(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170797
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】静電荷像現像用トナー、外添剤の製造方法、静電荷像現像用トナーの製造方法、及び画像形成方法
(51)【国際特許分類】
G03G 9/097 20060101AFI20241204BHJP
G03G 9/093 20060101ALI20241204BHJP
G03G 9/087 20060101ALI20241204BHJP
G03G 9/08 20060101ALI20241204BHJP
【FI】
G03G9/097 374
G03G9/097 375
G03G9/097 365
G03G9/093
G03G9/087 325
G03G9/08 381
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087525
(22)【出願日】2023-05-29
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮下 真帆
(72)【発明者】
【氏名】宮島 謙史
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 奈津紀
(72)【発明者】
【氏名】門馬 実乃里
【テーマコード(参考)】
2H500
【Fターム(参考)】
2H500AA01
2H500AA08
2H500AA09
2H500BA27
2H500CA03
2H500CA16
2H500CB05
2H500CB10
2H500CB12
2H500EA42C
2H500EA42D
2H500EA52D
2H500EA58D
2H500EA60A
(57)【要約】
【課題】本発明が解決しようとする課題は、定着ローラーとの十分な分離性を持ちつつ、ニスの塗布性及びニスとの密着性が良好な画像を形成できる静電荷像現像用トナー、当該静電荷像現像用トナーに適した外添剤の製造方法、当該静電荷像現像用トナーの製造方法、及び当該静電荷像現像用トナーを用いた画像形成方法を提供することである。
【解決手段】本発明の静電荷像現像用トナーは、外添剤が表面に付着しているトナー母体粒子を含む静電荷像現像用トナーであって、前記トナー母体粒子が、結着樹脂と離型剤とを含有し、前記外添剤の一部又は全てが、複数の一次粒子が凝集した二次粒子として存在し、前記二次粒子の一部又は全ての長軸径が、160nm以上であり、長軸径が160nm以上である前記二次粒子の平均フラクタル次元が、1.1~1.6の範囲内であることを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外添剤が表面に付着しているトナー母体粒子を含む静電荷像現像用トナーであって、
前記トナー母体粒子が、結着樹脂と離型剤とを含有し、
前記外添剤の一部又は全てが、複数の一次粒子が凝集した二次粒子として存在し、
前記二次粒子の一部又は全ての長軸径が、160nm以上であり、
長軸径が160nm以上である前記二次粒子の平均フラクタル次元が、1.1~1.6の範囲内である
ことを特徴とする静電荷像現像用トナー。
【請求項2】
長軸径が160nm以上である前記二次粒子の個数が、全ての前記二次粒子の35%以上である
ことを特徴とする請求項1に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項3】
前記外添剤の含有量が、前記トナー母体粒子の含有量に対して2.0質量%以上である
ことを特徴とする請求項1に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項4】
長軸径が100nm以上である前記一次粒子の個数が、全ての前記一次粒子の2.0%以上である
ことを特徴とする請求項1に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項5】
長軸径が160nm以上である前記二次粒子の平均長軸径が、350nm以上である
ことを特徴とする請求項1に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項6】
前記トナー母体粒子が、コア粒子と、前記コア粒子を被覆するシェルと、を有し、
前記コア粒子が、前記離型剤を含有する
ことを特徴とする請求項1に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項7】
前記離型剤の含有量が、前記トナー母体粒子の全量に対して3~10質量%の範囲内である
ことを特徴とする請求項1に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項8】
前記結着樹脂として、スチレン-アクリル樹脂を含有する
ことを特徴とする請求項1に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項9】
前記結着樹脂のうち少なくとも一種が、シリコーン部位を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項10】
静電荷像現像用トナーに用いる外添剤の製造方法であって、
外添剤の一次粒子に金属塩化合物を添加して、外添剤の二次粒子を形成する工程を有し、
形成した前記二次粒子の一部又は全ての長軸径が、160nm以上であり、
長軸径が160nm以上である前記二次粒子の平均フラクタル次元が、1.1~1.6の範囲内である
ことを特徴とする外添剤の製造方法。
【請求項11】
請求項1から請求項9までのいずれか一項に記載の静電荷像現像用トナーを製造する静電荷像現像用トナーの製造方法であって、
前記外添剤の一次粒子に対して金属塩化合物を添加することによって、前記二次粒子を形成する工程を有する
ことを特徴とする静電荷像現像用トナーの製造方法。
【請求項12】
請求項1から請求項9までのいずれか一項に記載の静電荷像現像用トナーを用いる
ことを特徴とする画像形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電荷像現像用トナー、外添剤の製造方法、静電荷像現像用トナーの製造方法、及び画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、複写機やプリンターなどの画像形成装置の発達に伴い、プロダクションプリンティング市場に対応した電子写真方式の画像形成装置が望まれている。プロダクションプリンティング市場では、高品質かつ多様な用途に対応可能な画像が要求される。その一つ例として、画像品位や耐久性を向上させる目的で、電子写真方式画像の一部又は全面にニスコートを施すことがある。
【0003】
しかしながら、電子写真方式の画像形成装置によって形成された画像に対してニスコートを施した場合、いくつかの問題がある。例えば、画像がニスを弾いてしまい、適切な塗膜が得られないという問題や、ニスは弾かないが、画像とニスとの密着性が不足し、ニスが容易に剥離するという問題である。
【0004】
このような問題は、熱定着時に画像表面に析出した離型剤が主要因であることが知られている。離型剤は電子写真方式の画像形成装置において、耐オフセット性や定着ローラーとの分離性を改良するために広く使われている。しかし、離型剤は、その性質上、ニスとの相互作用は低く、画像がニスを弾いてしまう要因となっている。
【0005】
このような問題に対し、特許文献1では、熱定着時に付与する熱エネルギーを減少させることで、離型剤が熱によって溶融してトナー画像の表面に析出することを抑制している。これによって、適切なニスコートを可能にしている。しかし、この方法では画像表面の離型剤の析出が少なくなることから、定着ローラーとの分離性に問題があり、画像表面に荒れが生じ、画像に十分な光沢性が得られない。
【0006】
特許文献2や3では、離型剤に極性基を導入するといった試みがされている。しかし、この方法では、結着樹脂と離型剤との相性によっては十分に離型剤が染み出さないため、十分な分離性が得られにくい。また、この方法では、ニスの塗布性及びトナー画像とニスとの密着性も十分ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2021-036285号公報
【特許文献2】特開2012-078485号公報
【特許文献3】特開2014-215542号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記状況に鑑みてなされたものである。本発明が解決しようとする課題は、定着ローラーとの十分な分離性を持ちつつ、ニスの塗布性及びニスとの密着性が良好な画像を形成できる静電荷像現像用トナー、当該静電荷像現像用トナーに適した外添剤の製造方法、当該静電荷像現像用トナーの製造方法、及び当該静電荷像現像用トナーを用いた画像形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決すべく、上記課題の原因等について検討した。その結果、本発明者は、長軸径が160nm以上である外添剤二次粒子の平均フラクタル次元を1.1~1.6の範囲内とすることによって、上記課題を解決できることを見いだし、本発明に至った。
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
【0010】
1.外添剤が表面に付着しているトナー母体粒子を含む静電荷像現像用トナーであって、
前記トナー母体粒子が、結着樹脂と離型剤とを含有し、
前記外添剤の一部又は全てが、複数の一次粒子が凝集した二次粒子として存在し、
前記二次粒子の一部又は全ての長軸径が、160nm以上であり、
長軸径が160nm以上である前記二次粒子の平均フラクタル次元が、1.1~1.6の範囲内である
ことを特徴とする静電荷像現像用トナー。
【0011】
2.長軸径が160nm以上である前記二次粒子の個数が、全ての前記二次粒子の35%以上である
ことを特徴とする第1項に記載の静電荷像現像用トナー。
【0012】
3.前記外添剤の含有量が、前記トナー母体粒子の含有量に対して2.0質量%以上である
ことを特徴とする第1項に記載の静電荷像現像用トナー。
【0013】
4.長軸径が100nm以上である前記一次粒子の個数が、全ての前記一次粒子の2.0%以上である
ことを特徴とする第1項に記載の静電荷像現像用トナー。
【0014】
5.長軸径が160nm以上である前記二次粒子の平均長軸径が、350nm以上である
ことを特徴とする第1項に記載の静電荷像現像用トナー。
【0015】
