(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170792
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】観察装置、観察方法および基板処理装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/956 20060101AFI20241204BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20241204BHJP
【FI】
G01N21/956 A
H01L21/304 601B
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087515
(22)【出願日】2023-05-29
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100105935
【弁理士】
【氏名又は名称】振角 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100136836
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 一正
(72)【発明者】
【氏名】菱谷 大輔
【テーマコード(参考)】
2G051
5F057
【Fターム(参考)】
2G051AA51
2G051AB02
2G051BA01
2G051BA08
2G051BB07
2G051BB11
2G051BB17
2G051BC01
2G051CA04
2G051CB01
2G051CB05
2G051CC11
2G051DA03
2G051DA08
2G051EA17
5F057AA19
5F057BA11
5F057CA09
5F057CA27
5F057FA46
5F057GA13
5F057GB02
5F057GB12
(57)【要約】
【課題】半導体ウエハの周縁部などの被観察部を良好に撮像することができる観察装置、観察方法、ならびに当該観察装置を装備する基板処理装置を提供する。
【解決手段】この発明は、半導体ウエハなどの被観察物の被観察部を観察する観察装置であって、一次照明光を被観察部の近傍に照射する照明光学系と、被観察部の近傍で一次照明光を拡散させる拡散面を有し、拡散面で発生する拡散光を二次照明光として被観察部を照射して照明するヘッド部と、二次照明光により照明された被観察部で反射された反射光を受光して被観察部を観察する観察光学系と、を備え、照明光学系は、入射端および出射端を有するビームホモジナイザと、一次照明光を構成する光ビームをビームホモジナイザの入射端に入射する光源部と、ビームホモジナイザの出射端を拡散面に投影する投影光学部と、を有している。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被観察物の被観察部を観察する観察装置であって、
一次照明光を前記被観察部の近傍に照射する照明光学系と、
前記被観察部の近傍で前記一次照明光を拡散させる拡散面を有し、前記拡散面で発生する拡散光を二次照明光として前記被観察部を照射して照明するヘッド部と、
前記二次照明光により照明された前記被観察部で反射された反射光を受光して前記被観察部を観察する観察光学系と、を備え、
前記照明光学系は、
入射端および出射端を有するビームホモジナイザと、
前記一次照明光を構成する光ビームを前記ビームホモジナイザの前記入射端に入射する光源部と、
前記ビームホモジナイザの前記出射端を前記拡散面に投影する投影光学部と、
を有することを特徴とする観察装置。
【請求項2】
請求項1に記載の観察装置であって、
前記ビームホモジナイザは、前記光ビームに対して透過性を有する材料で構成された光学ロッドである、観察装置。
【請求項3】
請求項2に記載の観察装置であって、
前記光源部は、
前記光ビームを発生する発光素子と、
前記発光素子が実装された光源基板と、
前記ビームホモジナイザ側から前記発光素子を覆うように設けられ、前記ビームホモジナイザ側の平坦面から前記光ビームを出射する保護カバーと、
を有する、観察装置。
【請求項4】
請求項3に記載の観察装置であって、
前記光学ロッドは、前記入射端から前記出射端に向かって断面積が大きくなるテーパロッドである、観察装置。
【請求項5】
請求項2に記載の観察装置であって、
前記光源部は、
前記光ビームを発生する発光素子と、
前記発光素子が実装された光源基板と、
前記ビームホモジナイザ側から前記発光素子を覆うように設けられ、前記ビームホモジナイザ側に突出したドーム形状面から前記光ビームを出射するドームレンズと、
を有する、観察装置。
【請求項6】
請求項1に記載の観察装置であって、
前記光源部では、前記光ビームを発生する発光素子が複数個、互いに並列接続された、観察装置。
【請求項7】
請求項6に記載の観察装置であって、
それぞれが前記光ビームを発生する複数の発光素子を直列接続した発光素子列が複数個、互いに並列接続された、観察装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか一項に記載の観察装置であって、
前記ヘッド部は前記反射光を反射して前記観察光学系に導光するミラー部材を有する、観察装置。
【請求項9】
請求項8に記載の観察装置であって、
前記ビームホモジナイザの前記出射端に配置され、前記一次照明光のうち前記ミラー部材に向かう光ビームを選択的に遮光するマスク部をさらに備える、観察装置。
【請求項10】
被観察物の被観察部を観察する観察方法であって、
前記被観察部の近傍に位置決めされたヘッド部の拡散面に一次照明光を照射することで、前記拡散面で発生する拡散光を二次照明光として前記被観察部を照射して照明する照明工程と、
前記二次照明光により照明された前記被観察部で反射された反射光を受光して前記被観察部を観察する観察工程と、を備え、
前記照明工程は、
前記一次照明光を構成する光ビームをビームホモジナイザに入射する工程と、
前記ビームホモジナイザの出射端を前記拡散面に投影する工程と、
を有することを特徴とする観察方法。
【請求項11】
基板を保持して回転させる回転機構と、
前記回転機構により回転される前記基板の周縁部に処理液を供給して前記基板の周縁部を処理する処理機構と、
前記周縁部を処理する前または処理した後に前記周縁部を観察する観察装置と、を備え、
前記観察装置は、
一次照明光を前記周縁部の近傍に照射する照明光学系と、
前記周縁部の近傍で前記一次照明光を拡散させる拡散面を有し、前記拡散面で発生する拡散光を二次照明光として前記周縁部を照射して照明するヘッド部と、
前記二次照明光により照明された前記周縁部で反射された反射光を受光して前記周縁部を観察する観察光学系と、を備え、
前記照明光学系は、
入射端および出射端を有するビームホモジナイザと、
前記一次照明光を構成する光ビームを前記ビームホモジナイザの前記入射端に入射する光源部と、
前記ビームホモジナイザの前記出射端を前記拡散面に投影する投影光学部と、
