(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170774
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】車両制御装置及び車両制御方法
(51)【国際特許分類】
B60W 30/00 20060101AFI20241204BHJP
B60W 40/02 20060101ALI20241204BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20241204BHJP
【FI】
B60W30/00
B60W40/02
G08G1/16 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087486
(22)【出願日】2023-05-29
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002941
【氏名又は名称】弁理士法人ぱるも特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松尾 友介
(72)【発明者】
【氏名】大曲 祐子
(72)【発明者】
【氏名】若林 瑞保
【テーマコード(参考)】
3D241
5H181
【Fターム(参考)】
3D241BA02
3D241BA10
3D241BA12
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3D241DA13Z
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3D241DD13Z
5H181AA01
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC11
5H181CC12
5H181CC14
5H181CC24
5H181FF05
5H181FF25
5H181FF32
5H181LL01
(57)【要約】
【課題】本線から分流車線に移行した後、前方に減速地点が存在する場合に、加速及び減速を適切に行って、減速地点までの走行の乗り心地を向上できる車両制御装置及び車両制御方法を提供する。
【解決手段】減速地点の手前に分流車線が存在する場合に、分流車線への移行運転の開始地点の手前では、速度指令値に基づいて自車両の目標速度を設定し、分流車線への移行運転の開始地点の前方では、速度指令値、分流車線への移行運転の開始地点の自車両の走行速度、分流車線への移行運転の開始地点から減速地点までの残り距離、及び減速地点速度に基づいて、目標速度を設定する車両制御装置。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の走行状態、前記自車両の周辺の道路情報、及び前記自車両の周辺の他車両の情報を取得する情報取得部と、
前記自車両の目標走行経路を設定する目標走行経路設定部と、
前記走行状態、前記目標走行経路、及び前記道路情報に基づいて、前記目標走行経路上において、前記自車両が走行すべき速度が前記自車両の現在の走行速度よりも小さくなる地点である減速地点を設定し、前記減速地点で走行すべき速度である減速地点速度を設定する減速地点設定部と、
前記目標走行経路上において、前記自車両の現在位置と前記減速地点との間に、前記自車両の減速を開始する地点である減速開始地点を設定する減速開始地点設定部と、
目標速度を設定する目標走行状態設定部と、
前記目標速度に基づいて、前記自車両を制御する車両制御部と、
を備え、
前記減速開始地点設定部は、前記目標走行経路上において、前記減速地点の手前に本線から分流する分流車線が存在する場合に、前記本線から前記分流車線への移行運転の開始地点の前方に前記減速開始地点を設定し、
前記目標走行状態設定部は、前記減速地点の手前に前記分流車線が存在する場合に、前記分流車線への移行運転の開始地点の手前では、速度指令値に基づいて前記自車両の目標速度を設定し、前記分流車線への移行運転の開始地点の前方では、前記速度指令値、前記自車両の現在の走行速度、前記分流車線への移行運転の開始地点から前記減速地点までの残り距離、及び前記減速地点速度に基づいて、前記目標速度を設定し、
前記自車両の前方の判定範囲内に前記他車両が存在する場合には、前記他車両の走行速度に応じて前記目標速度を補正する車両制御装置。
【請求項2】
前記減速地点は、前記自車両が走行すべき速度が切り替わる地点であり、
前記減速地点設定部は、制限速度の切替地点、道路種別の切替地点、道路曲率の変化による速度の切替地点の少なくとも一つに基づいて、前記減速地点を設定する請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記目標走行状態設定部は、前記本線から前記分流車線に移行するために車線変更が必要な場合において、前記分流車線の開始地点に到達した後であって、且つドライバによる方向指示器の操作を検出した地点を、前記分流車線への移行運転の開始地点として設定し、
前記本線から前記分流車線に移行するために車線変更が不要な場合において、前記分流車線の開始地点を、前記分流車線への移行運転の開始地点として設定する請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項4】
前記目標走行状態設定部は、前記速度指令値に従って走行すると仮定した場合における、前記分流車線への移行運転の開始地点から前記減速開始地点までの予想走行時間を演算し、前記予想走行時間が、判定時間未満になる場合は、前記自車両の現在の走行速度と前記速度指令値との小さい方を、前記分流車線への移行運転の開始地点から前記減速開始地点までの前記目標速度として設定する請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項5】
前記目標走行状態設定部は、前記速度指令値に従って走行すると仮定した場合における、前記分流車線への移行運転の開始地点から前記減速開始地点までの予想走行時間を演算し、前記予想走行時間が、判定時間未満になる場合は、前記分流車線への移行運転の開始地点から前記減速開始地点までの予想走行時間が前記判定時間になるように、前記分流車線への移行運転の開始地点から前記減速開始地点までの前記目標速度を設定する請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項6】
前記目標走行状態設定部は、前記速度指令値に従って走行すると仮定した場合における、前記分流車線への移行運転の開始地点から前記減速開始地点までの予想走行時間を演算し、前記予想走行時間が、判定時間以上になる場合は、前記速度指令値を、前記分流車線への移行運転の開始地点から前記減速開始地点までの前記目標速度として設定する請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項7】