6.前記トナー母体粒子が、コア粒子と、前記コア粒子を被覆するシェルと、を有し、
前記コア粒子が、前記離型剤を含有する
ことを特徴とする第1項に記載の静電荷像現像用トナー。
【0016】
7.前記離型剤の含有量が、前記トナー母体粒子の全量に対して3~10質量%の範囲内である
ことを特徴とする第1項に記載の静電荷像現像用トナー。
【0017】
8.前記結着樹脂として、スチレン-アクリル樹脂を含有する
ことを特徴とする第1項に記載の静電荷像現像用トナー。
【0018】
9.前記結着樹脂のうち少なくとも一種が、シリコーン部位を有する
ことを特徴とする第1項に記載の静電荷像現像用トナー。
【0019】
10.静電荷像現像用トナーに用いる外添剤の製造方法であって、
外添剤の一次粒子に金属塩化合物を添加して、外添剤の二次粒子を形成する工程を有し、
形成した前記二次粒子の一部又は全ての長軸径が、160nm以上であり、
長軸径が160nm以上である前記二次粒子の平均フラクタル次元が、1.1~1.6の範囲内である
ことを特徴とする外添剤の製造方法。
【0020】
11.第1項から第9項までのいずれか一項に記載の静電荷像現像用トナーを製造する静電荷像現像用トナーの製造方法であって、
前記外添剤の一次粒子に対して金属塩化合物を添加することによって、前記二次粒子を形成する工程を有する
ことを特徴とする静電荷像現像用トナーの製造方法。
【0021】
12.第1項から第9項までのいずれか一項に記載の静電荷像現像用トナーを用いる
ことを特徴とする画像形成方法。
【発明の効果】
【0022】
本発明の上記手段により、定着ローラーとの十分な分離性を持ちつつ、ニスの塗布性及びニスとの密着性が良好な画像を形成できる静電荷像現像用トナー、当該静電荷像現像用トナーに適した外添剤の製造方法、当該静電荷像現像用トナーの製造方法、及び当該静電荷像現像用トナーを用いた画像形成方法を提供できる。
【0023】
本発明の効果の発現機構又は作用機構は、明確にはなっていないが、以下のように推察される。
【0024】
外添剤が一次粒子の状態で存在する、又は二次粒子の粒径が小さい場合、定着時に熱によって溶融し画像表面に析出した離型剤によって、トナー画像の表面が覆われる。離型剤とニスは相性が悪いため、トナー画像の表面に存在する離型剤は、ニスを弾いてしまう。さらに、この場合は、外添剤が離型剤や溶融した表面樹脂によって埋もれやすいため、画像が平滑になりやすい。この場合、ニスが濡れたとしても画像表面が凹凸の少ない平滑面であるため、アンカー効果が得られずニス密着性が劣る。
【0025】
外添剤がある程度粒径が大きく、非球状の二次粒子で存在する場合、トナー母体粒子の表面から外添剤の最表層まで十分な高さがある。そのため、定着時に表面に析出した離型剤や溶融した樹脂によって外添剤が埋もれず、定着後の画像は表面に外添剤が析出した凹凸の状態となる。外添剤の凹凸により、ニス塗布時にニスと離型剤が接触しづらくなる。そのため、ニスが濡れやすくなる。さらに、画像表面に析出した外添剤が非球状の二次粒子であることで、比表面積が大きく、アンカー効果が大きくなる。そのため、ニスの密着性が向上する。ニス塗布時においても、画像表面に塗られたニスが外添剤に引っかかり、ニスのはじきが拡がらないことで微小となるため、塗布性が向上する。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の静電荷像現像用トナーは、外添剤が表面に付着しているトナー母体粒子を含む静電荷像現像用トナーであって、前記トナー母体粒子が、結着樹脂と離型剤とを含有し、前記外添剤の一部又は全てが、複数の一次粒子が凝集した二次粒子として存在し、前記二次粒子の一部又は全ての長軸径が、160nm以上であり、長軸径が160nm以上である前記二次粒子の平均フラクタル次元が、1.1~1.6の範囲内であることを特徴とする。この特徴は、下記実施形態に共通する又は対応する技術的特徴である。
【0027】
本発明の実施形態としては、長軸径が160nm以上である前記二次粒子の個数が、全ての前記二次粒子の35%以上であることが好ましい。これによって、本発明の効果がより得られやすくなる。
【0028】
本発明の実施形態としては、前記外添剤の含有量が、前記トナー母体粒子の含有量に対して2.0質量%以上であることが好ましい。これによって、外添剤のトナー母体粒子への外添時においても、外添剤同士が凝集して二次粒子が形成されやすくなる。
【0029】
本発明の実施形態としては、長軸径が100nm以上である前記一次粒子の個数が、全ての前記一次粒子の2.0%以上であることが好ましい。これによって、ニス塗布性及びニス密着性がともにより良好となる。
【0030】
本発明の実施形態としては、長軸径が160nm以上である前記二次粒子の平均長軸径が、350nm以上であることが好ましい。これによって、定着時に外添剤が樹脂又は離型剤によって埋没しにくく表面に析出しやすくなる。これにより、ニス塗布性及びニス密着性がともにより良好となる。
【0031】
本発明の実施形態としては、前記トナー母体粒子が、コア粒子と、前記コア粒子を被覆するシェルと、を有し、前記コア粒子が、前記離型剤を含有することが好ましい。これによって、離型剤の染み出し量を制御しやすくなり、画像分離性に最適な離型剤の量を制御しやすくなる。
【0032】
本発明の実施形態としては、前記離型剤の含有量が、前記トナー母体粒子の全量に対して3~10質量%の範囲内であることが好ましい。当該含有量が3質量%以上であることで、トナー画像と定着ローラーとの分離性を得られやすくなる。当該含有量が10質量%以下であることで、定着時に外添剤が離型剤によって覆われにくくなる。
【0033】
本発明の実施形態としては、前記結着樹脂として、スチレン-アクリル樹脂を含有することが好ましい。スチレン-アクリル樹脂は、離型剤との非相溶性により、定着時に画像表面に析出しやすい。そのため、結着樹脂としてスチレン-アクリル樹脂を用いることによって、画像の分離性が良好となる。
【0034】
本発明の実施形態としては、前記結着樹脂のうち少なくとも一種が、シリコーン部位を有することが好ましい。これによって、離型剤がなくても定着ローラーとの離型効果に優れるため、離型剤の含有量を減らすことができる。これにより、シリコーン部位を有する結着樹脂を含有するトナーは、優れたニス適性を有し、かつ定着ローラーとの十分な分離性も有する。
【0035】
本発明の外添剤の製造方法は、静電荷像現像用トナーに用いる外添剤の製造方法であって、外添剤の一次粒子に金属塩化合物を添加して、外添剤の二次粒子を形成する工程を有し、形成した前記二次粒子の一部又は全ての長軸径が、160nm以上であり、長軸径が160nm以上である前記二次粒子の平均フラクタル次元が、1.1~1.6の範囲内であることを特徴とする。
【0036】
本発明の静電荷像現像用トナーの製造方法は、第1項から第9項までのいずれか一項に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法であって、前記外添剤の一次粒子に対して金属塩化合物を添加することによって、前記二次粒子を形成する工程を有することを特徴とする。
【0037】
本発明の画像形成方法は、第1項から第9項までのいずれか一項に記載の静電荷像現像用トナーを用いることを特徴とする。
【0038】
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。本願において、「~」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
【0039】
[静電荷像現像用トナーの概要]
本発明の静電荷像現像用トナーは、外添剤が表面に付着しているトナー母体粒子を含む静電荷像現像用トナーであって、前記トナー母体粒子が、結着樹脂と離型剤とを含有し、前記外添剤の一部又は全てが、複数の一次粒子が凝集した二次粒子として存在し、前記二次粒子の一部又は全ての長軸径が、160nm以上であり、長軸径が160nm以上である前記二次粒子の平均フラクタル次元が、1.1~1.6の範囲内であることを特徴とする。
【0040】
本発明において、「静電荷像現像用トナー」とは、トナー粒子の集合体のことをいう。以下、「静電荷像現像用トナー」を単に「トナー」ともいう。
【0041】
[外添剤]
本発明に係る外添剤は、その一部又は全てが、複数の一次粒子が凝集した二次粒子として存在することを特徴とする。また、本発明に係る外添剤は、一部又は全ての二次粒子の長軸径が160nm以上であることを特徴とする。
【0042】
「二次粒子」とは、複数の一次粒子の凝集体のことをいう。二次粒子には、複数の一次粒子が会合、融着、合着した形態の粒子も含まれる。二次粒子に対して、他の粒子と凝集していない粒子を「一次粒子」という。
【0043】
二次粒子の長軸径は、次の手順で測定する。外添剤を有するトナー粒子に対して、90秒、20mAの条件で、Ptをスパッタリングする。走査型電子顕微鏡を用いて、倍率5万倍、加速電圧5.0KV、照射電流7A、WD8mmの条件で、スパッタリングしたトナー粒子の画像を撮影する。走査型電子顕微鏡としては例えば「JSM-7401F」(日本電子社製)を使用できる。撮影した画像を用いて、画像処理解析ソフト「ImageJ」で解析し、100~200個の二次粒子の長軸径を測定する。
【0044】
本発明に係る外添剤においては、長軸径が160nm以上である二次粒子の個数が、全ての二次粒子の35%以上であることが好ましい。これによって、本発明の効果がより得られやすくなる。
【0045】
本発明に係る外添剤においては、二次粒子の含有割合が、外添剤の全量の25質量%以上であることが好ましい。これによって、本発明の効果がより得られやすくなる。
【0046】
本発明に係る外添剤においては、長軸径が160nm以上である二次粒子の平均長軸径が、350nm以上であることが好ましい。また、当該平均長軸径は、800nm以下であることが好ましく、600nm以下であることがより好ましい。当該平均長軸径が350nm以上であることで、定着時に外添剤が樹脂又は離型剤によって埋没しにくく表面に析出しやすくなる。これにより、ニス塗布性及びニス密着性がともにより良好となる。当該平均長軸径が800nm以下であることで、画像形成以前に外添剤がトナー母体粒子から離脱しにくくなる。当該平均長軸径が600nm以下であることで、画像形成以前に外添剤がトナー母体粒子からより離脱しにくくなる。
【0047】
長軸径が160nm以上である二次粒子の平均長軸径は、長軸径が160nm以上である二次粒子100~200個の平均の長軸径である。
【0048】
