(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170759
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】照明装置
(51)【国際特許分類】
H05B 47/155 20200101AFI20241204BHJP
F21V 9/38 20180101ALI20241204BHJP
F21V 8/00 20060101ALI20241204BHJP
F21S 2/00 20160101ALI20241204BHJP
H05B 47/105 20200101ALI20241204BHJP
F21Y 115/30 20160101ALN20241204BHJP
【FI】
H05B47/155
F21V9/38
F21V8/00 200
F21S2/00 311
H05B47/105
F21Y115:30
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087459
(22)【出願日】2023-05-29
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【弁理士】
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】北野 博史
(72)【発明者】
【氏名】西森 泰輔
(72)【発明者】
【氏名】森住 剛
【テーマコード(参考)】
3K273
【Fターム(参考)】
3K273AA02
3K273AA05
3K273AA06
3K273AA08
3K273BA02
3K273BA07
3K273CA01
3K273CA08
3K273CA09
3K273DA03
3K273DA08
3K273FA03
3K273FA04
3K273FA09
3K273FA14
3K273HA12
3K273HA18
3K273HA20
(57)【要約】
【課題】同じ色域の光を発する複数の発光素子を用いながらも照明光の色を変更することができる照明装置を提供する。
【解決手段】照明光Lwを照射する照明装置1であって、光源光Lbを放出する光源部10と、光源光Lbによって励起されて蛍光Lyを発する蛍光体21と、を備え、光源部10は、第1の光Lb1を発する第1の発光素子11と、第1の光Lb1と同じ色域であり且つ第1の光Lb1とは主波長が異なる第2の光Lb2を発する第2の発光素子12とを有し、光源光Lbは、第1の光Lb1及び第2の光Lb2を含み、照明光Lwは、光源光20と蛍光Lyとの合成光であり、光源光Lbの主波長を変化させて光源光Lbと蛍光Lyとの光強度比を変化させることで、照明光Lwの色度を変化させる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
照明光を照射する照明装置であって、
光源光を発する光源部と、
前記光源光によって励起されて第1の蛍光を発する第1の蛍光体と、を備え、
前記光源部は、第1の光を発する第1の発光素子と、前記第1の光と同じ色域であり且つ前記第1の光とは主波長が異なる第2の光を発する第2の発光素子とを有し、
前記光源光は、前記第1の光及び前記第2の光の少なくとも一方を含み、
前記照明光は、前記光源光と前記第1の蛍光との合成光であり、
前記光源光の主波長を変化させて前記光源光と前記第1の蛍光との光強度比を変化させることで、前記照明光の色度を変化させる、
照明装置。
【請求項2】
前記第1の光と前記第2の光との光強度比を変化させることで、前記光源光の主波長を変化させる、
請求項1に記載の照明装置。
【請求項3】
前記第1の発光素子及び前記第2の発光素子のうちの一方の温度を制御する温度制御素子を備え、
前記第1の発光素子及び前記第2の発光素子のうちの他方の光出力を停止した状態において、前記第1の発光素子及び前記第2の発光素子のうちの一方の温度を前記温度制御素子によって変化させることで、前記光源光の主波長を変化させる、
請求項1に記載の照明装置。
【請求項4】
前記光源光によって励起されて前記第1の蛍光とは異なる色の第2の蛍光を発する第2の蛍光体を備え、
前記照明光は、さらに、前記第2の蛍光を含む、
請求項1~3のいずれか1項に記載の照明装置。
【請求項5】
前記光源部を主光源部とし、前記光源光を主光源光としたときに、さらに、前記主光源光の色とは異なる色の副光源光を発する副光源部を備え、
前記副光源部は、前記第1の光及び前記第2の光とは異なる色の第3の光を発する第3の発光素子を有し、
前記照明光は、さらに、前記第3の光を含む、
請求項1~3のいずれか1項に記載の照明装置。
【請求項6】
前記第1の発光素子及び前記第2の発光素子は、半導体レーザによって構成されている、
請求項1~3のいずれか1項に記載の照明装置。
【請求項7】
前記第1の光及び前記第2の光の色は、青色であり、
前記第1の蛍光は、黄色である、
請求項1~3のいずれか1項に記載の照明装置。
【請求項8】
前記第1の光の主波長と前記第2の光の主波長との差をΔλ[nm]とすると、
0<Δλ≦40である、
請求項1~3のいずれか1項に記載の照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、LED又は半導体レーザ等の発光素子を光源として用いた照明装置が知られている。例えば、半導体レーザを光源として用いた照明装置は、レーザ光を出射する半導体レーザと、半導体レーザから出射した光によって励起されて蛍光を発する蛍光体とを備えている(特許文献1)。このような照明装置では、レーザ光の一部が蛍光体で吸収されることで生成された蛍光と蛍光体で吸収されなかったレーザ光とが混ざることで所望の色の照明光が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
照明装置では、照明光の明るさを変更できるだけではなく、照明光の色度も変更できることが望まれる。つまり、調光制御及び調色制御できる照明装置が望まれる。
【0005】
