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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170762
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】無線通信装置及び無線通信方法
(51)【国際特許分類】
   H04B 7/08 20060101AFI20241204BHJP
   H04B 1/40 20150101ALI20241204BHJP
   H04B 7/06 20060101ALI20241204BHJP
【FI】
H04B7/08 982
H04B1/40
H04B7/06 982
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087464
(22)【出願日】2023-05-29
(71)【出願人】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】望月 拓志
【テーマコード(参考)】
5K011
【Fターム(参考)】
5K011BA02
5K011BA04
5K011DA02
5K011DA12
5K011DA21
5K011DA27
5K011JA01
(57)【要約】
【課題】他の無線通信装置からの遅延放射信号の到着にかかわらず、アップリンクキャリブレーション(UL CAL)動作を実行すること。
【解決手段】無線通信装置100Aは、m個の送信機(TX)311-1~311-m、m個の受信機(RX)312-1~312-m、キャリブレーション用送受信機(CAL-TRX)51、CAL-TRX51からm個のRX312-nの各々にUL CAL信号を送信するUL CAL動作を制御する制御部22を備えている。無線通信装置100Aは、TDD動作を行う。制御部22は、m個のTX311-nの各々がダウンリンク(DL)信号を送信するダウンリンクスロット(DL Slot)の前の所定の時間期間において、UL CAL動作を実行するよう制御する。
【選択図】図16
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信装置であって、
複数の送信機と、
複数の受信機と、
キャリブレーション用送受信機と、
前記キャリブレーション用送受信機から前記複数の受信機の各々にアップリンクキャリブレーション信号を送信するアップリンクキャリブレーション動作を制御する制御部と、を備え、
前記無線通信装置は、TDD(Time Division Duplex)動作を行い、
前記制御部は、前記複数の送信機の各々がダウンリンク信号を送信するダウンリンクスロットの前の所定の時間期間において、前記アップリンクキャリブレーション動作を実行するよう制御する、
無線通信装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記複数の送信機の各々から前記キャリブレーション用送受信機にダウンリンクキャリブレーション信号を送信するダウンリンクキャリブレーション動作を制御し、
前記制御部は、前記ダウンリンクスロットの前の前記所定の時間期間において、前記ダウンリンクキャリブレーション動作を実行するよう制御する、
請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記ダウンリンクスロットの前の前記所定の時間期間において、前記アップリンクキャリブレーション動作を実行し、その後に、前記ダウンリンクキャリブレーション動作を実行するよう制御する、
請求項2に記載の無線通信装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記ダウンリンクスロットの前の前記所定の時間期間において、各フレーム毎に前記ダウンリンクキャリブレーション動作又は前記アップリンクキャリブレーション動作を順次シーケンシャルに実行するよう制御する、
請求項2に記載の無線通信装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記ダウンリンクスロットの前の前記所定の時間期間においては各フレーム毎に前記アップリンクキャリブレーション動作のみを実行し、前記ダウンリンクキャリブレーション動作は前記ダウンリンクスロットの後の第2の所定の時間期間において実行するよう制御する、
請求項2に記載の無線通信装置。
【請求項6】
前記ダウンリンクスロットの前の前記所定の時間期間は、前記複数の送信機の各々をOffからOnに切り替えるための期間の時間幅以内に設定される、
請求項1から5のいずれか1項に記載の無線通信装置。
【請求項7】
前記ダウンリンクスロットの前の前記所定の時間期間は、アップリンク/ダウンリンクフレームタイミングの時間幅以内に設定される、
請求項1から5のいずれか1項に記載の無線通信装置。
【請求項8】
無線通信装置により実行される無線通信方法であって、
前記無線通信装置は、
複数の送信機と、
複数の受信機と、
キャリブレーション用送受信機と、を備え、
TDD(Time Division Duplex)動作を行い、
前記無線通信方法は、前記キャリブレーション用送受信機から前記複数の受信機の各々にアップリンクキャリブレーション信号を送信するアップリンクキャリブレーション動作を制御する制御ステップを含み、
前記制御ステップでは、前記複数の送信機の各々がダウンリンク信号を送信するダウンリンクスロットの前の所定の時間期間において、前記アップリンクキャリブレーション動作を実行するよう制御する、
無線通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、無線通信装置及び無線通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
第5世代(5G:5 Generation)移動通信では、移動通信に適した広域伝搬及び伝送が可能となる6GHz以下(Sub6GHz帯)での運用が注目されている。また、トラヒックは、年率1.3倍で伸長し続けており、そのようなトラヒック需要に応える必要もある。しかし、Sub6GHz以下での周波数帯域幅を確保することが容易では無いという周波数事情がある。こうした背景を鑑みた場合、フルデジタルビームフォーミング方式を採用したアクティブアンテナシステム(AAS:Active Antenna System)を基地局として用い、AASによる空間多重及びMassive MIMO(Multi Input Multi Output)を適用することが有効と考えられている。そのため、国内外でのAASの商用化が推進中である。また、2030年に導入が見込まれているBeyond5G/6Gを下支えする5G Systemを実現するためには、AASを面的に展開していくことが益々必要となる。
【0003】
これに伴い、今後、AASの空間多重性能が更に重要視される。AASでは、高出力時のDL(DownLink)信号のSINR(Signal-to-Interference-plus-Noise Ratio)の劣化は、希望端末への希望波信号と同一方向に放射される非線形歪信号の放射によって決定づけられる。そのため、AASでは、上記の非線形歪の放射を改善するため、AAS内の全送信機から送信されるDL信号に対し、DPD(Digital Pre-distortion)による歪補償を行う機能を搭載している。このように、AASでは、非線形歪の改善とフルデジタルビームフォーミングとを併せて実施することで、高出力域での空間多重性能を大幅に改善している。
【0004】
また、AASでは、希望端末以外の他端末方向へのNull深さ(空間直交性の実現)を維持及び確保するために、AAS内の複数の送信機間の振幅位相特性を合致させるDL CAL(Calibration)動作及びAAS内の複数の受信機間の振幅位相特性を合致させるUL(Uplink) CAL動作が行われる。具体的には、DL CAL動作では、複数の送信機間の振幅位相特性のばらつきを補償するためのDLキャリブレーションウェイト(DL CAL Weight)を計算し、UL CAL動作では、複数の受信機間の振幅位相特性のばらつきを補償するためのULキャリブレーションウェイト(UL CAL Weight)を計算する。
【0005】
AASでは、DPDによるDL信号のSINRの改善後、及び、低出力設定時においては、DL/UL CAL精度による影響がDL信号のSINRの決定に支配的となる。そのため、DL/UL CALとDPDとの二重補償をAASに実装することで、AASにおいて、DL信号の高いSINRを実現し、かつ、高いCell Throughputで大伝送容量化を実現することが重要となる。
【0006】
以下、関連技術に係るAAS900の構成と、関連技術に係るAAS900におけるDPD動作及びDL/UL CAL動作と、について説明する。
