(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170839
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】ロボットハンド
(51)【国際特許分類】
B25J 15/06 20060101AFI20241204BHJP
B25J 15/00 20060101ALI20241204BHJP
【FI】
B25J15/06 A
B25J15/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087575
(22)【出願日】2023-05-29
(71)【出願人】
【識別番号】322003857
【氏名又は名称】パナソニックオートモーティブシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 真弘
(72)【発明者】
【氏名】若森 育也
(72)【発明者】
【氏名】平村 和志
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707BS12
3C707DS01
3C707FS01
3C707FT02
3C707FU02
3C707KS01
3C707KS03
3C707KT01
3C707KT05
3C707NS02
(57)【要約】
【課題】構造物の組み立て作業を効率化することができる、ロボットハンドを提供する。
【解決手段】ロボットハンドは、第1の方向に延在する第1の部材と、前記第1の方向と交差する第2の方向に延在する第2の部材と、を含む対象物を把持するハンド部と、ハンド部を制御する制御部と、を備え、ハンド部は、第2の部材を吸引することによって対象物を把持する吸着パッドと、吸着パッドを支持する支持部分と、を含む本体部分と、吸着パッドが対象物を把持した状態において、本体部分と対向するように設けられる補助部分と、を含み、吸着パッドが対象物を把持した状態において、吸着パッドの軸芯と補助部分との第2の方向の距離は、吸着パッドの軸芯から、第1の部材のうち第2の部材と接触する部分の面と相反する側の面までの第2の方向の距離より大きい。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向に延在する第1の部材と、前記第1の方向と交差する第2の方向に延在する第2の部材と、を含む対象物を把持するハンド部と、
前記ハンド部を制御する制御部と、
を備え、
前記ハンド部は、
前記第2の部材を吸引することによって前記対象物を把持する吸着パッドと、
前記吸着パッドを支持する支持部分と、
を含む本体部分と、
前記吸着パッドが前記対象物を把持した状態において、前記本体部分と対向するように設けられる補助部分と、を含み、
前記吸着パッドが前記対象物を把持した状態において、前記吸着パッドの軸芯と前記補助部分との前記第2の方向の距離は、前記吸着パッドの軸芯から、前記第1の部材のうち前記第2の部材と接触する部分の面と相反する側の面までの前記第2の方向の距離より大きい、
ロボットハンド。
【請求項2】
前記ハンド部は、起立した姿勢の前記対象物を把持可能であって、かつ、起立した姿勢から横倒しの姿勢に前記対象物の姿勢を変更可能に設けられ、
前記補助部分は、起立した姿勢の前記対象物に対しては非接触の状態である一方、横倒しの姿勢の前記対象物に対して接触可能である、
請求項1に記載のロボットハンド。
【請求項3】
起立した姿勢の前記対象物を把持する場合には、前記吸着パッドの軸芯と、前記第2の部材の吸着面とが略直交し、
横倒しの姿勢の前記対象物を把持する場合には、前記吸着パッドの軸芯と、前記第1の部材が延在する第1の方向とが成す角度が10度以下である、
請求項1または2に記載のロボットハンド。
【請求項4】
前記補助部分は、基部と、前記基部を形成する材料の静止摩擦係数よりも大きな静止摩擦係数の材料で形成された移動規制部と、を備え、
起立した姿勢の前記対象物に対して前記補助部分は非接触の状態にある一方、
横倒しの姿勢の前記対象物に対して前記移動規制部は接触可能である、
請求項1または2に記載のロボットハンド。
【請求項5】
前記対象物は、前記第2の部材とは異なる位置に配置された第3の部材を有し、
前記補助部分は、基部と、前記基部に形成された凹部と、を有し、
起立した姿勢の前記対象物に対して前記補助部分は非接触の状態にある一方、
横倒しの姿勢の前記対象物に対して前記対象物の前記第3の部材が前記凹部の内面に接触する、
請求項1または2に記載のロボットハンド。
【請求項6】
前記対象物は、前記第2の部材とは異なる位置に配置された第4の部材を有し、
前記補助部分は、基部と、前記基部に形成されたスリットと、を有し、
起立した姿勢の前記対象物に対して前記補助部分は非接触の状態にある一方、
横倒しの姿勢の前記対象物に前記基部が接触し、かつ、前記対象物の前記第4の部材が前記スリットに挿入されるよう配置された、
請求項1または2に記載のロボットハンド。
【請求項7】
前記補助部分は、前記本体部分に対して移動可能に設けられる、
請求項1または2に記載のロボットハンド。
【請求項8】
前記補助部分は、
前記吸着パッドが起立した姿勢の前記対象物を把持する際、前記対象物に対して非接触状態となる非接触位置へ退避可能であり、
前記対象物を一時的に保管する(バレタイジングされる)所定の位置へ到着し、前記対象物を前記所定の位置へ格納する際、前記対象物に対して非接触状態となる非接触位置へ退避可能である、
請求項7に記載のロボットハンド。
【請求項9】
対象物を把持するハンド部と、
前記ハンド部を制御する制御部と、
を備え、
前記ハンド部は、
前記対象物の面を吸引することによって前記対象物を把持する吸着パッドと、
前記吸着パッドを支持する支持部分と、
を含む本体部分と、
前記吸着パッドが前記対象物を把持した状態において、前記本体部分と対向するように設けられる補助部分と、を含み、
前記吸着パッドが前記対象物を把持した状態において、前記吸着パッドの軸芯と前記補助部分との第2の方向の距離は、前記対象物の前記面のうち、前記吸着パッドの軸芯から前記面の端部までの前記本体部分と前記補助部分とが対向する方向の距離より大きい、