しかしながら、発光素子を備える照明装置においては、照明光の色度を変更できるようにするには、発光色が異なる複数種類の発光素子が必要であった。特に、発光素子として半導体レーザを用いた照明装置において調色制御を行うには、赤色(R)のレーザ光を発する赤色半導体レーザと、緑色(G)のレーザ光を発する緑色半導体レーザと、青色(B)のレーザ光を発する青色半導体レーザとの3種類の半導体レーザを用いる必要があった。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、同じ色域の光を発する複数の発光素子を用いながらも照明光の色度を変更することができる照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る照明装置の一態様は、照明光を照射する照明装置であって、光源光を発する光源部と、前記光源光によって励起されて第1の蛍光を発する第1の蛍光体と、を備え、前記光源部は、第1の光を発する第1の発光素子と、前記第1の光と同じ色域であり且つ前記第1の光とは主波長が異なる第2の光を発する第2の発光素子とを有し、前記光源光は、前記第1の光及び前記第2の光の少なくとも一方を含み、前記照明光は、前記光源光と前記第1の蛍光との合成光であり、前記光源光の主波長を変化させて前記光源光と前記第1の蛍光との光強度比を変化させることで、前記照明光の色度を変化させる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、同じ色域の光を発する複数の発光素子を用いながらも、照明光の色度を変更することができる照明装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施の形態に係る照明装置の構成を示す図である。
【
図2】
図2は、実施の形態に係る照明装置を用いた調色制御方法を説明するための図である。
【
図3】
図3は、実施の形態に係る照明装置を用いた他の調色制御方法を説明するための図である。
【
図4】
図4は、実施の形態に係る照明装置を用いたさらに別の調色制御方法を説明するための図である。
【
図5】
図5は、Tc=20℃、40℃、60℃の場合における第1の発光素子及び第2の発光素子の発光スペクトルを示す図である。
【
図6】
図6は、変形例1に係る照明装置の構成を示す図である。
【
図7】
図7は、変形例1に係る照明装置で用いた2種類の蛍光体の励起スペクトル(吸収特性)及び発光スペクトルを示す図である。
【
図8】
図8は、実施の形態に係る照明装置を用いて調色制御を行ったときの照明光の色度の変化と変形例1に係る照明装置を用いて調色制御を行ったときの照明光の色度の変化とを示すxy色度図である。
【
図9】
図9は、
図8の調色制御を行ったときの条件を示す図である。
【
図10】
図10は、YAG蛍光体で構成された蛍光体とSCASN蛍光体で構成された蛍光体とを有する蛍光体部を備える照明装置において、Tc=20℃のときの蛍光体部の発光スペクトルを示す図である。
【
図11】
図11は、変形例2に係る照明装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、いずれも本発明の一具体例を示すものである。したがって、以下の実施の形態で示される、数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態等は、一例であって本発明を限定する主旨ではない。よって、以下の実施の形態における構成要素のうち、本発明の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0011】
なお、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。また、各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡略化する。また、本明細書において、「上」及び「下」という用語は、必ずしも、絶対的な空間認識における上方向(鉛直上方)及び下方向(鉛直下方)を指すものではない。
【0012】
(実施の形態)
まず、実施の形態に係る照明装置1の全体の構成について、
図1を用いて説明する。
図1は、実施の形態に係る照明装置1の構成を示す図である。
【0013】
図1に示すように、照明装置1は、光源光Lbを発する光源部10と、光源部10が発した光源光Lbが入射する蛍光体部20とを備える。照明装置1は、所定の色の照明光Lwを照射する。本実施の形態において、照明装置1は、照明光Lwとして白色光を照射する。照明光Lwは、光源部10から出射した光源光Lbと蛍光体部20で生成された蛍光Lyとの合成光である。
【0014】
光源部10は、第1の光Lb1を発する第1の発光素子11と、第2の光Lb2を発する第2の発光素子12とを有する。光源部10が発する光源光Lbは、第1の光Lb1及び第2の光Lb2の少なくとも一方を含む。
【0015】
第1の発光素子11及び第2の発光素子12は、半導体レーザ又はLED等の半導体発光素子である。本実施の形態において、第1の発光素子11及び第2の発光素子12は、レーザ光を出射する半導体レーザによって構成されている。つまり、第1の光Lb1及び第2の光Lb2は、単色性の光スペクトルを有するレーザ光である。
【0016】
一例として、第1の発光素子11及び第2の発光素子12の各々は、TO-CANパッケージ半導体レーザであり、レーザ光を出射する半導体レーザチップと、半導体レーザチップが実装されたポスト及びポストを支持する円盤状のベースを有するステムと、ベースを貫通する一対のリードピンと、半導体レーザチップが実装されたポストを覆うようにベースに配置された金属製のキャップとを備える。半導体レーザチップから出射したレーザ光は、キャップの開口部を通って外部に放射される。半導体レーザチップは、例えば、窒化物系半導体材料によって構成されている。第1の発光素子11における半導体レーザチップは、第1の光Lb1としてレーザ光を発する。また、第2の発光素子12における半導体レーザチップは、第2の光Lb2としてレーザ光を発する。
【0017】
第1の発光素子11が発する第1の光Lb1と、第2の発光素子12が発する第2の光Lb2とは、同じ色域であるが、主波長が異なっている。つまり、第1の光Lb1の色と第2の光Lb2の色とは同じであるが、第1の光Lb1の主波長と第2の光Lb2の主波長とは異なっている。このように、光源部10は、主波長は異なるが同じ色域の光を発する複数の発光素子として、第1の発光素子11と第2の発光素子12とを有している。
【0018】
本実施の形態において、第1の光Lb1及び第2の光Lb2の色は、青色である。例えば、第1の光Lb1及び第2の光Lb2は、ピーク波長が430nm以上480nm以下の範囲である青色帯域の青色レーザ光である。
【0019】
