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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170771
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】止血装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/122 20060101AFI20241204BHJP
【FI】
A61B17/122
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087480
(22)【出願日】2023-05-29
(71)【出願人】
【識別番号】500409219
【氏名又は名称】学校法人関西医科大学
(71)【出願人】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今田 崇裕
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160DD03
4C160DD06
4C160DD32
(57)【要約】      (修正有)
【課題】止血対象部以外への不必要な圧迫を抑制しつつ適切な圧迫力で止血する。
【解決手段】第1指部110には、支持部111が設けられている。第2指部140、第3指部150および第4指部160は、支持部111と対向可能に並んで配置されている。第2指部140は、第1圧力センサ146が設けられた第2対向部145を含む。第3指部150は、第2圧力センサ156が設けられた第3対向部155を含む。第4指部160は、第3圧力センサ166が設けられた第4対向部165を含む。第3対向部155は、第2対向部145と第4対向部165との間に位置しつつ支持部111との間で止血対象部を挟み込んで圧迫可能に構成されている。制御部は、第1圧力センサ146、第2圧力センサ156および第3圧力センサ166の各々の計測値に基づいて第3指部150を駆動制御することにより止血対象部の圧迫力を調整する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持部が設けられた第1指部と、
前記支持部と対向可能に並んで配置された、第2指部、第3指部および第4指部と、
前記第3指部を駆動制御する制御部とを備え、
前記第2指部は、前記支持部と対向可能かつ第1圧力センサが設けられた第2対向部を含み、
前記第3指部は、前記支持部と対向可能かつ第2圧力センサが設けられた第3対向部を含み、
前記第4指部は、前記支持部と対向可能かつ第3圧力センサが設けられた第4対向部を含み、
前記第3対向部は、前記第2対向部と前記第4対向部との間に位置しつつ前記支持部との間で止血対象部を挟み込んで圧迫可能に構成されており、
前記制御部は、前記第1圧力センサ、前記第2圧力センサおよび前記第3圧力センサの各々の計測値に基づいて前記第3指部を駆動制御することにより前記止血対象部の圧迫力を調整する、止血装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記第1圧力センサ、前記第2圧力センサおよび前記第3圧力センサの各々の計測値についての患者毎の設定範囲を記憶する記憶部、および、前記第3指部を駆動制御する駆動制御部を含み、
前記駆動制御部は、前記記憶部に記憶されている患者毎の前記設定範囲内に前記第1圧力センサ、前記第2圧力センサおよび前記第3圧力センサの各々の計測値が入るように、前記第3指部を駆動制御することにより前記止血対象部の圧迫力を調整する、請求項1に記載の止血装置。
【請求項3】
前記第3対向部に、前記止血対象部に対して前記第3対向部を位置合わせするための照準光を照射する発光部が設けられている、請求項1または請求項2に記載の止血装置。
【請求項4】
前記第3対向部の周囲の、画像解析または通電性の変化に基づいて、漏血を検出する漏血センサをさらに備える、請求項1または請求項2に記載の止血装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、止血装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医療用圧迫器具を開示した先行技術文献として、特開2020-65625号公報(特許文献1)がある。特許文献1に記載された医療用圧迫器具は、支持固定帯と、紐状部材と、圧迫部と、調節部とを備える。支持固定帯は、体の部位に巻き付くと共に、上記部位に対して一部開いた形状を形成する開口部を備える。紐状部材は、支持固定帯の開口部を挟んだ両側を連結し、非伸縮性を有する。圧迫部は、紐状部材に取り付けられ、上記部位に対する接触面を備え、紐状部材に加えられる張力により上記接触面を上記部位に押しつけることで圧迫する。調節部は、紐状部材の巻き取り及び繰り出しにより、紐状部材の張力を調節する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-65625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