前記予想走行時間は、前記自車両の現在の走行速度から前記速度指令値に到達するまでの加速時間を含まない請求項4から6のいずれか一項に記載の車両制御装置。
【請求項8】
前記予想走行時間は、前記自車両の現在の走行速度から前記速度指令値に到達するまでの加速時間を含む請求項4から6のいずれか一項に記載の車両制御装置。
【請求項9】
前記目標走行状態設定部は、前記減速地点の前方の前記目標速度を、前記減速地点の前方の道路の制限速度、前記速度指令値、及び前記減速地点の前方の道路曲率による制限速度の内の最も小さいものに設定する請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項10】
前記車両制御部は、ドライバによるアクセルペダル操作、ブレーキペダル操作、又はハンドル操作が検出された場合は、操作内容に基づいて、前記目標速度に基づく制御量を変化させる、又は前記目標速度に基づく制御を終了する請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項11】
前記目標走行状態設定部は、前記本線から前記分流車線に移行するためにドライバにより方向指示器の操作が行われた後、前記分流車線への移行が完了するまでに、前記方向指示器の操作がオフにされた場合は、前記分流車線への移行の完了度合いに基づいて、前記分流車線への移行及び減速を継続するか停止するか判定し、停止すると判定した場合は、減速を行う前記目標速度の設定を停止する請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項12】
以下の各ステップを演算処理装置に実行させる車両制御方法であって、
自車両の走行状態、前記自車両の周辺の道路情報、及び前記自車両の周辺の他車両の情報を取得する情報取得ステップと、
前記自車両の目標走行経路を設定する目標走行経路設定ステップと、
前記走行状態、前記目標走行経路、及び前記道路情報に基づいて、前記目標走行経路上において、前記自車両が走行すべき速度が前記自車両の現在の走行速度よりも小さくなる地点である減速地点を設定し、前記減速地点で走行すべき速度である減速地点速度を設定する減速地点設定ステップと、
前記目標走行経路上において、前記自車両の現在位置と前記減速地点との間に、前記自車両の減速を開始する地点である減速開始地点を設定する減速開始地点設定ステップと、
目標速度を設定する目標走行状態設定ステップと、
前記目標速度に基づいて、前記自車両を制御する車両制御ステップと、
を備え、
前記減速開始地点設定ステップでは、前記目標走行経路上において、前記減速地点の手前に本線から分流する分流車線が存在する場合に、前記本線から前記分流車線への移行運転の開始地点の前方に前記減速開始地点を設定し、
前記目標走行状態設定ステップでは、前記減速地点の手前に前記分流車線が存在する場合に、前記分流車線への移行運転の開始地点の手前では、速度指令値に基づいて前記自車両の目標速度を設定し、前記分流車線への移行運転の開始地点の前方では、前記速度指令値、前記自車両の現在の走行速度、前記分流車線への移行運転の開始地点から前記減速地点までの残り距離、及び前記減速地点速度に基づいて、前記目標速度を設定し、
前記自車両の前方の判定範囲内に前記他車両が存在する場合には、前記他車両の走行速度に応じて前記目標速度を補正する車両制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この本願は、車両制御装置及び車両制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、自車両の前方に他車両が存在する場合は、自車両と他車両との間の車間距離を維持する制御を行い、自車両の前方に他車両が存在しない場合は、設定された速度指令値に従って定速走行する車両制御装置が実用化されている。さらに、高速道路のインターチェンジなどにおいて、減速すべきポイントで減速制御を行う技術も知られている。
【0003】
特許文献1の技術では、自車両が減速ノードに接近し、且つ、方向指示器の操作方向と減速ノードの方向とが一致している場合に、車間距離の制御が中断される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の車両制御装置では、本線において、速度指令値より低い走行速度の他車両に追従している状況で、自車両のみ分流車線に移行した場合、他車両が追従対象から外れて自車両が速度指令値まで加速する。しかし、分流車線の先に減速地点が存在する場合は、条件によっては、加速後、直ぐに減速する場合があり、乗り心地が悪化する。一方、分流車線に移行した後、加速を行わないようにすると、減速地点までの分流車線の距離が長い場合、又は移行前の走行速度が低い場合は、減速地点までの走行時間が長くなり、乗り心地が悪化する。
【0006】
そこで、本願は、本線から分流車線に移行した後、前方に減速地点が存在する場合に、加速及び減速を適切に行って、減速地点までの走行の乗り心地を向上できる車両制御装置及び車両制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願に係る車両制御装置は、
自車両の走行状態、前記自車両の周辺の道路情報、及び前記自車両の周辺の他車両の情報を取得する情報取得部と、
前記自車両の目標走行経路を設定する目標走行経路設定部と、
前記走行状態、前記目標走行経路、及び前記道路情報に基づいて、前記目標走行経路上において、前記自車両が走行すべき速度が前記自車両の現在の走行速度よりも小さくなる地点である減速地点を設定し、前記減速地点で走行すべき速度である減速地点速度を設定する減速地点設定部と、
前記目標走行経路上において、前記自車両の現在位置と前記減速地点との間に、前記自車両の減速を開始する地点である減速開始地点を設定する減速開始地点設定部と、
目標速度を設定する目標走行状態設定部と、
前記目標速度に基づいて、前記自車両を制御する車両制御部と、
を備え、
前記減速開始地点設定部は、前記目標走行経路上において、前記減速地点の手前に本線から分流する分流車線が存在する場合に、前記本線から前記分流車線への移行運転の開始地点の前方に前記減速開始地点を設定し、
前記目標走行状態設定部は、前記減速地点の手前に前記分流車線が存在する場合に、前記分流車線への移行運転の開始地点の手前では、速度指令値に基づいて前記自車両の目標速度を設定し、前記分流車線への移行運転の開始地点の前方では、前記速度指令値、前記自車両の現在の走行速度、前記分流車線への移行運転の開始地点から前記減速地点までの残り距離、及び前記減速地点速度に基づいて、前記目標速度を設定し、
前記自車両の前方の判定範囲内に前記他車両が存在する場合には、前記他車両の走行速度に応じて前記目標速度を補正するものである。