を有することを特徴とする基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体ウエハなどの被観察物を観察する観察技術、特に半導体ウエハの周縁部などの被観察部の観察に適した観察技術、ならびに当該観察技術を利用する基板処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハなどの被観察物の周縁部に対して種々の処理を施す処理システムが知られている。例えば特許文献1では、基板に塗布材が塗り広げられた後で、基板のベベル部が洗浄される。また、ベベル洗浄工程後に、ベベル部の表面状態を観察してベベル部における塗布材の有無を判定する検査工程が実行される。この検査工程は、ベベル洗浄工程を実行する装置とは異なる装置で実行される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載のシステムでは、ベベル洗浄工程を実行する基板処理装置と、検査工程を実行する検査装置とが相互に分離されている。このため、基板処理装置での不良発生時と検査装置での不良発見に時間差が生じる。これが、歩留まり低下の要因となることがあった。
【0005】
そこで、上記問題を解消するために、基板処理装置に観察装置を組み込むことが考えられる。しかしながら、観察装置は、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)カメラを基板の周縁部に配置し、当該カメラにより基板の周縁部を観察する。また、ベベル部の表面状態を検査する場合、様々な方向からベベル部を観察するためのカメラと、カメラに対応して様々な方向からベベル部を照明するための光源が必要となる。つまり、従来の観察装置では、基板の周縁部近傍に配置する構成要素は比較的大きく、基板処理装置への観察装置の組込は困難であった。
【0006】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、半導体ウエハの周縁部などの被観察部を良好に観察することができる観察装置、観察方法、ならびに当該観察装置を装備する基板処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の第1の態様は、被観察物の被観察部を観察する観察装置であって、一次照明光を被観察部の近傍に照射する照明光学系と、被観察部の近傍で一次照明光を拡散させる拡散面を有し、拡散面で発生する拡散光を二次照明光として被観察部を照射して照明するヘッド部と、二次照明光により照明された被観察部で反射された反射光を受光して被観察部を観察する観察光学系と、を備え、照明光学系は、入射端および出射端を有するビームホモジナイザと、一次照明光を構成する光ビームをビームホモジナイザの入射端に入射する光源部と、ビームホモジナイザの出射端を拡散面に投影する投影光学部と、を有することを特徴としている。
【0008】
この発明の第2の態様は、被観察物の被観察部を観察する観察方法であって、被観察部の近傍に位置決めされたヘッド部の拡散面に一次照明光を照射することで、拡散面で発生する拡散光を二次照明光として被観察部を照射して照明する照明工程と、二次照明光により照明された被観察部で反射された反射光を受光して被観察部を観察する観察工程と、を備え、照明工程は、一次照明光を構成する光ビームをビームホモジナイザに入射する工程と、ビームホモジナイザの出射端を拡散面に投影する工程と、を有することを特徴としている。
【0009】
この発明の第3の態様は、基板処理装置であって、基板を保持して回転させる回転機構と、回転機構により回転される基板の周縁部に処理液を供給して基板の周縁部を処理する処理機構と、周縁部を処理する前または処理した後に周縁部を観察する観察装置と、を備え、観察装置は、一次照明光を周縁部の近傍に照射する照明光学系と、周縁部の近傍で一次照明光を拡散させる拡散面を有し、拡散面で発生する拡散光を二次照明光として周縁部を照射して照明するヘッド部と、二次照明光により照明された周縁部で反射された反射光を受光して周縁部を観察する観察光学系と、を備え、照明光学系は、入射端および出射端を有するビームホモジナイザと、一次照明光を構成する光ビームをビームホモジナイザの入射端に入射する光源部と、ビームホモジナイザの出射端を拡散面に投影する投影光学部と、を有することを特徴としている。
【0010】
このように構成された発明では、ヘッド部が被観察部の近傍に位置決めされる。そして、ヘッド部の拡散面に一次照明光が照射されることで、拡散面で発生した拡散光が二次照明光として被観察部を照射される。こうして拡散光で照明された被観察部では、拡散光の一部が反射される。そして、反射光が観察光学系に入射され、被観察部が観察される。
【0011】
ここで、被観察部を良好に観察するためには、二次照明光の光量分布が均一であることが重要である。そこで、本発明では、光源部で発生した光ビームがビームホモジナイザの入射端に入射し、ビームホモジナイザにより光ビームの光量分布が均一化された後で、ビームホモジナイザの出射端から出射される。こうして均一な光量分布を有する光ビームにより一次照明光は構成されている。そして、当該一次照明光を出射する出射端が投影光学部により拡散面に投影される。したがって、拡散面には均一な光量分布を有する一次照明光が照射され、当該拡散面で二次照明光が被観察部位に向けて出射される。その結果、被観察部位は均一な光量分布を有する二次照明光で照明される。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、被観察物の被観察部を良好に観察することができる観察装置が得られる。また、この観察装置を用いることで、基板処理装置への組み込みも容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係る基板処理装置の一実施形態を装備する基板処理システムを示す図である。
【
図2】基板処理装置の構成を概略的に示す図である。
【
図3】基板処理装置の一部を上方から見た平面図である。
【
図4】撮像対象となる基板の周縁部の形状を例示する図である。
【
図5】
図2および
図3に示す基板処理装置の電気的構成を示すブロック図である。
【
図7】上面撮像に寄与する光の進み方を模式的に示す図である。
【
図8】側面撮像に寄与する光の進み方を模式的に示す図である。
【
図9】撮像部により撮像される基板の周縁部の画像を模式的に示す図である。
【
図10】本発明に係る基板処理装置に装備された照明光学系の一例を示す図である。
【
図11】発光素子の駆動回路の一例を示す図である。
【
図12】本発明に係る基板処理装置に装備された照明光学系の他の例を示す図である。
【
図13】本発明に係る基板処理装置に装備された照明光学系の別の例を示す図である。
【
