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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170836
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】流体制御装置
(51)【国際特許分類】
   G05D 7/06 20060101AFI20241204BHJP
   G01F 1/00 20220101ALI20241204BHJP
【FI】
G05D7/06 Z
G01F1/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087572
(22)【出願日】2023-05-29
(71)【出願人】
【識別番号】390033857
【氏名又は名称】株式会社フジキン
(74)【代理人】
【識別番号】100129540
【弁理士】
【氏名又は名称】谷田 龍一
(74)【代理人】
【識別番号】100137648
【弁理士】
【氏名又は名称】吉武 賢一
(72)【発明者】
【氏名】平田 薫
(72)【発明者】
【氏名】小川 慎也
(72)【発明者】
【氏名】杉田 勝幸
(72)【発明者】
【氏名】西野 功二
【テーマコード(参考)】
2F030
5H307
【Fターム(参考)】
2F030CA04
2F030CC11
2F030CD01
2F030CE04
2F030CF05
2F030CF08
5H307AA02
5H307BB01
5H307DD11
5H307EE02
5H307EE04
5H307FF03
5H307FF06
5H307FF12
5H307HH04
5H307LL05
(57)【要約】
【課題】 ビルドダウン法によって、より広い流量範囲で流量測定を行うことができる流体制御装置を提供する。
【解決手段】
流体制御装置30は、上流開閉弁4と、上流開閉弁の下流側に設けられたコントロール弁12を有する流量制御装置10と、上流開閉弁4とコントロール弁12との間の流体の圧力を測定する供給圧力センサ16とを備え、上流開閉弁を閉じた後の供給圧力センサの出力に基づいて流量測定可能なように構成されており、上流開閉弁4と流量制御装置10とはベースプレート40に対して固定されており、流量制御装置10とベースプレート40との間に設けられ、上流開閉弁4および流量制御装置10に連通する空間32fを内部に有する容量増加部材32を備えている。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上流開閉弁と、
前記上流開閉弁の下流側に設けられたコントロール弁を有する流量制御装置と、
前記上流開閉弁と前記コントロール弁との間の流体の圧力を測定する供給圧力センサと
を備え、前記上流開閉弁を閉じた後の前記供給圧力センサの出力に基づいて流量測定可能なように構成された流体制御装置であって、
前記上流開閉弁および前記流量制御装置はベースプレートに対して固定されており、
前記流量制御装置と前記ベースプレートとの間に、前記上流開閉弁および前記流量制御装置に連通する空間を有する容量増加部材が設けられている、流体制御装置。
【請求項2】
前記容量増加部材は、内部に折り返し流路を含み、前記容量増加部材の流入口と流出口とが前記容量増加部材の同じ側に配置されている、請求項1に記載の流体制御装置。
【請求項3】
前記容量増加部材は、第1の細長穴と、前記第1の細長穴に挿入され前記第1の細長穴より小径の棒状の第1の詰め物と、第2の細長穴と、前記第2の細長穴に挿入され前記第2の細長穴より小径の棒状の第2の詰め物とを有し、
前記第1の細長穴と前記第1の詰め物との間の空間によって第1流路が形成され、
前記第2の細長穴と前記第2の詰め物との間の空間によって第2流路が形成され、
前記第1流路と前記第2流路とが、前記容量増加部材の流入口と流出口とが設けられた側とは反対の側で孔によって連通しており、これによって、前記折り返し流路が形成されている、請求項2に記載の流体制御装置。
【請求項4】
前記容量増加部材は、前記流入口が設けられた部分と、前記流出口が設けられた部分との間に段差を有しており、
低段部に設けられた前記流入口が前記上流開閉弁と直接的に接続され、高段部に設けられた前記流出口が前記流量制御装置と直接的に接続されている、請求項2または3に記載の流体制御装置。
【請求項5】
前記ベースプレートに対して固定された段差流路ブロックであって、前記流量制御装置と、前記流量制御装置の下流側に設けられた下流開閉弁とを連通させる流路を有する段差流路ブロックをさらに備える、請求項4に記載の流体制御装置。
【請求項6】
前記流量制御装置は、内部に流路を有する本体流路ブロックと、前記本体流路ブロックの上面に配置された前記コントロール弁と、前記コントロール弁の下流側の流路に設けられた絞り部と、前記コントロール弁と前記絞り部との間の流体圧力を測定する上流圧力センサとを備える圧力式流量制御装置であり、
前記流量制御装置の前記本体流路ブロックの下面と、前記ベースプレートの上面との間の空間に、前記容量増加部材の少なくとも一部が配置されている、請求項1から3のいずれかに記載の流体制御装置。
【請求項7】