【0008】
本願に係る車両制御方法は、以下の各ステップを演算処理装置に実行させる車両制御方法であって、
自車両の走行状態、前記自車両の周辺の道路情報、及び前記自車両の周辺の他車両の情報を取得する情報取得ステップと、
前記自車両の目標走行経路を設定する目標走行経路設定ステップと、
前記走行状態、前記目標走行経路、及び前記道路情報に基づいて、前記目標走行経路上において、前記自車両が走行すべき速度が前記自車両の現在の走行速度よりも小さくなる地点である減速地点を設定し、前記減速地点で走行すべき速度である減速地点速度を設定する減速地点設定ステップと、
前記目標走行経路上において、前記自車両の現在位置と前記減速地点との間に、前記自車両の減速を開始する地点である減速開始地点を設定する減速開始地点設定ステップと、
目標速度を設定する目標走行状態設定ステップと、
前記目標速度に基づいて、前記自車両を制御する車両制御ステップと、
を備え、
前記減速開始地点設定ステップでは、前記目標走行経路上において、前記減速地点の手前に本線から分流する分流車線が存在する場合に、前記本線から前記分流車線への移行運転の開始地点の前方に前記減速開始地点を設定し、
前記目標走行状態設定ステップでは、前記減速地点の手前に前記分流車線が存在する場合に、前記分流車線への移行運転の開始地点の手前では、速度指令値に基づいて前記自車両の目標速度を設定し、前記分流車線への移行運転の開始地点の前方では、前記速度指令値、前記自車両の現在の走行速度、前記分流車線への移行運転の開始地点から前記減速地点までの残り距離、及び前記減速地点速度に基づいて、前記目標速度を設定し、
前記自車両の前方の判定範囲内に前記他車両が存在する場合には、前記他車両の走行速度に応じて前記目標速度を補正するものである。
【発明の効果】
【0009】
本願に係る車両制御装置及び車両制御方法によれば、本線において、速度指令値より低い走行速度の他車両に追従している状況で、自車両のみ分流車線に移行した場合であっても、速度指令値、分流車線への移行運転の開始地点の自車両の走行速度、分流車線への移行運転の開始地点から減速地点までの残り距離、及び減速地点速度に基づいて、目標速度を設定するので、分流車線の状態及び自車両の状態に応じて、加速及び減速を適切に行うことができ、減速地点までの走行の乗り心地を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態1に係る車両制御装置及び車両制御システムの概略ブロック図である。
【
図2】実施の形態1に係る車両制御装置の概略ハードウェア構成図である。
【
図3】実施の形態1に係る車両制御装置の概略的な処理を説明するためのフローチャートである。
【
図4】実施の形態1に係る予想走行時間が判定時間以上である場合の目標速度の設定を説明するための図である。
【
図5】実施の形態1に係る予想走行時間が判定時間未満である場合の目標速度の設定を説明する図である。
【
図6】実施の形態2に係る予想走行時間が判定時間未満である場合の目標速度の設定を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
1.実施の形態1
実施の形態1に係る車両制御装置50について図面を参照して説明する。本実施の形態では、車両制御装置50は、自車両に設けられている。
【0012】
図1に示すように、自車両は、周辺監視装置31、位置検出装置32、車両状態検出装置33、地図情報データベース34、無線通信装置35、車両制御装置50、駆動制御装置36、動力機8、電動操舵装置7、電動ブレーキ装置9、及びヒューマンインターフェイス装置37等を備えている。
【0013】
周辺監視装置31は、車両の周辺を監視するカメラ、レーダ等の装置である。レーダには、ミリ波レーダ、レーザレーダ、超音波レーダ等が用いられる。無線通信装置35は、4G、5G等のセルラー方式の無線通信の規格を用いて、基地局と無線通信を行う。
【0014】
位置検出装置32は、自車両の現在位置(緯度、経度、高度)を検出する装置であり、GNSS(Global Navigation Satellite System)等の人工衛星から出力される信号を受信するGPSアンテナ等が用いられる。なお、自車両の現在位置の検出には、自車両の走行車線番号を用いた方法、マップマッチング法、デッドレコニング法、自車両の周辺の検出情報を用いた方法等の各種の方法が用いられてもよい。
【0015】
地図情報データベース34には、道路形状(例えば、車線数、各車線の位置、各車線の形状、各車線の種別、道路種別、制限速度等)、道路標識(制限速度標識及びその制限速度、一時停止の標識等)、料金所(料金所の入口位置、料金所の通過速度等)、信号機等の道路情報が記憶されている。地図情報データベース34は、記憶装置を主体として構成されている。なお、地図情報データベース34は、ネットワーク網に接続された車外のサーバに設けられてもよく、車両制御装置50は、必要な道路情報を、無線通信装置35を介して車外のサーバから取得してもよい。
【0016】
駆動制御装置36として、動力制御装置、ブレーキ制御装置、自動操舵制御装置、及びライト制御装置等が備えられている。動力制御装置は、内燃機関、モータ等の動力機8の出力を制御する。ブレーキ制御装置は、電動ブレーキ装置9のブレーキ動作を制御する。自動操舵制御装置は、電動操舵装置7を制御する。ライト制御装置は、方向指示器、ハザードランプ等を制御する。
【0017】
車両状態検出装置33は、自車両の運転状態及び走行状態である自車両状態を検出する検出装置である。本実施の形態では、車両状態検出装置33は、自車両の走行状態として、自車両の速度、加速度、ヨーレート、操舵角、横加速度などを検出する。例えば、車両状態検出装置33として、車輪の回転速度を検出する速度センサ、加速度センサ、角速度センサ、及び操舵角センサ等が設けられる。
【0018】
自車両の運転状態として、運転者による加減速操作、舵角操作、及び車線変更操作が検出される。例えば、車両状態検出装置33として、アクセルポジションセンサ、ブレーキポジションセンサ、操舵角センサ(ハンドル角センサ)、操舵トルクセンサ、及び方向指示器ポジションスイッチ等が設けられる。
【0019】
ヒューマンインターフェイス装置37は、スピーカ、表示画面、及び入力装置等の運転者の入力を受け付けたり、運転者に情報を伝達したりする装置である。
【0020】
1-1.車両制御装置50
車両制御装置50は、情報取得部51、目標走行経路設定部52、減速地点設定部53、減速開始地点設定部54、目標走行状態設定部55、及び車両制御部56等の処理部を備えている。車両制御装置50の各処理は、車両制御装置50が備えた処理回路により実現される。具体的には、
