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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170795
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】注出具付き包装袋及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 33/00 20060101AFI20241204BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20241204BHJP
   B65D 30/02 20060101ALI20241204BHJP
   B65D 33/38 20060101ALI20241204BHJP
【FI】
B65D33/00 Z
B32B27/32 E
B65D30/02
B65D33/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087521
(22)【出願日】2023-05-29
(71)【出願人】
【識別番号】313005282
【氏名又は名称】東洋製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】船岡 伸一郎
【テーマコード(参考)】
3E064
4F100
【Fターム(参考)】
3E064AA05
3E064BA30
3E064BB03
3E064BC18
3E064EA07
3E064EA30
3E064FA04
3E064FA05
3E064HM01
3E064HN65
3E064HS04
4F100AK07A
4F100AK07B
4F100AR00C
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100BA16
4F100EJ37A
4F100GB15
4F100JA04A
4F100JA04B
4F100JD01C
4F100JL12B
4F100YY00A
4F100YY00B
(57)【要約】
【課題】包装袋及び注出具が同種の樹脂から成り再利用が容易であると共に、包装袋及び注出具が隙間なく良好に接合されている注出具付き包装袋及びその製造方法を提供する。
【解決手段】シーラント層及び基材層を少なくとも備えた積層体と、取付部及び注出孔を備えた注出具とから成り、該注出具は、前記積層体のシーラント層同士が向き合うように重ね合わされた積層体間に配置され、前記取付部が前記シーラント層と熱溶着されて一体化されている注出具付き包装袋において、前記シーラント層及び基材層、並びに注出具が、プロピレン系重合体から成り、前記取付部の両端部近傍における基材層のFT-IR測定による吸光度比A1と、前記取付部の両端部近傍以外の未シール部における基材層のFT-IR測定による吸光度比A0との差(A0-A1)が0.05以上であることを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シーラント層及び基材層を少なくとも備えた積層体と、取付部及び注出孔を備えた注出具とから成り、該注出具は、前記積層体のシーラント層同士が向き合うように重ね合わされた積層体間に配置され、前記取付部が前記シーラント層と熱溶着されて一体化されている注出具付き包装袋において、
前記シーラント層及び基材層、並びに注出具が、プロピレン系重合体から成り、
前記取付部の両端部近傍における基材層のFT-IR測定による吸光度比A1と、前記取付部の両端部近傍以外の未シール部における基材層のFT-IR測定による吸光度比A0との差(A0-A1)が0.05以上であることを特徴とする注出具付き包装袋。
【請求項2】
前記シーラント層が、未延伸フィルムから成り、前記基材層が、延伸フィルムから成る請求項1記載の注出具付き包装袋。
【請求項3】
前記吸光度比A1が、0.74~0.85の範囲にある請求項2記載の注出具付き包装袋。
【請求項4】
前記シーラント層及び基材層、並びに注出具を構成するプロピレン系重合体の融点が155~175℃の範囲である請求項1記載の注出具付き包装袋。