紐状部材を用いて圧迫止血する場合、止血対象部以外への不必要な圧迫を防ぐことができない。
【0005】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであって、止血対象部以外への不必要な圧迫を抑制しつつ適切な圧迫力で止血することが可能となる、止血装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に基づく止血装置は、第1指部と、第2指部、第3指部および第4指部と、制御部とを備える。第1指部には、支持部が設けられている。第2指部、第3指部および第4指部は、支持部と対向可能に並んで配置されている。制御部は、第3指部を駆動制御する。第2指部は、支持部と対向可能かつ第1圧力センサが設けられた第2対向部を含む。第3指部は、支持部と対向可能かつ第2圧力センサが設けられた第3対向部を含む。第4指部は、支持部と対向可能かつ第3圧力センサが設けられた第4対向部を含む。第3対向部は、第2対向部と第4対向部との間に位置しつつ支持部との間で止血対象部を挟み込んで圧迫可能に構成されている。制御部は、第1圧力センサ、第2圧力センサおよび第3圧力センサの各々の計測値に基づいて第3指部を駆動制御することにより止血対象部の圧迫力を調整する。
【0007】
本発明の一形態においては、制御部は、第1圧力センサ、第2圧力センサおよび第3圧力センサの各々の計測値についての患者毎の設定範囲を記憶する記憶部、および、第3指部を駆動制御する駆動制御部を含む。駆動制御部は、記憶部に記憶されている患者毎の設定範囲内に第1圧力センサ、第2圧力センサおよび第3圧力センサの各々の計測値が入るように、第3指部を駆動制御することにより止血対象部の圧迫力を調整する。
【0008】
本発明の一形態においては、第3対向部に、止血対象部に対して第3対向部を位置合わせするための照準光を照射する発光部が設けられている。
【0009】
本発明の一形態においては、止血装置は、第3対向部の周囲の、画像解析または通電性の変化に基づいて、漏血を検出する漏血センサをさらに備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、止血対象部以外への不必要な圧迫を抑制しつつ適切な圧迫力で止血することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る止血装置の構成を示す側面図である。
図2図1の止血装置を矢印II方向から見た正面図である。
図3図2の矢印III方向から見た平面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る止血装置によって止血対象部を圧迫している状態を示す側面図である。
図5図4の第2指部、第3指部および第4指部をV方向から見た図である。
図6】本発明の一実施形態に係る止血装置が備える制御部の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態に係る止血装置について図面を参照して説明する。以下の実施形態の説明においては、図中の同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は繰り返さない。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態に係る止血装置の構成を示す側面図である。図2は、図1の止血装置を矢印II方向から見た正面図である。図3は、図2の矢印III方向から見た平面図である。
【0014】
図1図3に示すように、本発明の一実施形態に係る止血装置100は、第1指部110と、第2指部140、第3指部150および第4指部160と、後述する制御部とを備える。
【0015】
第1指部110の根元は、球状のジョイント120の下部と回動可能に接続されている。第1指部110の先端には、台状に突出した支持部111が設けられている。図3に示すように、第1指部110は、ジョイント120との接続箇所を中心に図3中に示す矢印方向に回動可能であり、支持部111が図3の実線で示す状態から180°反対側に移動するまで回動可能である。
【0016】
図1図3に示すように、第2指部140、第3指部150および第4指部160は、支持部111と対向可能に並んで配置されている。具体的には、第2指部140、第3指部150および第4指部160は、第1指部110と向かい合うように配置されている。第2指部140、第3指部150および第4指部160は、この順で互いに間隔をあけて並んで配置されている。第2指部140、第3指部150および第4指部160は、接続部130を介してジョイント120の上部と回動可能に接続されている。
【0017】