図14】発光素子の駆動回路の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は本発明に係る基板処理装置の一実施形態を装備する基板処理システムを示す図である。基板処理システム200は、基板Sに対して処理を施す基板処理部210と、この基板処理部210に結合されたインデクサ部220とを備えている。インデクサ部220は、基板Sを収容するための容器C(複数の基板Sを密閉した状態で収容するFOUP(Front Opening UnifiedPod)、SMIF(Standard
Mechanical Interface)ポッド、OC(Open Cassette)など)を複数個保持することができる容器保持部221と、この容器保持部221に保持された容器Cにアクセスして、未処理の基板Sを容器Cから取り出したり、処理済みの基板Sを容器Cに収納したりするためのインデクサロボット222を備えている。各容器Cには、複数枚の基板Sがほぼ水平な姿勢で収容されている。
【0015】
本明細書では、基板Sの両主面のうちパターンが形成されているパターン形成面(一方主面)を「表面」と称し、その反対側のパターンが形成されていない他方主面を「裏面」と称する。また、下方に向けられた面を「下面」と称し、上方に向けられた面を「上面」と称する。また、本明細書において「パターン形成面」とは、基板において、任意の領域に凹凸パターンが形成されている面を意味する。
【0016】
インデクサロボット222は、装置筐体に固定されたベース部222aと、ベース部222aに対し鉛直軸まわりに回動可能に設けられた多関節アーム222bと、多関節アーム222bの先端に取り付けられたハンド222cとを備える。ハンド222cはその上面に基板Sを載置して保持することができる構造となっている。このような多関節アームおよび基板保持用のハンドを有するインデクサロボットは公知であるので詳しい説明を省略する。
【0017】
基板処理部210は、平面視においてほぼ中央に配置された基板搬送ロボット211と、この基板搬送ロボット211を取り囲むように配置された複数の処理ユニット1とを備えている。具体的には、基板搬送ロボット211が配置された空間に面して複数の処理ユニット1が配置されている。処理ユニット1の主要構成は処理チャンバ100の内部に設置されている。これらの処理ユニット1に対して基板搬送ロボット211は適時アクセスして基板Sを受け渡す。一方、各処理ユニット1は基板Sに対して所定の処理を実行する。本実施形態では、これらの処理ユニット1の一つが本発明に係る基板処理装置に相当している。
【0018】
図2は基板処理装置の構成を概略的に示す図である。
図3は基板処理装置の一部を上方から見た平面図である。
図4は撮像対象となる基板の周縁部の形状を例示する図である。
図5は
図2および
図3に示す基板処理装置の電気的構成を示すブロック図である。
図2、
図3および以下に参照する各図では、理解容易のため、各部の寸法や数が誇張または簡略化して図示されている場合がある。また、各図には方向関係を明確にするため、Z軸を鉛直方向とし、XY平面を水平面とする座標系を適宜付している。
【0019】
基板処理装置(処理ユニット)1は、回転機構2、飛散防止機構3、処理機構4、周縁加熱機構5および撮像機構6を備えている。これら各部2~6は、処理チャンバ100の内部空間101に収容された状態で、装置全体を制御する制御ユニット9と電気的に接続されている。そして、各部2~6は、制御ユニット9からの指示に応じて動作する。
【0020】
制御ユニット9としては、例えば、一般的なコンピュータと同様のものを採用できる。すなわち、制御ユニット9においては、プログラムに記述された手順に従って演算処理部91としてのCPUが演算処理を行うことにより、基板処理装置1の各部を制御する。これによって、基板処理装置1は、処理チャンバ内で基板Sの上面の周縁部に処理液を供給してベベルエッチング処理を実行する。なお、制御ユニット9の詳しい構成および動作については、後で詳述する。また、本実施形態では、各基板処理装置1に対して制御ユニット9を設けているが、1台の制御ユニットにより複数の基板処理装置1を制御するように構成してもよい。また、基板処理システム200全体を制御する制御ユニット(図示省略)により基板処理装置1を制御するように構成してもよい。
【0021】
回転機構2は、基板Sを、その表面を上方に向けた状態で、略水平姿勢に保持しつつ回転方向AR1(
図3)に回転させる。回転機構2は、基板Sの主面中心を通る鉛直な回転軸AXまわりに回転させる。回転機構2は、基板Sより小さい円板状の部材であるスピンチャック21を備えている。スピンチャック21は、その上面が略水平となり、その中心軸が回転軸AXに一致するように設けられている。スピンチャック21の下面には、回転軸部22が連結されている。回転軸部22は、その軸線を回転軸AXと一致させた状態で、鉛直方向に延設されている。また、回転軸部22には、回転駆動部(例えば、モータ)23が接続されている。回転駆動部23は、制御ユニット9からの回転指令に応じて回転軸部22をその軸線周りに回転駆動する。したがって、スピンチャック21は、回転軸部22とともに回転軸AXまわりに回転可能である。回転駆動部23と回転軸部22とは、スピンチャック21を回転軸AX中心に回転させる機能を担っている。
【0022】
スピンチャック21の中央部には、図示省略の貫通孔が設けられており、回転軸部22の内部空間と連通している。内部空間には、バルブ(図示省略)が介装された配管を介してポンプ24(
図5)が接続されている。ポンプ24およびバルブは、制御ユニット9に電気的に接続されており、制御ユニット9からの指令に応じて動作する。これによって、負圧と正圧とが選択的にスピンチャック21に付与される。例えば基板Sがスピンチャック21の上面に略水平姿勢で置かれた状態でポンプ24が負圧をスピンチャック21に付与すると、スピンチャック21は基板Sを下方から吸着保持する。一方、ポンプ24が正圧をスピンチャック21に付与すると、基板Sはスピンチャック21の上面から取り外し可能となる。また、ポンプ24の吸引を停止すると、スピンチャック21の上面上で基板Sは水平移動可能となる。
【0023】
飛散防止機構3は、
図2と
図3に示すように、スピンチャック21に保持された基板Sの外周を囲むように設けられた概略筒状のカップ31と、カップ31の外周部の下方に設けられた液受け部32とを有している。制御ユニット9からの制御指令に応じてガード駆動部33(
図5)が作動することで、カップ31が昇降する。カップ31が下方位置に位置決めされると、
図2に示すように、カップ31の上端部はスピンチャック21に保持された基板Sの周縁部Ssよりも下方に位置する。逆に、カップ31が上方位置に位置決めされると、カップ31の上端部は基板Sの周縁部Ssよりも上方に位置する。
【0024】
カップ31が下方位置にあるときには、
図2に示すように、スピンチャック21に保持される基板Sがカップ31外に露出した状態になっている。このため、例えばスピンチャック21への基板Sの搬入および搬出時にカップ31が障害となることが防止される。
【0025】
