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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170757
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】温度波の動的可視化装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 25/18 20060101AFI20241204BHJP
   G01N 23/04 20180101ALI20241204BHJP
   H01J 37/22 20060101ALI20241204BHJP
   G06V 10/42 20220101ALI20241204BHJP
【FI】
G01N25/18 E
G01N23/04 330
H01J37/22 502H
H01J37/22 501Z
G06V10/42
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087455
(22)【出願日】2023-05-29
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和元年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、未来社会創造事業「熱電材料および熱電モジュールの熱評価技術の開発と応用」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】301023238
【氏名又は名称】国立研究開発法人物質・材料研究機構
(72)【発明者】
【氏名】川本 直幸
(72)【発明者】
【氏名】グェン ユイ ヒウ
(72)【発明者】
【氏名】森 孝雄
(72)【発明者】
【氏名】三留 正則
(72)【発明者】
【氏名】木本 浩司
【テーマコード(参考)】
2G001
2G040
5C101
5L096
【Fターム(参考)】
2G001AA03
2G001BA11
2G001CA03
2G001HA09
2G001HA13
2G040AB09
2G040BA02
2G040BA25
2G040CA02
2G040DA03
2G040EA01
2G040HA01
2G040HA16
2G040ZA01
2G040ZA05
5C101AA04
5C101AA05
5C101FF16
5C101GG22
5C101HH27
5C101JJ06
5C101KK03
5L096BA18
5L096CA18
5L096FA23
(57)【要約】
【課題】STEM内熱輸送評価法として、より正確な熱伝導性の解析を行う為の試料の形状設計に用いて好適な温度波の動的可視化装置及び方法を提供すること。
【解決手段】走査透過電子顕微鏡(STEM)で撮影された温度波の画像フレームデータを用いて、動的可視化処理する動的可視化処理部225と、温度波の画像フレームデータを管理する画像フレーム管理部233、温度波の起点位相を定義する起点位相設定部234、隣接する画像フレーム間の同期化処理に用いられる画像フレーム間の位相伝播を定義する画像フレーム間位相伝播管理部235、画像フレーム内の動的可視化処理で用いる等位相間隔を定義する等位相間隔管理部236、および画像フレーム内の等位相間隔に対応する特定色彩を定義する特定色彩管理部237を含む、動的可視化処理用管理データ部232と、を備える。
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透過型電子顕微鏡(TEM)または走査透過電子顕微鏡(STEM)で撮影された温度波の画像フレームデータを用いて、前記温度波を動的可視化処理する動的可視化処理部と、
前記温度波の画像フレームデータを管理する画像フレーム管理部と、
前記動的可視化処理部で用いられるパラメータとして、
温度波の起点位相を定義する起点位相設定部、
隣接する画像フレーム間の同期化処理に用いられる画像フレーム間の位相伝播を定義する画像フレーム間位相伝播管理部、
画像フレーム内の動的可視化処理で用いる等位相間隔を定義する等位相間隔管理部、および
前記等位相間隔管理部で等位相間隔内にあるとされた画像フレーム内の等位相間隔に対応する特定色彩を定義する特定色彩管理部を含む、
動的可視化処理用管理データ部と、
を備える、温度波の動的可視化装置。
【請求項2】
前記温度波の画像フレームデータは、時間間隔が等しく撮影された時系列の画像フレームデータである、
請求項1に記載の温度波の動的可視化装置。
【請求項3】
さらに、前記動的可視化処理部は、始端画像フレーム、第2画像フレーム、第n画像フレーム(n=3、4、…、N)、終端画像フレームを記憶する画像フレーム記憶部と接続され、
前記温度波の画像フレームデータは、前記画像フレーム記憶部に記憶された、始端画像フレーム、第2画像フレーム、第n画像フレーム(n=3、4、…、N)、終端画像フレームであり、
Nは始端画像フレームを起点としたときの、動的可視化処理を行う第n画像フレームで動的可視化処理の対象となる終端の画像フレームの番号である、
請求項1又は2に記載の温度波の動的可視化装置。
【請求項4】
前記画像フレーム管理部は、前記画像フレーム記憶部に記憶された、始端画像フレーム、第2画像フレーム、第n画像フレーム(n=3、4、…、N)、終端画像フレームに対して、動的可視化処理の進行段階に応じて、始端画像フレーム、第2の始端画像フレーム、第nの始端画像フレーム(n=3、4、…、N)との読み替えを行って、動的可視化処理に必要な画像フレームの管理を行なう、
請求項3に記載の温度波の動的可視化装置。
【請求項5】
前記起点位相設定部は、始端画像フレーム、第2の始端画像フレーム、第nの始端画像フレーム(n=3、4、…、N)で用いられる、起点位相を定義する、
請求項3に記載の温度波の動的可視化装置。
【請求項6】
前記画像フレーム間位相伝播管理部は、動的可視化処理の進行段階に応じて、始端画像フレーム、第2の始端画像フレーム、および第nの始端画像フレーム(n=3、4、…、N)に後続する画像フレームで用いられる、画像フレーム間の位相伝播に起因する位相の相当領域の読み替え管理を行っている、
請求項3に記載の温度波の動的可視化装置。
【請求項7】
前記画像フレーム間の位相伝播に起因する位相の相当領域は、温度波の伝播に起因する隣接画像フレーム間の位相伝播から定まるものである、請求項5に記載の温度波の動的可視化装置。
【請求項8】
前記等位相間隔管理部は、画像フレーム間の位相伝播に起因する位相の相当領域について、動的可視化処理に用いられる等位相間隔を定義している、
請求項3に記載の温度波の動的可視化装置。
【請求項9】
前記特定色彩管理部は、動的可視化処理として温度波の伝播が視認できるように、等位相間隔毎に特定色彩を定めて、画像フレーム間の位相伝播に起因する位相の相当領域毎に、各始端画像フレームに後続する画像フレームに対して、着色処理をする、
請求項3に記載の温度波の動的可視化装置。
【請求項10】
前記画像フレーム記憶部は、さらに、前記特定色彩管理部で動的可視化処理済みの各画像フレームを記憶する動的可視化処理済み画像フレーム記憶部を有する、
請求項1から6の何れかに記載の温度波の動的可視化装置。
【請求項11】
さらに、前記動的可視化処理済み画像フレーム記憶部に記憶された動的可視化処理済みの各画像フレームを、温度波位相法による熱拡散の動画として再生する機能を有する、
請求項11に記載の温度波の動的可視化装置。
【請求項12】
透過型電子顕微鏡(TEM)または走査透過電子顕微鏡(STEM)で撮影された温度波の画像フレームデータを読み込み、
前記温度波の画像フレームデータの始端画像フレーム、第2画像フレーム、第n画像フレーム(n=3、4、…、N)、および終端画像フレームに対して、温度波の起点位相、画像フレーム間の位相伝播、画像フレーム内の等位相間隔、および当該等位相間隔に対応する特定色彩で彩色し、
前記温度波の画像フレームデータの始端画像に後続する画像フレームデータ群に対して、画像フレーム間の位相伝播に起因する位相の相当領域の読み替え管理を行って、第2の始端画像フレーム、およびこれに後続する第n画像フレーム(n=3、4、…、N)、および終端画像フレームに対して、温度波の起点位相、画像フレーム間の位相伝播、画像フレーム内の等位相間隔、および当該等位相間隔に対応する特定色彩で彩色し、
前記温度波の画像フレームデータの第2の始端画像に後続する画像フレームデータ群に対して、画像フレーム間の位相伝播に起因する位相の相当領域の読み替え管理を行って、第nの始端画像フレーム(n=3、4、…、N)、およびこれに後続する第n画像フレーム(n=3、4、…、N)、および終端画像フレームに対して、温度波の起点位相、画像フレーム間の位相伝播、画像フレーム内の等位相間隔、および当該等位相間隔に対応する特定色彩で彩色するものであって、
ここで、Nは始端画像フレームを起点としたときの、動的可視化処理を行う第n画像フレームで動的可視化処理の対象となる終端の画像フレームの番号である、
温度波の動的可視化方法。
【請求項13】
さらに、前記特定色彩管理部で彩色された前記温度波の画像フレームデータの動的可視化処理済みの各画像フレームを記憶する、
請求項12に記載の温度波の動的可視化方法。
【請求項14】
さらに、動的可視化処理済みの各画像フレームを、温度波位相法による熱拡散の動画として再生する、
請求項12または13に記載の温度波の動的可視化方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノ・ミクロスケールにおける温度波の動的可視化装置及び方法に関し、さらに具体的には電子線パルスと微小熱電対を利用した透過電子顕微鏡内ナノスケール熱輸送評価に用いて好適な温度波の動的可視化装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、熱電材料などの熱物性制御や精密熱制御用材料・デバイスの開発に向けた新たなナノスケール熱輸送評価法の開発が求められている。本発明者は、電解研磨法で作製したナノ熱電対と電子線照射による局所加熱手法を組み合わせた走査型透過電子顕微鏡(STEM:scanning transmission electron microscope)ベースの熱分析顕微鏡(STAM: STEM-based thermal analytical microscopy)法の開発を進めてきた(特許文献1及び非特許文献1参照)。ここで、電解研磨とは、製品をプラス側にして電解液を介して直流電流を流し、金属表面を溶解させることで研磨効果を得る方法をいう。
STAM法は、電子線照射時のプラズモン励起による温度上昇を利用しており、STEM走査時の各加熱位置に対応した定常状態の温度(熱起電力)を2次元的に記録することで、フーリエの法則に基き、試料内を通過する熱が評価できるという利点がある。
【0003】
他方で、高分子材料薄膜を中心に少量かつ薄い材料の熱拡散率測定に温度波熱分析法が有効であることが知られている(特許文献2及び非特許文献2、3参照)。温度波熱分析法では、振幅で1℃以下の微弱な温度波を試料に与え、その伝搬を解析し、温度振幅減衰から熱伝導率λが、位相遅れ計測からは熱拡散率αが求められる方法である。熱刺激の与え方として、パルス的(フラッシュ法)、ステップ的(熱線法)、交流的(温度波法)、一定昇温(DSC)等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6164735号
【特許文献2】特許第5489789号
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】N.Kawamoto et al.,Nano Energy, 52 323-328 (2018).
