(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170789
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】ガスセンサモジュール及びガスセンサモジュールの製造方法
(51)【国際特許分類】
G01M 3/40 20060101AFI20241204BHJP
【FI】
G01M3/40 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087505
(22)【出願日】2023-05-29
(71)【出願人】
【識別番号】000231361
【氏名又は名称】NISSHA株式会社
(74)【代理人】
【氏名又は名称】吉田 新吾
(72)【発明者】
【氏名】片山 仁
【テーマコード(参考)】
2G067
【Fターム(参考)】
2G067CC04
(57)【要約】
【課題】ガスセンサモジュール1において、容器10に収容されるガスセンサ20及びガスセンサ20が接続される電気回路31に対する防水性を向上させる。
【解決手段】ガスセンサ20は、空気よりも重いガスを検出する。基板30は、ガスセンサ20に接続されている電気回路31を有する。防水用成形体40は、ガスセンサ20の一部と電気回路31を含む基板30の一部とを覆って、覆っている部分の防水を行う。容器10は、ガスセンサ20及び基板30を内部空間ISに収容する。容器10のガス導入口51は、ガスを内部空間ISに導入するために下方に向かって開口している。容器10の排水口52,53は、空気抜き穴として機能とともに内部空間ISに侵入する水を排水する機能を有する。基板30は、ガスセンサ20の開口部21aがガス導入口に対向するように、容器10に固定されている。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気よりも重いガスを検出するガスセンサと、
前記ガスセンサに接続されている電気回路を有する基板と、
前記電気回路を含む前記基板の一部と前記ガスセンサの一部を覆って、覆っている部分の防水を行う防水用成形体と、
前記ガスセンサ及び前記基板を内部空間に収容する容器と
を備え、
前記容器は、空気よりも重い前記ガスを前記内部空間に導入するために下方に向かって開口しているガス導入口、及び前記ガスを導入するための空気抜き穴として機能するとともに前記内部空間に侵入する水を排水する排水口を有し、
前記基板は、前記ガスセンサの開口部が前記ガス導入口に対向するように、前記容器に固定されている、ガスセンサモジュール。
【請求項2】
前記容器は、前記ガス導入口が設けられている下壁を有し、
前記容器は、前記ガスセンサの下端と前記下壁との間に0.5mm以上の隙間を開けて前記基板を支持するように構成されている、
請求項1に記載のガスセンサモジュール。
【請求項3】
前記容器は、前記内部空間に突出するリブを有し、
前記防水用成形体は、ホットメルトモールドであり、
前記基板は、前記防水用成形体よりも剛性が高く、
前記基板のうちの前記防水用成形体から露出している部分が、前記リブで支持されて固定されている、
請求項1または請求項2に記載のガスセンサモジュール。
【請求項4】
前記容器は、前記ガス導入口の周囲に、検査機器を取り付けるための凸部を有する、
請求項1または請求項2に記載のガスセンサモジュール。
【請求項5】
前記容器は、前記排水口として、前記ガス導入口の両側に設けられている第1長穴及び第2長穴を有する、
請求項1または請求項2に記載のガスセンサモジュール。
【請求項6】
前記電気回路に接続されているケーブルをさらに備え、
前記容器は、前記ケーブルを前記基板から前記容器の外に取り出すためのケーブル取出口を有し、
前記防水用成形体は、前記ケーブルの一部を覆い且つ、前記ケーブル取出口と前記ケーブルとの間の隙間を埋めて前記ケーブル取出口をシールしている、
請求項1または請求項2に記載のガスセンサモジュール。
【請求項7】
空気よりも重いガスを検出するガスセンサの一部と、前記ガスセンサに接続されている電気回路を有する基板のうちの前記電気回路を含む前記基板の一部とを、防水用成形体で覆うように、前記防水用成形体をホットメルトモールディングにより形成する第1ステップと、
空気よりも重い前記ガスを容器の内部空間に導入するために下方に向かって開口している前記容器のガス導入口に前記ガスセンサの開口部が対向し、且つ前記ガスセンサの下端と前記容器の下壁との間に隙間が形成されるように、前記基板を前記容器に当接させて前記基板を前記容器に固定する第2ステップと、
