(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170767
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】爆薬の装填位置の検出方法、爆薬の装填位置の検出装置、爆薬装填方法、及び、爆薬装填装置
(51)【国際特許分類】
F42D 1/08 20060101AFI20241204BHJP
【FI】
F42D1/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087474
(22)【出願日】2023-05-29
(71)【出願人】
【識別番号】000001317
【氏名又は名称】株式会社熊谷組
(74)【代理人】
【識別番号】100141243
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 靖夫
(72)【発明者】
【氏名】久保田 恭行
(72)【発明者】
【氏名】北原 成郎
(72)【発明者】
【氏名】天下井 哲生
(72)【発明者】
【氏名】尾畑 洋
(72)【発明者】
【氏名】日暮 徹
(72)【発明者】
【氏名】古川 敦
(72)【発明者】
【氏名】畑本 浩伸
(72)【発明者】
【氏名】飛鳥馬 翼
(57)【要約】
【課題】爆薬を装填する装薬孔の位置を検出して、装填機から予め設定された装薬本数の爆薬を確実に送る。
【解決手段】
装填パイプを前記装薬孔に挿入するステップと、撮影手段により切羽を撮影するステップと、撮影された画像から、装填パイプを保持する作業者の姿勢を推定するとともに、作業者の周囲から装填パイプの装薬孔の開口部に交差する位置を検出するステップと、を備え、装填パイプの開口部の位置が検出された場合には、この検出された位置を装填位置とし、装填パイプの開口部の位置が検出されなかった場合には、姿勢推定で推定された作業者の肩及び腰の骨格の中間点を装填位置とするとともに、装薬孔の位置である装填位置と装填位置にある装薬孔に装填する装填本数との関係を示すテーブルを予め作成しておき、前記検出された装填位置と前記テーブルとを用いて、装薬孔に装填する装填本数を設定するようにした。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
切羽に形成された装薬孔に挿入された装填パイプの位置を検出して、爆薬を装填する装薬孔の位置である装填位置を検出する方法であって、
装填パイプを前記装薬孔に挿入するステップと、
撮影手段により前記切羽を撮影するステップと、
前記撮影された画像から、前記装填パイプを保持する作業者の姿勢を推定するとともに、前記作業者の周囲から前記装填パイプの前記装薬孔の開口部に交差する位置を検出するステップと、を備え、
前記交差する位置が検出された場合には、前記検出された位置を前記装填位置とし、
前記交差する位置が検出されなかった場合には、前記姿勢推定で推定された前記作業者の肩及び腰の骨格の中間点を前記装填位置とすることを特徴とする爆薬の装填位置の検出方法。
【請求項2】
前記装填パイプの前記装薬孔の開口部に交差する位置に、画像上で、切羽との識別が可能な識別部材を取付けたことを特徴とする請求項1に記載の爆薬の装填位置の検出方法。
【請求項3】
爆薬供給手段と、前記爆薬供給手段により供給された爆薬を切羽に形成された装薬孔に圧送する圧送手段と、前記爆薬供給手段と前記圧送手段とを制御する制御手段と、前記爆薬を装填する指令信号を前記制御手段に送る装填指示手段と、を備えた爆薬装填装置を用いて、前記装薬孔に爆薬を装填する方法であって、
前記装薬孔の位置である装填位置と前記装填位置にある装薬孔に装填する装填本数との関係を示すテーブルを作成するステップと、
装填パイプを前記装薬孔に挿入するステップと、
撮影手段により前記切羽を撮影するステップと、
前記撮影された画像から、前記爆薬を装填する装薬孔の位置である装填位置を検出するステップと、
前記検出された装填位置と前記テーブルとを用いて、前記装薬孔に装填する装填本数を設定するステップと、
前記装填指示手段により、前記設定された装填本数の爆薬を前記装薬孔に装填する指令信号を前記制御手段に送るステップと、
を備え、
前記装填位置を検出するステップでは、