ロボットハンド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットハンドに関する。
【背景技術】
【0002】
ロボットの中には、対象物を把持し、当該対象物を移動させるものがある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のロボットでは、対象物の姿勢を変更することは考慮されておらず、当該対象物に他の部品を組み付けて構造体を製作する際、対象物の姿勢を改めて変更しなければならず、構造体の組み立て作業に手間がかかる問題があった。
【0005】
本発明の目的は、構造体の組み立て作業を効率化することができる、ロボットハンドを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するため、本発明に係るロボットハンドは、第1の方向に延在する第1の部材と、前記第1の方向と交差する第2の方向に延在する第2の部材と、を含む対象物を把持するハンド部と、前記ハンド部を制御する制御部と、を備え、前記ハンド部は、前記第2の部材を吸引することによって前記対象物を把持する吸着パッドと、前記吸着パッドを支持する支持部分と、を含む本体部分と、前記吸着パッドが前記対象物を把持した状態において、前記本体部分と対向するように設けられる補助部分と、を含み、前記吸着パッドが前記対象物を把持した状態において、前記吸着パッドの軸芯と前記補助部分との前記第2の方向の距離は、前記吸着パッドの軸芯から、前記第1の部材のうち前記第2の部材と接触する部分の面と相反する側の面までの前記第2の方向の距離より大きい。
【発明の効果】
【0007】
本開示よるロボットハンドでは、吸着パッドが対象物を把持した状態において、前記吸着パッドの軸芯と前記補助部分との前記第2の方向の距離は、前記吸着パッドの軸芯から、前記第1の部材のうち前記第2の部材と接触する部分の面と相反する側の面までの前記第2の方向の距離より大きい。そのため、対象物を把持する際には、補助部分が対象物に対して非接触である一方、対象物の姿勢を変更した際には、補助部分が対象物に対して接触することで、対象物を把持するために必要な把持力を補強することができる。そのため、作業員によって対象物の姿勢を変更する作業を不要にできるため、対象物を他の部品に組み付けて構造体を製作することを容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係るロボットハンドを備えるロボットの概略構成図である。
【
図2】
図2は、ロボットハンドが把持する対象物を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、
図1に示すロボットにおけるロボットハンドの拡大図である。
【
図4】
図4は、ロボットが備える撮像部によって、対象物の位置を認識する状態を示す図である。
【
図5】
図5は、対象物の上方に、ロボットハンドを移動した状態を示す図である。
【
図6】
図6は、吸着パッドの先端を対象物の第2の部材に接触させた状態を示す概略図である。
【
図7】
図7は、ロボットハンドによって、起立した姿勢の対象物を把持した状態を示す概略図である。
【
図8】
図8は、ロボットハンドによって、横倒しの姿勢の対象物を把持した状態を示す概略図である。
【
図9】
図9は、ロボットハンドによって、横倒しの姿勢の対象物を把持した状態を示す部分拡大図である。
【
図10】
図10(A)は、交差角度と許容モーメントとの関係を検証する検証モデルに使用した吸着パッドおよび支持部分を示す概略平面図であり、
図10(B)は、検証モデルに使用した吸着パッドおよび補助部分の概略正面図であり、
図10(C)は、補助部分に対象物の一部が接触した状態を示す図である。
【
図11】
図11(A)は、
図10に示す検証モデルに使用した吸着パッドおよび支持部分を示す概略正面図であり、
図11(B)は、検証モデルにおいて、補助部分に対象物の一方の端部が接触した状態を示す図であり、
図11(C)は、吸着パッドから対象物が乖離した状態を示す図である。
【
図12】
図12は、交差角度と許容モーメントとの関係を示すグラフである。
【
図13】
図13は、交差角度と許容モーメントとの関係を示す表である。
【
図14】
図14は、対象物およびハンド部の一例を示す図である。
【
図15】
図15は、許容モーメントと対象物の全長との関係を示すグラフである。
【
図16】
図16は、別の対象物を吸着パッドで把持した状態を示す図である。
【
図17】
図17は、さらに別の対象物を吸着パッドで把持した状態を示す図である。
【
図18】
図18(A)は、別の対象物が横倒しの姿勢の概略図であり、
図18(B)は、補助部分に別の対象物の一部が接触した状態を示す概略図である。
【
図19】
図19は、第1実施形態の第1変形例のロボットハンドを示す拡大図である。
【
図20】
図20は、第2実施形態のロボットハンドを示す拡大図である。
【
図21】
図21は、第3実施形態に係るロボットハンドを示す拡大図である。
【
図22】
図22は、第4実施形態に係るロボットハンドの補助部分と対象物とを示す拡大図である。
【
図23】
図23は、第5実施形態のロボットハンドにおいて、横倒しの姿勢の対象物に、接触位置の補助部分が接触している状態を示す図である。
【
図24】
図24は、横倒しの姿勢の対象物に対して補助部分を非接触位置に移動した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、ロボットハンドの第1実施形態について、
図1~
図14を用いて説明する。なお、本明細書において、実施形態に係る構成要素及び当該要素の説明が、複数の表現で記載されることがある。構成要素及びその説明は、一例であり、本明細書の表現によって限定されない。構成要素は、本明細書におけるものとは異なる名称でも特定され得る。また、構成要素は、本明細書の表現とは異なる表現によっても説明され得る。