図2に示すように、車両制御装置50は、CPU(Central Processing Unit)等の演算処理装置90、記憶装置91、演算処理装置90に外部の信号を入出力する入出力装置92等を備えている。
【0021】
演算処理装置90として、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、IC(Integrated Circuit)、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)、AI(Artificial Intelligence)チップ、各種の論理回路、及び各種の信号処理回路等が備えられてもよい。また、演算処理装置90として、同じ種類のもの又は異なる種類のものが複数備えられ、各処理が分担して実行されてもよい。記憶装置91として、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、ハードディスク等の各種の記憶装置が用いられる。
【0022】
入出力装置92には、通信装置、A/D変換器、入出力ポート、駆動回路等が備えられる。入出力装置92は、周辺監視装置31、位置検出装置32、車両状態検出装置33、地図情報データベース34、無線通信装置35、駆動制御装置36、及びヒューマンインターフェイス装置37等に接続され、これらの装置と通信を行う。
【0023】
そして、車両制御装置50が備える各処理部51から56等の各処理は、演算処理装置90が、記憶装置91に記憶されたソフトウェア(プログラム)を実行し、記憶装置91及び入出力装置92等の車両制御装置50の他のハードウェアと協働することにより実現される。なお、各処理部51から56等が用いる判定時間tth等の設定データは、EEPROM等の記憶装置91に記憶されている。
【0024】
以下、車両制御装置50の各処理について、
図3のフローチャートを参照しながら詳細に説明する。
図3のフローチャートの処理は、例えば、所定の演算周期毎に実行される。なお、実行時点で不要なステップの処理は適宜スキップされる。
【0025】
1-1-1.情報取得部51
図3のステップS01で、情報取得部51は、自車両の走行状態、前記自車両の周辺の道路情報、及び自車両の周辺の他車両の情報を取得する。
【0026】
情報取得部51は、自車両の走行状態を取得する。本実施の形態では、情報取得部51は、位置検出装置32から取得した自車両の位置情報、及び車両状態検出装置33から取得した自車両状態に基づいて、自車両の位置、移動方向、速度、及び加速度などを取得する。
【0027】
情報取得部51は、位置検出装置32から取得した自車両の位置情報に基づいて、地図情報データベース34から、自車両の周辺の道路情報を取得する。取得する道路情報には、道路形状(例えば、車線数、各車線の位置、各車線の形状、各車線の種別、道路種別、制限速度等)、道路標識(制限速度標識及びその制限速度、一時停止の標識等)、料金所の情報(料金所の入口位置、料金所の通過速度等)、信号機等の道路情報等が含まれる。各車線の形状には、車線の中心位置、車線の幅、車線の曲率等が含まれる。車線の形状は、車線の前後方向に沿った各地点において設定されている。各車線の種別には、本線、本線から分流する分流車線等が含まれる。また、車線の形状には、分流車線の開始位置、分流車線の終端位置、及び分流車線の長さが含まれる。なお、分流車線は、分流後、次第に減速を行うための減速車線を含む場合がある。
【0028】
また、情報取得部51は、周辺監視装置31から取得した白線、路肩等の区画線の検知情報に基づいて、道路の区画線等の形状及び種別を検知し、検知した道路の区画線等の形状及び種別に基づいて、各車線の形状及び位置、車線数、各車線の種別等を判定する。各車線の形状には、車線の中心位置、車線の幅、車線の曲率等が含まれる。各車線の種別には、本線、分流車線などが含まれる。
【0029】
また、情報取得部51は、周辺監視装置31から取得した検知情報に基づいて、道路標識、信号機、料金所の情報を取得する。情報取得部51は、外部から無線通信を介して現在の信号機等の状態を取得してもよい。
【0030】
情報取得部51は、自車両の周辺の他車両の情報を取得する。本実施の形態では、情報取得部51は、周辺監視装置31から取得した検知情報、及び位置検出装置32から取得した自車両の位置情報に基づいて、他車両の位置、移動方向、速度、及び加速度などを取得する。また、情報取得部51は、他車両以外にも、障害物、歩行者、車線規制等の交通規制などの情報も取得する。
【0031】
情報取得部51は、自車両の外部から通信により、他車両の走行状態(他車両の位置、移動方向、及び速度等)、並びに自車両の周辺の道路情報(車線情報等)及び交通情報(障害物、混雑度合い等)等を取得してもよい。例えば、情報取得部51は、他車両、又は他車両が情報をアップロードしたサーバから、無線通信等により、他車両の走行状態、並びに自車両の周辺の道路情報及び交通情報等を取得してもよい。また、道路の状況などを監視するカメラ等の路側機から、無線通信等により、監視エリアにおける、他車両の走行状態、並びに道路情報及び交通情報等を取得してもよい。
【0032】
情報取得部51は、自車両の位置に基づいて、自車両が走行している車線に対応する車線情報を取得する。また、情報取得部51は、各他車両の位置に基づいて、各他車両が走行している車線に対応する車線情報を取得する。取得される車線情報には、車線の形状、位置、及び種別、及び周辺の車線の車線情報が含まれる。
【0033】
1-1-2.目標走行経路設定部52
図3のステップS02で、目標走行経路設定部52は、自車両の目標走行経路を設定する。例えば、目標走行経路設定部52は、道路情報を用いて、自車両の現在位置から目標地点までの目標走行経路を設定する。目標走行経路の設定には、公知の各種の方法が用いられるので説明を省略する。目標走行経路では、自車両が走行する目標車線、及び車線変更位置が設定されている。例えば、本線から分流車線に移動する場合は、本線を走行する範囲、本線から分流車線に車線変更する位置、及び分流車線を走行する範囲等が設定される。
【0034】
1-1-3.減速地点設定部53
図3のステップS03で、減速地点設定部53は、自車両の走行状態、目標走行経路、及び道路情報に基づいて、目標走行経路上において、自車両が走行すべき速度が自車両の現在の走行速度v
0よりも小さくなる地点である減速地点を設定し、減速地点で走行すべき速度である減速地点速度v
2を設定する。
【0035】
減速地点は、車両が走行すべき速度が切り替わる地点である。減速地点設定部53は、制限速度の切替地点、道路種別の切替地点、道路曲率の変化による速度の切替地点の少なくとも一つに基づいて、減速地点を設定する。
【0036】
例えば、減速地点設定部53は、目標走行経路上において、現在走行中の車線の制限速度よりも低い制限速度の車線区間の開始位置を、減速地点として設定し、低下した制限速度に基づいて、減速地点速度v2を設定する。
