(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170753
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】車両用衝突検知装置
(51)【国際特許分類】
B60R 19/48 20060101AFI20241204BHJP
【FI】
B60R19/48 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087447
(22)【出願日】2023-05-29
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 大介
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【弁理士】
【氏名又は名称】飛田 高介
(72)【発明者】
【氏名】堀 透
(57)【要約】
【課題】歩行者衝突と小動物による衝突とを明確に区別して検知することが可能な車両用衝突検知装置を提供する。
【解決手段】車両用衝突検知装置100は、車両102のフロントバンパ104の後方に設置され加圧されることにより衝突を検知する衝突検知センサ106と、衝突検知センサ106の後側に位置し衝突検知センサ106を支持する平板状の支持板108と、衝突検知センサ106の前側に位置しフロントバンパ104を介して前方から受けた衝撃を緩衝する際に衝突検知センサ106に加圧するアブソーバ110と、アブソーバ110の前面を少なくともその上下範囲にわたって覆っている第1プレート120と、第1プレート120の前側に設置され第1プレート120よりも高い位置から第1プレート120の上下範囲までわたっている第2プレート130A、130Bとを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のフロントバンパの後方に設置され加圧されることにより衝突を検知する衝突検知センサと、
前記衝突検知センサの後側に位置し該衝突検知センサを支持する平板状の支持板と、
前記衝突検知センサの前側に位置し前記フロントバンパを介して前方から受けた衝撃を緩衝する際に前記衝突検知センサに加圧するアブソーバと、
前記アブソーバの前面を少なくともその上下範囲にわたって覆っている第1プレートと、
前記第1プレートの前側に設置され該第1プレートよりも高い位置から該第1プレートの上下範囲までわたっている第2プレートとを備えることを特徴とする車両用衝突検知装置。
【請求項2】
前記第2プレートの下端は、前記第1プレートの上下範囲の中央よりも高い位置で該第1プレート上に配置されていて、
前記第2プレートの上端は自由端であり、
前記第2プレートの後方であって前記第1プレートの上方には所定の空間が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の車両用衝突検知装置。
【請求項3】
前記アブソーバは、
前記第1プレートに覆われている本体と、
前記本体から後方に延びて前記支持板に接触する第1脚部と、
前記第1脚部よりも下方で前記本体から後方に延びて前記支持板に接触する第2脚部とを有し、
前記アブソーバの第1脚部と第2脚部との間に前記衝突検知センサが位置し、
当該車両用衝突検知装置はさらに、前記フロントバンパを補強するバンパリンフォースであって前記支持板の後側に位置するバンパリンフォースを備え、
前記バンパリンフォースには、前方に突出して前記支持板に接触する第1凸形状部と、該第1凸形状部よりも下方で前方に突出して前記支持板に接触する第2凸形状部とが形成されていて、
前記アブソーバの第1脚部と前記バンパリンフォースの第1凸形状部とは、所定の上下範囲にわたって重なっていて、
前記バンパリンフォースの第2凸形状部は、前記アブソーバの第2脚部よりも下方で前記支持板に接触していることを特徴とする請求項2に記載の車両用衝突検知装置。
【請求項4】
当該車両用衝突検知装置はさらに、前記フロントバンパの前側に配置されたライセンスプレートを備え、
前記第2プレートは、前記フロントバンパを挟んで前記ライセンスプレートの上端に固定されていることを特徴とする請求項2または3に記載の車両用衝突検知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用衝突検知装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1の衝突検知装置は、車両が衝突した際に変形して衝撃を吸収する衝撃吸収部と、車両が衝突した際に変形することで衝突が発生したことを検知する衝突検知部と、衝突検知部の下部分の剛性を補強する補強部とを具備している。これにより、特許文献1は、衝突検知装置が、歩行者衝突と、小動物等による衝突とを明確に区別して検知することができる、としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両に衝突した小動物は弾性体で柔軟なため、車両に接触した面からまっすぐ後方に力が伝わるのではなく、放射状に広がるように後方に向かって分散する。小動物衝突の場合の力の分散が特許文献1では考慮されていないため、歩行者衝突と、小動物衝突とで、明確に入力の違いを区別できているとは考えにくい。
