(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024017082
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】回転機における冷却液流路のシール構造
(51)【国際特許分類】
H02K 5/10 20060101AFI20240201BHJP
H02K 5/20 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
H02K5/10 Z
H02K5/20
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022119481
(22)【出願日】2022-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100116001
【弁理士】
【氏名又は名称】森 俊秀
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(72)【発明者】
【氏名】大石 貴彦
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 洋平
【テーマコード(参考)】
5H605
【Fターム(参考)】
5H605AA01
5H605BB01
5H605BB05
5H605BB14
5H605BB17
5H605CC01
5H605CC02
5H605CC10
5H605DD01
5H605DD05
5H605DD13
5H605DD32
5H605EB10
5H605EB16
5H605EB34
(57)【要約】
【課題】回転機における冷却液流路のシール性を確保するとともに回転機の性能を維持しながら、回転機の体格や重量を低減できるとともに、冷却性能を向上させることができる回転機における冷却液流路のシール構造を提供する。
【解決手段】モータ1における円筒状のフレーム2の壁厚部2a内に設けられ、フレーム2の軸線方向の少なくとも一方に開放しかつモータ1を冷却するための冷却液が流れる冷却液流路10に対し、開放部分であるリング凹部20をシールする冷却液流路のシール構造であって、フレーム2の軸線方向の両端面のうち、少なくとも一方に接合され、冷却液流路10のリング凹部20を覆うブラケット3を備えており、ブラケット3は、フレーム2側に突出し、冷却液流路10のリング凹部20に嵌合するインロー凸部21を有している。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転機における円筒状の外周壁の壁厚部内に設けられ、当該外周壁の軸線方向の少なくとも一方に開放しかつ前記回転機を冷却するための冷却液が流れる冷却液流路に対し、開放部分をシールする冷却液流路のシール構造であって、
前記外周壁の軸線方向の両端面のうち、前記少なくとも一方に接合され、前記冷却液流路の開放部分を覆うカバー部材を備えており、
前記カバー部材は、前記外周壁側に突出し、前記冷却液流路の開放部分に嵌合するインロー凸部を有していることを特徴とする回転機における冷却液流路のシール構造。
【請求項2】
前記冷却液流路の開放部分は、前記外周壁の径方向に所定長さの幅を有するリング状に形成されたリング凹部を有しており、
前記インロー凸部は、前記外周壁の径方向に前記所定長さよりも短い幅を有するリング状に形成され、前記リング凹部の径方向の内周面に密着した状態で、当該リング凹部に嵌合することを特徴とする請求項1に記載の回転機における冷却液流路のシール構造。
【請求項3】
前記カバー部材と前記外周壁との接合面には、前記リング凹部の径方向における内側の第1所定領域に、液状ガスケットが塗布されており、
前記カバー部材は、当該カバー部材の前記接合面において、径方向における前記第1所定領域の外側でかつ前記インロー凸部の直ぐ内側に、前記第1所定領域に塗布された液状ガスケットが前記リング凹部に浸入するのを阻止するための第1シール溜まり溝を有していることを特徴とする請求項2に記載の回転機における冷却液流路のシール構造。
【請求項4】
前記カバー部材と前記外周壁との接合面には、前記リング凹部の径方向における外側の第2所定領域に、液状ガスケットが塗布されており、