また、第1の光Lb1の主波長は、第2の光Lb2の主波長よりも短い。つまり、第1の発光素子11は、短波長の青色の第1の光Lb1を発する青色半導体レーザであり、第2の発光素子12は、長波長の青色の第2の光Lb2を発する青色半導体レーザである。一例として、第1の光Lb1の主波長は、約440nmであり、第2の光Lb2の主波長は、約455nmである。第1の光Lb1の主波長と第2の光Lb2の主波長との差をΔλ[nm]とすると、0<Δλ≦40であるとよい。
【0020】
なお、「主波長」は、「ピーク波長」とは異なる概念である。したがって、「主波長」の値と「ピーク波長」の値とは異なるが、レーザ光の光スペクトル(分光分布)がガウシアン分布となる場合等の場合、「主波長」の値と「ピーク波長」の値とが同じになることもある。
【0021】
蛍光体部20は、蛍光体部20に入射する光を励起光として蛍光Lyを発する蛍光体デバイスである。具体的には、蛍光体部20は、光源部10から出射した光源光Lbを励起光として蛍光Lyを発する。
【0022】
蛍光体部20は、蛍光体21と、蛍光体21を支持する基板22とを備える。本実施の形態において、蛍光体部20は、透過型の蛍光体デバイスであり、蛍光体部20に入射する励起光を透過する。また、基板22は、蛍光体部20で生成される蛍光Lyを反射するとよい。したがって、基板22は、光源光Lbに対して透光性を有し、蛍光Lyに対して反射性を有するとよい。例えば、基板22は、透光基板と、透光基板に形成されたダイクロイック膜とを有する。この場合、ダイクロイック膜は、光源光Lbに対しては高い透過性を有し、蛍光Lyに対しては高い反射性を有する分光特性を持つとよい。光源部10から出射した光源光Lbは、基板22の裏面(光源部10側の面)から蛍光体部20に入射し、基板22を透過して蛍光体21に入射する。
【0023】
蛍光体21は、蛍光体21に入射する光を励起光として蛍光を発する蛍光体光学素子である。具体的には、蛍光体21は、光源部10からの光源光Lb(励起光)によって励起されて蛍光Lyを発する。蛍光体21は、光源部10からの光源光Lbが入射すると、可視領域の所定の色の蛍光Lyを発する。蛍光体21は、蛍光Lyよりも短波長の光を励起光として蛍光Lyを発する。本実施の形態において、蛍光体21は、黄色蛍光体によって構成された黄色蛍光体層であり、蛍光Lyとして黄色光を発する。
【0024】
蛍光体21は、セラミックスによって構成された蛍光体セラミックス層であってもよいし、蛍光体粒子がバインダ(結合剤)によって封止された蛍光体封止樹脂層であってもよいが、本実施の形態のように、第1の発光素子11及び第2の発光素子12を半導体レーザによって構成する場合は、蛍光体21は、耐熱性及び放熱性に優れた蛍光体セラミックス層によって構成されているとよい。
【0025】
黄色蛍光体層である蛍光体21としては、例えば、Y3Al5O12:Ceで表されるYAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)によって構成されたYAG蛍光体層、又は、Lu3Al5O12:Ceで表されるLuAG(ルテチウム・アルミニウム・ガーネット)によって構成されたLuAG蛍光体層を用いることができる。本実施の形態において、蛍光体21は、単一の結晶相の焼結YAG蛍光体のみからなる蛍光体セラミックス層である。
【0026】
基板22を構成する透光基板は、光透過率が高い基板であるとよい。具体的には、基板22を構成する透光基板は、向こう側が透けて見える程度に透過率が高い透明基板であるとよい。一例として、透光基板の光透過率は、90%以上であり、95%以上であるとさらによい。また、透光基板としては、光透過率が高いだけではなく、耐熱性が高い基板であるとよい。このような透光基板としては、Al2O3からなるアルミナ基板、AlNからなる窒化アルミニウム基板、GaNからなる窒化ガリウム基板、サファイア基板、又は、ガラス基板等を用いることができる。なお、基板22の裏面(光入射側)には、反射防止膜が形成されていてもよい。
【0027】
図1に示すように、本実施の形態における照明装置1は、さらに、ヒートシンク30と、集光レンズ40と、光ファイバ50と、ミラーパイプ60と、投射レンズ70とを備えている。
【0028】
光源部10とヒートシンク30と集光レンズ40とは、光源ユニットを構成している。また、蛍光体部20とミラーパイプ60と投射レンズ70とは、灯具を構成している。なお、光源部10とヒートシンク30と集光レンズ40とは、筐体81に収納されていてもよい。また、蛍光体部20とミラーパイプ60と投射レンズ70とは、筐体82に収納されていてもよい。この場合、筐体81は、光を外部に出射するための開口部を有する。また、筐体82は、光を入光させるための開口部と光を外部に出射するための開口部とを有する。筐体81及び筐体82は、金属製又は樹脂製である。
【0029】
ヒートシンク30は、例えばアルミニウム又は銅等の金属部材である。また、ヒートシンク30は、第1の発光素子11及び第2の発光素子12を支持する支持部材としても機能する。第1の発光素子11及び第2の発光素子12は、ヒートシンク30に固定されている。なお、ヒートシンク30は、複数の放熱フィンを有しているとよい。
【0030】
集光レンズ40は、光源部10の光源光の出射側に配置されており、光源部10から出射した光源光Lbを集光する。光源部10から出射した光源光Lbは、集光レンズ40により集光されて、光ファイバ50に入光する。具体的には、集光レンズ40は、第1の発光素子11が発する第1の光Lb1と第2の発光素子12が発する第2の光Lb2の各々を集光する。つまり、第1の発光素子11が発する第1の光Lb1と第2の発光素子12が発する第2の光Lb2とは、集光レンズ40で集光されて光ファイバ50に入光する。
【0031】
光ファイバ50は、光を導光する導光部材の一例である。光ファイバ50は、例えば高屈折率のコアをコアより低屈折率のクラッド層が包んだ二重構造で構成される伝送体であり、例えば、石英ガラス又は樹脂等の材料で構成されている。光ファイバ50は、光源部10から出射して集光レンズ40で集光されたレーザ光である光源光Lbをミラーパイプ60に伝送する。なお、光ファイバ50を用いずに、集光レンズ40で集光された光源光Lbを直接ミラーパイプ60に結合されていてもよい。この場合、光源ユニットと灯具とが一体化した照明装置となる。
【0032】