【非特許文献2】森川淳子、橋本壽正、『温度波を用いた熱拡散率・熱伝導率測定』、「ネットワークポリマー」Vol.34 No.2(2013)
【非特許文献3】橋本壽正、森川淳子、『フーリエ変換型温度波熱分析法』、熱測定Vol.27 No.3,141-151 (2000)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1及び非特許文献1に示すような、従来の微小熱伝導率測定装置では、温度が上がりきった定常状態での温度を一点一点の加熱点について、ナノ熱電対接触点(固定)にて、2次元的に記録している。従来の微小熱伝導率測定装置を用いて、フーリエの法則に基く熱伝導性の解析を行う場合には、熱伝導率が既知の参照資料と測定試料を直列に配置した試料の作製が必要であると共に、棒状試料であって、できるだけ均一な厚さが必要とされ、試料準備に時間が掛かるという課題があった。即ち、STAM法では、電子線照射により入力される熱量が、試料厚さの違いや照射される物質のプラズモン平均自由行程等に依存するため、熱輸送評価には、できるだけ試料厚さが均一な試料の作製や解析時の入力熱量の考慮が必要なことなどの課題がある。
また、従来のSTAM法では、定常状態の静的画像解析が行われているため、より正確な熱伝導性の解析を行う為の試料の形状設計には、より詳細な画像解析が必要とされている。
【0007】
他方で、温度波熱分析法は、高分子材料薄膜を中心に少量かつ薄い材料の熱拡散率測定に用いられているが、透過電子顕微鏡内ナノスケール熱輸送評価に適用された例は知られていない。更に、温度波熱分析法を拡張して、温度波の動的可視化に適用された例は知られていない。
本発明は、上述する課題を解決するもので、試料厚さや物質の種類の違いによる吸熱量の変化に比較的影響を受けにくい温度波の位相計測を基に、STEM内熱輸送評価法として、より正確な熱伝導性の解析を行う為の試料の形状設計に用いて好適な温度波の動的可視化装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、温度波熱分析法を拡張して、温度波の動的可視化が可能になれば、熱電対上の温度波の流れも視覚的に解析できると共に、温度を熱起電力に変換している熱電対の温度検知部を可視化でき、より正確な熱伝導性の解析を行う為の試料の形状設計を行うことができ、また、熱電対を用いた微小熱伝導率測定装置の最適設計にも有用になるのではないかと考え、本発明を想到した。
【0009】
[1]本発明の温度波の動的可視化装置によれば、例えば図11に示すように、透過型電子顕微鏡(TEM)または走査透過電子顕微鏡(STEM)で撮影された温度波の画像フレームデータを用いて、前記温度波を動的可視化処理する動的可視化処理部225と、前記温度波の画像フレームデータを管理する画像フレーム管理部233と、動的可視化処理部225で用いられるパラメータとして、温度波の起点位相を定義する起点位相設定部234、隣接する画像フレーム間の同期化処理に用いられる画像フレーム間の位相伝播を定義する画像フレーム間位相伝播管理部235、画像フレーム内の動的可視化処理で用いる等位相間隔を定義する等位相間隔管理部236、および等位相間隔管理部236で等位相間隔内にあるとされた画像フレーム内の等位相間隔に対応する特定色彩を定義する特定色彩管理部237を含む、動的可視化処理用管理データ部232と、を備える。
【0010】
[2]本発明の温度波の動的可視化装置[1]において、好ましくは、前記温度波の画像フレームデータは、時間間隔が等しく撮影された時系列の画像フレームデータであるとよい。
[3]本発明の温度波の動的可視化装置[1]又は[2]において、好ましくは、さらに、動的可視化処理部225は、始端画像フレーム、第2画像フレーム、第n画像フレーム(n=3、4、…、N)、終端画像フレームを記憶する画像フレーム記憶部293と接続され、前記温度波の画像フレームデータは、画像フレーム記憶部293に記憶された、始端画像フレーム、第2画像フレーム、第n画像フレーム(n=3、4、…、N)、終端画像フレームであるとよい。ここで、Nは始端画像フレームを起点としたときの、動的可視化処理を行う第n画像フレームで動的可視化処理の対象となる終端の画像フレームの番号である。
[4]前本発明の温度波の動的可視化装置[1]において、好ましくは、画像フレーム管理部233は、画像フレーム記憶部293に記憶された、始端画像フレーム、第2画像フレーム、第n画像フレーム(n=3、4、…、N)、終端画像フレームに対して、動的可視化処理の進行段階に応じて、始端画像フレーム、第2の始端画像フレーム、第nの始端画像フレーム(n=3、4、…、N)との読み替えを行って、動的可視化処理に必要な画像フレームの管理を行なうものであるとよい。
[5]本発明の温度波の動的可視化装置[1]において、好ましくは、起点位相設定部234は、始端画像フレーム、第2の始端画像フレーム、第nの始端画像フレーム(n=3、4、…、N)で用いられる、起点位相を定義するものであるとよい。
[6]本発明の温度波の動的可視化装置[1]において、好ましくは、画像フレーム間位相伝播管理部235は、動的可視化処理の進行段階に応じて、始端画像フレーム、第2の始端画像フレーム、および第nの始端画像フレーム(n=3、4、…、N)に後続する画像フレームで用いられる、画像フレーム間の位相伝播に起因する位相の相当領域の読み替え管理を行っているものであるとよい。
[7]本発明の温度波の動的可視化装置[1]において、好ましくは、前記画像フレーム間の位相伝播に起因する位相の相当領域は、温度波の伝播に起因する隣接画像フレーム間の位相伝播から定まるものであるとよい。
[8]本発明の温度波の動的可視化装置[1]において、好ましくは、等位相間隔管理部236は、画像フレーム間の位相伝播に起因する位相の相当領域について、動的可視化処理に用いられる等位相間隔を定義しているものであるとよい。
[9]本発明の温度波の動的可視化装置[1]において、好ましくは、特定色彩管理部237は、動的可視化処理として温度波の伝播が視認できるように、等位相間隔毎に特定色彩を定めて、画像フレーム間の位相伝播に起因する位相の相当領域毎に、各始端画像フレームに後続する画像フレームに対して、着色処理をするものであるとよい。
[10]本発明の温度波の動的可視化装置[1]において、好ましくは、画像フレーム記憶部293は、さらに、特定色彩管理部237で動的可視化処理済みの各画像フレームを記憶する動的可視化処理済み画像フレーム記憶部を有するものであるとよい。
[11]本発明の温度波の動的可視化装置[1]において、好ましくは、さらに、前記動的可視化処理済み画像フレーム記憶部に記憶された動的可視化処理済みの各画像フレームを、温度波位相法による熱拡散の動画として再生する機能を有するものであるとよい。
【0011】
[12]本発明の温度波の動的可視化方法によれば、例えば図13A、B、Cに示すように、透過型電子顕微鏡(TEM)または走査透過電子顕微鏡(STEM)で撮影された温度波の画像フレームデータを読み込み(S422)、
前記温度波の画像フレームデータの始端画像フレーム、第2画像フレーム、第n画像フレーム(n=3、4、…、N)、および終端画像フレームに対して、温度波の起点位相、画像フレーム間の位相伝播、画像フレーム内の等位相間隔、および当該等位相間隔に対応する特定色彩で彩色し(S424~S432)、
前記温度波の画像フレームデータの始端画像に後続する画像フレームデータ群に対して、画像フレーム間の位相伝播に起因する位相の相当領域の読み替え管理を行って、第2の始端画像フレーム、およびこれに後続する第n画像フレーム(n=3、4、…、N)、および終端画像フレームに対して、温度波の起点位相、画像フレーム間の位相伝播、画像フレーム内の等位相間隔、および当該等位相間隔に対応する特定色彩で彩色し(S434~S444)、
前記温度波の画像フレームデータの第2の始端画像に後続する画像フレームデータ群に対して、画像フレーム間の位相伝播に起因する位相の相当領域の読み替え管理を行って、第nの始端画像フレーム(n=3、4、…、N)、およびこれに後続する第n画像フレーム(n=3、4、…、N)、および終端画像フレームに対して、温度波の起点位相、画像フレーム間の位相伝播、画像フレーム内の等位相間隔、および当該等位相間隔に対応する特定色彩で彩色する(S446~S456)ものである。ここで、Nは始端画像フレームを起点としたときの、動的可視化処理を行う第n画像フレームで動的可視化処理の対象となる終端の画像フレームの番号である。
【0012】
[13]本発明の温度波の動的可視化方法[12]において、好ましくは、さらに、特定色彩管理部237で彩色された前記温度波の画像フレームデータの動的可視化処理済みの各画像フレームを記憶するものであるとよい。
[14]本発明の温度波の動的可視化方法[12]において、好ましくは、さらに、動的可視化処理済みの各画像フレームを、温度波位相法による熱拡散の動画として再生するものであるとよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の動的温度波の動的可視化装置及び方法によれば、本発明の動画(アニメーション)を追うことで、熱電対上の温度波の流れも視覚的に解析できると共に、温度を熱起電力に変換している熱電対の温度検知部を可視化できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の温度波の動的可視化装置およびこの前提条件に用いる微小熱伝導率測定装置の全体構成図である。
図2A】ナノ熱電対を取り付けたTEM用ホルダーの写真である。