【0010】
(第1実施形態)
先ず、ロボットハンド7を備えるロボット1について説明する。各図面に示されるように、本明細書において、便宜上、X軸、Y軸及びZ軸が定義される。X軸とY軸とZ軸とは、互いに直交する。X軸は、例えば、ロボット1の前後方向に沿って設けられる。Y軸は、例えば、ロボット1の左右方向に沿って設けられる。Z軸は、鉛直方向に沿って設けられる。
【0011】
さらに、本明細書において、X方向(前後方向)、Y方向(左右方向)及びZ方向(上下方向)が定義される。X方向は、X軸に沿う方向であって、X軸の矢印が示す+X方向(前方向)と、X軸の矢印の反対方向である-X方向(後方向)とを含む。Y方向は、Y軸に沿う方向であって、Y軸の矢印が示す+Y方向(右方向)と、Y軸の矢印の反対方向である-Y方向(左方向)とを含む。Z方向は、Z軸に沿う方向であって、Z軸の矢印が示す+Z方向(上方向)と、Z軸の矢印の反対方向である-Z方向(下方向)とを含む。
【0012】
図1は、第1実施形態に係るロボットハンド7を備えるロボット1の概略構成図である。ロボット1は、台座2と、移動機構3と、撮像部4と、制御部5と、ロボットハンド7と、不図示の正圧発生源および負圧発生源と、を備える。
【0013】
本実施形態に係るロボット1は、いわゆる六軸多関節ロボットである。より具体的に説明すると、ロボット1は、複数の関節駆動部31j1、31j2、31j3、31j4、31j5、31j6と、複数のアーム31a1、31a2、31a3、31a4、31a5と、を含む移動機構3を備える。そして、ロボット1は、移動機構3によって、相互に直交する上下方向、左右方向、および、前後方向にロボットハンド7を移動可能である。
【0014】
台座2は、移動機構3を搭載する台であり、例えば、中空の長方体状に形成される。
【0015】
移動機構3は、第1関節駆動部31j1と、第2関節駆動部31j2と、第3関節駆動部31j3と、第4関節駆動部31j4と、第5関節駆動部31j5と、第6関節駆動部31j6と、を含む。その上、移動機構3は、第1アーム31a1と、第2アーム31a2と、第3アーム31a3と、第4アーム31a4と、第5アーム31a5と、を含む。
【0016】
第1関節駆動部31j1は、第1アーム31a1の基端部に設けられ、かつ、台座2に内蔵される。そして、第1関節駆動部31j1は、台座2に対して、Z軸方向に沿う第1関節駆動部31j1の軸芯j1x回り(
図1における矢印J1回り)に、第1アーム31a1を回転する。
【0017】
第1アーム31a1は、棒状に設けられ、軸芯a1xに沿って延在する。軸芯a1xは、Z軸方向に沿って配置される。
【0018】
第2関節駆動部31j2は、第1アーム31a1の先端部であって、かつ、第2アーム31a2の基端部に設けられる。そして、第2関節駆動部31j2は、Y軸方向に沿う第2関節駆動部31j2の軸芯j2x回り(
図1における矢印J2回り)に、第2アーム31a2を第1アーム31a1に対して揺動する。
【0019】
第2アーム31a2は、棒状に設けられ、軸芯a2xに沿って延在する。軸芯a2xは、
図1に示す状態では、Z軸方向に沿って配置される。
【0020】
第3関節駆動部31j3は、第2アーム31a2の先端部であって、かつ、第3アーム31a3の基端部に設けられる。そして、第3関節駆動部31j3は、Y軸方向に沿う第3関節駆動部31j3の軸芯j3x回り(
図1における矢印J3回り)に、第3アーム31a3を第2アーム31a2に対して揺動する。
【0021】
第3アーム31a3は、棒状に設けられ、軸芯a3xに沿って延在する。軸芯a3xは、
図1に示す状態では、X軸方向に沿って配置される。
【0022】
第4関節駆動部31j4は、第3アーム31a3の先端部であって、第4アーム31a4の基端部に設けられる。そして、第4関節駆動部31j4は、第4関節駆動部31j4の軸芯j4x回り(
図1における矢印J4回り)に、第4アーム31a4を第3アーム31a3に対して回転する。例えば、
図1に示す状態では第4関節駆動部31j4の軸芯j4xは、X軸方向に沿う。
【0023】
第4アーム31a4は、棒状に設けられ、軸芯a4xに沿って延在する。軸芯a4xは、
図1に示す状態では、X軸方向に沿って配置される。
【0024】
第5関節駆動部31j5は、第4アーム31a4の先端部であって、かつ、第5アーム31a5の基端部に設けられる。そして、第5関節駆動部31j5は、Y軸方向に沿う第5関節駆動部31j5の軸芯j5x回り(
図1における矢印J5回り)に、第5アーム31a5を第4アーム31a4に対して揺動する。
【0025】
第5アーム31a5は、棒状に設けられ、軸芯a5xに沿って延在する。軸芯a5xは、
図1に示す状態では、Z軸方向に沿って配置される。
【0026】
第6関節駆動部31j6は、第5アーム31a5の先端部であって、ロボットハンド7の基端部に設けられる。そして、第6関節駆動部31j6は、第6関節駆動部31j6の軸芯j6x回り(
図1における矢印J6回り)に、ロボットハンド7を第5アーム31a5に対して回転する。例えば、
図1に示す状態では第6関節駆動部31j6の軸芯j6xは、Z軸方向に沿う。
【0027】
撮像部4は、例えば、カメラである。撮像部4は、制御部5の指令に応じて、例えば、所定のフレームレートで静止画を連続して撮像可能なものである。撮像部4は、制御部5の指令に応じて静止画のデータを、出力信号として制御部5に出力する。
【0028】
また、撮像部4は、例えば、第5アーム31a5に固定される。撮像部4の撮像方向は、制御部5の指令に基づく移動機構3の駆動により第5アーム31a5を適宜の方向に移動することで変更可能である。そして、制御部5は、撮像部4で取得した静止画に含まれる対象物6に対応して、後述する本体部分711を適宜の場所に移動する。
【0029】