前記ベースプレートには、流路ブロックを介して前記上流開閉弁が固定され、前記流量制御装置は、前記容量増加部材を介して前記ベースプレートに固定されており、前記ベースプレート上には集積化ガス供給システムが形成されている、請求項1から3のいずれかに記載の流体制御装置。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体制御装置に関し、特に、ビルドダウン法を利用して流量測定可能に構成された流体制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造装置や化学プラントのガス供給システムにおいて、プロセスチャンバに多種類のガスを切り替えて供給することがある。プロセスチャンバに供給されるガスには、原料ガス、エッチングガス、パージガスなどが含まれる。供給されるガスの流量は、各ガスに対応して設けられた供給ラインにそれぞれ設けられた流量制御装置によって制御される。
【0003】
複数のガス供給ラインを形成する手段として、本出願人によって開発された集積化ガス供給システムIGS(登録商標)が利用されている(例えば特許文献1)。集積化ガス供給システムでは、ベースプレート上に、流路ブロック(継手ブロック)、開閉弁、流体制御器などを配置・固定することによって、各ガス供給ラインをコンパクトな態様でまとめて形成することができる。
【0004】
ガス供給ラインに設けられる流量制御装置としては、マスフローコントローラ(熱式質量流量制御器)や圧力式流量制御装置が知られている。このうち、圧力式流量制御装置は、コントロール弁と絞り部(例えばオリフィスプレートや臨界ノズル)とを組み合せた比較的簡単な機構によって、各種流体の質量流量を高精度に制御することができるため、広く利用されている。
【0005】
圧力式流量制御装置には、コントロール弁の開度調整によって絞り部の上流側の流体圧力(以下、上流圧力P1または制御圧力P1と称することがある)を制御し、この上流圧力P1に応じた流量で、絞り部の下流側に流体を流すものがある。圧力式流量制御装置は、一次側供給圧、すなわち、コントロール弁の上流側の流体圧力が大きく変動する状況にあっても、安定した流量制御が行えるという、優れた流量制御特性を有している。
【0006】
また、流量制御装置の運用において、随時、流量精度の確認や流量制御装置の校正を行うことが望まれている。特に、上記の圧力式流量制御装置は、直接的な流量測定機構を備えていないので、経年変化によって絞り部の口径が変動したときなどには、上流圧力P1に基づいて正しい流量を把握することが困難になる。したがって、特に圧力式流量制御装置では、他の方法によっても流量測定を行うことができれば有利であった。絞り部の口径は、ガス堆積による詰まりやガスによる腐食の発生によって、使用を続けるうちに変動し得ることが知られている。
【0007】
圧力式流量制御装置に適用可能な流量測定方法として、ビルドアップ法やビルドダウン法が知られている。ビルドアップ法は、下流側のバルブを閉じた後のビルドアップ容量における圧力の上昇率(すなわち、圧力上昇幅ΔP/要した時間Δt)に基づいて、ガスの流量を測定する方法である。また、ビルドダウン法は、上流側のバルブを閉じた後のビルドダウン容量内の圧力の降下率(すなわち、圧力降下幅ΔP/要した時間Δt)に基づいて、ガスの流量を測定する方法である。
【0008】
ビルドダウン法では、流量制御装置の上流側に設けられたビルドダウン容量の内部に存在していたガスを、ビルドダウン容量の上流側の開閉弁を閉じた後、流量制御装置を介して流出させる。そして、そのときのビルドダウン容量内の圧力降下率(ΔP/Δt)と温度(T)とを測定することにより、例えば、Q=K×(ΔP/Δt)×V/RT(K:定数、R:気体定数、V:ビルドダウン容量の容積)から流量Qを演算により求めることができる(例えば、特許文献2および特許文献3)。ビルドダウン法によって求めた流量は、流量制御装置が示す流量と比較され、流量制御装置の校正のために用いることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第2007/017937号
【特許文献2】国際公開第2013/179550号
【特許文献3】特開2021-163410号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ビルドダウン法によって流量を測定するときのビルドダウン容量として、流路に接続されたビルドダウンチャンバ等が用いられる場合がある。ただし、小流量の流量測定を行う場合は、容量が大きくなる分だけ圧力降下率が小さくなり流量測定に時間がかかるという問題がある。また、エッチングガスとして、例えばフッ化水素(HF)ガスが用いられることがあり、HFガスは、ステンレス鋼などからなる流路等の内表面に吸着しやすいという性質を有しているため、ガスが溜まるビルドダウンチャンバ等を設けると、その後、清浄化しづらいという問題が生じ得た。
【0011】
このため、ビルドダウンチャンバを別途接続することなく、上流側開閉弁と圧力式流量制御装置のコントロール弁との間の流路自体をビルドダウン容量として利用し、この流路における供給圧力P0の降下率を測定することによって流量を求める場合がある。この場合、小流量(例えば30sccm以下)の流量測定を比較的短時間で正確に行いやすく、また、別途チャンバを接続しないので、ガス供給システムをコンパクトな態様で提供できるという利点が得られる。
【0012】
