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特開2024-170749ハイボールの製造方法および製造装置
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  • 特開-ハイボールの製造方法および製造装置 図1
  • 特開-ハイボールの製造方法および製造装置 図2
  • 特開-ハイボールの製造方法および製造装置 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170749
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】ハイボールの製造方法および製造装置
(51)【国際特許分類】
   C12G 3/04 20190101AFI20241204BHJP
   B67D 1/08 20060101ALI20241204BHJP
【FI】
C12G3/04
B67D1/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087441
(22)【出願日】2023-05-29
(71)【出願人】
【識別番号】509219073
【氏名又は名称】株式会社リード
(74)【代理人】
【識別番号】100136098
【弁理士】
【氏名又は名称】北野 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100137246
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 勝也
(74)【代理人】
【識別番号】100158861
【弁理士】
【氏名又は名称】南部 史
(74)【代理人】
【識別番号】100194674
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 覚史
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【弁理士】
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】井上 智広
【テーマコード(参考)】
3E082
4B115
【Fターム(参考)】
3E082AA04
3E082BB02
3E082CC03
3E082CC04
3E082CC10
3E082DD01
3E082EE02
4B115LG02
4B115LH11
4B115LP02
(57)【要約】
【課題】品質の高いハイボールを提供する。
【解決手段】アルコール飲料と炭酸水を混合してハイボールを製造する方法であって、飲用グラスに予め氷を投入し、続いてアルコール飲料を前記氷に対して注いでリンスし、さらに炭酸水によって前記アルコール飲料を希釈する。アルコール飲料と炭酸水の温度を予め氷の温度に近づけて冷却しておく。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルコール飲料と炭酸水を混合してハイボールを製造する方法であって、飲用グラスに予め氷を投入し、続いてアルコール飲料を前記氷に対して注いでリンスし、さらに炭酸水によって前記アルコール飲料を希釈することを特徴とするハイボールの製造方法。
【請求項2】
アルコール飲料と炭酸水を混合してハイボールを製造する方法であって、前記アルコール飲料と炭酸水の温度を予め氷の温度に近づけて冷却しておく請求項1に記載のハイボールの製造方法。
【請求項3】
アルコール飲料と、炭酸水のそれぞれを交互に適量ずつN回に分けてグラスに抽出する請求項1に記載のハイボールの製造方法。
【請求項4】
アルコール飲料と炭酸水を混合してハイボールを製造する装置であって、アルコール飲料の供給容器と、炭酸ガスボンベによって加圧して製造した炭酸水容器と、前記アルコール飲料と炭酸水を飲用グラスに抽出するための抽出口を有し、前記アルコール飲料の供給容器と炭酸水容器のそれぞれは、予め氷の温度に近づけて冷却する冷却機構を設けたことを特徴とするハイボールの製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、主にアルコール飲料を炭酸水で希釈して提供するための製造方法およびそのディスペンサーに係り、質の高いウイスキーソーダを始めとするハイボールを製造する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、ハイボールと称されるアルコール・炭酸混合飲料では、アルコールと炭酸水の混合比と炭酸濃度という2つの要素が、おいしい質の高い飲料にとって重要な要素とされている。