本発明に係る外添剤は、長軸径が160nm以上である二次粒子の平均フラクタル次元が1.1~1.6の範囲内であることを特徴とする。また、当該平均フラクタル次元は、1.3~1.4の範囲内であることが好ましい。
【0049】
フラクタル次元は、一般的に自己相似性を表すパラメーターであり、粒子の凝集性を定量する指標としても用いられる。本発明では、外添剤の凝集状態である二次粒子の形状を規定するために、フラクタル次元を用いる。
【0050】
後述するフラクタル次元の測定方法は、2次元の画像における形状分析である。そのため、フラクタル次元は理論上1~2の範囲となる。フラクタル次元が1に近いほど二次粒子は直線状であり、フラクタル次元が2に近いほど二次粒子は真円状である。すなわち、フラクタル次元が2に近いほど二次粒子は球状に近い状態でトナー表面に付着しているとみなすことができる。
【0051】
二次粒子が球状に近いほど、外添剤の比表面積は小さくなる。そのため、二次粒子が球状に近いほど、画像にした場合に外添剤が画像表面を被覆する面積も小さくなる。また、二次粒子が球状に近いほど、二次粒子の表面凹凸によるアンカー効果も小さくなる。逆に、フラクタル次元が1に近いほど二次粒子は非球状な状態でトナー表面に付着しているとみなすことができる。二次粒子が非球状であるほど、外添剤の比表面積が大きくなる。そのため、二次粒子が非球状であるほど、画像にした場合に外添剤が画像表面を被覆する面積も大きくなる。また、二次粒子が非球状であるほど、二次粒子の表面凹凸によるアンカー効果も大きくなる。よって、長軸径が160nm以上である二次粒子の平均フラクタル次元は、1.6以下である必要があり、1.4以下であることが好ましい。
【0052】
一方、フラクタル次元が小さすぎると、凝集体として構造が不安定であり、現像機内でのストレスや定着時の圧力により二次粒子が破砕しやすくなる。よって、長軸径が160nm以上である二次粒子の平均フラクタル次元は、1.1以上である必要があり、1.3以上であることが好ましい。
【0053】
長軸径が160nm以上である二次粒子の平均フラクタル次元の測定方法は、次のとおりである。外添剤を有するトナー粒子に対して、90秒、20mAの条件で、Ptをスパッタリングする。走査型電子顕微鏡を用いて、倍率5万倍、加速電圧5.0KV、照射電流7A、WD8mmの条件で、スパッタリングしたトナー粒子の画像を撮影する。走査型電子顕微鏡としては例えば「JSM-7401F」(日本電子社製)を使用できる。撮影した画像を用いて、画像処理解析ソフト「ImageJ」で解析し、二次粒子ごとの長軸径d及び投影面積Sを測定する。測定した二次粒子のうち、長軸径が160nm以上のもの100~200個について、長軸径の常用対数(log10d)及び投影面積の常用対数(log10S)を、それぞれ横軸及び縦軸としてプロットする。このプロットから最小二乗法により回帰直線を求める。この回帰直線の傾きが、平均フラクタル次元Dである。長軸径d、投影面積S及び平均フラクタル次元Dの関係は、下記式1や、下記式1を展開した下記式2で表される。
【0054】
S=XdD・・・(式1)
log10S=Dlog10d+log10X・・・(式2)
S:二次粒子の投影面積
d:二次粒子の長軸径
D:平均フラクタル次元
X:定数
【0055】
本発明に係る外添剤においては、長軸径が100nm以上である一次粒子の個数が、全ての一次粒子の1.6%以上であることが好ましい。この一次粒子には、二次粒子を形成していない一次粒子と、二次粒子を形成している一次粒子と、の両方が含まれる。長軸径が100nm以上である一次粒子及び当該一次粒子を含む二次粒子は、樹脂又は離型剤によって埋没しにくく表面に析出しやすい。そのため、長軸径が100nm以上である一次粒子の個数が、全ての一次粒子の1.6%以上であると、ニス塗布性及びニス密着性がともにより良好となる。また、長軸径が100nm以上である一次粒子の個数が、全ての一次粒子の2.0%以上であることがより好ましい。これによって、ニス塗布性及びニス密着性がともにさらに良好となる。
【0056】
一次粒子の長軸径の測定方法は次のとおりである。外添剤を有するトナー粒子の画像を、走査型電子顕微鏡を用いて、倍率5万倍の条件で撮影する。走査型電子顕微鏡としては例えば「JSM-7401F」(日本電子社製)を使用できる。撮影した画像を用いて、画像処理解析ソフトで解析し、700個の一次粒子(二次粒子を形成している一次粒子も含む。)の長軸径を測定する。
【0057】
外添剤の成分は特に限定されず、目的に応じて適宜選択できる。外添剤は無機微粒子であっても有機微粒子であってもよい。無機微粒子である外添剤の成分の例としては、シリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ベンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素等が挙げられる。外添剤の成分は、一種でも二種以上でもよい。
【0058】
外添剤の含有量は、トナー母体粒子の含有量に対して0.5質量%以上であることが好ましく、2.0質量%以上であることが好ましい。これによって、外添剤のトナー母体粒子への外添時においても、外添剤同士が凝集して二次粒子が形成されやすくなる。
【0059】
[外添剤の製造方法]
本発明に係る外添剤は、外添剤の一次粒子に金属塩化合物を添加して、外添剤の二次粒子を形成する工程を有する方法によって好適に製造できる。
【0060】
外添剤粒子の分散液に金属塩化合物を添加することで、外添剤粒子の会合体が形成される。例えば、乾式又は湿式で調製された外添剤粒子を疎水化処理する工程又はその前後において、金属塩化合物を、外添剤粒子の水分散液中に添加する。金属塩化合物を適度に分散させ、熱をかけながら反応させることで、外添剤粒子の会合体を形成させる。
【0061】
外添剤粒子が酸化亜鉛や酸化チタンの場合、次の方法で外添剤粒子の会合体を形成できる。外添剤粒子を分散媒中に分散剤とともに分散させた後、撹拌しながら金属塩化合物を添加する。これにより、外添剤粒子の会合体が形成される。
【0062】
上記の方法は一例であり、外添剤の製造方法は特に限定されない。外添剤の製造方法は、特にゾルゲル法により製造する方法が好ましい。この方法では、まず、一次粒子と金属塩化合物を水中で混合させる。これを、30~90℃に加熱し、二次粒子を沈降させる。次いで乾燥することにより製造する。この方法により、外添剤粒子間に金属イオンが配位したイオン架橋を形成することで、粒子同士が会合した状態となる。これにより、その後のトナー母体粒子への外添工程においても、イオン架橋によって凝集構造が完全には解砕されない。そのため、会合状態を保った状態で外添剤がトナー母体粒子表面に付着できる。
【0063】
例えば以下の点を調整することで、二次粒子の大きさやフラクタル次元を調整できる。
・金属塩化合物に含まれる金属イオンの価数
・金属塩化合物に含まれる金属イオンのイオン半径
・金属塩化合物の添加量(濃度)
・金属塩化合物添加時の外添剤粒子の分散液の温度
・金属塩化合物添加時の外添剤粒子の分散液の撹拌速度
【0064】
二次粒子の大きさやフラクタル次元の調整の例は、以下のとおりである。
・金属イオンの価数が大きいほうが、粒子の凝集力が強く、二次粒子は球状に近くなり(フラクタル次元が大きくなり)、粒径も大きくなる。
・金属イオンのイオン半径が大きいほうが、粒子の凝集力が強く、二次粒子は球状に近くなり(フラクタル次元が大きくなり)、粒径も大きくなる。
・金属イオンの添加濃度が大きいほど1粒子あたりに配位する金属イオン数が増える。そのため、二次粒子は球状に近くなり(フラクタル次元が大きくなり)、粒径も大きくなる。1粒子あたりに配位する金属イオンが0~1になるほど、水溶液濃度を薄く、極微量に添加することで、会合体は少ない粒子個数(5個以下)で形成された鎖状又はテトラポット状の二次粒子となる。これにより、フラクタル次元は1.1~1.3程度になりやすい。
【0065】
用いる金属塩化合物は、多価金属イオンを含むことが好ましい。多価金属イオンとしては、例えばアルカリ金属及びアルカリ土類金属のイオンが挙げられる。アルカリ金属としては、リチウム、カリウム、ナトリウム等が挙げられる。アルカリ土類金属としては、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等が挙げられる。アルカリ金属及びアルカリ土類金属の対イオン(塩を構成する陰イオン)としては、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、炭酸イオン、硫酸イオン等が挙げられる。
【0066】
一次粒子に対しで、疎水化等の目的で、表面処理が施してもよい。これに用いる表面処理剤は、特に限定されず、目的に応じて適宜選択できる。
【0067】
表面処理剤の例としては、以下のものが挙げられる。
・ヘキサメチルジシラザン等のシランカップリング剤
・チタネート系カップリング剤
・シリコーンオイル
・シリコーンワニス
・フッ素系シランカップリング剤
・フッ素系シリコーンオイル
・アミノ基を有するカップリング剤
・第4級アンモニウム塩基を有するカップリング剤
・変性シリコーンオイル
・エポキシ系処理剤
【0068】
これらの表面処理剤は、エタノールなどの溶剤に溶解させた状態で使用することが好ましい。これらの表面処理剤は、一種単独で使用してもよく、二種以上を併用してもよい。
【0069】
一次粒子の表面処理の方法として、例えば以下のような乾式法を挙げることができる。表面処理剤を溶剤で希釈する。一次粒子をブレンダーなどで強制的に撹拌しつつ、表面処理剤の希釈液を滴下したりスプレーしたりして加える。これを充分に混合する。その際、ニーダーコーター、スプレードライヤー、カーマルプロセッサー、流動床等の装置を使用することができる。また、このとき、金属塩化合物を表面処理剤の希釈液に微量添加することで、二次粒子を得ることができる。使用し得る溶剤の例としては、テトラヒドロフラン(THF)、トルエン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、アセトンエタノール、塩化水素飽和エタノール等が挙げられる。
【0070】
次に、得られた混合物をバットなどに移してオーブンなどで加熱して乾燥させる。その後、再びミキサーやジェットミルなどによって充分に解砕する。得られた解砕物は、必要に応じて分級することが好ましい。上記の方法において、表面処理剤を複数種類用いる場合は、各々の表面処理剤を同時に用いて処理してもよく、また、別々に処理してもよい。
【0071】
このような乾式法の他に、一次粒子を表面処理剤の有機溶剤溶液に浸漬させた後、乾燥させる方法を用いて表面処理してもよい。
【0072】
