(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170780
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】切削工具
(51)【国際特許分類】
B23G 5/06 20060101AFI20241204BHJP
【FI】
B23G5/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087492
(22)【出願日】2023-05-29
(71)【出願人】
【識別番号】398000141
【氏名又は名称】有限会社津谷工業
(74)【代理人】
【識別番号】100121658
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 昌義
(72)【発明者】
【氏名】津谷 雄次
(57)【要約】
【課題】本発明は、保持具をより簡便に付け替えることが可能な切削工具を提供する。
【解決手段】
本発明の一の観点に係る切削工具1は、軸の一方の先端側に、第一の平坦面21によって囲まれた略正方形である多角部2と、多角部よりも奥側に、軸の周方向に沿って第二の平坦面31が少なくとも3つ円弧を介して分散配置された面取部3と、他端側に、螺旋状の凸部41が形成された切削部4を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸の一方の先端側に、第一の平坦面によって囲まれた多角部と、
前記多角部よりも奥側に、前記軸の周方向に沿って第二の平坦面が少なくとも3つ円弧を介して分散配置された面取部と、を有する切削工具。
【請求項2】
前記面取部の前記第二の平坦面の幅は、前記軸の直径の半分以下である請求項1記載の切削工具。
【請求項3】
前記面取部の3つの前記第二の平坦面は、前記軸の周囲方向に沿って略等間隔で配置されている請求項1記載の切削工具。
【請求項4】
前記多角部の断面は略正方形である請求項1記載の切削工具。
【請求項5】
前記軸の他端側に、螺旋状の凸部が形成された切削部を有する請求項1記載の切削工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は切削工具に関する。
【背景技術】
【0002】
ネジは、円筒形状又は円錐形上の軸部材の周囲に螺旋状の凸部が形成された部材であって、複数の部材を組み合わせて固定する際に欠かすことができない部材である。
【0003】
一方で、ネジは、固定対象の部材に、ネジの周囲に形成された凸部と嵌め合わせるためのネジ溝が形成された穴を有していることが重要である。このネジ溝が形成された穴を形成するためには、例えば「タップ」と呼ばれる工具が有用である。
【0004】
タップは、上記ネジと同様、先端に螺旋状の凸部が形成されており、このタップを予め形成された穴(ネジ溝が形成されていない穴)に回しながら挿入していくことで、この凸部に対応したネジ溝を穴の内周に形成することができる。
【0005】
タップに関する技術としては、例えば下記非特許文献1に記載がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】https://sakusakuec.com/shop/pg/1tap02/
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記非特許文献1で例示されるような一般的なタップは、軸の一方に、螺旋状の凸部が形成される切削部を有し、他方にシャンク部を有して構成されている。そしてこのシャンク部を、人力で回転させるためのタップハンドルや、工作機械で回転させるためのタップホルダといった保持具に固定接続することで、使用者はタップを効率的に回転させ、ネジ溝を形成することができる。
【0008】
しかしながら、タップは使用の度にこれらタップハンドルやタップホルダ等の保持具を付け替える作業が必要となるが、この付け替え作業は非常に手間がかかる。特に、タップにはさまざまな種類があるものの、タップを保持するためにはこれに適合可能な適切な保持具を選択しなければならない、逆に、適切な保持具がない場合は使うことができないといった課題がある。この課題は、タップだけに限られず切削工具一般に言えることでもある。
【0009】
そこで、本発明は、上記課題に鑑み、保持具をより簡便に付け替えることが可能な切削工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する本発明の一の観点に係る切削工具は、軸の一方の先端側に、第一の平坦面によって囲まれた多角部と、多角部よりも奥側に、軸の周方向に沿って第二の平坦面が少なくとも3つ円弧を介して分散配置された面取部と、を有するものである。
【0011】
本観点において、限定されるわけではないが、面取部の第二の平坦面の幅は、軸の直径の半分以下であることが好ましい。
【0012】
本観点において、限定されるわけではないが、面取部の3つの第二の平坦面は、軸の周囲方向に沿って略等間隔で配置されていることが好ましい。
【0013】
本観点において、限定されるわけではないが、多角部の断面は略正方形であることが好ましい。