【請求項5】
前記取付部の両端部近傍の基材層が、前記取付部の各端部から50mm以内の範囲である請求項1又は2記載の注出具付き包装袋。
【請求項6】
前記積層体が、基材層とシーラント層の間に、バリア層を有する請求項1又は2記載の注出具付き包装袋。
【請求項7】
前記注出具が、スパウトである請求項1又は2記載の注出具付き包装袋。
【請求項8】
プロピレン系重合体から成るシーラント層及び基材層を少なくとも備えた積層体を、前記シーラント層同士が向き合うように重ね合わせ、前記積層体間に取付部及び注出孔を備えたプロピレン系重合体から成る注出具を配置した後、前記積層体と注出具の一体化を行う熱溶着工程、を備えた注出具付き包装袋の製造方法において、
前記熱溶着工程が、前記注出具の取付部及びその両端部近傍におけるシーラント層の熱溶着を、前記積層体の融点(Tm)より10~80℃高い温度範囲で行う注出具溶着工程、及び前記注出具の取付部を含む前記積層体の周縁部の熱溶着を、前記積層体の融点(Tm)より10℃低い温度~10℃高い温度の範囲で行う周縁溶着工程、を有することを特徴とする注出具付き包装袋の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、注出具付き包装袋及びその製造方法に関するものであり、より詳細には、材料の再利用が容易な同種材料から成る注出具付き包装袋及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液体や粘稠物などを内容物とする包装袋には、内容物の取り出し性の観点から注出具が取り付けられている。このような注出具付き包装袋は、注出性に優れているだけでなく、注出具がキャップを備えていることにより、内容物を使い切らない或いは消費しきらない場合に再密封できる。
このような注出具付き包装袋としては、例えば下記特許文献1には、少なくとも基材とシーラント層を有する積層体を折り曲げて表面、天部、裏面を連続して設け周縁部をヒートシールした口栓付きパウチであって、前記表面と前記裏面の底部には前記天部側に折りたたまれた折込部がヒートシールされ、前記天部の垂直方向の長さが前記折込部の長さよりも短く、前記天部と前記表面または前記裏面が折り曲げられたヒートシールされていない部分の長さが前記表面と前記裏面の下端部の水平直線部より短いことを特徴とする口栓付きパウチが記載されている。
【0003】
下記特許文献1に記載されたパウチでは、パウチを構成する積層体の基材層としてポリエステルやナイロンなどから成るフィルムが例示され、シーラント層としてポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂を使用できることが記載されているが、注出具を含め、同種の材料から作成されていれば、面倒な分別作業を行うことなく再利用が可能であり、環境性等の観点からモノマテリルの製品が望まれている。
このような問題を解決するものとして、下記特許文献2には、基材と、シーラント層とを備える積層体であって、前記基材および前記シーラント層は、同一の材料により構成され、前記基材は、延伸処理および電子線照射処理の少なくとも一方が施されており、前記同一材料が、ポリエチレンまたはポリプロピレンであることを特徴とする、スパウト付き包装袋用積層体、及びこの積層体から形成された収容部とスパウトとを備えた包装袋が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-30619号公報
【特許文献2】特開2020-157517号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
積層体及び注出具を同種の樹脂から成形し、包装袋と注出具をヒートシールにより融着する場合、積層体に比して注出具は厚肉であるため、包装袋と注出具を融着できる温度でヒートシールすると、注出具近傍の包装袋が過加熱となり、積層体がヒートシールバーに付着してその一部が消失してしまうという問題が生じることがわかった。その一方、過加熱にならない温度でヒートシールを行っても、注出具への加熱が不十分となり、両者を確実に接合することができない。
