IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アズビル株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-速度測定装置及び速度測定方法 図1
  • 特開-速度測定装置及び速度測定方法 図2
  • 特開-速度測定装置及び速度測定方法 図3
  • 特開-速度測定装置及び速度測定方法 図4
  • 特開-速度測定装置及び速度測定方法 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170801
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】速度測定装置及び速度測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01P 3/36 20060101AFI20241204BHJP
   G01B 11/26 20060101ALI20241204BHJP
【FI】
G01P3/36 A
G01B11/26 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087530
(22)【出願日】2023-05-29
(71)【出願人】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】藤原 久利
(72)【発明者】
【氏名】古谷 雅
【テーマコード(参考)】
2F065
【Fターム(参考)】
2F065AA06
2F065AA31
2F065BB15
2F065FF04
2F065FF44
2F065HH12
2F065HH14
2F065JJ26
2F065MM02
2F065QQ25
2F065QQ38
2F065RR06
(57)【要約】
【課題】測定対象物に対して適正に配置されているか否かを把握できる速度測定装置を提供する。
【解決手段】第1の入射角θ1で第1の光を測定対象物10に照射するための第1の照明光学系31Aと、絶対値が第1の入射角と同じで符号が逆の第2の入射角θ2で第2の光を測定対象物10に照射するための第2の照明光学系31Bと、第1の光又は第2の光を照射された測定対象物からの反射光を受光する受光光学系40と、受光光学系40を通過した反射光を受光する光検出器アレイ50と、第1の光を照射したときの反射光の強度と、第2の光を照射したときの反射光の強度と、の差に基づき、受光光学系40の光軸の、測定対象物10の法線からのズレαを測定するズレ測定部301と、光検出器アレイ50で受光された反射光に基づき、測定対象物の速度を測定する速度測定部302と、を備える速度測定装置。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の入射角で第1の光を測定対象物に照射するための第1の照明光学系と、
絶対値が前記第1の入射角と同じで符号が逆の第2の入射角で第2の光を前記測定対象物に照射するための第2の照明光学系と、
前記第1の光又は前記第2の光を照射された前記測定対象物からの反射光を受光する受光光学系と、
前記受光光学系を通過した前記反射光を受光する光検出器アレイと、
前記第1の光を照射したときに前記光検出器アレイで受光された前記反射光の強度と、前記第2の光を照射したときに前記光検出器アレイで受光された前記反射光の強度と、の差に基づき、前記受光光学系の光軸の、前記測定対象物の法線からのズレを測定するズレ測定部と、
前記光検出器アレイで受光された前記反射光に基づき、前記測定対象物の速度を測定する速度測定部と、
を備える、速度測定装置。
【請求項2】
前記受光光学系の光軸の、前記測定対象物の法線からのズレがない場合、前記第1の光を照射したときに前記光検出器アレイで受光された前記反射光の強度と、前記第2の光を照射したときに前記光検出器アレイで受光された前記反射光の強度と、の差が0になるよう、前記第1の照明光学系、前記第2の照明光学系、及び受光光学系が配置されている、請求項1に記載の速度測定装置。
【請求項3】
前記受光光学系の光軸の、前記測定対象物の法線からのズレを出力する出力装置をさらに備える、請求項1に記載の速度測定装置。
【請求項4】
前記速度測定部が、前記光検出器アレイで受光された前記反射光を空間フィルタリングして得られる信号の周波数に基づき、前記測定対象物の速度を測定する、請求項1に記載の速度測定装置。