撮影された画像から、前記装填パイプを保持する作業者の姿勢を推定するとともに、前記作業者の周囲から前記装填パイプの前記装薬孔の開口部に交差する位置を検出し、
前記交差する位置が検出された場合には、前記検出された位置を前記装填位置とし、
前記交差する位置が検出されなかった場合には、前記姿勢推定で推定された前記作業者の肩及び腰の骨格の中間点を前記装填位置とすることを特徴とする爆薬装填方法。
【請求項4】
前記装填パイプの前記装薬孔の開口部に交差する位置に、画像上で、切羽との識別が可能な識別部材を取付けたことを特徴とする請求項3に記載の爆薬装填方法。
【請求項5】
切羽に形成された装薬孔に挿入されている装填パイプの位置を検出して、爆薬を装填する装薬孔の位置である装填位置を検出する装置であって、
前記爆薬を前記装薬孔に挿入するための装填パイプの前記装薬孔の開口部に交差する位置に取付けられた、画像上で、前記切羽との識別が可能な識別部材と、
前記切羽を撮影する撮影手段と、
前記撮影された画像から、前記装填位置を検出する装填位置検出手段と、を備え、
前記装填位置検出手段は、
前記装填パイプを保持する作業者の姿勢を推定するとともに、前記作業者の周囲から前記識別部材の位置を検出し、
前記識別部材の位置が検出された場合には、前記検出された位置を前記装填位置とし、
前記識別部材の位置が検出されなかった場合には、前記姿勢推定で推定された前記作業者の肩及び腰の骨格の中間点を前記装填位置とすることを特徴とする爆薬の装填位置の検出装置。
【請求項6】
爆薬供給手段と、前記爆薬供給手段により供給された爆薬を切羽に形成された装薬孔に圧送する圧送手段と、前記爆薬供給手段と前記圧送手段とを制御する制御手段と、前記爆薬を装填する指令信号を前記制御手段に送る装填指示手段と、を備えた爆薬装填装置を用いて、前記装薬孔に爆薬を装填する装置であって、
前記爆薬を前記装薬孔に挿入するための装填パイプの前記装薬孔の開口部に交差する位置に取付けられた、画像上で、前記切羽との識別が可能な識別部材と、
予め作成された、前記装薬孔の位置である装填位置と前記装填位置にある装薬孔に装填する装填本数との関係を示すテーブルを記憶する記憶手段と、
前記切羽を撮影する撮影手段と、
前記撮影された画像から、前記爆薬を装填する装薬孔の位置である装填位置を検出する装填位置検出手段と、
前記推定された装填位置と前記テーブルとを用いて、前記装薬孔に装填する装填本数を設定するとともに、前記設定された装填本数の爆薬を前記装薬孔に装填する指令信号を前記制御手段に送る装薬本数設定手段と、
を備え、
前記装填位置検出手段は、
撮影された画像から、前記装填パイプを保持する作業者の姿勢を推定するとともに、前記作業者の周囲から前記識別部材の位置を検出し、
前記識別部材の位置が検出された場合には、前記検出された位置を前記装填位置とし、
前記識別部材開口部の位置が検出されなかった場合には、前記姿勢推定で推定された前記作業者の肩及び腰の骨格の中間点を前記装填位置とすることを特徴とする爆薬装填装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、爆薬の装填位置の検出方法とその装置、及び、切羽に形成された装薬孔に爆薬を装填する方法とその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、切羽に形成された装薬孔に爆薬を装填する作業を行う爆薬装填装置が知られている(特許文献1等参照)。
この爆薬装填装置は、爆薬供給装置と、込め物供給装置と、爆薬供給装置により供給された爆薬又は込め物供給装置により供給された込め物を切羽に削孔された装薬孔に圧送する圧送装置とを備えている。
圧送装置は、爆薬供給装置及び込め物供給装置の排出側に設けられた装填機と、装填機の終端に接続された装填ホースと、装填ホースの終端に接続された装填パイプとを備え、作業者の操作するリモートコントローラー等の装填指示装置からの指示に基づいて、装薬孔に爆薬及び込め物を装填する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、装薬孔に装填する爆薬の個数が装薬孔により異なるだけでなく、装薬孔の数も多いため、作業者が装薬孔に装填する爆薬の本数を間違えてしまう場合があった。
そこで、爆薬を装填する装薬孔の位置を予め検出できれば、装薬孔に予め設定した本数の爆薬を確実に装填することが可能となる。