一方、カップ31が上方位置にあるときには、カップ31の内周面はスピンチャック21に保持される基板Sの外周を取り囲む。これにより、後述するベベルエッチング処理時に基板Sの周縁部Ssから振り切られる処理液の液滴が処理チャンバ100内に飛散するのを防止することができる。また、処理液を確実に回収することが可能となる。すなわち、基板Sが回転することで基板Sの周縁部Ssから振り切られる処理液の液滴はカップ31の内周面に付着して下方へ流下し、カップ31の下方に配置された液受け部32により集められて回収される。
【0026】
処理機構4は、ベース41と、回動支軸42と、アーム43と、処理液ノズル44とを有している。ベース41は処理チャンバ100に固定されている。このベース41に対し、回動支軸42が回動自在に設けられている。回動支軸42からアーム43が水平に伸びており、その先端に処理液ノズル44が取り付けられている。回動支軸42が制御ユニット9からの制御指令に応じて回動することによりアーム43が揺動し、アーム43先端の処理液ノズル44が、基板Sの上方から側方へ退避した退避位置と、基板Sの周縁部上方の処理位置との間を移動する。
図3において2点鎖線により示されるノズル44は退避位置にある状態を、実線により示されるノズル44は処理位置にある状態を、それぞれ示している。
【0027】
処理液ノズル44は処理液供給部45(
図5)に接続されている。そして、制御ユニット9からの供給指令に応じて処理液供給部45が処理液を処理液ノズル44に向けて供給すると、処理液ノズル44から処理開始位置Psに向けて処理液が吐出される。この処理開始位置Psは、基板Sの周縁部Ssが移動する経路上の1点である。したがって、処理液ノズル44が処理液を吐出しつつスピンチャック21が回転することで、基板Sの周縁部Ssの各部は処理開始位置Psを通過する間に処理液の供給を受ける。その結果、基板Sの周縁部Ss全体に対し、処理液によるベベルエッチング処理が実行される。
【0028】
周縁加熱機構5は環状のヒーター51を備えている。ヒーター51は、基板Sの下面周縁部に沿って基板Sの周方向に延在された発熱体を内蔵している。このヒーター51に対して制御ユニット9から加熱指令が与えられると、発熱体から放出される熱によって基板Sの周縁部Ssが下方から加熱される。それによって、周縁部Ssの温度がベベルエッチング処理に適した値に昇温される。
【0029】
撮像機構6は、ベース6Aと、回動支軸6Bと、アーム6Cと、ヘッド駆動部6Dと、照明光学系6Eと、観察光学系6Fと、ヘッド部6Gと、を有している。ベース6Aは処理チャンバ100に固定されている。このベース6Aに対し、回動支軸6Bが回動自在に設けられている。回動支軸6Bからアーム6Cが水平に伸びており、その先端にヘッド部6Gが取り付けられている。そして、アーム6Cを駆動するヘッド駆動部6D(
図5)に対して制御ユニット9から制御指令が与えられると、当該指令に応じてヘッド駆動部6Dは
図3中の1点鎖線で示すようにアーム6Cを揺動する。これによって、アーム6C先端に取り付けられたヘッド部6Gが、基板Sの上方から側方へ退避した退避位置P1と、基板Sの周縁部Ssを撮像する撮像位置P2との間で往復移動する。
図3において実線により示されるヘッド部6Gは退避位置にある状態を、一点鎖線により示されるヘッド部6Gは撮像位置にある状態を、それぞれ示している。撮像位置P2では、ヘッド部6Gは基板Sの(-Y)側端部に近接して配置される。
【0030】
図3に示すように、撮像位置P2からX方向に離間した離間位置P3に照明光学系6Eおよび観察光学系6Fが設けられている。この離間位置P3は、基板Sやカップ31などのベベルエッチング処理を行う各部(回転機構2、飛散防止機構3、処理機構4、周縁加熱機構5)から離間している。照明光学系6Eは、カップ31の外側から撮像位置P2に向けて照明光L1を照射する。このとき、カップ31は下方位置に位置決めされるとともに、ヘッド部6Gが撮像位置P2に位置決めされており、照明光L1がヘッド部6Gに入射する。この照明光L1はヘッド部6Gで拡散反射される。こうして発生する拡散光で基板Sの周縁部Ssは照明される。そして、基板Sの周縁部Ssで反射された反射光L2がさらにヘッド部6Gで反射される。反射光L2はヘッド部6Gから離間位置P3に向けて導光され、観察光学系6Fに入射される。これによって、観察光学系6Fは基板Sの周縁部Ssの像を取得し、その画像データを制御ユニット9に送る。
【0031】
ここで、本実施形態において撮像対象となる基板Sの周縁部Ssについて、
図4を参照して説明する。
図4に示すように、半導体ウエハなどの基板Sでは、その周縁部に傾斜面を有するベベル部が形成されたものがある。ここでいう「ベベル部」とは、基板Sの周縁部Ssのうち、基板Sが水平姿勢にあるときに表面が水平面に対し傾いた状態にある領域の全体を指すものとする。
【0032】
ベベル部の断面形状および寸法については、図に点線で示す最大寸法Dmaxと破線で示す最小寸法Dminとが標準規格として規定され、これらの間に収まっている限りにおいては比較的高い自由度が与えられているのが一般的である。ベベル部の断面は、
図4に示すように傾きの異なる複数の面で構成されるケースが多いが、湾曲面で構成されるケースもある。
【0033】
以下において必要な場合には、基板Sの周縁部Ssのうち基板Sの上面と同一平面である部分を「A面」と称して符号Saを付し、基板Sの端面を「C面」と称して符号Scを付す。そして、A面SaとC面Scとを接続する傾斜面を「B面」と称し符号Sbを付す。また、基板Sの下面と同一平面である部分を「E面」と称して符号Seを付し、C面ScとE面Seとを接続する傾斜面を「D面」と称し符号Sdを付す。本明細書における「周縁部Ss」は、これらの各面を包括的に含む概念である。
【0034】
上記したように、ヘッド部6Gは、照明光学系6Eからの照明光L1を受けて拡散光を発生させ、当該拡散光により基板Sの周縁部Ssを照明する拡散照明機能と、周縁部Ssで反射された反射光L2を観察光学系6Fに導くガイド機能とを兼ね備えている。以下、ヘッド部6Gの構成および動作を
図6ないし
図9を参照しつつ説明する。その後で、照明光学系6Eの構成および動作について詳述する。
【0035】
図6は撮像機構のヘッド部を示す斜視図である。より具体的には、
図6(a)はヘッド部6Gが撮像位置P2に配置された状態を表す図であり、これから基板Sを取り除いた状態を表すのが
図6(b)である。ヘッド部6Gは、拡散面610を有する拡散照明部61と、それぞれ拡散面611で囲まれた3枚のミラー部材62a~62cで構成されるガイド部62と、拡散照明部61を保持する保持部63とを有している。
図6では、拡散照明部61との区別のために、保持部63に該当する領域にドットを付している。
【0036】
拡散照明部61は、白色の樹脂、例えばPTFE(ポリテトラフルオロエチレン:polytetrafluoroethylene)で構成されている。拡散照明部61は、YZ平面に略平行なプレート形状を有しており、(+Y)方向側の端部に切欠部611が形成されている。この切欠部611は、(+X)方向側から見てU字を時計方向に90゜回転させた形状を有している。