まず、図1を参照して、関連技術に係るAAS900の回路構成例について説明する。なお、図1では、AAS900が基地局として用いられることを想定している。また、図1では、AAS900が後述する32本のアンテナ41-1~41-32を備えるものとして説明するが、AAS900が備えるアンテナの本数は、これに限定されず、複数本であれば良い。
【0007】
図1に示されるように、関連技術に係るAAS900は、光トランシーバ10、ベースバンド(BB:Baseband)部20、フロントエンド(FE:Frontend)部30、32本のアンテナ41-1~41-32、キャリブレーション用送受信機(CAL-TRX)51、スイッチ(SW:Switch)52、及び、キャリブレーションネットワーク(CAL Network)60を備えている。
【0008】
また、BB部20は、32本のアンテナ41-1~41-32のそれぞれに対応して、32個のDPD部21-1~21-32を備えている。また、FE部30は、32本のアンテナ41-1~41-32のそれぞれに対応して、32個の送受信機(TRX)31-1~31-32、32個の送信アンプ32-1~32-32、32個の受信アンプ33-1~33-32、32個のカプラ34-1~34-32、32個のSW35-1~35-32、及び、32個のバンドパスフィルタ(BPF:Band-pass filter)36-1~36-32を備えている。
【0009】
なお、以下では、どのアンテナ41-1~41-32であるか特定しない場合はアンテナ41-n(n=1,・・・,32)と適宜称する。同様に、DPD部21-1~21-32、TRX31-1~31-32、送信アンプ32-1~32-32、受信アンプ33-1~33-32、カプラ34-1~34-32、SW35-1~35-32、及び、BPF36-1~36-32は、それぞれ、DPD部21-n、TRX31-n、送信アンプ32-n、受信アンプ33-n、カプラ34-n、SW35-n、及び、BPF36-nと適宜称する。
【0010】
光トランシーバ10は、分配ユニット(DU:Distributed Unit)200とBB部20との間で送受信される信号の光電変換及びその逆の変換を行う。
【0011】
BB部20は、DL CAL動作を実行する場合は、FE部30内の各TRX31-nにDL CAL信号を出力する。また、BB部20は、UL CAL動作を実行する場合は、CAL-TRX51にUL CAL信号を出力する。
【0012】
また、BB部20は、DL動作を実行する場合は、光トランシーバ10から出力されたDL信号(例えば、BF(Beam Forming)信号)を、FE部30内の各TRX31-nに出力する。また、BB部20は、UL動作を実行する場合は、FE部30内の各TRX31-nから出力されたUL信号を、光トランシーバ10に出力する。
【0013】
また、BB部20は、上述したように、32個のDPD部21-nを備えている。DPD部21-nは、送信アンプ32-nを通過した信号が、カプラ34-nからフィードバックされる。DPD部21-nは、フィードバックされた信号を用いて、送信アンプ32-nを通過する信号(DL信号又はDL CAL信号)に対して、DPDによる歪補償を行う。
【0014】
FE部30は、上述したように、32個のTRX31-n、32個の送信アンプ32-n、32個の受信アンプ33-n、32個のカプラ34-n、32個のSW35-n、及び、32個のBPF36-nを備えている。
【0015】
TRX31-nは、不図示の送信機(TX)及びび受信機(RX)を備えている。以下、TRX31-n内のTXをTX311-nと称し、TRX31-n内のRXをRX312-nと称する。TX311-nは、BB部20から出力された信号(DL信号又はDL CAL信号)を、IQ(In-phase and Quadrature)信号からRF(Radio Frequency)信号に変換して、送信アンプ32-nに出力する。また、RX312-nは、受信アンプ33-nから出力された信号(UL信号又はUL CAL信号)を、RF信号からIQ信号に変換して、BB部20に出力する。
【0016】
送信アンプ32-nは、TRX31-n内のTX311-nから出力された信号(DL信号又はDL CAL信号)を増幅して、SW35-nに出力する。
カプラ34-nは、送信アンプ32-nを通過した信号を、TRX31-n内のRX312-nを介して、BB部20内のDPD部21-nにフィードバックする。
受信アンプ33-nは、SW35-nから出力された信号(UL信号又はUL CAL信号)を増幅して、TRX31-n内のRX312-nに出力する。
【0017】
SW35-nは、TRX31-nと、アンテナ41-n及びCAL Network60と、の間の接続を切り替えるスイッチである。SW35-nは、DL CAL動作を実行する場合は、送信アンプ32-nから出力されたDL CAL信号を、CAL Network60に出力する。また、SW35-nは、UL CAL動作を実行する場合は、CAL Network60から出力されたUL CAL信号を、受信アンプ33-nに出力する。また、SW35-nは、DL動作を実行する場合は、送信アンプ32-nから出力されたDL信号を、アンテナ41-nに出力する。また、SW35-nは、UL動作を実行する場合は、アンテナ41-nから出力されたUL信号を、受信アンプ33-nに出力する。
【0018】
BPF36-nは、TRX31-nと、アンテナ41-n及びCAL Network60と、の間で送受信される信号のうち所定の周波数帯域の信号のみを通過させる。
【0019】
CAL Network60は、DL CAL動作を実行する場合は、各SW35-nから出力されたDL CAL信号を合成して、SW52に出力する。また、CAL Network60は、UL CAL動作を実行する場合は、SW52から出力されたUL CAL信号を分配して、各SW35-nに出力する。
【0020】
SW52は、CAL-TRX51とCAL Network60との間の接続を切り替えるスイッチである。SW52は、DL CAL動作を実行する場合は、CAL Network60から出力されたDL CAL信号をCAL-TRX51に出力する。また、SW52は、UL CAL動作を実行する場合は、CAL-TRX51から出力されたUL CAL信号をCAL Network60に出力する。
【0021】
CAL-TRX51は、不図示のキャリブレーション用送信機(CAL-TX)及びキャリブレーション用受信機(CAL-RX)を備えている。以下、CAL-TRX51内のCAL-TXをCAL-TX511と称し、CAL-TRX51内のCAL-RXをCAL-RX512と称する。CAL-RX512は、DL CAL動作を実行する場合は、SW52から出力されたDL CAL信号を、RF信号からIQ信号に変換して、BB部20に送出する。また、CAL-TX511は、UL CAL動作を実行する場合は、BB部20から出力されたUL CAL信号を、IQ信号からRF信号に変換して、SW52に出力する。
【0022】
BB部20は、DL CAL動作を実行する場合は、CAL-RX512から出力されたDL CAL信号に基づいて、各TX311-nのDL CAL Weightを計算する。また、BB部20は、UL CAL動作を実行する場合は、各RX312-nから出力されたUL CAL信号に基づいて、各RX312-nのUL CAL Weightを計算する。
【0023】
アンテナ41-nは、DL動作を実行する場合は、SW35-nから出力されたDL信号を、不図示のUE(User Equipment)に送信する。また、アンテナ41は、UL動作を実行する場合は、UL信号を、UEから受信し、SW35-nに出力する。
【0024】
以下、関連技術に係るAAS900の概略動作について説明する。
まず、図2を参照して、関連技術に係るAAS900のDL CAL動作及びDPD動作の動作例について説明する。