【請求項5】
前記速度測定部が、第1の時間において前記光検出器アレイで撮像された前記反射光による第1の光分布と、第2の時間において前記光検出器アレイで撮像された前記反射光による第2の光分布と、を比較して、前記第1の時間から前記第2の時間の間における前記測定対象物の移動量を算出し、前記移動量に基づき、前記測定対象物の速度を測定する、請求項1に記載の速度測定装置。
【請求項6】
第1の入射角で第1の光を測定対象物に照射するための第1の照明光学系と、絶対値が前記第1の入射角と同じで符号が逆の第2の入射角で第2の光を前記測定対象物に照射するための第2の照明光学系と、前記第1の光又は前記第2の光を照射された前記測定対象物からの反射光を受光する受光光学系と、前記受光光学系を通過した前記反射光を受光する光検出器アレイと、を備える速度測定装置を用意することと、
前記第1の光を照射したときに前記光検出器アレイで受光された前記反射光の強度と、前記第2の光を照射したときに前記光検出器アレイで受光された前記反射光の強度と、の差に基づき、前記受光光学系の光軸の、前記測定対象物の法線からのズレを測定することと、
前記光検出器アレイで受光された前記反射光に基づき、前記測定対象物の速度を測定することと、
を含む、速度測定方法。
【請求項7】
前記受光光学系の光軸の、前記測定対象物の法線からのズレがない場合、前記第1の光を照射したときに前記光検出器アレイで受光された前記反射光の強度と、前記第2の光を照射したときに前記光検出器アレイで受光された前記反射光の強度と、の差が0になるよう、前記第1の照明光学系、前記第2の照明光学系、及び受光光学系が配置されている、請求項6に記載の速度測定方法。
【請求項8】
前記受光光学系の光軸の、前記測定対象物の法線からのズレを出力することをさらに含む、請求項6に記載の速度測定方法。
【請求項9】
前記受光光学系の光軸の、前記測定対象物の法線からのズレがなくなるよう、前記受光光学系の光軸の方向を補正することをさらに含む、請求項6に記載の速度測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、速度測定装置及び速度測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
測定対象物の移動速度を非接触で測定する方法が提案されている。非特許文献1は、測定対象の不規則な模様を空間フィルタに投影し、光電変換して得られた信号から特定の周期信号を抽出して、測定対象物の速度を求めることを記載している。特許文献1は、測定対象物の基準画像データと測定画像データに共通する注目部分を抽出比較して、基準画像と測定画像のずれ量を求めることにより、測定対象の変位量を算出する変位測定装置を記載している。特許文献1に記載の方法は、パターンマッチング法とも呼ばれる。特許文献2は、物体までの距離と傾き角度を検出する方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-241919号公報
【特許文献2】特開平11-257917号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Yoshihisa Aizu, Toshimitsu Asakura, Spatial Filtering Velocimetry: Fundamentals and Applications (Springer Series in Optical Sciences, 116), 2006
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、測定対象物に対して適正に配置されているか否かを把握できる速度測定装置及び速度測定方法を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様に係る速度測定装置は、第1の入射角で第1の光を測定対象物に照射するための第1の照明光学系と、絶対値が第1の入射角と同じで符号が逆の第2の入射角で第2の光を測定対象物に照射するための第2の照明光学系と、第1の光又は第2の光を照射された測定対象物からの反射光を受光する受光光学系と、受光光学系を通過した反射光を受光する光検出器アレイと、第1の光を照射したときに光検出器アレイで受光された反射光の強度と、第2の光を照射したときに光検出器アレイで受光された反射光の強度と、の差に基づき、受光光学系の光軸の、測定対象物の法線からのズレを測定するズレ測定部と、光検出器アレイで受光された反射光に基づき、測定対象物の速度を測定する速度測定部と、を備える。