【0037】
拡散照明部61では、切欠部611に沿って傾斜面610が設けられている。傾斜面610は、上下方向および(-Y)方向から切欠部611を取り囲むように設けられ、切欠部611に近づくにしたがって(-X)方向に傾斜するように仕上げられたテーパー面である。その表面は入射光を拡散反射させるように仕上げられており、後述するように、照明光を拡散反射させて基板Sの周縁部Ssに入射させる拡散面610として機能する。
【0038】
拡散面610に取り囲まれるように、ミラー部材62a~62cが取り付けられている。より具体的には、拡散面610のうち、切欠部611の鉛直上方に当たる位置には第1のミラー部材62aが、切欠部611の(-Y)側には第2のミラー部材62bが、切欠部611の鉛直下方に当たる位置には第3のミラー部材62cが、それぞれ取り付けられている。なお、本実施形態では、耐薬性や耐熱性などを考慮して、ミラー部材62a~62cはSi(シリコン)で構成されている。
【0039】
一方、保持部63は、薬液および熱に対する耐性の高い樹脂、例えばPEEK(ポリエーテルエーテルケトン:polyetheretherketone)で構成され、外形が概ね拡散照明部61と同等に形成されたプレート状部材である。保持部63は、拡散照明部61の背面、つまり(-X)側主面に結合されてバックアップ部材として機能する。また、保持部63はアーム6Cに結合されている。したがって、アーム6Cの揺動により、拡散照明部61と保持部63とが一体的に、退避位置P1と撮像位置P2との間を移動する。
【0040】
図6(a)に示すように、ヘッド部6Gが撮像位置P2にあり、かつ基板Sがスピンチャック21により保持されているとき、基板Sの周縁部Ssが切欠部611の間に入り込む位置関係となる。切欠部611を(+X)側から(-X)方向に見たとき、第1のミラー部材62aには、基板周縁部Ssのうち上方から見たときに見える部分、つまりA面SaおよびB面Sbの像が映り込む。同様に、第2のミラー部材62bには、基板周縁部Ssのうち側方から見たときに見える部分、つまりB面Sb、C面ScおよびD面Sdの像が映り込む。また、第3のミラー部材62cには、基板周縁部Ssのうち下方から見たときに見える部分、つまりD面SdおよびE面Seの像が映り込む。
【0041】
詳しくは後述するが、観察光学系6Fは、(+X)側から3つのミラー部材62a~62cの全てを見込むように設定された撮像視野で撮像を行う。これにより、ミラー部材62a~62cのそれぞれに映り込んだ基板Sの像が1つの画像内に取り込まれる。すなわち、観察光学系6Fは、基板SsのA面Sa、B面Sb、C面Sc、D面Sd、E面Seの全てを1つの画像に一括して撮像することができる。基板Sの回転に伴い複数回撮像を行うことで、周縁部Ssのうち周方向に沿って互いに位置の異なる複数の領域の画像を取得することができる。
【0042】
以下の説明では、第1のミラー部材62aに映り込んだ基板SのA面SaおよびB面Sbの像を撮像することを「上面撮像」と称する。また、第2のミラー部材62bに映り込んだ基板SのB面Sb、C面ScおよびD面Sdの像を撮像することを「側面撮像」と称する。また、第3のミラー部材62cに映り込んだ基板SのD面SdおよびE面Seの像を撮像することを「下面撮像」と称する。
【0043】
図7は上面撮像に寄与する光の進み方を模式的に示す図である。より具体的には、
図7(a)はヘッド部6Gに入射し反射される光の進路を示す斜視図であり、
図7(b)はその垂直切断面における断面図である。
図7(a)および
図7(b)に実線矢印で示すように、基板Sの上面側に沿って(-X)方向に進む照明光L1aは、ヘッド部6Gの拡散面610に入射する。拡散面610のうち特に切欠部611の上方に位置する上方拡散面61aに入射し拡散反射された光が種々の方向から基板Sの上面に入射することで、基板周縁部Ssが照明される。
【0044】
点線矢印で示すように、基板Sで反射された反射光は種々の方向へ進み得るが、このうちミラー部材62aに入射し、かつミラー部材62aで反射されて(+X)方向に進む光L2aが、その光路上に配置された観察光学系6Fに入射する。この光を受光することで、基板Sの上面側から見た周縁部Ssを撮像する「上面撮像」が実現される。
【0045】
図7(b)に示すように、基板Sの下面側でも上面側と同様の現象が生じる。すなわち、ヘッド部6Gは上下対称な構造を有しており、基板Sの下面側に沿って(-X)方向に進む照明光L1cは、拡散面610のうち特に切欠部611の下方に位置する下方拡散面61cに入射し拡散反射されて、基板Sの下面を照明する。このとき基板Sおよびミラー部材62cで反射され(+X)方向へ向かう反射光L2cを受光することで、基板Sの下面側から見た周縁部Ssを撮像する「下面撮像」が実現される。
【0046】
図8は側面撮像に寄与する光の進み方を模式的に示す図である。より具体的には、
図8(a)はヘッド部6Gに入射し反射される光の進路を示す斜視図であり、
図8(b)はその水平切断面における断面図である。
図8(a)および
図8(b)に実線矢印で示すように、基板Sの側方を(-X)方向に進む照明光L1bは、ヘッド部6Gの拡散面610に入射し、そのうち特に切欠部611の側方に位置する側方拡散面61bで拡散反射される。この光が種々の方向から基板Sの側面に入射することで、基板周縁部Ssが照明される。
【0047】
そして、点線矢印で示される基板Sからの反射光のうち、ミラー部材62bで反射されて(+X)方向に進む光L2bが、その光路上に配置された観察光学系6Fに入射する。これにより、基板Sの側方から見た周縁部Ssを撮像する「側面撮像」が実現される。
【0048】
観察光学系6Fは、物体側テレセントリックレンズで構成される観察レンズ系と、CMOSカメラとを有している。したがって、上記反射光のうち観察レンズ系の光軸に平行な反射光L2(L2a,L2b,L2c)のみがCMOSカメラのセンサ面に入射され、基板Sの周縁部Ssおよび隣接領域の像がセンサ面上に結像される。こうして観察光学系6Fは基板Sの周縁部Ssおよび隣接領域を撮像し、例えば
図9に示す、上面画像領域Ma、側面画像領域Mbおよび下面画像領域Mcを含む画像Imを取得する。そして、その画像を示す画像データを観察光学系6Fは制御ユニット9に送信する。
【0049】
図9は撮像部により撮像される基板の周縁部の画像を模式的に示す図である。
図9(a)はヘッド部6Gおよび基板Sを(+X)側から(-X)方向に見た模式図であり、破線で囲まれた領域FVが観察光学系6Fの撮像視野を表している。このように、観察光学系6Fの撮像視野FVは、ヘッド部6Gのうちミラー部材62a~62cを含むように設定されている。
【0050】
図9(b)は撮像視野FV内の各ミラー部材62a~62cに映る基板Sの像を模式的に示している。