【0037】
また、減速地点設定部53は、目標走行経路上において、現在走行中の車線の道路種別の制限速度よりも低い制限速度の道路種別の開始位置を、減速地点として設定し、低下した制限速度に基づいて、減速地点速度v2を設定する。
【0038】
また、減速地点設定部53は、目標走行経路上において、カーブ区間の開始位置を減速地点として設定し、カーブ区間の道路曲率による制限速度に基づいて、減速地点速度v2を設定する。例えば、道路曲率による制限速度は、√(横加速度の制限値/曲率)により算出される。速度指令値vset又は自車両の現在の走行速度v0が、道路曲率による制限速度よりも小さい場合は、減速地点及び減速地点速度v2は設定されなくてもよい。横加速度の制限値は、乗り心地及び車両性能を考慮して予め設定される。
【0039】
また、減速地点設定部53は、目標走行経路上に、減速が必要な料金所が存在する場合に、料金所の入り口を、減速地点として設定し、料金所の通過速度を、減速地点速度v2として設定する。減速が必要な料金所には、車載機器との無線通信により停車することなく自動的に料金を支払う料金所(例えば、ETC(Electronic Toll Collection System))があり、料金所の通過速度が規定されている場合は、その通過速度(例えば、20km/h)が、減速地点速度v2に設定される。減速が必要な料金所には、停車して支払機又は人間に料金を支払ったり、通行券を受け取ったりする料金所があり、停車が規定されている場合は、減速地点速度v2が0km/hに設定される。道路の料金所だけなく、駐車場の料金所、施設の料金所などの各種の料金所が含まれてもよい。
【0040】
また、減速地点設定部53は、目標走行経路上に、一時停止の標識又は赤信号を検出した場合は、停止線又は前方車両の停止位置の手前位置を、減速地点として設定し、減速地点速度v2を0km/hに設定する。
【0041】
また、減速地点設定部53は、目標走行経路上の自車両の前方に、停止車両を検出した場合は、停止車両の手前位置(例えば、停止車両の5m手前の位置)を、減速地点として設定し、減速地点速度v2を0km/hに設定する。前方車両以外にも、障害物、歩行者などが存在し、減速又は停止する必要がある位置が、減速地点として設定されればよい。
【0042】
減速地点設定部53は、目標走行経路上に複数の減速地点を設定した場合は、自車両に最も近い減速地点を最終的な減速地点として設定する。減速地点設定部53は、目標走行経路上に減速地点を設定しなかった場合は、減速地点がないと判定し、減速が行われない。
【0043】
1-1-4.減速開始地点設定部54
図3のステップS04で、減速開始地点設定部54は、目標走行経路上において、自車両の現在位置と減速地点との間に、自車両の減速を開始する地点である減速開始地点を設定する。
【0044】
図4に示すように、減速開始地点設定部54は、目標走行経路上において、減速地点の手前に本線から分流する分流車線が存在する場合に、本線から分流車線への移行運転の開始地点の前方に減速開始地点を設定する。
【0045】
例えば、減速開始地点設定部54は、速度指令値v
setから減速地点速度v
2まで減速するために必要な減速距離d
decelを演算し、減速地点よりも、減速距離d
decelだけ手前の位置に、減速開始地点を設定する。次式に示すように、減速開始地点設定部54は、速度指令値v
set、減速地点速度v
2、実現可能な減速度a
decelに基づいて、減速距離d
decelを演算する。実現可能な減速度a
decelは、車両性能及び乗り心地を考慮して予め設定される。速度指令値v
setは、分流車線の制限速度及びセンサ誤差などを考慮して、分流車線の制限速度に所定のマージンを加えた速度により上限制限される。
【数1】
【0046】
なお、本願において、減速度は、負の加速度を意味し、負の値であるものとする。
【0047】
減速距離ddecelは、減速開始地点が分流車線の範囲内に収まるように減少されてもよい。
【0048】
1-1-5.目標走行状態設定部55
図3のステップS05で、目標走行状態設定部55は、目標速度を設定する。目標走行状態設定部55は、減速地点の手前に分流車線が存在する場合に、分流車線への移行運転の開始地点の手前では、速度指令値v
setに基づいて自車両の目標速度v
objを設定する。また、目標走行状態設定部55は、自車両の前方の判定範囲内に他車両が存在する場合には、他車両の走行速度に応じて目標速度v
objを補正する。
【0049】
例えば、目標走行状態設定部55は、自車両の前方の判定範囲内に他車両が存在する場合には、他車両に車間距離を空けて追従するように、他車両の走行速度に応じた速度を、目標速度vobjとして設定する。目標走行状態設定部55は、自車両の前方の判定範囲内に他車両が存在しない場合には、速度指令値vsetを目標速度vobjとして設定する。
【0050】
図4及び
図5に示すように、自車両の前方に存在する他車両の走行速度が、速度指令値v
setよりも低い場合は、分流車線への移行運転の開始地点の手前において、自車両の走行速度が、速度指令値v
setよりも低くなる。そのため、自車両のみが分流車線に車線変更すると、追従していた他車両が存在しなくなるため、通常の方法では、現在の走行速度v
0から速度指令値v
setまで加速した後、減速地点速度v
2まで減速することになる。条件によっては、加速後、直ぐに減速する場合があり、乗り心地が悪化する。一方、分流車線に移行した後、加速を行わないようにすると、減速地点までの分流車線の残り距離l
frが長い場合、又は移行前の走行速度v
0が低い場合は、減速地点までの走行時間が長くなり、乗り心地が悪化する。
【0051】
そこで、目標走行状態設定部55は、減速地点の手前に分流車線が存在する場合に、分流車線への移行運転の開始地点の前方では、速度指令値vset、自車両の現在の走行速度v0(本例では、移行運転の開始地点の走行速度v0)、及び移行運転の開始地点から減速地点までの残り距離lfr、及び減速地点速度v2に基づいて、目標速度vobjを設定する。この場合も、目標走行状態設定部55は、分流車線において、自車両の前方の判定範囲内に他車両が存在する場合には、他車両の走行速度に応じて目標速度vobjを補正する。
【0052】
本線において、速度指令値vsetより低い走行速度の他車両に追従している状況で、自車両のみ分流車線に移行した場合であっても、速度指令値vset、自車両の現在の走行速度v0、移行運転の開始地点から減速地点までの残り距離lfr、及び減速地点速度v2に基づいて、目標速度vobjが設定されるので、加速後、直ぐに減速しないようにしたり、減速地点までの走行時間が長くならないようにしたり、分流車線の状態及び自車両の状態に応じて、加速及び減速を適切に行うことができ、減速地点までの走行の乗り心地を向上できる。