以上のような表面処理において、加熱時の温度は100℃以上とすることが好ましい。これによって、外添剤粒子と表面処理剤との縮合反応が完結しやすくなる。
【0073】
[トナー母体粒子]
本発明に係るトナー母体粒子は、少なくとも結着樹脂と離型剤とを含有する。
【0074】
(離型剤)
離型剤としては、公知の種々のワックスを用いることができる。ワックスの例としては、以下のものが挙げられる。
・ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスなどのポリオレフィンワックス
・マイクロクリスタリンワックスなどの分枝鎖状炭化水素ワックス
・パラフィンワックス、サゾールワックスなどの長鎖炭化水素系ワックス
・ジステアリルケトンなどのジアルキルケトン系ワックス
・カルナバワックス、モンタンワックス、ベヘン酸ベヘネート、トリメチロールプロパントリベヘネート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、ペンタエリスリトールジアセテートジベヘネート、グリセリントリベヘネート、1,18-オクタデカンジオールジステアレート、トリメリット酸トリステアリル、ジステアリルマレエートなどのエステル系ワックス
・エチレンジアミンベヘニルアミド、トリメリット酸トリステアリルアミドなどのアミド系ワックス
【0075】
これらの離型剤は、一種単独で用いてもよく、二種以上併用してもよい。
【0076】
トナー母体粒子がコア・シェル型である場合、離型剤はコア粒子に含有されることが好ましい。これによって、離型剤の染み出し量を制御しやすくなり、画像分離性に最適な離型剤の量を制御しやすくなる。
【0077】
離型剤の含有量は、トナー母体粒子の全量に対して3~20質量%の範囲内が好ましく、3~10質量%の範囲内がより好ましい。当該含有量が3質量%以上であることで、トナー画像と定着ローラーとの分離性を得られやすくなる。当該含有量が20質量%以下であることで、定着時に外添剤が離型剤によって覆われにくくなる。当該含有量が10質量%以下であることで、定着時に外添剤が離型剤によってより覆われにくくなる。
【0078】
(結着樹脂)
結着樹脂は特に限定されない。結着樹脂としては、公知の樹脂を用いることができる。結着樹脂は一種単独で用いても良く、二種以上併用しても良い。結着樹脂の例としては、ポリエステル、スチレン-アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。結着樹脂は、スチレン-アクリル樹脂が特に好ましい。スチレン-アクリル樹脂は、離型剤との非相溶性により、定着時に画像表面に析出しやすい。そのため、結着樹脂としてスチレン-アクリル樹脂を用いることによって、画像の分離性が良好となる。
【0079】
トナー母体粒子が含有する結着樹脂のうち少なくとも一種が、シリコーン部位を有することが望ましい。シリコーン部位を含む結着樹脂は、ポリエステル、スチレン-アクリル樹脂、及びその他の樹脂のいずれであってもよく、目的に応じて適宜選択できる。結着樹脂がシリコーン部位を有することによって、離型剤がなくても定着ローラーとの離型効果に優れるため、離型剤の含有量を減らすことができる。これにより、シリコーン部位を有する結着樹脂を含有するトナーは、優れたニス適性を有し、かつ定着ローラーとの十分な分離性も有する。
【0080】
(スチレン-アクリル樹脂)
スチレン-アクリル樹脂は、少なくとも、スチレン単量体と(メタ)アクリル酸エステル単量体とを付加重合させて形成される。
【0081】
スチレン単量体は、スチレンの他に、スチレン構造中に公知の側鎖や官能基を有するスチレン誘導体であってもよい。
【0082】
スチレン単量体の例には、スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、α-メチルスチレン、p-フェニルスチレン、p-エチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、p-n-ヘキシルスチレン、p-n-オクチルスチレン、p-n-ノニルスチレン、p-n-デシルスチレン、p-n-ドデシルスチレン等が含まれる。
【0083】
(メタ)アクリル酸エステル単量体は、CH(Ra)=CHCOORbで表されるアクリル酸エステルやメタクリル酸エステルであってよい。(メタ)アクリル酸エステル単量体は、これらのエステルの構造中に公知の側鎖や官能基を有する誘導体であってもよい。Raは、水素原子又はメチル基を表す。Rbは、炭素数1~24のアルキル基を表す。
【0084】
本明細書中、「(メタ)アクリル酸エステル単量体」とは、アクリル酸エステル単量体とメタクリル酸エステル単量体との総称である。例えば、「(メタ)アクリル酸メチル」は、アクリル酸メチル及びメタクリル酸メチルの一方又は両方を意味する。
【0085】
(メタ)アクリル酸エステル単量体の例には、アクリル酸エステル単量体及びメタクリル酸エステル単量体が含まれる。アクリル酸エステル単量体の例には、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、t-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n-オクチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、ステアリルアクリレート、ラウリルアクリレート及びフェニルアクリレート等が含まれる。メタクリル酸エステル単量体の例には、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、t-ブチルメタクリレート、n-オクチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート等が含まれる。
【0086】
スチレン-アクリル樹脂の形成に用いる(メタ)アクリル酸エステル単量体は、一種でもそれ以上でもよい。例えば、スチレン-アクリル樹脂の形成においては、以下のいずれも可能である。
・スチレン単量体と二種以上のアクリル酸エステル単量体とを用いてスチレン-アクリル樹脂を形成すること。
・スチレン単量体と二種以上のメタクリル酸エステル単量体とを用いてスチレン-アクリル樹脂を形成すること。
・スチレン単量体とアクリル酸エステル単量体及びメタクリル酸エステル単量体とを用いてスチレン-アクリル樹脂を形成すること。
【0087】
スチレン-アクリル樹脂におけるスチレン単量体に由来する構成単位の含有量は、40~90質量%が好ましい。当該含有量は、50~85質量%がより好ましい。当該含有量は、60~80質量%がより好ましい。当該含有量は、65~75質量%がより好ましい。スチレン-アクリル樹脂における(メタ)アクリル酸エステル単量体に由来する構成単位の含有量は、10~60質量%が好ましい。当該含有量は、15~50質量%がより好ましい。当該含有量は、20~40質量%がより好ましい。当該含有量は、15~35質量%がより好ましい。これにより、スチレン-アクリル樹脂の可塑性が制御されやすくなる。
【0088】
スチレン-アクリル樹脂は、スチレン単量体及び(メタ)アクリル酸エステル単量体以外の他の単量体に由来する構成単位を更に含有していてもよい。
【0089】
他の単量体は、多価アルコール由来のヒドロキシ基又は多価カルボン酸由来のカルボキシ基とエステル結合する化合物であることが好ましい。すなわち、スチレン-アクリル樹脂は、スチレン単量体及び(メタ)アクリル酸エステル単量体に対して付加重合可能であり、かつ、カルボキシ基又はヒドロキシ基を有する化合物が更に重合してなる重合体であることが好ましい。
【0090】
「スチレン単量体及び(メタ)アクリル酸エステル単量体に対して付加重合可能であり、かつ、カルボキシ基又はヒドロキシ基を有する化合物」を、以下、「両性化合物」ともいう。
【0091】
カルボキシ基を有する両性化合物の例には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、フマル酸、マレイン酸モノアルキルエステル、イタコン酸モノアルキルエステル等が含まれる。
【0092】
ヒドロキシ基を有する両性化合物の例には、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等が含まれる。
【0093】
スチレン-アクリル樹脂における両性化合物に由来する構成単位の含有量は、0.5~20質量%が好ましく、5~10質量%がより好ましい。
【0094】
スチレン-アクリル樹脂は、例えば、公知の油溶性又は水溶性の重合開始剤を使用して単量体を重合する方法によって合成できる。
【0095】
油溶性の重合開始剤の例には、アゾ系重合開始剤、ジアゾ系重合開始剤、過酸化物系重合開始剤等が含まれる。
【0096】
アゾ系重合開始剤又はジアゾ系重合開始剤の例には、以下のものが含まれる。
・2,2′-アゾビス-(2,4-ジメチルバレロニトリル)
・2,2′-アゾビスイソブチロニトリル
・1,1′-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)
・2,2′-アゾビス-4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル
・アゾビスイソブチロニトリル
【0097】
過酸化物系重合開始剤の例には、以下のものが含まれる。
・ベンゾイルパーオキサイド
・メチルエチルケトンパーオキサイド
・ジイソプロピルペルオキシカーボネート
・クメンヒドロパーオキサイド
・t-ブチルヒドロパーオキサイド
・ジ-t-ブチルパーオキサイド
・ジクミルパーオキサイド
・2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド
・ラウロイルパーオキサイド
・2,2-ビス-(4,4-t-ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン
・トリス-(t-ブチルパーオキシ)トリアジン
【0098】
乳化重合法でスチレン-アクリル樹脂の樹脂粒子を合成する場合には、重合開始剤として水溶性ラジカル重合開始剤が使用可能である。
【0099】
水溶性ラジカル重合開始剤の例には、過硫酸塩、アゾビスアミノジプロパン酢酸塩、アゾビスシアノ吉草酸、アゾビスシアノ吉草酸塩、過酸化水素等が含まれる。過硫酸塩の例には、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等が含まれる。
【0100】
(ポリエステル)
ポリエステルは、多価カルボン酸と多価アルコールとの重縮合反応によって得られる。多価カルボン酸や多価アルコールは、それぞれ二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0101】