このような問題を解決するために、注出具が存在する部分を、積層体のみが存在する部分とは別にヒートシールバーで加熱すると、包装袋と注出具の界面に隙間や接合不足を生じて液漏れを生じるおそれがある。
【0006】
従って本発明の目的は、同種の樹脂から成り、再利用が容易であると共に、包装袋及び注出具が隙間なく良好に接合されている注出具付き包装袋を提供することである。
本発明の他の目的は、同種の樹脂から成る注出具及び包装袋をヒートシールにより確実に接合可能な注出具付き包装袋を製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、シーラント層及び基材層を少なくとも備えた積層体と、取付部及び注出孔を備えた注出具とから成り、該注出具は、前記積層体のシーラント層同士が向き合うように重ね合わされた積層体間に配置され、前記取付部が前記シーラント層と熱溶着されて一体化されている注出具付き包装袋において、前記シーラント層及び基材層、並びに注出具が、プロピレン系重合体から成り、前記取付部の両端部近傍における基材層のFT-IR測定による吸光度比A1と、前記取付部の両端部近傍以外の未シール部における基材層のFT-IR測定による吸光度比A0との差(A0-A1)が0.05以上であることを特徴とする注出具付き包装袋が提供される。
【0008】
本発明の注出具付き包装袋においては、
(1)前記シーラント層が、未延伸フィルムから成り、前記基材層が、延伸フィルムから成ること、
(2)前記吸光度比A1が、0.74~0.85の範囲にあること、
(3)前記シーラント層及び基材層、並びに注出具を構成するプロピレン系重合体の融点が155~175℃の範囲であること、
(4)前記取付部の両端部近傍の基材層が、前記取付部の各端部から50mm以内の範囲であること、
(5)前記積層体が、基材層とシーラント層の間に、バリア層を有すること、
(6)前記注出具が、スパウトであること、
が好適である。
【0009】
本発明によればまた、プロピレン系重合体から成るシーラント層及び基材層を少なくとも備えた積層体を、前記シーラント層同士が向き合うように重ね合わせ、前記積層体間に取付部及び注出孔を備えたプロピレン系重合体から成る注出具を配置した後、前記積層体と注出具の一体化を行う熱溶着工程、を備えた注出具付き包装袋の製造方法において、前記熱溶着工程が、前記注出具の取付部及びその両端部近傍におけるシーラント層の熱溶着を、前記積層体の融点(Tm)よりも20~80℃高い温度範囲で行う注出具溶着工程、及び前記注出具の取付部を含む前記積層体の周縁部の熱溶着を、前記積層体の融点(Tm)より10℃低い温度~10℃高い温度の範囲で行う周縁溶着工程、を有することを特徴とする注出具付き包装袋の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の注出具付き包装袋においては、包装袋及び注出具が共にプロピレン系重合体から成ることから、再利用に際して原料ごとの分別が不要であり、環境性や経済性に優れている。
また、本発明の製造方法によれば、熱溶着(ヒートシール)工程を温度の異なる2つの工程に分けることにより、包装袋を構成する積層体の損傷を生じることなく、注出具を確実且つ隙間なく包装袋に取り付けることが可能となる。
更にこの製造方法により製造された注出具付き包装袋においては、注出具の取付位置(取付部)の両端部近傍における基材層と、それ以外の未シール部分(積層体自体)における基材層のFT-IR測定による吸光度比の差(A0-A1)が0.05以上であり、この吸光度比の差が0.05以上である場合には、注出具が包装袋との間に隙間を生じることなく確実に取り付けられていることが後述する実施例の結果からも明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の注出具付包装袋の一例を示す正面図である。
図2図1に示す注出具付包装袋の注出具の取付位置の拡大図である。
図3】本発明の注出具付包装袋の製造方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(注出具付き包装袋)