図2に示されるように、BB部20は、各TRX31-n内の各TX311-nにDL CAL信号を出力する。各TX311-nは、DL CAL信号を、IQ信号からRF信号に変換し、出力する。各TX311-nから出力されたDL CAL信号は、各送信アンプ32-nにて増幅された後、CAL Network60に出力される。このとき、各カプラ34-nは、送信アンプ32-nを通過したDL CAL信号を、BB部20内のDPD部21-nにフィードバックする。各DPD部21-nは、フィードバックされた信号を用いて、以降に送信アンプ32-nを通過するDL CAL信号に対して、DPDによる歪補償を行う。また、CAL Network60に出力されるDL CAL信号としては、複数のTX311-nのそれぞれから出力するDL CAL信号を全て周波数多重配置とする。これにより、各TX311-nから出力されるDL CAL信号はCAL Network60内で合成されても、周波数的にOverlapしない様に、OFDMからなるDL CAL信号を構成する各Sub Carrierの周波数配置が、各TX311-nで重ならない様に予め決定しておく。これにより、1回のDL CAL期間で全TX311-nからのDL CAL信号をCAL-RX512に送出する場合が第一のDL CAL信号配置・送出方法となる。他の送出方法としては、各Frame毎にDL CAL信号の送受信を、1つのTX311-nづつ行う場合である。すなわち、各TX311-nから順次周波数的にOverlapがあるDL CAL信号、もしくは、周波数配置が完全に共通なDL CAL信号を、DL CAL対象のTX311-nを切り替えながら順次時分割多重して送受させる場合が第二のDL CAL信号配置・送出方法となる。従い、この後者の第二のDL CAL信号配置・送出方法の場合は、CAL Network60を通過するDL CAL信号は1つのTX311-n分のみとなる為、TX311-nの数分だけDL CAL送受信を繰り返す事となる。但し、上記の2種いずれのDL CAL信号配置・送出方法にしても、各TX311-nからCAL Network60を通過した上で、SW52を介して、CAL-TRX51内のCAL-RX512に伝送される。CAL-RX512は、CAL Network60から伝送されたDL CAL信号を、RF信号からIQ信号に変換して、BB部20に出力する。
【0025】
上記の前者の第一のDL CAL信号配置・送出方法の場合は、各TX311-n間のDL CAL信号同士が無相関・直交した周波数配置で多重される周波数多重方法となる。この場合は、各TRX31-n内の各TX311-nから出力されたDL CAL信号は、CAL Network60を通過した後は、CAL-RX512では、周波数多重された上で合成された状態となっている。そのため、本第一のDL CAL信号配置・送出方法の事例のように、DL CAL信号周波数多重を行って、一括して同時にCAL-RX512で受信を行う場合は、BB部20は、CAL-RX512から出力されたDL CAL信号を再度各TX311-n毎のDL CAL信号に分離し抽出した上で、DL CAL Weightを計算する。しかし、上記の第二のDL CAL信号配置・送出方法の事例では、、各Frame毎にDL CAL信号の送受信を、1TX311-nづつ行う。すなわち、各TX311-nから順次周波数的にOverlapがあるDL CAL信号、もしくは、周波数配置が完全に共通なDL CAL信号を、DL CAL対象のTX311-nを切り替えながら順次時分割多重して、複数回、CAL-RX512で受信を行う。本第二のDL CAL信号配置・送出方法の場合は、各TX311-n毎に、各TX311-nから出力され、CAL Network60を通過したDL CAL信号を個別に、時間的には順次複数回DL CAL Weightを計算する。
【0026】
ここで、TX311-nのDL CAL Weightは、以下の数式1で表されるように、TX311-nの振幅位相特性[TX#n]と、CAL-RX512の振幅位相特性[CAL-RX]と、が乗算されたものになる。
【数1】
【0027】
続いて、図3を参照して、関連技術に係るAAS900のDL動作及びDPD動作の動作例について説明する。
図3に示されるように、BB部20には、DU200から送信されたBF信号が、光トランシーバ10を介して入力される。BB部20は、各TRX31内の各TX311-nのDL CAL Weightを用いて、BF信号を補正する。具体的には、BB部20は、DL CAL Weightを分母に、CAL-RX512の固定の振幅位相特性[CAL-RX(固定)]を分子に持つ分数を、BF信号に乗算する。補正後のBF信号は、以下の数式2のように表される。なお、[CAL-RX(固定)]は、工場内生産時の試験工程の中でAAS個別に測定で求められたものか、設計仕様として定めた固定値としたものが、BB部20に予め格納されている。
【数2】
【0028】
BB部20により補正された補正後のBF信号は、各TX311-nにてIQ信号からRF信号に変換され、各送信アンプ32-nにて増幅された後、FE部30から各アンテナ41-nに出力される。このとき、各カプラ34-nは、送信アンプ32-nを通過したBF信号を、BB部20内のDPD部21-nにフィードバックする。各DPD部21-nは、フィードバックされた信号を用いて、以降に送信アンプ32-nを通過するBF信号に対して、DPDによる歪補償を行う。しかし、AMPの非線形特性に応じて、DPDとDL CALとを共存させる稼働時は、低入出力時の線形性が確保できているAMPの場合は、予めDL CAL信号のレベルをDPD On閾値を設定する。これにより、同閾値を下回るDL CAL信号を含む送信信号を逐次検出しながら、高入出力域の非線形性はDPDで補償し、線形性の良い低入出力域では、各TX311-nの振幅位相周波数特性のばらつきをDL CALで一致させるべく補償をかける事となる。しかし、低入出力域でのAMPの非線形度も高入出力域とは別途異なるAM-AM、AM-PM様相を呈している。そのため、線形性が悪い場合は、DPDによりAMP低入出力~高入出力までの広いDynamic Rangeに亘って線形化を先に行いつつ、DPDによる全入出力域での線形化後に、DL CAL補償を行う順序とする場合もある。
【0029】
ここで、FE部30から各アンテナ41-nに出力されたBF信号は、各TX311-nを通過するため、以下の数式3のように表される。
【数3】
【0030】
また、数式3は、[TX#n]を消去すると、以下の数式4のように表される。
【数4】
数式4において、[CAL-RX(固定)]=[CAL-RX]であれば、BF信号は理想状態になり、理想状態のBF信号が各アンテナ41-nからUEに送信されることになる。
【0031】
続いて、図4を参照して、関連技術に係るAAS900のUL CAL動作の動作例について説明する。
図4に示されるように、BB部20は、CAL-TRX51内のCAL-TX511にUL CAL信号を出力する。CAL-TX511は、UL CAL信号を、IQ信号からRF信号に変換し、出力する。CAL-TX511から出力されたUL CAL信号は、CAL Network60で各RX312-nに向けて分配される。
【0032】
CAL Network60で分配されたUL CAL信号は、各受信アンプ33-nにて増幅された後、各TRX31内の各RX312-nにてRF信号からIQ信号に変換されて、FE部30からBB部20に出力される。
【0033】
BB部20は、各RX312-n毎に、各RX312-nから出力されたUL CAL信号に基づいて、UL CAL Weightを計算する。なお、UL CAL信号については、DL CAL信号とは異なり、CAL Network60で各RX312-nへ分配後は、同一UL CAL信号であっても各RX312-n毎にUL CAL Weight計算が可能である。その為、UL CALについては、各RX312-n共に同一UL CAL信号で1回で全RX312-nのUL CAL Weightをそれぞれ求める事ができる。
【0034】
ここで、RX312-nのUL CAL Weightは、以下の数式5で表されるように、RX312-nの振幅位相特性[RX#n]と、CAL-TX511の振幅位相特性[CAL-TX]と、が乗算されたものになる。
【数5】
【0035】
続いて、図5を参照して、関連技術に係るAAS900のUL動作の動作例について説明する。
図5に示されるように、各アンテナ41-nは、UEから、UL Ch推定波であるUL信号を受信し、出力する。各アンテナ41-nから出力されたUL信号は、各受信アンプ33-nにて増幅された後、各TRX31内の各RX312-nにてRF信号からIQ信号に変換されて、FE部30からBB部20に出力される。FE部30から出力されたUL信号は、各RX312-nを通過するため、以下の数式6のように表される。
【数6】
【0036】
BB部20は、各RX312-nのUL CAL Weightを用いて、UL信号を補正する。具体的には、BB部20は、UL CAL Weightを分母に、CAL-TX511の固定の振幅位相特性[CAL-TX(固定)]を分子に持つ分数を、UL信号に乗算する。補正後のUL信号は、以下の数式7のように表される。なお、[CAL-TX(固定)]は、工場内生産時の試験工程の中でAAS個別に測定で求められたものか、設計仕様として定めた固定値としたものが、BB部20に予め格納されている。
【数7】
【0037】
また、数式7は、[RX#n]を消去すると、以下の数式8のように表される。
【数8】
数式8において、[CAL-TX(固定)]=[CAL-TX]であれば、UL信号は理想状態になり、理想状態のUL信号が、BB部20からDU200に出力されることになる。
【0038】
続いて、図6を参照して、関連技術に係るAAS900がDL CAL動作及びUL CAL動作を実行するタイミングについて説明する。