多価カルボン酸及び多価アルコールの価数としては、好ましくはそれぞれ2~3であり、特に好ましくはそれぞれ2である。
【0102】
多価カルボン酸のうち、カルボン酸の価数が2であるジカルボン酸の例としては、飽和脂肪族ジカルボン酸、不飽和脂肪族ジカルボン酸、不飽和芳香族ジカルボン酸等が挙げられる。飽和脂肪族ジカルボン酸の例としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9-ノナンジカルボン酸、1,10-デカンジカルボン酸(ドデカン二酸)、1,11-ウンデカンジカルボン酸、1,12-ドデカンジカルボン酸、1,13-トリデカンジカルボン酸、1,14-テトラデカンジカルボン酸、1,16-ヘキサデカンジカルボン酸、1,18-オクタデカンジカルボン酸等が挙げられる。不飽和脂肪族ジカルボン酸の例としては、メチレンコハク酸、フマル酸、マレイン酸、3-ヘキセンジオイック酸、3-オクテンジオイック酸、ドデセニルコハク酸等が挙げられる。不飽和芳香族ジカルボン酸の例としては、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、t-ブチルイソフタル酸、テトラクロロフタル酸、クロロフタル酸、ニトロフタル酸、p-フェニレン二酢酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、4,4′-ビフェニルジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸等が挙げられる。これらのジカルボン酸の低級アルキルエステルや酸無水物を多価カルボン酸として用いることもできる。
【0103】
多価カルボン酸としては、上記のジカルボン酸以外に、トリメリット酸、ピロメリット酸等の3価以上の多価カルボン酸を用いることができる。
【0104】
多価アルコールのうち、アルコールの価数が2であるジオールの例としては、飽和脂肪族ジオール、不飽和脂肪族ジオール、芳香族ジオール等が挙げられる。飽和脂肪族ジオールの例としては、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,13-トリデカンジオール、1,14-テトラデカンジオール、1,18-オクタデカンジオール、1,20-エイコサンジオール、ネオペンチルグリコール等が挙げられる。不飽和脂肪族ジオールの例としては、2-ブテン-1,4-ジオール、3-ブテン-1,4-ジオール、2-ブチン-1,4-ジオール、3-ブチン-1,4-ジオール、9-オクタデセン-7,12-ジオール等が挙げられる。芳香族ジオールの例としては、ビスフェノール類、ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物等が挙げられる。ビスフェノール類の例としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF等が挙げられる。ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物の例としては、ビスフェノール類のエチレンオキサイド付加物、ビスフェノール類のプロピレンオキサイド付加物等が挙げられる。これらのジオールの誘導体を多価アルコールとして用いることもできる。
【0105】
ポリエステルは、例えば公知のエステル化触媒を利用して、多価カルボン酸及び多価アルコールを重縮合することにより製造できる。
【0106】
ポリエステルの合成に使用可能な触媒の例としては、金属含有化合物、亜リン酸化合物、リン酸化合物、アミン化合物等が挙げられる。金属含有化合物が含有する金属の例としては、ナトリウム、リチウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、亜鉛、マンガン、アンチモン、チタン、スズ、ジルコニウム、ゲルマニウム等が挙げられる。これらは一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0107】
スズ含有化合物の具体例としては、酸化ジブチルスズ(ジブチル錫オキサイド)、オクチル酸スズ、ジオクチル酸スズ、これらの塩等が挙げられる。
【0108】
チタン含有化合物の例としては、チタンアルコキシド、チタンアシレート、チタンキレート等が挙げられる。チタンアルコキシドの例としては、テトラノルマルブチルチタネート(Ti(O-n-Bu)4)、テトライソプロピルチタネート、テトラメチルチタネート、テトラステアリルチタネート等が挙げられる。チタンアシレートの例としては、ポリヒドロキシチタンステアレート等が挙げられる。チタンキレートの例としては、チタンテトラアセチルアセトナート、チタンラクテート、チタントリエタノールアミネート等が挙げられる。
【0109】
ゲルマニウム含有化合物の例としては、二酸化ゲルマニウム等が挙げられる。
【0110】
アルミニウム含有化合物の例としては、ポリ水酸化アルミニウム、アルミニウムアルコキシド、トリブチルアルミネート等が挙げられる。
【0111】
重合温度は特に限定されないが、70~250℃が好ましい。重合時間は特に限定されないが、0.5~10時間が好ましい。重合中には、必要に応じて反応系内を減圧にしてもよい。
【0112】
ポリエステルは、ポリエステル重合セグメントとスチレン-アクリル重合セグメントグラフトとのグラフト共重合体構造を有していてもよい。
【0113】
(着色剤)
トナー母体粒子は、着色剤を含有し得る。着色剤には、公知の無機着色剤又は有機着色剤を使用できる。着色剤としては、カーボンブラック、磁性粉、有機顔料、無機顔料、染料等を使用できる。無機顔料としては、例えばフタロシアニン系顔料を用いることができる。着色剤は、有彩色顔料であることが好ましい。
【0114】
着色剤の含有量はトナー粒子に対して好ましくは1~30質量%、より好ましくは2~20質量%である。
【0115】
(荷電制御剤)
トナー母体粒子は、荷電制御剤を含有し得る。
【0116】
荷電制御剤としては、ニグロシン系染料、ナフテン酸の金属塩、高級脂肪酸の金属塩、アルコキシル化アミン、第4級アンモニウム塩、アゾ系金属錯体、サリチル酸金属塩等の公知の化合物を用いることができる。荷電制御剤を用いることにより、帯電性に優れたトナーを得ることができる。
【0117】
荷電制御剤の含有量は、コア粒子が含有する樹脂の全量100質量部に対して、通常0.1~5.0質量部の範囲内とすることができる。
【0118】
(コア・シェル構造)
本発明に係るトナー母体粒子は、コア粒子と、前記コア粒子を被覆するシェルと、を有る「コア・シェル構造」であることが好ましい。
【0119】
シェルは、コア粒子の全表面を被覆していなくてもよい。コア粒子は、トナー母体粒子と外添剤との静電的付着力が妨げられない範囲で部分的に露出していてもよい。
【0120】
トナー母体粒子のコア・シェル構造の断面は、例えば以下の公知の観察手段によって確認できる。
・透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)
・走査型プローブ顕微鏡(SPM:Scanning Probe Microscope)
・走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)
【0121】
コア粒子とシェルでガラス転移点、融点、硬度等の特性を異ならせることもできる。これにより、目的に応じたトナー粒子の設計が可能である。例えば、ガラス転移点が比較的低い樹脂や離型剤を含有するコア粒子の表面に、ガラス転移点が比較的高い樹脂を含有するシェルを形成できる。
【0122】
シェルが含有する樹脂は、非晶性樹脂が好ましく、非晶性ポリエステルがより好ましく、スチレン-アクリル変性非晶性ポリエステルがより好ましい。
【0123】
[静電荷像現像用トナーの製造方法]
トナーの製造方法は、特に制限されない。トナーの製造方法には、例えば、上述の各成分を凝集させる乳化重合凝集法や、乳化凝集法といった、公知の方法を採用できる。
【0124】
以下、トナーの製造方法の一例を説明する。
【0125】
まず、結着樹脂と離型剤とを含む非晶性樹脂微粒子を水系媒体中に分散させた水系分散液を準備する。具体的には、離型剤を含まない粒子状の結着樹脂(非晶性樹脂)を水系媒体中で凝集させ、これを所定の大きさの粒子に成長させる(第1段階)。その後、当該分散液に粒子状の離型剤及び粒子状の非晶性樹脂を添加し、さらに凝集させる(第2段階)。これにより、表層側に離型剤を多く含む非晶性樹脂微粒子が得られる。その後、必要に応じて、粒子状の結着樹脂(非晶性樹脂)を周囲にさらに凝集させてもよい(第3段階)。
【0126】
一方で、着色剤粒子等を水系媒体中に分散させた水系分散液を準備する。そして、上述の非晶性樹脂微粒子の水系分散液と、着色剤粒子の水系分散液とを混合する。これらの粒子を凝集させてコア粒子を形成する。
【0127】
水系分散液とは、主成分(50質量%以上)が水からなる水系媒体中に、分散体(粒子)が分散されている分散液を意味する。水系媒体は、水以外に、水溶性有機媒体を含有してもよい。水溶性有機媒体の例としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
【0128】
非晶性ポリエステル等を水系媒体中に分散させた水系分散液を準備する。コア粒子が分散されてなる水系媒体中に、シェル樹脂微粒子を添加する。これにより、コア粒子の表面にシェル樹脂微粒子を凝集させる。これにより、コア・シェル構造を有するトナー母体粒子が形成される。
【0129】
トナー母体粒子の形成後、当該トナー母体粒子と外添剤とを混合することで、外添剤を有するトナー粒子を得ることができる。
【0130】
なお、トナー母体粒子と外添剤とを混合する前に、外添剤の一次粒子に対して金属塩化合物を添加することによって、二次粒子を形成する工程を有することが好ましい。これによって、本発明に係るトナーを好適に製造できる。
【0131】
トナー母体粒子を作製する方法は、次の方法であってもよい。非晶性樹脂の水系分散液と、着色剤粒子等の水系分散液と、離型剤の水系分散液と、をそれぞれ準備する。これらを混合し、粒子を凝集させる。これにより、トナー母体粒子を作製する。この場合も、凝集体の周囲にシェルを形成してもよい。
【0132】
[現像剤]
本発明のトナーは、磁性又は非磁性の一成分現像剤として使用できる。本発明のトナーは、キャリア粒子と混合して二成分現像剤としても使用できる。
【0133】