【0005】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたもので、爆薬を装填する装薬孔の位置を検出する方法とその装置、及び、装填機から予め設定された装薬本数の爆薬を確実に送ることのできる爆薬装填とその装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、切羽に形成された装薬孔に挿入された装填パイプの位置を検出して、爆薬を装填する装薬孔の位置である装填位置を検出する方法であって、装填パイプを前記装薬孔に挿入するステップと、撮影手段により前記切羽を撮影するステップと、前記撮影された画像から、前記装填パイプを保持する作業者の姿勢を推定するとともに、前記作業者の周囲から前記装填パイプの前記装薬孔の開口部に交差する位置(切羽面に対して、装薬孔に挿入したパイプの軸線が交差している位置)を検出するステップと、を備え、前記交差する位置が検出された場合には、前記検出された位置を前記装填位置とし、前記交差する位置が検出されなかった場合には、前記姿勢推定で推定された前記作業者の肩及び腰の骨格の中間点を前記装填位置とすることを特徴とする。
これにより、装填位置を精度よく検出できるので、装填機から予め設定された装薬本数の爆薬を確実に送ることが可能となる。
また、前記装填パイプの前記装薬孔の開口部に交差する位置に、画像上で、切羽との識別が可能な識別部材を取付けたので、装填位置をより正確に検出できる。
【0007】
また、本発明は、爆薬供給手段と、前記爆薬供給手段により供給された爆薬を切羽に形成された装薬孔に圧送する圧送手段と、前記爆薬供給手段と前記圧送手段とを制御する制御手段と、前記爆薬を装填する指令信号を前記制御手段に送る装填指示手段と、を備えた爆薬装填装置を用いて、前記装薬孔に爆薬を装填する方法であって、前記装薬孔の位置である装填位置と前記装填位置にある装薬孔に装填する装填本数との関係を示すテーブルを作成するステップと、装填パイプを前記装薬孔に挿入するステップと、撮影手段により前記切羽を撮影するステップと、前記撮影された画像から、前記爆薬を装填する装薬孔の位置である装填位置を検出するステップと、前記検出された装填位置と前記テーブルとを用いて、前記装薬孔に装填する装填本数を設定するステップと、前記装填指示手段により、前記設定された装填本数の爆薬を前記装薬孔に装填する指令信号を前記制御手段に送るステップと、を備え、前記装填位置を検出するステップでは、撮影された画像から、前記装填パイプを保持する作業者の姿勢を推定するとともに、前記作業者の周囲から前記装填パイプの前記装薬孔の開口部に交差する位置を検出し、前記交差する位置が検出された場合には、前記検出された位置を前記装填位置とし、前記交差する位置が検出されなかった場合には、前記姿勢推定で推定された前記作業者の肩及び腰の骨格の中間点を前記装填位置とすることを特徴とする。
これにより、装薬孔に予め設定された装薬本数の爆薬を確実に送ることができる。
【0008】
なお、前記発明の概要は、本発明の必要な全ての特徴を列挙したものではなく、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施の形態に係る爆薬装填装置を示す図である。
【
図4】カメラの設置位置と撮影された画像の一例を示す図である。
【
図5】装填位置の推定方法を示すフローチャートである。
【
図6】爆薬と込め物の装填方法を示すフローチャートである。
【
図7】装填位置の推定方法の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は本実施の形態に係る爆薬装填装置10を示す図である。
爆薬装填装置10は、装填指示装置11と、撮影手段としてのカメラ12aを有する装填位置検出装置12と、装薬本数設定装置13と、爆薬供給装置14と、込め物供給装置15と、圧送装置16と、制御装置17とを備え、トンネル掘削現場1において、切羽2に穿孔された装薬孔3に爆薬及び込め物を装填する。
装填指示装置11は切羽2の手前側にて作業を行う作業者4に装着され、カメラ12aと装填位置検出装置12は、削岩機21、バケットアーム22、バケット23等を備えた建設機械であるドリルジャンボ20に搭載される。また、装薬本数設定装置13~制御装置17までの各装置は、トラック等の車両18の荷台上に搭載される。