前記外周壁は、当該外周壁の前記接合面において、径方向における前記リング凹部の外側でかつ前記第2所定領域の内側に、前記第2所定領域に塗布された液状ガスケットが前記リング凹部に浸入するのを阻止するための第2シール溜まり溝を有していることを特徴とする請求項3に記載の回転機における冷却液流路のシール構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車の駆動用のモータや発電機など、各種の回転機に適用され、その回転機を冷却するための冷却液が流れる冷却液流路のシール構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の冷却液流路のシール構造として、例えば特許文献1に記載された回転電機に適用されたものが知られている。この回転電機は、車両に搭載される発電機として使用されるものであり、ほぼ円筒状に形成されたハウジングと、このハウジング内の内周面に固定されたステータと、ステータの内側に回転自在に設けられたロータと、ハウジングの軸線方向の前側及び後側にそれぞれ配置されたフロントブラケット及びリアブラケットと、ロータと一体に回転するように設けられ、フロントブラケットから前方に突出する回転軸とを備えている。
【0003】
上記のハウジングには、その壁厚部内に、回転電機を冷却するための冷却液が流れる冷却通路が設けられている。この冷却通路は、ハウジングの周方向に沿って帯状に延び、ハウジングの壁厚部内を1周する環状に形成されている。また、ハウジングにおいて、その軸線方向における冷却通路の前端部が閉塞される一方、冷却通路の後端部が後方に開放されている。そして、この冷却通路の後端部における環状の開放部分(以下、本欄において「環状開放部」という)が、リアブラケット及びシール材によって密閉されている。
【0004】
具体的には、ハウジングの後端面には、環状開放部の径方向における内側及び外側に、シール材がそれぞれ配置されるとともに、リアブラケットが、内側及び外側の両シール材に密着し、かつ、環状開放部を覆った状態で取り付けられる。これにより、冷却通路の後端部における環状開放部が水密状態でシールされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した回転電機に適用された冷却通路のシール構造では、ハウジングの後端面において、環状開放部の径方向の内側及び外側に、シール材を収容するためのシール溝が形成されている。これらのシール溝は通常、冷却通路の環状開放部から、径方向にある程度の距離を隔てて形成される。特に、ハウジングの後端面の内径が、ステータが固定されたハウジングの内周面の直径と同じである場合、環状開放部よりも内側に形成されるシール溝は、ハウジングの後端面の内径からも、径方向にある程度の距離を隔てて形成される。
【0007】
しかし、ハウジングの後端面において、上記のようなシール溝を環状開放部の径方向の内外に形成する場合、ハウジングの壁厚が厚くなり、その分、回転電機の体格や重量が大きくなってしまう。特に、冷却通路の径方向の内側におけるハウジングの壁厚が厚くなると、冷却通路とステータとの距離が長くなり、それにより、冷却性能が低下してしまうことがある。
【0008】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたものであり、回転機における冷却液流路のシール性を確保するとともに回転機の性能を維持しながら、回転機の体格や重量を低減できるとともに、冷却性能を向上させることができる回転機における冷却液流路のシール構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、請求項1に係る発明は、回転機における円筒状の外周壁の壁厚部内に設けられ、外周壁の軸線方向の少なくとも一方に開放しかつ回転機を冷却するための冷却液が流れる冷却液流路に対し、開放部分をシールする冷却液流路のシール構造であって、外周壁の軸線方向の両端面のうち、少なくとも一方に接合され、冷却液流路の開放部分を覆うカバー部材を備えており、カバー部材は、外周壁側に突出し、冷却液流路の開放部分に嵌合するインロー凸部を有していることを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、回転機における円筒状の外周壁の壁厚部内に、回転機を冷却するための冷却液が流れる冷却液流路が設けられている。また、この冷却液流路は、外周壁の軸線方向の少なくとも一方に開放しており、その開放部分が、外周壁の軸線方向の端面に接合されるカバー部材で覆われている。さらに、このカバー部材は、外周壁側に突出するインロー凸部を有しており、このインロー凸部が、冷却液流路の開放部分に嵌合する。このように、カバー部材のインロー凸部が、冷却液流路の開放部分に嵌合した状態で、外周壁の端面にカバー部材が接合されるので、その接合の際に、カバー部材と外周壁とを芯出ししながら容易に組み付けることができるとともに、例えば冷却液流路の開放部分を平坦面で覆う場合に比べて、冷却液流路の開放部分のシール性を高めることができる。そして、冷却液流路の開放部分のシール性を確保するとともに回転機の性能を維持しながら、外周壁の壁厚部の厚さを薄くすることが可能であり、それにより、回転機の体格や重量を低減できるとともに、冷却性能を向上させることができる。