図6では前提として、関連技術に係るAAS900は、TDD(Time Division Duplex)動作を行うものとする。TDD動作は、UL及びDLで同一周波数を用いて、時間的にDL動作及びUL動作を切り替えて送受信を行う動作である。DL SlotでDL動作が行われ、UL SlotでUL動作が行われる。DL SlotからUL Slotに切り替わる区間にはFlexible Slotが設けられる。Flexible Slotは、DwPTS(Downlink Pilot Time Slot)、GP(Guard Period)、及びUpPTS(Uplink Pilot Time Slot)を含む。DwPTSは、DL動作のためにリザーブされる区間である。UpPTSは、UL動作のためにリザーブされる区間である。GPは、DL動作及びUL動作が行なわれない区間である。
【0039】
また、図6は、AAS900に関して、上から順に、AAS900のDLタイミング、AAS900のTX311-nのOn/Off状況、AAS900のULタイミング、AAS900のRX312-nのOn/Off状況を示している。更に、図6は、AAS900と通信を行うUEに関して、上から順に、UEのDLタイミング、UEの受信機(RX)のOn/Off状況、UEのULタイミング、UEの送信機(TX)のOn/Off状況を示している。
【0040】
図6に示されるように、関連技術に係るAAS900は、DL Slotの後のFlexible Slot内のGPの時間期間で、かつ、TX311-nをOnからOffに切り替えるための時間期間であるTx Off Transient period(5G向け3GPP(登録商標)(3rd Generation Partnership Project)規格では10μsec)の時間期間に、DL CAL動作(すなわち、各TX311-nからCAL-RX512へDL CAL信号を送信する動作)を実行し、その後、UL CAL動作(すなわち、CAL-TX511から各RX312-nへUL CAL信号を送信する動作)を実行する、というDL/UL CAL Sequence仕様でCALを実施していく場合がある。この場合の他、各DL/UL Configurationの繰り返し周期(DL Slot:D、Flexible Slot:F、UL Slot:Uとした場合、一例としてはSub Carrie Spacing=30kHz時、“DDDFU”が2.5msec周期/1Frameで繰り返しTDD運用する場合)のTDD DL/UL Configurationで決まる各Frame(例えば、上記の欧州地域1での2.5msec/5 Slot周期、もしくは、欧州地域2の事例での5msec/10 slot周期)毎に、各TX311-n間のDL CAL信号配置が周波数多重配置としている場合がある。または、各TX311-n毎に順次、共通DL CAL信号もしくは周波数OverlapがあるDL CAL信号を送出している場合がある。これらの場合は共に、Tx Off Transient periodの10μsecの全ての時間帯をDL CAL信号のみを配してDL CALを行うFrameと、UL CAL信号のみを配してUL CALを行うFrameとを(UL CALは前述した様に全RX312-nに向けて完全共通UL CAL信号を一括送受させる)、交互に配置するようにしたCAL仕様とする事例もある。なお、UL CAL動作については、Tx Off Transient periodを超えてGP内まではみ出して、実行する事例もある。但しこの場合は、3GPPで規定したTX Off Power Limit:-83dBm/MHz以下とする必要がある。その為、アンテナ41-n端を通過するUL CAL信号のレベルをかなり落として、UL CALを実施するものの、同アンテナ41-n端を通過するUL CAL信号のレベルは、TX Off Power Limit:-83dBm/MHz以下を遵守する必要がある。この場合は更にUL SINRのSINRが低下する為、所望のUL CAL SINRを確保すべく、平均化処理により、平均化回数=Nとした場合、20Log(N)-10Log(N)=10Log(N)分、UL CAL信号の受信後のSINRを所望値まで改善する事も併せて実施する。
なお、Flexible Slot内のGPの時間期間に、DL CAL動作を実行し、その後、UL CAL動作を実行する技術としては、特許文献1に記載の技術が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0041】
【特許文献1】特開2019-216366号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0042】
上述したように、関連技術に係るAAS900は、DL Slotの後のFlexible Slot内のGPにおけるTx Off Transient periodの時間期間に、DL CAL動作を実行し、その後、UL CAL動作を実行する実施例としていた。以下、この動作の問題点について説明する。
【0043】
例えば、AAS900とは別の周波数帯域でかつAAS900のBPF36-nの通過帯域に内包される周波数帯域でTDD動作を行い、AAS900とは別のOperatorのAASが、遠方(数km離隔)に複数存在したと仮定する。
【0044】
この場合、AAS900には、別のOperatorの複数のAASからの、離隔距離に応じたDL遅延放射信号(数10usec遅れ)が到着する。そのため、このDL遅延放射信号が、AAS900がTx Off Transient periodの時間期間に送受信しているDL CAL信号及びUL CAL信号に干渉する。
【0045】
例えば、図7の上の例では、Operator AのAASが、Tx Off Transient periodの時間期間に、周波数帯域aでDL CAL信号及びUL CAL信号を送受信している。しかし、Operator BのAASの周波数帯域b及びOperator CのAASの周波数帯域cは、周波数帯域aに隣接し、Operator AのAASのRF BPFの通過帯域に内包されている。特にOperator AのAASがOperator BやCとRAN sharingする場合は、RF BPFのパスバンド帯域は全Operator周波数帯域を覆う必要がある。その為、Operator A以外のOperatorからの伝送波を抑圧する事がそもそも出来ないRF BPF仕様となっている。そのため、Operator B,CのAASからのDL遅延放射信号が、Operator AのAASが送受信しているDL CAL信号及びUL CAL信号に時間的に干渉する。
【0046】
また、図7の下の例では、Operator DのAASが、Tx Off Transient periodの時間期間に、周波数帯域でDL CAL信号及びUL CAL信号を送受信している。しかし、Operator EのAASの周波数帯域eは、Operator DのAASのRF BPFの通過帯域に内包されている。そのため、Operator EのAASからのDL遅延放射信号が、Operator DのAASが送受信しているDL CAL信号及びUL CAL信号に時間的に干渉する。
【0047】
ただし、DL CAL信号については、各TX311-nからCAL-RX512へ送信するに際し、TX Off Transient Termの10μsec以内であれば、3GPPおよび現地電波法によるSpurious規格を遵守しさえすれば、送信アンプ32-nにより、運用DL送信波と同等の、最大定格出力レベルまで、レベルを上げられる。このようにして、高レベルかつ高SINR状態で、DL CAL信号を送信する運用とすれば、DL CAL信号は、DL遅延放射信号からの干渉の影響を受けない。
【0048】
一方、UL CAL信号については、CAL-TX511から送信されるが、その際にアンプを介していないため、レベルを上げることができない。また、Tx Off Transient periodを超えてGP内まではみ出して、UL CAL動作を実行する場合は、各TX311-nは、TX Off Power Limit(-83dBm/MHz)以下であることを遵守する必要があるため、アンテナ41-nから不要な放射をしないようにする必要がある。また、CAL-TX511から各RX312-nへ送信され、各受信アンプ33-nの入力端で受信されるUL CAL信号の受信レベルは、UL CALレベルをDL CALレベル同様レベルまで上げられる送信AMPを挿入してしまう事で生じるUL CAL信号の送出波自身のAMPから被る非線形をDPDで改善しなければならない。そのため、UL CAL的には不本意となるAMPとDPDが必要となってしまう事と、DPDで非線形歪を補償したとしても、残存するAM-AM/AM-PM非線形歪がUL CAL精度へ与える悪影響を無視できなくなる。その為、送信AMPとDPDは装備せずに、1:nでCAL Network60内でUL CAL信号の分岐毎に約-3dBのパワー分配でUL CALレベルが減少してしまう。その為、各RX312-nに入力されるUL CAL信号レベルは極めてレベルが低くなってしまう。また、CAL-TX511から各RX312-nへのUL CAL信号の通過経路であるCAL Network60の配線の長さに格差があることによる、各RX312-nへのUL CAL信号レベルのばらつきも生じる。その為、AAS900は、UL CAL動作を繰り返す際の繰り返し回数Nを増やすことにより、所望のUL CAL SINRを確保すべく、平均化処理により、平均化回数=Nとした場合、20Log(N)-10Log(N)=10Log(N)分、UL CAL信号の受信後のSINRを所望値まで改善する事も併せて実施する。
