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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170778
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】イントロデューサー用シース
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/06 20060101AFI20241204BHJP
【FI】
A61M25/06 550
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087490
(22)【出願日】2023-05-29
(71)【出願人】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】市川 真▲祐▼子
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA05
4C267AA06
4C267AA15
4C267AA16
4C267AA17
4C267BB02
4C267BB10
4C267BB27
4C267CC08
4C267GG03
4C267GG04
4C267GG06
4C267GG07
4C267GG08
4C267GG09
4C267GG10
4C267GG11
(57)【要約】
【課題】比較的大口径のイントロデューサー用シースの操作性を改善する。
【解決手段】本発明に係るイントロデューサー用シース100は、経皮的に生体管腔に導入され、医療器具を挿通可能であり、かつ、液体を流通可能なルーメン111を備えるシース本体110と、シース本体の基端側に接続され、医療器具を挿通可能な内壁面を液体の導入によって内方に変位させ、内壁面を液体の排出によって外方に変位させることが可能な内部空間124を有する弁体123を備えたハブ120と、を有し、ハブは、入口131からルーメンに通じるとともに、内部空間に通じる共通ポート130を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
経皮的に生体管腔に導入され、医療器具を挿通可能であり、且つ、液体を流通可能なルーメンを備えるシース本体と、
前記シース本体の基端側に接続され、前記医療器具を挿通可能な内壁面を前記液体の導入によって内方に変位させ、前記内壁面を前記液体の排出によって外方に変位させることが可能な内部空間を有する弁体を備えたハブと、を有し、
前記ハブは、入口から前記ルーメンに通じるとともに、前記内部空間に通じる共通ポートを備えるイントロデューサー用シース。
【請求項2】
前記共通ポートは、前記入口から前記ルーメンと前記内部空間に通じる流路が途中まで共通する共通区間と、前記共通区間から前記ルーメンに分岐する第1分岐区間と、前記共通区間から前記内部空間に分岐する第2分岐区間と、を備える請求項1に記載のイントロデューサー用シース。
【請求項3】
前記第1分岐区間には、閾値以上の圧力になるまで前記液体の前記ルーメンへの流通を阻止し、閾値以上の圧力になることで前記液体の前記ルーメンへの流通を許容する弁が設けられる請求項2に記載のイントロデューサー用シース。
【請求項4】
前記第2分岐区間には、前記内部空間に流入した前記液体が前記共通区間に流通することを防止する逆流防止弁が設けられる請求項2または3に記載のイントロデューサー用シース。
【請求項5】
前記共通区間から前記第1分岐区間と前記第2分岐区間に分岐する分岐箇所には、前記入口から流入する前記液体が前記第1分岐区間および前記第2分岐区間のいずれに流通するかを使用者の操作によって切替可能な切替部材が設けられる請求項2に記載のイントロデューサー用シース。
【請求項6】
前記共通ポートは、前記共通ポートの前記入口から前記ルーメンに通じる第1流路と前記入口から前記内部空間に通じる第2流路とを区画する区画壁を備える請求項1に記載のイントロデューサー用シース。
【請求項7】
前記区画壁は、前記共通ポートの前記入口における径方向の内側と外側とを隔てるように形成され、
前記共通ポートは、前記共通ポートの内側と前記区画壁を連結するように設けられ、前記区画壁を支持する支持部を備える請求項6に記載のイントロデューサー用シース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イントロデューサー用シースに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、カテーテルを使用した手技等において、血管内へのアクセス経路を形成するための医療器具としてイントロデューサーが使用されている。一般的なイントロデューサーは、イントロデューサー用シースと、ダイレーターと、を備える。また、イントロデューサー用シースは、ルーメンが形成されたシース本体(シースチューブ)と、シース本体に接続されたハブと、を備える(特許文献1を参照)。
【0003】
イントロデューサーを使用した手技では、術者等は、シース本体のルーメン内にダイレーターを挿入・固定した状態で、患者の肢体等に形成した穿刺部(穿孔)を介して経皮的に血管内へイントロデューサー用シースを挿入する。術者等は、シース本体の先端部を血管内に挿入した状態で、シース本体からダイレーターを抜去する。術者等は、シース本体からダイレーターを抜去した後、シース本体のルーメンを介して、ガイドワイヤーや各種のカテーテル等を血管内へ導入することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-167078号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