ミラーパイプ60は、断面が矩形状の筒状体である。ミラーパイプ60の内面は、ミラー面(反射面)になっている。ミラーパイプ60は、ミラーパイプ60に入光した光源光Lbの光強度を一様化して出力する。具体的には、ミラーパイプ60は、レーザ光である光源光Lbの光強度のピークを低下して出力する。
【0033】
投射レンズ70は、蛍光体部20で生成された蛍光Lyと蛍光体部20を透過した光源部10の光源光Lbとの合成光である照明光Lw(白色光)を集光して所望の領域に投射する。投射レンズ70は、例えば、アクリル又はポリカーボネート等の樹脂材料によって構成されていてもよいし、ガラス材料によって構成されていてもよい。
【0034】
また、図示していないが、照明装置1は、光源部10に電力を供給するための電源装置(電源回路)を有していてもよい。具体的には、電源装置は、第1の発光素子11及び第2の発光素子12の各々に個別に電力を供給する。これにより、第1の発光素子11及び第2の発光素子12を個別に発光させることができる。なお、電源装置は、照明装置1が備えていなくてもよい。つまり、電源装置は、照明装置1とは別置された外部電源であってもよい。
【0035】
このように構成される照明装置1では、光源部10から出射した光源光Lbが蛍光体部20に入射することで所定の色の照明光Lwが照射される。
【0036】
具体的には、電源装置により光源部10に電力が供給されると、光源部10から光源光Lbが出射する。光源部10から出射した光源光Lbは、集光レンズ40で集光されて光ファイバ50に入光する。より具体的には、電源装置により第1の発光素子11及び第2の発光素子12に電力が供給されると、第1の発光素子11から第1の光Lb1が出射するとともに第2の発光素子12から第2の光Lb2が出射する。そして、第1の発光素子11から出射した第1の光Lb1と第2の発光素子12から出射した第2の光Lb2とは、光源光Lbとして集光レンズ40で集光されて光ファイバ50に入光する。
【0037】
光ファイバ50に入光した光源部10の光源光Lbは、光ファイバ50を伝送してミラーパイプ60に入光する。ミラーパイプ60に入光した光源部10の光源光Lbは、ミラーパイプ60で光強度が均斉化されて蛍光体部20に入射する。具体的には、光源部10の光源光Lbは、蛍光体部20の基板22に入射する。
【0038】
蛍光体部20に入射した光源部10の光源光Lb(Lb1、Lb2)は、基板22を透過して蛍光体21に到達する。これにより、蛍光体21は、光源部10の光源光Lbによって励起されて蛍光Lyを発する。本実施の形態において、光源部10の光源光Lbは、青色であり、蛍光体21は黄色蛍光体層である。この場合、蛍光体21には、青色の光源光Lbが入射する。これにより、蛍光体21は、光源光Lbの一部を吸収して励起されて蛍光Lyとして黄色光を発する。そして、蛍光体21では、この黄色光と蛍光体21(黄色蛍光体層)に吸収されなかった光源光Lbの他の一部(青色光)とが混色することで合成された合成光として白色光が生成され、蛍光体部20からは照明光Lwとして白色光が放射される。蛍光体20から放射された照明光Lwは、投射レンズ70によって集光されて所望の領域に投射される。
【0039】
次に、実施の形態に係る照明装置1を用いた調色制御方法について、
図2を用いて説明する。
図2は、実施の形態に係る照明装置1を用いた調色制御方法を説明するための図である。
【0040】
本実施の形態における照明装置1では、蛍光体の発光効率(変換効率)が励起光の波長に応じて変化することを利用して照明装置1の調色制御を行っている。つまり、照明装置1から照射される照明光Lwの色度を制御している。以下、具体的に説明する。
【0041】
蛍光体21は、蛍光体21に入射する励起光の波長が短い場合は、相対的に発光効率が低くなり、蛍光体21に入射する励起光の波長が長い場合は、相対的に発光効率が高くなる。
【0042】
このため、
図2に示すように、光源部10が、短波長の波長λ1を主波長とする青色レーザ光の第1の光Lb1を発する第1の発光素子11と、長波長の波長λ2(λ2>λ1)を主波長とする青色レーザ光の第2の光Lb2を発する第2の発光素子12とを有し、且つ、蛍光体21が、黄色の蛍光Lyを発する黄色蛍光体層である場合において、
図2の(a)に示すように、第2の発光素子12を発光させずに第1の発光素子11のみを発光させて光源部10の光源光Lbが短波長の第1の光Lb1のみを含む場合には(Lb=Lb1)、光源光Lbの主波長が短くなる。この場合、蛍光体21に入射する励起光の波長が短くなるので蛍光体21の発光効率が低くなり、蛍光体21で生成される黄色の蛍光Lyの光強度が小さくなる。この結果、蛍光体21に吸収されずに蛍光体21を透過する青色レーザ光である第1の光Lb1の割合が大きくなる。これにより、青色レーザ光である第1の光Lb1と黄色の蛍光Lyとの合成光である白色の照明光Lwの色温度は高くなる。このように、
図2の(a)の場合における照明装置1の点灯状態は、高色温度の照明光Lwが照射される高色温度状態(第1照明状態)となる。
【0043】
一方、
図2の(b)に示すように、第1の発光素子11を発光させずに第2の発光素子12のみを発光させて光源部10の光源光Lbが長波長の第2の光Lb2のみを含む場合には(Lb=Lb2)、光源光Lbの主波長が長くなる。この場合、蛍光体21に入射する励起光の波長が長くなるので蛍光体21の発光効率が高くなり、蛍光体21で生成される黄色の蛍光Lyの光強度が大きくなる。この結果、蛍光体21に吸収されずに蛍光体21を透過する青色レーザ光である第2の光Lb2の割合が小さくなる。これにより、青色レーザ光である第2の光Lb2と黄色の蛍光Lyとの合成光である白色の照明光Lwの色温度は低くなる。このように、
図2の(b)の場合における照明装置1の点灯状態は、低色温度の照明光Lwが照射される低色温度状態(第2照明状態)となる。
【0044】
また、
図2の(c)に示すように、第1の発光素子11及び第2の発光素子12の両方を発光させて光源部10の光源光Lbが短波長の第1の光Lb1と長波長の第2の光Lb2とを含む場合には(Lb=Lb1+Lb2)、光源光Lbの主波長は、
図2の(a)の場合と
図2の(b)の場合との間の中程度になる。この場合、蛍光体21の発光効率も中程度になり、蛍光体21で生成される黄色の蛍光Lyの光強度も中程度になる。この結果、蛍光体21に吸収されずに蛍光体21を透過する青色レーザ光である第1の光Lb1と第2の光Lb2との割合も中程度になる。これにより、青色レーザ光である第1の光Lb1及び第2の光Lb2と黄色の蛍光Lyとの合成光である白色の照明光Lwの色温度は中程度になる。このように、