アルコールと炭酸水の混合比については、混合するアルコール飲料に応じて最適であるとされる配合比がおおよそ決まっている。また、炭酸濃度については製造装置によってハイボールを製造する場合には炭酸水を製造するディスペンサーの能力および抽出バルブの構造によって決定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭60-169193号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された発明は、従来から一般的に利用されている飲料ディスペンサーに係るものであり、炭酸ガスボンベによって生成された炭酸水によって焼酎などのアルコール飲料を希釈してハイボールを製造する構成が開示されている。
【0005】
ところで、上記に示した特許文献1の発明では、アルコール飲料を炭酸水によって希釈してハイボールを得るものであるが、炭酸水はアルコール飲料に対して噴射するように希釈するものであり、アルコール飲料と炭酸水の混合比によってハイボールのアルコール濃度を調節することができる。しかしながら、ハイボールがおいしいと感じる要素はアルコールの混合濃度だけではなく、混合する炭酸水そのものの濃度など、その他の要素が関係するものであって、特許文献1の装置ではハイボールを製造することはできてもハイボールそのものの品質を向上することを目的とするものではない。
【0006】
本発明は、単にアルコール飲料を炭酸水によって希釈するだけでなく、品質の高いハイボールを提供することができる製造方法、およびその製造装置を開示することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一般に、「炭酸感」といわれる炭酸水の濃度はガスボリュームという値で表現することができ、数値が大きいほど炭酸感が強いとされ、近年では炭酸感が強い飲料が好まれている。そして、炭酸感の数値はディスペンサーや抽出バルブの構造に依存する。すなわち、飲用に供するときに炭酸水の濃度が低くなれば炭酸感が低く感じられる。たとえば炭酸水がディスペンサーや抽出バルブから強く噴出されればこの混合時に炭酸が抜けることになり、炭酸感が低くなる。言い換えると、炭酸水にアルコール飲料が混合されたときに高いガスボリュームを維持することができるか否かによって炭酸感が強いか低いかが決定される。また、炭酸水とアルコール飲料という2つの原料を、適正な配合比をもってグラス容器中で均一に配合されていることも炭酸感に重要な要素となる。アルコール飲料と炭酸水を混合したハイボールの調理は従来からバーなどで通常マニュアルによって行われるが、その調理法は、まずグラス容器に氷を投入し、次にウイスキーを入れ、マドラーで攪拌し、炭酸水をゆっくりと注ぎ、容器中の配合比を均一にするためにマドラーで再度攪拌するのが一般的である。この手順は全て手作業で行われる。しかしながら、マニュアル操作の際に必須であるマドラー攪拌では、炭酸の抜けが生じることになって、想定した炭酸濃度を実現することができないという課題がある。
【0008】
一方、ディスペンサーによってハイボールを製造することも知られている。この場合には、最初の段階で手作業にてグラス容器に氷を投入することについてはマニュアル調理と同じであるが、その次の段階としては炭酸水を自動的に製造し、アルコール飲料と炭酸水をディスペンサーによって混合することになる。また、グラスを指定された場所に設置した後は自動的に氷がグラスに投入される手段を用いることもある。そして、基本的にはディスペンサーに設置したグラスが氷によって冷却され、続いてアルコール飲料と炭酸水という2種類の飲料の注出バルブを開くことによって、アルコール飲料と炭酸水がそれぞれ自動的に抽出されるという一連の行程によって行われる。なお、アルコール飲料と炭酸水の配合比は予めディスペンサーにおいてそれぞれ決められた量が供給されることによって決定されることになる。
【0009】
ところで、ディスペンサーによる自動供給の場合には、アルコール飲料と炭酸水とを同時にグラスに抽出するために、この段階で炭酸水が強くかき混ぜられることによって炭酸の抜けが生じ、炭酸感を低く感じる原因になる。従来から公知であるディスペンサーによるハイボールの製造方法の場合には、アルコール飲料と炭酸水をグラスに噴出させるために、濃度差がある2種類の飲料が接触することによって化学反応が起こって希釈熱という熱が発生するために、この熱が炭酸水に加わることによってさらなる炭酸の抜けが生じることになる。つまり、アルコール飲料と炭酸水という2つの濃度が異なる液体を混合することに起因して希釈熱が発生することは不可避である。希釈熱は溶液を濃度が異なる溶媒で薄める(希釈する)時に発生する熱を示すもので、本発明の対象の場合にはアルコール飲料である溶液を炭酸水である溶媒で希釈する際に発生する熱のことである。ハイボールを製造する場合にはアルコール飲料に炭酸水を加えれば約3℃の希釈熱が発生するといわれており、口当たりがよいハイボールを製造する際には希釈熱への対策が求められる。