本発明の注出具付き包装袋は、包装袋を構成する積層体のシーラント層及び基材層、並びに注出具が、プロピレン系重合体から成り、前記取付部の両端部近傍における基材層のFT-IR測定による吸光度比A1と、前記取付部の両端部近傍以外の未シール部分(積層体自体)の基材層のFT-IR測定による吸光度比A0との差(A0-A1)が0.05以上であることが重要な特徴である。
本発明の注出具付き包装袋における、上記吸光度比は、注出具付き包装袋の基材層の結晶構造や配向状態を端的に示すものである。上記吸光度比の差(A0-A1)は取付部の両端部近傍のヒートシール部における基材層において、未シール部における基材層とは異なる結晶構造や配向性を有することを意味しており、上記吸光度比の差(A0-A1)が0.05以上であることにより、注出具が包装袋に隙間なく確実に取り付けられ、密封性能に優れたものであることを示す指標となる。
尚、上記吸光度比A1は、0.74~0.85の範囲にあることが好適であり、これは注出具の取付部両端部が十分に加熱されて、注出具が包装袋に確実に取り付けられた状態を示すものである。
本発明における上記吸光度比A0及びA1のFT-IR測定の測定条件は後述する。
【0013】
図1は、本発明の、注出具付き包装袋の一例を示す正面図であり、全体を1で示す注出具付き包装袋は、包装袋2及びスパウト3とから成っている。
包装袋2は、2枚の積層体4a,4bをシーラント層同士が向き合うように重ね合わせてヒートシールされて成るものであり、周縁にサイドシール部5a,5b、ボトムシール部5c及びトップシール部5dと共に、左上にスパウト3が取り付けられた斜めシール部5eを有している。
スパウト3は、取付基部6及びこの取付基部6から上方(包装袋外方)に延びる注出筒部7から成り、取付基部6が、包装袋2の斜めシール部5eの積層体4a、4b間に配置されて包装袋2に溶着固定されている。また注出筒部7には、キャップ8が取り付けられている。
【0014】
図2は、図1に示す注出具付き包装袋の注出具の取付け位置を拡大して示すものであり、この図2に示すように、スパウト3の取付基部6の両端部近傍10a,10bにおける基材層の吸光度比A1が、この部分以外の未シール部における基材層の吸光度比A0よりも0.05以上小さい値となっている。
尚、上記吸光度比A1を測定すべき注出具の取付部両端近傍は、取付部(取付基部6)の各端部から50mm以内、好ましくは25mm以内、更に好ましくは10mm以内、特に好ましくは5mm以内の範囲であることが望ましい。上記範囲は、後述する製造方法により複数回加熱による注出具の取付け具合を端的に表す部位である。この範囲よりも外側の部位を測定しても吸光度比の差を確実に測定することができないおそれがある。
【0015】
[包装袋]
包装袋を構成する積層体は、少なくとも基材層及びシーラント層から成り、これらがプロピレン系重合体を主成分とする樹脂組成物から成っている。
樹脂組成物は、プロピレン系重合体を70質量%以上含有することが必要であるが、その他の成分に制限はない。その他の成分としては、炭素数3~10のα-オレフィンとエチレンとを含有するエチレン・α-オレフィン共重合体エラストマーやポリエチレン系重合体などを例示することができる。
プロピレン系重合体としては、ホモポリプロピレン、プロピレンブロックコポリマー、プロピレンランダムコポリマーの何れも使用することができる。
プロピレンと好適に共重合可能なα-オレフィンとしては、これに限定されないが、エチレン、ブテン-1、4-メチル-1-ペンテン等を例示することができる。
またプロピレン系重合体には、ホモポリプロピレン又はプロピレンランダムコポリマー中に、エチレン・プロピレン共重合体が分散されて成る、インパクトポリプロピレンであってもよい。
これらプロピレン系重合体の中でも、基材層においては、プロピレンブロックコポリマー、ホモポリプロピレンを好適に使用することができる。
【0016】
またシーラント層においては、プロピレンブロックコポリマーを好適に使用することができる。環境配慮の観点からは、基材層やシーラント層にバイオマス由来の成分(例えば、プロピレンやエチレン)を含有することやリサイクル材を活用することが更に好ましい。