【0049】
また、別のOperatorのAASの周波数帯域がAAS900のBPF36-nの通過帯域に内包される場合、別のOperatorのAASやアンテナ分離型基地局からのDL遅延放射信号も、アンテナ41-n、BPF36-n、及びSW35-nを介して、各受信アンプ33-nの入力端で受信される。このとき、各受信アンプ33-nの入力端において、DL遅延放射信号の受信レベルが、UL CAL信号の受信レベルを上回ることにより、UL CAL信号は、DL遅延放射信号により大きな干渉を受ける可能性がある。このとき、受信アンプ33-nを含む受信系後段回路で、遅延干渉してくるDL遅延放射信号によって受信系飽和が生じる場合がある。受信アンプ33-nを含む受信系後段回路の受信飽和によって受信Clipping歪が発生すると、受信Clipping歪による周波数Spectrum Splash成分が、AAS900がTDD動作で送受信に使用する周波数帯域内に一気に広がり破壊的な干渉を与えてしまう。
【0050】
図8を参照して、DL遅延放射信号に起因して、周波数Spectrum Splashが発生する例について説明する。図8の(a)及び(b)は、受信アンプ33-nの入力端での受信電力の特性を示し、横軸は時間を、縦軸は受信電力の電力レベルを示している。なお本試験時は、現局の屋外環境にて試験的に試験対象AASの送受信動作を、全Slot連続受信のみに設定した。また、この設定で、Frame中の最終DL Slotの最終DL Symbol(“DDDFU“のTDD DL/UL ConfigurationにてDL⇒ULの間に位置するFlexible Slot内のDwPTS:DL 10symbol、GP:2symbol、UpPTS:2symbol)であるSymbol#9(ゼロオリジンのSymbol Numberゆえ最終10番目のDL Symbol)と、続くTX Off Transient period 10μsecを含むGP 2symbolの最初のSymbol#10と、に焦点を当てた。そのため、図8の(a)及び(b)では、同Symbol#9とTX Off Transient period 10μsecを含むSynmbol#10の横軸:時間vs.縦軸:受信レベルを、分かり易くデフォルメすべく、太線四角で囲んだ。
【0051】
矢印Zで示すように、図8の(a)での図7のOperator Aの帯域のUL CAL信号区間に対して、図8の(b)での図7の他Operator Bの帯域からの遅延(自AASとの離隔距離に応じて発生)を伴うDL信号が干渉し、更にAAS受信飽和レベルを越してしまう。これにより、AAS受信飽和が発生し、Hard Clipping歪による周波数拡散を伴うSpectrum Splashが発生する。これにより、図8の(c)と(d)で示した様に、Operator Cの帯域に隣接するOperator Aの帯域のUL CAL信号にSplash干渉が発生し、DL CAL信号のSINRは顕著に劣化してしまう。この劣化により、UL CAL不全による各RX間の振幅位相ばらつきが大きくなってしまう為、CAL Alarmが発出し、規定以上のCAL Alarm数が続いた場合、Beamforming不全となるため、AASが動作停止に至る事態に陥る。
【0052】
また、前述した様に、Symbol#9は、DL⇒UL間のFlexible Slot中のDwPTSの最終DL Slot内の最終のDL Symbolを示しており、Symbol#10は、続くGP内の先頭のSymbolであって、UL CAL動作を実行するTx Off Transient periodを含むSymbolを示している。なお、図8の(a)でも(b)に於いても、、UL CAL信号の受信でUL CAL実施中のTX Off Transient period 10μsec中にて、仮に隣接Operator基地局のDL遅延波が自受信飽和RMSレベルを越しておらず、自受信完全飽和によるHard Clippingによる周波数帯域隣接の離隔Operator基地局のDL遅延波の周波数Spectrum自体のSplash拡散は生じていない場合を想定したとする。その場合でも、UL CAL信号には隣接Operator基地局のDL遅延波レベルによる自受信系非線形状態から被る隣接Operator基地局のDL遅延波のACLR(隣接漏洩電力歪)でSINR劣化が生じている状態となる。そのため、完全飽和でなくともUL CAL受信に非線系歪劣化を与えてしまう観点で要注意となる。なお、図8の(c)は、図8の(a)と(b)の両Operator帯域の時間信号のうち、UL CAL信号が同Symbol先端のTX Off Transient Period 10mμsecで行われる前のSymbol#9をFFT(Fast Fourier Transform)解析して、時間領域を周波数領域に変換したものであり、横軸は周波数を、縦軸は自受信の電力レベルを示している。しかし、図8の(c)では、既に隣接Operator基地局のDL波が、常に自受信飽和RMSレベルを越している。その為、Symbol#9にはUL CAL信号は無いものの、既に自受信は、周波数帯域が隣接する離隔Operator基地局のDL波による完全飽和で、周波数帯域が隣接する離隔Operator基地局のDL波の周波数Spectrumが隣接自受信帯域をおおう様に、広周波数範囲に亘ってSpread干渉してしまっている事が判る。そして続くSymbol#10は、UL CAL信号が存在しUL CAL実施するTX Off Transient period 10μsecを含むGP 2symbol先頭のSymbolである。図8の(d)は図8の(a)と(b)のSymbol#10をFFTしたものである。図8の(d)は、、Symbol#10の先頭部分のTX Off Transient period の10μsecで隣接Operator基地局のDL遅延波により完全飽和レベル以上が続いてしまっている。そのため、図8の(d)の場合、Symbol#10全体での自受信のUL CAL周波数域への周波数帯域が隣接する離隔Operator基地局のDL遅延波による完全飽和での周波数Splash干渉レベルは平均化され、図8の(c)のOperator Aの帯域の干渉レベルより下がっている様には見える。しかし、UL CAL信号が存在するSymbol#10先頭でのTX Off Transient Periodの10μsec内では、図8の(c)の様に、完全に自受信のUL CAL信号の周波数Spectrumが、隣接Operator基地局のDL遅延波による完全飽和での周波数Splash干渉レベルによってマスクされ、SINRがマイナスとなっている事となる。その為、この干渉状況では完全にUL CAL不全となり、UL CAL Alarm発動により、同TRXは停止していく事となる。更に本状況では、自局と隣接Operator基地局は、配置と離隔距離が変わらない事が考えられる為、運用を継続する程、同UL CAL Alarmが連発する事により、当該TRXは更に停止していき、最終的には全TRXが停止に至る最悪状態に向かう事となる。
【0053】
なお、AAS900は、運用中、UL CAL信号を送受信することによって、全てのRX312-nの平均振幅位相からの各RX312-nの振幅位相ずれを把握しており、振幅位相ずれが異常となったRX312-nをUL CAL不全と判断し、UL CAL Alarmを発出する。そのため、UL CAL信号の受信レベル以上の顕著なSplash干渉が発生し、TRX31-nにUL CAL Alarmの発出が連続した場合、AAS900は、そのTRX31-nを動作異常と判定し、停止させてしまう。このように、TRX31-nを次々に停止させてしまうと、AAS900の運用が耐えられなくなり、最終的に、AAS900が動作を停止してしまうという問題が生じる。
【0054】
そこで本開示の目的は、上述した課題を解決し、他の無線通信装置からの遅延放射信号の到着にかかわらず、アップリンクキャリブレーション動作を実行できる無線通信装置及び無線通信方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0055】
一態様による無線通信装置は、
無線通信装置であって、
複数の送信機と、