キャリア粒子としては、例えば、従来公知の材料からなる磁性粒子を用いることができる。磁性粒子の例として、鉄、フェライト、マグネタイト等の金属、それらの金属とアルミニウム、鉛等の金属との合金等が挙げられる。キャリア粒子は、特にフェライト粒子が好ましい。
【0134】
キャリア粒子として、被覆型キャリア粒子や分散型キャリア粒子を用いてもよい。「被覆型キャリア粒子」とは、磁性粒子の表面を樹脂等の被覆剤で被覆した粒子である。「分散型キャリア粒子」とは、バインダー樹脂中に磁性体微粉末を分散した粒子である。キャリア粒子は、感光体へのキャリア粒子の付着を抑制する観点から、被覆型キャリア粒子が好ましい。
【0135】
キャリア粒子の平均粒子径は、体積基準のメジアン径で15~100μmが好ましく、25~80μmがより好ましい。当該メジアン径は、例えば湿式分散機を備えたレーザー回折式粒度分布測定装置(HELOS、SYMPATEC社)で測定できる。
【0136】
キャリア粒子は、上述のトナー粒子に適量混合すればよい。当該混合に用いられる混合装置の例には、ナウターミキサー、W型混合機、V型混合機等が含まれる。
【0137】
[画像形成方法]
本発明の画像形成方法は、上述の本発明のトナーを用いることを特徴とする。具体的には、本発明の画像形成方法は、本発明のトナーと、電子写真方式の画像形成装置と、を用いて、実施できる。電子写真方式の画像形成装置には、公知のものを用いることができる。
【実施例0138】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。下記実施例において、特記しない限り、操作は、室温(25℃)で行われた。下記実施例において、特記しない限り、「%」及び「部」は、それぞれ、「質量%」及び「質量部」を意味する。
【0139】
[結晶性ポリエステル粒子分散液c1の調製]
三ツ口フラスコに、1,9-ノナンジオール〔300g〕と、ドデカン二酸〔250g〕と、触媒としてのTi(OBu)4〔カルボン酸モノマーに対し、0.014質量%〕と、を入れ、混合した。その後、減圧操作によりフラスコ内の空気を減圧した。
【0140】
窒素ガスを上記フラスコに導入して、当該フラスコ内を不活性雰囲気とした。フラスコ内の混合液を機械撹拌しながら180℃で6時間還流を行った。その後、減圧蒸留にて未反応のモノマー成分を除去し、220℃まで徐々に昇温を行って12時間撹拌を行った。粘稠な状態となったところで冷却することにより、結晶性ポリエステルC1を得た。結晶性ポリエステルC1の重量平均分子量Mwは、19500であった。結晶性ポリエステルC1の融点は、75℃であった。
【0141】
樹脂の重量平均分子量は以下のように測定した。測定には、GPC装置「HLC-8220」(東ソー社製)及びカラム「TSKguardcolumn+TSKgelSuperHZM-M3連」(東ソー社製)を用いた。カラム温度を40℃に保持しながらキャリア溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を流速0.2mL/分で流す。試料溶液〔10μL〕を装置内に注入した。屈折率検出器(RI検出器)を用いて検出し、測定試料の有する分子量分布を、単分散のポリスチレン標準粒子を用いて測定した検量線を用いて算出した。分子量分布から、重量平均分子量を求めた。
【0142】
樹脂の融点は以下のように測定した。測定には、示差走査熱量測定装置「ダイヤモンドDSC」(パーキンエルマー社製)を用いた。試料〔3.0mg〕をアルミニウム製パンに封入してホルダーにセットし、リファレンスとして空のアルミニウム製パンをセットした。昇降速度10℃/minで0℃から200℃まで昇温する第1昇温過程、冷却速度10℃/minで200℃から0℃まで冷却する冷却過程、及び昇降速度10℃/minで0℃から200℃まで昇温する第2昇温過程をこの順に経る測定条件(昇温・冷却条件)によってDSC曲線を得た。そして、このDSC曲線における第1昇温過程の結晶性ポリエステル由来の吸熱ピークトップ温度を、融点とした。
【0143】
結晶性ポリエステルC1〔174.3質量部〕をメチルエチルケトン〔102質量部〕に入れ、75℃で30分撹拌し、溶解させた。この溶解液に、25質量%の水酸化ナトリウム水溶液〔3.1質量部〕を添加した。次に、この溶解液を、撹拌機を有する反応容器に入れ、撹拌しながら70℃に温めた水〔375質量部〕を70分間に亘って滴下混合した。滴下の途中で容器内の液は白濁化し、全量滴下後に均一に乳化した状態の乳化液を得た。
【0144】
次いで、この乳化液を70℃で保温したまま、15kPa(150mbar)に減圧下で3時間撹拌することで、メチルエチルケトンを蒸留除去した。減圧にはダイヤフラム式真空ポンプ「V-700」(BUCHI社製)を使用した。その後、冷却速度6℃/minで冷却した。これにより、結晶性ポリエステルC1の微粒子が分散された結晶性ポリエステル粒子分散液c1を得た。得られた分散液に含まれる樹脂粒子の体積平均粒径は202nmであった。
【0145】
[非晶性ポリエステル粒子分散液a1の調製]
加熱乾燥した三口フラスコに、下記モノマーと触媒を入れた。
【0146】
ビスフェノールAプロピレンオキサイド 2100質量部
ビスフェノールAエチレンオキサイド 1600質量部
1,3,5-ベンゼントリカルボン酸 55質量部
1,2,4-ベンゼントリカルボン酸 620質量部
テレフタル酸 730質量部
フマル酸 400質量部
ジブチル錫オキサイド 25質量部
【0147】
減圧操作により上記フラスコ内の空気を減圧し、さらに窒素ガスにより不活性雰囲気下とした。フラスコ内の混合液を機械撹拌しながら180℃で5時間還流を行った。その後、反応系内に生成した水を減圧蒸留にて留去しながら、240℃まで徐々に昇温を行った。さらに240℃で3時間脱水縮合反応を継続し、粘稠な状態となったところでGPCにて樹脂の分子量を確認した後、反応を停止させた。樹脂の重量平均分子量が36000になったところで、減圧蒸留を停止し、非晶性ポリエステルA1を得た。
【0148】
不溶分を除去した後の非晶性ポリエステルA1〔200質量部〕と、メチルエチルケトン〔100質量部〕と、〔イソプロピルアルコール35質量部〕と、10質量%アンモニア水溶液〔7.0質量部〕と、をセパラブルフラスコに入れた。これを十分に混合し、成分を溶解させた。これを40℃で加熱撹拌しながら、これにイオン交換水を送液ポンプによって送液速度8g/分で滴下した。液が均一に白濁した後、送液速度15g/分に上げて転相させ、送液量が580質量部になったところで滴下を止めた。その後減圧下で溶剤除去を行い、非晶性ポリエステル粒子分散液a1を得た。得られた分散液に含まれる樹脂粒子の体積平均粒子径は164nmであり、樹脂粒子の固形分濃度は35質量%であった。
【0149】
[非晶性ポリエステル粒子分散液a2の調製]
両性化合物(アクリル酸)を含む下記組成からなる単量体混合液を滴下ロートに入れた。なお、ジ-t-ブチルパーオキサイドは、重合開始剤である。
【0150】
スチレン 80質量部
n-ブチルアクリレート 20質量部
アクリル酸 10質量部
ジ-t-ブチルパーオキサイド 16質量部
【0151】
下記の重縮合系セグメント(非晶性ポリエステルセグメント)の原料モノマーを、窒素導入管、脱水管、撹拌器及び熱電対を装備した四つ口フラスコに入れた。これを、170℃に加熱し溶解させた。
【0152】
ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物 285.7質量部
テレフタル酸 66.9質量部
フマル酸 47.4質量部
【0153】
次いで、得られた溶液に、撹拌下で単量体混合液を90分間かけて滴下し、60分間熟成を行った。その後、減圧下(8kPa)にて単量体混合液の成分のうちの未反応のモノマーを四つ口フラスコ内から除去した。その後、エステル化触媒としてTi(OBu)4〔0.4質量部〕を四つ口フラスコ内に投入した。当該四つ口フラスコ中の混合液を235℃まで昇温した。常圧下(101.3kPa)にて5時間、更に減圧下(8kPa)で1時間の条件で反応を行い、樹脂粒子分散液を得た。
【0154】
この樹脂粒子分散液〔100質量部〕を、の酢酸エチル(関東化学会社製)〔400質量部〕に溶解させた。これを、あらかじめ作製した0.26質量%濃度のラウリル硫酸ナトリウム溶液〔638質量部〕と混合した。得られた混合液を、撹拌しながら超音波ホモジナイザーによって、V-LEVELが300μAの条件で30分間超音波分散した。超音波ホモジナイザーにはUS-150T(日本精機製作所社製)を用いた。その後、40℃に加温した状態で前記混合液を減圧下で3時間撹拌して、酢酸エチルを完全に除去した。減圧にはダイヤフラム式真空ポンプ「V-700」(BUCHI社製)を用いた。このようにして、固形分量が13.5質量%の非晶性ポリエステル粒子分散液a2を調製した。当該分散液における樹脂粒子の体積基準のメジアン径(d50)は、160nmであった。
【0155】
[シリコーン部位を有するポリエステル粒子分散液sa1の調製]
窒素導入管、脱水管、撹拌機、及び熱電対を装備した内容積10Lの四つ口フラスコの内部を窒素置換し、これに下記材料を入れた。
【0156】
ビスフェノールAのプロピレンオキサイド(2.2)付加物 1000質量部
ビスフェノールAのエチレンオキサイド(2.2)付加物 2980質量部
テレフタル酸 1720質量部
シリコーン「KF-864」(信越化学工業社製) 600質量部
ジ(2-エチルヘキサン酸)錫(II) 29質量部
【0157】
フラスコ内の混合液を窒素雰囲気下で撹拌しながら、235℃に昇温し、235℃で6時間保持した。その後、フラスコ内の圧力を下げ、8kPaにて所望の軟化点まで反応を行って、シリコーン部位を有するポリエステルSA1を得た。
【0158】
得られたシリコーン部位を有するポリエステルSA1〔400質量部〕を酢酸エチル〔1700質量部〕に投入した。この反応系を40℃まで昇温させて溶解混合することにより、シリコーン部位を有するポリエステル溶液を調製した。
【0159】
別の反応槽に、純水〔2000質量部〕にドデシル硫酸ナトリウム〔4.8質量部〕を溶解させた水系媒体を調製した。この水系媒体中に、上記シリコーン部位を有するポリエステル溶液を投入した。これを、「TKホモミキサーMarkII2.5型」(プライミクス社製)を用いて撹拌した。これにより、水系媒体中にシリコーン部位を有するポリエステル溶液が油滴として分散されたラテックスを調製した。
【0160】
ラテックスに対して50℃の加温下で減圧留去することにより、ラテックスから酢酸エチルを除去した。これにより、シリコーン部位を有するポリエステル粒子分散液sa1を得た。当該分散液中の樹脂粒子の体積基準のメジアン径は、140nmであった。