【0011】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の回転機における冷却液流路のシール構造において、冷却液流路の開放部分は、外周壁の径方向に所定長さの幅を有するリング状に形成されたリング凹部を有しており、インロー凸部は、外周壁の径方向に所定長さよりも短い幅を有するリング状に形成され、リング凹部の径方向の内周面に密着した状態で、リング凹部に嵌合することを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、冷却液流路の開放部分が、径方向に所定長さの幅を有するリング凹部を有する一方、カバー部材のインロー凸部が、所定長さの幅を有するリング凹部よりも短い幅を有するリング状に形成されている。これにより、インロー凸部がリング凹部と同じ幅を有する場合に比べて、インロー凸部の重量を低減でき、その分、回転機の重量を低減することができる。また、インロー凸部は、リング凹部の径方向の内周面に密着した状態で、そのリング凹部に嵌合するので、冷却液流路のリング凹部において、その径方向の内側のシール性を高めることができる。
【0013】
請求項3に係る発明は、請求項2に記載の回転機における冷却液流路のシール構造において、カバー部材と外周壁との接合面には、リング凹部の径方向における内側の第1所定領域に、液状ガスケットが塗布されており、カバー部材は、カバー部材の接合面において、径方向における第1所定領域の外側でかつインロー凸部の直ぐ内側に、第1所定領域に塗布された液状ガスケットがリング凹部に浸入するのを阻止するための第1シール溜まり溝を有していることを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、カバー部材と外周壁との接合面には、リング凹部の径方向における内側の第1所定領域に、液状ガスケットが塗布されるので、インロー凸部によるシール性と相まって、冷却液流路のリング凹部における径方向の内側のシール性を、より一層高めることができる。また、カバー部材の接合面には、径方向における第1所定領域の外側に、第1シール溜まり溝が設けられているので、カバー部材を外周壁に接合する際に、第1所定領域に塗布された液状ガスケットがリング凹部側に漏出したとしても、第1シール溜まり溝に流入することで、リング凹部への浸入が阻止される。これにより、第1所定領域に塗布された液状ガスケットがリング凹部に浸入するのを確実に防止することができる。さらに、上記の第1シール溜まり溝がインロー凸部の直ぐ内側に設けられるので、例えば、第1シール溜まり溝がインロー凸部から離れた位置に設けられる場合に比べて、冷却液流路の径方向の内側における外周壁の壁厚部の厚さを薄くすることが可能である。それにより、回転機における良好な冷却性能を確保することができる。
【0015】
請求項4に係る発明は、請求項3に記載の回転機における冷却液流路のシール構造において、カバー部材と外周壁との接合面には、リング凹部の径方向における外側の第2所定領域に、液状ガスケットが塗布されており、外周壁は、外周壁の接合面において、径方向におけるリング凹部の外側でかつ第2所定領域の内側に、第2所定領域に塗布された液状ガスケットがリング凹部に浸入するのを阻止するための第2シール溜まり溝を有していることを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、カバー部材と外周壁との接合面にはさらに、リング凹部の径方向における外側の第2所定領域に、液状ガスケットが塗布されるので、冷却液流路のリング凹部における径方向の外側のシール性を高めることができる。したがって、前述した第1所定領域に塗布された液状ガスケットと、第2所定領域に塗布された液状ガスケットとの協働により、冷却液流路のリング凹部における径方向のシール性を、より一層高めることができる。また、外周壁の接合面には、径方向におけるリング凹部の外側でかつ第2所定領域の内側に、第2シール溜まり溝が設けられているので、カバー部材を外周壁に接合する際に、第2所定領域に塗布された液状ガスケットがリング凹部側に漏出したとしても、第2シール溜まり溝に流入することで、リング凹部への浸入が阻止される。これにより、第2所定領域に塗布された液状ガスケットがリング凹部に浸入するのを確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態による冷却液流路のシール構造を適用したモータを示す外観斜視図である。