【0005】
小動物による衝突の場合にも衝突検知装置が衝突の発生を検知し、車両の前部に設けられた歩行者保護用のエアバッグやポップアップフードを作動させてしまうと、運転者の視界が妨げられる安全性の問題と修理にかかる費用も生じることから、小動物の場合には衝突を検知せず検知センサを作動させないようにしたい。
【0006】
本発明はこのような課題に鑑み、歩行者衝突と小動物による衝突とを明確に区別して検知することが可能な車両用衝突検知装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明による車両用衝突検知装置の代表的な構成は、車両のフロントバンパの後方に設置され加圧されることにより衝突を検知する衝突検知センサと、衝突検知センサの後側に位置し衝突検知センサを支持する平板状の支持板と、衝突検知センサの前側に位置しフロントバンパを介して前方から受けた衝撃を緩衝する際に衝突検知センサに加圧するアブソーバと、アブソーバの前面を少なくともその上下範囲にわたって覆っている第1プレートと、第1プレートの前側に設置され第1プレートよりも高い位置から第1プレートの上下範囲までわたっている第2プレートとを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、歩行者衝突と小動物による衝突とを明確に区別して検知することが可能な車両用衝突検知装置を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明による車両用衝突検知装置の第1の実施例を示す正面図および平面図である。
【
図2】
図1(a)または
図1(c)の車両用衝突検知装置のA-A断面図である。
【
図3】
図1の車両が衝突時に衝突対象から受ける力の伝達の様子を示す模式図である。
【
図4】本発明による車両用衝突検知装置の第2の実施例を示す
図2に対応した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明による車両用衝突検知装置の一実施の形態は、車両のフロントバンパの後方に設置され加圧されることにより衝突を検知する衝突検知センサと、衝突検知センサの後側に位置し衝突検知センサを支持する平板状の支持板と、衝突検知センサの前側に位置しフロントバンパを介して前方から受けた衝撃を緩衝する際に衝突検知センサに加圧するアブソーバと、アブソーバの前面を少なくともその上下範囲にわたって覆っている第1プレートと、第1プレートの前側に設置され第1プレートよりも高い位置から第1プレートの上下範囲までわたっている第2プレートとを備えることを特徴とする。
【0011】
歩行者の脚は上下に延びる剛体に近いものである。かかる歩行者の脚に衝突した時に、第2プレートは、第1プレートよりも高い位置から第1プレートの上下範囲までわたっているものの、そのままの姿勢でまっすぐ後方に押される。この第2プレートに押されて第1プレートもアブソーバを後方へ強く押すこととなる。これによりアブソーバは全体的に潰れて緩衝し、その際、衝突検知センサが潰れるため、衝突検知センサは衝突を検知する。
【0012】
一方、小動物は弾性体に近く、フロントバンパの高さ中央より、上下に質量が分散する。第2プレートは、第1プレートよりも高い位置にあり、第1プレートと分離している。そのため第2プレートは、上方へ分散した質量を後方へ流す挙動をとる。このとき第2プレートから第1プレートを強く押すことは無く、アブソーバは潰れず、衝突検知センサは衝突を検知しない。
【0013】
したがって本発明によれば、歩行者に衝突した場合には歩行者保護用ポップアップフードが作動するが小動物衝突の場合には歩行者保護用ポップアップフードが作動しない、という理想的な結果が得られる。
【0014】
上記の第2プレートの下端は、第1プレートの上下範囲の中央よりも高い位置で第1プレート上に配置されていて、第2プレートの上端は自由端であり、第2プレートの後方であって第1プレートの上方には所定の空間が設けられているとよい。
【0015】
かかる構成によれば、第2プレートは、その下端だけが第1プレート上にあり、上端が自由端となっている。第2プレートの後方には空間が設けられているから、小動物が衝突を受けた場合、第2プレートは、後方に倒れるような挙動をよりとりやすくなっている。したがって第2プレートが第1プレートを押す力はより確実に弱くなり、アブソーバは潰れないこととなる。小動物によって衝突検知センサが衝突を検知してしまうという誤動作が、より確実に回避される。
【0016】
上記のアブソーバは、第1プレートに覆われている本体と、本体から後方に延びて支持板に接触する第1脚部と、第1脚部よりも下方で本体から後方に延びて支持板に接触する第2脚部とを有し、アブソーバの第1脚部と第2脚部との間に衝突検知センサが位置し、当該車両用衝突検知装置はさらに、フロントバンパを補強するバンパリンフォースであって支持板の後側に位置するバンパリンフォースを備え、バンパリンフォースには、前方に突出して支持板に接触する第1凸形状部と、第1凸形状部よりも下方で前方に突出して支持板に接触する第2凸形状部とが形成されていて、アブソーバの第1脚部とバンパリンフォースの第1凸形状部とは、所定の上下範囲にわたって重なっていて、バンパリンフォースの第2凸形状部は、アブソーバの第2脚部よりも下方で支持板に接触しているとよい。