【0053】
分流車線への移行運転の開始地点から減速地点までの各地点の目標速度vobjの設定処理は、分流車線への移行運転が開始されたときに行われるが、分流車線への移行運転が開始された後も、現在の状態を反映させるために、継続的に行われてもよい。
【0054】
<速度指令値vsetの設定>
速度指令値vsetは、ドライバ又は自動運転機能によって設定される速度指令値である。例えば、目標走行状態設定部55は、ドライバによる、スイッチ又はレバーなどの入力装置の操作により、速度指令値vsetを増加又は減少させる。或いは、目標走行状態設定部55は、自動運転の実行中は、車線の制限速度に基づいて、速度指令値vsetを設定する。
【0055】
<移行運転の開始地点の設定>
本線から分流車線に移行するために車線変更が必要な場合において、目標走行状態設定部55は、自車両が分流車線の開始地点に到達した後であって、且つドライバによる方向指示器の操作を検出した地点を、分流車線への移行運転の開始地点として設定する。
【0056】
なお、目標走行状態設定部55は、自車両が分流車線の開始地点に到達したとき、又は自車両が、分流車線の開始地点よりも所定距離だけ手前の地点に到達したとき、表示画面及びスピーカによりドライバに方向指示器の操作を促してもよい。
【0057】
一方、本線から分流車線に移行するために車線変更が不要な場合において、目標走行状態設定部55は、分流車線の開始地点を、分流車線への移行運転の開始地点として設定する。
【0058】
<予想走行時間tconstの演算>
目標走行状態設定部55は、速度指令値vsetに従って走行すると仮定した場合における、分流車線への移行運転の開始地点から減速開始地点までの予想走行時間tconstを演算する。
【0059】
本実施の形態では、予想走行時間tconstは、自車両の現在の走行速度v0から速度指令値vsetに到達するまでの加速時間を含まない。この構成によれば、予想走行時間tconstにより、加速後減速までの時間を、より直接的に評価することができ、短期間の加速及び減速により乗り心地が悪化するか否かを判定することができる。
【0060】
目標走行状態設定部55は、速度指令値v
set、自車両の現在の走行速度v
0(本例では、移行運転の開始地点の走行速度v
0)、及び実現可能な加速度a
accelに基づいて、速度指令値v
setに到達するまでの加速距離d
accelを演算する。本実施の形態では次式が用いられる。ここで、実現可能な加速度a
accelは、正の加速度であり、車両性能及び乗り心地を考慮して予め設定される。
【数2】
【0061】
なお、式(2)の条件1)は、例えば、本線の走行中に、自車両が、速度の遅い他車両に追従走行していたために、移行運転の開始地点の自車両の走行速度v0が速度指令値vsetよりも低くなっていた場合に成立する。式(2)の条件2)は、本線の走行中に、自車両が、速度指令値vsetに従って走行していた場合に成立する。
【0062】
目標走行状態設定部55は、移行運転の開始地点から減速地点までの残り距離l
fr、加速距離d
accel、及び減速距離d
decelに基づいて、速度指令値v
setで走行する走行距離d
constを演算する。本実施の形態では次式が用いられる。ここで、max(A,B)は、A、Bのいずれか大きい方を出力する関数である。
【数3】
【0063】
そして、目標走行状態設定部55は、速度指令値v
setで走行する走行距離d
const、及び速度指令値v
setに基づいて、予想走行時間t
constを演算する。本実施の形態では次式が用いられる。
【数4】
【0064】
<減速開始地点までの目標速度v
objの設定>
図4に示すように、目標走行状態設定部55は、予想走行時間t
constが、判定時間t
th以上になる場合は、速度指令値v
setを、分流車線への移行運転の開始地点から減速開始地点までの目標速度v
objとして設定する。
【0065】
この構成によれば、減速開始地点までの残り距離が長く、予想走行時間tconstが判定時間tth以上になる場合は、自車両を速度指令値vsetまで加速させた後、減速させても、加速及び減速により乗り心地はさほど悪化せず、減速開始までの時間短縮により乗り心地が向上する。
【0066】
図5に示すように、目標走行状態設定部55は、予想走行時間t
constが、判定時間t
th未満になる場合は、自車両の現在の走行速度v
0(本例では、移行運転の開始地点の走行速度v
0)と速度指令値v
setとの小さい方を、分流車線への移行運転の開始地点から減速開始地点までの目標速度v
objとして設定する。本実施の形態では次式が用いられる。ここで、min(A,B)は、A、Bのいずれか小さい方を出力する関数である。
【数5】
【0067】
減速開始地点までの残り距離が短く、予想走行時間tconstが判定時間tth未満になる場合は、自車両を速度指令値vsetまで加速させた後、直ぐに減速させる必要があり、短期間の加速及び減速により乗り心地が悪化する。上記の構成によれば、自車両の現在の走行速度v0と速度指令値vsetとの小さい方が目標速度vobjとして設定され、速度指令値vsetまで加速されないので、短期間の加速及び減速により乗り心地が悪化することを防止できる。
【0068】
なお、予想走行時間tconstは、自車両の現在の走行速度v0から速度指令値vsetに到達するまでの加速時間を含むように設定されてもよい。この場合は、判定時間tthは、加速時間が含まれることを加味して設定される。
【0069】
<減速地点までの目標速度vobjの設定>
目標走行状態設定部55は、減速開始地点から減速地点まで、目標速度vobjから減速地点速度v2まで、目標速度vobjを次第に減少させる。例えば、所定の減速度で減速されるとよい。
【0070】
<減速地点の前方の目標速度vobjの設定>
目標走行状態設定部55は、減速地点の前方の目標速度を、減速地点の前方の道路の制限速度、速度指令値vset、及び減速地点の前方の道路曲率による制限速度の内の最も小さいものに設定する。
【0071】
以上のように、目標走行状態設定部55は、分流車線への移行運転の開始地点の前方の各地点の目標速度vobjを設定する。なお、移行運転の開始地点の前方の各地点の目標加速度、及び目標ジャークなどを設定してもよい。また、目標走行状態設定部55は、周辺監視装置31等により検出した周囲の状況に合わせて、目標走行状態を変更してもよい。
【0072】
一方、目標走行状態設定部55は、減速地点、減速地点速度v2、及び減速開始地点が設定されていない場合、又は減速地点、減速地点速度v2、及び減速開始地点が設定されているが、分流車線への移行運転が開始されていない場合は、上述したように、速度指令値vsetに基づいて自車両の目標速度vobjを設定する。
【0073】