図2B】ナノ熱電対を試料に接触させた状態を示すTEM像である。
図2C】試料の加熱点を電子線によって加熱したときの温度波の伝搬を説明する図である。
図3A】本発明で利用する温度波法の原理の説明図で、周波数法を示している。
図3B】本発明で利用する温度波法の原理の説明図で、加熱位置の距離法を示している。
図4】本発明の前提条件に用いる微小熱伝導率測定方法を説明するフローチャートである。
図5】従来装置の熱伝導率の絶対値を求めることができる構成例をモデル化した概念図である。
図6A】本発明の前提条件に用いる微小熱伝導率測定装置により熱伝導率の相対値を求めることができる構成例をモデル化した概念図である。
図6B】熱電対部分のSTEM-HAADF(高角度環状暗視野走査透過型電子顕微鏡、High-angle Annular Dark Field Scanning TEM)による拡大図である。
図6C】所定周波数のパルス状の電子線による加熱の説明図で、電子線のオンオフ波形を示している。
図7】周波数法による所定周波数のパルス状の電子線による加熱の説明図で、熱電対で測定された温度波波形を示している。
図8】周波数法による所定周波数のパルス状の電子線による加熱の説明図で、熱電対で測定された温度波の位相像を示している。
図9】温度波の位相遅れθと加熱位置からの距離Lの比により、熱拡散率を評価する関係を示している。
図10】(A)は周波数法による所定周波数のパルス状の電子線による加熱の説明図で、熱電対で測定された温度波の振幅像を示している。(B)は温度波の振幅Qと加熱位置からの距離Lとを用いて、温度波の振幅を評価した結果を示している。
図11図1に示す解析用コンピュータ60を用いて動的可視化処理を実行する情報処理システムを構成する場合の機能ブロック図である。
図12図11に示すコンピュータのためのソフトウェアの機能ブロック図で、例示的なコンピュータプログラム製品300を示している。
図13A図12に示すソフトウェアの動的可視化処理のフローチャートで、始端画像フレームの処理を説明している。
図13B】動的可視化処理のフローチャートで、第2の始端画像フレームの処理を説明している。
図13C】動的可視化処理のフローチャートで、第nの始端画像フレームの処理(n=3、4、…、N)を説明している。
図14A】温度波の動的な観察状態を説明する図で、5kHzの場合を示している。
図14B】温度波の動的な観察状態を説明する図で、10kHzの場合を示している。
図14C】温度波の動的な観察状態を説明する図で、20kHzの場合を示している。
図15A】温度波の動的可視化処理を説明する図で、動画の始端画像フレームの初期状態で注目する同一位相の領域を示している。
図15B】温度波の動的可視化処理を説明する図で、動画の各画像フレームで始端画像フレームの初期状態と同一位相の領域を示している。
図15C】温度波の動的可視化処理を説明する図で、動画の各画像フレームで初期状態の同一位相に続く位相の領域を示している。
図15D】温度波の動的可視化処理を説明する図で、動画の終端画像フレームの処理完了状態を示している。
図16】(A)は周波数法による所定周波数のパルス状の電子線による試料全体に対する加熱の説明図、(B)は熱電対のコンスタンタンとクロメルの接合部付近を拡大した加熱の説明図、(C)は図16(B)の接合部付近を拡大した加熱の説明図で、背景領域の明度を暗くしたものである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<<学術用語の定義>>
本明細書で用いる学術用語の定義を行う。
フーリエの法則とは、伝導伝熱における伝熱量の関係をいい、次式で表される。
【数1】
ここで、q:熱流束[W/m]、k:熱伝導度[W/(m・K)]、T:温度[K]、x:物質の厚み[m]である。ここで、伝導伝熱とは、同一物質内、あるいは密接した物体間に温度差がある場合での、物質の移動を伴わない熱エネルギーのみの移動現象をいう。フーリエは、単位断面積あたり、単位時間に流れる熱量つまり熱流束は、温度勾配に比例することを見いだした。
【0016】
熱伝導率とは、熱エネルギーが温度勾配によって伝わる速さを決定する係数であり、具体的には単位断面積あたり、単位時間に流れる熱量つまり熱流束は、温度勾配に比例する場合に、熱流束Jと温度(T)の勾配の関係が、次式(2)で表される場合の係数λをいう。
J=-λgradT (2)
物質中の温度と熱の関係を、ガウスの発散定理を用いて、より一般的に表現すると、次式で表される熱伝導方程式が導かれる。
∂q/∂t=∇λT (3)
ここで、qは単位体積あたりの熱量であり、物質内で吸発熱がないことを仮定している。熱伝導率λが、位置や時間によらず一定であれば、式(3)は
∂q/∂t=λ∇T (4)
となる。
【0017】
熱拡散率は、温度が温度勾配のなかを伝わる速さを決定する係数であり、具体的には式(4)において、熱量qを温度Tに変換することにより導かれる熱拡散方程式(式(5))における比例係数αをいう。
∂T/∂t=α∇T (5)
熱伝導率λと熱拡散率αの関係は、
λ=α・Cp・ρ (6)
として関係付けられ、ρ(密度)、Cp(定圧比熱容量)とともに、熱の四定数とも呼ばれる。測定にあたっては、熱伝導率と、熱拡散率のいずれかを求めて、式(6)を用いて換算することが多い。なお、物質拡散の場合と同様に、拡散距離が長いほど、また熱拡散率が小さいほど、均一化に時間がかかる。
【0018】
温度波法とは、試料に熱エネルギーによる微弱な交流刺激を与えて、振幅減衰と位相遅れを測定する方法である。測定法の普及の為に、標準化として、ISO22007-3(位相解析型薄膜用)として2008年にプラスチックの熱伝導分野(TC-61)で認定され、さらにISO-22007-6として振幅解析型も認定された。
交流の温度波の場合に、温度が均一化されるのに必要な距離の目安として、熱拡散長μが次式で定義される。
μ=√2α/ω (7)
【0019】
<<微小熱伝導率測定装置および方法>>
続いて、本発明の温度波の動的可視化装置及び方法で用いる、前提条件としての微小熱伝導率測定の原理を詳細に説明する。
この微小熱伝導率測定装置及び方法は、温度波位相法を用いて熱拡散率(α)を測定するものであり、次の1次元熱伝導方程式を根拠とする。
【数2】
検知する温度波は、次式で与えられる。
【数3】
ここで、α:熱拡散率、Q:電子線による吸熱量、f:電子線の周波数である。
【0020】
温度波の振幅と位相の検知のうち、加熱位置間で生じる位相変化Δθは次式で与えられる。
【数4】
【0021】
図1は、本発明の温度波の動的可視化装置およびこの前提条件に用いる微小熱伝導率測定装置の全体構成図である。
図において、温度波の動的可視化装置および微小熱伝導率測定装置は、透過電子顕微鏡10、温度波生成部20、ロックインアンプ30、信号処理部40、電子ビーム制御および画像処理システム50、解析用コンピュータ60を備えている。
透過電子顕微鏡10は、静電シャッター12、シャッター駆動部13、静電線量変調器(EDM)14、同期信号生成部15、減衰調整ノブ16、制御用ソフトウェア部18を備えている。
温度波生成部20は、図1に示す透過電子顕微鏡10の電子ビーム照射箇所を拡大したものである。温度波生成部20は、試料21、パルス状の電子線22、コンスタンタンプローブ23、クロメルプローブ24を備えている。詳細は、図2(A)、(B)を用いて説明する。
ロックインアンプ30では、入力端子に熱電対のコンスタンタンプローブ23、クロメルプローブ24が接続され、参照端子に同期信号生成部15が接続されている。
【0022】
信号処理部40は、増幅回路、フィルター回路、減衰回路が設けられている。
電子ビーム制御および画像処理システム50は、例えばAMETEK社の電子計器事業グループのメンバー企業であるGatan,Inc.より提供されるDigiScan(商標)システムを用いることが出来る。これには、入力端子に信号処理部40で信号処理された電子ビーム制御信号および画像信号が送られ、出力端子に解析用コンピュータ60が接続されている。電子ビーム制御および画像処理システム50は、透過電子顕微鏡10で得られたSTEM像を用いて、所定周波数による加熱点の加熱位置に対応する温度波の位相成分を計測できる。
解析用コンピュータ60は、電子ビーム制御および画像処理システム50で計測された温度波の振幅と位相を入力して、試料21の熱伝導率を演算する。このような演算には、例えばGatan digital micrograph(商標)を用いて、位置情報を除算するスクリプトを実際に組んで、熱拡散率像に変換するものでもよい。また、解析用コンピュータ60を用いるのに代えて、棒状試料の位相像のラインプロファイルをとって、次式により熱拡散率αをエクセル(商標)で計算してもよい。
α=πf/(θ/L) (16)
信号処理部40、電子ビーム制御および画像処理システム50、及び解析用コンピュータ60は、当業者に周知の事項、あるいは本明細書及び図面の記載に基づいて当業者が特に創作力を発揮せずに作製できるものであるため、具体的な説明や図示は省略する。
【0023】
静電線量変調器(EDM:Electrostatic Dose Modulator)14は、電子機器とソフトウェア制御を含む、サンプル前の静電偏向器を備えた高速ビームブランキングシステムである。EDMを使用すると、ビームは例えば50ns未満でオンまたはオフに切り替えることができる。このブランキング速度は、従来の静電シャッター12の開閉速度の1万倍~10万倍程度高速であるため、高速露光時間で取得されたデータの明瞭さが即座に向上する。EDMは、イメージング条件に影響を与えることなく電子照射を減衰させることもできるため、TEMおよびSTEMユーザーはサンプルへの線量を非常に制御できる。EDMでは、最先端の電子機器とソフトウェアのアドオンにより、時間線量構造化やSTEM同期などの高度なアプリケーションを利用できる。