イントロデューサー用シースには生体管腔に挿入した際に先端側からの血流の逆流を防ぐ止血弁がハブに設けられ、シース本体には生理食塩水を流入させることでシース本体の内壁面の洗浄が行われ得る。イントロデューサー用シースの中でも比較的大口径のものには、特許文献1のように止血弁の弁としての機能を発揮させるために止血弁の内部空間に液体を流通させるポートと、シース本体の内壁面に液体を流通させるポートが別々に設けられるものが存在する。このような構成の場合、止血弁に液体を流通させるポートとシース本体に液体を流すポートのそれぞれに活栓を接続する必要があり、操作性が良好でない点に本発明者は着目し、鋭意検討して本発明に到達した。
【0006】
本発明の少なくとも一実施形態は、上述した課題を解決するためになされたものであり、比較的大口径のイントロデューサー用シースにおける操作性を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、下記(1)~(7)のいずれか1つに記載の手段によって達成され得る。
【0008】
(1)経皮的に生体管腔に導入され、医療器具を挿通可能であり、かつ、液体を流通可能なルーメンを備えるシース本体と、前記シース本体の基端側に接続され、前記医療器具を挿通可能な内壁面を前記液体の導入によって内方に変位させ、前記内壁面を前記液体の排出によって外方に変位させることを可能な内部空間を有する弁体を備えたハブと、を有し、前記ハブは、入口から前記ルーメンに通じるとともに、前記内部空間に通じる共通ポートを備えるイントロデューサー用シース。
【0009】
(2)前記共通ポートは、前記入口から前記ルーメンと前記内部空間に通じる流路が途中まで共通する共通区間と、前記共通区間から前記ルーメンに分岐する第1分岐区間と、前記共通区間から前記内部空間に分岐する第2分岐区間と、を備える(1)に記載のイントロデューサー用シース。
【0010】
(3)前記第1分岐区間には、閾値以上の圧力になるまで前記液体の前記ルーメンへの流通を阻止し、閾値以上の圧力になることで前記液体の前記ルーメンへの流通を許容する弁が設けられる(2)に記載のイントロデューサー用シース。
【0011】
(4)前記第2分岐区間には、前記内部空間に流入した前記液体が前記共通区間に流通することを防止する逆流防止弁が設けられる(2)または(3)に記載のイントロデューサー用シース。
【0012】
(5)前記共通区間から前記第1分岐区間と前記第2分岐区間に分岐する分岐箇所には、前記入口から流入する前記液体が前記第1分岐区間および前記第2分岐区間のいずれに流通するかを使用者の操作によって切替可能な切替部材が設けられる(2)に記載のイントロデューサー用シース。
【0013】
(6)前記共通ポートは、前記共通ポートの前記入口から前記ルーメンに通じる第1流路と前記入口から前記内部空間に通じる第2流路とを区画する区画壁を備える(1)に記載のイントロデューサー用シース。
【0014】
(7)前記区画壁は、前記共通ポートの前記入口における径方向の内側と外側とを隔てるように形成され、
前記共通ポートは、前記共通ポートの内側と前記区画壁を連結するように設けられ、前記区画壁を支持する支持部を備える(6)に記載のイントロデューサー用シース。
【発明の効果】
【0015】
上記イントロデューサー用シースによれば、比較的大口径のイントロデューサー用シースの操作性を良好にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1実施形態に係るイントロデューサーを示す図である。
図2図1に係るイントロデューサー用シースの共通ポートの入口からの液体の流れを示す図である。
図3図1に係るイントロデューサー用シースの共通ポートの入口からの液体の流れを示す図である。
図4】第2実施形態に係るイントロデューサー用シースの共通ポート付近を示す図である。
図5図4に係るイントロデューサー用シースの共通ポートの入口からの液体の流れを示す図である。
図6図4に係るイントロデューサー用シースの共通ポートの入口からの液体の流れを示す図である。
図7】第3実施形態に係るイントロデューサー用シースの共通ポートの入口からの液体の流れを示す図である。
図8】第3実施形態に係るイントロデューサー用シースの共通ポートの入口を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。ここで示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するために例示するものであって、本発明を限定するものではない。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で当業者などにより考え得る実施可能な他の形態、実施例および運用技術などは全て本発明の範囲、要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0018】