図9(b)に示すように、第1のミラー部材62aには、基板Sの周縁部SsのうちA面SaとB面Sbとの像が映る。また、第2のミラー部材62bには、基板Sの周縁部SsのうちB面Sb、C面ScおよびD面Sdの像が映る。また、第3のミラー部材62cには、基板Sの周縁部SsのうちD面SdとE面Seとの像が映る。観察光学系6Fはこれらの像を一括して撮像し1つの画像を取得する。
【0051】
図9(c)は撮像により実際に得られる画像を模式化したものである。上記した構成の撮像機構6では、照明光学系6Eからの照明光を拡散面610で拡散させることで基板Sを照明し、基板Sからの反射光の一部を受光することで撮像を行っている。このため、照明光量および受光光量はいずれも十分とは言えない。このような状況で良好に撮像を行うためにカメラの感度を高くする必要があり、その結果、ヘッド部6Gの詳細な構造は、いわゆる白飛びによって画像にはほとんど反映されなくなる。
【0052】
そのため、
図9(c)に示すように、実際に得られる画像Imは、切欠部611に相当しその内部に非合焦状態で映る基板Sの側面の像を含む暗い領域Mdと、上方から見た基板Sの周縁部Ssの像に対応する上面画像領域Maと、側方から見た基板Sの周縁部Ssの像に対応する側面画像領域Mbと、下方から見た基板Sの周縁部Ssの像に対応する下面画像領域Mcとを含んだものとなる。
【0053】
これらの各領域を含む画像Imを解析することで、周方向における基板Sの周縁部の形状やエッチング状況などを示す情報を取得することができる。そして、これらの情報から、スピンチャック21に載置された基板Sの回転軸AXに対する偏心量、基板Sの反り量やベベルエッチング結果(エッチング幅)などを検査することができる。
【0054】
そこで、上記のように構成された撮像機構6を装備する基板処理装置1では、制御ユニット9が、装置各部を制御し、(A)ベベルエッチング処理前の基板検査、(B)アライメント処理、(C)アライメント処理後のベベルエッチング処理および(D)ベベルエッチング処理後の基板検査を実行する。この制御ユニット9は、
図5に示すように、各種演算処理を行う演算処理部91、基本プログラムや画像データを記憶する記憶部92および各種情報を表示するとともに操作者からの入力を受け付ける入力表示部93を有している。
【0055】
そして、制御ユニット9においては、プログラムに記述された手順にしたがって主制御部としての演算処理部(CPU)91が演算処理を行うことにより、基板処理装置1の各部を以下のように制御する。すなわち、演算処理部91は、
図5に示すように、ヘッド部6Gの位置決めを行う位置決め制御部911、全周縁画像を取得する全周縁画像取得部912、ベベルエッチング処理前の全周縁画像から基板Sの偏心量を導出する偏心量導出部913、ベベルエッチング処理前の全周縁画像から基板Sの反り量を導出する反り量導出部914、ベベルエッチング処理後の全周縁画像からエッチング幅を導出するエッチング幅導出部915、および全周縁画像を画像処理して得られる残渣強調画像から残渣を分析する残渣分析部916として機能する。
【0056】
なお、
図5中の符号7は上記偏心量だけ基板Sを移動させて回転軸AXに対する基板Sの偏心を補正する偏心補正機構である。偏心補正機構については、従来周知のものを使用することができるため、ここでは偏心補正機構7の詳しい構成については説明を省略する。
【0057】
ところで、上記撮像機構6の照明光学系6Eは、照明光L1を一次照明光として拡散面610を含む領域FV(
図9(a)参照)に照射することで、拡散面610で拡散反射された拡散光を二次照明光として発生させている。そして、当該拡散光により基板Sは照明される(照明工程)。また、上記撮像機構6の観察光学系6Fは、基板Sからの反射光の一部を受光することで、基板Sの周縁部Ssを撮像する。このように、観察光学系6Fにより周縁部Ssが観察される(観察工程)。このように撮像機構6を用いて基板Sの周縁部Ssを観察しており、基板Sおよび周縁部Ssがそれぞれ本発明の「被観察物」および「被観察部」の一例に相当するとともに、撮像機構6が本発明の「観察装置」として機能する。
【0058】
撮像機構6により周縁部Ssの画像を良好に取得するためには、観察光学系6Fに対して次のような点が要望される。つまり、周縁部Ssに照射される拡散光(二次照明光)の光量分布が均一である。そこで、基板処理装置1には、
図10に示す構成の撮像機構6が用いられており、この撮像機構6が本発明に係る観察装置の第1実施形態に相当している。
【0059】
図10は本発明に係る基板処理装置に装備された照明光学系の一例を示す図である。同図(a)には照明光学系の全体構成が図示され、同図(b)には照明光学系6Eのうち投影光学部を除く構成の断面図が図示されている。照明光学系6Eは、光源部64と、光学ロッド65と、マスク部66と、投影光学部67とを有している。光源部64、光学ロッド65およびマスク部66は発光側筐体68により位置決め保持されている。そして、発光側筐体68と投影光学部67とが相互に連結されている。
【0060】
発光側筐体68には貫通孔681が延設されている。貫通孔681の延設方向D1(
図10の紙面における左右方向)における発光側筐体68の両端部には、光源部64およびマスク部66がそれぞれ取り付けられている。また、貫通孔681の内部では、上記延設方向D1と平行に光学ロッド65が配置されるとともに、図示を省略するロッド保持部によって固定されている。光学ロッド65は、光源部64から出射される光ビームに対して透過性を有するガラスまたは樹脂材料で構成されており、その形状は延設方向D1と平行な方向に延びる柱形状となっている。
【0061】
光源部64は、
図10(c)に示すように、1または複数個の発光素子641と、発光素子641が実装された光源基板642とを有している。本実施形態では、4個の発光素子641がマトリックス状に設けられている。
【0062】
図11は発光素子の駆動回路の一例を示す図である。4個の発光素子641は、同図に示すように、直流電源に対して直列接続されている。また、発光素子641毎に半導体リレー643が設けられ、制御ユニット9からの信号OUT1~OUT4に応じて対応する発光素子641の点灯を制御する。ここで、発光素子641が同一である場合には、上記点灯制御によって光源部64から出射する光ビームの光量を調整することができる。また、4つの発光素子641が互いに異なる波長の光ビームを出射する場合、上記点灯制御によって光源部64から出射する光ビームの光量および色を調整することができる。
【0063】
図10に戻って説明を続ける。発光素子641を点灯した際に発生する熱を効率的に放熱するために、同図(a)および(b)に示すように、光源基板642の反発光素子側(同図の左手側)にアルミニウム製の放熱部材644が取り付けられている。また、本実施形態では、発光素子641、光源基板642および放熱部材644が一体化されることで、発光構造体69が構成されている。しかも当該発光構造体69が発光側筐体68に対して着脱自在となっている。例えば発光素子641の寿命に応じて新しい発光構造体69に交換してもよい。また、発光色や個数などについて発光素子641の組み合わせが互いに異なる発光構造体69を予め準備しておき、処理対象となる基板Sの種類などに応じた発光構造体69を選択的に装着するように構成してもよい。