【0024】
電子ビーム制御および画像処理システム50は、STEM装置に接続が可能であり、共通のユーザーインターフェイスによって、柔軟にスキャン条件とデジタル化諧調を設定することで実験に適した像の取得が可能である。例えばDigiScan(商標)システムでは、標準で4チャンネルまでの同期入力が可能であり、アナログ入力またはパルス入力であって、最大32k×32kピクセルまでのX、Y方向ピクセル数の設定機能が設けられているが、このチャンネル数やピクセル数に限定されるものではない。1ピクセルあたり50ns~400msの範囲でピクセル滞留時間が設定可能である。「滞留時間」(Dwell time)とは、電子線走査によるSTEM像の取得において、電子線が1画素あたりにとどまる時間をいう。滞留時間は、電子ビームの走査速度の指標である。
滞留時間を1水平ラインスキャンのスキャン・ピクセル数で乗算し、帰線(Flyback)時間を加算すると、1水平ラインスキャンのスキャン時間が得られる。この走査時間に垂直走査(水平走査線)数を乗じると、走査画像1枚の取得時間が算出される。
【0025】
図2Aは、ナノ熱電対を取り付けたTEM用ホルダーの写真、図2Bは、ナノ熱電対を試料に接触させた状態を示すTEM像である。
特許文献1の段落番号0013~0019に示すように、HPO水溶液を利用した電解研磨法により作製したCu55Ni45(質量%)(コンスタンタン(Constantan:商標))探針とCr10Ni90(質量%)(クロメル(Chromel:商標))探針とを組み合わせたコンスタンタン-クロメルナノ熱電対を製作した。これにより、-200℃<T<800℃と稼働温度域を大幅に広げることができた。また、低い熱伝導率、大きな熱起電力、線形の応答性、10-2Kに達する計測温度の高い分解能、微小な接合部が実現した高い応答性、熱電対の材料が非磁性材料の組み合わせのため透過型電子顕微鏡内などの強磁場空間内への導入が可能になるなど、様々な点で性能を向上させることができた。また、本製造方法では、用途に応じて、他の熱電対材料を利用してナノ熱電対を作製することができる。
【0026】
[ナノ温度計の製造方法]
電解研磨法により、Cu-Ni及びCr-Niの線材を先端径を100nm以下に先鋭化した微小探針をそれぞれ作製した。具体的には、透過電子顕微鏡(TEM)内でピエゾ素子を利用した精密な微小探針の位置制御によりこれらの微小探針の先端部同士を接触させ、探針間に10μA程度の電流を通電させることで、図2(B)に示すコンスタンタン線材とクロメル線材との接触抵抗が極めて小さい接合部を形成し、ナノ熱電対すなわちナノ温度計を製作した。
このように構成された温度波の動的可視化装置においては、収束させた電子線を試料21に照射することにより、試料21上のナノスケール領域に熱を印加し、熱の投入場所と投入量がコントロールできる。
【0027】
このようにして作製したナノ熱電対を取り付けてTEM内で対象の試料上の微小領域の温度を測定するためのホルダーの写真を図2(A)に示す。図2(A)にはこのホルダー内のナノ熱電対に発生する熱起電力を測定するための電圧計も模式的に示されている。ここで重要なことは、TEM内の試料位置には大きな磁場(たとえば本実施例では2T)が印加されるため、このホルダー材料、ナノ熱電対は非磁性材料で構成する必要がある点である。
本実施形態はナノ熱電対材料としてクロメル及びコンスタンタンを使用することにより、この条件を満足している。なお、本実施形態では複合材料のフィラーとして使用することができるα-Al(以下、単にアルミナと称する)を試料として用いるが、これ以外の各種の材料を測定対象の試料とすることも当然可能である。
【0028】
[ナノスケールでの熱の印加と温度計測]
上述のようにナノ熱電対を装着したホルダーをTEM内に収容し、試料に対して図2(B)に示すようにナノ熱電対の先端部(接合部)を接触させる。
ここでは電子線を熱電対の先端部近傍に照射しており、この電子線のオン/オフに対応してナノ熱電対に発生する熱起電力が変化する。電子線を照射するための電子銃はTEM本来の電子銃をそのまま使用することができる。また、試料上にナノ熱電対を接触させる位置及び収束された電子ビームの照射位置は、TEMを使った観察により、正確に位置決めすることができる。このようにTEM像を参照して照射位置を決めることができるので、熱を印加する位置を事前に決めた上でそのために特化した試料を作製する手法に比べて自由度の高い測定を行うことができる。
【0029】
重要な点として、電子線により熱を印加する場所と温度計測箇所とが空間的に一致している必要がなく、試料上のナノ熱電対の接触部とは異なる任意の点に電子線を照射してよい。これにより、試料上の所望の区間の熱伝導の分析を行うことができる。
【0030】
図2Cは、試料の加熱点を電子線によって加熱したときの温度波の伝搬を説明する図である。
一次元形状の試料21において、試料21の一方の端部に熱電対であるコンスタンタンプローブ23、クロメルプローブ24が接続された位置を起点としてx=0とし、パルス状の電子線22の照射位置の座標をx、x、xとする。このとき、温度波T(x、t)(i=0、1、2)に対して、振幅は距離に応じて減衰するが、位相遅れθについて次式が成り立つ。
θ=k(x-x) (11)
θ=k(x-x) (12)
【0031】
図3Aは、本発明で利用する温度波法の原理の説明図で、周波数法(Frequency control)を示しており、(A)はパルス状の電子線による試料の加熱位置と熱電対装着位置、(B)は位相遅れθを示す図で、横軸は周波数の平方根(√f)、縦軸は位相を示している。
図3A中、Tは試料の熱電対装着位置を示し、距離Lはパルス状の電子線による試料の加熱位置と熱電対装着位置との距離を示している。位相遅れθは、周波数fの増大と共に、周波数の平方根(√f)の割合で増大する。
【0032】
図3Bは、本発明で利用する温度波法の原理の説明図で、加熱位置の距離法(Heating position control)を示しており、(A)はパルス状の電子線による試料の加熱位置と熱電対装着位置、(B)は位相遅れθを示す図で、横軸は周波数の平方根(√f)、縦軸はパルス状の電子線による試料の加熱位置と熱電対装着位置との距離Lを示している。
図3B(A)中、パルス状の電子線による試料の加熱位置は、試料の熱電対装着位置に近い位置から試料の他方の端部まで移動している。位相遅れθは、パルス状の電子線による試料の加熱位置と熱電対装着位置との距離Lの増大に比例して、増大する。
【0033】
図4は、本発明の前提条件に用いる微小熱伝導率測定方法を説明するフローチャートである。
まず、試料21をTEMまたはSTEM内に収容して、そのTEM像またはSTEM像を観察できるようにする(S402)。
次に、試料21に熱電対(23、24)を接触させる(S404)。
次に、試料21上の少なくとも一つの加熱点を、所定周波数(f)のパルス状の電子線を用いて、加熱する(S406)。
信号処理部40により、所定周波数のパルス状の電子線による加熱による接触点の昇温に応答した熱電対(23、24)の複数の出力を検出する(S408)。必要に応じて、信号処理部40による熱電対(23、24)の複数の出力信号と、透過電子顕微鏡10の照射する電子線との位置的・時間的関係を電子ビーム制御および画像処理システム50により紐づける。
電子ビーム制御および画像処理システム50により、所定周波数による加熱点の加熱位置にそれぞれ対応する温度波の位相成分を測定する(S410)。
解析用コンピュータ60により、パルス状の電子線による温度波の位相成分(θ)を用いて、加熱点から試料21上の熱電対(23、24)の接触点までの距離(L)に基づいて、加熱点と接触点の間の熱拡散率(α)を次式により求める(S412)。
α=πf/(θ/L)
【0034】
好ましくは、一定間隔や必要と判断されるとタイミングで、較正動作を行うことで、本発明の温度波の動的可視化方法の信頼性を高めることが出来る。較正動作では、試料21と熱電対(23、24)との接触を解除した状態で、熱電対(23、24)からの複数の加熱点の加熱位置に対応する複数の較正出力を検出し、複数の加熱点への電子線22の照射による二次電子が熱電対(23、24)の出力に与える影響を複数の較正出力により打ち消すものである。
【0035】
このように構成された装置の具体例を説明する。
図5において、(A)は従来装置の熱伝導率の絶対値を求めることができる構成例をモデル化した概念図、(B)は電子線照射位置の熱電対先端部からの距離と当該照射による熱電対先端部の温度上昇の関係の折れ線状グラフである。図5(A)において、試料21は、被測定試料部212、標準材料部214、電子線熱変換部216a、216b、216c、熱抵抗部218、台座部219を有している。
被測定試料部212は、試料の熱伝導率kを測定する部位である。標準材料部214は、既知の熱伝導率kを有する標準材料である。電子線熱変換部216a、216b、216cは、電子線照射時の熱変換率が高く熱投入量が比較的大きい重元素(例えばタングステンW)からなる「同一の試料」で、標準試料部214と被測定試料部212をそれぞれ挟み込むように3か所に区分して設けられている。電子線照射時の吸熱量がどの照射点でも同じになるように、全ての電子線照射点が同一の材料からなるようにすべく、パルス状の電子線22の照射部は電子線熱変換部216a、216b、216cとする。