さらに、本明細書に添付する図面は、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺、縦横の寸法比、形状などについて、実物から変更し模式的に表現される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。
【0019】
また、以下の説明において、「第1」、「第2」のような序数詞を付して説明するが、特に言及しない限り、便宜上用いるものであって何らかの順序を規定するものではない。図1は第1実施形態に係るイントロデューサー10を示す図である。図2図3は、図1に係るイントロデューサー用シース100の共通ポート130の入口131からの液体の流れを示す図である。
【0020】
(イントロデューサー10)
イントロデューサー10は、図1に示すように、イントロデューサー用シース100と、ダイレーター200と、を有する。
【0021】
イントロデューサー用シース100は、シース本体110のルーメン111(図2図3を参照)を介してダイレーター200のダイレーター本体210や各種の医療器具(カテーテルデバイスやガイドワイヤー等)を生体管腔内へ導入するために使用できる。本実施形態に係るイントロデューサー用シース100は、ステントグラフト等を使用したり、血栓吸引等に利用したりすることができる。なお、以下の説明においてイントロデューサー用シース100の手元操作部側を「基端側」、体腔内へ挿通される側を「先端側」と称する。また、以下では血管を生体管腔の例として説明する。
【0022】
(イントロデューサー用シース100)
図1図3を参照して概説すれば、イントロデューサー用シース100は、シース本体110、シース本体110の基端側に取り付けられるハブ120、ハブ120の内部に設けられる共通ポート130を備える。以下、詳述する。
【0023】
(シース本体110)
シース本体110は経皮的に生体管腔に挿入され、カテーテルなどの医療器具を挿通可能であり、かつ、液体を流通可能なルーメン111を備える管状部材である。シース本体110は、20Fr程度であって、内径7mm以上に構成できる。
【0024】
シース本体110の構成材料としては、例えば、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、またはこれら二種以上の混合物など)、ポリオレフィンエラストマー、ポリオレフィンの架橋体、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリエステル、ポリエステルエラストマー、ポリウレタン、ポリウレタンエラストマー、フッ素樹脂(例えば、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン-エチレン共重合体など)、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアセタール、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトンなどの高分子材料またはこれらの混合物等を用いることができる。
【0025】
(ハブ120)
ハブ120は、シース本体110の基端側に接続される。本実施形態に係るハブ120には、シース本体110の内部と連通する共通ポート130が形成されている。共通ポート130には、例えばポリ塩化ビニル製の可撓性を有するチューブ140の一端が液密に接続されている。チューブ140の他端は、例えば三方活栓150が装着されている。この三方活栓150のポートからチューブ140を介してイントロデューサー用シース100内に例えば生理食塩水のような液体を注入する。
【0026】
図2を参照して、ハブ120は、ハブ本体121と、ハブ本体121内に形成されてシース本体110のルーメン111と連通する中心孔122と、中心孔122の基端側に設けられる弁体123と、を有する。弁体123は、医療器具を挿通可能な内壁面125を液体の導入によって内方に変位させ、内壁面125を液体の排出によって外方に変位させることが可能な内部空間124を有する。弁体123の内部空間124に液体を導入して弁体123を膨張させることによって、シース本体110や医療器具を血管等に挿入した際に血管から血液が内壁面125を通じて体外に流出しないようにできる。
【0027】
共通ポート130の入口131から流通する液体は、弁体123の内部空間124と、シース本体110のルーメン111に流通するように流路を形成している。共通ポート130から弁体123とシース本体110のルーメン111に流通する流路として、本実施形態では図2図3に示すように共通区間132と、共通区間132から分岐する第1分岐区間133と、第2分岐区間134と、を備える。
【0028】
共通区間132は、共通ポート130の入口131から弁体123の内部空間124までの流路とシース本体110のルーメン111までの流路が途中まで共通している区間として構成している。共通区間132は、図2図3において直線的に図示しているが、あくまで一例であり、直線的でなくてもよい。
【0029】
第1分岐区間133は、共通区間132からシース本体110のルーメン111に分岐する流路として構成している。第1分岐区間133には、所定の圧力まで入口131からルーメン111への液体の流通を阻止し、圧力の値が閾値を超えた際に液体をルーメン111に流通させる弁135を設けることができる。弁135の閾値は、弁体123同士が密着し血液が漏出せず、かつ、医療器具が弁体123から挿入可能な程度に膨張する際の圧力である。その閾値を超えると弁135が開通して液体が流通して第1分岐区間133を介してルーメン111に流入する。弁135は、アンブレラ弁など公知の構造が採用できる。