【
図2】(a)はシャフトを上方に突出させた姿勢でモータを垂直に切断したときの縦断面図、(b)は(a)の一点鎖線で囲まれた部分(ブラケットのインロー凸部及びその周囲)を拡大して示す図である。
【
図3】(a)及び(b)はそれぞれ、
図2(b)に示すブラケットとフレームであり、これらを互いに上下方向に分離した状態で立体的に示す図である。
【
図4】
図3に示すブラケットをフレームの上端面に接合したときの状態を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態による冷却液流路のシール構造を適用したモータの外観を示している。なお、このモータ1(回転機)は、例えば電気自動車の駆動用モータなどに使用されるものである。
【0019】
図1及び
図2(a)に示すように、モータ1は、円筒状に形成されたフレーム2(外周壁)と、このフレーム2の軸線方向(
図1及び
図2(a)の上下方向)の両端部にそれぞれ接合された2つのブラケット3及び4(カバー部材)と、両ブラケット3及び4に軸受3a及び4aを介して回転自在に支持されたシャフト5と一体に回転するロータ8と、このロータ8に隙間を存して対向し、フレーム2の内周面に固定されたステータ9などを備えている。両図に示すモータ1では、シャフト5がブラケット3から外方(上方)に突出している。
【0020】
なお、以下の説明では、
図1及び
図2(a)のシャフト5が突出側を上側とする一方、その反対側を下側とし、上記のブラケット3及び4をそれぞれ適宜、「上ブラケット3」及び「下ブラケット4」というものとする。
【0021】
フレーム2は、例えばアルミダイカストによって製造され、大部分が所定の内径及び外径、並びに比較的厚い壁厚部2aを有する円筒状に形成されている。また、フレーム2の軸線方向の上端部及び下端部にはそれぞれ、径方向に所定長さ突出する上フランジ6及び下フランジ7が設けられている。上フランジ6には、上ブラケット3をボルト止めするための複数(
図1では4つのみ図示)の取付孔6aが形成されている。同様に、下フランジ7にも、下ブラケット4をボルト止めするための複数(
図1では3つのみ図示)の取付孔7aが形成されている。
【0022】
また、フレーム2の壁厚部2a内には、モータ1を冷却するための所定の冷却水(冷却液)が流れる流路10(冷却液流路)が形成されている。この流路10は、所定の深さ(フレーム2の径方向における所定の厚さ)を有しかつフレーム2の周方向に沿って延びるとともに、フレーム2の上方及び下方に開放した状態で、壁厚部2a内に形成されている。
【0023】
また、
図1に示すように、流路10を有するフレーム2の外周面の所定位置には、流路10に冷却水を導入するための冷却水導入部17、及び流路10から冷却水を排出するための冷却水排出部18が設けられている。したがって、モータ1の冷却時には、冷却水は、冷却水導入部17を介して流路10に導入され、その流路10を流れることによってステータ9やロータ8を冷却し、冷却水排出部18から外部に排出される。
【0024】
次に、
図2~
図4を参照して、フレーム2と上下のブラケット3及び4との接合による流路10の上下端部におけるシール構造について説明する。フレーム2の壁厚部2a内に形成された流路10では、上端部の全体が上方に開放するとともに、下端部の全体又は一部が下方に開放している。
【0025】
上下のブラケット3及び4は、上述したフレーム2と同様、アルミダイカストによって製造され、平面形状が円盤状に形成されている。
図2(a)に示すように、上ブラケット3の下面には、フレーム2側に、すなわち下方に所定長さ突出し、流路10の上端部(開放部分)に嵌合するインロー凸部21が設けられている。一方、
図2(a)に示すように、下ブラケット4の上面には、フレーム2側に、すなわち上方に所定長さ突出し、流路10の下端部の開放部分に嵌合するインロー凸部22が設けられている。
【0026】
なお、上下のブラケット3及び4のインロー凸部21及び22による流路10の上下端部のシール構造は、基本的に同じであるので、以下の説明では、フレーム2と上ブラケット3との接合による流路10の上端部のシール構造を中心に説明するものとする。
【0027】
図2(b)は、同図(a)の一点鎖線で囲まれた部分、具体的には、上ブラケット3のインロー凸部21及びその周囲を拡大して示している。また、
図3(a)及び(b)はそれぞれ、
図2(b)に示す上ブラケット3とフレーム2であり、これらを互いに上下方向に分離した状態で立体的に示している。
【0028】
図2(b)及び