熱抵抗部218は、熱電対23、24を接触させる端部と反対側の端部を十分に大きな熱抵抗を有する部位で、例えばエポキシ樹脂よりなる。台座部219は、試料21全体を支持するもので、熱抵抗部218を介して電子線熱変換部216a、216b、216c等と熱電対23、24を支えている。
【0036】
このように構成された装置においては、TEM中に設置された試料上の電子線熱変換部216a、216b、216c上の点に電子ビームを照射することにより、当該点に熱が与えられ温度が上昇する。これによりできた温度勾配により熱流が発生する。図5(A)では電子線照射点から左側と右側の両方に熱流が生起する可能性がある。しかし、右側へ向かっての熱流は試料21を台座部219に接着するための熱抵抗部218(エポキシ樹脂)の低い熱伝導率(つまり、高い熱抵抗)によりほぼ阻止され、熱流の大部分は図5の左側へ向かい、最終的には左端の熱電対23、24に到達し、この位置に温度変化を引き起こす。
電子線熱変換部216a、216b、216cを設けることで、被測定試料部212が電子線照射時に熱変換しにくい軽元素からなる試料の熱伝導率測定にも対応できる。被測定試料部212は、電子線にとってより透明な材料ともいえる炭素などの軽元素でできたカーボンナノチューブ、グラフェン、エポキシ樹脂等であったとしても、直接に電子線を照射していないので、直接電子線を照射した場合に生ずる、熱の吸収率があまり良くない為、十分な熱量が投入できないという課題を克服できる。
【0037】
図5(A)に示す構成において、電子線照射点(1)~(6)のうちで、(2)及び(3)は熱流の向きに関して被測定試料部212の上流側及び下流側の測定試料近傍に定められる。また、(4)及び(5)は同じく熱流の向きに関して標準材料部214のそれぞれ上流側及び下流側近傍に定められる。この構成に対してこれまでに説明した態様で電子線照射を行って左端部分の温度変化を熱電対で測定することにより、図5(B)に示すグラフが得られる。ここで電子線は全てタングステンでできた部分に照射されるため、各照射によって試料に吸収された熱量は同じである。また、測定試料中及び標準材料中の熱流経路長はTEMによる観察等で測定できる。従って、このグラフ上で(2)と(3)との間のグラフの線分の傾きであるΔT試料/Δx試料、及び(4)と(5)との間のグラフの線分の傾きであるΔT標準材料/Δx標準材料が計算できる。
【0038】
ここにおいて、標準材料の既知の熱伝導率kを使って、試料の熱伝導率kを以下のように表すことができる。
k標準材料=αk試料 (13)
ここで、
α=(ΔT試料/Δx試料)/(ΔT標準材料/Δx標準材料) (14)
αを表す分数式の分子および分母は上で述べたように計算できることから、試料の熱伝導率k試料も、その絶対値を計算することができる。
【0039】
このようにして、熱伝導率が既知の標準材料の利用により、電子線照射時の発熱エネルギーを見積もることによって、絶対値の見積もりも可能になる。即ち、熱流が既知の熱伝導率を有する材料(標準材料部214)を通過するようにするため、熱流の通過経路中に電子線熱変換部216a、216b、216cで挟まれた標準材料部214を設ける。
【0040】
また、上記の説明中における被測定試料部212を挟む電子線熱変換部216a、216b、216cの当該使用環境下での熱伝導率が既知である場合には、標準材料部214を電子線熱変換部216a、216b、216cと同じ材料とすることができる。このように標準材料部214にも電子線熱変換部216a、216b、216cと同じ材料を使用した場合には、図5(A)の(3)より左側の構造は電子線熱変換部216a、216b、216cと同一材料だけでできた一体の構造に単純化される。上述の熱伝導率の絶対値の計算式もこれに合わせて修正することができる。
【0041】
図6Aは、本発明の前提条件に用いる微小熱伝導率測定装置により熱伝導率の相対値を求めることができる構成例をモデル化した概念図である。試料21を非常に細い、あるいは非常に薄い形状に形成(例えば、上述したように、FIB(Focused Ion Beam:集束イオンビーム)を用いて500nm以下の厚さに加工する)し、台座部219で支持することで、試料内部に不均一性が存在しないように構成されている。
図6Aに示すように構成することで、図5を用いて説明した一次元熱流モデルが成立する。即ち、熱電対を接触させる端部と反対側の端部を十分に大きな熱抵抗を有する手段(例えばエポキシ樹脂、あるいは真空などでもよい)で熱絶縁するだけではなく、熱流がほぼ一次元的に流れるようにするため、それ以外の方向の熱流の経路が実質的に存在しない(図5(A)で言えば経路の途中で上下方向などに熱流が漏洩しない)ように、熱抵抗の大きな材料や真空等で周囲を取り囲むことが必要である。さらには、試料内部も熱流が一次元方向に流れること(つまり、試料内部が熱伝導率で見たとき、一次元構造になっていて、試料内部で熱流が予測できない態様で蛇行したり迂回したりしないようになっていること)を充足している。
【0042】
なお、一次元熱流モデルが成立する別の態様として、試料内部に熱伝導率が異なる領域が混在している場合であっても、混在のパターンが測定の分解能との比較で十分に一様に分布していたり、あるいは熱伝導率が他の領域よりも十分に大きいために熱流の大部分が通る領域に着目した場合に、このような領域が実質的に一様な一次元の熱流の経路を提供するなどの場合には、この最後の条件は実質的に満足されているとみなすことができる。
【0043】
図6Bは、熱電対部分のSTEM-HAADF(高角度環状暗視野走査透過型電子顕微鏡、High-angle Annular Dark Field Scanning TEM)による拡大図である。試料21の端部には、熱電対であるコンスタンタンプローブ23、クロメルプローブ24が接続されている。
図6Cは、所定周波数のパルス状の電子線による加熱の説明図で、電子線のオンオフ波形を示している。ここでは、周波数333Hzで、オンオフ波形のデューティー比は1:1の50%となっている。なお、所定周波数は、333Hzに限定されるものではなく、試料21の材質や測定区間の長さLにより適切な周波数fを選択して利用するものであり、例えば1Hz以上500kHz以下の間で選択された複数の周波数であるとよい。
また、所定周波数(f)のパルス状の電子線は、オンオフのデューティー比が1:1に限定されるものではなく、例えば1:9以上9:1以下の間で選択され、パルスのオン時間の幅は100ns以上1sec以下の間で選択されたものであるとよい。パルスのオン時間の幅は加熱装置の特性で定まり、例えばEDMの場合はパルスのオン時間の最小幅は100nsに定められている。
【0044】
図7は、周波数法による所定周波数のパルス状の電子線による加熱の説明図で、熱電対で測定された温度波波形を示している。ここでは、周波数として1kHz、5kHz、10kHz、20kHzの場合を示している。
周波数fが増加するほど、位相遅延θが増加する。信号/ノイズ比は、周波数fの増加とともに減少した。ここで、位相遅延θは次式で与えられる。
θ=L√(πf/α) (15)
ここで、Lは加熱位置から熱電対までの距離、αは熱拡散率である。
【0045】
図8は、周波数法による所定周波数のパルス状の電子線による加熱の説明図で、熱電対で測定された温度波の位相像を示している。ここでは、周波数として5kHz、10kHz、20kHzの場合を示すと共に、参照用としてパルス状の電子線による加熱の無い状態での試料のSTEM像を示している。ここで、位相遅れθは濃淡で表している。
図8に示すように、サンプルの熱拡散率を定量的に調査するために、ラインプロファイルが取得された。ラインプロファイルは、グラフの位相遅れθの距離Lに対する傾きの情報を提供している。即ち、照射するパルス電子ビームの周波数ごとに、θとLの比を同定した。
ここで、5kHzの場合は、加熱点での位相遅れθは39°であり、熱電対近傍の試料端での位相遅れθは18.5°であった。10kHzの場合は、加熱点での位相遅れθは54.5°であり、熱電対近傍の試料端での位相遅れθは24°であった。20kHzの場合は、加熱点での位相遅れθは68°であり、熱電対近傍の試料端での位相遅れθは25.5°であった。
【0046】
図9は、温度波の位相遅れθと加熱位置からの距離Lの比により、熱拡散率αを評価する関係を示している。ここで、熱拡散率αは、式(15)を変形した次式で与えられる。
α=πf/(θ/L) (16)
5kHzの場合は、回帰式がy=0.0474x-0.3666であり、θ/L=0.0474で、相関係数R(correlation coefficient)の二乗Rは0.9975と両変数x,yの高い相関を示している。10kHzの場合は、回帰式がy=0.0688x-0.5183であり、θ/L=0.0688で、相関係数R(correlation coefficient)の二乗Rは0.9987と両変数x,yの高い相関を示している。20kHzの場合は、回帰式がy=0.0953x-0.7280であり、θ/L=0.0953で、相関係数R(correlation coefficient)の二乗Rは0.9977と両変数x,yの高い相関を示している。
この結果、熱拡散率α(m/s)は、5kHzで6.99x10-6、10kHzで6.64x10-6、20kHzで6.92x10-6と概ね等しい値を示している。
【0047】