を備える、ガスセンサモジュールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスセンサモジュール及びガスセンサモジュールの製造方法に関し、空気よりも重いガスを検出するガスセンサを備えるガスセンサモジュール及びガスセンサモジュールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスセンサは、水が侵入する可能性のある環境で、ガスの検知を求められることがある。ガスセンサモジュールは、そのような環境において、水の侵入を防止するために防水性が付与される場合がある。例えば、特許文献1(特許第5166376号公報)に記載されているように、ケース(容器)の内部にガスセンサを収容することで、防水性能を向上させることが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ガスセンサは、対象ガスを検知するために、検知対象のガスをセンサ内部に導入する必要がある。そのため、ガスセンサを容器内部に収容して完全に密封することができない。例えば、室外に設置される機器、自動車などの輸送機器及び人体においてガスを検知する場合には、雨水、海水などの水域の水、汗及び果汁などの動植物由来の水が容器の中に侵入する状況が生じる可能性がある。
そこで、ガスセンサを容器の内部に収容しても、容器の中に水が侵入する環境では、容器の中に収納されているガスセンサ及びガスセンサに接続される電気回路に対する防水性も必要になる。
【0005】
本発明の課題は、容器に収容されるガスセンサ及びガスセンサが接続される電気回路に対する防水性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下に、課題を解決するための手段として複数の態様を説明する。これら態様は、必要に応じて任意に組み合せることができる。
本発明の一見地に係るガスセンサモジュールは、空気よりも重いガスを検出するガスセンサと、ガスセンサに接続されている電気回路を有する基板と、電気回路を含む基板の一部とガスセンサの一部を覆って、覆っている部分の防水を行う防水用成形体と、ガスセンサ及び基板を内部空間に収容する容器とを備えている。容器は、空気よりも重いガスを内部空間に導入するために下方に向かって開口しているガス導入口、及びガスを導入するための空気抜き穴として機能するとともに内部空間に侵入する水を排水する排水口を有する。基板は、ガスセンサの開口部がガス導入口に対向するように、容器に固定されている。
第1見地に係るガスセンサモジュールによれば、容器によってガスセンサに容器外部の気体を導くことができるようにしながらガスセンサ及び基板に水が掛かるのを抑制することができる。さらに、防水用成形体により、電気回路への水の侵入を防止することができる。
【0007】
上述のガスセンサモジュールは、容器が、ガス導入口が設けられている下壁を有し、ガスセンサの下端と下壁との間に0.5mm以上の隙間を開けて基板を支持するように構成することができる。このように構成されたガスセンサモジュールは、ガスセンサに、容器の下壁に生じた水滴が侵入し難くなる。
上述のガスセンサモジュールは、容器が、内部空間に突出するリブを有し、防水用成形体が、ホットメルトモールドであり、基板が、防水用成形体よりも剛性が高く、基板のうちの防水用成形体から露出している部分が、リブで支持されて固定されているように構成することができる。このように構成されたガスセンサモジュールは、リブで支えることで、ガスセンサ、基板及び防水用成形体が容器の内面に接する箇所を少なくすることができ、容器からガスセンサ、基板及び防水用成形体に水が移るのを抑制することができる。
【0008】
上述のガスセンサモジュールは、容器は、ガス導入口の周囲に、検査機器を取り付けるための凸部を有するように構成することができる。このように構成されたガスセンサモジュールは、凸部によって検査機器の取り付けが容易になる。また、凸部によってガス導入口から侵入する水滴を減らすことができる。
上述のガスセンサモジュールは、容器は、排水口として、ガス導入口の両側に設けられている第1長穴及び第2長穴を有する。このように構成されたガスセンサモジュールは、排水能力及び空気抜き穴として高い機能を持たせることができる。
上述のガスセンサモジュールは、電気回路に接続されているケーブルをさらに備え、容器は、ケーブルを基板から容器の外に取り出すためのケーブル取出口を有し、防水用成形体は、ケーブルの一部を覆い且つ、ケーブル取出口とケーブルとの間の隙間を埋めてケーブル取出口をシールしている。このように構成されたガスセンサモジュールは、ケーブルを伝って容器の内部空間に水が侵入するのを防ぐことができる。