【0017】
かかる構成によれば、バンパリンフォースが支持板を介してアブソーバを安定的に受け止めることになる。そのため、歩行者に衝突した場合には歩行者保護用ポップアップフードが作動するが小動物が衝突しても歩行者検知センサは検知しない、という正しい挙動をより確実に担保することができる。
【0018】
また上記構成によれば、アブソーバの第1脚部と第2脚部との間に十分な空間があることから、衝突検知センサは、周囲の温度に影響されずに、衝突時に、歩行者との衝突であるか、小動物との衝突なのかを判定することができる。
【0019】
当該車両用衝突検知装置はさらに、フロントバンパの前側に配置されたライセンスプレートを備え、第2プレートは、フロントバンパを挟んでライセンスプレートの上端に固定されているとよい。
【0020】
かかる構成によれば、ライセンスプレートは面積が大きいため、面圧により、第2プレートを広範囲にわたって押すこととなる。これによりON/OFFがよりはっきりする。すなわち衝突時に歩行者との衝突であるか、小動物との軽衝突であるかの判定がより正確になるよう設定する事ができる。
【実施例0021】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施例について詳細に説明する。かかる実施例に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0022】
図1は、本発明による車両用衝突検知装置の第1の実施例を示す概略図である。
図1(a)(c)はそれぞれ車両用衝突検知装置100の正面図および平面図であり、
図1(b)(d)はそれぞれ、
図1(a)(c)の車両用衝突検知装置100を車両102とともに示す正面図および平面図である。
図1その他のすべての図面において、車両前後方向をそれぞれ矢印F(Forward)、B(Backward)、車幅方向の左右をそれぞれ矢印L(Leftward)、R(Rightward)、車両上下方向をそれぞれ矢印U(upward)、D(downward)で示す。
【0023】
(車両用衝突検知装置の第1の実施例)
図1(d)に示すように、車両用衝突検知装置100は車両102のフロントバンパ104の後側に配置されている。車両用衝突検知装置100は、フロントバンパ104の後方に設置され加圧されることにより衝突を検知する衝突検知センサチューブ106を備えている。衝突検知センサチューブ106は圧力センサとしてよく、所定の圧力を検知すると衝突とみなして歩行者保護用のポップアップフード(図示省略)を作動させる。
【0024】
図2は
図1(a)または
図1(c)の車両用衝突検知装置100のA-A断面図であり、
図2(a)は斜視断面図、
図2(b)は車両102の左側から見た断面図である。車両用衝突検知装置100は支持板108を備えていて、これは衝突検知センサチューブ106の後側に位置しアブソーバを支持する平板状の部材である。
【0025】
図2(b)に示すように、車両用衝突検知装置100は、衝突検知センサチューブ106の前側に位置するアブソーバ110を備えている。アブソーバ110は例えば発泡剤としてよい。アブソーバ110は、フロントバンパ104(
図1(d)参照。
図2では図示省略)を介して前方から受けた衝撃を緩衝し、緩衝する際に衝突検知センサチューブ106を潰す。
【0026】
図2(b)のアブソーバ110が設置されている車幅方向の範囲を明示しているのは
図1(c)であるが、
図2(b)に示す衝突検知センサチューブ106および支持板108も、アブソーバ110と実質的に同一の車幅方向の範囲にわたって設置されている。
【0027】
(第1プレートおよび第2プレート)
図2(b)に示すように、車両用衝突検知装置100は第1プレート120を備え、これは前方に凸になるよう折れ曲がった形状を有し、アブソーバ110の前面を少なくともその上下範囲にわたって覆っている。
【0028】
図1および
図2に示すように、車両用衝突検知装置100は第2プレート130A、130Bも備える。これらも前方に凸になるよう折れ曲がった形状を有し、第1プレート120の前側に設置されていて、第1プレート120よりも高い位置から第1プレート120の上半分の範囲までわたっている。
【0029】
図1に示すように、第1プレート120および第2プレート130A、130Bはいずれも、車両102の車幅方向における中央に配置されていて、車幅方向に長手の形状を有する。第2プレート130A、130Bは車幅方向に間隔をおいて設置されている。
【0030】