図2の(c)の場合における照明装置1の点灯状態は、中色温度の照明光Lwが照射される中色温度状態(第3照明状態)となる。
【0045】
なお、第1の発光素子11が発する第1の光Lb1の光強度(光出力)は、
図2の(c)の場合の方が
図2の(a)の場合よりも小さい。例えば、
図2の(c)の場合における第1の発光素子11の第1の光Lb1の光強度は、
図2の(a)の場合における第1の発光素子11の第1の光Lb1の光強度の半分である。また、第2の発光素子12が発する第2の光Lb2の光強度(光出力)も、
図2の(c)の場合の方が
図2の(b)の場合よりも小さい。例えば、
図2の(c)の場合における第2の発光素子12の第2の光Lb2の光強度は、
図2の(b)の場合における第2の発光素子12の第2の光Lb2の光強度の半分である。本実施の形態において、
図2の(a)、(b)及び(c)のそれぞれにおいて、第1の光Lb1と第2の光Lb2との強度比は、1:0、0:1、0.5:0.5としているが、これに限らない。
【0046】
このように、
図2の(a)、(b)及び(c)では、第1の発光素子11が発する第1の光Lb1の光強度(光出力)を変更するとともに、第2の発光素子12が発する第2の光Lb2の光強度(光出力)を変更している。つまり、第1の発光素子11が発する第1の光Lb1と第2の発光素子12が発する第2の光Lb2との光強度比を変化させている。これにより、第1の光Lb1と第2の光Lb2との合成光である光源光Lbの主波長が変化することになるので、光源光Lbと蛍光体21で生成された蛍光Lyとの光強度比が変化し、照明光Lwの色温度が変化することになる。つまり、照明装置1から照射される照明光Lwの色度を変化させることができる。
【0047】
なお、第1の発光素子11の第1の光Lb1の光強度(光出力)と、第2の発光素子12の第2の光Lb2の光強度(光出力)とは、制御部(不図示)によって制御することができる。制御部は、例えば、制御回路によって構成することができる。また、この制御部は、電源装置の一部であってもよい。
【0048】
また、本実施の形態では、
図2の(a)、(b)及び(c)の3つの点灯状態のみを例示したが、これに限らない。例えば、第1の光Lb1と第2の光Lb2との強度比を、1:0~0:1の間でアナログ又は段階的に変化させることで、照明装置1の点灯状態を無数に変更することができる。つまり、照明装置1の照明光Lwの色温度を、
図2の(a)の場合と
図2の(c)の場合との間の色温度にアナログ又は段階的に変化させたり、
図2の(b)の場合と
図2の(c)の場合との間の色温度にアナログ又は段階的に変化させたりすることができる。
【0049】
次に、実施の形態に係る照明装置1を用いた他の調色制御方法について、
図3を用いて説明する。
図3は、実施の形態に係る照明装置1を用いた他の調色制御方法を説明するための図である。
【0050】
上記の
図2に示される調色制御方法では、第1の発光素子11が発する第1の光Lb1と第2の発光素子12が発する第2の光Lb2との光強度比を変化させることで、光源部10の光源光Lbの主波長を変化させていたが、
図3に示される調色制御方法では、第1の発光素子11及び第2の発光素子12のうち第2の発光素子12を発光させずに第2の発光素子12の光出力を停止させた状態で第1の発光素子11のみを発光させ、第1の発光素子11が発する第1の光Lb1の主波長のみを変化させることで光源光Lbの主波長を変化させている。
【0051】
図3に示される調色制御方法では、半導体レーザの主波長が温度に応じて変化することを利用して、光源光Lbの主波長を変化させている。具体的には、半導体レーザは、温度が高くなるほど主波長が長波長側にシフトし、温度が低くなるほど主波長が短波長側にシフトする特性を有する。したがって、本実施の形態における照明装置1では、第1の発光素子11の温度を温度制御素子90によって変化させることで第1の発光素子11から出射する第1の光Lb1の主波長を変化させ、これにより、光源光Lbの主波長を変化させている。
【0052】
第1の発光素子11の温度は、例えば、第1の発光素子11が取り付けられたヒートシンク30(
図1参照)の温度(Tc)として制御することができる。具体的には、第1の発光素子11の温度(Tc)は、ヒートシンク30に接続された温度制御素子90によって変化させることができる。温度制御素子90は、例えばペルチェ素子であり、例えば、制御部(不図示)によって制御することができる。温度制御素子90としてペルチェ素子を用いることで、ヒートシンク30を介して第1の発光素子11を温度制御素子90によって冷却することができる。
【0053】
例えば、
図3の(a)に示すように、第1の発光素子11の温度を低温度(Tc=20℃)にした場合、半導体レーザである第1の発光素子11は温度が低くなるほど発光波長が短波長側にシフトするので、第1の発光素子11が発する青色レーザ光である第1の光Lb1の主波長は、波長λ1であり、短くなる。
図3の(a)では第1の光Lb1と光源光Lbとが同じであるので、光源光Lbの主波長も短くなる。この場合、蛍光体21に入射する励起光の波長が短くなるので蛍光体21の発光効率が低くなり、蛍光体21で生成される黄色の蛍光Lyの光強度が小さくなる。この結果、青色レーザ光である第1の光Lb1と黄色の蛍光Lyとの合成光である白色の照明光Lwの色温度は高くなる。
【0054】
一方、
図3の(b)に示すように、第1の発光素子11の温度を中温度(Tc=40℃)とした場合、半導体レーザである第1の発光素子11は温度が高くなるほど発光波長が長波長側にシフトするので、第1の発光素子11が発する青色レーザ光である第1の光Lb1の主波長は、波長λ1+αとなって長くなる。
図3の(b)では第1の光Lb1と光源光Lbとが同じであるので、光源光Lbの主波長も長くなる。この場合、蛍光体21に入射する励起光の波長が長くなるので蛍光体21の発光効率が高くなり、蛍光体21で生成される黄色の蛍光Lyの光強度が大きくなる。この結果、青色レーザ光である第1の光Lb1と黄色の蛍光Lyとの合成光である白色の照明光Lwの色温度は低くなる。
【0055】
また、
図3の(c)に示すように、第1の発光素子11の温度を高温度(Tc=60℃)にした場合、第1の発光素子11の発光波長は
図3の(b)の場合よりも長波長側にシフトするので、第1の発光素子11が発する青色レーザ光である第1の光Lb1の主波長は、波長λ1+βとなって、波長λ1+αよりもさらに長くなる。