なお、目標走行状態設定部55は、いずれの場合においても、自車両の前方の判定範囲内に他車両が存在する場合には、他車両の走行速度に応じて、目標速度vobjを補正する。
【0074】
目標走行状態設定部55は、本線から分流車線に移行するためにドライバにより方向指示器の操作が行われた後、分流車線への移行が完了するまでに、方向指示器の操作がオフにされた場合は、分流車線への移行の完了度合いに基づいて、分流車線への移行及び減速を継続するか停止するか判定し、停止すると判定した場合は、減速を行う目標速度vobjの設定を停止する。
【0075】
例えば、目標走行状態設定部55は、分流車線への自車両の横方向の進入幅が、判定幅以上である場合は、移行及び減速を継続すると判定し、進入幅が、判定幅未満である場合は、移行及び減速を停止すると判定する。
【0076】
目標走行状態設定部55は、移行及び減速を停止すると判定した場合は、速度指令値vsetに基づいて目標速度vobjを設定し、本線を走行するための速度設定を行う。
【0077】
なお、目標走行状態設定部55は、車線内を走行するため、又は車線を変更するための、目標操舵角を演算してもよい。
【0078】
1-1-6.車両制御部56
図3のステップS06で、車両制御部56は、目標速度v
objに基づいて、自車両を制御する。
【0079】
本実施の形態では、車両制御部56は、自車両の走行速度が目標速度vobjに追従するように、自車両を制御する。例えば、車両制御部56は、自車両の走行速度が、対応する位置の目標速度vobjに追従するような、動力機8の出力の指令値、及び電動ブレーキ装置9の制動力の指令値を演算し、各指令値を動力制御装置及びブレーキ制御装置に伝達する。
【0080】
動力制御装置は、出力の指令値に従って、内燃機関、モータ等の動力機8の出力を制御する。ブレーキ制御装置は、制動力の指令値に従って、電動ブレーキ装置9のブレーキ動作を制御する。
【0081】
車両制御部56は、目標操舵角、及び方向指示器の操作指令値を自動操舵制御装置及びライト制御装置に伝達してもよい。自動操舵制御装置は、目標操舵角に従って、電動操舵装置7を制御する。ライト制御装置は、方向指示器の操作指令に従って、方向指示器を制御する。
【0082】
なお、各種の車両制御の方法が用いられてもよく、車両制御として、自動運転、クルーズコントロール等の各種の車両制御の種類が行われてもよい。
【0083】
一方、車両制御部56は、ドライバによるアクセルペダル操作、ブレーキペダル操作、又はハンドル操作を検出した場合は、操作内容に基づいて、目標速度vobjに基づく制御量を変化させる、又は目標速度vobjに基づく制御を終了する。例えば、アクセルペダル操作により加速操作が検出された場合は、速度指令値vset又は目標速度vobjが増加される。アクセルペダル操作又はブレーキペダル操作により減速操作が検出された場合は、速度指令値vset又は目標速度vobjが減少される。或いは、判定値以上のアクセルペダル操作量、ブレーキペダル操作量、又はハンドル操作量が検出された場合は、目標速度vobjに基づく制御を終了し、ドライバによる手動運転に切り替えられる。この場合は、車両制御部56は、ドライバによるアクセルペダル操作、ブレーキ操作、及びハンドル操作に基づいて、動力機8の出力の指令値、電動ブレーキ装置9の制動力の指令値、及び目標操舵角を演算し、各制御装置に伝達する。
【0084】
2.実施の形態2
次に、実施の形態2に係る車両制御装置50について説明する。上記の実施の形態1と同様の構成部分は説明を省略する。本実施の形態に係る車両制御装置50の基本的な構成は実施の形態1と同様であるが、目標走行状態設定部55の処理の一部が実施の形態1と異なる。
【0085】
実施の形態1と同様に、目標走行状態設定部55は、速度指令値vsetに従って走行すると仮定した場合における、分流車線への移行運転の開始地点から減速開始地点までの予想走行時間tconstを演算する。
【0086】
本実施の形態では、目標走行状態設定部55は、予想走行時間tconstが、判定時間tth未満になる場合は、分流車線への移行運転の開始地点から減速開始地点までの予想走行時間tconstが判定時間tthになるように、分流車線への移行運転の開始地点から減速開始地点までの目標速度vobjを設定する。
【0087】
この構成によれば、減速開始地点までの走行時間の増加を抑制しつつ、不要な加減速により乗り心地が悪化することを抑制できる。
【0088】
以下、目標速度v
objの設定方法について説明する。
図6に示すように、予想走行時間t
constが判定時間t
thになるための減速開始地点までの調整後の速度をv
1
’とし、移行運転の開始地点の自車両の走行速度v
0から調整後の速度v
1
’まで、実現可能な加速度a
accelにより加速するまでの調整後の加速距離d
accel
’は、次式で求められる。
【数6】
【0089】
また、調整後の速度v
1
’から減速地点速度v
2まで、実現可能な減速度a
decelにより減速するまでの調整後の減速距離d
decel
’は、次式で求められる。
【数7】
【0090】
調整後の速度v
1
’に到達してから減速を開始するまでの、調整後の速度v
1
’で走行する調整後の走行距離d
const
’は次式で求められ、この調整後の走行距離d
const
’が、調整後の速度v
1
’に判定時間t
thを乗算した距離に一致すればよい。
【数8】
【0091】
式(6)及び式(7)を、式(8)に代入し、整理すると次式を得る。次式の調整後の速度v
1
’の2次方程式を解くと、調整後の速度v
1
’を得ることができる。
【数9】
【0092】
よって、目標走行状態設定部55は、判定時間tth、自車両の現在の走行速度v0(本例では、移行運転の開始地点の走行速度v0)、減速地点速度v2、及び移行運転の開始地点から減速地点までの残り距離lfrに基づいて、調整後の速度v1
’を演算する。調整後の速度v1
’が、自車両の現在の走行速度v0及び減速地点速度v2よりも小さくならないように、目標走行状態設定部55は、調整後の速度v1
’を、自車両の現在の走行速度v0及び減速地点速度v2のいずれか大きい方で下限制限する。
【0093】
減速開始地点設定部54は、式(7)を用い、調整後の速度v1
’に基づいて、調整後の減速距離ddecel
’を演算し、減速地点よりも、調整後の減速距離ddecel
’だけ手前の位置に、減速開始地点を設定する。
【0094】
そして、目標走行状態設定部55は、調整後の速度v1
’を、分流車線への移行運転の開始地点から減速開始地点までの目標速度vobjとして設定する。
【0095】
目標走行状態設定部55は、減速開始地点から減速地点まで、調整後の速度v1
’から減速地点速度v2まで、目標速度vobjを次第に減少させる。
【0096】