作業者4はバケット23に搭乗して作業を行う。
爆薬としては、例えば、エマルジョンタイプの含水爆薬と当該含水爆薬に点火する雷管とを備えた薬包状爆薬(以下、親ダイ5という)と、親ダイ5の爆轟によりする雷管の付いていない含水爆薬から成る複数個の薬包爆薬(以下、増ダイ6という)とがある。
込め物(以下、アンコ7という)は、装薬孔3の孔口を塞ぐためのもので、粘土等で形成される。
親ダイ5は、作業者4が保持する装填パイプ16cの先端に取付けられ、圧送装置16から送られてくる圧送空気により押圧されて、装薬孔3の孔尻に装填される。
増ダイ6は爆薬供給装置14と圧送装置16とによって装薬孔3に圧送されて、装薬孔3に装填されている親ダイ5の後側に装填される。
また、アンコ7は、込め物供給装置15と圧送装置16とによって装薬孔3に圧送されて、増ダイ6の後側である装薬孔3の孔口側に装填される。
【0011】
図2(a)は切羽2に設けられた装薬孔3を示す図で、装薬孔3に装填される爆薬(増ダイ6)の本数は一般に装薬孔3の位置により異なっている。具体的には、切羽2を、同図のR1で示す外周部と、R2で示す払い部と、R3で示す芯抜き部と、R4で示す踏まえ部とに分割し、領域ごとに増ダイ6の装填本数を設定する。
なお、装填本数は、切羽2の岩盤の状態や装薬孔3の数などにより決定されることはいうまでもない。また、切羽2の面の分割方法は、上記の例に限るものではなく、払い部と芯抜き部を同じ領域にするなど3分割してもよいし、払い部を2分割するなど、更に細かく分割してもよい。
また、
図2(b)に示すように、親ダイ5の図示しない雷管同士は導線5kにより直列に連結されて、図外の発破器に接続される。これにより、発破器を操作して親ダイ5の雷管に点火することにより、全ての装薬孔3の親ダイ5を同時に爆発させることができる。また、親ダイ5の爆発に誘発されて増ダイ6も爆発するので、切羽2を効率よく破砕することができる。
【0012】
装填指示装置11は、例えば、リモートコントローラー等により構成されて、装薬本数設定装置13に無線もしくは有線ケーブルにて接続されている。
図3(a)は本発明による装填指示装置11の一例を示す図で、装填指示装置11は、電源スイッチ111と、親ダイ装填ボタン112と、増ダイ装填ボタン113と、アンコ装填ボタン114と、挿入完了ボタン115と、表示手段であるディスプレイ116と、当該装填指示装置11に内蔵された送受信機117に接続されるアンテナ11Aとを備える。
電源スイッチ111は、装填指示装置11に内蔵された電源をON-OFFするスイッチで、ボタンを押すと電源がONになり、ディスプレイ116の液晶画面が点灯する。
親ダイ装填ボタン112は親ダイ5の装填を指示する指示信号を制御装置17に送信するボタン、増ダイ装填ボタン113は増ダイ6の装填を指示する指示信号を制御装置17に送信するボタン、アンコ装填ボタン114はアンコ7の装填を指示する指示信号を制御装置17に送信するボタンである。
挿入完了ボタン115は、作業者4が装填パイプ16cを装薬孔3に挿入したことを装填位置検出装置12に知らせるためのボタンで、挿入完了ボタンが押されると、挿入完了信号が装填位置検出装置12に送信され、装填位置検出装置12は装填パイプ16cが挿入された装薬孔3の位置検出を開始する。なお、装薬孔3には、親ダイ5がすでに装填されているものとする。
ディスプレイ116は、装薬本数設定装置13から送られてきた装填予定の増ダイ6の本数を表示するもので、本例では、
図3(b)に示すように、増ダイ6の本数に対応した個数の○印が表示される。例えば、増ダイ6の本数が4個の場合には、同図の○印p1~p4が表示される。この○印p1~p4は、増ダイ6が装填されるごと、すなわち、増ダイ装填ボタン113が押されるごとに、ディスプレイ116上からp1から順に○印が1個ずつ消滅し、装填予定の増ダイ6が全て装填されると、○印p1~p4は全てディスプレイ116上から消滅する。なお、
図3(b)では、増ダイ6の最大本数が5個(表示可能な○印が5個)である例を示したが、6個以上とすることも可能である。
また、ディスプレイ116上に増ダイ6の本数を表す数字を表示し、増ダイ装填ボタン113が押されるごとに、表示される数字を1ずつ小さくしていってもよい。
【0013】