図3の(c)では第1の光Lb1と光源光Lbとが同じであるので、光源光Lbの主波長もさらに長くなる。この場合、蛍光体21に入射する励起光の波長がさらに長くなって蛍光体21の発光効率がさらに高くなり、蛍光体21で生成される黄色の蛍光Lyの光強度がさらに大きくなる。この結果、青色レーザ光である第1の光Lb1と黄色の蛍光Lyとの合成光である白色の照明光Lwの色温度はさらに低くなる。
【0056】
なお、
図3では、第2の発光素子12の光出力を停止させた状態で、第1の発光素子11の温度を制御して光源光Lbの主波長を変化させたが、これに限らない。具体的には、
図4に示すように、第1の発光素子11の光出力を停止させた状態で、第2の発光素子12の温度を制御して光源光Lbの主波長を変化させてもよい。つまり、第1の発光素子11及び第2の発光素子12のうちの他方の光出力を停止した状態において、第1の発光素子11及び第2の発光素子12のうちの一方の温度を温度制御素子90によって変化させることで光源光Lbの主波長を変化させてもよい。
【0057】
図4は、実施の形態に係る照明装置1を用いたさらに別の調色制御方法を説明するための図である。
図4において、温度制御素子90は、第2の発光素子12の温度を制御している。以下、
図4に示される調色制御方法を説明する。
【0058】
まず、
図4の(a)に示すように、第2の発光素子12の温度を低温度(Tc=20℃)にした場合、半導体レーザである第2の発光素子12は温度が低くなるほど発光波長が短波長側にシフトするので、第2の発光素子12が発する青色レーザ光である第2の光Lb2の主波長は、波長λ2であり、短くなる。
図4の(a)では第2の光Lb2と光源光Lbとが同じであるので、光源光Lbの主波長も短くなる。この場合、蛍光体21に入射する励起光の波長が短くなるので蛍光体21の発光効率が低くなり、蛍光体21で生成される黄色の蛍光Lyの光強度が小さくなる。この結果、青色レーザ光である第2の光Lb2と黄色の蛍光Lyとの合成光である白色の照明光Lwの色温度は高くなる。
【0059】
一方、
図4の(b)に示すように、第2の発光素子12の温度を中温度(Tc=40℃)とした場合、半導体レーザである第2の発光素子12は温度が高くなるほど発光波長が長波長側にシフトするので、第2の発光素子12が発する青色レーザ光である第2の光Lb2の主波長は、波長λ2+αとなって長くなる。
図4の(b)では第2の光Lb2と光源光Lbとが同じであるので、光源光Lbの主波長も長くなる。この場合、蛍光体21に入射する励起光の波長が長くなるので蛍光体21の発光効率が高くなり、蛍光体21で生成される黄色の蛍光Lyの光強度が大きくなる。この結果、青色レーザ光である第2の光Lb2と黄色の蛍光Lyとの合成光である白色の照明光Lwの色温度は低くなる。
【0060】
また、
図4の(c)に示すように、第2の発光素子12の温度を高温度(Tc=60℃)にした場合、第2の発光素子12の発光波長は
図4の(b)の場合よりも長波長側にシフトするので、第2の発光素子12が発する青色レーザ光である第2の光Lb2の主波長は、波長λ2+βとなって、波長λ2+αよりもさらに長くなる。
図4の(c)では第2の光Lb2と光源光Lbとが同じであるので、光源光Lbの主波長もさらに長くなる。この場合、蛍光体21に入射する励起光の波長がさらに長くなって蛍光体21の発光効率がさらに高くなり、蛍光体21で生成される黄色の蛍光Lyの光強度がさらに大きくなる。この結果、青色レーザ光である第2の光Lb2と黄色の蛍光Lyとの合成光である白色の照明光Lwの色温度はさらに低くなる。
【0061】
このように、
図3及び
図4では、温度制御素子90を用いて第1の発光素子11の温度及び第2の発光素子12の温度を制御することで、第1の発光素子11の第1の光Lb1の主波長及び第2の発光素子12の第2の光Lb2の主波長を変化させている。この場合、第1の発光素子11及び第2の発光素子12の温度は、10℃以上変化させるとよい。本実施の形態では、第1の発光素子11及び第2の発光素子12の温度を20℃変化させることで、第1の発光素子11の第1の光Lb1及び第2の発光素子12の第2の光Lbbの主波長を変化させている。
【0062】
図5に、Tc=20℃、40℃、60℃の場合について、第1の発光素子11及び第2の発光素子12の各々の発光スペクトルを示す。
図5において、第1の発光素子11及び第2の発光素子12は、いずれも青色レーザ光を出射する青色半導体レーザである。
【0063】
図5に示すように、第1の発光素子11の第1の光Lb1の主波長及び第2の発光素子12の第2の光Lb2の主波長は、いずれも、温度が高くなるほど長波長側にシフトし、温度が低くなるほど短波長側にシフトしていることが分かる。具体的には、第1の発光素子11の第1の光Lb1の主波長は、温度が変化するにつれて、439.8nm(Tc=20℃)、441.2nm(Tc=40℃)、442.9nm(Tc=60℃)と変化している。また、第2の発光素子12の第2の光Lb2の主波長は、温度が変化するにつれて、454.5nm(Tc=20℃)、455.8nm(Tc=40℃)、457.7nm(Tc=60℃)と変化している。また、
図5に示すように、半導体レーザである第1の発光素子11及び第2の発光素子12は、ピーク波長についても、温度が高くなるほど長波長側にシフトし、温度が低くなるほど短波長側にシフトしていることが分かる。
【0064】
なお、
図3では、第1の発光素子11及び第2の発光素子12のうち第1の発光素子11のみの温度を制御し、
図4では、第1の発光素子11及び第2の発光素子12のうち第2の発光素子12のみの温度を制御したが、これに限らない。具体的には、第1の発光素子11及び第2の発光素子12の両方の温度を制御することで、光源光Lbの主波長を変化させてもよい。この場合、ヒートシンク30を分離して、第1の発光素子11と第2の発光素子12とを別々のヒートシンク30に設けて、各ヒートシンク30の各々に温度制御素子90を設けるとよい。これにより、第1の発光素子11の温度と第2の発光素子12の温度とを各温度制御素子90で個別に制御することができる。
【0065】
次に、照明装置1の変形例について説明する。まず、
図6を用いて変形例1に係る照明装置1Aを説明する。
図6は、変形例1に係る照明装置1Aの構成を示す図である。
【0066】