本発明の一見地に係るガスセンサモジュールの製造方法は、第1ステップと第2ステップとを備える。第1ステップでは、空気よりも重いガスを検出するガスセンサの一部と、ガスセンサに接続されている電気回路を有する基板のうちの電気回路を含む基板の一部とを、防水用成形体で覆うように、防水用成形体をホットメルトモールディングにより形成する。第2ステップでは、空気よりも重いガスを容器の内部空間に導入するために下方に向かって開口している容器のガス導入口にガスセンサの開口部が対向し、且つガスセンサの下端と容器の下壁との間に隙間が形成されるように、基板を容器に当接させて基板を容器に固定する。このように構成されたガスセンサモジュールの製造方法では、ホットメルトモールディングにより、速く、正確に、ガスセンサの一部と基板の一部を防水用成形体で覆うことができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明のガスセンサモジュールによれば、容器に収容されるガスセンサ及びガスセンサが接続される電気回路に対する防水性を向上させることができる。本発明のガスセンサモジュールの製造方法によれば、容器に収容されるガスセンサ及びガスセンサが接続される電気回路に対する防水性の向上したガスセンサモジュールを、容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態に係るガスセンサモジュールを示す正面図である。
【
図2】
図1に示されているガスセンサモジュールの底面図である。
【
図3】
図1に示されているガスセンサモジュールの左側面図である。
【
図4】
図1に示されているガスセンサモジュールの右側面図である。
【
図5】
図1に示されているガスセンサモジュールの上面図である。
【
図6】
図1に示されているガスセンサモジュールの背面図である。
【
図7】
図1のガスセンサモジュールから蓋部を取り除いた状態を示す正面図である。
【
図8】
図1のガスセンサモジュールの蓋部を示す背面図である。
【
図9】実施形態に係るガスセンサ、基板、防水用成形体及びケーブルの組立体の正面図である。
【
図10】
図9の基板、防水用成形体及びケーブルの組立体を示す背面図である。
【
図11】
図1のガスセンサモジュールを示す断面図である。
【
図12】
図11に示されているガス導入口周辺を示す拡大断面図である。
【
図13】
図1のガスセンサモジュールのガス導入口周辺を示す拡大断面図である。
【
図14】
図1のガスセンサモジュールのケーブル取出口周辺を示す拡大断面図である。
【
図15】
図1のガスセンサモジュールを示す断面図である。
【
図16】実施形態に係るガスセンサと基板を示す背面図である。
【
図17】変形例に係るガスセンサモジュールを示す正面図である。
【
図18】
図17のガスセンサモジュールから蓋部を取り除いた状態を示す正面図である。
【
図19】
図17に示されているガスセンサモジュールの底面図である。
【
図20】下壁の上面に堤部を設けた場合の塵埃の堆積を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(1)全体構成
ガスセンサモジュール1を、前から見た外観が
図1に、下から見た外観が
図2に、左から見た外観が
図3に、右から見た外観が
図4に、上から見た外観が
図5に、後ろから見た外観が
図6に示されている。換言すれば、ガスセンサモジュールについて、
図1が正面図、
図2が底面図、
図3が左側面図、
図4が右側面図、
図5が上面図、
図6が背面図である。
容器10は、収容部11と蓋部12とを備える。ガスセンサモジュール1の外観は、主に、容器10の外観になる。容器10は、下壁111、左側壁112、右側壁113、前壁114、後壁115及び上壁116を有する。容器10の取り付け方向は決められており、蓋部12に描かれている矢印が示す「UP」の方向が上を向くように取り付けられる。この「UP」及び矢印は、容器10の表面に形成されている凹凸で描かれている。このように、ガスセンサモジュール1が取り付けられる向きが決められていることから、各図面には、ガスセンサモジュール1の方向を示す矢印が示されている。なお、本明細書の説明において、下は重力により引かれる方向である。容器10は、例えば検知対象のガスを使用している機器の内部に、取付部18の穴にビスを差し込んで取り付ける。ただし、取り付け方法は、ビス止め以外の方法でもよく、例えば接着剤で取付部18を機器の壁などに貼り付けてもよい。
【0012】
容器10は、例えば、樹脂、セラミック、または樹脂にフィラーが混入された複合材料で形成されている。樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂がある。熱可塑性樹脂には、例えば、ポリプロピレン樹脂、ABS樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、PBT(ポリブチレンテレフタレート)樹脂、ポリアミド樹脂、PE(ポリエチレン)樹脂、POM(ポリオキシメチレン)樹脂、テフロン(登録商標)樹脂、アクリル樹脂がある。容器10は、例えば射出成形で製造され、射出成形で製造される場合には熱可塑性樹脂が用いられることが好ましい。