本発明においては、基材層、シーラント層に用いるプロピレン系重合体を主成分とする樹脂組成物はその融点が155~175℃の範囲にあることが好適であり、これにより、包装体を125℃以上の高温条件下におかれるハイレトルト殺菌にも対応可能である。
また基材層に用いるプロピレン系重合体から成るフィルムは、機械的強度の観点から一軸又は二軸に延伸された延伸フィルム(OPP)であることが好適であり、ヒートシール層に用いるプロピレン系重合体から成るフィルムは、ヒートシール性の観点から未延伸のフィルム(CPP)であることが好適である。
【0017】
本発明の包装袋に用いる積層体は、上記基材層及びシーラント層に加えて、バリア層、易引裂き性樹脂層等のプロピレン系重合体を基材とする機能性樹脂から成る層や、印刷層を備えることができる。
バリア層としては、ポリビニルアルコール系ポリマーやポリカルボン酸系ポリマー等のガスバリア性樹脂からなる層又はコーティング剤を塗布したバリア性フィルム等を採用することができる。但し、ガスバリア性樹脂からなる層を配する場合、前述の通り、包装袋を構成する積層体がポリプロピレン系重合体を70質量%以上含有することを満たす必要がある。また、ガスバリア性に加えて、内容物の水分のパウチ外部への放出防止のための水分バリア性を兼ね備えたバリア層として、酸化アルミニウム等の金属酸化物蒸着層やケイ素酸化物蒸着層に代表される無機酸素物蒸着層、或いは、ダイヤモンドライクカーボン等の炭化水素系蒸着層に代表される無機蒸着層を形成した無機蒸着フィルム、或いは、金属アルコキシドや金属ハロゲン化合物等の加水分解化合物によるメタロキサン結合を有する化合物からなるコーティング剤を塗布したバリア性フィルム等を採用することができる。
【0018】
上述した無機蒸着層或いはバリア性コーティング層を形成するフィルムとしては、モノマテリアルの観点からプロピレン系重合体から成ることが好適であり、特に一軸又は二軸延伸された上述した基材層に用いるフィルムを好適に使用することができる。
また上記バリア性フィルム等は、基材層とシーラント層の間に設けることが好適であり、前述した基材層のシーラント層側の面に、上記コーティング層又は蒸着層を直接形成することもできる。
更に印刷層は、従来公知の印刷層を有する積層体と同様にして形成することができ、これに限定されないが基材層又はシーラント層に直接印刷を施してもよいし、上記バリア層の無機蒸着層等が施されていない面に施すこともできる。
【0019】
本発明の包装袋に用いる積層体において、基材層は6~200μm、更に好ましくは10~90μmの範囲の厚みを有することが好適であり、シーラント層は30~150μm、更に好ましくは50~100μmの範囲の厚みを有することが好適である。また上述した無機蒸着層或いはバリア性コーティング層を形成するフィルムを中間層として形成する場合には、フィルムの厚みは6~50μm、更に好ましくは10~30μmの範囲にあることが好適である。
本発明の包装袋に用いる積層体は、従来公知の方法により製造することができ、基材層及びシーラント層の二層構成の場合には、共押出により製造することもできるし、バリア性中間層を有する場合などには、ドライラミネート法、サンドイッチラミネート法、押出ラミネート法等で積層することができる。環境配慮の観点からは、無溶剤接着剤を使用する無溶剤型ラミネート法が更に好ましい。
ドライラミネート法等による積層に用いられる接着剤としては、従来よりプロピレン系重合体から成るフィルムの積層に用いられていた接着剤を制限なく使用することができ、これに限定されないが、ウレタン系接着剤やエポキシ系接着剤を好適に使用することができる。
【0020】
本発明の包装袋は、図1に示す具体例では、一対のフィルム4a,4bが用いられ、周縁がシールされる構成を示したが、この形態には限定されない。例えば、1枚のフィルムを折り曲げて、2辺または3辺がシールされて成る包装袋でもよいし、一対のフィルムの間に底部を形成する折り畳んだフィルムを挟み込んでシールして成る包装袋等、ピロータイプ、ガセットタイプ、スタンディングタイプ等、従来公知の全ての形態の包装袋に適用可能である。