【0007】
上記の速度測定装置において、第1の光の強度と第2の光の強度が同じであってもよい。
【0008】
上記の速度測定装置において、受光光学系の光軸の、測定対象物の法線からのズレがない場合、第1の光を照射したときに光検出器アレイで受光された反射光の強度と、第2の光を照射したときに光検出器アレイで受光された反射光の強度と、の差が0になるよう、第1の照明光学系、第2の照明光学系、及び受光光学系が配置されていてもよい。
【0009】
上記の速度測定装置が、受光光学系の光軸の、測定対象物の法線からのズレを出力する出力装置をさらに備えていてもよい。
【0010】
上記の速度測定装置において、速度測定部が、光検出器アレイで受光された反射光を空間フィルタリングして得られる信号の周波数に基づき、測定対象物の速度を測定してもよい。
【0011】
上記の速度測定装置において、速度測定部が、第1の時間において光検出器アレイで撮像された反射光による第1の光分布と、第2の時間において光検出器アレイで撮像された反射光による第2の光分布と、を比較して、第1の時間から第2の時間の間における測定対象物の移動量を算出し、移動量に基づき、測定対象物の速度を測定してもよい。
【0012】
本発明の態様に係る速度測定方法は、第1の入射角で第1の光を測定対象物に照射するための第1の照明光学系と、絶対値が第1の入射角と同じで符号が逆の第2の入射角で第2の光を測定対象物に照射するための第2の照明光学系と、第1の光又は第2の光を照射された測定対象物からの反射光を受光する受光光学系と、受光光学系を通過した反射光を受光する光検出器アレイと、を備える速度測定装置を用意することと、第1の光を照射したときに光検出器アレイで受光された反射光の強度と、第2の光を照射したときに光検出器アレイで受光された反射光の強度と、の差に基づき、受光光学系の光軸の、測定対象物の法線からのズレを測定することと、光検出器アレイで受光された反射光に基づき、測定対象物の速度を測定することと、を含む。
【0013】
上記の速度測定方法において、受光光学系の光軸の、測定対象物の法線からのズレがない場合、第1の光を照射したときに光検出器アレイで受光された反射光の強度と、第2の光を照射したときに光検出器アレイで受光された反射光の強度と、の差が0になるよう、第1の照明光学系、第2の照明光学系、及び受光光学系が配置されていてもよい。
【0014】
上記の速度測定方法が、受光光学系の光軸の、測定対象物の法線からのズレを出力することをさらに含んでいてもよい。
【0015】
上記の速度測定方法が、受光光学系の光軸の、測定対象物の法線からのズレがなくなるよう、受光光学系の光軸の方向を補正することをさらに含んでいてもよい。
【0016】
上記の速度測定方法において、光検出器アレイで受光された反射光を空間フィルタリングして得られる信号の周波数に基づき、測定対象物の速度を測定してもよい。
【0017】
上記の速度測定方法において、第1の時間において光検出器アレイで撮像された反射光による第1の光分布と、第2の時間において光検出器アレイで撮像された反射光による第2の光分布と、を比較して、第1の時間から第2の時間の間における測定対象物の移動量を算出し、移動量に基づき、測定対象物の速度を測定してもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、測定対象物に対して適正に配置されているか否かを把握できる速度測定装置及び速度測定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、実施形態に係る速度測定装置を示す模式的側面図である。
図2図2は、実施形態に係る受光光学系の光軸の、測定対象物の法線からのズレと、測定対象物からの反射光の強度と、の関係を示す模式的なグラフである。
図3図3は、実施形態に係る受光光学系の光軸の、測定対象物の法線からのズレと、第1の光の反射光の強度と第2の光の反射光の強度の差と、の関係を示す模式的なグラフである。
図4図4は、実施形態に係る速度測定装置が備える回路の模式図である。