装填位置検出装置12はカメラ12aと、姿勢推定手段12bと、装填位置検出手段12cとを備え、カメラ12aで撮影した動画から作業者4が装填パイプ16cを挿入した装薬孔3の位置を検出する。
図4(a)に示すように、カメラ12aは、ドリルジャンボ20の本体24に設けられた操作盤25の近くに搭載されて、切羽2、及び、装填パイプ16cを保持した作業者4の動画を撮影する。
図4(b)、(c)は撮影された画像(動画の1フレーム)で、(b)図は作業者4と装填パイプ16cの両方が写っている画像、(c)図は作業者4のみが写っている画像である。
姿勢推定手段12bは、カメラ12aで撮影された動画から作業者4の姿勢を検出する、いわゆる姿勢推定の手法を用いて、作業者4の姿勢を検出するとともに、作業者4の周辺の画像から作業者4の保持している装填パイプ16cを検出する。本例では、
図4(b)に示すように、装填パイプ16cに一定間隔でトラロープのように黄色いテープ16pと黒いテープ16qとを交互に貼っている。黄色いテープ16pのうちの先端側(切羽2側)の黄色いテープ16pは、装填パイプ16cが装薬孔3に挿入されたときに、装薬孔3の開口部である切羽面と当該装填パイプ16cの軸線とが交差する位置に巻かれている。この先端側の黄色いテープ16pが、本発明の識別部材に相当する。識別部材としては、黄色い塗料を塗布またはスプレーしたものであってもよい。
なお、識別部材の色は黄色にかぎるものではなく、切羽2の色とRGB値が異なり、画像上で識別しやすい色であればよい。
また、黄色いテープ16pは、装填パイプ16cが装薬孔3に挿入されたときにテープの先端部が装薬孔3の開口部に交差する位置のみに巻いてもよいが、トラロープのように、黒いテープ16qと交互に巻けば、装薬孔3の開口部の位置をより正確に検出することができる。
【0014】
姿勢推定の手法は、画像や動画から人間の姿勢をリアルタイムで自動的に推定するもので、人物の骨格(手や肩、腰などの関節点)の位置を検出してその姿勢を推定する。具体的には、画像や動画のデータから特徴量を抽出し、ニューラルネットワークを用いた深層学習により人物の骨格構造モデルである姿勢推定モデルを構築し、この姿勢推定モデルを使用して画像や動画に写っている人物の姿勢を推定する。本例では、カメラ12aを1台としたので、姿勢推定に際して2次元骨格検知を行った。
装填位置検出手段12cは、
図4(b)に示すように、作業者4の姿勢と検出された装填パイプ16cの位置(先端部の黄色いテープ16pの位置)とから、作業者4が装填パイプ16cを挿入した装薬孔3の位置である装填位置Pを検出する。
なお、
図4(c)に示すように、作業者4の向きとカメラ12aの撮影方向との関係で、装填パイプ16cが作業者4の陰になって、黄色いテープ16pが見えない(検出されない)場合があるが、この場合には、作業者4の姿勢のみから装薬孔3の位置を推定し、この推定された装薬孔3の位置を装填位置Pとする。
上記検出された装填位置Pのデータは装薬本数設定装置13に送られる。
【0015】
装填位置検出装置12の動作について、
図5のフローチャートを参照して説明する。
まず、カメラ12aにて、爆薬装填中の切羽2の動画を撮影する(ステップS11)。
作業者4は、親ダイ5が装填された装薬孔3に装填パイプ16cを挿入するとともに、装填指示装置11の挿入完了ボタン115を押して、装薬孔3に装填パイプ16cが挿入されたことを装填位置検出装置12に送信する(ステップS12)。このとき、挿入完了ボタン115を押した作業者4は両手もしくは姿勢を一定時間(5秒程度)動かさないようにすれば、撮影した動画の中から姿勢推定する画像を確実に抽出することができる。
次に、姿勢推定手段12bにて、両手の関節もしくは姿勢が動いていない作業者4の姿勢を推定(ステップS13)した後、作業者4の周辺に黄色いテープ16pが見えるか否かを判定する(ステップS14)。
作業者4の周辺に黄色いテープ16pが見えた場合には、
図4(b)に示すように、作業者4から一番遠い黄色いテープの位置を装填位置Pとする(ステップS15)。
作業者4周辺に黄色いテープ16pが見えなかった場合には、
図4(c)に示すように、ステップS13で推定された作業者4の肩4m及び腰4nの骨格の中間点を装填位置Pとする(ステップS16)。
【0016】
装薬本数設定装置13は、記憶手段13aと、装薬本数設定手段13bと、装填指令連絡手段13cとを備える。