【0030】
第2分岐区間134は、共通区間132から弁体123の内部空間124に分岐する流路として構成している。第2分岐区間134の分岐箇所の付近には内部空間124に流入した液体が共通区間132に流通することを防止する逆流防止弁136を設けることができる。逆流防止弁136は、弁体123に医療器具を挿入して弁体123内部に圧力が生じても弁体123内の液体が共通区間132へ逆流しないように構成されている。逆流防止弁136は弾性変形可能な部材で構成でき、共通区間132から内部空間124へは部材の中央が開くことで流通を許容し(図2参照)、内部空間124から共通区間132へは部材の中央が閉じることで流通を阻止するように形成できる(図3参照)。逆流防止弁は、ダックビル弁など公知の構造が採用できる。
【0031】
ハブ120の構成材料としては、特に限定されないが、硬質樹脂のような硬質材料が好適である。硬質樹脂の具体例としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスチレン等が挙げられる。
【0032】
弁体123、弁135、および逆流防止弁136の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、弾性部材であるシリコーンゴム、ラテックスゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム等が挙げられる。
【0033】
(ダイレーター200)
図1に示すように、ダイレーター200は、シース本体110に挿通可能な管状体により構成されたダイレーター本体210と、ハブ120と接続可能に構成されたダイレーターハブ220と、を有している。
【0034】
ダイレーター200は、イントロデューサー用シース100のシース本体110を生体管腔内に挿入するときに、シース本体110の折れを防いだり、皮膚の穿孔を広げたりするために用いられる。
【0035】
ダイレーター本体210を構成する材料は、特に制限されず、ダイレーター本体210として従来使用されるのと同様の材料を使用できる。具体的には、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)等のポリオレフィン、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)等のフッ素系ポリマーなどが挙げられる。
【0036】
ダイレーターハブ220の構成材料としては、特に限定されないが、硬質樹脂のような硬質材料が好適である。硬質樹脂の具体例としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスチレン等が挙げられる。
【0037】
次に本実施形態に係るイントロデューサー用シース100を使用した治療方法を説明する。
【0038】
まず、皮膚の所定位置に導入針等を用いて穿孔し、該導入針の内腔よりガイドワイヤーを例えば血管内に挿入し、ガイドワイヤーを生体管腔に留置したまま導入針を生体管腔から抜去する。そして、三方活栓150を通じて生理食塩水をチューブ140から共通ポート130の入口131に流入させる。生理食塩水が入口131から流通すると、弁135が閉じたままで、逆流防止弁136が開くように動作することによって生理食塩水は内部空間124に流通し、弁体123を膨張させる(図2の矢印参照)。弁体123が十分に膨張したら、液体は内部空間124に流通しなくなり、弁135付近の圧力が上昇し、圧力が閾値を超えると、液体が弁135を流通してルーメン111に流通し、シース本体110の洗浄が行われる(図3の矢印参照)。シース本体110の洗浄が終了後、三方活栓150の流路を閉めて生理食塩水の注入を止める。
【0039】
次に、生体管腔に留置されたガイドワイヤーにダイレーター200を沿わせつつ、イントロデューサー10を穿刺する。そして、イントロデューサー用シース100を生体管腔に留置したまま、イントロデューサー用シース100からガイドワイヤーおよびダイレーター200を抜去する。これにより、イントロデューサー用シース100が、体外と血管内とをつなぐ通路として機能し、このシースを通してカテーテル等の医療器具を血管内に挿入し、各種手技を実施することができる。
【0040】
以上説明したように、本実施形態に係るイントロデューサー用シース100は、シース本体110と、ハブ120と、を有する。シース本体110は、経皮的に生体管腔に導入され、医療器具を挿通可能であり、液体を流通可能なルーメン111を備えるように構成している。ハブ120は、シース本体110の基端側に接続され、医療器具を挿通可能な内壁面125を液体の導入によって内方に変位させ、内壁面125を液体の排出によって外方に変位させることを可能な内部空間124を有する弁体123を備える。ハブ120は、入口131からシース本体110のルーメン111に通じるとともに内部空間124に通じる共通ポート130を備える。
【0041】
このように共通ポート130から液体を流通させることによって、弁体123の膨張による血液の漏れを防ぐ機能の発揮とルーメン111の洗浄を行うことができる。また、共通ポート130でシース本体110の洗浄と弁体123の拡張を行えることで、シースの洗浄と弁体の拡張のためにチューブ等を接続する回数を1回で済ませることができる。これにより、イントロデューサー用シースの操作性を良好にするか、または向上させることができる。