【0064】
図10(c)に示すように、光源基板642の発光素子側では、保護カバー645が発光素子641を覆うように設けられている。保護カバー645は、発光素子641から発光される光ビームに対して透過性を有するガラスまたは樹脂材料で構成されており、光学ロッド側の端面645aは平坦面に仕上げられている。この端面645aは光学ロッド65の端面651と対向しながら密着している。したがって、発光素子641が点灯して光ビームを発光すると、
図10(e)に示すように、発光素子641から一定の広がりをもって出射された光ビームは保護カバー645を介して光学ロッド65に入射する。
【0065】
光学ロッド65の断面は円形形状または多角形形状を有しており、光源部側の端面651が入射端に相当する一方、投影光学部側の端面652が出射端に相当する。つまり、光学ロッド65では、光源部64から出射された光ビームが端面651から入射すると、一部の光ビーム(
図10(e)において点線で示した光ビーム)を除き、多くの光ビームが光学ロッド65の内部で全反射されながら延設方向D1に伝播される。そして、
図10(f)に示すように、端面652の各部からほぼ同一特性の光ビームが上記一次照明光L1として出射する。このため、端面652における光ビームの光量分布はトップハット形状を有する。つまり、光学ロッド65はビームホモジナイザ機能を発揮し、その結果、均一な光量分布を有する一次照明光L1が得られる。
【0066】
ここで、投影光学部67が光学ロッド65の出射端(端面652)を適当な倍率で拡大して拡散面610に投影するように構成することで、拡散面610を均一な光量分布で一次照明することができる。また、上記したように制御ユニット9からの信号OUT1~OUT4(
図11)により全発光素子641を点灯させることで、比較的高い光量を有する一次照明光L1を拡散面610に照射することができる。それによって、拡散光(二次照明光)の光量を増大し、基板Sの周縁部Ssを良好に観察することができる。また、周縁部Ssの観察に適した色で基板Sの周縁部Ssを照明することができる。
【0067】
ただし、例えばパターン付き基板Sを観察する場合には、次のような問題が発生することがある。上記したように光学ロッド65の出射端(端面652)をそのまま投影光学部67によりヘッド部6Gに投影すると、光学ロッド65から出射される全光ビームが一次照明光L1として拡散面610のみならず、ミラー部材62a~62cにも照射される。ミラー部材62a~62cで鏡面反射された光は高強度で基板Sに入射され、さらに基板Sで鏡面反射されて拡散面610に入射することがある。これにより、新たな拡散光が生じ、基板Sのパターンで光の回折現象が生じることがある。また、上記のように高強度で基板Sに入射した光がミラー部材62a~62cに戻り、観察光学系6Fに入射することもある。これらの要因によって、本来存在しない明部が観察され、観察品質の低下を招くことがある。
【0068】
そこで、本実施形態では、
図10(b)および(d)に図示されたマスク部66が光学ロッド65と投影光学部67との間に介挿されている。このマスク部66は、一次照明光L1に対して透過性を有するガラスまたは樹脂材料で構成された平板プレート661を有している。この平板プレート661の両主面のうち光学ロッド65と対向する主面662に3つのマスク663が設けられている。これらのマスク663はそれぞれミラー部材62a~62cと光学的に共役な関係を有しており、ミラー部材62a~62cに対する遮光マスクとして機能する。すなわち、各マスク663は、光学ロッド65の端面652から入射してくる光ビームを遮光し、ミラー部材62a~62cへの一次照明光L1の照射を規制する。その結果、上記問題が解消される。その一方で、拡散面610には、マスク部66の非マスク領域を透過して一次照明光L1が照射される。その結果、上記問題を解消しつつ、優れた品質で基板Sの周縁部Ssを観察することができる。
【0069】
上記したように、本実施形態では、光学ロッド65が本発明の「ビームホモジナイザ」の一例に相当している。保護カバー645および端面645aがそれぞれ本発明の「カバー」および「平坦面」の一例に相当している。
【0070】
図12は本発明に係る基板処理装置に装備された照明光学系の他の例を示す図である。この照明光学系6Eは本発明に係る観察装置の第2実施形態に装備される。この第2実施形態が第1実施形態と大きく相違する点は、円柱または多角柱状の光学ロッド65の代わりに、テーパー形状の光学ロッド65を用いている点である。より具体的には、光学ロッド65は、同図(b)に示すように、入射端651から出射端652に向かって断面積が大きくなるテーパロッドにより構成されている。なお、その他の構成は第1実施形態と同一であるため、同一符号を付して構成の説明を省略する。
【0071】
この第2実施形態では、上記したテーパー形状を有するが故に、
図10(f)と
図12(f)との比較からわかるように、光学ロッド65の端面652、つまり出射端から出射される光ビームの発散角が第1実施形態のそれよりも小さくなっている。これにより、光学ロッド65から出射される光ビームの全てを投影光学部67に取り込みやすくなっている。その結果、投影光学部67の設計自由度が第1実施形態よりも高く、しかも投影性能も高く維持することができる。
【0072】
図13は本発明に係る基板処理装置に装備された照明光学系の別の例を示す図である。この照明光学系6Eは本発明に係る観察装置の第3実施形態に装備される。この第3実施形態が第1実施形態と大きく相違する点は、ドームレンズ646が設けられている点である。このドームレンズ646は、光学ロッド側に突出したドーム形状面を有し、光学ロッド側から全発光素子641を覆うように設けられている。このため、ドームレンズ646のレンズ効果によって、発光素子641から出射される光ビームの多くが光学ロッド65の端面651、つまり入射端に導光され、光学ロッド65に低発散角で入射する(ただし、同図(e)中の点線で示すように一部の光ビームは光学ロッド65に入射しない)。このため、第1実施形態に比べて方向D1における光学ロッド65を短縮することができ、照明光学系6Eの低ワークディスタンス化を図ることができる。
【0073】
上記した3種類の照明光学系6Eの技術的特徴は相互に相違しているものの、いずれも拡散面610に照射される一次照明光Lの光量分布を均一化することができ、優れた品質で基板Sの周縁部Ssを観察することができるという共通の作用効果を有している。したがって、基板処理装置1に対して撮像機構6を組み込む際の技術的要望に応じて第1実施形態、第2実施形態または第3実施形態を選択することができる。
【0074】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば実施形態では、4つの発光素子461を用いているが、発光素子461の個数は「4」に限定されるものではなく、任意である。例えば比較的広い発光面を有する単一の発光素子から光ビームを出射するように構成してもよい。もちろん、2個、3個または5個以上の発光素子461から光ビームを出射するように構成してもよい。