本実施例では1つの第1プレート120と2つの第2プレート130A、130Bを設けている。ただし、第2プレートが第1プレートよりも高い位置から第1プレートの上下範囲までわたっている、という位置関係さえ充足していれば、それらの数は単数でも複数でもよく、任意の数としてよい。また本実施例において第1プレート120および第2プレート130A、130Bの、前方に凸になるよう折れ曲がった形状も、単なる例示であり、上記の位置関係さえ充足していれば、これに限定されるものではない。
【0031】
以下、第2プレート130A、130Bに関しては、代表して第2プレート130Aのみを用いて本実施例の説明を行うこともあるが、特にことわらない限り、第2プレート130Bも同様の構成を有する。
【0032】
図3は
図1の車両が衝突時に衝突対象から受ける力の伝達の様子を示す模式図である。
図3(a)は歩行者の脚132が車両102に衝突する場合を示し、
図3(b)は小動物142が車両102に衝突する場合を示している。
図3(a)(b)各々の左側の図が衝突対象と車両102とが衝突する瞬間の様子を示し、各々の右側の図が左側の図の拡大図であって、衝突の際に衝突対象から車両102に加わる力の伝達の様子を示している。
【0033】
図3(a)に示す歩行者の脚132は、上下に延びる剛体に近いものである。
図3(a)の右側の図に示すように、かかる歩行者の脚132に衝突した時に車両が直接受ける力134は、まっすぐ後方に加わる。したがってアブソーバ110に加わる力136、138もまっすぐ後方に向かう相対的に大きなものになる。
【0034】
一方、
図3(b)に示す小動物142は、弾性体に近いものである。
図3(b)の右側の図に示すように、車両102に衝突する際に車両のフロントバンパ104に接触する面積も、
図3(a)の歩行者の脚132に比較して広くなる。そして
図3(b)の右側の図に示すように、かかる小動物衝突の際に小動物142から車両102のフロントバンパ104が直接受ける力144、146、148は、上下に分散して伝達される。伝わるエネルギ(力・質量)150、152は相対的に小さなものになる。
【0035】
したがって、
図2の車両用衝突検知装置100が歩行者の脚132と衝突した時、第2プレート130Aは、第1プレート120よりも高い位置から第1プレート120の上下範囲までわたっているものの、そのままの姿勢でまっすぐ後方に押される。この第2プレート130Aに押されて第1プレート120もアブソーバ110を後方へ潰すこととなる。これによりアブソーバ110は、第1プレート120の上下長手幅分、潰され緩衝し、その際、衝突検知センサチューブ106に加圧するので、衝突を検知する。
【0036】
一方、
図2の車両用衝突検知装置100が小動物142などによる衝突を受けた際には、本実施例によれば、第1プレート120よりも高い位置まで到達している第2プレート130Aが、力を分散、後方へ倒れるような挙動をとる。言い換えれば第2プレート130Aは、その下端153を回転軸として上端156が回動する挙動をとる。よって第2プレート130Aの下部に重なっている第1プレート120はほとんど第2プレート130Aによって押されず、したがってアブソーバ110も潰れず、衝突検知センサチューブ106の両端に配置された衝突検知センサは、衝突を検知しない。
【0037】
第2プレート130Aの機能は次の通りである。すなわち、歩行者脚部が衝突したとき、いち早くその力を伝え、アブソーバ110と衝突検知センサチューブ106を潰す。すなわち空走を無くす。そして脚が倒れ進入した時も、アブソーバ110に併進方向へ力を伝える。これは、上からアブソーバ110を潰しても効率良く衝突検知センサチューブ106を潰すことができないためである。さらに、小動物が衝突した際は、その質量を分散させ、アブソーバ110の併進力を減少させる。
【0038】
したがって、本実施例によれば、歩行者に衝突した場合は、歩行者検知センサは検知し、小動物衝突の場合には、歩行者検知センサは衝突を検知しないという理想的な結果が得られる。
【0039】
図2(b)に示すように、第2プレート130Aの下端153は、第1プレート120の上下範囲の中央154よりも高い位置で第1プレート120上に配置されている。さらに第2プレート130Aの上端156は自由端であり、何ら他の部材に接続されていない。なお図示しないが、第2プレート130Aはフロントバンパ104に固定されている。そして第2プレート130Aの後方であって第1プレート120の上方には、所定の空間160が設けられている。
【0040】
このように、
図2(b)の第2プレート130Aは、その下端153だけが第1プレート120上に配置されていて上端156が自由端となっている。さらに第2プレート130Aの後方には空間160が設けられているから、小動物142の衝突を受けた場合に第2プレート130Aがとる後方に倒れるような挙動は、より生じやすくなっている。したがって第2プレート130Aが第1プレート120を押してアブソーバ110を潰すという挙動は、より生じにくくなっている。すなわち小動物衝突によって衝突検知センサチューブ106が衝突を検知してしまうという誤動作が、より確実に回避される。
【0041】
(アブソーバとバンパリンフォース)