【0042】
また、共通ポート130は、共通区間132と、第1分岐区間133と、第2分岐区間134と、を備える。共通区間132は、入口131からルーメン111と内部空間124に通じる流路が途中まで共通する部位に相当する。第1分岐区間133は、共通区間132からルーメン111に分岐するように構成している。第2分岐区間134は、共通区間132から内部空間124に分岐するように構成している。これにより、共通ポート130の入口131から流入した液体をルーメン111に流通させてシース本体110の洗浄を行い、弁体123の内部空間124に流通させて弁体123を膨張させて弁体123としての機能を発揮させることができる。
【0043】
また、第1分岐区間133には、閾値以上の圧力になるまで液体のルーメン111への流通を阻止し、閾値以上の圧力になることで液体のルーメン111への流通を許容する弁135を設けるように構成している。これにより、閾値以上の圧力になるまでは入口131からの液体を内部空間124に流通させて弁体123を膨張させて血液の漏れを防ぐ機能を発揮させ、弁体123が膨張してからは液体をルーメン111に流通させてシース本体110の洗浄を実施できる。
【0044】
また、第2分岐区間134には、内部空間124に流入した液体が共通区間132に流通することを防止する逆流防止弁136を設けるように構成している。このように構成することによって、内部空間124の液体がルーメン111に流通することで弁体123の膨張が弱まり、弁体123の血液の漏れを防ぐ機能が低下することを防止または抑制できる。
【0045】
(第2実施形態)
図4は、第2実施形態に係るイントロデューサー用シース100aに係るハブ120aを示す図である。図5図6は、図4におけるハブ120aの内部において共通ポート130aからの液体の流れを説明する図である。
【0046】
第1実施形態では共通ポート130の入口131からの流路がルーメン111と内部空間124の途中まで共通する共通区間132と、共通区間132から分岐する第1分岐区間133と第2分岐区間134によって構成されると説明した。ただし、共通ポートからの流路は、以下のように構成することもできる。なお、シース本体110は第1実施形態と同様であるため、共通する説明を省略する。
【0047】
共通ポート130aの入口131からの流路は、第1実施形態と同様に共通区間132a、共通区間132aからルーメン111に分岐する第1分岐区間133a、及び共通区間132aから内部空間124に分岐する第2分岐区間134aを備える(図4図6参照)。共通区間132a、第1分岐区間133a、第2分岐区間134aは各々の形状が第1実施形態の共通区間132、第1分岐区間133、及び第2分岐区間134と異なる。そのため、第1実施形態の共通区間132、第1分岐区間133、及び第2分岐区間134と符号を変えているが、各々の機能は第1実施形態と同様である。そのため、各々の詳細な説明を省略する。
【0048】
共通区間132aと第1分岐区間133aと第2分岐区間134aの分岐箇所には使用者の操作に応じて入口131から流入する液体が第1分岐区間133aおよび第2分岐区間134aのいずれに流通するかを切替可能な切替部材135aを設置している。
【0049】
切替部材135aは、図4図6に示すように使用者によって把持できる把持部136aと、把持部136aの操作に応じて共通区間132aと第1分岐区間133aまたは第2分岐区間134aの流通の切り替えが可能な回転部材137aを備える。把持部136aは、液体の流通方向を認識しやすいように長手部分を備えるように形成できるが、具体的な形状は特に限定されない。
【0050】
回転部材137aは、把持部136aの操作に応じて回転可能に構成され、共通区間132aから流通する液体を第1分岐区間133aまたは第2分岐区間134aのいずれかに流通できるように構成している。回転部材137aは、図5図6に示すように液体が第1分岐区間133aまたは第2分岐区間134aのいずれかに流通できるように空洞を形成している。
【0051】
本実施形態に係るイントロデューサー用シース100aの使用方法は、切替部材135aの把持部136aを使用者の操作によって図5に示すように内部空間124に通じるようにした状態で生理食塩水を流通させて弁体123を膨張させる。弁体123が十分に膨張したら、把持部136aを回転させて図6に示すように液体の流通方向を切り替える。これにより、共通ポート130aからの液体はルーメン111に流通するようになり、シース本体110の洗浄が行われる。その他は第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。なお、上記では弁体123を拡張させたうえでシース本体110を洗浄したが、シース本体110の洗浄をした後に弁体123を拡張させてもよい。
【0052】
以上説明したように、本実施形態に係るイントロデューサー用シース100aは、共通区間132aから第1分岐区間133aと第2分岐区間134aに分岐する分岐箇所に切替部材135aを設けている。切替部材135aは、共通ポート130aの入口131から流入する液体を第1分岐区間133aと第2分岐区間134aのいずれに流通させるかを使用者の操作によって切替可能に構成している。このように構成することによって、共通ポート130aから流通する液体をシース本体110の洗浄に使用したり、弁体123の膨張に使用したりするかを使用者の操作によって自由に切り替えることができる。