制御部5は、予め作成されたデータに基づいて、移動機構3によってロボットハンド7を、前後方向、左右方向、および、上下方向に移動すると共に、対象物6を把持し、かつ、対象物6が初期位置から受け渡し位置まで、対象物6の姿勢を変えながら移動させる機能を有する。その対象物6の移動の際、制御部5は、移動機構3、正圧発生源、負圧発生源、および後述するハンド部7aを制御する機能を有する。つまり、制御部5は、ロボット1の移動機構3正圧発生源および負圧発生源の駆動を制御する機能を有すると共に、対象物6を把持するロボットハンド7を制御する機能も有する。
【0030】
次に、対象物6について
図2を用いて説明する。
図2は、ロボットハンド7が把持する対象物6を示す斜視図である。対象物6は、対象物本体部61と、突出部62と、を備える。
【0031】
対象物本体部61は、例えば、正面視が長方形状であって、第1の方向(U軸)に延在する。つまり、第1の方向は(U軸)は、対象物6が延在する方向を示す。対象物本体部61は、第1の部材の一例である。突出部62は、対象物本体部61から、第1の方向(U軸)と交差する第2の方向(V軸)に突出する。突出部62は、第2の部材の一例である。本実施形態に係るロボットハンド7において、突出部62が、第1の方向(U軸)と交差する第2の方向(V軸)に延在する部分である。突出部62は、後述する本体部分711が接触する吸着面62fを有する。吸着面62fは、第1の方向における一方側(上方向)に配置される。
【0032】
対象物6は、例えば、製品(構造体)に用いられるシャーシであって、シャーシを他の部品に組み付けて製品(構造体)が製造される。また、本実施形態に係る対象物6において、第1の方向(U軸)と、第2の方向(V軸)とは略直交する。なお、対象物6における第1の方向と第2の方向とは、必ずしも直交する必要はなく、第1の方向と第2の方向とが交差していれば十分である。そして、第1の方向および第2の方向にそれぞれ直交する第3の方向(W軸)は、対象物6の例えば幅方向である。また、対象物6の第2の方向(V軸)のサイズは、6Lである。さらに、本実施形態に係る対象物6において、突出部62は、対象物本体部61における第1の方向の途中において、第2の方向へ向けて突出する。
【0033】
次いで、ロボットハンド7について
図3を用いて説明する。
図3は、
図1に示すロボット1におけるロボットハンド7の拡大図である。ロボットハンド7は、上述したように、例えば第5アーム31a5の先端に取り付けられ、移動機構3によって、相互に直交する上下方向、左右方向、および、前後方向に移動可能である。このようなロボットハンド7は、対象物6を把持するハンド部7aと、ハンド部7aを制御する制御部5と、を備える。
【0034】
ハンド部7aは、ベース部分71と、補助部分72と、を含む。ベース部分71は、補助部分72に対向する本体部分711、および、本体部分711と補助部分72とを連結する連結部分712と、を含む。
図3に示す状態では、本体部分711は、対象物6を把持しておらず、補助部分72は、X軸方向において本体部分711と対向する。
【0035】
本体部分711は、対象物6から突出する突出部62を吸引することによって対象物6を把持する吸着パッド711bと、吸着パッド711bを支持する支持部分711aと、を有する。
【0036】
支持部分711aは、軸芯11axに沿って延在し、棒状に形成される。
図3に示す状態では、軸芯11axは、Z軸に沿って延在する。
【0037】
吸着パッド711bは、例えば、支持部分711aに近接する側の径が小さく、支持部分711aから離れるに従って径が大きくなる円筒状に形成され、正圧発生源および負圧発生源に対して不図示の配管を介して接続される。
【0038】
本体部分711は、対象物6の幅方向に沿った長さ(
図2における第3の軸方向であるW軸方向に沿った長さ)に応じた数が、ロボットハンド7に設けられる。例えば、対象物6の幅方向の長さが長い場合には、複数の本体部分711が第3の方向に沿ってハンド部7aに配列される。一方、対象物6の幅方向の長さが短い場合には、例えば、1つの本体部分711がハンド部7aに設けられる。
【0039】
このようなロボットハンド7は、後述するように、吸着パッド711bの先端を、突出部62の吸着面62fに押し当てた状態で負圧発生源を駆動することで、吸着パッド711bにおける内部の空気を吸引し、吸着パッド711bにおける内部の気圧を減少させることで対象物6を把持することができる。
【0040】
一方、ロボットハンド7は、対象物6を把持した状態において、正圧発生源を駆動することで、吸着パッド711bにおける内部に空気を吐出し、吸着パッド711bにおける内部の気圧を増加させることで対象物6を把持状態から開放することができる。
【0041】
連結部分712は、例えば、連結本体部712aと、連結本体部712aの先端に設けられ、2つに分岐する分岐部712bと、を有する略T字状に形成される。
【0042】
連結本体部712aは、例えば、軸芯12axに沿って延在する棒状に形成される。そして、連結本体部712aは、例えば、連結本体部712aの軸芯12axと、第5アーム31a5の軸芯a5xとが一致するように、第5アーム31a5の先端に取り付けられる。
図3に示す状態では、軸芯12axは、Z軸に沿って延在する。
【0043】
分岐部712bは、軸芯12bxに延在するよう棒状に形成され、連結本体部712aの先端に配置される。そして、分岐部712bの一方側の端部には、本体部分711が配置される一方、分岐部712bの他方側の端部には、補助部分72が配置される。
図3に示す状態では、軸芯12bxは、X軸に沿って延在する。
【0044】
補助部分72は、
図3に示した状態において、前後方向から視た場合には、長方形の板状に形成される。本実施形態に係る補助部分72は、同一の材料によって一体的に形成してある。また、補助部分72は、本体部分711と対向する側において、
図3に示す状態において、前後方向に対して直交する対向面712fを有する。そして、
図3に示す状態におけるロボットハンド7の本体部分711と補助部分72とが対向する前後方向において、吸着パッド711bの軸芯11bxと補助部分72とのX軸方向の距離は、LAである。なお、本実施形態に示すロボットハンド7では、