図10(A)は、周波数法による所定周波数のパルス状の電子線による加熱の説明図で、熱電対で測定された温度波の振幅像を示している。ここで、5kHzの場合における温度波の振幅は、加熱点が熱電対の装着位置の場合は8.0μVであり、試料先端の場合は6.0μVであり、熱電対の装着位置と試料先端の中間位置の場合は6.7μVであった。10kHzの場合における温度波の振幅は、加熱点が熱電対の装着位置の場合は6.1μVであり、試料先端の場合は3.9μVであり、熱電対の装着位置と試料先端の中間位置の場合は4.6μVであった。20kHzの場合における温度波の振幅は、加熱点が熱電対の装着位置の場合は4.0μVであり、試料先端の場合は2.3μVであり、熱電対の装着位置と試料先端の中間位置の場合は3.1μVであった。
ここで、温度波の振幅T(x)は次式で与えられる。
【数5】
ここで、Qは加熱点で与えられる熱量であり、pは運動量[kg・m/s]、パルス状の電子線の場合はビーム径rと電子線の波長Λ[m]である。
【0048】
図10(B)は、温度波の振幅Qと加熱位置からの距離Lとを用いて、温度波の振幅を評価した結果を示している。熱電対の装着位置から加熱位置からの距離Lが0μmから6μmの範囲で、周波数として5kHz、10kHz、20kHzの場合について、理論値と実測値を比較した。5kHz、Lが0μmの場合が、温度波の振幅が最大値となり、理論値で0.14K、実測値で0.13Kとなっている。周波数の低下と共に、温度波の振幅が小さくなり、20kHz、Lが8μmの場合が、温度波の振幅が最小値となり、理論値で0.035K、実測値で0.04Kとなっている。
【0049】
<<温度波の動的可視化装置および方法>>
次に、本発明の温度波の動的可視化装置および方法に用いられる解析用コンピュータ60のハードウェア構成の一例を説明する。
図11は、図1に示す解析用コンピュータ60を用いて動的可視化処理を実行する情報処理システムを構成する場合の機能ブロック図である。図11の情報処理システムは、解析用コンピュータ60としてのコンピューティング装置200の全部または一部を使用して実施することができる。
非常に基本的な構成201では、コンピューティング装置200は通常、1つまたは複数のプロセッサ210とシステムメモリ220とを含む。メモリバス230は、プロセッサ210とシステムメモリ220との間の通信に使用され得る。
【0050】
所望の構成に応じて、プロセッサ210は、マイクロプロセッサ(μP)、マイクロコントローラ(μC)、デジタル信号プロセッサ(DSP)、またはそれらの組み合わせを含むがこれらに限定されない任意のタイプのものであり得る。プロセッサ210は、レベル1キャッシュ211およびレベル2キャッシュ212などのもう1つのレベルのキャッシング、プロセッサコア213、およびレジスタ214を含むことができる。例示的なプロセッサコア213は、算術論理演算装置(ALU)、浮動小数点ユニット(FPU)、デジタル信号処理コア(DSPコア)、またはそれらの任意の組み合わせなどを含むことができる。例示的なメモリ制御部215もプロセッサ210と共に使用することができ、またはいくつかの実装形態では、メモリ制御部215はプロセッサ210の内部部分とすることができる。
【0051】
所望の構成に応じて、システムメモリ220は、揮発性メモリ(RAMなど)、不揮発性メモリ(ROM、フラッシュメモリなど)、またはそれらの任意の組み合わせを含むが、これらに限定されない任意のタイプのものとすることができる。システムメモリ220は、オペレーティングシステム221、1つまたは複数のアプリケーション222、および動的可視化処理用管理データ部232を含み得る。アプリケーション222は、TEM連携部223、微小熱伝導率測定部224、及び動的可視化処理部225を含み得る。
TEM連携部223は、接続されたTEM292の画像データを読み込むのに必要なプログラムを有しており、またTEM292で撮影する画像の倍率の指定等の撮影に必要な管理データを管理していても良い。
微小熱伝導率測定部224は、前述したTEM292の内部に置かれた試料の微小熱伝導率測定を実行するのに必要な、プログラムである。微小熱伝導率測定部224は、パルス状の電子線による温度波の位相成分(θ)を用いて、加熱点から試料21上の熱電対(23、24)の接触点までの距離(L)に基づいて、加熱点と接触点の間の熱拡散率(α)を次式により求める(S412)ものである。
α=πf/(θ/L)
動的可視化処理部225は、前述したTEM292で撮影された画像データを用いて、動的可視化処理するプログラムであり、詳細は後述する。
【0052】
動的可視化処理用管理データ部232は、動的可視化処理部225で用いられるパラメータとして、画像フレーム管理部233、起点位相設定部234、画像フレーム間位相伝播管理部235、等位相間隔管理部236、特定色彩管理部237を含みえる。
画像フレーム管理部233は、画像フレーム記憶部293に記憶された、始端画像フレーム294、第2画像フレーム295、第n画像フレーム296(n=3、4、…、N)、終端画像フレーム298に対して、動的可視化処理の進行段階に応じて、始端画像フレーム、第2の始端画像フレーム、第nの始端画像フレーム296(n=3、4、…、N)との読み替えを行って、動的可視化処理に必要な画像フレームの管理を行っている。また、画像フレーム管理部233は、動的可視化処理済みの各画像フレームを、動的可視化処理済み画像フレーム記憶部299に記憶させるのを管理している。ここで、Nは始端画像フレーム294を起点としたときの、終端画像フレーム298の画像フレームの番号であるが、動的可視化処理においては、必ずしも終端画像フレーム298の画像フレームまで第n画像フレーム296として動的可視化処理を行う必要はなく、動的可視化処理を行う第n画像フレームの動的可視化処理の対象となる終端の画像フレームの番号であればよい。
【0053】
起点位相設定部234は、始端画像フレーム、第2の始端画像フレーム、第nの始端画像フレーム296(n=3、4、…、N)で用いられる、起点位相を定義している。起点位相は、例えば1°としてよいが、これに限定されるものではなく、動的可視化処理として温度波の伝播開始として適切な精度であれば、適宜の数値を選択して良い。
画像フレーム間位相伝播管理部235は、動的可視化処理の進行段階に応じて、始端画像フレーム、第2の始端画像フレーム、第nの始端画像フレーム296(n=3、4、…、N)に後続する画像フレームで用いられる、画像フレーム間の位相伝播に起因する位相の相当領域の読み替え管理を行っている。画像フレーム間の位相伝播に起因する位相の相当領域は、温度波の伝播に起因する隣接画像フレーム間の位相伝播から定まる。
【0054】
等位相間隔管理部236は、画像フレーム間の位相伝播に起因する位相の相当領域について、動的可視化処理に用いられる等位相間隔を定義している。等位相間隔は、例えば5°としてよいが、これに限定されるものではなく、動的可視化処理として温度波の伝播が視認できる精度であれば、適宜の数値を選択して良い。
特定色彩管理部237は、動的可視化処理として温度波の伝播が視認できるように、等位相間隔毎に特定色彩を定めて、画像フレーム間の位相伝播に起因する位相の相当領域毎に、各始端画像フレームに後続する画像フレームに対して、着色処理をする。好ましくは、特定色彩管理部237で動的可視化処理済みの各画像フレームは、画像フレーム管理部233を介して、動的可視化処理済み画像フレーム記憶部299に記憶するとよい。
【0055】
コンピューティング装置200は、追加の特徴または機能性、および基本構成201と任意の必要な装置およびインターフェースとの間の通信を容易にするための追加のインターフェースを有することができる。例えば、バス/インターフェース制御部240を使用して、ストレージインターフェースバス241を介した基本構成201と1つまたは複数のデータ記憶装置250との間の通信を容易にすることができる。データ記憶装置250は、取り外し可能な記憶装置251、取り外しができない記憶装置252、またはそれらの組み合わせである。取り外し可能な記憶装置および取り外しができない記憶装置の例には、フレキシブルディスクドライブおよびハードディスクドライブ(HDD)などの磁気ディスク装置、コンパクトディスク(CD)ドライブまたはデジタル多用途ディスク(DVD)ドライブなどの光ディスクドライブ、ソリッドステートドライブ(SSD)、テープドライブが含まれる。例示的なコンピュータ記憶媒体は、コンピュータ可読命令、データ構造、プログラムモジュール、または他のデータなどの情報を記憶するための任意の方法または技術で実施される揮発性および不揮発性、取り外し可能および固定の媒体を含み得る。
【0056】
システムメモリ220、取外し可能記憶装置251、および固定記憶装置252はすべてコンピュータ記憶媒体の例である。コンピュータ記憶媒体は、RAM、ROM、EEPROM、フラッシュメモリまたは他のメモリ技術、CDROM、デジタル多用途ディスク(DVD)または他の光学記憶装置、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスク記憶装置または他の磁気記憶装置を含むがこれらに限定されない。所望の情報を格納するために使用され得、かつコンピューティング装置200によってアクセスされ得る任意のそのようなコンピュータ記憶媒体は、デバイス900の一部であり得る。
【0057】
また、コンピューティング装置200はバス/インターフェース制御部240を介して様々なインターフェース装置(例えば、出力インターフェース、周辺インターフェース、および通信インターフェース)から基本構成201への通信を容易にするためのインターフェースバス242を含むことができる。
