定されるものではなく、本実施形態の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0022】
10 ワイヤーハーネス用クランプ
12 クランプ本体
14 16 凸部
14A 16A 係合部
18 アンカー部
20 ワイヤーハーネス
22 24 テープ
26 メジャー
28 係合爪
31 取付凹部