図3において、右側に補助部分72が配置され、左側に本体部分711が配置される。また、本実施形態に係るロボットハンド7は、支持部分711aと、連結部分712と、補助部分72と、を同一の材料で一体的に形成してある。なお、補助部分72は、同一の材料で板状に形成されるものに限られず、例えば、複数の柱状の部材を左右方向(Y軸方向)に沿って配列して形成してもよいし、他の形状の部材を左右方向に沿って配列して形成してもよい。
【0045】
次に、上記のような構成を有するロボット1およびロボットハンド7によって、対象物6を把持し、かつ、対象物6の姿勢を変更する場合を、
図1、
図4、
図5、
図6、
図7、
図8および
図9を用いて説明する。
図4は、ロボット1が備える撮像部4によって、対象物6の位置を認識する状態を示す図である。
図5は、対象物6の上方に、ロボットハンド7を移動した状態を示す図である。
図6は、吸着パッド711bの先端を対象物6の突出部62に接触させた状態を示す概略図である。
図7は、ロボットハンド7によって、起立した姿勢の対象物6を把持した状態を示す概略図である。
図8は、ロボットハンド7によって、横倒しの姿勢の対象物6を把持した状態を示す概略図である。
図9は、ロボットハンド7によって、横倒しの姿勢の対象物6を把持した状態を示す部分拡大図である。
【0046】
先ず、
図1に示す初期状態から、例えば、ベルトコンベア等の搬送手段によって対象物6をロボット1の近傍に配置する。
【0047】
次に、制御部5は、撮像部4によって静止画を取得し、取得した静止画を用いて
図4に示す対象物6の位置を把握する。
【0048】
次いで、制御部5は、
図5に示すように、対象物6の突出部62の上方に、本体部分711が位置するように移動機構3を駆動する。
【0049】
次に、制御部5は、移動機構3を駆動して本体部分711を下方に移動し、
図6に示すように、吸着パッド711bの先端を、突出部62の吸着面62fに押しあてる。
【0050】
次いで、制御部5は、負圧発生源を駆動して吸着パッド711bにおける内部の空気を吸引し、吸着パッド711bにおける内部の気圧を減少させることによって、
図7に示すように、対象物6を吸着パッド711bで把持する(把持初期状態)。
【0051】
把持初期状態では、例えば、対象物6の第1の方向(U軸)と、ロボット1およびロボットハンド7の上下方向(Z軸)とが一致し、対象物6の第2の方向(V軸)と、ロボット1およびロボットハンド7の前後方向(X軸)とが一致し、かつ、対象物6の第3の方向(W軸)と、ロボット1およびロボットハンド7の左右方向(Y軸)とが一致する。この把持初期状態では、対象物6は、第1の方向(U軸)が、上下方向であるZ軸に沿う起立した姿勢である。
【0052】
また、把持初期状態(起立した姿勢の対象物6を吸着パッド711bで把持した状態)において、補助部分72と、対象物6との間には、空間部72sが介在する。より具体的に説明すると、把持初期状態の前後方向(X軸)において、補助部分72と、対象物本体部61との間には、空間部72sが介在する。つまり、補助部分72は、起立した姿勢の対象物6に対しては非接触の状態である。また、本実施形態に係るロボットハンド7は、対象物6の突出部62を吸引することによって対象物6を把持する吸着パッド711bと、対象物6を把持した状態において本体部分711と対向するように設けられる補助部分72とを含む。
【0053】
次いで、制御部5は、移動機構3を駆動して、
図8に示すように、対象物6の第1の方向(U軸)が上下方向(Z軸)に対して傾斜し、かつ、対象物6の第2の方向(V軸)が前後方向(X軸)に対して傾斜する横倒しの姿勢となるように、移動機構3を駆動する。
【0054】
そして、対象物6を横倒しの姿勢とした場合には、重力の作用によって、例えば後述する対象物6の回転中心を中心に、
図8における実線で示すように対象物6が回転し、
図9に示すように、対象物本体部61における第1の方向(U軸)における一方の端部61e1が、補助部分72に接触することで、対象物6の回転が制限される(把持回転制限状態)。なお、本実施形態における対象物6の回転中心は、対象物6の吸着面62fと、吸着パッド711bの軸芯11bxとの交点である。そして、補助部分72は、横倒しの姿勢の対象物6に対しては接触した状態(接触状態)になる。この接触状態では、対象物6と補助部分72との接触点に発生する静止摩擦力によって、対象物6がX軸方向へ移動して、吸着パッド711bから乖離することが抑制される。
【0055】
最後に、制御部5は、例えば、正圧発生源を駆動することによって吸着パッド711bにおける内部の気圧を上昇することで、本体部分711で把持していた対象物6を把持回転制限状態から開放し、横倒しの姿勢で対象物6を例えばベルトコンベアに載置し、ロボット1およびロボットハンド7の一連の作業を終了する。
【0056】
その後、作業者あるいは組立ロボットは、横倒しの姿勢の対象物6を他の部品に組み付けた構造体を製作する。
【0057】
次に、本実施形態に係るロボットハンド7に関して、後述する交差角度および許容モーメントについて
図10、
図11、
図12、
図13を用いて説明する。
図10(A)は、交差角度と許容モーメントとの関係を検証する検証モデルに使用した吸着パッド711bおよび支持部分711aを示す概略平面図であり、
図10(B)は、検証モデルに使用した吸着パッド711bおよび補助部分72の概略正面図であり、
図10(C)は、補助部分72に対象物6の一部が接触した状態を示す図である。
図11(A)は、
図10に示す検証モデルに使用した吸着パッド711bおよび支持部分711aを示す概略正面図であり、
図11(B)は、検証モデルにおいて、補助部分72に対象物6の一方の端部61e1が接触した状態を示す図であり、
図11(C)は、吸着パッド711bから対象物6が乖離した状態を示す図である。
図12は、交差角度と許容モーメントとの関係を示すグラフである。
図13は、交差角度と許容モーメントとの関係を示す表である。
【0058】
以下の説明では、簡易な検証モデルを用いて検証した。例えば、