図5図5は、実施形態に係る速度測定装置のタイミングチャートの例である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。ただし、図面は模式的なものである。したがって、具体的な寸法等は以下の説明を照らし合わせて判断するべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0021】
実施形態に係る速度測定装置は、図1に示すように、第1の入射角θ1で第1の光を測定対象物10に照射するための第1の照明光学系31Aと、絶対値が第1の入射角と同じで符号が逆の第2の入射角θ2(=-θ1)で第2の光を測定対象物10に照射するための第2の照明光学系31Bと、第1の光又は第2の光を照射された測定対象物からの反射光を受光する受光光学系40と、受光光学系40を通過した反射光を受光する光検出器アレイ50と、を備える。
【0022】
実施形態に係る速度測定装置は、さらに、第1の光を照射したときに光検出器アレイ50で受光された反射光の強度と、第2の光を照射したときに光検出器アレイ50で受光された反射光の強度と、の差に基づき、受光光学系40の光軸の、測定対象物10の法線からのズレαを測定するズレ測定部301と、光検出器アレイ50で受光された反射光に基づき、測定対象物の速度を測定する速度測定部302と、を備える。ズレ測定部301と速度測定部302は、例えば、中央演算処理装置(CPU)300に含まれる。
【0023】
測定対象物10の表面には微細な凹凸があってもよい。測定対象物10の表面には模様があってもよい。測定対象物10は、被測定面に対して平行に移動する。測定対象物10は、速度測定装置に対して相対的に移動する。例えば、速度測定装置が静置され、測定対象物10が移動してもよいし、測定対象物10が静置され、速度測定装置が移動してもよい。速度測定装置が静置され、測定対象物10が移動する場合、測定対象物10の例としては、フィルム、及び不織布等が挙げられるが、特に限定されない。測定対象物10が静置され、速度測定装置が移動する場合、測定対象物10の例としては、路面が挙げられるが、特に限定されない。
【0024】
第1の照明光学系31Aは、測定対象物10に第1の光を照射する第1の光源30Aを備えていてもよい。第2の照明光学系31Bは、測定対象物10に第2の光を照射する第2の光源30Bを備えていてもよい。第1の光源30Aが発する第1の光の強度と、第2の光源30Bが発する第2の光の強度と、は、例えば、同じである。第1の光の強度と第2の光の強度は、例えば、一定である。第1の光源30A及び第2の光源30Bとしては、レーザー及び発光ダイオード(LED)が使用可能であるが、特に限定されない。第1の光源30A及び第2の光源30Bは点光源であってもよいし、面光源であってもよい。
【0025】
第1の照明光学系31Aは、例えば、第1の光源30Aが発した第1の光を平行光にする第1のレンズ32Aを備えていてもよい。第1の照明光学系31Aの光軸は、測定対象物10と斜めに交わる。第2の照明光学系31Bは、例えば、第2の光源30Bが発した第2の光を平行光にする第2のレンズ32Bを備えていてもよい。第2の照明光学系31Bの光軸は、測定対象物10と斜めに交わる。測定対象物10に到達したときの第1の光の強度と、測定対象物10に到達したときの第2の光の強度と、は、例えば、同じである。
【0026】
受光光学系40は、例えば、測定対象物10からの反射光を集光するレンズ41と、レンズ41で集光された反射光を平行光にするレンズ42と、を備えていてもよい。第1の照明光学系31Aの光軸と、受光光学系40の光軸と、は、非平行であり、一点で交わる。また、第2の照明光学系31Bの光軸と、受光光学系40の光軸と、は、非平行であり、一点で交わる。受光光学系40の光軸は、好ましくは、測定対象物10と直角に交わり、測定対象物10の表面の法線と平行である。
【0027】
受光光学系40の光軸の方向が測定対象物10の表面の法線の方向からズレると、光検出器アレイ50における測定対象物10の像の倍率が位置によって変化し得る。像の倍率が位置によって変化すると、測定対象物10の速度の正確な測定が妨げられ得る。また、受光光学系40の光軸の方向が測定対象物10の表面の法線の方向からズレると、受光光学系40の被写界深度が、測定対象物10の位置によって変化し得る。測定対象物10の一部が被写界深度から外れると、後述する空間フィルタ法に用いられる光検出器アレイ50から出力される周波数信号が低下し、S/N比が低下して、速度の測定誤差が大きくなり得る。
【0028】