しかしながら、特に、上記の集積化ガス供給システムに圧力式流量制御装置を配置する場合には、現状の構成では、上流側開閉弁とコントロール弁との間の流路容積を大きく変更することは容易ではなく、より大流量(例えば100sccm以上)の流量測定を精度よく行うことが困難である。また、集積化ガス供給システムには、複数のガス供給ラインがコンパクトに形成されていることが多いため、タンク状のビルドダウンチャンバを各ラインに対して接続することが困難な場合があり、また、接続する場合には、装置の大幅な設計変更や肥大化を招きかねない。
【0013】
本発明は、上記課題を解決するために為されたものであり、既存の集積化ガス供給システムの構成をできるだけ利用しながら、比較的コンパクトな態様でビルドダウン法を用いてより幅広い範囲での流量測定を行うことができる流体制御装置を提供することをその主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の実施態様に係る流体制御装置は、上流開閉弁と、前記上流開閉弁の下流側に設けられたコントロール弁を有する流量制御装置と、前記上流開閉弁と前記コントロール弁との間の流体の圧力を測定する供給圧力センサとを備え、前記上流開閉弁を閉じた後の前記供給圧力センサの出力に基づいて流量測定可能なように構成されており、前記上流開閉弁および前記流量制御装置はベースプレートに対して固定されており、前記流量制御装置と前記ベースプレートとの間に設けられた、前記上流開閉弁および前記流量制御装置に連通する空間を有する容量増加部材を備える。
【0015】
ある実施形態において、前記容量増加部材は、内部に折り返し流路を含み、前記容量増加部材の流入口と流出口とが前記容量増加部材の同じ側に配置されている。
【0016】
ある実施形態において、前記容量増加部材は、第1の細長穴と、前記第1の細長穴に挿入され前記第1の細長穴より小径の棒状の第1の詰め物と、第2の細長穴と、前記第2の細長穴に挿入され前記第2の細長穴より小径の棒状の第2の詰め物とを有し、前記第1の細長穴と前記第1の詰め物との間の空間によって第1流路が形成され、前記第2の細長穴と前記第2の詰め物との間の空間によって第2流路が形成され、前記第1流路と前記第2流路とが、前記容量増加部材の流入口と流出口とが設けられた側とは反対の側で孔によって連通しており、これによって、前記折り返し流路が形成されている。
【0017】
ある実施形態において、前記容量増加部材は、前記流入口が設けられた部分と、前記流出口が設けられた部分との間に段差を有しており、低段部に設けられた前記流入口が前記上流開閉弁と直接的に接続され、高段部に設けられた前記流出口が前記流量制御装置と直接的に接続されている。
【0018】
ある実施形態において、上記の流体制御装置は、前記ベースプレートに対して固定された段差流路ブロックであって、前記流量制御装置と、前記流量制御装置の下流側に設けられた下流開閉弁とを連通させる流路を有する段差流路ブロックをさらに備える。
【0019】
ある実施形態において、前記流量制御装置は、内部に流路を有する本体流路ブロックと、前記本体流路ブロックの上面に配置された前記コントロール弁と、前記コントロール弁の下流側の流路に設けられた絞り部と、前記コントロール弁と前記絞り部との間の流体圧力を測定する上流圧力センサとを備える圧力式流量制御装置であり、前記流量制御装置の前記本体流路ブロックの下面と、前記ベースプレートの上面との間の空間に、前記容量増加部材の少なくとも一部が配置されている。
【0020】
ある実施形態において、前記ベースプレートには、流路ブロックを介して前記上流開閉弁が固定され、前記流量制御装置は、前記容量増加部材を介して前記ベースプレートに固定されており、前記ベースプレート上には集積化ガス供給システムが形成されている。
【発明の効果】
【0021】
本発明の実施形態による流体制御装置によれば、比較的コンパクトな態様でビルドダウン法を用いてより幅広い範囲で流量測定を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施形態による流体制御装置を含む流体供給システムの構成を示す模式図である。
図2】比較例の流体制御装置の構成を示す図である。
図3】本発明の実施形態による流体制御装置の構成を示す図である。
図4】本発明の実施形態による流体制御装置が備える流量制御装置の構成を示す図である。
図5】本発明の実施形態による流体制御装置が備える容量増加部材を示す断面図である。
図6】本発明の別の実施形態による流体制御装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明するが、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0024】
図1は、本発明の実施形態にかかる流体制御装置30を備えるガス供給システム100を示す。ガス供給システム100は、ガス供給源2からのガスGを、流体制御装置30に含まれる圧力式流量制御装置10を介して、半導体製造装置のプロセスチャンバ8に供給できるように構成されている。
【0025】
なお、本実施形態において、流体制御装置30は、上流開閉弁4と、後述する圧力式流量制御装置10とによって構成されている。また、図示する態様では、上流開閉弁4とコントロール弁12との間の流体圧力(以下、供給圧力P0と称することがある)を測定するための供給圧力センサ16が圧力式流量制御装置10に含まれているが、供給圧力センサ16は、流体制御装置30に含まれていればよく、圧力式流量制御装置10の外側に設けられていても良い。
【0026】