第2指部140は、支持部111と対向可能かつ第1圧力センサ146が設けられた第2対向部145を含む。第1圧力センサ146は、たとえば、シャントの上流側の脈拍の拍動を検出する。
【0018】
具体的には、第2指部140は、根元関節141、後側骨部142、中間関節143、前側骨部144および第2対向部145を含む。根元関節141は、接続部130に支持されている。後側骨部142は、根元関節141によって接続部130に対して回動可能に支持されている。中間関節143は、後側骨部142に支持されている。前側骨部144は、中間関節143によって後側骨部142に対して回動可能に支持されている。第2対向部145は、支持部111と対向可能に前側骨部144の先端に位置している。
【0019】
第3指部150は、支持部111と対向可能かつ第2圧力センサ156が設けられた第3対向部155を含む。第3対向部155は、第2対向部145と第4対向部165との間に位置しつつ支持部111との間で止血対象部を挟み込んで圧迫可能に構成されている。第2圧力センサ156は、止血対象部への圧迫力を検出する。
【0020】
具体的には、第3指部150は、根元関節151、後側骨部152、中間関節153、前側骨部154および第3対向部155を含む。根元関節151は、接続部130に支持されている。後側骨部152は、根元関節151によって接続部130に対して回動可能に支持されている。中間関節153は、後側骨部152に支持されている。前側骨部154は、中間関節153によって後側骨部152に対して回動可能に支持されている。第3対向部155は、支持部111と対向可能に前側骨部154の先端に位置している。第3対向部155に、止血対象部に対して第3対向部155を位置合わせするための照準光を照射する発光部157が設けられている。
【0021】
第4指部160は、支持部111と対向可能かつ第3圧力センサ166が設けられた第4対向部165を含む。第3圧力センサ166は、たとえば、シャントの下流側の脈拍の拍動を検出する。
【0022】
具体的には、第4指部160は、根元関節161、後側骨部162、中間関節163、前側骨部164および第4対向部165を含む。根元関節161は、接続部130に支持されている。後側骨部162は、根元関節161によって接続部130に対して回動可能に支持されている。中間関節163は、後側骨部162に支持されている。前側骨部164は、中間関節163によって後側骨部162に対して回動可能に支持されている。第4対向部165は、支持部111と対向可能に前側骨部164の先端に位置している。
【0023】
図4は、本発明の一実施形態に係る止血装置によって止血対象部を圧迫している状態を示す側面図である。図5は、図4の第2指部、第3指部および第4指部をV方向から見た図である。図6は、本発明の一実施形態に係る止血装置が備える制御部の構成を示すブロック図である。
【0024】
図4に示すように、本実施形態においては、接続部130の側面に、稼働ボタン170と、ロックボタン180とが設けられている。図6に示すように、稼働ボタン170およびロックボタン180の各々からの信号は、制御部190に入力される。
【0025】
具体的には、稼働ボタン170が押下されると、制御部190は止血対象部への圧迫を開始させ、稼働ボタン170がもう一度押下されると、制御部190は止血対象部への圧迫を解除させる。
【0026】
ロックボタン180が押下されると、制御部190は、第1指部110、第2指部140、第3指部150および第4指部160を一斉にロックして位置を固定させ、ロックボタン180がもう一度押下されると、制御部190は、第1指部110、第2指部140、第3指部150および第4指部160のロックを解除する。ロックが解除された状態では、第1指部110、第2指部140、第3指部150および第4指部160の各々は、手動でフレキシブルに変位可能である。
【0027】
本実施形態に係る止血装置100は、図5に示すように、第3対向部155の周囲の画像解析に基づいて、漏血を検出する漏血センサ158をさらに備える。漏血センサ158は、第3対向部の周囲を撮像可能に設けられており、本実施形態においては、中間関節153に取り付けられている。ただし、漏血センサ158が設けられる位置は、中間関節153に限られない。漏血センサ158は、止血対象部と第3対向部155との間に配置されたガーゼに血が滲んだ範囲の広がりを画像解析することにより、漏血の有無を確認する。
【0028】
なお、漏血センサ158は、画像解析により漏血の有無を確認するものに限られず、上記ガーゼの通電性の変化に基づいて漏血の有無を確認するものでもよい。この場合は、漏血センサ158は、第3対向部155に設けられており、ガーゼが血を含むことによって通電しやすくなることを検出することにより、漏血の有無を確認する。
【0029】
図6に示すように、制御部190は、記憶部191および駆動制御部192を含む。記憶部191は、第1圧力センサ146、第2圧力センサ156および第3圧力センサ166の各々の計測値についての患者毎の設定範囲を記憶する。