光検出器アレイ50は、例えば、縞状に配置された複数の光検出器を備える。複数の光検出器のそれぞれは、画素であり得る。複数の光検出器のそれぞれは、フォトダイオード等の光電変換素子であり得る。縞状に配置された複数の光検出器が、空間フィルタをなしていてもよい。
【0029】
例えば、測定対象物10の表面が完全拡散面であり、測定対象物10からの反射光がランバート分布に従う場合、反射光の強度は、測定対象物10に照射された光の入射角のコサイン関数で与えられる。なお、測定対象物10の表面が完全拡散面でなくとも、反射光の強度は、コサイン関数に近似し得る。測定対象物10の法線と受光光学系40の光軸がなす角度αに対して、光検出器アレイ50で受光される第1の光の反射光の強度I1の分布と、光検出器アレイ50で受光される第2の光の反射光の強度I2の分布と、は、図2に示すように、0°の角度αを挟んで対称になる。
【0030】
そのため、第1の光の反射光の強度I1と第2の光の反射光の強度I2の差I1-I2は、図3に示すように、角度αが0°のときに0になり、角度αの絶対値が大きくなるほど、I1-I2の絶対値は大きくなる。したがって、I1-I2が0であることは、受光光学系40の光軸が測定対象物10の法線と平行であることを示す。I1-I2の絶対値の大きさは、受光光学系40の光軸の、測定対象物10の法線からのズレαの大きさを示す。
【0031】
図1に示すズレ測定部301は、第2の光源30Bを点灯せずに第1の光源30Aを点灯する。この場合、光検出器アレイ50は、第1の光の反射光の強度I1の信号を出力する。また、ズレ測定部301は、第1の光源30Aを点灯せずに第2の光源30Bを点灯する。この場合、光検出器アレイ50は、第2の光の反射光の強度I2の信号を出力する。ズレ測定部301は、第1の光の反射光の強度I1と第2の光の反射光の強度I2の差ID(=I1-I2)を受信する。
【0032】
ズレ測定部301は、例えば、下記(1)式に示すような、第1の光の反射光の強度I1と第2の光の反射光の強度I2の差IDと、受光光学系40の光軸の、測定対象物10の法線からのズレαと、の関係を記憶する。
α=f(ID) (1)
ズレ測定部301は、例えば、(1)式に示す関係と、第1の光の反射光の強度I1と第2の光の反射光の強度I2の差IDの測定値と、に基づいて、受光光学系40の光軸の、測定対象物10の法線からのズレαの測定値を算出する。
【0033】
ズレ測定部301は、例えば、受光光学系40の光軸の、測定対象物10の法線からのズレαを、出力装置402に出力する。出力装置402としては、例えば、表示装置が使用可能である。出力装置402に出力されたズレに基づいて、当該ズレがなくなるよう、測定対象物10に対する受光光学系40の光軸の方向を補正することにより、測定対象物10の速度を正確に測定することが可能である。
【0034】
実施形態に係る速度測定装置は、光検出器アレイ50とズレ測定部301の間に、図4に示すズレ測定用回路500を備えていてもよい。ズレ測定用回路500は、光検出器アレイ50から、第1の光の反射光の強度I1の信号又は第2の光の反射光の強度I2の信号を受信する増幅器501を備える。増幅器501には、スイッチSW1を介して、第1の光の反射光の強度I1の信号が入力される第1のサンプル&ホールド回路502と、
第2の光の反射光の強度I2の信号が入力される第2のサンプル&ホールド回路503が接続されている。
【0035】
第1のサンプル&ホールド回路502の出力は、スイッチSW2を介してオペアンプ504に接続されている。第2のサンプル&ホールド回路503の出力は、スイッチSW3を介してオペアンプ504に接続されている。オペアンプ504の出力には、スイッチSW4を介して増幅器506が接続されている。
【0036】
ズレ測定用回路500の動作を、図5に示すタイミングチャートを参照して説明する。ズレ測定部301は、第2の光源30Bを点灯せずに第1の光源30Aを点灯する。さらに、ズレ測定部301は、スイッチSW1を第1のサンプル&ホールド回路502に接続し、スイッチSW2を接続し、スイッチSW3を接続し、スイッチSW4を切断する。これにより、第1のサンプル&ホールド回路502に、第1の光の反射光の強度I1の信号が入力され、コンデンサ521に第1の光の反射光の強度I1の信号が蓄積、保持される。
【0037】
次に、ズレ測定部301は、第1の光源30Aを消灯し、スイッチSW1を第2のサンプル&ホールド回路503に接続し、スイッチSW3を、抵抗を介してグランドに接続する。これにより、第2のサンプル&ホールド回路503のコンデンサ531に保持されていた信号が消失する。