【0021】
本発明の注出具付き包装袋に用いられる注出具は、プロピレン系重合体から成る限り、従来公知の種々の形態の注出具を使用することができ、これに限定されないが、ホモポリプロピレン又はプロピレンブロックコポリマーを用い射出成形により成形することができる。
好適には、前述した通り、シーラント層及び基材層と同様に、融点が155~175℃の範囲にあるプロピレン系重合体により成形されていることが望ましい。
図2に示した形態の注出具(スパウト)においては、注出筒部の外面には、キャップの着脱のための螺子部及び機械的強度を向上させるためのフランジ部が形成されていたが、このような態様に限定されない。例えば、注出筒部の先端を折り取り、開口を形成するようなものや、注出用筒から取付基部までストレートのパイプ状のものや、或いは注出用開口の先端部にゴム栓が嵌め込まれた輸液容器用のスパウト等であってもよい。
【0022】
(注出具付き包装袋の製造方法)
本発明の注出具付き包装袋の製造方法においては、プロピレン系重合体から成るシーラント層及び基材層を少なくとも備えた積層体を、シーラント層同士が向き合うように重ね合わせ、積層体間にプロピレン系重合体から成る注出具を配置した後、積層体と注出具の一体化を行う熱溶着工程、を備えており、本発明の製造方法においては、この熱溶着工程を、注出具の取付部及びその両端部近傍におけるシーラント層のみの熱溶着を、積層体のシーラント層を構成するプロピレン系重合体の融点(Tm)よりも20~80℃高い温度範囲で行う注出具溶着工程、及び注出具の取付部を含む積層体の周縁部の熱溶着を、前記積層体のシーラント層を構成するプロピレン系重合体の融点(Tm)より10℃低い温度~10℃高い温度の範囲で行う周縁溶着工程、の少なくとも2段階で行うことが重要な特徴である。
【0023】
図3は、本発明の製造方法における注出具の取付けを行う熱溶着工程を説明するための図である。
上記熱溶着工程に付される前に、積層体4a,4bをシーラント層同士が向き合うように重ね合せ、サイドシール部5a,5b、ボトムシール部5cがシールされ、斜めシール部5eが未シールの状態の包装袋2を予め形成する。次いで、斜めシール部5eが、後述する図3(A)~(D)の工程によってシールされることにより、注出具付き包装袋1となる。尚、トップシール部5dは、注出具付き包装袋1内に内容物が充填された後にシールされる。
図3(A)は、注出具の仮止め工程を示す図であり、包装袋2の未シール部である斜めシール部5eの積層体4a,4bの間に、注出具の取付基部6を設置した状態で、図3(A)に示すように、取付基部6の両端部近傍10a,10b(図3(A)のハッチング部分)を上面及び裏面の両面から、注出具の取付基部6を上面から、シーラント層を構成するプロピレン系重合体の融点(Tm)-30~+40℃の温度(加熱装置の設定温度)で0.3~3.0秒加熱し、注出具3を仮止めしておくことが望ましい。
【0024】
図3(B)は前記注出具溶着工程を示す図であり、図3(B)に示すように、注出具の取付基部6の両端部近傍10a,10b(図3(B)のハッチング部分)及び注出具の取付基部6のみを両面から、シーラント層を構成するプロピレン系重合体の融点+10~+80℃、特に+20~+70℃の温度(加熱装置の設定温度)で、0.1~0.9MPaの圧力で押圧しながら加熱し、注出具の取付基部を融着させて包装袋に固定する。加熱時間は加熱温度や圧力によって異なり一概に規定できないが、0.3~3.0秒の範囲であることが好適である。
次いで図3(C)は前記周縁溶着工程を示す図であり、図3(C)に示すように、注出具の取付基部6を含む斜めシール部5e全体(図3Cのハッチング部分)を、シーラント層を構成するプロピレン系重合体の融点(Tm)より10℃低い温度~10℃高い温度の範囲で、0.1~0.9MPaの圧力で押圧しながら、0.3~3.0秒間加熱する。
その後、図3(D)に示すように、注出具取付部分である斜めシール部5e(図3(D)のハッチング部分)を室温の金型で固定した状態にて冷却し、フィルムの反り等の発生を抑制し、注出具付き包装袋が製造される。
【0025】