ガス供給システム100において、ガス供給源2からは、原料ガス、エッチングガスまたはパージガスなど、半導体製造プロセスに用いられる種々のガスが供給され得る。ガス供給源2からは、半導体製造プロセスにおいて、クリーニング用のガス、または、ドライエッチング用のガスとして一般的に用いられているHFガスが供給されてもよい。
【0027】
プロセスチャンバ8には、真空ポンプ9が接続されており、チャンバ内およびチャンバに接続された流路を真空引きすることができる。なお、図1には、1系統のガス供給ラインのみが示されているが、種々のガスを供給するために、流体制御装置30が各々に設けられた複数のガス供給ラインが、共通ラインを介してプロセスチャンバ8に接続されていてもよい。
【0028】
本実施形態で用いる圧力式流量制御装置10は、絞り部14と、絞り部上流側のコントロール弁12と、コントロール弁12と絞り部14との間の圧力(すなわち上流圧力P1)を測定する上流圧力センサ17と、制御回路20とを備えている。また、本実施形態の圧力式流量制御装置10は、流量制御可能な圧力範囲を拡大するために、絞り部14の下流側の圧力である下流圧力P2を測定する下流圧力センサ18を備えているが、下流圧力センサ18は必ずしも必要ではない。また、圧力式流量制御装置10は、コントロール弁12と絞り部14との間の温度を測定する温度センサ(図示せず)を備えていてもよい。
【0029】
圧力式流量制御装置10は、上流圧力センサ17の出力等に基づいてコントロール弁12の開度を調整することによって、絞り部14の下流側に流れるガスの流量を制御するように構成されている。絞り部14としては、オリフィスプレート、臨界ノズルまたは音速ノズルなどを用いることもできる。オリフィスまたはノズルの口径は、例えば10μm~2000μmに設定される。
【0030】
コントロール弁12としては、例えば、ピエゾ素子駆動型バルブが用いられる。ピエゾ素子駆動型バルブは、ピエゾ素子への印加電圧の制御によってダイヤフラム弁体の移動量を調節することができ、その開度を任意に調節することができる。供給圧力センサ16、上流圧力センサ17、および、下流圧力センサ18としては、歪ゲージが設けられた感圧ダイヤフラムを有するシリコン単結晶製の圧力センサやキャパシタンスマノメータが好適に用いられる。温度センサとしては、サーミスタや白金測温抵抗体が好適に用いられる。
【0031】
圧力式流量制御装置10において、制御回路20は、CPU、メモリ、A/Dコンバータ等を内蔵し、後述する動作を実行するように構成されたコンピュータプログラムを含んでいてよく、ハードウェアおよびソフトウェアの組み合わせによって実現され得る。
【0032】
圧力式流量制御装置10は、臨界膨張条件P1/P2≧約2(ここで、P1は上流圧力、P2は下流圧力、約2は、窒素ガスの場合)を満たすとき、流量Qは下流圧力P2によらず上流圧力P1によって決まるという原理を利用して流量制御を行うことができる。臨界膨張条件を満たすとき、流量Qは、Q=K1×P1(K1は流体の種類と流体温度に依存する定数)から算出される。また、下流圧力センサ18を備える場合、臨界膨張条件を満足しない場合であっても、流量Qを、Q=K2×P2^m×(P1-P2)^n(ここでK2は流体の種類と流体温度に依存する定数、mおよびnは実際の流量から導出される指数)から算出することができる。
【0033】
設定流量Qsが制御回路に入力されると、制御回路は、上流圧力センサ17の出力などに基づいて、上記の式に従って演算流量Qcを求める。そして、この演算流量Qcが、入力された設定流量Qsに近づくようにコントロール弁12をフィードバック制御する。演算流量Qcは、流量出力値として外部のモニタに表示されてもよい。
【0034】
また、本実施形態では、圧力式流量制御装置10の上流側の上流開閉弁4と、圧力式流量制御装置10の下流側の下流開閉弁6とが設けられている。上流開閉弁4は、圧力式流量制御装置10へのガス供給の制御のために用いられるとともに、後述するビルドダウン法による供給ガスの流量測定を実行するために用いられる。下流開閉弁6は、プロセスチャンバ8へのガスの供給を確実に停止するために用いられる。複数のガス供給ラインが設けられている場合、下流開閉弁6は、供給ガス種の切り替えのためにも用いられる。
【0035】
上流開閉弁4および下流開閉弁6としては、AOV(Air Operated Valve)などの流体駆動弁、電磁弁、または、電動弁などのオンオフ弁が好適に用いられる。下流開閉弁6は、絞り部14と一体的に形成されたオリフィス内蔵弁として圧力式流量制御装置10に内蔵されていてもよい。オリフィス内蔵弁として一体的に設けられる場合、下流開閉弁6は、絞り部14の直ぐ上流に配置されてもよい。
【0036】
なお、本実施形態の流体制御装置30において、圧力式流量制御装置10に限られず、例えば、熱式流量制御装置や、その他のタイプの流量制御装置を用いても良い。ただし、以下に説明するビルドダウン法による流量測定を行うためには、流体制御装置30は、流量制御用のコントロール弁12と、その上流側の上流開閉弁4と、上流開閉弁4とコントロール弁12との間の流路の供給圧力P0を測定する供給圧力センサ16とを備えている必要がある。
【0037】