図6に示すように、本変形例に係る照明装置1Aは、上記の照明装置1における蛍光体21を第1の蛍光体として、さらに、第2の蛍光体である蛍光体23を備えている。具体的には、本変形例に係る照明装置1Aの蛍光体部20Aは、蛍光体21と蛍光体23とを備えている。蛍光体23は、光源部10からの光源光Lbによって励起されて蛍光体23の蛍光Ly(第1の蛍光)とは異なる色の蛍光Lr(第2の蛍光)を発する。具体的には、蛍光体21が発する蛍光Lyは黄色であり、蛍光体23が発する蛍光Lrは赤色である。一例として、赤色の蛍光Lrを発する蛍光体23は、(Sr,Ca)AlSiN
3:Euで表されるSCASNによって構成されたSCASN蛍光体層である。蛍光体23は、例えば、蛍光体21に積層される。
【0067】
本変形例で用いた蛍光体21と蛍光体23の励起スペクトル(吸収特性)及び発光スペクトルを
図7に示す。
図7において、蛍光体21は、YAG蛍光体で構成された黄色蛍光体層であり、蛍光体23は、SCASN蛍光体で構成された赤色蛍光体層である。
図7に示すように、蛍光体21及び蛍光体23は、いずれも青色帯域(波長430nm~480nm)の励起光に対して高い吸収特性を有する。また、蛍光体21の蛍光Lyのピーク波長は、約540nmであり、蛍光体23の蛍光Lrのピーク波長は、約630nmである。
【0068】
このように構成される本変形例に係る照明装置1Aでは、蛍光体部20Aに入射した青色の光源光Lb(Lb1、Lb2)の一部は、励起光として蛍光体21を励起するとともに蛍光体23を励起する。これにより、蛍光体部20Aからは、黄色の蛍光Lyと赤色の蛍光Lrとが放出される。一方、蛍光体部20Aに入射した青色の光源光Lb(Lb1、Lb2)の他の一部は、蛍光体部20Aを透過する。これにより、照明装置1Aの照明光は、青色の光源光Lb(Lb1、Lb2)と黄色の蛍光Lyと赤色の蛍光Lrとを含むことになる。
【0069】
このように、本変形例に係る照明装置1Aでは、照明装置1Aから照射される白色光の照明光Lwに、上記の照明装置1における照明光Lwに対して赤色成分が付加されている。これにより、本変形例に係る照明装置1Aについては、照明光Lwの演色性を高めることができる。
【0070】
なお、本変形例に係る照明装置1Aを用いた調色制御方法については、
図2及び
図3に示される上記の照明装置1を用いた調色制御方法と同様に行うことができる。つまり、本変形例でも、光源部10が発する光源光Lbの主波長を変化させて光源部10の光源光Lbと蛍光体21の蛍光Lyとの光強度比を変化させることで、照明光Lwの色度を変化させている。
【0071】
この場合、本変形例では、蛍光体部20Aが蛍光体21を有するだけではなく蛍光体23も有している。これにより、光源部10が発する光源光Lbの主波長を変化させることで、光源部10の光源光Lbと蛍光体23の蛍光Lrとの光強度比も変化して照明光Lwの色度が変化する。したがって、本変形例に係る照明装置1Aを用いることで、調色範囲を拡大することができる。
【0072】
ここで、上記の照明装置1及び本変形例の照明装置1Aを用いて照明光Lwの調色制御を行ったときの調色範囲について、
図8及び
図9を用いて説明する。
【0073】
図8は、照明装置1を用いて調色制御を行ったときの照明光Lwの色度の変化と照明装置1Aを用いて調色制御を行ったときの照明光Lwの色度の変化とを示すxy色度図である。
図9は、
図8の調色制御を行ったときの条件を示している。具体的には、
図9には、第1の発光素子11が発するレーザ光である第1の光Lb1の光強度(光出力)と、第2の発光素子12が発するレーザ光である第2の光Lb2の光強度(光出力)と、第1の発光素子11及び第2の発光素子12の温度(Tc)と、光源部10が発する光源光Lbの主波長(Lb1とLb2との合成主波長λd)とが示されている。
【0074】
図8の調色制御を行うにあたり、
図1~
図4に示される照明装置1と、その照明装置1に蛍光体23を追加した
図6に示される照明装置1Aとを用いた。具体的には、照明装置1は、青色レーザ光である第1の発光素子11(短波長LD)及び第2の発光素子12(長波長LD)を有する光源部10と、YAG蛍光体で構成された蛍光体21を有する蛍光体部20とを備えている。また、照明装置1Aは、青色レーザ光である第1の発光素子11(短波長LD)及び第2の発光素子12(長波長LD)を有する光源部10と、YAG蛍光体で構成された蛍光体21及びSCASN蛍光体で構成された蛍光体23を有する蛍光体部20Aとを備えている。
【0075】
そして、照明装置1及び1Aの各々について、第2の発光素子12の光出力を停止して第1の発光素子11のみを発光させた場合と、第1の発光素子11の光出力を停止して第2の発光素子12のみを発光させた場合と、第1の発光素子11及び第2の発光素子12の両方を発光させた場合とにおいて、第1の発光素子11及び第2の発光素子12の各々の温度(Tc)を温度制御素子90によって個別に制御して20℃、40℃、60℃にしたときの照明光Lwの色度を求めた。なお、
図9に示すように、蛍光体部20及び蛍光体部20Aに照射する光源部10の光源光Lbの光出力(エネルギー)の総量は、いずれの場合においても一定とした。
【0076】
その結果を
図8に示す。
図8に示すように、いずれの場合も、照明装置1及び1Aから照射される照明光Lwの色度を変更できることが分かる。具体的には、白色光である照明光Lwの色温度を変更することができる。このように、同じ青色のレーザ光を出射する第1の発光素子11及び第2の発光素子12を用いた場合でも、照明装置1及び1Aの調色制御を行うことができる。
【0077】
また、
図8に示すように、短波長のレーザ光を出射する第1の発光素子11の方が、長波長のレーザ光を出射する第2の発光素子12よりも、広い色域になっており、温度制御による調色範囲を広くできることが分かる。
【0078】
また、照明装置1の照明光Lwの色度と照明装置1Aの照明光Lwの色度とを比べて分かるように、赤色の蛍光Lrを発する蛍光体23を付加することで、調色範囲を拡大できることが分かる。
【0079】
特に、本実施例における蛍光体23は、
図7に示すように、蛍光体21に比べて、短波長の励起光に対する吸収の割合が大きい。つまり、蛍光体23から発する蛍光Lrは、励起光の波長が短いほど多くなる。このため、黄色の蛍光Lyを発する蛍光体21と赤色の蛍光Lrを発する蛍光体23とを用いた照明装置1Aについては、励起光である青色レーザ光の波長が短いほど、蛍光体23が発する蛍光Lrの比率が高くなり、赤色の蛍光Lrの割合が多くなる。
【0080】