【0014】
本観点において、限定されるわけではないが、軸の他端側に、螺旋状の凸部が形成された切削部を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
以上、本発明によって、保持具をより簡便に付け替えることが可能な切削工具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施形態に係る切削工具の概略を示す図である。
【
図2】実施形態に係る切削工具の概略を示す図である。
【
図3】実施形態に係る切削工具の一部断面図である。
【
図4】実施形態に係る切削工具をタップハンドルで把持した場合のイメージを示す図である。
【
図5】実施形態に係る切削工具をチャックで把持した場合のイメージを示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は多くの異なる形態による実施が可能であり、以下に示す実施形態、実施例に記載された具体的な例示にのみ限定されるわけではない。
【0018】
図1は、本実施形態に係る切削工具(以下「本工具」という。)1の概略を示す図である。また、
図2は、本工具を軸の延伸方向に沿ってみた場合の概略を示す図である。また、
図3は、その一部(面取部)を、軸の延伸方向に対して垂直な面に沿って切断した場合の断面である。
【0019】
これらの図で示すように、本工具1は、軸の一方の先端側に、第一の平坦面21によって囲まれた多角部2と、多角部2よりも奥側に、軸の周方向に沿って第二の平坦面31が少なくとも3つ円弧を介して分散配置された面取部3と、を有するものである。
【0020】
本工具1に対しては、後述の記載から明らかとなるが、軸の一方の端部(先端側)に、多角部2だけでなく面取部3を設けることで、様々な保持具に対して固定することが可能となる。具体的には、多角部2では例えばタップハンドルに、面取部3ではチャックに取り付けることが可能となる。すなわち、保持具をより簡便に付け替えることが可能となる。
【0021】
上記の通り、本工具1は、軸の一方の先端側に、第一の平坦面21によって囲まれた多角部2を有する。多角部2を設けることで、上記の通り、タップハンドルH等に固定することが可能となる。本工具1をタップハンドルで把持した場合のイメージを
図4に示しておく。
【0022】
本工具1の多角部2は、複数の第一の平坦面21によって表面が切り取られ、その断面が多角形状となっている部分である。この多角形状となっている部分をこの多角形状と同形の穴が形成された保持具に挿入することで安定的に保持することができる。ここで「第一」とあるのは、面取部3における平坦面(第二の平坦面)と区別するために用いる序数であり、この序数自体に技術的な意味は含まれない。
【0023】
本観点において、限定されるわけではないが、多角部2の断面は略正方形であることが好ましい。ここで「略」正方形とあるのは、完全な正方形を含むことはもちろんであるが製造上の誤差を含み、更にはこの正方形の角部の面取りを行った場合も含む意味である。保持具の多くが正方形の穴を有するものであるため、正方形とすることで、これら保持具に設置可能となる。
【0024】
また、本工具1では、多角部2よりも奥側に、軸の周方向に沿って第二の平坦面31が少なくとも3つ円弧を介して分散配置された面取部3を有する。この断面図については上記
図2で示すとおりである。本工具1では、第二の平坦面31を少なくとも3つ形成していることで例えばチャック等の保持具に固定することが可能となる。この場合のイメージ図を
図5に示しておく。
【0025】
また、本工具1では、軸の他端側に、螺旋状の凸部41が形成された切削部4を有する。切削部4は本工具1の機能を発揮する本質的な部位である。ただし、本工具1は様々な保持具によって保持することができる限り本質的な部位であるがその種別は問われず、螺旋状の凸部に限られず他の形状であってもよい。
【0026】
また、本工具1では、面取部3の3つの第二の平坦面31は、軸の周囲方向に沿って略等間隔で配置されていることが好ましい。一般に、チャック等の工具は3つの保持爪が周方向に均等に配置されているため、このように配置することで確実にチャック等の工具を固定することができるようになる。
【0027】
また、本工具1では、限定されるわけではないが、面取部3の第二の平坦面31の幅は、軸の直径の半分以下であることが好ましい。本工具1は、軸の周方向に沿って第二の平坦面31が少なくとも3つ円弧を介して分散配置されており、このためには、上記の通り軸の直径の半分以下(半径以下)とすることで、平坦面部分と円弧の部分の内角を等しくすることが可能となる。一方で、この第二の平坦面31の幅が細すぎるとチャック等の工具との接触面積が減少することで固定能力が下がってしまうため、幅は軸の直径の4分の1以上あることが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、切削工具として産業上の利用可能性がある。
【符号の説明】
【0029】
1…切削工具
2…多角部
21…第一の平坦面
3…面取部
31…第二の平坦面
4…切削部
41…凸部