【0038】
ズレ測定部301は、第1の光源30Aを点灯せずに第2の光源30Bを点灯する。さらに、ズレ測定部301は、スイッチSW3を接続する。これにより、第2のサンプル&ホールド回路503に、第2の光の反射光の強度I2の信号が入力され、コンデンサ531に第2の光の反射光の強度I2の信号が蓄積、保持される。
【0039】
次に、ズレ測定部301は、スイッチSW4を接続する。これにより、第1の光の反射光の強度I1の信号と第2の光の反射光の強度I2の信号の差分信号SDが、オペアンプ504から増幅器506に出力され、増幅器506で増幅された差分信号SDは、ズレ測定部301に出力される。また、差分信号SDは、コンデンサ505に蓄積される。次に、ズレ測定部301は、スイッチSW4を切断する。これにより、コンデンサ505に差分信号SDが保持される。
【0040】
次に、ズレ測定部301は、第2の光源30Bを消灯し、スイッチSW1を第1のサンプル&ホールド回路502に接続し、スイッチSW2を、抵抗を介してグランドに接続する。これにより、コンデンサ521に保持されていた信号が消失する。ズレ測定部301は、差分信号SDを再度取得する場合は、ズレ測定用回路500に上記の動作を繰り返させる。
【0041】
図1に示す速度測定部302が速度を測定する際、第1の光源30Aのみを点灯してもよいし、第2の光源30Bのみを点灯してもよいし、第1の光源30A及び第2の光源30Bを点灯してもよい。
【0042】
速度測定部302は、空間フィルタ法により、測定対象物10の速度を測定してもよい。速度測定部302は、光検出器アレイ50の縞状に並んでいる複数の光検出器のうち、例えば奇数番号の光検出器から出力された信号SOと、偶数番号の光検出器から出力された信号SEと、の差分信号を受信する。
【0043】
奇数番号の光検出器から出力された信号SOの周波数は、測定対象物10の速度と、奇数番号の光検出器のピッチに比例する。偶数番号の光検出器から出力された信号SEの周波数は、奇数番号の光検出器から出力された信号SOの周波数と同じであり、偶数番号の光検出器から出力された信号SEの位相は、奇数番号の光検出器から出力された信号SOの位相の逆相である。
【0044】
奇数番号の光検出器から出力された信号SOと、偶数番号の光検出器から出力された信号SEと、の差分信号においては、奇数番号の光検出器から出力された信号SOが含むバイアス成分と、偶数番号の光検出器から出力された信号SEが含むバイアス成分が除去される。また、差分信号の振幅は、奇数番号の光検出器から出力された信号SOの振幅の2倍であり、偶数番号の光検出器から出力された信号SEの振幅の2倍である。
【0045】
速度測定部302は、例えば、差分信号を所定の時間蓄積し、蓄積した差分信号を高速フーリエ変換(FFT)処理して、周波数スペクトル(振幅スペクトル)を算出する。周波数スペクトルにおいて、ゼロ付近を除いて振幅のピークを与える正の周波数が、差分信号の周波数Fである。なお、スペクトルはパワースペクトルでもよい。
【0046】
速度測定部302は、例えば下記(2)式を用いて、測定対象物10の速度V1を算出する。
V1=FP/M (2)
ここで、Pは、奇数番号の光検出器のピッチであり、偶数番号の光検出器のピッチである。Mは、受光光学系40による倍率である。なお、速度V1の算出には、信号の周波数Fの代わりに信号の周期を用いてもよい。
【0047】
速度測定部302は、パターンマッチング法により、測定対象物10の速度を測定してもよい。パターンマッチング法の例としては、特開2000-221139号公報に記載されている位相限定相関法が挙げられる。速度測定部302は、例えば、光検出器アレイ50が検出した反射光による光強度の分布を取得する。
【0048】
速度測定部302は、第1の時間に光検出器アレイ50が検出した反射光による光強度の分布を、第1の光分布として、記憶する。第1の光分布は、例えば、f1(x)と表される。ここで、xは、光検出器アレイ50が備える複数の光検出器の番号又は位置である。第1の光分布は、画像であり得る。また、光検出器アレイ50は、第1の時間より後の第2の時間に光検出器アレイ50が検出した反射光による光強度の分布を、第2の光分布として記憶する。第2の光分布は、例えば、f2(x)と表される。第2の光分布は、画像であり得る。