【0010】
また、グラスに予め投入されている氷の表面に凹凸がある場合や、氷に霜が付着した状態で炭酸水を抽出すれば、霜を有しない氷が溶解するよりも物理的な衝撃が大きく、その衝撃によって炭酸水の炭酸が抜けてしまうことについても発明者は知見した。特に、ディスペンサーによる抽出では製氷機から氷を取り出した状態でなんら対策を講じなければ、氷に霜が付着することを避けることは困難である。特に湿度が高い雰囲気中では霜が発生する恐れが強い。さらにまた、ディスペンサーにおいて炭酸水を供給する際には約3~5℃の許容範囲で炭酸水温度を制御しているが、グラスや氷、あるいはアルコールと接触した際の温度差が熱衝撃となって、炭酸が抜けてしまうという問題もある。したがって、熱衝撃への対策が要求される。
【0011】
そこで、本発明では、ディスペンサーによってハイボールを製造する際に、これらの知見に基づいて、希釈熱への対策、および熱衝撃への対策を講じることによって、炭酸感が強く口当たりがよいと感じられるハイボールを提供することができる製造方法、および製造装置を開示する。
【0012】
本発明では、これらの技術的な対策として、まず飲用グラスに氷を投入し、続いてアルコール飲料を氷に注いで氷をリンスし、その接触によって希釈熱を最初の段階で発生させる。その際、物理的には冷たい氷の温度が上昇し、上昇した温度に見合ってアルコール飲料の温度が下げられることになる。その後、炭酸水を投入することによって炭酸水と氷・アルコール飲料混合液が接触することになるので、アルコール飲料は氷が溶解した分だけ濃度が低下することによって、希釈熱の発生を和らげることができる。すなわち、当初の氷とアルコール飲料の混合によって希釈熱は発生するが、総質量が小さいので希釈熱の総熱量は比較的小さく抑えられることに対して、次の段階である炭酸水の投入時にも希釈熱は発生するが、アルコール飲料は氷によって濃度が下げられている結果、炭酸水との濃度差を比較的小さく抑えることができることになる。つまり、この一連の行程によれば希釈熱が発生するものの、従来のようなディスペンサーによるように濃度差が高いアルコール飲料と炭酸水を一度に投入することに対して希釈熱の発生は和らぐことになる。これによって希釈熱による影響を緩和することができた。
【0013】
さらに、本発明の方法では氷にアルコール飲料を添加することによって、アルコール飲料の温度が低くなっている結果、従来と比較すればアルコール飲料と炭酸水の温度差が小さくなっており、温度差に起因する炭酸水の炭酸抜けも抑えることができた。
【発明の効果】
【0014】
本発明では上述した手段を用いてハイボールを製造したので、従来の製造方法あるいは製造装置では達成することができなかった炭酸感が高く、質の高いハイボールを提供することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の好ましいハイボールの製造方法における熱衝撃への対策を示す行程図
図2】同、ハイボールの製造方法における希釈熱への対策を示す行程図
図3】本発明の好ましいディスペンサーの要部を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明方法の好ましい実施形態を図面に従って説明する。図1は好ましいハイボールの製造行程のうち、希釈熱への対策を示した行程図であり、上記熱対策のための要件を説明している。本発明におけるハイボールとは、ウイスキーを炭酸水で希釈した飲料のみならず、いわゆるチューハイのような焼酎を炭酸水で希釈した飲料などのアルコール飲料を広く含むもので、さらに希釈される原液にアルコールを含まない炭酸飲料も本発明におけるハイボールの概念に含むものとする。まず、最初の行程では飲用に供するグラスに氷を投入する(行程1)。この場合、氷の状態は凹凸が少なく霜の付着も少ない氷を選択することが好ましい。続いて、氷が入った状態のグラスにアルコール飲料を注ぎ入れる。最初に注ぐ原料をアルコール飲料とするのは、ハイボールを構成するアルコール飲料と炭酸水を比べると、一般的にはアルコール飲料の方が総量が小さいことに着目したものであり、発生する希釈熱の総熱量を小さく抑えるためである。