蓋部12は、前壁114を形成する。前壁114は、正面から見ると、矩形を基本とする形状を呈する。前壁114の四隅の形状は、正面から見ると、円弧である。前壁114の四隅には、蓋部12を留めるためのネジ90が配置されている。
収容部11は、主に、下壁111、左側壁112、右側壁113、後壁115及び上壁116を形成する。容器10は、下壁111、左側壁112、右側壁113、前壁114、後壁115及び上壁116で囲まれた内部空間ISを有する(
図7参照)。
図7は、蓋部12を取り除いたガスセンサモジュール1を正面から見た正面図である。
【0013】
ガスセンサモジュール1は、容器10以外に、ガスセンサ20と、基板30と、防水用成形体40とを備える。
ガスセンサ20は、空気よりも重いガスを検出するデバイスである。言い換えると、ガスセンサ20の検出対象のガスの密度が、空気の密度より大きい。このような検出対象のガスには、例えば、プロパンガス、二酸化炭素ガス、一酸化窒素ガス、アルゴンガス、空気よりも重いフロンガスがある。空気よりも重いフロンガスには、例えば、空気よりも重いハイドロフルオロカーボンガスがある。空気よりも重いハイドロフルオロカーボンガスには、例えば、テトラフルオロプロペンガス、ジフルオロメタンガスがある。
基板30は、電気回路31を有する(
図16参照)。電気回路31は、ガスセンサ20に接続されている。電気回路31は、例えば、ガスセンサ20の検知結果を電気信号として外部に取り出すための機能及びガスセンサ20に電力を供給する機能を有する、電気・電子部品の相互接続された集合体である。電気回路31を構成する部品(図示せず)として、例えば、集積回路、コンデンサ、抵抗がある。ガスセンサ20は、例えば、電気回路31を構成している金属配線(図示せず)に接続されている。
【0014】
図9及び
図10に示されているように、防水用成形体40は、基板30の一部とガスセンサ20の一部を覆うように成形されている。防水用成形体40に覆われている部分が防水される。防水用成形体40は、例えば射出成形によって所望の形に成形されている。ガスセンサ20は、下部(下端24を含む部分)が防水用成形体40で覆われずに露出している。防水用成形体40が覆っている基板30の一部には、少なくとも電気回路31が含まれている。基板30の一部とガスセンサ20の一部を覆うことにより、防水用成形体40は、電気回路31への水の侵入を防止する。電気回路31への水の侵入を防止には、ガスセンサ20の接続端子22(
図12参照)と電気回路31の接続部(図示せず)への水の侵入を防止することも含まれている。接続端子22は、電気回路31の接続部に接続されている。電気回路31の接続部は、例えば、電気回路31を構成するための金属配線の一部である。防水用成形体40は、絶縁性を有するとともに、水を通さない材料で構成されている。防水用成形体40は、例えば、熱可塑性接着剤、樹脂、エラストマーである。防水用成形体は、射出成形できる材料で構成されるのが好ましい。基板30とガスセンサ20をインサートして射出成形することで、基板30とガスセンサ20の所望の箇所に防水用成形体40を短時間で形成することができる。ガスセンサ20の接続端子22は、感ガス素子28(
図12参照)に電力を供給するための端子である。感ガス素子28は、例えば、半導体ガスセンサを構成する素子である。
熱可塑性接着剤には、例えばホットメルト接着剤がある。防水用成形体40は、例えば、ホットメルト接着剤を用いて、ホットメルトモールディングにより成形されたホットメルトモールドである。ホットメルト接着剤には、例えば、ポリアミド系のホットメルト接着剤、ポリオレフィン系のホットメルト接着剤、ポリウレタン系のホットメルト接着剤がある。ホットメルト接着剤の射出成形の条件は、射出圧力が0.2~6MPaで且つ射出温度が180℃以上240℃以下の低温低圧から選択されることが好ましい。エラストマーには、例えば、シリコーン、ウレタンゴム、フッ素ゴムがある。樹脂には、例えば熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂がある。熱可塑性樹脂には、例えば、ポリエチレン、アクリル樹脂、ポリプロピレン、ポリカーボネートがある。熱硬化性樹脂には、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂がある。光硬化性樹脂には、例えば、アクリル系光硬化樹脂がある。
【0015】
図7に示されているように、容器10は、ガスセンサ20と基板30を内部空間ISに収容している。ガスセンサ20が容器10の中の内部空間ISに収容されているので、ガスセンサ20によってガスを検知するために、容器10の中の内部空間ISに検知対象のガスを導入することが必要になる。そこで、空気よりも重いガスを内部空間ISに導入するために、
図2に示されているように、容器10の下壁111に下方に向かって開口しているガス導入口51が設けられている。