【0049】
速度測定部302は、第1の光分布と第2の光分布に共通する共通部分を比較し、第1の光分布から第2の光分布への共通部分の移動量を算出する。共通部分は、特徴部分であり得る。例えば、速度測定部302は、第1の光分布f1(x)を離散フーリエ変換処理し、第1のフーリエ変換データF1(u)を算出する。ここで、uは、空間周波数である。また、速度測定部302は、第2の光分布f2(x)を離散フーリエ変換処理し、第2のフーリエ変換データF2(u)を算出する。さらに、速度測定部302は、下記(3)式に示すように、第1のフーリエ変換データF1(u)と第2のフーリエ変換データF2(u)を合成して、第3のフーリエ変換データF3(u)を算出する。
F3(u)=F1*(u)・F2(u) (3)
*は、複素共役を表す。
【0050】
速度測定部302は、第3のフーリエ変換データF3(u)を位相限定処理し、下記(4)式で与えられる第4のフーリエ変換データF4(u)を算出する。
F4(u)=F3(u)/|F3(u)| (4)
これにより、第3のフーリエ変換データF3(u)の全ての周波数における振幅を1として、位相のみを表す第4のフーリエ変換データF4(u)が得られる。
【0051】
速度測定部302は、第4のフーリエ変換データF4(u)を逆フーリエ変換し、逆フーリエ変換データf4(x)を算出する。逆フーリエ変換データf4(x)におけるピークの位置xは、第1の光分布f1(x)から第2の光分布f2(x)への共通部分の移動量に該当し、共通部分の移動量は、第1の時間から第2の時間の間における測定対象物10の移動量に該当する。速度測定部302は、第1の時間から第2の時間の間における測定対象物10の移動量を、第1の時間から第2の時間までの経過時間で除して、測定対象物10の速度を算出する。
【0052】
上記のように本発明を実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす記述及び図面はこの発明を限定するものであると理解するべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかになるはずである。例えば、速度測定部302が、空間フィルタ法により測定対象物10の速度を測定する場合、奇数番号の光検出器から出力された信号SOと、偶数番号の光検出器から出力された信号SEと、の差分信号の周波数を算出し、差分信号の周波数に基づいて、測定対象物10の速度V1を算出する例を説明した。
【0053】
これに対し、差分信号を算出せず、奇数番号の光検出器から出力された信号SOのみに基づいて信号の周波数を算出し、当該信号の周波数に基づいて、測定対象物10の速度V1を算出してもよい。あるいは、偶数番号の光検出器から出力された信号SEのみに基づいて信号の周波数を算出し、当該信号の周波数に基づいて、測定対象物10の速度V1を算出してもよい。ただし、差分信号を用いたほうが、バイアス成分が除去されるため、測定精度は高くなる。
【0054】
また、光検出器アレイ50に拡散反射光が到達し、正反射光が到達しないようにしてもよい。例えば、第1の照明光学系31A、第2の照明光学系31B、及び受光光学系40のそれぞれに偏光板を配置してもよい。ここで、第1の照明光学系31A及び第2の照明光学系31Bに配置する偏光板の偏光軸と、受光光学系40に配置する偏光板の偏光軸が、直交するよう、偏光板は配置される。これにより、直線偏光である正反射光は受光光学系40に配置された偏光板を通過することができず、非偏光である拡散反射光は受光光学系40に配置された偏光板を通過して、光検出器アレイ50に到達する。このように、本発明はここでは記載していない様々な実施形態等を包含するということを理解すべきである。
【符号の説明】
【0055】
10・・・測定対象物、30A・・・第1の光源、30B・・・第2の光源、31A・・・第1の照明光学系、31B・・・第2の照明光学系、32A・・・レンズ、32B・・・レンズ、40・・・受光光学系、41・・・レンズ、42・・・レンズ、50・・・光検出器アレイ、301・・・ズレ測定部、302・・・速度測定部、402・・・出力装置、500・・・ズレ測定用回路、501・・・増幅器、502・・・サンプル&ホールド回路、503・・・サンプル&ホールド回路、504・・・オペアンプ、505・・・コンデンサ、506・・・増幅器、521・・・コンデンサ、531・・・コンデンサ
図1
図2
図3
図4
図5