【0053】
(第3実施形態)
図7は第3実施形態に係るイントロデューサー用シース100bのハブ120bの内部を示す断面図であり、図8図7に係るハブ120bの共通ポート130bを示す図である。第1実施形態では共通ポート130の入口131からの流路が共通区間132と第1分岐区間133と第2分岐区間134によって構成されると説明した。ただし、共通ポートからシース本体110の洗浄と弁体123の内部空間124の膨張を行う流路は以下のように構成することができる。なお、シース本体110の構成は第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0054】
本実施形態において共通ポート130bの入口131bの付近において流路は、図7図8に示すように、区画壁134bによって径方向における外側の第1流路132bと内側の第2流路133bに区画されるように構成している。共通ポート130bの第1流路132bは、入口131bからシース本体110のルーメン111と連通するように構成している。共通ポート130bの第2流路133bは、入口131bから内部空間124に通じるように形成している。
【0055】
また、共通ポート130bの入口131bにおいて内側と外側を区画する区画壁134bは、図8に示すように連結壁135b(支持部に相当)によって共通ポート130bの内側の壁136bと一体に連結している。区画壁134bは、共通ポート130bを正面視した際の第2流路133bの面積が第1流路132bの面積よりも大きくなるように形成している。また、区画壁134bは、使用中に第1流路132bが折れ曲がりによって閉塞しないように区画壁134bの肉厚をチューブ140(共通ポートに接続される管状部材)の肉厚より厚く構成できる。液体が流通するルーメンを第1流路と第2流路に区画する構成は、チューブ140においても同様に構成できる。
【0056】
連結壁135bは、区画壁134bを支持するように構成している。連結壁135bは、図8における角度方向において略均等な角度で4つ設けるように構成している。ただし、区画壁134bを共通ポート130bの内側の壁136bと一体にできれば、連結壁135bの数は4つでなくてもよく、連結壁135bが複数の場合の角度間隔は均等でなくてもよい。連結壁の数は2つ以上に構成できる。
【0057】
本実施形態に係るイントロデューサー用シース100bの使用例として、三方活栓150から生理食塩水を流通させると、共通ポート130bの入口131bには内部空間124に通じる第2流路133bとルーメン111に通じる第1流路132bを設けている。そのため、生理食塩水等の液体は第2流路133bから内部空間124に流通すると同時に、第1流路132bからルーメン111へと流通する。これにより、弁体123を膨張させる操作とシース本体110の洗浄を同時に実施できる。そのほかの操作は第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0058】
以上説明したように、本実施形態では共通ポート130bの入口131bからルーメン111に通じる第1流路132bと入口131bから内部空間124に通じる第2流路133bとを区画する区画壁134bを設けるように構成している。そのため、共通ポート130bから液体を流通させることによって、弁体123の膨張とシース本体110の洗浄を同時に実施することができる。
【0059】
また、区画壁134bは、共通ポート130bの入口131bにおける径方向の内側と外側とを隔てるように形成している。共通ポート130bは、共通ポート130bの内側の壁136bと区画壁134bを連結するように設けられ、区画壁134bを支持する支持部として連結壁135bを備える。これにより、区画壁134bを共通ポート130bに一体に保持して、入口131bからの液体を内部空間124とルーメン111に流通させることができる。
【0060】
なお、本発明は上述した実施形態および変形例にのみ限定されず、特許請求の範囲において種々の変更が可能である。イントロデューサー用シースを使用した手技の対象となる生体管腔は血管であると説明したが、共通ポートを備えたイントロデューサー用シースを使用できればイントロデューサー用シースは血管以外の部位に使用してもよい。
【0061】
また、明細書内において説明した各部の構造や部材の配置等は任意に変更することができる。図示により説明した付加的な部材の使用の省略や、その他の付加的な部材の使用等も任意に行い得る。
【符号の説明】
【0062】
100、100a、100b イントロデューサー用シース、
110 シース本体、
111 ルーメン、
120 ハブ、
123 弁体、
124 内部空間(弁体の内部空間)、
125 内壁面(弁体の内壁面)、
130、130a、130b 共通ポート、
131、131b 入口(共通ポートの入口)、
132、132a 共通区間、
132b 第1流路、
133、133a 第1分岐区間、
133b 第2流路、
134、134a 第2分岐区間、
135 弁、
135a 切替部材、
134b 区画壁、
136 逆流防止弁、
135b 連結壁(支持部)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8