ガス導入口51からガスを導入するには、導入されるガスと実質同じ量の空気を内部空間ISから容器10の外に出すことが必要になる。そのようなガスと空気の入れ替えをガス導入口51だけで行うとガスの導入が遅れ、ガスの検知に遅れが生じる原因になる。このようなガスと空気の入れ替えをスムーズに行うために、ガスを導入する空気抜き穴として機能する排水口52,53が容器10の下壁111に設けられている。勿論、排水口52,53は、容器10の内部空間ISから容器10の外に水を排水する機能を有する。下壁111に排水口52,53を設けることで、他の壁に設ける場合に比べて、効率良く排水することができ、また空気抜きを効率良く行うことができる。ここでは、2つの排水口52,53を有する場合を説明するが、排水口数は、1つでもよく、3つ以上であってもよい。
図11及び
図12に示されているように、ガスセンサ20の開口部21aがガス導入口51に対向するように、基板30が容器10に固定されている。従って、ガス導入口51から内部空間ISに入った検知対象の空気よりも重いガスは、速やかにガスセンサ20の開口部21aから入り、ガスセンサ20によって検知される。なお、
図11及び
図12には、ガスセンサモジュール1を上下左右に広がる平面で切断したガスセンサモジュール1の断面が示されている。
【0016】
(2)詳細構成
(2-1)ガスセンサ20と下壁111の位置関係
ガスセンサ20は、キャップ21の中に感ガス素子28を内蔵している。ガスセンサ20は、感ガス素子28でガスの検知を行う。容器10が有している下壁111には、ガス導入口51が設けられている。
図12及び
図13には、ガス導入口51の周辺が拡大して示されている。
図12は、
図11のガス導入口の周辺を拡大した拡大断面図である。
図13は、ガスセンサモジュール1を上下前後に広がる平面で切断して、ガス導入口51の周辺が拡大した拡大断面図である。容器10は、ガスセンサ20の下端24と下壁111との間に0.5mm以上の隙間INを開けて基板30を支持するように構成されている。ガスセンサ20の下端24と下壁111との間に0.5mm以上の隙間INを開けることによって、下壁111に水滴が生じた場合、水滴がガスセンサ20に移るのを抑制することができる。
ガスセンサ20の開口部21aがガス導入口51に対向するように配置され、開口部21aがガス導入口51に実質的に一致する大きさである。ここで実質的にとは、製造誤差の範囲の相違があることを意味する。開口部21aとガス導入口51の一方を小さくすることは、対象ガスの導入の低下につながる。また、開口部21aとガス導入口51は、円形であって、上下方向に見て、中心点が実質的に一致するように配置されている。開口部21aとガス導入口51の重なっている領域が少なくなることは、対象ガスの導入の低下につながる。
開口部21aの大きさとガス導入口51の大きさが実質的に一致し、開口部21aとガス導入口51の重なっている領域を最大化することは、例えば、ガス導入口51から開口部21aに向かって、下から上に飛び上がる微小な水滴の飛沫が開口部21aからガスセンサ20の内部に直接飛び込むリスクを大きくする。ガスセンサ20の内部に微小な水滴が侵入するのを抑制するために、この実施形態では、網23が開口部21aに設けられている。網23は、開口部21aの全体に掛かっている。網23は例えば金属製である。網23の目の大きさは、例えば50メッシュ~200メッシュである。ただし、網23に多くの水滴が付着する状況は、水の膜で網23に蓋をすることになるので好ましくない。そのような状況が発生しやすい場所にガスセンサモジュール1を設置する場合には、ガスセンサ20と下壁111の隙間INを大きくしてガスセンサ20を下壁111から遠ざけ、網23まで水滴が届きにくい構成とすることが好ましい。ただし、網23は設けられなくてもよい。また、網23の代わりに、例えば不織布、織布またはスポンジのように通気性のある部材を設けてもよい。
【0017】
(2-2)容器10の中での基板30の固定
容器10は、
図8、
図12及び
図13に内部空間ISに突出するリブ13,14を有している。基板30は、防水用成形体40よりも剛性が高いことが好ましい。基板30は、例えば、リジッド基板、セラミック基板である。リジッド基板は、例えば、ガラス布に熱硬化性樹脂を含侵させた基板である。含侵させる熱硬化性樹脂には、例えば、エポキシ樹脂、イミド樹脂、BT(ビスマレイミド・トリアジン)樹脂、PPE(ポリフェニレンエーテル)樹脂がある。
例えば防水用成形体40の材料に、ホットメルト接着剤を選択する場合、防水用成形体40の剛性よりも基板30の剛性が高くなるように、リジッド基板またはセラミック基板が用いられている。ホットメルト接着剤からなる防水用成形体40にリブ13,14を当接したと仮定すると、ホットメルト接着剤が変形するため、隙間INを維持するのが難しくなる。そのため、リブ13,14は、防水用成形体40ではなくて、基板30に当接して基板30を支持している。つまり、基板30のうちの防水用成形体40から露出している部分がリブ13,14で支持されて2種類のリブ13とリブ14の間に挟まれて基板30が固定されている(