記憶手段13aは、装薬孔3の位置P(2次元座標)と増ダイ6の装填本数をNとの関係を示すP-Nテーブル13Tを記憶する。
装薬本数設定手段13bは、入力手段11から送られてくる、装薬孔3の位置Pの情報と記憶手段13aに記憶されたP-Nテーブル13Tとから増ダイ6の装填本数Nを決定し、装填指令連絡手段13cに送る。
なお、装填位置検出装置12で検出した装填位置Pは実際の装薬孔3の位置P0と若干ズレる場合があるが、その場合には検出された装填位置Pを、最も近い設計上の装薬孔3の位置とすればよい。
装填指令連絡手段13cは、上記決定された装填本数Nを入力手段11に送るとともに、入力手段11から装填指令信号が送られてきた場合には、制御装置17に親ダイ5、増ダイ6、及び、アンコ7をそれぞれ装填する指示信号を制御装置17に送る。なお、装填指示装置11から制御装置17に直接装填指令信号を送ってもよい。
【0017】
爆薬供給装置14は、ホッパー14aと増ダイシュート14bとを備え、増ダイ6を圧送装置16に供給する。
込め物供給装置15は、アンコ置き場15aとアンコ搬送部15bとを備え、アンコ7を圧送装置16に供給する。
圧送装置16は、爆薬供給装置14と込め物供給装置15とに連結された装填機16aと、装填機16aの終端に接続された装填ホース16bと、装填ホース16bの終端に接続された装填パイプ16cとを備え、親ダイ5を装薬孔3内に装填するための圧送空気を装填パイプ16cに送るとともに、爆薬供給装置14から供給された増ダイ6と込め物供給装置15から供給されたアンコ7とを装薬孔3とに送る。
制御装置17は、爆薬供給装置14を制御して装填ホース16bに増ダイ6を供給し、込め物供給装置15を制御して装填ホース16bにアンコ7供給するとともに、圧送装置16の装填機16aを制御して、装填ホース16b内に供給された増ダイ6またはアンコ7に装填機16a側から圧送空気を送り込んで、増ダイ6またはアンコ7を装薬孔3内に圧送し装填する。
また、制御装置17は、装填機16aを制御して、装填機16a側から圧送空気を送り込んで、装填パイプ16cの先端に取付けられた親ダイ5を装薬孔3内に装填する。
なお、切羽2の高所に形成された装薬孔3に装填パイプ16cを挿入する際には、
図1に示すように、例えば、削岩機21、バケット23等を備えたドリルジャンボ20等を用いて、作業者4がバケット23に搭乗して作業を行う。
また、切羽2のトンネル底部8に近い低所に形成された装薬孔3に装填パイプ16cを挿入する際には、作業者4がトンネル底部8から作業を行う。
【0018】
次に、爆薬と込め物の装填方法について
図6のフローチャートを参照して説明する。
まず、作業者4が装填パイプ16cの先端に親ダイ5を装着し、この装填パイプ16cを装薬孔3に挿入し、親ダイ5を装薬孔3の孔口側にセットする(ステップS21)。
次に、作業者4が装填指示装置11の親ダイ装填ボタン112を押すことで、装填指令連絡手段13cを介して、装填指令信号を制御装置17に送信する(ステップS22)。
制御装置17は圧送装置16の装填機16aを制御し、装填ホース16bに圧送空気を送り込むことで、親ダイ5を装薬孔3の孔尻に装填する(ステップS23)。
次に、装填位置検出装置12にて、増ダイ6を装填する装薬孔3の位置である、装填位置Pを検出する(ステップS24)。装填位置Pは、作業者4が装填パイプ16cを挿入している装薬孔3の位置である。
ステップS24で検出された装填位置Pのデータは、装填位置検出装置12から装薬本数設定装置13に送られる(ステップS25)。
装薬本数設定装置13では、装填位置Pの位置座標と記憶手段13aに記憶されたP-Nテーブル13Tとから増ダイ6の装薬本数Nを設定し、この装薬本数Nを装填指示装置11に送信する(ステップS26)。装薬本数Nは装填指示装置11のディスプレイ116に表示される。
作業者4は、増ダイ装填ボタン113を押して、増ダイ6を装薬孔3内に装填する(ステップS27)。
次に、装填された増ダイ6の本数がN本に達したか否かを判定する(ステップS28)。
装填した増ダイ6の本数がN本に達していない場合には、ステップS27に戻って、次の増ダイ6を装薬孔3内に装填する。
装填した増ダイ6の本数がN本に達した場合には、ステップS29に進んで、アンコ装填ボタン114を押す。これにより、増ダイ6の後方(装薬孔3の孔口側)にアンコ7が装填される。