この構成の流体制御装置30において、ビルドダウン法による流量測定は、次のようにして行うことができる。まず、上流開閉弁4、下流開閉弁6および圧力式流量制御装置10のコントロール弁12を開いて、所望の流量でガスを流す状態から流量測定を開始する。このとき、典型的には、供給圧力P0は、上流圧力P1よりも十分に大きく、また、上流圧力P1は、下流圧力P2よりも十分に大きい。下流圧力P2は、典型的には、真空圧(例えば100Torr以下)に設定されている。圧力式流量制御装置10では、コントロール弁12の開度調整により上流圧力P1を制御することによって、所望流量で絞り部14の下流側に供給ガスが流れている。
【0038】
次に、上流開閉弁4を閉じることによって、ビルドダウンを開始する。このときも、コントロール弁12の開度は、所望流量でガスを流すように上流圧力P1に基づいてフィードバック制御されている。上流開閉弁4を閉じた後、供給圧力P0は、絞り部14を介してガスが流出するとともに低下する。
【0039】
本実施形態では、図1に示すように、上流開閉弁4とコントロール弁12との間の流路をビルドダウン容量Vsとし、このビルドダウン容量Vsからコントロール弁12を介して流出するガスの流量を、供給圧力センサ16の出力の時間変化に基づいて測定する。ただし、後述するように、本実施形態でのビルドダウン容量Vsは、圧力式流量制御装置10の直下に配置され、流路としても利用される容量増加部の容量を含むものである。
【0040】
そして、供給圧力センサ16を用いて、ビルドダウンにおける供給圧力P0の圧力降下率ΔP/Δtが測定される。圧力降下率ΔP/Δtの測定は、予め設定された計測開始時圧力から最終圧力に達するまでに要した時間Δtを計測することによって行っても良いし、予め設定されたビルドダウン時間Δtにおいて降下した圧力幅ΔPを計測することによって行っても良い。その他にも、計測開始圧力に達した時刻からサンプリング周期ごとに供給圧力の圧力値P0(t)を測定し、所定の時刻に達するまでに得られた圧力値P0(t)のサンプリングデータから最小二乗法によって直線の傾きとしてΔP/Δtを求めるようにしてもよい。また、特許文献3に開示されているように、HFガスの流量測定を行う場合には、HFガスのクラスタ化が生じないことが確認されている圧力範囲内に限定して圧力降下率ΔP/Δtの測定を行うようにしてもよい。
【0041】
測定された圧力降下率ΔP/Δtに基づいて、例えば、Q=K×(ΔP/Δt)×V/RT(K:定数、R:気体定数、V:ビルドダウン容量Vsの容積)から流量Qを演算により求めることができる。より具体的には、特許文献2および特許文献3に開示されているように、例えば、以下の式に基づいて流量Q[sccm]を演算により求めることができる。
Q[sccm]=1[atm]/760[Torr]×1000[cc/l]×60[sec/min]×(273[K]/(273+T)[K])×V[l]×(ΔP[Torr]/Δt[sec])
上記式において、Tはガス温度(℃)であり、Vはビルドダウン容積であり、ΔP/Δtは測定された圧力降下率である。なお、角括弧(ブラケット)内は単位を示している。
【0042】
ここで、例えば30sccm以下の小流量の測定であれば、ビルドダウン容量Vsの容積Vが例えば1cc~2cc程度であっても十分に高い精度での測定が可能である。ただし、100sccm以上の流量を測定しようとすると、圧力降下率ΔP/Δtが急峻すぎるために、測定精度の大幅な低下を招いたり、実質的に測定不可能な状態となったりすることがある。このため、より広い流量範囲での測定を可能にするためには、ビルドダウン容量Vsの容積Vを増加させることが考えられる。容積Vが大きいほど、圧力降下率ΔP/Δtの傾きが緩やかになり、より大流量でガスを流しているときにも測定精度の低下は防止されるからである。
【0043】
しかしながら、容積Vを増加させるために、タンクなどの大容量のチャンバを接続することは、装置の大幅な設計変更を伴うためにコスト増となり、また、省スペース化が求められている半導体製造装置の用途には適合させづらい。そこで、本実施形態では、既存のガス供給システムの構成から大幅な設計変更を伴うことなく、邪魔にならない位置に容積Vを増加させるための部材を設け、これによって、小流量から大流量(例えば3sccm~300sccm)までの流量測定を精度よくできるようにしている。以下、具体的な構成例について説明するが、その前に、まず、比較例の流体制御装置について説明する。
【0044】
図2は、本出願人が従来実施していた比較例の流体制御装置90の構成を示す図である。流体制御装置90は、上流開閉弁4、圧力式流量制御装置10、および下流開閉弁6を備えており、これらは、例えば特許文献1に開示されている集積化ガス供給システムに組み込まれている。
【0045】
より具体的には、流体制御装置90では、集積化ガス供給システムのベースプレート40上に、V字流路ブロック42、44、46、48を用いて、上流開閉弁4、圧力式流量制御装置10および下流開閉弁6が互いに連通可能な状態で固定されている。図において、V字流路ブロック42、44、46、48に示されているV字の破線は、内部に形成された流路(細孔)を示している。流体制御装置90の上流側からの供給ガスは、V字流路ブロック42、上流開閉弁4、V字流路ブロック44、圧力式流量制御装置10、V字流路ブロック46、下流開閉弁6およびV字流路ブロック48を順に通って、下流のプロセスチャンバへと供給される。
【0046】