出力デバイス260では、画像処理ユニット261および音声処理ユニット262が、1つまたは複数のAVポート263を介して表示装置291またはスピーカなどの様々な外部装置と通信するように構成され得る。
【0058】
例示的な周辺インターフェース270は、入力装置(例えば、キーボード、マウス、ペン、音声入力装置、タッチ入力装置など)のような外部装置と通信するように構成され得るシリアルインターフェース制御部271またはパラレルインターフェース制御部272を含む。周辺インターフェース270は、I/Oポート273を介してTEM292や画像フレーム記憶部293を格納した外部データベース機器と通信するように構成され得る。
例示的な通信装置280は、ネットワーク制御部281を含み、ネットワーク制御部281は、1つまたは複数の通信ポート282を介したネットワーク通信リンクを介して、1つまたは複数の他のコンピューティング装置290との通信を容易にするように構成されてもよい。
画像フレーム記憶部293には、始端画像フレーム294、第2画像フレーム295、第n画像フレーム296(n=3、4、…、N)、終端画像フレーム298、及び動的可視化処理済み画像フレーム記憶部299が含まれる。画像フレーム記憶部293に記憶される温度波の画像フレームデータは、時間間隔が等しく撮影された時系列の画像フレームデータである。
【0059】
ネットワーク通信リンクは、通信媒体の一例であり得る。通信媒体は、通常、コンピュータ可読命令、データ構造、プログラムモジュール、または搬送波もしくは他の搬送機構などの変調データ信号内の他のデータによって具現化することができ、任意の情報配信媒体を含むことができる。「変調データ信号」は、信号内に情報を符号化するような方法で設定または変更されたその特性のうちの1つまたは複数を有する信号であり得る。限定ではなく例として、通信媒体は、有線ネットワークまたは直接配線接続などの有線媒体、ならびに音響、無線周波数(RF)、マイクロ波、赤外線(IR)および他の無線媒体などの無線媒体を含み得る。本明細書で使用されるコンピュータ可読媒体という用語は、記憶媒体と通信媒体の両方を含み得る。
【0060】
コンピューティング装置200は、携帯電話、パーソナルデータアシスタント(PDA)、パーソナルメディアプレーヤデバイス、ワイヤレスウェブウォッチデバイス、パーソナルコンピュータなどのスモールフォームファクタポータブル(またはモバイル)電子デバイス、上記の機能のいずれかを含むヘッドセットデバイス、特定用途向けデバイス、またはハイブリッドデバイスの一部として実装され得る。また、コンピューティング装置200は、ラップトップコンピュータ構成および非ラップトップコンピュータ構成の両方を含むパーソナルコンピュータとして実装され得る。
【0061】
図12図11に示すコンピュータのためのソフトウェアの機能ブロック図で、例示的なコンピュータプログラム製品300を示している。プログラム担持媒体302は、コンピュータ読取可能媒体306、記録可能媒体308、通信媒体309、またはそれらの組み合わせとして実装することができるもので、処理ユニットのすべてまたは一部の処理を実行するように構成することができるプログラム命令格納部304を有する。
【0062】
プログラム命令格納部304に格納されたプログラム命令は、例えば、TEMで撮影した画像の倍率等の観測条件定を読込む機能(310)、温度波位相法を用いて試料の熱拡散率(α)を測定する微小熱伝導率測定部(320)、画像フレーム記憶部293から、画像フレーム管理部233を介して、指定された画像フレームデータを動的可視化処理部225に読込む機能(330)、動的可視化処理用管理データ部232から、起点位相の設定値、画像フレーム間の位相伝播の設定値、等位相間隔の設定値、特定色彩の指定を読込む機能(340)、動的可視化処理用管理データ部232で読み込んだ動的可視化処理用の各種パラメータを用いて、読み込んだ画像フレームデータの動的可視化処理を行う処理部225(350)。動的可視化処理の行われた動的可視化処理済み画像フレーム299から、試料での温度波位相法による熱拡散の動画を再生する機能(360)が含まれる。
画像フレーム記憶部293に記憶される温度波の画像フレームデータは、時間間隔が等しく撮影された時系列の画像フレームデータであるため、起点位相の設定値、画像フレーム間の位相伝播の設定値を用いることで、異なる撮影時間の時間差が画像フレーム間の位相伝播を用いることで、時系列の画像フレームデータの同期化処理が可能となる。
【0063】
図13Aは、図12に示すソフトウェアの動的可視化処理のフローチャートで、始端画像フレームの処理を説明している。図13Bは、第2の始端画像フレームの処理を説明している。図13Cは、第nの始端画像フレームの処理を説明している。
まず、図13Aでは、温度波の動的可視化方法を示している(S420)。動的可視化処理部225は、画像フレーム記憶部293に格納された画像フレームから動画の始端画像フレームを読み出す(S422)。動的可視化処理部225は、動的可視化処理用管理データ部232から、起点位相の設定値、画像フレーム間の位相伝播の設定値、等位相間隔の設定値、特定色彩の指定を読込み、始端画像フレームの位相分布像に対して起点位相を示す領域を特定の色彩で色付けする(S424)。この動的可視化処理された始端画像フレームは、動的可視化処理済み画像フレーム記憶部299に記録する。
【0064】
次に、動的可視化処理部225は、画像フレーム管理部233の指定に従って、始端画像フレームに隣接する画像フレームについて、起点位相設定部234の指定する起点位相に相当する領域を特定色彩管理部237で指定される特定の色彩で色付けし、動画の後続フレームとして動的可視化処理済み画像フレーム記憶部299に記録する(S426)。
続いて、動的可視化処理部225は、画像フレーム管理部233の指定に従って、隣接画像フレームに逐次隣接する画像フレームについて、起点位相設定部234の指定する起点位相に相当する領域を、等位相間隔管理部236の指定する等位相間隔と逐次隣接画像フレームの逐次数m(m=1、2、…)に基づき算定する(S428)。動的可視化処理部225は、特定色彩管理部237の指定に従い、逐次隣接画像フレームの起点位相に相当する領域を特定の色彩で色付けし、動画の後続フレームとして動的可視化処理済み画像フレーム記憶部299に記録する(S430)。
このようにして、動的可視化処理部225は、動画の終端画像フレームまで、起点位相に相当する領域を特定の色彩で色付けし、動画の終端画像フレームとして動的可視化処理済み画像フレーム記憶部299に記録する(S432)。
【0065】
続いて、図13Bを参照して、動的可視化処理部225は、画像フレーム管理部233の指定に従って、第2の始端画像フレームの位相分布像に対して起点位相設定部234の指定する起点位相を示す領域に後続する位相を指定する(S434)。動的可視化処理部225は、動的可視化処理用管理データ部232から、起点位相の設定値、画像フレーム間の位相伝播の設定値、等位相間隔の設定値、特定色彩の指定を読込み、第2の始端画像フレームの位相分布像に対して後続位相を示す領域を第2の特定の色彩で色付けする(S436)。
次に、動的可視化処理部225は、画像フレーム管理部233の指定に従って、第2の始端画像フレームに隣接する画像フレームについて、起点位相設定部234の指定する起点位相と等位相間隔管理部236の指定する等位相間隔から定まる後続位相に相当する領域を、特定色彩管理部237の指定に従い第2の特定の色彩で色付けし、動画の後続フレームとして記録する(S438)。
【0066】
続いて、動的可視化処理部225は、画像フレーム管理部233の指定に従って、隣接画像フレームに逐次隣接する画像フレームについて、起点位相設定部234の指定する起点位相と等位相間隔管理部236の指定する等位相間隔から定まる後続位相に相当する領域を、等位相間隔と逐次隣接画像フレームの逐次数m(m=1、2、…)に基づき算定する(S440)。動的可視化処理部225は、逐次隣接画像フレームの後続位相に相当する領域を第2の特定の色彩で色付けし、動画の後続フレームとして動的可視化処理済み画像フレーム記憶部299に記録する(S442)。
このようにして、動的可視化処理部225は、動画の終端画像フレームまで、後続位相に相当する領域を第2の特定の色彩で色付けし、動画の終端画像フレームとして動的可視化処理済み画像フレーム記憶部299に記録する(S444)。
【0067】
次に、図13Cを参照して、動的可視化処理部225は、画像フレーム管理部233の指定に従って、次に処理される位相分布像の対象位相領域として、第nの始端画像フレームの位相分布像に対して起点位相を示す領域に後続する位相を指定する(S446)。動的可視化処理部225は、動的可視化処理用管理データ部232から、起点位相の設定値、画像フレーム間の位相伝播の設定値、等位相間隔の設定値、特定色彩の指定を読込み、第n(n=3、4、…、N)の始端画像フレームの位相分布像に対して後続位相を示す領域を第nの特定の色彩で色付けする(S448)。
次に、動的可視化処理部225は、画像フレーム管理部233の指定に従って、第nの始端画像フレームに隣接する画像フレームについて、起点位相設定部234の指定する起点位相と等位相間隔管理部236の指定する等位相間隔から定まる後続位相に相当する領域を第nの特定の色彩で色付けし、動画の後続フレームとして動的可視化処理済み画像フレーム記憶部299に記録する(S450)。
【0068】