このような操作を、装薬孔3毎に行うことで、全ての装薬孔3に爆薬と込め物とを装填される。
【0019】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は前記実施の形態に記載の範囲には限定されない。前記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者にも明らかである。そのような変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲から明らかである。
【0020】
例えば、前記実施の形態では、装填パイプ16cの画像から装填位置Pを検出したが、
図7(a)に示すように、画像に作業者の手4hが写っている場合には、先端側の黄色いテープ16pの位置は作業者4の手4hの方向にあるので、作業者4の周辺全部をサーチしなくても、先端側の黄色いテープ16pの位置である装填位置Pを容易に検出することができる。したがって、装填位置Pの検出時間を短縮できる。
また、
図7(b)に示すように、装填パイプ16cの作業者4側に円、楕円、正方形、長方形の鍔のような形状の部材(鍔部材16d)を取付けて、作業者4の手元がどちらにあるかを画像上で認識できるようにしても装填位置Pを容易に検出することができる。本例では、円形の鍔としている。
また、
図7(c)に示すように、装填パイプ16cの切羽2側(前側)だけでなく、装填ホース16b側(後側)にも黄色いテープ16pと黒いテープ16qとを交互に貼ってもよい。これにより、装填パイプ16cの後端から先端に向かう方向が分かるので、先端側の黄色いテープ16pの位置を容易に検出することができる。なお、装填パイプ16cの後端には装填ホース16bが連結されているので、装填パイプ16cの先端と後端との区別は容易である。また、装填ホース16bが見えない場合には、前のフレームから、どちらが後側かを判定すればよい。
あるいは、黄色いテープ16pと黒いテープ16qに替えて、装填パイプ16cの後端にボールや鍔などを取付けてもよい。また、装填パイプ16cの後側の色を変えてもよい。
また、図は省略するが、作業者4の後方に装填パイプ16cの後端が延びていると、装填パイプ16cの前側が見えない場合でも、装填パイプ16cの後端が延びている方向や長さから、装填パイプ16cが見えなかった場合の装填位置Pのずれを推測することが可能となる。
また、前記実施の形態では、カメラ12aを1台としたが、複数台であってもよい。カメラ12aを複数台設置する場合には、
図4(a)の丸印C1~C4で示す、本体24の操作盤25の近くに設置されたカメラ12aの左右(C1,C2)や、左右のトンネル側壁9(C3,C4)に取付ければよい。例えば、カメラ12aが2台の場合にはC1とC2に、3台の場合には、カメラ12aとカメラ12aの左右(C1,C2)、または、カメラ12aと左右のトンネルの側壁(C3,C4)に取付けることが好ましい。
カメラ12aを複数とすれば、いずれかのカメラの画像には、装填パイプ16cが写っているので、装填位置Pをより正確に求めることができる。
また、前記実施の形態では、カメラ12aの撮影方向を切羽2の面と垂直である場合について説明したが、カメラ12aの撮影方向が切羽2の面と垂直でない場合には、切羽2の方向と撮影方向の異なる画面における装薬孔3の座標(x’,y’)を、カメラ12aの撮影方向が切羽2の面とのなす角に応じて、切羽2の方向と撮影方向とが垂直である画面における装薬孔3の座標(x,y)に変換してやればよい。
【符号の説明】
【0021】
1 トンネル掘削現場、2 切羽、3 装薬孔、4 作業者、5 親ダイ、
5k 導線、6 増ダイ、7 アンコ、8 トンネル底部、9 トンネル側壁、
10 爆薬装填装置、11 装填指示装置、12 装填位置検出装置、12a カメラ、
12b 姿勢推定手段、12c 装填位置検出手段、13 装薬本数設定装置、
13a 記憶手段、13b 装薬本数設定手段、13c 装填指令連絡手段、
14 爆薬供給装置、14a ホッパー、14b 増ダイシュート、
15 込め物供給装置、15a アンコ置き場、15b アンコ搬送部、
16 圧送装置、16a 装填機、16b 装填ホース、16c 装填パイプ、
17 制御装置、18 車両、
20 ドリルジャンボ、21 削岩機、22 バケットアーム、23 バケット、
24 ドリルジャンボ本体。