図3(a)に示すように、上ブラケット3のインロー凸部21は、下方に所定長さ突出するとともに、径方向(
図2及び3の左右方向)に所定幅を有しており、平面形状が所定の径を有するリング状に形成されている。なお、このインロー凸部21では、その下端部の径方向における内側の角部が面取りされている。
【0029】
また、上ブラケット3には、径方向におけるインロー凸部21の直ぐ内側に、下方に開放する内側シール溜まり溝23(第1シール溜まり溝)が形成されている。この内側シール溜まり溝23は、所定の幅及び深さを有し、平面形状がインロー凸部21と同心のリング状に形成されている。
【0030】
一方、
図2(b)及び
図3(b)に示すように、フレーム2における流路10の上端部には、上方に開放し、平面形状がリング状に形成されたリング凹部20(開放部分)が構成されている。このリング凹部20は、径方向の幅がインロー凸部21のそれよりも大きく設定されるとともに、径方向の内径がインロー凸部21のそれと同じに設定されている。なお、リング凹部20では、その上端部の径方向における内側の角部が面取りされている。
【0031】
また、フレーム2の上端面には、径方向におけるリング凹部20の外側に、上方に開放する外側シール溜まり溝24(第2シール溜まり溝)が形成されている。この外側シール溜まり溝24は、前述した内側シール溜まり溝23と同様に、所定の幅及び深さを有し、平面形状がリング凹部20と同心でかつリング凹部20よりも大きいリング状に形成されている。
【0032】
そして、上ブラケット3とフレーム2との接合面、すなわち上ブラケット3の下面25及びフレーム2の上端面26には、塗布によって薄い層状に成形される液状ガスケット(図示せず)が設けられている。
【0033】
具体的には、
図3(a)に示すように、上ブラケット3の下面25は、径方向における内側シール溜まり溝23よりも内側の面(以下「内側下面25a」という)と、インロー凸部21よりも外側の面(以下「外側下面25b」という)とを有しており、上ブラケット3をフレーム2に接合する際には、上ブラケット3の内側下面25a(第1所定領域)に、液状ガスケットが塗布される。
【0034】
一方、
図3(b)に示すように、フレーム2の上端面26は、径方向におけるリング凹部20よりも内側の面(以下「内側上端面26a」という)と、リング凹部20よりも外側の面(以下「外側上端面26b」)とを有しており、上ブラケット3をフレーム2に接合する際には、フレーム2の外側上端面26b、より具体的には、外側上端面26bのうちの外側シール溜まり溝24よりも外側の領域(第2所定領域)に、液状ガスケットが塗布される。
【0035】
なお、上記の液状ガスケットは、常温で流動性を有しており、一定時間後に乾燥することで硬化し、弾性や粘着性を発揮するものである。
【0036】
図4は、上述した
図3の上ブラケット3をフレーム2の上端面26に接合したときの状態を示している。なお、
図4では、図示の便宜上、上ブラケット3を二点鎖線で示している。
【0037】
図4に示すように、上ブラケット3をフレーム2の上端面26に接合した場合には、上ブラケット3のインロー凸部21が流路10の上端部におけるリング凹部20に嵌合する。より具体的には、インロー凸部21は、その内周面21aがリング凹部20の内周面20aに密着した状態で、リング凹部20に嵌合する。なお、前述したように、インロー凸部21には、その下端部の内側の角部が面取りされる一方、リング凹部20には、その上端部の内側の角部が面取りされているので、インロー凸部21をリング凹部20に嵌合させる際には、面取りされた両角部を互いに当接させながら、嵌合作業を容易に行うことができる。
【0038】
また、上記の場合には、前述したように、上ブラケット3の内側下面25a及びフレーム2の外側上端面26bにそれぞれ、液状ガスケットが塗布されるので、液状ガスケットを介して、上ブラケット3の内側下面25aとフレーム2の内側上端面26aが互いに密着するとともに、上ブラケット3の外側下面25bとフレーム2の外側上端面26bが互いに密着する。これにより、流路10のリング凹部20における径方向の内側及び外側のシール性を、より一層高めることができる。
【0039】
以上のように構成されたモータ1において、冷却水が流路10内を流れることにより、運転中のモータ1におけるステータ9やロータ8が冷却され、それらの発熱が抑制される。その結果、モータ1の良好な性能を維持することができる。
【0040】