上記工程を経て得られた注出具付き包装袋は、注出具の取付基部6の両側端部10a,10bが、加熱温度の異なる2度の溶着工程を経ていることから、注出具の両端部において隙間を生じることなく確実に取り付けることができる。またこのような確実な融着を、シーラント層を構成するプロピレン系重合体の融点を基準に、高温での注出具の熱溶着工程と、低温での周縁部の熱溶着工程に分けることによって、積層体、特に基材層の過加熱によるダメージを低減することが可能となり、包装袋の損傷を有効に抑制することが可能となる。その結果、注出具の取付基部の両端部においては、2度の熱履歴を受けていることから、結晶化度や配向性が低下した状態になり、前述したようにFT-IR測定による吸光度比A1の値が、0.74~0.85の範囲にあり、未シール部(積層体自体)のFT-IR測定による吸光度比A0よりも0.05以上小さい値となっている。
【0026】
本発明の製造方法においては、注出具の仮止め工程を経てから注出具の熱溶着工程を行っていたが、注出具が積層体間で動くことなく挟まれていれば、仮止め工程は必ずしも必須ではない。更に、注出具の熱溶着工程の後に、周縁部の熱溶着工程を行っていたが、先に周縁部の熱溶着工程を行ってももちろんよい。
尚、本発明においては、注出具及びそれが取り付けられる包装袋の一部(スパウト及びその周辺部)が前述した特徴を有する限り、包装袋の形態,スパウトの装着位置,充填方法については、本明細書で具体的に記載した内容に制限されない。
【実施例0027】
包装袋に使用する積層体(ラミネート材)として、20μm延伸PPフィルム/20μm延伸PPフィルム/70μm未延伸PPフィルムを用い、注出具としてPP製スパウトを用いた。これらの融点及び融解終了温度(DSCの融解ピーク終了温度)を下記表1に示す。
上記ラミネート材及びスパウトを用い、スパウト装着試験を、連続スパウト装着試験機にて実施した。
当該試験機は、包装袋搬送装置とスパウト搬送装置、1次シール部(注出具溶着工程)、2次シール部(周縁溶着工程)、冷却部から成る。包装袋搬送装置は、包装袋を固定し、各シール部及び冷却部を間欠移動する装置である。スパウト搬送装置は、スパウトの取付部を開口している包装袋へ挿入する装置である。1次シール部は、包装袋を開口し、スパウト搬送装置で挿入されたスパウト取付部と包装袋を仮止めし、ヒートシールする部位である。2次シール部はスパウト取付部を挟み込んだ辺をヒートシールする部位である。冷却部はスパウトを含むフィルム辺を室温のヒートシールバーで冷却シールする部位である。
【0028】
ヒートシール条件を下記表2に示す。但し、これらの部位に用いたヒートシールバーは、金型保護の観点からPTFEテープで被覆したものを用いた。
【0029】
FT-IR測定条件
スパウト付き包装袋のパウチ中央部と、スパウト取付部を挟み込んだ辺(ヒートシール部)を切り出してスパウトの取付基部を切り離すことで、2つのフィルムサンプル片を得た。取付基部端部から3mm程度離れた位置(1次シールと2次シールの熱履歴ありのフィルム部分:取付基部近傍シール部)とパウチ中央の未シール部(未シール部)の2箇所ついて、フィルムの最表面である基材層を、フーリエ変換赤外分光装置(FT-IR:日本分光製FT-IR 6700)による全反射測定法(ATR)によって測定して赤外吸収スペクトルを得た。測定の条件は以下のとおりである。
IRE:ダイヤモンド
反射回数:1回
入射角:45°
分解能:4cm-1
積算回数:32回
測定波数範囲:1600cm-1~700cm-1
得られた赤外吸収スペクトルに基づいて、1000cm-1~995cm-1の範囲内の最大ピーク高さ(極大吸光度)(α)と975cm-1~970cm-1の範囲内の最大ピーク高さ(極大吸光度)(β)についての比(α/β)を求め、吸光度比A0(取付基部近傍以外の未シール部における基材層の吸光度比),A1(取付基部近傍シール部における基材層の吸光度比)とした。
結果を下記表3に示す。
【0030】
【表1】
【0031】
【表2】
【0032】
【表3】
【符号の説明】
【0033】
1 注出具付き包装袋、2 包装袋、3 注出具、4 積層体、5 シール部、6 取付基部、7 注出筒部、10 取付基部両側端部。
図1
図2
図3