複数の受信機と、
キャリブレーション用送受信機と、
前記キャリブレーション用送受信機から前記複数の受信機の各々にアップリンクキャリブレーション信号を送信するアップリンクキャリブレーション動作を制御する制御部と、を備え、
前記無線通信装置は、TDD(Time Division Duplex)動作を行い、
前記制御部は、前記複数の送信機の各々がダウンリンク信号を送信するダウンリンクスロットの前の所定の時間期間において、前記アップリンクキャリブレーション動作を実行するよう制御する。
【0056】
一態様による無線通信方法は、
無線通信装置により実行される無線通信方法であって、
前記無線通信装置は、
複数の送信機と、
複数の受信機と、
キャリブレーション用送受信機と、を備え、
TDD(Time Division Duplex)動作を行い、
前記無線通信方法は、前記キャリブレーション用送受信機から前記複数の受信機の各々にアップリンクキャリブレーション信号を送信するアップリンクキャリブレーション動作を制御する制御ステップを含み、
前記制御ステップでは、前記複数の送信機の各々がダウンリンク信号を送信するダウンリンクスロットの前の所定の時間期間において、前記アップリンクキャリブレーション動作を実行するよう制御する。
【発明の効果】
【0057】
上述の態様によれば、他の無線通信装置からの遅延放射信号の到着にかかわらず、アップリンクキャリブレーション動作を実行できる無線通信装置及び無線通信方法を提供できるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
図1】関連技術に係るAASの回路構成例を示す回路図である。
図2】関連技術に係るAASのDL CAL動作及びDPD動作の動作例を説明する図である。
図3】関連技術に係るAASのDL動作及びDPD動作の動作例を説明する図である。
図4】関連技術に係るAASのUL CAL動作の動作例を説明する図である。
図5】関連技術に係るAASのUL動作の動作例を説明する図である。
図6】関連技術に係るAASがDL CAL動作及びUL CAL動作を実行するタイミングの例を説明する図である。
図7】関連技術に係るAASが、別のOperatorのAASからのDL遅延放射信号によって干渉を受ける例を説明する図である。
図8】関連技術に係るAASが、別のOperatorのAASからのDL遅延放射信号に起因して、周波数Spectrum Splashを発生する例を説明する図である。
図9】実施の形態1に係るAASの回路構成例を示す回路図である。
図10】実施の形態1に係るAASがDL CAL動作及びUL CAL動作を実行するタイミングの例を説明する図である。
図11】実施の形態1に係るAASがDL CAL動作及びUL CAL動作を実行するタイミングの例を、関連技術に係るAASがDL CAL動作及びUL CAL動作を実行するタイミングの例と比較して説明する図である。
図12】特許文献1に記載のAASにおいて、DL動作を実行する場合のFE部内の受信系回路の制御方法の例を説明する図である。
図13】特許文献1に記載のAASにおいて、UL CAL動作を実行する場合のFE部内の受信系回路の制御方法の例を説明する図である。
図14】特許文献1に記載のAASにおいて、UL動作を実行する場合のFE部内の受信系回路の制御方法の例を説明する図である。
図15】本実施の形態1に係るAASにおいて、アンテナとBPF間にUL CAL信号/ DL CAL信号の注入点を共用配置する場合の回路構成例を示す回路図である。
図16】実施の形態2に係る無線通信装置の回路構成例を示す回路図である。
図17】本開示に係る無線通信装置の一部の機能を実現するコンピュータのハードウェア構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0059】
以下、図面を参照して本開示の実施の形態について説明する。なお、以下の記載及び図面は、説明の明確化のため、適宜、省略及び簡略化がなされている。また、以下の各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。また、以下で示す具体的な数値等は、本開示の理解を容易とするための例示にすぎず、これに限定されるものではない。
【0060】
<実施の形態1>
まず、図9を参照して、本実施の形態1に係るAAS100の回路構成例について説明する。なお、図9では、AAS100が基地局として用いられることを想定している。また、図9では、AAS100が後述する32本のアンテナ41-1~41-32を備えるものとして説明するが、AAS100が備えるアンテナの本数は、これに限定されず、複数本であれば良い。
【0061】
図9に示されるように、本実施の形態1に係るAAS100は、関連技術に係るAAS900と比較して、構成自体は同様であるが、UL CAL動作を実行するタイミングが異なる。
具体的には、本実施の形態1に係るAAS100は、DL Slotの直前の時間期間に、UL CAL動作及びDL CAL動作を実行するか、又は、UL CAL動作のみを実行する。後者の場合、AAS100は、DL CAL動作については、関連技術に係るAAS900と同様に、DL Slotの後の時間期間(例えば、DL SlotのFlexible Slot内のGPの時間期間)に実行しても良い。
【0062】
続いて、図10を参照して、本実施の形態1に係るAAS100がDL CAL動作及びUL CAL動作を実行するタイミングについて説明する。図10では、DL Slotの直前の時間期間に、UL CAL動作及びDL CAL動作を実行するものとする。また、図10では、AAS100がTDD動作を行う等の前提は、図6のAAS900と同様であるとする。
【0063】
図10に示されるように、本実施の形態1に係るAAS100は、DL Slotの直前の時間期間で、かつ、TX311-nをOffからOnに切り替えるための時間期間であるTx On Transient period(10μsec)の時間期間に、UL CAL動作(すなわち、CAL-TX511から各RX312-nへUL CAL信号を送信する動作)を実行し、その後、DL CAL動作(すなわち、各TX311-nからCAL-RX512へDL CAL信号を送信する動作)を実行する。もしくは、本実施の形態1に係るAAS100は、各Frame毎のTx On Transient period(10μsec)時間内全部を使って、DL CAL(各TX311-nのDL CAL信号を周波数多重配置とする事で一括DL CALもしくは各TX311-n毎に複数回DL CAL実施)もしくはUL CALのみを順次実施していく。又は、本実施の形態1に係るAAS100は、UL CAL動作については、Tx On Transient periodを前倒しで超え、UL/DL Frame Timing(約13μsec又は20μsec)内(UL/DL Frame Timing- Tx On Transient period)まではみ出して、実行する場合も考える。
【0064】
続いて、図11を参照して、本実施の形態1に係るAAS100がDL CAL動作及びUL CAL動作を実行するタイミングについて、関連技術に係るAAS900がDL CAL動作及びUL CAL動作を実行するタイミングと比較して説明する。図11は、DL及びULタイミングの各タイミングにおけるTX311-nのパワーレベルを示している。図11の横軸は時間を示しており、縦軸はパワーレベルを示している。
【0065】
図11に示されるように、関連技術に係るAAS900は、UL CAL動作については、DL Slotの後のFlexible Slot内のGPの時間期間で、かつ、Tx Off Transient periodの時間期間に、実行していた。又は、関連技術に係るAAS900は、UL CAL動作については、Tx Off Transient periodを超えてGP内まで後倒しではみ出して、実行していた。
【0066】
これに対して、本実施の形態1に係るAAS100は、UL CAL動作については、DL Slotの直前の時間期間で、かつ、Tx On Transient periodの時間期間に、実行する。又は、本実施の形態1に係るAAS100は、UL CAL動作については、Tx On Transient periodを超えて、UL/DL Frame Timing内まで前倒しして、実行する。
【0067】
また、関連技術に係るAAS900は、DL CAL動作については、DL Slotの後のFlexible Slot内のGPの時間期間で、かつ、Tx Off Transient periodの時間期間に、実行していた。また、関連技術に係るAAS900は、DL CAL動作については、UL CAL動作を実行する前に、実行していた。
【0068】