なお、流路ブロックの内部に形成される流路は、必ずしもV字である必要はなく、例えばU字等であってもよい。ただし、V字流路ブロックでは、ブロック上面に入口と出口とを有する閉じた流路を、2方向からのドリル穿孔によって容易に形成することができるので、製造が比較的容易であるという利点が得られる。また、集積化ガス供給システムにおいてベースプレート上に固定される流路ブロックは上面に入口と出口との双方を有していることが好適であるが、他の態様において、流路ブロックの入口および出口の少なくとも一方が上面以外の面に設けられていてもよい。
【0047】
また、図には示していないが、ベースプレート40上には、上流開閉弁4の上流側および下流開閉弁6の下流側の他の種々の流路ブロック(例えば複数の供給ラインからのガスが流れ込むマニフォールドブロック)やバルブ等が設けられていてもよいことは言うまでもない。また、本明細書では、便宜上、図面に即して、ベースプレート40の側を下側とし、上流開閉弁4や圧力式流量制御装置10の側を上側として上下方向を説明するが、これら方向は、装置の取り付け姿勢などによって、実際の鉛直方向と異なっていてもよい。また、本明細書において、横方向(または左右方向)とは、上記の上下方向と直交する方向を指しており、実際の水平方向とは異なっていても良い。
【0048】
この流体制御装置90において、ベースプレート40には、上流開閉弁4および下流開閉弁の入口と出口とに接続するためのV字流路ブロック42、44、46、48が配置されている。上面に開口部を有するV字流路ブロック42、44、46、48を用いれば、横方向に詰めた状態で各要素(バルブや機器等)を並べやすくコンパクト化が可能である。また、流路ブロックに対して上方から各要素の固定を行うので、シール性を確保しながら孔の位置合わせを適切に行いやすく、製造プロセスを容易化できるという利点が得られる。なお、比較例の流体制御装置90では、ビルドダウン容量の容積値としては、例えば1~2cc程度が確保できる。
【0049】
ただし、流体制御装置90では、圧力式流量制御装置10は、V字流路ブロック44とV字流路ブロック46に跨って配置されており、その結果、圧力式流量制御装置10の下面とベースプレート40の上面との間には、空間SPが形成されている。そこで、以下に説明する本実施形態では、この空間SPを利用し、圧力式流量制御装置10の下面とベースプレート40の上面との間に、ビルドダウン容量に含まれる容積を増量させるための部材を配置し、コンパクトな態様を保ったまま、流量測定の有効範囲を広げるようにしている。
【0050】
図3は、本発明の実施形態に係る流体制御装置30および下流開閉弁6を示す。本実施形態においても、比較例の流体制御装置90(図2)と同様に、流体制御装置30を構成する上流開閉弁4、圧力式流量制御装置10および下流開閉弁6は、集積化ガス供給システムのベースプレート40上に固定されている。図4は、圧力式流量制御装置10のより具体的な構成例を示している。
【0051】
ただし、流体制御装置30では、圧力式流量制御装置10とベースプレート40との間の空間(圧力式流量制御装置10の直下のスペース)に、容量増加部材32が配置されている。容量増加部材32は、上流開閉弁4の流出口に接続される流入口32iと、圧力式流量制御装置10の流入口に接続される流出口32oとを有しており、流入口32iと流出口32oとは、容量増加部材32の内部に設けられた空間(典型的には流路)32fを介して連通している。なお、図3において、容量増加部材32のみは、その内部構造も示す断面が示されている。容量増加部材32の詳細構造については後述する。
【0052】
容量増加部材32の内部に設けられた流路32fは、左右の一端(図では右端)で折り返す流路として形成されており、流入口32iと流出口32oとは、いずれも容量増加部材32の他端部(図では左端)に位置している。この構成においては、比較例の流体制御装置90と同様に、上流開閉弁4と圧力式流量制御装置10とを横方向に近接して配置することが可能である。
【0053】
また、本実施形態では、比較的厚さが大きい(すなわち、図2に示した空間SPの高さよりも厚さが大きい)容量増加部材32を設けたことによって、比較例の流体制御装置90に比べて、圧力式流量制御装置10がより高い位置に配置されている。このため、圧力式流量制御装置10の出口と下流開閉弁6とを連通させるために、図2に示したV字流路ブロック46に代えて、より高い位置に入口を有する段差V字流路ブロック38が用いられている。段差V字流路ブロック38の内部には、図において破線で示すように、高さの異なるV字型の流路が形成されている。
【0054】
この構成において、流体制御装置30の上流側から供給されたガスGは、V字流路ブロック42、上流開閉弁4、容量増加部材32、圧力式流量制御装置10、段差V字流路ブロック38、下流開閉弁6、V字流路ブロック48を順に通って、下流のプロセスチャンバへと供給される。
【0055】
ここで、図4に示すように、圧力式流量制御装置10は、互いに連通する流路を内部に有する前段流路ブロック24、本体流路ブロック22、後段流路ブロック26を用いて構成されている。各流路ブロックに設けられた流路については破線で示されている。また、本体流路ブロック22の上面には、流路に接続された供給圧力センサ16、コントロール弁12、上流圧力センサ17が固定されており、後段流路ブロック26の上面には、流路に接続された下流圧力センサ18が固定されている。ここでは、絞り部14として、ガスケット型オリフィス部材が、本体流路ブロック22と後段流路ブロック26との接続面においてシール性高く挟持・固定されている。
【0056】