なお、アルコール飲料によって氷の表面の凹凸を平滑化することと、霜を溶かすことによる熱衝撃の抑制も副次的に達成することができる。すなわち、最初に炭酸水を注ぐ手段を採用すれば、氷に付着した霜によって炭酸抜けが生じるが、これを回避するためである。このように本発明の行程では最初に炭酸水ではなく、アルコール飲料を注ぐことによって氷をリンスする(行程2)ことによって、希釈熱の発生を小さく抑えるとともに、液体を注ぐ際の衝撃を極力緩和することができる。なお、本発明においてリンスとは、氷の表面の凹凸と霜をアルコール飲料によって溶解させて表面を平坦にするための手段であって、これを達成することができるのであれば厳密にアルコール飲料の濃度などを問うものではない。
【0017】
次の手段としては、液体を混合する際の要素の全ての温度が近接していることが好ましい。本発明では、利用される要素としては、機械的部分としてのディスペンサー、飲用に供するグラス、飲用の対象であるアルコール飲料、これを希釈するための炭酸水、および氷が考えられる。このうち、ディスペンサーには駆動モータが備わっていて発熱することは不可避であるから、その温度を低温に制御することは困難である。したがって、ディスペンサーについては希釈熱の対策の対象から除く。しかしながら、飲用の対象であるアルコール飲料、および炭酸水については氷の温度に近づけることが可能である。したがって、アルコール飲料と炭酸水を冷却して氷に近い温度で混合に供することによって、希釈熱による不要な温度上昇を回避する。図2は希釈熱についての対策のための行程図であって、グラスに投入された氷の温度を指標として、アルコール飲料と炭酸水の温度を氷の温度に近くなるように予め冷却している。冷却のための手段は複数の手段を提案することができるが、たとえばアルコール飲料と炭酸水のそれぞれの温度を計測しながら予め決められた温度まで冷却装置によって冷却する。
【0018】
上記のように、ハイボールの製造にとって不都合である希釈熱の総熱量を小さくすることによって、「炭酸感」が強く低い温度のハイボール飲料を維持することができる。ここで低い温度とは、一般的に通常の製造方法であるグラスに氷を投入し、グラス中にアルコール飲料と炭酸水を抽出することと比較したものを意味しており、絶対値としての低温を意味するものではない。
【0019】
さらにまた、「炭酸感」が強いハイボールを製造する形態を説明する。手作業によるハイボールの製造も同様であるが、グラス内のアルコール飲料と炭酸水の配合比を均一に近づけるために、マドラーによる攪拌が行われる。しかしながら、ディスペンサーによって製造したハイボールを最後の段階でマドラーなどによって攪拌すれば炭酸感が低下することを避けられない。そこで本発明では、攪拌という作業を行わずにハイボールを均一にする行程として、別の手段を用いている。すなわち、一例として、アルコール飲料と炭酸水を1:4で配合して300mlの混合飲料(ハイボール)を製造する場合にはアルコール飲料が60ml、炭酸水が240ml必要とするが、製造工程として、最初に20mlのアルコール飲料を抽出した後に80mlの炭酸水を添加し、このサイクルを3回繰り返すことによって所望のハイボールを得ることができるが、ノズルからそれぞれを抽出する際に緩やかな攪拌が行われ、マドラーによる急激な攪拌をすることなく均一なハイボールを製造することができる。ここで示した数値はあくまでも一例であって、必要なことはアルコール飲料と炭酸水をそれぞれ複数回(N回)抽出することによって、各段階で緩やかな攪拌を行うことであり、一度に抽出する量や回数はこの実施形態に限定されるものではない。
【0020】
図3はディスペンサーの構成のうち、本発明に関係する部分を示したブロック図であって、1はディスペンサー本体、2はハイボールの抽出口、3はアルコール飲料供給容器、4は炭酸水容器、5は炭酸ガスボンベ、6は飲用グラスである。予め氷を投入した飲用グラス5を所定の位置に載置し、抽出口2を開けば、アルコール飲料供給容器3からアルコール飲料が最初にグラス6に注がれ、続いて炭酸ガスボンベによって加圧された炭酸水が炭酸水容器から抽出口2を介してグラス6に抽出されることによって、ハイボールを製造する。本発明では、これらの装置のうちアルコール飲料容器3と炭酸水容器4を予め決められた氷に近い温度まで冷却されることによって、希釈熱対策を講じている。これらの冷却については上記説明した通りである。
【符号の説明】
【0021】
1 ディスペンサー本体
2 抽出口
3 アルコール飲料供給容器
4 炭酸水容器
5 炭酸ガスボンベ
6 グラス
図1
図2
図3