以上詳述したように、本実施形態によれば、上ブラケット3のインロー凸部21が、流路10の上端部におけるリング凹部20に嵌合した状態で、フレーム2の上端面26に上ブラケット3の下面25が接合されるので、その接合の際に、上ブラケット3とフレーム2とを芯出ししながら容易に組み付けることができるとともに、例えば流路10のリング凹部20を平坦面で覆う場合に比べて、流路10におけるリング凹部20のシール性を高めることができる。
【0041】
また、上ブラケット3のインロー凸部21の幅が、リング凹部20のそれよりも短く形成されているので、インロー凸部21がリング凹部20と同じ幅を有する場合に比べて、インロー凸部21の重量を低減でき、その分、モータ1の重量を低減することができる。また、インロー凸部21は、リング凹部20の径方向の内周面20aに密着した状態で、リング凹部20に嵌合するので、リング凹部20の径方向における内側のシール性を高めることができる。
【0042】
さらに、上ブラケット3には、インロー凸部21の直ぐ内側に内側シール溜まり溝23が設けられる一方、フレーム2には、リング凹部20の外側に外側シール溜まり溝24が設けられているので、上ブラケット3をフレーム2に接合する際に、上ブラケット3の内側下面25a及びフレーム2の外側上端面26bに塗布された液状ガスケットがリング凹部20側に漏出したとしても、内側シール溜まり溝23又は外側シール溜まり溝24に流入することで、リング凹部20への浸入が阻止される。これにより、液状ガスケットがリング凹部20に浸入するのを確実に防止することができる。
【0043】
さらにまた、インロー凸部21の直ぐ内側に、内側シール溜まり溝23が設けられるので、フレーム2の壁厚部2aの厚さを薄くすることが可能であり、それにより、モータ1の体格や重量を低減できるとともに、冷却性能を向上させることができる。なお、インロー凸部21の直ぐ内側に、内側シール溜まり溝23が設けられる構成は、インロー凸部21が内側シール溜まり溝23の外側の壁部として機能することで、内側シール溜まり溝23に溜まった液状ガスケットの流路10への混入を防止しているから実現できる。したがって、例えば、インロー凸部21の無い上ブラケット3に、流路10の内周面の直ぐ内側に内側シール溜まり溝23を設けると、その溝に流入した液状ガスケットが流路10へ混入するおそれがある。
【0044】
なお、本発明は、説明した上記実施形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。例えば、実施形態では、上ブラケット3のインロー凸部21の幅を、フレーム2の流路10におけるリング凹部20の幅よりも小さくなるようにしたが、本発明はこれに限定されるものではなく、インロー凸部21の幅とリング凹部20の幅を同じにすることも可能である。
【0045】
また、実施形態では、回転機としてのモータ1における流路10のシール構造について説明したが、本発明は、運転によって発熱する各種の回転機(例えば発電機など)に適用することが可能である。さらに、実施形態では、冷却水をフレーム2の周方向に沿って延びる流路10に流すことによってモータ1を冷却したが、上記の冷却水に代えて、他の適切な冷却液(例えば冷却油など)を採用したり、流路10として、例えばフレーム2の周方向に沿って蛇行しながら延びるなどの適切な構成を有する流路を採用したりすることも可能である。
【0046】
また、実施形態で示したモータ1、フレーム2、ブラケット3及び4、流路10、リング凹部20、インロー凸部21及び22、並びに内側及び外側シール溜まり溝23及び24の細部の構成などは、あくまで例示であり、本発明の趣旨の範囲内で適宜、変更することができる。
【符号の説明】
【0047】
1 モータ(回転機)
2 フレーム(外周壁)
2a フレームの壁厚部
3 上ブラケット(カバー部材)
4 下ブラケット(カバー部材)
5 シャフト
10 流路(冷却液流路)
20 リング凹部(開放部分)
20a リング凹部の内周面
21 上ブラケットのインロー凸部
21a インロー凸部の内周面
22 下ブラケットのインロー凸部
23 内側シール溜まり溝(第1シール溜まり溝)
24 外側シール溜まり溝(第2シール溜まり溝)
25 上ブラケットの下面
25a 内側下面(第1所定領域)
25b 外側下面
26 フレームの上端面
26a 内側上端面
26b 外側上端面(第2所定領域)
【手続補正書】
【提出日】2023-10-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転機における円筒状の外周壁の壁厚部内に設けられ、当該外周壁の軸線方向の少なくとも一方に開放しかつ前記回転機を冷却するための冷却液が流れる冷却液流路に対し、開放部分をシールする冷却液流路のシール構造であって、