また、圧力式流量制御装置10は、ガスGを流入させる開口部を下面に有する前段流路ブロック24と、ガスGを流出させる開口部を下面に有する後段流路ブロック26とを用いて構成されている。このため、容量増加部材32および段差V字流路ブロック38の上面に対して載置されることによって全体的な高さが上昇しているものの、比較例の流体制御装置90と同様の構成の圧力式流量制御装置10をそのまま利用し、同様の手順で取り付けることが可能である。
【0057】
このため、流体制御装置30は、容量増加部材32および段差V字流路ブロック38を用いることを除いては、比較例の流体制御装置90と同様にして作製することができ、本実施形態の流体制御装置30においても、横方向に詰めた状態で各要素を並べやすくコンパクト化が可能であり、シール性を確保しながら孔の位置合わせを適切に行いやすいので製造プロセスを容易化できる。なお、集積化ガス供給システムのベースプレート40の上方には、通常、余剰の空間が存在しているため、圧力式流量制御装置10の高さ位置が多少上がったとしても、特に支障が生じることはなく、コンパクトな設置態様を維持することができる。この構成においては、上流開閉弁4から下流開閉弁6までの距離を、比較例の流体制御装置90と同様に、例えば100mm~150mmに設計することが可能である。
【0058】
また、本実施形態において、容量増加部材32の上に、圧力式流量制御装置10が直接的に載置されているが、これに限られず、容量増加部材32と圧力式流量制御装置10(より具体的には本体流路ブロック22)との間に他の部材が介在していてもよい。本実施形態の流体制御装置30において、圧力式流量制御装置10の本体流路ブロック22の下面とベースプレート40の上面とによって挟まれる空間において、上流開閉弁4および圧力式流量制御装置10に連通する閉じた流路を内部に有する容量増加部材32の少なくとも一部が存在していればよい。以下、容量増加部材32の具体例の詳細構成について説明する。
【0059】
図5は、容量増加部材32の内部構成を示す断面図である。本実施形態において、容量増加部材32は、横方向に延びる2本の細長穴(または横穴)が並列に形成された穴開き本体ブロック32aと、各細長穴にそれぞれ挿入される棒状の詰め物34a、34bとを用いて構成されている。穴開き本体ブロック32aおよび詰め物34a、34bは、他の流路ブロックと同様に、金属製(典型的にはステンレス鋼製)であってよい。
【0060】
穴開き本体ブロック32aに形成された下側の細長穴(第1の細長穴)の底部は、上流開閉弁4の流出口に接続される流入口32iに繋がっている。また、上側の細長穴(第2の細長穴)の底部近傍の側面は、圧力式流量制御装置10の流入口に接続される流出口32oに繋がっている。そして、ここでは、各細長穴の開口部寄りの位置に設けられた細孔状の流路f2によって、上下の細長穴は連通している。
【0061】
本実施形態では、流入口32iが形成された部分(低段部)の高さが、V字流路ブロック42と同じ高さ(例えば約15mm)であり、一方で、流出口32oが設けられた部分の高さ(高段部)は、より高く(例えば約35mm)なっており、これらの間に段差が形成されている。これにより、上流開閉弁4を水平にシール性高く安定的に取り付けながら、容量増加部材32において、十分な大きさの容積(例えば5cc以上)を確保することができる。なお、この段差の分(例えば約20mm)だけ、圧力式流量制御装置10の高さ位置が上方にシフトすることになるが、高さ方向へのサイズ拡張は特に問題が生じない。
【0062】
また、図3に示したように、段差V字流路ブロック38については、入口が形成された部分の高さが、容量増加部材32の流出口32oが設けられた部分の高さと同じであり、出口が形成された部分の高さが、V字流路ブロック48の高さ(通常は、V字流路ブロック42と同じ高さ)と同じである。これにより、圧力式流量制御装置10および下流開閉弁6を水平にシール性高く安定的に取り付けることができる。
【0063】
再び図5を参照して、穴開き本体ブロック32aに形成された下側の細長穴に挿入される詰め物34a(第1の詰め物)は、細長穴よりもわずかに短く小径であり、また、同心状に配置されており、これによって、横方向に延びる断面円環状の流路f1(第1流路)が形成されている。同様に、上側の細長穴に挿入される詰め物34b(第2の詰め物)は、細長穴よりも短く小径であり、また、同心状に配置されており、これによって、横方向に延びる断面円環状の流路f3(第2流路)が形成されている。各細長穴の径は、例えば、12mm~13mmに設計され、詰め物34a、34bの径は、例えば、8mm~9mmに設計され、これらの間のギャップは、例えば、1.5mm~2.5mmに設計される。
【0064】
各詰め物34aの挿入口近傍には、環状のメタルガスケット36がそれぞれ配置されており、詰め物34aのフランジ部と細長穴の拡径部とに挟持されて外部シールを形成している。詰め物34aの固定は、例えば、フランジ部の外周に設けた外ネジを、細長穴の拡径部に設けた内ネジに螺合させることによって行うことができる。さらに、フランジ部の端面を覆う封止キャップが細長穴の開口を埋めるようにして設けられていても良い。この構成において、流入口32iから流入したガスGは、外部に対して閉じた流路f1、流路f2、流路f3を通って流出口32oまで流れることができる。
【0065】