図15参照)。リブ13は収容部11に,リブ14は蓋部12にそれぞれ設けられている。ネジ90で蓋部12を容器10に取り付けることにより、基板30が、リブ13,14に挟まれて、容器10に留められる。容器10は、ケーブル取出口16(
図14参照)でケーブル35と接している以外では、主に、リブ13,14で基板30と接触している。基板30がリブ13,14で支持されることにより、ガスセンサ20と基板30と防水用成形体40に対して、容器10の接触部分を減らしている。
【0018】
(2-3)ガス導入口51の周囲の形状
図1に示されているように、容器10は、ガス導入口51の周囲に凸部54を有する。凸部54は、下壁111から下方に向けて突出している部分である。
図2に示されているように、凸部54の形状は、円筒である。円筒状の凸部54の内部空洞がガス導入口51になっている。凸部54には、検査機器80(
図13参照)が取り付けられる部分である。検査機器80は、例えば、凸部54に嵌め込まれ、検査用のガスを送り込むホースを有している。凸部54が無く下壁111が平板状であると検査機器80を取り付け難いが、凸部54があることで検査機器80を取り付け易くなっている。凸部54の形状は、凸部54の形状は円筒でなくてもよく、例えば角筒であってもよい。しかし、凸部54の形状は、ホースを取り付けやすい円筒が好ましい。このように凸部54があることにより、凸部54が無い場合比べて、下から上に跳ね上がる水滴の範囲が狭められる。
【0019】
(2-4)排水口52,53の配置位置と形状
図2に示されているように、容器10の下壁111では、2つの排水口52,53の間にガス導入口51が配置されている。排水口52,53は、
図12に示されているように、ガスセンサ20の左右に1つずつ配置されている。排水口52,53は、前後に長く延びる第1長穴及び第2長穴である。第1長穴及び第2長穴の幅は、2mm以上であることが好ましい。幅が2mmより小さいと排水口52,53における排水が難しくなる。第1長穴及び第2長穴の長さは、ガス導入口51の前後方向の長さ以上であることが好ましい。その場合、排水口52の左からガスセンサ20に向かって流れる水滴または排水口53の右からガスセンサ20に向かって流れる水滴を、ガスセンサ20に到達する前に容器10の外部に排水し易くなる。固定された容器10の下壁111が水平になり難いため、排水口52,53は、ガス導入口51の片側ではなく、両側に設ける方が好ましい。なお、排水口52,53の形状は、長穴でなくてもよく、例えば円形、楕円形または矩形であってもよい。ただし、排水口52,53の最も狭い部分の距離は、排水のため、2mm以上であることが好ましい。
【0020】
(2-5)ケーブル取出口55の周辺の構造
ガスセンサモジュール1は、ケーブル35を備える。
図1には、容器10から延びているケーブル35が示されている。
図9及び
図10に示されているように、ガスセンサ20、基板30、防水用成形体40及びケーブル35は、一体となった組立体となっている。ケーブル35は、容器10の中に収容される電気回路31と容器10の外部に在る機器とを電気的に接続するための部材である。ケーブル35には、被覆された複数の電線(図示せず)が含まれている。ケーブル35は、左側壁112に設けられているケーブル取出口55を通って容器10の外部に延びている。ケーブル35は、例えば、電気回路31の接続部(図示せず)に接続されている。
容器10は、ケーブル35を基板30から容器10の外に取り出すためのケーブル取出口16を有している。防水用成形体40は、ケーブル35の一部を覆い、ケーブル取出口16とケーブル35との間の隙間を埋めてケーブル取出口16をシールしている。シールのために、防水用成形体40がケーブル35を覆っている部分が、ケーブル取出口16にまで延びている。
図12に示されているように、ケーブル取出口16は、内部空間ISに向かって円筒状に延びている。ケーブル取出口16には、ケーブル取出口16の全周にわたって内側に突出している堤部16aが設けられている。防水用成形体40には、堤部16aが嵌り込む溝部41が形成されている。防水用成形体40は、例えば、ケーブル取出口16の形にホットメルトモールディングされたホットメルトモールドである。
【0021】
(3)変形例
(3-1)変形例A
上記実施形態では、ケーブル35が容器10の左側壁112から容器10の外に延びている場合について説明した。しかし、ケーブル35についてのケーブル取出口16の配置位置は、左側壁112には限られない。ケーブル取出口16は、例えば、右側壁113に設けてもよい。また、
図17、
図18及び