図10(A)に示すように、本体部分711は、4つの支持部分711aと、4つの吸着パッド711bと、を備えるものを使用し、X軸方向に延在する対象物6におもりを吊るすことでモーメントM1および力F1を、対象物6および吸着パッド711bに加えた。この際、
図10(B)に示すように、吸着パッド711bの軸芯11bxと補助部分72とのZ軸方向の距離LAは、吸着パッド711bの軸芯11bxから、対象物本体部61のうち突出部62と接触する部分の第1面(面)61f1と相反する側の第2面(面)61f2までのZ軸方向の距離LB1より大きくした。その際、対象物本体部61の長手方向における他方の端部61e2に重りを吊るし、重りに作用する重力によって、
図10(C)に示すように、対象物6の姿勢を変え、対象物6における一方の端部61e1と補助部分72とを接触させた。そして、一方の端部61e1と補助部分72とを接触させた後、さらに、他方の端部61e2に重りを加えることで、
図11(C)に示すように、補助部分72に対して一方の端部61e1がX軸方向における+X方向へズレ始めた場合、吸着パッド711bから対象物6が乖離したものとして、直前の重りの重量からモーメントM1を算出した。ここで、交差角度θは、吸着パッド711bの軸芯11bxと対象物本体部61が延在する第1の方向(U軸方向:
図8参照)とが成す角度である。そして、Z軸方向における空間部72sの大きさを変更することで、交差角度θを変え、対象物6の許容モーメントM1と交差角度θとの相関を算出した。その結果を、
図12、
図13に示す。
【0059】
検証モデルでは、4つの吸着パッド411bを備えるロボットハンド7を使用した。また、検証モデルで使用した対象物6の大きさは、第1の方向の長さが132mmであり、第3の方向の長さが166mmであった。また、対象物6の重量は130gであった。その上、4つの吸着パッド711bを用い、各吸着パッド711bの真空圧を-83kpaとして対象物6を把持した。
【0060】
図12、
図13に示すように、交差角度θが小さければ許容モーメントは大きい一方、交差角度θが大きければ許容モーメントは小さくなり、交差角度θと許容モーメントとは比例関係にある。また、縦軸を交差角度[y]とし、横軸を1つの吸着パッド711b当たり(言い換えると、単位吸着パッド当たり)の許容モーメント[x]とすると、次式が成立する。
y=-0.1157x+20.839(1)
なお、
図12に示すグラフにおいて、(1)式におけるY軸方向の下方の領域において、対象物6を吸着パッド711bで把持することができる領域である。
【0061】
この検証モデルから、交差角度θを10度以下に制限すれば、1つの吸着パッドによって93.7[mN・m]まで耐えることができる(後述する真空破壊が発生することを防止することができる)。つまり、本実施形態に係るハンド部7aは、横倒しの姿勢の対象物6を把持する場合には、吸着パッド711bの軸芯11bxと対象物本体部61が延在する第1の方向(U軸方向)とが成す交差角度θは、10度以下であることが好ましい。
【0062】
次に、ロボットハンド7に用いる対象物6を用い、対象物6およびハンド部7aの諸元を検討した。その諸元の検討について、
図14、
図15を用いて説明する。
図14は、対象物6およびハンド部7aの一例を示す図である。
図15は、モーメントと対象物6の全長(つまり、対象物6の第1の方向の長さ)との関係を示すグラフである。
【0063】
図14に示す本体部分711の諸元は以下の通りである。本体部分711には、1つの吸着パッド711bを設け、吸着パッド711bの内部の圧力は、-83kPaである。吸着パッド711bの直径、10mmである。
【0064】
また、
図14に示す対象物6の諸元は、以下の通りである。対象物6は、密度が7.8g/cm
3の鉄製である。対象物6の第3の方向(W軸)の幅は、30mmである。言い方を変えると、この検証では、1つの吸着パッド711bで、幅30mmの対象物6を把持することができるか検討する。対象物本体部61の厚さ61tは、1mmである。突出部62の厚さ62tは、1mmである。突出部62の第2の方向(V軸)の長さ62L1は、15mmである。第1の方向(U軸)において、突出部62が設けられた位置から対象物本体部61の端部61e1までの長さ62L2は、15mmである。
【0065】
そして、
図14に示す対象物6の第1の方向(U軸)の長さ61Lを変更することによって、後述する真空破壊を発生することなく対象物6を把持可能な長さ61Lを検討した結果が
図15である。
【0066】
上述したように、交差角度θを10度と設定した場合、対象物6の第1の方向の長さ61Lが300mmであると、94[mN・m]程度のモーメントが吸着パッド711bに加わる。そして、この程度のモーメントであれば、吸着パッド711bは真空破壊を発生することなく、対象物6を把持することが可能である。つまり、
図15に示すグラフの縦軸のモーメントに関して94[mN・m]より下方の領域で、対象物6を把持することが可能である。
【0067】
以上の検証結果をまとめると、本実施形態に係るハンド部7aにおいて、起立した姿勢の対象物6を把持する場合には、吸着パッド711bの軸芯11bxと、突出部62の吸着面62fとが略直交することが好ましく、横倒しの姿勢の対象物6を把持する場合には、吸着パッド711bの軸芯11bxと対象物本体部61が延在する第1の方向(U軸方向)とが成す交差角度θが10度以下であることが好ましい。また、対象物6の長手方向である第1の方向(U軸)の長さは、300mm以下が好ましい。さらに、交差角度θを10度にするためには、吸着パッド711bの軸芯11bxと補助部分72とのZ軸方向の距離LAは、およそ11mmであることが好ましい。
【0068】
なお、
図14に示す状態では、補助部分72と吸着パッド711bとの軸芯11bxとが平行であるため、吸着パッド711bの軸芯11bxと対象物6の第1の方向(U軸)とが成す交差角度θ3は、補助部分72と対象物本体部61が延在する第1の方向(U軸方向)とが成す交差角度θ2の同位角であることによって、交差角度θ3と交差角度θ2とは同一である。その上、吸着パッド711bの軸芯11bxに対する垂線と突出部62の吸着面62fとが成す交差角度θ1は、対象物本体部61と突出部62とが直角であることによって、上記交差角度θ3と同一である。