このようにして、圧力式流量制御装置10の本体流路ブロック22の下側に、容量増加部材32を配置することによって、比較例の流体制御装置90が有していた空間SPを利用して、ビルドダウン容量Vsの容積V、すなわち、上流開閉弁4の弁体からコントロール弁12の弁体までの流路の容積を増加させることができる。増加させる容量の大きさは、所望の流量測定範囲に合せて任意に選択されてよいが、例えば、300sccmまでの流量測定を行いたい場合には、容量増加部材32による増加分を含めて、容積Vを10~20ccに増加させることができる。
【0066】
また、図5に示した容量増加部材32では、詰め物34a、34bを用いることによって流路f1、f3が断面円環状に形成されており、流路の容積に比して金属との接触面積が大きくなるため、内部を流れるガスGとの熱伝導性が向上している。このため、ビルドダウン法による流量計測時に、容量内の圧力降下に伴う温度変動を効果的に抑制することができ、短時間のうちに流量測定を安定的に行うことができる。
【0067】
さらに、図5に示した容量増加部材32は、穴開き本体ブロック32aをなす金属ブロックにドリル等を用いて穴あけを行い、これに詰め物34aを固定するだけで、流入口32iから流出口32oに達する流路f1、f2、f3を形成することができ、製作が比較的容易であり、製造コストを抑制することができる。また、本実施形態では、繋ぎの流路f2は、上側の細長穴の開口部から下側の細長穴に向けて斜めにドリル穿孔するだけで、斜め流路として容易に形成することができている。
【0068】
以上のように構成された流体制御装置30では、ビルドダウン容量が増加したビルドダウン法によって、より大流量までの流量測定(例えば3sccm~300sccm)を、比較的短時間で精度よく安定的に実行することが可能である。特に、集積化ガス供給システムのベースプレート40上において、圧力式流量制御装置10の直下に、折り返し流路を有する容量増加部材32を配置しているので、既存の構成を十分に利用しながら、問題とならない高さ方向のサイズ拡張のみで、コンパクトな態様を保ったままビルドダウン法による流量測定の測定範囲を広げることができる。
【0069】
また、ビルドダウン法によって測定した流量と、圧力式流量制御装置10が示す流量(上流圧力P1から算出される流量)とを比較して、圧力式流量制御装置10の校正を行うこともできる。圧力式流量制御装置10の校正は、例えば、測定されたビルドダウン流量と圧力式流量制御装置10が示す流量との比に基づいて、圧力式流量制御装置10の流量演算式(例えば、Q=K1×P1におけるK1の値)を更新することによって容易に実行することができる。特に、流体制御装置30では、より広い範囲で流量測定が可能であるので、圧力式流量制御装置10の校正も、より広い流量範囲にわたって適切に実行することが可能である。
【0070】
以上に説明した実施形態に限らず、種々の改変が可能である。例えば、図6に示す他の態様の流体制御装置30Bのように、容量増加部材32Bとして、3段の横穴およびこれにそれぞれ配置される詰め物によって形成された流路(増加容積)を有する部材を用いても良い。ただし、奇数段の場合には、実質的に流路としては利用されにくい横穴(3段の場合には真ん中の段)が生じるため、スムーズな流れを形成するためには、偶数段であることが好適である。なお、4段以上の場合、隣接する段を連通させる斜め流路をより容易に形成するために、横穴を空ける方向(および詰め物の挿入方向)を左右互い違いにして段を重ねてもよい。また、折り返しの流路は形成されなくなるが、段数は1段であってもよい。
【0071】
また、上記には、容量増加部材32として、横穴に均熱用の棒状体の詰め物34a、34bを挿入した態様を説明したが、詰め物34a、34bは必ずしも設けられていなくても良い。また、詰め物34a、34bは、中実の棒状体であってもよいし、空洞の有底筒状体であってもよい。
【0072】
さらに、上記には流入口32iと流出口32oの高さ位置が異なる態様を説明したが、必要な容積増加が達成できる流路を内部に形成できるようであれば、流入口32iと流出口32oの高さ位置が同じ(典型的にはV字流路ブロック42、48とも高さ位置が同じ)である容量増加部材を用いても良い。この場合、圧力式流量制御装置10の高さ位置は変更されない。また、段差V字流路ブロック38を新たに用意する必要もなく、比較例と同様のV字流路ブロック46を用いることができる。
【0073】
さらに、ビルドダウン法による流量測定は、圧力式流量制御装置に限られず、他の態様の流量制御装置(例えば熱式質量流量制御器)においても実行可能であるので、他の態様の流量制御装置が用いられても良い。ただし、本実施形態の流体制御装置は、直接的な流量測定手段を有しない圧力式流量制御装置を備える態様において特に有用である。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明の実施形態による流体制御装置は、ビルドダウン法を利用して広い範囲で流量測定を行うために好適に利用される。
【符号の説明】
【0075】
4 上流開閉弁
6 下流開閉弁
10 圧力式流量制御装置
12 コントロール弁
14 絞り部
16 供給圧力センサ
17 上流圧力センサ
18 下流圧力センサ
20 制御回路
22 本体流路ブロック
30 流体制御装置
32 容量増加部材
32a 穴開き本体ブロック
34a、34b 詰め物
36 メタルガスケット
38 段差V字流路ブロック
40 ベースプレート
42、44、46、48 V字流路ブロック
100 ガス供給システム

図1
図2
図3
図4
図5
図6