これに対して、本実施の形態1に係るAAS100は、DL CAL動作については、DL Slotの直前の時間期間で、かつ、Tx On Transient periodの時間期間に、実行する。また、本実施の形態1に係るAAS100は、DL CAL動作についての第一の事例としては、DL CAL信号としては、複数のTX311-nそれぞれから出力するDL CAL信号を全て周波数多重配置とする。これにより、各TX311-nから出力されるDL CAL信号はCAL Network60内で合成されても、周波数的にOverlapしない様に、OFDMからなるDL CAL信号を構成する各Sub Carrierの周波数配置が、各TXで重ならない様に予め決定しておく。これにより、1回のDL CAL期間で全TX311-nからのDL CAL信号をCAL-RX512に送出する場合が第一のDL CAL信号配置・送出方法となる。他のDL CAL信号配置・送出方法としては、各Frame毎にDL CAL信号の送受を1つTX311-nづつ行う場合である。すなわち、各TX311-nから順次周波数的にOverlapがあるDL CAL信号、もしくは、周波数配置が完全に共通なDL CAL信号を、DL CAL対象のTX311-nを切り替えながら順次時分割多重して送受させる場合が第二のDL CAL信号配置・送出方法となる。
【0069】
または、別実施例として、DL CAL配置は、従来同様DL Slot後方のTx Off Transient period 10μsec内で実施した上で(最大定格出力までDL CAL信号レベル上げられる為、周波数帯域隣接の離隔Operator基地局DL遅延波が生じてもDL CAL信号のSINR的には全く波及は無い為)、UL CALのみDL Slot先頭のTx On Transient period 10μsec内で行ってもよいものとする。
【0070】
このように、本実施の形態1に係るAAS100は、DL Slotの直前の時間期間に、UL CAL動作を実行する。これにより、別のOperatorのAASからのDL遅延放射信号のAAS100への到着時間が遅れたとしても、その到着時間は、UL CAL動作(CAL-TX511から各RX312-nへUL CAL信号を送信する動作)を実行する時間帯よりも後の時間にずれ込むことになる。そのため、UL CAL信号が、別のOperatorのAASからのDL遅延放射信号により干渉を受けることが回避される。そのため、別のOperatorのAASからのDL遅延放射信号の到着にかかわらず、UL CALを実行でき、UL CAL精度を確保できる。
【0071】
続いて、図12図14を参照して、特許文献1に記載のAAS(以下、AAS901と称す)と比較して、有利な効果について、説明する。図12図14は、AAS901におけるFE部内の受信系回路の回路構成を示している。また、図12は、DL動作を実行する場合の受信系回路の制御方法を示し、図13は、UL CAL動作を実行する場合の受信系回路の制御方法を示し、図14は、UL動作を実行する場合の受信系回路の制御方法を示している。
【0072】
図12図14に示されるように、AAS901におけるFE部内の受信系回路は、受信アンプであるLNA(Low Noise Amplifier)301、カプラ302、SW303、及びサーキュレータ304を備えている。
【0073】
図12に示されるように、AAS901は、DL動作を実行する場合は、カプラ302とアンテナ(ANT)との間のSW303を、終端器側に接続した状態で、送信機(TX)からのDL信号をアンテナ(ANT)を介して送信していた。
【0074】
また、図14に示されるように、AAS901は、UL動作を実行する場合は、SW303を、カプラ302側に接続した状態で、アンテナ(ANT)を介してUL信号を受信していた。
【0075】
また、図13に示されるように、AAS901は、UL CAL動作を実行する場合は、DL動作を実行する場合と同様に、SW303を、終端器側に接続していた。これにより、別のOperatorのAASからのDL遅延放射信号の受信レベルを、SW303のIsolationを利用して、約-30dB低下させることができるという効果がある。しかし、UL CAL動作の際、LNA301の入力端がOpenとなる。そのため、キャリブレーション用送受信機(CAL-TRX)からのUL CAL信号の多重反射が発生し、広周波数帯域に亘ってUL CAL信号の振幅位相のRippleが発生し、これに起因して、UL CAL動作後の複数の受信機(RX)間の振幅位相特性を合致させる合致精度が悪化していた。
【0076】
これに対して、本実施の形態1に係るAAS100は、別のOperatorのAASからのDL遅延放射信号によりUL CAL信号が干渉を受けることが回避できる。そのため、AAS100は、FE30部内の受信系回路として、図12図14に示される回路構成を採用した場合も、SW303を、カプラ302側に接続した状態で、UL CAL動作を実行することができる。これにより、LNA301の入力端がOpenではなく、アンテナから外部実空間を見込んだ場合、アンテナ外部環境近傍に、特段著しく遮蔽やBlockingや反射の恐れがある異物が存在し無ければ、アンテナから外部環境を見込んだリターンロスは終端時同様、良好となる事が期待できる。その為、広周波数帯域に亘って、UL CAL動作後の複数の受信機(RX)間の振幅位相特性の合致精度が良化し、UL CAL精度を確保できる。
【0077】
また、本実施の形態1に係るAAS100は、受信アンプ33-nの入力端をアンテナ41-nに直結して、UL CAL動作を実行する場合にも、別のOperatorのAASからのDL遅延放射信号によりUL CAL信号が干渉を受けることが回避できる。そのため、アンテナ41-nとBPF36-n間にUL CAL信号/ DL CAL信号の注入点を共用配置することができる。
【0078】
図15を参照して、本実施の形態1に係るAAS100において、アンテナ41-nとBPF36-n間にUL CAL信号/ DL CAL信号の注入点を共用配置する場合の回路構成例について説明する。図15において、図9に示される光トランシーバ10及びBB部20は図示が省略されている。
【0079】
図15に示されるように、本実施の形態1に係るAAS100は、32個の送受信機-フロントエンド(TRX-Frontend)部30-n、メインボード(Main Board)50、キャリブレーションネットワーク(CAL Network)60-1,60-2、及びアンテナアレイ40-1,40-2を備えている。
【0080】
TRX-Frontend部30-nは、TX311-n、TX311-n、SW35-n、BPF36-n、送信アンプ32-n、受信アンプ33-n、及びカプラ34-nを、1つのユニットにユニット化したものである。ただし、図15において、送信アンプ32-n、受信アンプ33-n、及びカプラ34-nは図示が省略されている。32個のTRX-Frontend部30-nの組み合わせが、図9に示されるFE部30に相当する。
Main Board50は、CAL-TRX51、SW52、及び、ハイブリッド(HYB)53を、1つのユニットにユニット化したものである。
【0081】
CAL Network60-1は、16個のカプラ(CPL)61-1~61-16及びハイブリッドネットワーク(HYB Network)62-1を、1つのユニットにユニット化したものである。また、CAL Network60-2は、16個のカプラ61-17~61-32及びHYB Network62-2を、1つのユニットにユニット化したものである。CAL Network60-1,60-2の組み合わせが、図9に示されるCAL Network60に相当する
【0082】
アンテナアレイ40-1は、16個のアンテナ41-1~41-16を、1つのユニットにユニット化したものである。また、アンテナアレイ40-2は、16個のアンテナ41-17~41-32を、1つのユニットにユニット化したものである。
【0083】
16個のTRX-Frontend部30-1~30-16は、コネクタ70を介してCAL Network60-1に接続される。また、16個のTRX-Frontend部30-17~30-32は、コネクタ70を介してCAL Network60-2に接続される。また、Main Board50は、コネクタ70を介してCAL Network60-1,60-2の各々に接続される。
【0084】
このように、本実施の形態1に係るAAS100は、回路要素をユニット化できるため、回路構成を簡素化できる。また、本実施の形態1に係るAAS100は、ユニット間をコネクタ70を介して接続できるため、ユニット間の接続を簡素化できる。
【0085】