図2(b)に示すように、アブソーバ110は、第1プレート120に覆われている本体110Aと、本体110Aから後方に延びて支持板108に接触する第1脚部110Bと、第1脚部110Bよりも下方で本体110Aから後方に延びて支持板108に接触する第2脚部110Cとを有する。アブソーバ110の第1脚部110Bと第2脚部110Cとの間の空間184に、衝突検知センサチューブ106が位置する。
【0042】
図2(b)に示すように、アブソーバ110の本体110Aの上面110Eは、車幅方向から見ると、前方にゆくほど下降する傾斜した形状になっていて、下面110Fは、逆に、前方にゆくほど上昇する傾斜した形状になっている。
【0043】
図2(b)に示すように、車両用衝突検知装置100は、さらにフロントバンパ104を補強するバンパリンフォース170を備える。バンパリンフォース170は、支持板108の後側に位置する。バンパリンフォース170には、前方に突出して支持板108に接触する第1凸形状部170Aと、第1凸形状部170Aよりも下方で前方に突出して支持板108に接触する第2凸形状部170Bとが形成されている。第1凸形状部170Aと第2凸形状部170Bとの間には窪み180が形成される。なおバンパリンフォース170の後側にはさらに補強材183が設けられている。
【0044】
図2に示すように、アブソーバ110の第1脚部110Bとバンパリンフォース170の第1凸形状部170Aとは、所定の上下範囲にわたって重なっている。また、バンパリンフォース170の第2凸形状部170Bは、アブソーバ110の第2脚部110Cよりも下方で支持板108に接触している。したがって必然的にアブソーバ110の第2脚部110Cは、バンパリンフォース170の窪み180に重なることとなる。本実施例では、アブソーバ110の第2脚部110Cもバンパリンフォース170の窪み180も、バンパリンフォース170の上下範囲の中央182に重なっている。なお、この中央182は、人間(成人)の平均的な膝高さに設定されている。かかる高さに設定したのは、なるべく歩行者の重心位置にバンパリンフォース170の中央182を近付け、歩行者衝突を正しく検知するためである。歩行者の重心位置はおおよそ腰のあたりであるため、中央182は、成人にとっては膝高さに設定されているが、子供にとっては、より重心位置(腰)の近くに設定されている。
【0045】
すなわち本実施例によれば、小動物衝突が比較的低い位置、例えば第1プレート120の上下範囲の中央154よりも低い位置で生じても、それを正しく小動物衝突と判定することができ、歩行者保護用ポップアップフードが作動しないという正しい挙動をより確実に担保することができる。
【0046】
また本実施例によれば、アブソーバ110の第1脚部110Bと第2脚部110Cとの間に十分な空間184があることから、衝突検知センサ106は、周囲の温度に影響されずに、衝突時に、歩行者との衝突であるか、小動物との軽衝突であるかの判定を行うことができる。また、第1プレート120による面圧により、アブソーバ110のつぶれ量をコントロールできるので、周囲の温度による変化に対応できる。
【0047】
(車両用衝突検知装置の第2の実施例)
図4は、本発明による車両用衝突検知装置の第2の実施例を示す
図2に対応した図である。
図4(a)は本実施例に係る車両用衝突検知装置200の斜視断面図、
図4(b)は車両102の右側から見た車両用衝突検知装置200の断面図である。なお本実施例においても、第1の実施例と同様の要素については同一の符号を用いて示し、説明を省略する。
【0048】
図4に示すように、第2の実施例に係る車両用衝突検知装置200が第1の実施例に係る車両用衝突検知装置100と異なる点は、アブソーバ210の形状である。アブソーバ210は、本体210A、第1脚部210Bおよび第2脚部210Cを有する点はアブソーバ110と同様であるが、さらに第3脚部210Dを有する点で、アブソーバ110と異なっている。第3脚部210Dは、支持板108を隔てて、バンパリンフォース170の第2凸形状部170Bと所定の上下範囲にわたって重なっている。
【0049】
(ライセンスプレート)
車両用衝突検知装置200はまた、フロントバンパ104の前側に配置されたライセンスプレート220を備える。なお
図4(a)ではライセンスプレート220は図示省略している。
図4(b)に示すように、車両用衝突検知装置200の第2プレート130Aは、フロントバンパ104のグリル230を挟んでライセンスプレート220の上端220Aにボルトなどの固定具232によって固定されている。
【0050】
第2の実施例のかかる構成によれば、ライセンスプレート220は面積が大きいため、面圧により、第2プレート130Aを広範囲にわたって押すこととなる。これによりON/OFFがよりはっきりする。すなわち衝突時に歩行者との衝突であるか、小動物との軽衝突であるかの判定がより正確になるよう設定することができる。
【0051】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0052】
また本発明は、特許請求の範囲の従属関係に関わらず、請求項および実施例に記載の発明同士を自由に組み合わせて実施することができるものである。