【0069】
図14に示すように、本実施形態に係るロボットハンド7のハンド部7aは、対象物6が延在する方向(U軸)を示す第1の方向と交差する第2の方向(V軸)に対象物本体部61(第1の部材)から突出する突出部62(第2の部材)を吸引することによって対象物6を把持する吸着パッド711bと、吸着パッド711bを支持する支持部分711aと、を含む本体部分711と、吸着パッド711bが対象物6を把持した状態において、本体部分711と対向するように設けられる補助部分72と、を含む。吸着パッド711bの軸芯11bxと補助部分72とのZ軸方向の距離LAは、吸着パッド711bの軸芯11bxから、対象物本体部61のうち突出部62と接触する部分の第1面(面)61f1と相反する側の第2面(面)61f2までのZ軸方向の距離LB1より大きい。そのため、ロボットハンド7は、対象物6を把持した把持初期状態では、対象物6と補助部分72とが非接触の状態である一方、対象物6の姿勢を変更することで、対象物6が重力の作用で回転し、かつ、対象物本体部61の端部が補助部分72に接触する。その結果、ロボットハンド7は、対象物6の回転を制限することができるため、把持した対象物6が吸着パッド711bから乖離することを抑制することができる。加えて、モータを駆動することで一方のアーム部材を、他方のアーム部材に対して移動させることによって、一方のアーム部材と他方のアーム部材とで対象物を挟持する従来のロボットハンドに比べて、対象物6を把持するのに必要な領域を少なくすることができる。
【0070】
本実施形態に係るロボットハンド7において、ハンド部7aに対象物6の回転モーメントを制限する補助部分72を設けることによって、対象物6が回転することに起因して本体部分711の内部に外部の空気が入ること(真空破壊)を抑制することができ、それによって、対象物6がハンド部7aから乖離することを抑制することができる。
【0071】
本実施形態に係るロボットハンド7において、ハンド部7aは、起立した姿勢の対象物6を把持可能であって、かつ、起立した姿勢から横倒しの姿勢に対象物6の姿勢を変更可能にロボット1に設けられ、補助部分72は、起立した姿勢の対象物6に対しては非接触の状態である一方、横倒しの姿勢の対象物6に対しては接触可能である。より具体的に説明すると、ロボットハンド7は、対象物6の姿勢を変更することで、対象物6が重力の作用で回転し、対象物本体部61における一方の端部61e1が補助部分72に接触することで、対象物6の回転を制限することができる。
【0072】
次に、本実施形態に係るロボットハンド7が把持する別の対象物6Aについて
図16を用いて説明する。
図16は、別の対象物6Aを吸着パッド711bで把持した状態を示す図である。
【0073】
図16に示す対象物6Aにおいて、突出部62は、対象物本体部61における第1の方向の端部において、第2の方向へ向けて突出する。
図16におけるハンド部7aの構成は、上述の構成と同一のため、ここでは記載しない。
【0074】
ハンド部7aが起立した姿勢の対象物6を把持した後、制御部5は、移動機構3を駆動し、対象物6を横倒しの姿勢に変える。そして、対象物本体部61の一方の端部61e1が補助部分72に接触した場合には、回転が制限される。
【0075】
次いで、本実施形態に係るロボットハンド7が把持する別の対象物6Bについて
図17、
図18を用いて説明する。
図17は、さらに別の対象物6Bを吸着パッド711bで把持した状態を示す図である。
図17の例では、対象物6Bは、上述の突出部62を有さずに対象物本体部61から構成される。
図17の例では、対象物本体部61は直方体状に形成される。
図18(A)は、対象物6Bが横倒しの姿勢の概略図であり、
図18(B)は、横倒しの姿勢の対象物6Bの一部が補助部分72に接触した状態を示す概略図である。
図17及び
図18におけるハンド部7aの構成は、上述の構成と同一のため、ここでは記載しない。
【0076】
吸着パッド711bは、対象物6Bの上面62f1を吸引することによって対象物6Bを把持する。上面62f1は、「面」の一例である。上面62f1は、+Z方向における対象物6Bの端面であり、吸着面62fに相当する。
【0077】
図17に示すように、対象物6Bが起立した姿勢であり、かつ、吸着パッド711bが対象物6Bを把持した状態において、Z軸方向における吸着パッド711bの軸芯11bxと補助部分72との距離LAは、対象物6Bの上面62f1のうち、吸着パッド711bの軸芯11bxから上面62f1の端部までの本体部分711と補助部分72とが対向する方向の距離LB2より大きい。
【0078】
上記のように、ハンド部7aが起立した姿勢の対象物6Bを把持した後、制御部5は、移動機構3を駆動し、
図18(A)に示すように、対象物6Bを横倒しの姿勢に変える。そして、
図18(B)に示すように、対象物6Bの一方の端部61e1が補助部分72に接触した場合には、対象物6Bの回転が制限される。
【0079】
この例であっても、上述の実施形態と同様に、ロボットハンド7は、対象物6Bの回転を制限することができる。このため、把持した対象物6Bが吸着パッド711bから乖離することを抑制することができる。
【0080】
(第1実施形態における第1変形例)
次に、第1実施形態における第1変形例に係るロボットハンド7Aついて、
図19を用いて説明する。
図19は、第1実施形態の第1変形例のロボットハンド7Aを示す拡大図である。なお、第1実施形態における第1変形例に係るロボットハンド7Aの構成において、第1実施形態に係るロボットハンド7の構成と同様のものには同一の符号を付して説明を省略し、異なる構成について以下に説明する。
【0081】
本変形例に係るロボットハンド7Aは、ハンド部7aAを備える。また、本変形例に係るロボットハンド7Aでは、
図19中の左側に補助部分72が配置され、右側に本体部分711が配置される。
【0082】
なお、
図3および