【0161】
[着色剤粒子分散液b1の調製]
ドデシル硫酸ナトリウム〔90質量部〕をイオン交換水〔1600質量部〕に撹拌溶解した。この溶液を撹拌しながら、この溶液にカーボンブラックリーガル330R(キャボット社製)〔420質量部〕を徐々に添加した。この系に対して撹拌装置クレアミックス(エム・テクニック社製)を用いて分散処理することにより、着色剤粒子分散液b1を調製した。
【0162】
分散液中の着色剤粒子の粒子径を、粒度分布測定器「Nanotrack Wave」(マイクロトラックベル社製)を用いて測定したところ、粒子径は117nmであった。
【0163】
[離型剤粒子分散液w1の調製]
下記の材料を混合し、圧力吐出型ホモジナイザー(ゴーリン社製ゴーリンホモジナイザ)で、内液温度120℃にて離型剤を溶解した。
【0164】
パラフィン系ワックス 270.0質量部
アニオン性界面活性剤 13.5質量部
イオン交換水 21.6質量部
【0165】
パラフィン系ワックスには、HNP0190(日本精蝋製、融解温度85℃)を用いた。アニオン性界面活性剤には、ネオゲンRK(第一工業製薬製、有効成分60%)を用いた。パラフィン系ワックスに対するアニオン性界面活性剤の有効成分の割合は、3質量%である。
【0166】
離型剤の溶解液に対して、分散圧力5MPaで120分間、続いて40MPaで360分間、分散処理した。これを冷却し、イオン交換水を加えて固形分量を20質量%に調整した。これにより、離型剤分散液w1を得た。離型剤分散液w1中の粒子の体積平均粒径は215nmであった。
【0167】
[スチレン-アクリル樹脂粒子分散液s1の調製]
(第1段重合)
撹拌装置、温度センサー、冷却管及び窒素導入装置を取り付けた5Lの反応容器に、ラウリル硫酸ナトリウム〔8質量部〕及びイオン交換水〔3000質量部〕を仕込んだ。これを窒素気流下230rpmの撹拌速度で撹拌しながら、内温を80℃に昇温させた。昇温後、これに、過硫酸カリウム〔10質量部〕をイオン交換水〔200質量部〕に溶解させた溶液を添加した。再度液温を80℃として、下記単量体の混合液を1時間かけて滴下した。
【0168】
スチレン 500質量部
n-ブチルアクリレート 270質量部
メタクリル酸 65質量部
n-オクチルメルカプタン 17質量部
【0169】
上記混合液の滴下後、80℃にて2時間加熱、撹拌することにより単量体の重合を行い、樹脂粒子分散液(a-1)を調製した。
【0170】
(第2段重合)
撹拌装置、温度センサー、冷却管及び窒素導入装置を取り付けた5Lの反応容器に、ポリオキシエチレン(2)ドデシルエーテル硫酸ナトリウム〔7質量部〕をイオン交換水〔3000質量部〕に溶解させた溶液を仕込み、98℃に加熱した。加熱後、上記第1段重合により得られた樹脂粒子分散液(a-1)を固形分換算で80質量部と、下記単量体、連鎖移動剤及び離型剤を90℃にて溶解させた混合液とを添加した。
【0171】
スチレン 285質量部
n-ブチルアクリレート 65質量部
メタクリル酸 20質量部
n-オクチル-3-メルカプトプロピオネート(連鎖移動剤) 2質量部
ベヘン酸ベヘニル(離型剤) 190質量部
【0172】
1時間の混合分散処理を行い、乳化粒子(油滴)を含む分散液を調製した。混合分散処理には、循環経路を有する機械式分散機クレアミックス(登録商標)(エム・テクニック社製)を用いた。この分散液に、過硫酸カリウム〔7質量部〕をイオン交換水〔200質量部〕に溶解させた重合開始剤の溶液を添加した。この系を84℃にて1時間にわたり加熱撹拌することにより重合を行って、樹脂粒子分散液(b-1)を調製した。
【0173】
(第3段重合)
上記第2段重合により得られた樹脂粒子分散液(b-1)にイオン交換水〔400質量部〕を添加し、よく混合した。これに、過硫酸カリウム〔11質量部〕をイオン交換水〔400質量部〕に溶解させた溶液を添加した。これに、82℃の温度条件下で、下記単量体及び連鎖移動剤の混合液を1時間かけて滴下した。
スチレン 450質量部
2-エチルヘキシルアクリレート 140質量部
メタクリル酸 52質量部
n-オクチル-3-メルカプトプロピオネート(連鎖移動剤) 8質量部
【0174】
滴下終了後、2時間にわたり加熱撹拌することにより重合を行った。その後、この系を28℃まで冷却し、スチレン-アクリル樹脂粒子分散液s1を得た。当該分散液中の樹脂の重量平均分子量Mwは36000であった。分散液中の樹脂粒子の体積基準のメジアン径は、225nmであった。
【0175】
[スチレン-アクリル樹脂粒子分散液s2の調製]
以下の点以外はスチレン-アクリル樹脂粒子分散液s1の調製と同様にして、スチレン-アクリル樹脂粒子分散液s2を調製した。
・第2段重合におけるベヘン酸ベヘニル(離型剤)の添加部数を、190質量部から120質量部に変更した。
【0176】
[シリコーン部位を有するスチレン-アクリル樹脂粒子分散液ssa1の調製]
以下の点以外はスチレン-アクリル樹脂粒子分散液s1の調製と同様にして、シリコーン部位を有するスチレン-アクリル樹脂粒子分散液ssa1を調製した。
・第3段重合において滴下した単量体及び連鎖移動剤の混合液の組成を、以下の組成に変更した。
スチレン 450質量部
2-エチルヘキシルアクリレート 100質量部
メタクリル酸 32質量部
シリコーンアクリレート 60質量部
n-オクチル-3-メルカプトプロピオネート(連鎖移動剤) 8質量部
【0177】
[トナー母体粒子1の作製]
pHメーター、撹拌羽、温度計を具備した重合釜に、以下の材料を入れた。アニオン性界面活性剤にはDowfax2A1(ダウケミカル社製、20%水溶液)を用いた。
【0178】
非晶性ポリエステル粒子分散液a1 100質量部(固形分換算)
結晶性ポリエステル粒子分散液c1 12.8質量部(固形分換算)
アニオン性界面活性剤 4.1質量部
イオン交換水 250質量部
【0179】
これを140rpmで15分間撹拌しながら、アニオン性界面活性剤を、非晶性ポリエステル粒子分散液a1と結晶性ポリエステル粒子分散液c1になじませた。これに着色剤粒子分散液b1〔15質量部(固形分換算)〕及び離型剤分散液w1〔20.4質量部(固形分換算)〕を加え、混合した。この原料混合物に0.3Mの硝酸水溶液を加えて、pHを4.8に調整した。この系に、ホモジナイザーUltraturraxにより4000rpmでせん断力を加えた。せん断力を加えながら、凝集剤として硫酸アルミニウムの10%硝酸水溶液〔22質量部〕を滴下した。この凝集剤滴下の途中で、原料混合物の粘度が急激に増大した時点で、滴下速度を緩め、凝集剤が一箇所に偏らないようした。凝集剤の滴下が終了したら、さらに回転数5000rpmに上げて5分間撹拌し、凝集剤と原料混合物を充分混合した。
【0180】
上記原料混合物をマントルヒーターにて30℃に加温しながら400~600rpmで撹拌した。10分撹拌後、一次粒子径が安定に形成するのを確認した。当該確認には、コールターマルチサイザー3(アパーチャー径100μm、ベックマン・コールター社製)を用いた。その後、凝集粒子(コア粒子)を成長させるために0.1℃/分で46℃まで昇温した。凝集粒子の成長はコールターカウンターを用いて随時確認し、その凝集速度によって、適宜凝集温度や撹拌の回転数を変えた。
【0181】
一方、以下の材料を混合し、pHが3.8となるようにシェル用樹脂分散液を調製した。アニオン性界面活性剤にはDowfax2A1(ダウケミカル社製、20%水溶液)を用いた。
【0182】
非晶性ポリエステル粒子分散液a1 55.0質量部(固形分換算)
イオン交換水 22.0質量部
アニオン性界面活性剤 0.8質量部
【0183】
上記凝集工程で凝集粒子(コア粒子)の粒径が5.2μmに成長したところで、シェル用樹脂分散液を加え、撹拌しながら10分間保持した。その後、被覆した凝集粒子の成長を停止させるために、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)20%液〔0.8質量部〕を添加した。その後、1Mの水酸化ナトリウム水溶液を加え、原料混合物のpHを7.5に制御した。次いで、凝集粒子を融合させるために、pHを7.5に調整しながら昇温速度1℃/分で85℃まで昇温した。85℃に達してからも、融合を進めるためにpHを7.5に調整した。
【0184】
その後、形状係数が0.965になった時点で降温速度10℃/分で急冷した。形状係数の測定にはフロー式粒子像分析装置「FPIA-3000」(シスメックス社製)を用いた。
【0185】
その後、粒子分散液を濾過し、イオン交換水で充分洗浄した。これを40℃にて乾燥して、トナー母体粒子1を得た。得られたトナー母体粒子1は、体積基準のメジアン径が5.8μmであり、平均円形度が0.966であり、ガラス転移温度Tgが42℃であった。
【0186】
[トナー母体粒子2の作製]
以下の点以外はトナー母体粒子1の作製と同様にして、トナー母体粒子2を作製した。
・離型剤分散液w1の添加部数を、20.4質量部(固形分換算)から15.9質量部(固形分換算)に変更した。
【0187】
[トナー母体粒子3の作製]
以下の点以外はトナー母体粒子1の作製と同様にして、トナー母体粒子3を作製した。
・非晶性ポリエステル粒子分散液a1の代わりに、シリコーン部位を有するポリエステル粒子分散液sa1を用いた。
・離型剤分散液w1の添加部数を、20.4質量部(固形分換算)から9.6質量部(固形分換算)に変更した。
【0188】
[トナー母体粒子4の作製]
撹拌装置、温度センサー、冷却管を取り付けた反応容器に、以下の材料を投入した。
【0189】
スチレン-アクリル樹脂粒子分散液s1 300質量部(固形分換算)
イオン交換水 2000質量部
【0190】
これに5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を添加して、この系のpHを10に調整した。これに、着色剤粒子分散液b1〔40質量部(固形分換算)〕を投入した。これに、塩化マグネシウム〔60質量部〕をイオン交換水〔60質量部〕に溶解した水溶液を、撹拌下、30℃において10分間かけて添加した。その後、3分間放置した後に昇温を開始し、この系を60分間かけて80℃まで昇温した。80℃に到達後、結晶性ポリエステル粒子分散液c1〔30質量部(固形分換算)〕を20分かけて投入した。粒子径の成長速度が0.01μm/分となるように撹拌速度を調整して、80℃を保持したまま粒子成長反応を継続した。
【0191】