この結果、
図10に示される発光スペクトルのように、短波長のレーザ光を出射する第1の発光素子11のみを発光させた場合(
図10の点線)は、長波長のレーザ光を出射する第2の発光素子12のみを発光させた場合(
図10の実線)と比べて、波長600nm付近で右肩上がりになっており、赤色波長側の波長成分の割合が大きくなったことが分かる。なお、
図10は、YAG蛍光体で構成された蛍光体21とSCASN蛍光体で構成された蛍光体23とを有する蛍光体部20Aを備える照明装置1Aにおいて、Tc=20℃のときの蛍光体部20Aの発光スペクトルを示している。
【0081】
また、
図10に示すように、YAG蛍光体で構成された蛍光体21とSCASN蛍光体で構成された蛍光体23との2種類の蛍光体を用いることで、蛍光体部20Aから発する蛍光のスペクトルを変えることができることも分かる。なお、
図10に示すように、2種類の蛍光体を用いた場合でも、励起光の波長が高いほど、蛍光体21及び23を合わせたときの発光効率(変換効率)が高くなることも分かる。
【0082】
次に、
図11を用いて変形例2に係る照明装置1Bを説明する。
図11は、変形例2に係る照明装置1Bの構成を示す図である。
【0083】
図11に示すように、本変形例に係る照明装置1Bは、上記の照明装置1における光源部10を主光源部とし、光源部10が発する光源光Lbを主光源光としたときに、さらに、主光源光である光源光Lbの色とは異なる色の副光源光Lcを発する副光源部10Bを備えている。副光源部10Bは、第3の光Lc3を発する第3の発光素子13を有する。第3の発光素子13が発する第3の光Lc3の色は、第1の発光素子11が発する第1の光Lb1及び第2の発光素子12が発する第2の光Lb2の色とは、異なる。
【0084】
本変形例において、第3の発光素子13は、赤色レーザ光を発する赤色半導体レーザである。また、本変形例において、副光源部10Bは、第3の発光素子13のみによって構成されている。したがって、副光源部10Bが発する副光源光Lcは、第3の発光素子13が発する第3の光Lc3と同じである(Lc=Lc3)。なお、副光源部10Bは、第3の発光素子13以外の発光素子を有していてもよい。
【0085】
本変形例において、照明装置1Bの照明光は、青色の光源光Lb(Lb1、Lb2)と黄色の蛍光Lyと赤色の第3の光Lc3とを含むことになる。
【0086】
このように、本変形例に係る照明装置1Bでは、照明装置1Bから照射される白色光の照明光Lwに、上記の照明装置1における照明光Lwに対して赤色成分が付加されている。これにより、本変形例に係る照明装置1Bについては、照明光Lwの演色性を高めることができる。
【0087】
なお、本変形例に係る照明装置1Bを用いた調色制御方法については、
図2及び
図3に示される上記の照明装置1を用いた調色制御方法と同様に行うことができる。つまり、本変形例でも、光源部10(主光源部)が発する光源光Lbの主波長を変化させて光源部10の光源光Lbと蛍光体21の蛍光Lyとの光強度比を変化させることで、照明光Lwの色度を変化させている。
【0088】
この場合、本変形例では、照明装置1Bの照明光Lwには、青色の光源光Lb(Lb1+Lb2)と黄色の蛍光Lyとに加えて、赤色の第3の光Lc3が含まれている。これにより、本変形例に係る照明装置1Bを用いることで、調色範囲を拡大することができる。
【0089】
以上説明したように、本実施の形態に係る照明装置1、1A及び1Bは、第1の光Lb1を発する第1の発光素子11と、第1の光Lb1と同じ色域であり且つ第1の光Lb1とは主波長が異なる第2の光Lb2を発する第2の発光素子12と、蛍光Lyを発する蛍光体21とを備えており、光源部10が発する光源光Lbの主波長を変化させて光源光Lbと蛍光Lyとの光強度比を変化させることで照明光Lwの色度を変化させている。
【0090】
これにより、本実施の形態に係る照明装置1、1A及び1Bによれば、同じ色域の光を発する複数の発光素子を用いながらも、照明光Lwの色度を変更することができる。したがって、調光制御だけではなく調色制御をすることができる照明装置を簡易な構成で実現することができる。
【0091】
(変形例)
以上、本発明に係る照明装置について、実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではない。
【0092】
例えば、上記実施の形態において、光源部10が発する光源光Lbを青色光とし、蛍光体部20及び20Aに入射させる励起光を青色光としたが、これに限らない。具体的には、蛍光体部20及び20Aに入射させる励起光は、青色光よりも短波長となる紫外光であってもよい。この場合、光源部10を構成する第1の発光素子11及び第2の発光素子12としては、紫外光のレーザ光を出射する半導体レーザを用いることができる。また、この場合であっても、第1の発光素子11及び第2の発光素子12は、同じ色域の紫外光を発する。なお、波長範囲が少なくとも40nm以内であれば、同じ色域であるといえる。
【0093】
また、上記実施の形態において、照明装置1、1A及び1Bは、プロジェクタ、投光器、内視鏡、車載ヘッドランプ又は照明器具等の様々な製品に用いることができる。
【0094】
なお、その他に、上記実施の形態に対して当業者が思い付く各種変形を施して得られる形態や、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で実施の形態における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本開示に含まれる。また、本願出願時の特許請求の範囲に記載された複数の請求項の中から技術的に矛盾しない範囲で2つ以上の請求項を任意に組み合わせたものも本開示に含まれる。例えば、本願出願時の特許請求の範囲に記載された引用形式請求項を、技術的に矛盾しない範囲で上位請求項の全てを引用するようにマルチクレーム又はマルチマルチクレームとしたときに、そのマルチクレーム又はマルチマルチクレームに含まれる全ての請求項の組み合わせも本開示に含まれる。
【符号の説明】
【0095】
1、1A、1B 照明装置
10 光源部(主光源部)
10B 副光源部
11 第1の発光素子
12 第2の発光素子
13 第3の発光素子
20、20A 蛍光体部
21、23 蛍光体
90 温度制御素子
Lw 照明光
Lb 光源光(主光源光)
Lc 副光源光
Lb1 第1の光
Lb2 第2の光
Lc3 第3の光
Ly、Lr 蛍光