【0030】
具体的には、指先に圧力センサが取り付けられたグローブを装着した医療者が患者毎の止血時の圧迫圧を記録し、患者毎の止血時の圧迫圧の上限閾値および下限閾値を設定し、当該上限閾値および下限閾値を第2圧力センサ156の計測値についての設定範囲として記憶部191に記憶させる。
【0031】
患者毎の止血時の脈の拍動による圧力変動の上限値および下限値を、第1圧力センサ146および第3圧力センサ166の各々の計測値についての設定範囲として記憶部191に記憶させる。
【0032】
駆動制御部192は、第1指部110、第2指部140、第3指部150および第4指部160の各々を駆動制御可能である。駆動制御部192は、記憶部191に記憶されている患者毎の設定範囲内に第1圧力センサ146、第2圧力センサ156および第3圧力センサ166の各々の計測値が入るように、第3指部150を駆動制御することにより止血対象部の圧迫力を調整する。
【0033】
具体的には、第2圧力センサ156の計測値が設定範囲内に入るようにすることにより、医療者が止血した際の圧迫状態を再現することができる。第1圧力センサ146および第3圧力センサ166の計測値が設定範囲内に入るようにすることにより、シャントが閉塞しないようにしてシャントの上流側および下流側の血流を維持させることができる。
【0034】
上記のように、制御部190は、第3指部150を駆動制御する。制御部190は、第1圧力センサ146、第2圧力センサ156および第3圧力センサ166の各々の計測値に基づいて第3指部150を駆動制御することにより止血対象部の圧迫力を調整する。
【0035】
ここで、止血装置100の動作について説明する。まず、支持部111上に患者の腕などを載せた後、止血対象部にガーゼを押し当てた状態で、第3対向部155をガーゼに対して位置合わせする。このとき、発光部157によって照準光を止血対象部に向けて発光させつつ、第3対向部155をガーゼに近づけることにより第3対向部155を止血対象部に容易に位置合わせすることができる。
【0036】
さらに、第2対向部145をシャントの上流側に押し当て、第4対向部165をシャントの下流側に押し当てる。第1指部110、第2指部140、第3指部150および第4指部160の各々の位置合わせが終了した時点で、ロックボタン180を押下する。
【0037】
次に、稼働ボタン170を押下すると、駆動制御部192が第3指部150を駆動させて、主に中間関節143を回動させることにより、第3対向部155と支持部111との間で止血対象部が挟み込まれて圧迫される。
【0038】
このとき、駆動制御部192は、第1圧力センサ146、第2圧力センサ156および第3圧力センサ166の各々の計測値が設定範囲内に入るように、第3指部150を駆動制御する。
【0039】
稼働ボタン170が押下された後、制御部190は、漏血センサ158からの入力信号に基づいて漏血の有無を監視する。たとえば、第3対向部155の周囲のガーゼに血が滲んだ範囲が広がって漏血が認められる場合は、駆動制御部192は、第3対向部155による圧迫力を強めるように第3指部150を駆動制御する。
【0040】
稼働ボタン170が押下されてから一定の止血時間が経過した後、稼働ボタン170を再度押下すると、駆動制御部192が第3指部150を駆動させて、第3対向部155を待避させることにより止血対象部への圧迫が解除される。
【0041】
本発明の一実施形態に係る止血装置100によれば、止血対象部以外への不必要な圧迫を抑制しつつ適切な圧迫力で止血することができる。
【0042】
なお、大腿動脈などを圧迫する際には、第1指部110を図3の実線で示す状態から180°回動させて、第3対向部155と支持部111とが対向していない状態で、第3対向部155を止血対象部に押し付けて圧迫することが可能である。
【0043】
また、第3対向部155は、脱着可能なカバーを取り付け可能に構成されている。これにより、止血対象部を清潔に圧迫することが可能である。
【0044】
上記の実施形態において、互いに組み合わせ可能な構成は、互いに組み合わされてもよい。今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0045】
100 止血装置、110 第1指部、111 支持部、120 ジョイント、130 接続部、140 第2指部、141,151,161 根元関節、142,152,162 後側骨部、143,153,163 中間関節、144,154,164 前側骨部、145 第2対向部、146 第1圧力センサ、150 第3指部、155 第3対向部、156 第2圧力センサ、157 発光部、158 血センサ、160 第4指部、165 第4対向部、166 第3圧力センサ、170 稼働ボタン、180 ロックボタン、190 制御部、191 記憶部、192 駆動制御部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6