【0075】
また、複数の発光素子641を用いる場合、第1実施形態ないし第3実施形態と同様に、それらの発光素子641を直列接続して発光させてもよい。また、例えば
図14に示すように4個の発光素子641を並列接続し、制御ユニット9からの信号OUT1~OUT4により半導体リレー643を個別に開閉を切り替えることで、発光素子641を点灯制御するように構成してもよく、第1実施形態と同様の作用効果が得られる。しかも、並列接続構造を採用すると、例えば発光素子641の一つが故障したとしても、残りの発光素子641が点灯し続け、観察処理を継続して実行することができる。また、上記故障が発生した場合、残りの発光素子641に故障前よりも多くの電流が流れ、光量低下も抑制することができる。このように、並列接続構造はロバスト性に優れている。
【0076】
また、発光素子641の接続構造については、直接接続と並列接続とを併用してもよい。例えば4個の発光素子641で光源部64を構成するに際し、2個の発光素子641を直列接続した発光素子列を2組形成し、これらの発光素子列を並列接続してもよい。
【0077】
また、上記実施形態では、パターン付き基板Sを観察することを考慮してマスク部66が設けられているが、上記考慮が不要な基板処理装置1においては、マスク部66を設ける必要がない。
【0078】
また、上記実施形態では、光源部64からの光ビームの光量均一化を図るための「ビームホモジナイザ」として光学ロッド65を用いているが、その他のビームホモジナイザを用いてもよい。
【0079】
また、実施形態では、基板Sのベベルエッチング幅に対応し、Y方向における上方拡散面61a、下方拡散面61c、ミラー部材62a、62cの長さを設定しているが、撮像機構6により観察すべき範囲に応じて各部の長さを変更してもよい。また、このように拡散面およびミラー部材のY方向長さが互いに異なるヘッド部6Gを用意しておき、撮像対象範囲に応じてヘッド部6Gを選択使用するように構成してもよい。また、拡散面のY方向長さが互いに異なるヘッド部6Gを用意する場合には、ヘッド部6Gの拡散面は連続的な曲面から構成されていてもよい。また、拡散面のY方向長さが互いに異なるヘッド部6Gを用意する場合には、ヘッド部6Gの拡散面は一部が平面から構成されていてもよい。
【0080】
また、上記実施形態では、観察光学系6Fの観察レンズ系は、物体側テレセントリックレンズで構成しているが、観察光学系6Fの観察レンズ系の構成はこれに限られるものではない。観察光学系6Fの観察レンズ系は、他のレンズで構成されてもよい。
【0081】
また、上記実施形態では、基板Sの周縁部Ssで反射された反射光L2が上記ミラー部材62a~62cを経由して観察光学系6Fに受光されるように構成されているが、反射光L2が観察光学系6Fに受光されるように構成してもよい。
【0082】
また、上記実施形態では、拡散照明部61および保持部63は、ベベルエッチング処理を行う処理液の環境下およびヒーター51による加熱環境下にあるため、耐薬性および耐熱性を有する材料から構成されることとしている。拡散照明部61および保持部63をそれぞれPTFEおよびPEEKで構成しているが、構成材料はこれらに限定されるものではない。拡散照明部61は、PTFE以外の耐薬性および耐熱性を有する材料から構成されてもよい。保持部63は、PEEK以外の耐薬性および耐熱性を有する材料から構成されてもよい。拡散照明部61および保持部63は、例えば、金属材料、樹脂材料、またはセラミック材料等の表面にPFA等のフッ素樹脂材料がコーティングされる構成でもよい。また、拡散照明部61および保持部63を互いに異なる材料で構成しているが、同一材料で構成してもよい。また、拡散照明部61および保持部63は、耐薬性および耐熱性が要求されない環境下で使用される場合、構成材料は限定されない。拡散照明部61および保持部63は、耐薬性および耐熱性を有しない材料から構成されてもよい。
【0083】
また、拡散照明部61の拡散面61a~61cおよび保持部63の構成は限定されない。例えば、拡散照明部61または保持部63の少なくとも一部が金属材料から構成される場合、拡散面61a~61cは、金属材料の表面にショットブラスト加工が施されたものでもよい。
【0084】
また、ミラー部材62a~62cについても、Si(シリコン)に限定されるものではない。すなわち、処理液に対する耐薬性および処理温度に対する耐熱性を有する材料であれば、他の材料を用いてもよい。ミラー部材62a~62cは、例えば、耐薬性および耐熱性を有する材料の表面に金属材料が蒸着される構成でもよい。また、ミラー部材62a~62cは、耐薬性および耐熱性が要求されない環境下で使用される場合、構成材料は限定されない。ミラー部材62a~62cは、耐薬性および耐熱性を有しない材料から構成されてもよい。ミラー部材62a~62cは、例えば、耐薬性および耐熱性を有しない材料の表面に金属材料が蒸着される構成でもよい。
【0085】
また、上記実施形態では、撮像機構6を固定配置するのに対し、被観察物である基板Sを移動させることで周縁部を撮像しているが、基板Sを固定しつつ撮像機構6を移動させるように構成してもよい。また、基板Sおよび撮像機構6の両者を移動させてもよい。すなわち、観察装置(撮像機構6)に対し、被観察物(基板S)を相対移動させながら観察装置により被観察物の周縁部を撮像するように構成してもよい。
【0086】
さらに、上記実施形態では、基板Sの周縁部Ssをベベルエッチングする基板処理装置1に本発明に係る観察装置に相当する撮像機構6を組み込んでいるが、観察装置(撮像機構6)の適用対象はこれに限定されるものではない。被観察物の被観察部を撮像する観察装置などについても、本発明を適用可能である。また、本発明に係る観察装置に相当する撮像機構6は、例えば、塗布膜が形成された基板Sの周縁部に塗布膜の除去液を供給して、基板Sの周縁部の塗布膜を除去する基板処理装置にも適用可能である。また、露光処理を行う前に基板の表面を観察する観察装置にも適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0087】
この発明は、半導体ウエハなどの被観察物を観察する観察技術ならびに当該観察技術を利用する基板処理装置全般に適用することができる。
【符号の説明】
【0088】
1…基板処理装置
6…撮像機構(観察装置)
6E…照明光学系
6F…観察光学系
6G…ヘッド部
610…拡散面
62a~62c…ミラー部材
64…光源部
65…光学ロッド(ビームホモジナイザ)
66…マスク部
67…投影光学部
610…拡散面
641…発光素子
642…光源基板
645…保護カバー
646…ドームレンズ
651…(光学ロッドの)入射端
652…(光学ロッドの)出射端
663…マスク
681…貫通孔
L1…一次照明光
L2…反射光
S…基板(被観察物)
Ss…周縁部(被観察部)