この状態で「マルチサイザー3」(ベックマン・コールター社製)にて会合粒子(コア粒子)の粒径を測定した。会合粒子(コア粒子)の体積基準におけるメジアン径(D50)が5.6μmになった時点で、非晶性ポリエステル粒子分散液a2〔30質量部(固形分換算)〕を30分間かけて投入した。反応液の上澄みが透明になった時点で、塩化ナトリウム〔190質量部〕をイオン交換水〔760質量部〕に溶解した水溶液を添加した。これにより、粒子成長を停止させた。さらに、昇温を行い、90℃の状態で加熱撹拌することにより、粒子の融着を進行させた。測定装置「FPIA-2100」(Sysmex社製)を用いて粒子の平均円形度を測定した。平均円形度が0.950になった時点で2.5℃/分の冷却速度で30℃に冷却した。
【0192】
得られた分散液を遠心分離機で固液分離し、トナー母体粒子のウェットケーキを形成した。このウェットケーキを、前記遠心分離機で濾液の電気伝導度が5μS/cmになるまで35℃のイオン交換水で洗浄した。その後、これを「フラッシュジェットドライヤー」(セイシン企業社製)に移し、水分量が0.5質量%となるまで乾燥した。これにより、トナー母体粒子4を得た。
【0193】
[トナー母体粒子5の作製]
以下の点以外はトナー母体粒子4の作製と同様にして、トナー母体粒子5を作製した。
・スチレン-アクリル樹脂粒子分散液s1の代わりに、スチレン-アクリル樹脂粒子分散液s2を用いた。
【0194】
[トナー母体粒子6の作製]
以下の点以外はトナー母体粒子4の作製と同様にして、トナー母体粒子6を作製した。
・スチレン-アクリル樹脂粒子分散液s1の代わりに、シリコーン部位を有するスチレン-アクリル樹脂粒子分散液ssa1を用いた。
【0195】
トナー母体粒子1~6の作製に用いた樹脂粒子分散液、離型剤分散液、及びトナー母体粒子の全量に対する離型剤の含有量を表Iに示す。
【0196】
【0197】
[外添剤一次粒子の準備]
外添剤の一次粒子として、表IIに記載の粒子を用いた。一次粒子1~4は市販品である。一次粒子5は下記の手順で作製したものである。
【0198】
一次粒子5は、特開2004-315356号公報に記載の針状酸化チタン微粒子の製造を参考にして、以下のようにして作製した。撹拌機、滴下ロート、及び温度計を備えた3L反応器にメタノール〔700g〕を入れた。これを撹拌させ、ここにチタンイソプロポキシド〔450g〕を滴下し、5分撹拌を継続した。その後、生じた酸化チタン微粒子を遠心分離機にかけて分離し、回収した。その後、減圧乾燥を経て、アモルファス酸化チタンを得た。得られたアモルファス酸化チタンを、大気中、800℃で5時間、高温電気炉にて加熱し、ルチル型酸化チタン微粒子を得た。前述の撹拌機、滴下ロート、及び温度計を備えた3L反応器に、得られたルチル型酸化チタン微粒子〔500g〕と、オクチルトリメトキシシラン〔15g〕と、を加えた。これをトルエン〔2L〕中で10時間撹拌させ、疎水化処理を行った。その後、反応生成物を遠心分離して反応溶媒の洗浄を行った。その後、再度遠心分離して粒子を回収し、減圧乾燥を経て、一次粒子5を得た。一次粒子5の個数平均長軸径は50nmであり、個数平均短軸径は10nmであった。
【0199】
【0200】
[外添剤二次粒子の調製]
一次粒子2を10g/Lの濃度で純水に分散させた。粒子分散液を撹拌しながら、これに、5mol/LのKBr水溶液を、添加濃度0.01質量%になるように添加した。この添加濃度は、一次粒子に対する金属塩の量[質量%]である。
【0201】
その後、粒子分散液を撹拌しながら加熱温度50℃で10分間加熱することにより、粒子の凝集体を沈殿させた。この後沈殿物を取り出し、乾燥させて水分を揮発させることにより外添剤の二次粒子1を得た。
【0202】
使用する一次粒子及び調製条件を表IIIに示すとおりに変更したこと以外は二次粒子1の作製と同様にして、二次粒子2~9をそれぞれ調製した。
【0203】
【0204】
[トナー粒子の作製]
トナー母体粒子1〔100質量部〕に、外添剤Aとして一次粒子1〔1.50質量部〕及び外添剤Bとして二次粒子9〔0.5質量部〕を添加した。これをヘンシェルミキサー(日本コークス工業社製)により、回転翼周速35mm/秒、温度32℃で20分間混合した。混合後、45μmの目開きのふるいを用いて粗大粒子を除去し、トナー粒子T1を得た。
【0205】
以下の点を表IVのとおり変更した以外は、トナー粒子T1の作製と同様にして、トナー粒子T2~T19を作製した。
・外添剤Aの添加量
・外添剤Bの種類
・外添剤Bの添加量
【0206】
表IVに記載の外添剤含有量[質量%]は、トナー母体粒子の量に対する外添剤の添加量である。
【0207】
【0208】
トナー粒子が含有する外添剤についてのデータは表Vに示すとおりである。
【0209】
表Vのトナー母体粒子の量に対する外添剤の含有量[質量%]の値は、表IVのトナー母体粒子の量に対する外添剤の添加量[質量%]と同じ値である。
【0210】
外添剤の全量に対する二次粒子の含有割合[質量%]を、一次粒子及び二次粒子の添加量から求めた。二次粒子はトナー粒子作製過程でも形成され得る。そのため、二次粒子の含有割合[質量%]は、二次粒子の添加割合以上となる。値は、表Vに示すとおりであった。
【0211】
トナー粒子が有する外添剤のうち、一次粒子(二次粒子を形成している一次粒子も含む。)を700個観察した。観察した全ての一次粒子に対する、長軸径が100nm以上である一次粒子(二次粒子を形成している一次粒子も含む。)の個数の割合を求めた。値は表Vに示すとおりであった。
【0212】
トナー粒子が有する外添剤のうち、二次粒子を100~200個観察した。観察した全ての二次粒子の個数に対する、長軸径が160nm以上である二次粒子の個数の割合を求めた。値は表Vに示すとおりであった。トナー粒子T17及びT18は、二次粒子を添加せずに作製したが、トナー粒子作製過程でトナー母体粒子表面に二次粒子が形成されていた。
【0213】
トナー粒子が有する外添剤について、長軸径が160nm以上である二次粒子の平均長軸径と平均フラクタル次元を、上述の方法で測定した。値は表Vに示すとおりであった。
【0214】
【0215】
[二成分現像剤の作製]
キャリアとしてアクリル樹脂を被覆した体積平均粒径32μmのフェライトキャリアを用いた。トナー粒子とキャリアとを、トナー粒子濃度が6質量%となるように混合した。これにより、それぞれトナー粒子T1~T19を含有する二成分現像剤1~19を作製した。
【0216】
[トナー画像形成]
複合機として「bizhub PRESS(登録商標) C1070」(コニカミノルタ社製)を用いた。当該複合機を、トナー付着量を自由に設定できるように改造し、二成分現像剤を順次装填した。評価紙としてOKトップコート+(157.0g/m2)紙(王子製紙社製)を用いた。トナー付着量が8.0g/m2の画像を、通常の定着条件にて出力した。
【0217】
[ニスの塗布性の評価]
形成したトナー画像上にUV VECTA コートニス PC-3KW2(T&K社製)を、バーコーターにて、厚さ5μmになるように塗布した。その後、高圧水銀灯を用いて画像面の積算光量が120~130mJ/cm2となるように紫外線を照射した。これにより、ニスを硬化させて、ニス層を形成した。UV VECTA コートニス PC-3KW2は、ニス用重合性モノマー及び光重合開始剤(ラジカル重合開始剤)を含む。当該ニス用重合性モノマーは、エチレン性二重結合を含む重合性官能基を有するものである。
【0218】
ニス層の表面を目視にて観察し、下記評価基準に基づき、ニスの塗布性を評価した。AB、及びCを合格レベルとした。評価結果は表VIに示すとおりであった。
【0219】
(評価基準)
A:10cm×10cmの範囲にピンホールがなく、かつ、トナー画像がニスをはじいていない。
B:10cm×10cmの範囲にピンホールが1個以上2個以下あり、かつ、トナー画像がニスをはじいていない。
C:10cm×10cmの範囲にピンホールが3個以上10個以下あり、かつ、トナー画像がニスをはじいていない。
D:10cm×10cmの範囲にピンホールが11個以上あるか、又はトナー画像がニスをはじいている。
【0220】
[トナー画像とニス層との密着性の評価]
上述のとおりニス層を形成した画像におけるトナー画像とニス層との密着性を、メンディングテープ剥離法により評価した。手順は以下(1)~(7)のとおりである。
(1)画像について、倍率100倍で写真を撮影し、二値化処理を行った。画像の撮影にはキーエンス社製デジタルマイクロスコープVHX-6000を用いた。二値化処理にはニレコ社製LUSEX-APを用いた。
(2)「メンディングテープ」(住友3M社製:No.810-3-12)を画像に軽く貼り付けた。
(3)1kPaの圧力でテープの上を3.5往復擦り付けた。
(4)180度の角度、200gの力でテープを剥がした。
(5)テープを剥がした後の画像について、キーエンス社製デジタルマイクロスコープVHX-6000を用いて倍率100倍で写真を撮影した。撮影した画像に対して、ニレコ社製LUSEX-APにて、二値化処理を行った。
(6)テープ剥離前後の二値化処理した画像から、それぞれニス層の面積を求めた。テープ剥離前後のニス層の面積から、下記式によりニス層剥離率を算出した。
ニス層剥離率[%]=(A-B)/A×100
A:テープ剥離前のニス層の面積
B:テープ剥離後のニス層の面積
(7)下記評価基準に基づいて密着性を評価した。A及びBを合格レベルとした。評価結果は表VIに示すとおりであった。
【0221】
(評価基準)
A:ニス層剥離率が、0%である。
B:ニス層剥離率が、5%未満である。
C:ニス層剥離率が、5%以上30%未満である。
D:ニス層剥離率が、30%以上である。
【0222】
[画像分離性の評価]
記録媒体(金藤、坪量:85g/m2、T目、王子製紙社製)を常温常湿環境(温度23℃、湿度50%RH)において一晩放置して調湿した。この記録媒体に上記カラー複合機を用い常温常湿環境(温度23℃、湿度50%RH)において全面ベタ画像を出力する試験を行った。定着温度は、上ベルトを195℃とし、下ローラーを90℃とした。トナー付着量は8.0g/m2とした。定着器のニップ圧は238kPaとした。ニップ時間は25ミリ秒(プロセス速度480mm/sec)又は20ミリ秒(プロセス速度600mm/sec)とした。先端余白を8mm、7mm、6mm・・・と1mm単位で減少させるよう変化させながら、紙詰まり(ジャム)が発生するまで全面ベタ画像の出力を繰り返し行った。表VIに、紙詰まり(ジャム)が発生しなかった最小の先端余白[mm]を示す。当該値が小さい程、定着分離性に優れることを示す。先端余白が6mm以上となってしまう場合は不合格である。
【0223】
【0224】
上記の結果から、本発明のトナーは、定着ローラーとの十分な分離性を持ちつつ、ニスの塗布性及びニスとの密着性が良好な画像を形成できることが確認できた。