図19に示されているように、ケーブル取出口16を下壁111に設け、ケーブル35が下方に延びるように構成してもよい。左側壁112、右側壁113又は下壁111に設けることで、上壁116に設ける場合に比べて、容器10の外部から容器10の内部空間ISに水が侵入し難くなる。なお、
図19に示されているケーブル35は、ケーブル取出口16の部位まで防水用成形体40で覆われていないが、実施形態のように、ケーブル取出口16の部位まで防水用成形体40で覆われるように構成してもよい。
(3-2)変形例B
上記実施形態では、基板30を容器10に固定する方法として、リブ13,14で固定する場合について説明したが、リブ13,14によって留める以外の方法でもよい。例えば、基板30は、ネジ又は接着剤を用いて容器10に固定してもよい。基板30をネジ又は接着剤を用いて容器10に固定する場合も、容器10の内面に、ガスセンサ20、基板30、防水用成形体40及びケーブル35の組立体ができるだけ接触しないように留めるのが好ましい。接着剤を用いる場合には、エポキシ系接着剤など、硬化後に接着剤からガスが生じ難い組成の接着剤を用いることが好ましい。
(3-3)変形例C
上記実施形態では、基板30の電気回路31と外部との伝達をケーブル35で行う場合について説明した。しかし、ケーブル35を使わずに、例えば、無線で電気回路31と容器10の外部の機器との遣り取りを行わせてもよい。例えば、電気信号の遣り取り及び充電を電磁波で行うようにしてもよい。
【0022】
(4)特徴
(4-1)
ガスセンサモジュール1は、ガスセンサ20と、基板30と、防水用成形体40と、容器10とを備えている。ガスセンサ20は、空気よりも重いガスを検出するガスセンサである。基板30は、ガスセンサ20に接続されている電気回路31を有している。防水用成形体40は、基板30の一部とガスセンサ20の一部を覆って、覆っている部分の防水を行う。防水用成形体40に覆われる基板30の一部には、電気回路31が含まれる。特に、基板30の一部には、ガスセンサ20及びケーブル35と接続するための接続部が含まれる。容器10は、ガスセンサ20及び基板30を内部空間ISに収容している。また、防水用成形体40に覆われるガスセンサ20の一部には、電気回路31の接続部に接続するための接続端子22が少なくとも含まれる。
容器10は、下壁111にガス導入口51と排水口52,53とを有している。例えば、空気よりも重いガスが、ガスセンサモジュール1が取り付けられている機器の中で漏洩した場合には、機器の下に溜まり、空気とガスの境界が徐々に上に移動する状況が発生し易い。そのため、ガス導入口51は、空気よりも重いガスを内部空間ISに導入するために下方に向かって開口していると、漏洩したガスを検知し易くなる。排水口52,53は、内部空間ISに侵入した水を排水するための開口である。これら排水口52,53は、ガスを導入するための空気抜き穴としても機能する。
図12に示されているように、感ガス素子28は、キャップ21の中に在って、開口部21aよりも上にある。内部空間ISの中にガスを導入するには、内部空間ISの中の空気の一部が容器10の外に出る必要がある。排水口52,53は、ガスと入れ替わりで内部空間ISから容器10の外に出る空気の排出口として機能してガスと空気の入れ替えを補助することができる。空気の排気と水の排水を排水口52,53が担うことで、下壁111に開ける穴の数を減らして水が内部空間ISに入るのを抑制することができる。
基板30は、ガスセンサ20の開口部21aがガス導入口51に対向するように、容器10に固定されている。このように基板30を固定することで、容器10の外から、ガス導入口51と開口部21aを通して、ガスセンサ20の中の感ガス素子28にガスを導き易くなる。
上述の構成を有する容器10は、ガスセンサ20に容器10の外部の気体を導くことができるようにしながらガスセンサ20及び基板30に水が掛かるのを抑制することができる。さらに、防水用成形体40により、電気回路31への水の侵入を防止することができる。
また、防水用成形体40を射出成形で成形する場合には、ガスセンサ20、基板30、防水用成形体40及びケーブル35を含む組立体の製造が容易になる。
【0023】
(4-2)
ガスセンサモジュール1では、ガスセンサ20の下端24と下壁111との間に0.5mm以上の隙間INを開けて基板30が支持されている。ガスセンサモジュール1では、ガスセンサ20の下端24と下壁111との間に0.5mm以上の隙間INがあることによって、容器10の下壁111に生じた水滴がガスセンサ20に侵入し難くなる。
また、下壁111の上に在る水滴がガスセンサ20の方に流れないように、下壁111の上面に、