前記外周壁の軸線方向の両端面のうち、前記少なくとも一方に接合され、前記冷却液流路の開放部分を覆うカバー部材を備えており、
前記カバー部材は、前記外周壁側に突出し、前記冷却液流路の開放部分に嵌合するインロー凸部を有し、
前記冷却液流路の開放部分は、前記外周壁の径方向に所定長さの幅を有するリング状に形成されたリング凹部を有しており、
前記インロー凸部は、前記外周壁の径方向に前記所定長さよりも短い幅を有するリング状に形成され、前記リング凹部の径方向の内周面に密着した状態で、当該リング凹部に嵌合することを特徴とする回転機における冷却液流路のシール構造。
【請求項2】
前記カバー部材と前記外周壁との接合面には、前記リング凹部の径方向における内側の第1所定領域に、液状ガスケットが塗布されており、
前記カバー部材は、当該カバー部材の前記接合面において、径方向における前記第1所定領域の外側でかつ前記インロー凸部の直ぐ内側に、前記第1所定領域に塗布された液状ガスケットが前記リング凹部に浸入するのを阻止するための第1シール溜まり溝を有していることを特徴とする請求項1に記載の回転機における冷却液流路のシール構造。
【請求項3】
前記カバー部材と前記外周壁との接合面には、前記リング凹部の径方向における外側の第2所定領域に、液状ガスケットが塗布されており、
前記外周壁は、当該外周壁の前記接合面において、径方向における前記リング凹部の外側でかつ前記第2所定領域の内側に、前記第2所定領域に塗布された液状ガスケットが前記リング凹部に浸入するのを阻止するための第2シール溜まり溝を有していることを特徴とする請求項2に記載の回転機における冷却液流路のシール構造。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
上記の目的を達成するために、請求項1に係る発明は、回転機における円筒状の外周壁の壁厚部内に設けられ、外周壁の軸線方向の少なくとも一方に開放しかつ回転機を冷却するための冷却液が流れる冷却液流路に対し、開放部分をシールする冷却液流路のシール構造であって、外周壁の軸線方向の両端面のうち、少なくとも一方に接合され、冷却液流路の開放部分を覆うカバー部材を備えており、カバー部材は、外周壁側に突出し、冷却液流路の開放部分に嵌合するインロー凸部を有し、冷却液流路の開放部分は、外周壁の径方向に所定長さの幅を有するリング状に形成されたリング凹部を有しており、インロー凸部は、外周壁の径方向に所定長さよりも短い幅を有するリング状に形成され、リング凹部の径方向の内周面に密着した状態で、リング凹部に嵌合することを特徴とする。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
また、上記構成によれば、冷却液流路の開放部分が、径方向に所定長さの幅を有するリング凹部を有する一方、カバー部材のインロー凸部が、所定長さの幅を有するリング凹部よりも短い幅を有するリング状に形成されている。これにより、インロー凸部がリング凹部と同じ幅を有する場合に比べて、インロー凸部の重量を低減でき、その分、回転機の重量を低減することができる。また、インロー凸部は、リング凹部の径方向の内周面に密着した状態で、そのリング凹部に嵌合するので、冷却液流路のリング凹部において、その径方向の内側のシール性を高めることができる。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0013】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の回転機における冷却液流路のシール構造において、カバー部材と外周壁との接合面には、リング凹部の径方向における内側の第1所定領域に、液状ガスケットが塗布されており、カバー部材は、カバー部材の接合面において、径方向における第1所定領域の外側でかつインロー凸部の直ぐ内側に、第1所定領域に塗布された液状ガスケットがリング凹部に浸入するのを阻止するための第1シール溜まり溝を有していることを特徴とする。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0015
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0015】
請求項3に係る発明は、請求項2に記載の回転機における冷却液流路のシール構造において、カバー部材と外周壁との接合面には、リング凹部の径方向における外側の第2所定領域に、液状ガスケットが塗布されており、外周壁は、外周壁の接合面において、径方向におけるリング凹部の外側でかつ第2所定領域の内側に、第2所定領域に塗布された液状ガスケットがリング凹部に浸入するのを阻止するための第2シール溜まり溝を有していることを特徴とする。