なお、予想走行時間tconstが、判定時間tth以上になる場合は、実施の形態1と同様に、目標走行状態設定部55は、速度指令値vsetを、分流車線への移行運転の開始地点から減速開始地点までの目標速度vobjとして設定すればよい。
【0097】
<本願の諸態様のまとめ>
以下、本願の諸態様を付記としてまとめて記載する。
(付記1)
自車両の走行状態、前記自車両の周辺の道路情報、及び前記自車両の周辺の他車両の情報を取得する情報取得部と、
前記自車両の目標走行経路を設定する目標走行経路設定部と、
前記走行状態、前記目標走行経路、及び前記道路情報に基づいて、前記目標走行経路上において、前記自車両が走行すべき速度が前記自車両の現在の走行速度よりも小さくなる地点である減速地点を設定し、前記減速地点で走行すべき速度である減速地点速度を設定する減速地点設定部と、
前記目標走行経路上において、前記自車両の現在位置と前記減速地点との間に、前記自車両の減速を開始する地点である減速開始地点を設定する減速開始地点設定部と、
目標速度を設定する目標走行状態設定部と、
前記目標速度に基づいて、前記自車両を制御する車両制御部と、
を備え、
前記減速開始地点設定部は、前記目標走行経路上において、前記減速地点の手前に本線から分流する分流車線が存在する場合に、前記本線から前記分流車線への移行運転の開始地点の前方に前記減速開始地点を設定し、
前記目標走行状態設定部は、前記減速地点の手前に前記分流車線が存在する場合に、前記分流車線への移行運転の開始地点の手前では、速度指令値に基づいて前記自車両の目標速度を設定し、前記分流車線への移行運転の開始地点の前方では、前記速度指令値、前記自車両の現在の走行速度、前記分流車線への移行運転の開始地点から前記減速地点までの残り距離、及び前記減速地点速度に基づいて、前記目標速度を設定し、
前記自車両の前方の判定範囲内に前記他車両が存在する場合には、前記他車両の走行速度に応じて前記目標速度を補正する車両制御装置。
【0098】
(付記2)
前記減速地点は、前記自車両が走行すべき速度が切り替わる地点であり、
前記減速地点設定部は、制限速度の切替地点、道路種別の切替地点、道路曲率の変化による速度の切替地点の少なくとも一つに基づいて、前記減速地点を設定する付記1に記載の車両制御装置。
【0099】
(付記3)
前記目標走行状態設定部は、前記本線から前記分流車線に移行するために車線変更が必要な場合において、前記分流車線の開始地点に到達した後であって、且つドライバによる方向指示器の操作を検出した地点を、前記分流車線への移行運転の開始地点として設定し、
前記本線から前記分流車線に移行するために車線変更が不要な場合において、前記分流車線の開始地点を、前記分流車線への移行運転の開始地点として設定する付記1又は2に記載の車両制御装置。
【0100】
(付記4)
前記目標走行状態設定部は、前記速度指令値に従って走行すると仮定した場合における、前記分流車線への移行運転の開始地点から前記減速開始地点までの予想走行時間を演算し、前記予想走行時間が、判定時間未満になる場合は、前記自車両の現在の走行速度と前記速度指令値との小さい方を、前記分流車線への移行運転の開始地点から前記減速開始地点までの前記目標速度として設定する付記1から3のいずれか一項に記載の車両制御装置。
【0101】
(付記5)
前記目標走行状態設定部は、前記速度指令値に従って走行すると仮定した場合における、前記分流車線への移行運転の開始地点から前記減速開始地点までの予想走行時間を演算し、前記予想走行時間が、判定時間未満になる場合は、前記分流車線への移行運転の開始地点から前記減速開始地点までの予想走行時間が前記判定時間になるように、前記分流車線への移行運転の開始地点から前記減速開始地点までの前記目標速度を設定する付記1から3のいずれか一項に記載の車両制御装置。
【0102】
(付記6)
前記目標走行状態設定部は、前記速度指令値に従って走行すると仮定した場合における、前記分流車線への移行運転の開始地点から前記減速開始地点までの予想走行時間を演算し、前記予想走行時間が、判定時間以上になる場合は、前記速度指令値を、前記分流車線への移行運転の開始地点から前記減速開始地点までの前記目標速度として設定する付記1から5のいずれか一項に記載の車両制御装置。
【0103】
(付記7)
前記予想走行時間は、前記自車両の現在の走行速度から前記速度指令値に到達するまでの加速時間を含まない付記4から6のいずれか一項に記載の車両制御装置。
【0104】
(付記8)
前記予想走行時間は、前記自車両の現在の走行速度から前記速度指令値に到達するまでの加速時間を含む付記4から6のいずれか一項に記載の車両制御装置。
【0105】
(付記9)
前記目標走行状態設定部は、前記減速地点の前方の前記目標速度を、前記減速地点の前方の道路の制限速度、前記速度指令値、及び前記減速地点の前方の道路曲率による制限速度の内の最も小さいものに設定する付記1から8のいずれか一項に記載の車両制御装置。
【0106】
(付記10)
前記車両制御部は、ドライバによるアクセルペダル操作、ブレーキペダル操作、又はハンドル操作が検出された場合は、操作内容に基づいて、前記目標速度に基づく制御量を変化させる、又は前記目標速度に基づく制御を終了する付記1から9のいずれか一項に記載の車両制御装置。
【0107】
(付記11)
前記目標走行状態設定部は、前記本線から前記分流車線に移行するためにドライバにより方向指示器の操作が行われた後、前記分流車線への移行が完了するまでに、前記方向指示器の操作がオフにされた場合は、前記分流車線への移行の完了度合いに基づいて、前記分流車線への移行及び減速を継続するか停止するか判定し、停止すると判定した場合は、減速を行う前記目標速度の設定を停止する付記1から10のいずれか一項に記載の車両制御装置。
【0108】
本願は、様々な例示的な実施の形態及び実施例が記載されているが、1つ、または複数の実施の形態に記載された様々な特徴、態様、及び機能は特定の実施の形態の適用に限られるのではなく、単独で、または様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。従って、例示されていない無数の変形例が、本願明細書に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合、さらには、少なくとも1つの構成要素を抽出し、他の実施の形態の構成要素と組み合わせる場合が含まれるものとする。
【符号の説明】
【0109】
50:車両制御装置、51:情報取得部、52:目標走行経路設定部、53:減速地点設定部、54:減速開始地点設定部、55:目標走行状態設定部、56:車両制御部、lfr:分流車線への移行運転の開始地点から減速地点までの残り距離、tconst:予想走行時間、tth:判定時間、v0:自車両の現在の走行速度、v2:減速地点速度、vobj:目標速度、vset:速度指令値