続いて、動的可視化処理部225は、画像フレーム管理部233の指定に従って、隣接画像フレームに逐次隣接する画像フレームについて、起点位相設定部234の指定する起点位相と等位相間隔管理部236の指定する等位相間隔から定まる後続位相に相当する領域を、等位相間隔と逐次隣接画像フレームの逐次数m(m=1、2、…)に基づき算定する(S452)。逐次隣接画像フレームの後続位相に相当する領域を第nの特定の色彩で色付けし、動画の後続フレームとして記録する(S454)。
このようにして、動的可視化処理部225は、動画の終端画像フレームまで、後続位相に相当する領域を第nの特定の色彩で色付けし、動画の終端画像フレームとして動的可視化処理済み画像フレーム記憶部299に記録する(S456)。
【0069】
続いて、図13A図13Cに示す動的可視化処理のフローチャートに従い、具体的な温度波の動的な観察状態を示す図を動的可視化処理する過程を説明する。
図14A図14Cは、温度波の動的な観察状態を説明する図で、(A)は5kHz、(B)は10kHz、(C)は20kHzの場合を示している。図14A図14Cにおいて、加熱位置から温度計測位置(熱電対接合部)までの到達時間を記録した位相像について、同一位相他帯を色付けし、等時間間隔でコマ送りすることで、温度波の動的観察が可能である。図14Aの画像フレーム数は36個であり、図14Bの画像フレーム数は49個であり、図14Cの画像フレーム数は63個である。
各画像フレームにおいて、色が似ている部分は位相遅れが似ている。位相遅延は、周波数の増加とともに量的に増加した。したがって、周波数が高くなるにつれてカラーバンドの幅が狭くなる。試料と熱電対の接触部では、熱伝達の遅れが熱抵抗に反映される。
そこで、位相像を基にした動的観察により、熱電対(熱電材料も含む)の接合位置が直接観察できる。
【0070】
続いて、本発明の温度波の動的可視化方法の処理手順について説明する。
図15は、温度波の動的可視化処理を説明する図で、(A)は動画の始端画像フレームの初期状態で注目する同一位相の領域、(B)は動画の各フレームで始端画像フレームの初期状態と同一位相の領域、(C)は動画の各フレームで初期状態の同一位相に続く位相の領域、(D)は動画の最終フレームの処理完了状態を示している。ここでは、動的観察用温度波位相像の作成として、図14Aに示す5kHzを用いて説明する。
【0071】
温度波の動的な観察状態は、解析用コンピュータ60の画像フレーム記憶部293(例えば、Gatan Digital Micrograph)に各画像フレームが格納されている。
まず、図15Aに示すように、動画の始端画像フレームとなる画像フレーム、ここではフレーム8(以下、F8と略記する)、の時間情報である位相分布像について、画像フレーム記憶部に格納された画像フレーム上で同一位相(18°付近)を示す領域を特定の色彩、例えば黄色で色付けする。色付け領域は、例えば、F8の試料上の5°の位相帯(18~23°の領域)を黄色のグラデーションで色付けする。
続いて、図15Bに示すように、特定の色彩、例えば黄色で色付けする領域を、始端画像フレームに隣接する画像フレームについて、F9(19~23°領域)→F10(20~24°の領域)→F11(21~25°の領域)…と等位相間隔毎(今回の場合1°毎)にずらして動画の1フレームとして記録する。
このようにして、動画の終端画像フレームF39まで、特定の色彩、例えば黄色で色付けする。
【0072】
図15Cに示すように、次に処理される位相分布像の対象位相領域は、上記の動画の始端画像フレームとなる画像フレームの同一位相(18°付近)に隣接する後続の位相である。ここでは、始端画像フレームに隣接する画像フレームF9について、始端画像フレームF8と同一の始端位相(18°付近)を示す領域を、前出の特定の色彩とは異なる第2の特定の色彩、例えば赤で色付けする。色付け領域は、例えば、F9の試料上の5°の位相帯(18~23°の領域)を赤のグラデーションで色付けする。ここでは、始端画像フレームに隣接する画像フレームF9を、第2の始端画像フレームと呼ぶ。
続いて、第2の特定の色彩、例えば赤で色付けする領域を、第2の始端画像フレームに隣接する画像フレームについて、F10(19~23°領域)→F11(20~24°の領域)→F12(21~25°の領域)…と等位相間隔毎(今回の場合1°毎)にずらして動画の1フレームとして記録する。
そこで、この処理段階での画像フレームの色彩分布を、例えば画像フレームF12についてみると、22~26°の領域が第1の特定の色彩である黄色で色付けされており、19~23°の位相の領域が第2の特定の色彩である赤で色付けされている。
このようにして、動画の終端画像フレームF39まで、第2の特定の色彩、例えば赤で色付けする。
【0073】
次に処理される位相分布像の対象位相領域は、上記の動画の第2の始端画像フレームとなる画像フレームの同一位相(18°付近)に隣接する後続の位相である。ここでは、第2の始端画像フレームに隣接する画像フレームF10を、第3の始端画像フレームと呼ぶ。第2の始端画像フレームに隣接する画像フレームF10について、第2の始端画像フレームF9と同一の始端位相(18°付近)を示す領域を、前出の特定の色彩とは異なる第2の特定の色彩、例えば緑で色付けする。色付け領域は、例えば、F10の試料上の5°の位相帯(18~23°の領域)を緑のグラデーションで色付けする。
続いて、第3の特定の色彩、例えば緑で色付けする領域を、第3の始端画像フレームに隣接する画像フレームについて、F11(19~23°領域)→F12(20~24°の領域)→F13(21~25°の領域)…と等位相間隔毎(今回の場合1°毎)にずらして動画の1フレームとして記録する。
このようにして、動画の終端画像フレームF39まで、第3の特定の色彩、例えば緑で色付けする。
【0074】
このようにして、処理される位相分布像の対象位相領域を、後続の始端画像フレームとなる画像フレームの同一位相(18°付近)に隣接する後続の位相について繰り返し、後続の始端画像フレームとなる画像フレームについて、順次異なる特定の色彩で色付けする。そして、図15Dに示すように、動画の終端画像フレームF39まで、逐次、試料上の位相帯幅Δq(例えば5°)の同一位相帯で、第1の特定の色彩や第2の特定の色彩と同様に、順次、画像フレームを前記特定の色彩で色付けして、処理済みの各画像フレームを保存する。
【0075】
その後、例えば1°毎に同一位相帯の色付け個所をずらしたフレームを記録していき、最終的に図14Aにあるような等位相間隔の連続した画像フレームを準備する。
準備した連続の画像フレームを動画化ソフトウェア、例えばgifアニメーションで動画化することで、温度波の同一位相帯がどのように動いていくかを動的に観察できる。この動画を観察することにより、不均一な試料においても、温度波がどのように伝わっていくかが視覚的に評価できる。
また、同一位相帯の空間的な幅により、温度勾配が視覚的に判断できるため、熱拡散率が高い領域、低い領域を視覚的に判断できる。
さらに、動的観察処理部において、同一位相帯の範囲およびフレーム数も、必要に応じて自由に変えることができる。一般的には、位相分布像の測定周波数が高くなるほど、位相分布像中に含まれる位相分解能が高くなるため、フレーム数を多くすることができる。
【0076】
また、位相分布像は、温度検知部の熱電対を中心として、電子線照射位置までの温度波が到達する時間を記録している。裏を返すと、本発明の温度波の動的可視化方法で温度波の動画を追うことで、図1のような熱電対上の温度波の流れも視覚的に解析できるのみならず、図3に示すように、温度を熱起電力に変換している熱電対の温度検知部を可視化できる。
図16(A)は周波数法による所定周波数のパルス状の電子線による試料全体に対する加熱の説明図、図16(B)は熱電対のコンスタンタンとクロメルの接合部付近を拡大した加熱の説明図、図16(C)は図16(B)の接合部付近を拡大した加熱の説明図で、背景領域の明度を暗くしたものである。
【0077】
以上説明したように、本発明の温度波の動的可視化装置及び方法においては、温度検出用に熱電対を用いているが、本発明はこれに限定されるものではなく、温度差で熱起電力を発生する熱電材料の接合界面の解析にも応用できる。
また、本発明の温度波の動的可視化装置及び方法は、100Hz~500kHzの各周波数帯で測定した温度波の位相分布像にも適用できると共に、通常のTEM像では判別できない接合部界面(発電部分)の可視化も可能である。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明の温度波の動的可視化装置及び方法によれば、試料厚さや物質の種類の違いによる吸熱量の変化に比較的影響を受けにくい温度波の位相計測を基に、STEM内熱輸送評価法に用いる試料に対して、より正確な熱伝導性の解析を行う為の試料の形状設計に用いて好適である。
また、本発明の温度波の動的可視化装置及び方法によれば、材料内の空孔、結晶粒界、接触界面における熱抵抗の評価への応用や、絶縁体、半導体、金属、ナノワイヤ、ナノチューブ、粒子、熱伝導性フィラー、複合放熱材料等の熱輸送状態の解析や温度波の伝播経路解析に適用できる。
【符号の説明】
【0079】
10 透過電子顕微鏡(STEM)
12 静電シャッター
14 静電線量変調器(EDM)
20 温度波生成部
21 試料
22 パルス状の電子線
23 コンスタンタンプローブ(熱電対)
24 クロメルプローブ(熱電対)
30 ロックインアンプ
40 信号処理部
50 電子ビーム制御および画像処理システム(DigiScan)
60 解析用コンピュータ

図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B
図13C
図14A
図14B
図14C
図15A
図15B
図15C
図15D
図16