上述したように、本実施の形態1に係るAAS100は、DL Slotの直前の時間期間に、UL CAL動作を実行する。これにより、別のOperatorのAASからのDL遅延放射信号のAAS100への到着時間が遅れたとしても、その到着時間は、UL CAL動作(CAL-TX511から各RX312-nへUL CAL信号を送信する動作)を実行する時間帯よりも後の時間にずれ込むことになる。そのため、UL CAL信号が、別のOperatorのAASからのDL遅延放射信号により干渉を受けることが回避される。そのため、別のOperatorのAASからのDL遅延放射信号の到着にかかわらず、UL CALを実行でき、UL CAL精度を確保できる。
【0086】
<実施の形態2>
本実施の形態2は、上述した実施の形態1を概念的に示した実施の形態に相当する。
まず、図16を参照して、本実施の形態2に係る無線通信装置100Aの回路構成例について説明する。なお、図16では、無線通信装置100Aが基地局として用いられることを想定している。
【0087】
図16に示されるように、本実施の形態2に係る無線通信装置100Aは、制御部22、m(mは2以上の整数)個の送信機(TX)311-1~311-m、m個の受信機(RX)312-1~312-m、及び、キャリブレーション用送受信機(CAL-TRX)51を備えている。
【0088】
なお、以下では、どのTX311-1~311-mであるか特定しない場合はTX311-n(n=1,・・・,m)と適宜称する。同様に、RX312-1~312-mは、RX312-nと適宜称する。
【0089】
制御部22は、上述した実施の形態1のBB部20に相当する。
m個のTX311-n及びm個のRX312-nは、m本のアンテナ(不図示)のそれぞれに対応して、設けられている。
【0090】
制御部22は、CAL-TRX51からm個のRX312-nの各々にアップリンクキャリブレーション(UL CAL)信号を送信する動作であるアップリンクキャリブレーション(UL CAL)動作を制御する。
【0091】
ここで、無線通信装置100Aは、TDD(Time Division Duplex)動作を行う。
また、制御部22は、m個のTX311-nの各々がダウンリンク(DL)信号を送信するダウンリンクスロット(DL Slot)の前の所定の時間期間において、UL CAL動作を実行するよう制御する。
【0092】
これにより、別のOperatorの無線通信装置からのDL遅延放射信号の無線通信装置100Aへの到着時間が遅れたとしても、その到着時間は、UL CAL動作(CAL-TRX51から各RX312-nへUL CAL信号を送信する動作)を実行する時間帯よりも後の時間にずれ込むことになる。そのため、UL CAL信号が、別のOperatorの無線通信装置からのDL遅延放射信号により干渉を受けることが回避される。そのため、別のOperatorの無線通信装置からのDL遅延放射信号の到着にかかわらず、UL CALを実行でき、UL CAL精度を確保できる。
【0093】
なお、制御部22は、m個のTX311-nの各々からCAL-TRX51にダウンリンクキャリブレーション(DL CAL)信号を送信する動作であるダウンリンクキャリブレーション(DL CAL)動作を制御しても良い。
【0094】
また、制御部22は、DL Slotの前の所定の時間期間において、DL CAL動作を実行するよう制御しても良い。このとき、制御部22は、DL Slotの前の所定の時間期間において、UL CAL動作を実行し、その後に、DL CAL動作を実行するよう制御しても良い。
【0095】
又は、制御部22は、DL Slotの前の所定の時間期間において、各Frame毎にDL CAL動作又はUL CAL動作を順次シーケンシャルに実行するよう制御しても良い。
又は、制御部22は、DL Slotの前の所定の時間期間においては各Frame毎にUL CAL動作のみを実行し、DL CAL動作はDL Slotの後の第2の所定の時間期間において実行するよう制御しても良い。
【0096】
また、DL Slotの前の所定の時間期間は、m個のTX311-nの各々をOffからOnに切り替えるための期間(例えば、Tx On Transient period)の時間幅以内に設定されても良い。又は、DL Slotの前の所定の時間期間は、アップリンク/ダウンリンクフレームタイミング(UL/DL Frame Timing)の時間幅以内に設定されても良い。
【0097】
以上、実施の形態を参照して本開示について説明したが、本開示は上述した実施の形態に限定されるものではない。本開示の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【0098】
例えば、本開示に係る無線通信装置(AASを含む)の一部の機能を、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサにプログラムを実行させることにより実現することも可能である。
図17を参照して、本開示に係る無線通信装置の一部の機能を実現するコンピュータ100Bのハードウェア構成例について説明する。
図17に示されるように、コンピュータ100Bは、プロセッサ81及びメモリ82を備えている。
【0099】
プロセッサ81は、例えば、マイクロプロセッサ、CPU又はMPU(Micro Processing Unit)、又はであっても良い。プロセッサ81は、複数のプロセッサを含んでも良い。
【0100】
メモリ82は、揮発性メモリ及び不揮発性メモリの組み合わせによって構成される。メモリ82は、プロセッサ81から離れて配置されたストレージを含んでも良い。この場合、プロセッサ81は、図示されていないI(Input)/O(Output)インタフェースを介してメモリ82にアクセスしても良い。
【0101】
メモリ82には、プログラムが記憶される。このプログラムは、コンピュータ100Bに読み込まれた場合に、上述した実施の形態1又は2に係るAAS100又は無線通信装置100Aの一部の機能をコンピュータ100Bに行わせるための命令群(又はソフトウェアコード)を含む。上述したAAS100又は無線通信装置100Aにおける構成要素は、プロセッサ81がメモリ82に記憶されたプログラムを読み込んで実行することにより実現されても良い。また、上述したAAS100又は無線通信装置100Aにおける記憶機能を備える構成要素は、メモリ82により実現されても良い。
【0102】
また、上述したプログラムは、非一時的なコンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体に格納されても良い。限定ではなく例として、コンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体は、random-access memory(RAM)、read-only memory(ROM)、フラッシュメモリ、solid-state drive(SSD)又はその他のメモリ技術、CD-ROM、digital versatile disc(DVD)、Blu-ray(登録商標)ディスク又はその他の光ディスクストレージ、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスクストレージ又はその他の磁気ストレージデバイスを含む。プログラムは、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体上で送信されても良い。限定ではなく例として、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体は、電気的、光学的、音響的、又はその他の形式の伝搬信号を含む。
【符号の説明】
【0103】
10 光トランシーバ
20 ベースバンド(BB:Baseband)部
21-1~21-32 DPD部
22 制御部
30 フロントエンド(FE:Frontend)部
30-1~30-32 送受信機-フロントエンド(TRX-Frontend)部
31-1~31-32 送受信機(TRX)
311-1~311-m 送信機(TX)
312-1~312-m 受信機(RX)
32-1~32-32 送信アンプ
33-1~33-32 受信アンプ
34-1~34-32 カプラ
35-1~35-32 スイッチ(SW:Switch)
36-1~36-32 バンドパスフィルタ(BPF:Band-pass filter)
40-1,40-2 アンテナアレイ
41-1~41-32 アンテナ
50 メインボード(Main Board)
51 キャリブレーション用送受信機(CAL-TRX)
52 スイッチ(SW:Switch)
53 ハイブリッド(HYB)
60 キャリブレーションネットワーク(CAL Network)
60-1,60-2 キャリブレーションネットワーク(CAL Network)
61-1~61-32 カプラ(CPL)
62-1,62-2 ハイブリッドネットワーク(HYB Network)
70 コネクタ
81 プロセッサ
82 メモリ
100 AAS
100A 無線通信装置
100B コンピュータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図16
図17