図20に示されているような上に突出し且つ前後方向に沿って延びる堤部59を形成することが考えられる。しかし、このような堤部59を形成すると、下壁111の上面と堤部59の側面の境界の近傍領域Ar1に塵埃が溜まることが、実験で確認されている。塵埃もガスセンサ20に悪影響を及ぼすことから、堤部59のように下壁111の上面から上に突出する部分を形成しない方が好ましい。例えば、ガスセンサ20の下端24と下壁111との間の隙間INの大きさを調整することで、下壁111の上面の水滴に対処することが可能である。言い換えると、下壁111の上面は、平坦であることが好ましい。あるいは、下壁111の上面に、水はけをよくするために滑らかな傾斜を設けてもよい。
(4-3)
ガスセンサモジュール1では、基板30のうちの防水用成形体40から露出している部分が、リブ13,14で支持されて固定されている。リブ13,14で基板30が支えられることで、ガスセンサ20、基板30及び防水用成形体40が容器の内面に接する箇所を少なくすることができ、容器10からガスセンサ20、基板30及び防水用成形体40に水が移るのを抑制することができる。
また、防水用成形体40がホットメルトモールドで形成されてホットメルトモールドの部分を支持する場合には、防水用成形体40が柔らかいため、ガスセンサ20の位置決めが難しくなる。リブ13,14で、防水用成形体40から露出している基板30を直接支えることで、防水用成形体40よりも剛性の高い基板30を支えることでガスセンサ20の位置決めが容易になり、特にガスセンサ20の下端24と下壁111との間の0.5mm以上の隙間INを確保し易くなる。また、ホットメルトモールドを防水用成形体40に用いることで防水性が向上する。
【0024】
(4-4)
ガスセンサモジュール1におけるガス導入口51の周囲の凸部54には、検査機器の例えばホースを取り付けることができる。凸部54が有ると、凸部54が無くて下壁111の下面が平坦な場合に比べて、検査機器が取り付け易くなる。また、ガス導入口51の斜め下から水滴の飛沫がガス導入口51めがけて飛来する場合、水滴の飛沫の一部が凸部54で遮られるので、ガス導入口51への侵入を減らすことができる。
(4-5)
ガスセンサモジュール1は、
図2に示されている排水口52が第1長穴で、排水口53が第2長穴である。また、排水口52,53がガス導入口51の両側に設けられている。正面から見て排水口52の左側、排水口53の右側から排水口52に対向している開口部21aを持つガスセンサ20に向かって流れる水滴を排水する能力が向上する。また、外部からの水滴が内部空間ISに入り難くしながら、開口面積を大きくできる。そのため、排水口52,53に対し、排水能力及び空気抜き穴として高い機能を持たせることができる。
(4-6)
ガスセンサモジュール1は、電気回路31に接続されているケーブル35を備えている。防水用成形体40は、ケーブル35の一部を覆い、ケーブル取出口16とケーブル35との間の隙間を埋めてケーブル取出口16をシールしている。ケーブル取出口16が防水用成形体40でシールされることにより、ケーブル35を伝って容器10の内部空間ISに水が侵入するのを防ぐことができる。
特に、防水用成形体40の溝部41に、ケーブル取出口16の堤部16aを嵌めることで防水用成形体40のシール性が向上する。
【0025】
(4-7)
ガスセンサモジュール1の製造方法では、例えば、第1ステップで、空気よりも重いガスを検出するガスセンサ20の一部と、ガスセンサ20に接続されている電気回路31を有する基板30のうちの電気回路31を含む基板30の一部とを、防水用成形体40で覆うように、防水用成形体40をホットメルトモールディングにより形成する。第2ステップで、空気よりも重いガスを容器10の内部空間ISに導入するために下方に向かって開口している容器10のガス導入口51にガスセンサ20の開口部21aが対向し、且つガスセンサ20の下端24と容器10の下壁111との間に隙間INが形成されるように、基板30を容器10に当接させて基板30を容器10に固定する。
実施形態では、基板30が、容器10の構成要素であるリブ13,14に当接している。
このようなガスセンサモジュール1の製造方法を用いると、ホットメルトモールディングにより、速く、正確に、ガスセンサ20の一部と基板30の一部を防水用成形体40で覆うことができる。また、ガスセンサモジュール1の製造方法では、基板30を容器10に当接させるので、ホットメルトモールディングにより形成された防水用成形体40を容器10に当接させる場合に比べて基板30の位置決めがし易くなる。その結果、ガスセンサ20の容器10の内部における位置合せが容易になり、防水性の向上したガスセンサモジュール1を容易に製造することができる。
【符号の説明】
【0026】
1 ガスセンサモジュール
10 容器
11 収容部
12 蓋部
13,14 リブ
16 ケーブル取出口
20 ガスセンサ
21a 開口部
30 基板
31 電気回路
35 ケーブル
40 防水用成形体
51 ガス導入口
52,53 排水口
54 凸部
55 ケーブル取出口
111 下壁
112 左側壁
113 右側壁
IS 内部空間
IN 隙間