図19には、前後方向の一方に本体部分711が配置される一方、前後方向の他方に補助部分72が配置されるロボットハンド7、7Aを説明した。しかし、本実施形態に係るロボットハンド7、7Aはそれに限られない。例えば、ロボットハンド7、7Aは、左右方向の一方に本体部分711が配置される一方、左右方向の他方に補助部分72が配置されてもよい。
【0083】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係るロボットハンド7Bについて、
図20を用いて説明する。
図20は、第2実施形態に係るロボットハンド7Bを示す拡大図である。なお、
図20において、起立姿勢の対象物6を実線で示す一方、横倒しの姿勢の対象物6を仮想線で示してある。また、第2実施形態に係るロボットハンド7Bの構成において、第1実施形態に係るロボットハンド7の構成と同様のものには同一の符号を付して説明を省略し、異なる構成について以下に説明する。
【0084】
本実施形態に係るロボットハンド7Bは、ハンド部7aBを備える。また、本実施形態に係る補助部分72Bは、基部72aと、基部72aを形成する材料の静止摩擦係数よりも大きな静止摩擦係数の材料で形成された移動規制部72bと、を備える。
【0085】
基部72aは、例えば、金属で形成される。一方、移動規制部72bは、例えば、ゴム、シリコン等によってブロック状等の3次元形状に形成してある。そして、ハンド部7aBにおいて、例えば、基部72aに形成された凹みに、3次元形状に形成された移動規制部72bを埋め込むことによって、移動規制部72bが基部72aに設けられる。なお、移動規制部72bは、3次元形状に形成されるものに限られない。例えば、移動規制部72bは、シート状に形成し、基部72aの表面に張り付けることで移動規制部72bを基部72aに設けてもよい。
【0086】
また、本実施形態に係る補助部分72Bは、基部72aの表面72afと、移動規制部72bの表面72bfとは、同一の平面を構成する。
【0087】
そして、本実施形態に係る補助部分72Bは、起立した姿勢の対象物6に対して非接触の状態にある。一方、対象物6を把持した後、移動機構3を駆動して対象物6を横倒しの姿勢に変位させると、対象物6は移動規制部72bに接触した状態(接触状態)になる。この接触状態では、対象物6と移動規制部72bとの接触点に発生する静止摩擦力によって、対象物6がZ軸方向へ移動することが抑制される。
【0088】
本実施形態に係るロボットハンド7Bにおいて、補助部分72Bは、基部72aと、基部72aを形成する材料の静止摩擦係数よりも大きな静止摩擦係数の材料で形成された移動規制部72bと、を備え、起立した姿勢の対象物6に対して補助部分72Bは非接触の状態にある一方、横倒しの姿勢の対象物6に対して移動規制部72bは接触可能である。そのため、例えば、金属材料で形成された移動規制部と比べて、対象物6がZ軸方向へ移動することを抑制する効果を向上させることができる。
【0089】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態に係るロボットハンド7Cについて、
図21を用いて説明する。
図21は、第3実施形態に係るロボットハンド7Cを示す拡大図である。なお、
図21において、起立姿勢の対象物6Cを実線で示す一方、横倒しの姿勢の対象物6Cを仮想線で示してある。また、第3実施形態に係るロボットハンド7Cの構成において、第1実施形態に係るロボットハンド7の構成と同様のものには同一の符号を付して説明を省略し、異なる構成について以下に説明する。
【0090】
対象物6Cは、突出部62とは異なる位置に形成された第2突出部63を有する。より具体的に説明すると、第2突出部63は、第2の方向において、対象物本体部61から突出する突出部62の方向とは、反対方向に突出する。本実施形態に係る第2突出部63は、左右方向から視た場合、対象物本体部61の上下方向における上端に配置され、直方体状に形成される。第2突出部63は、第3の部材の一例である。
【0091】
本実施形態に係るロボットハンド7Cは、ハンド部7aCを備える。また、本実施形態に係る補助部分72Cは、基部72aと、基部72aに形成された凹部72cと、を有する。本実施形態に係る補助部分72Cは、例えば、同一の材料で基部72aと凹部72cとを一体的に形成してある。
【0092】
凹部72cは、基部72aの表面72afから凹むように形成される。より具体的に説明すると、
図21に示す状態では、凹部72cは、前後方向において、本体部分711から離れるように凹む。
【0093】
そして、本実施形態に係る補助部分72Cは、起立した姿勢の対象物6Cに対して非接触の状態にある。一方、対象物6Cを把持した後、移動機構3を駆動して対象物6Cを横倒しの姿勢に変位させると、対象物6Cにおける第2突出部63が凹部72cに嵌り、凹部72cの内面72cfに第2突出部63が接触する。そして、凹部72cの内面72cfと第2突出部63とが接触した接触状態では、内面72cfと第2突出部63との接触点に発生する静止摩擦力によって、対象物6CがZ軸方向へ移動することが抑制される。
【0094】
本実施形態に係るロボットハンド7Cにおいて、ハンド部7aCは起立した姿勢の対象物6Cを把持可能であって、かつ、起立した姿勢から横倒しの姿勢に対象物6Cの姿勢を変更可能にロボット1に設けられる。そして、対象物6Cの姿勢を変更することで、対象物6Cが重力の作用で回転し、第2突出部63が凹部72cに嵌ることで、対象物6Cの回転を制限することができる。
【0095】
本実施形態に係るロボットハンド7Cにおいて、補助部分72Cは、対象物6Cの第2突出部63が嵌る凹部72cを有する。そのため、ハンド部7aCは、第2の方向(V軸)において、対象物本体部61に対して、突出部62とは反対方向に突出する第2突出部63を有する対象物6Cを把持することができる。
【0096】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態に係るロボットハンド7Dについて、
図22を用いて説明する。
図22は、第4実施形態に係るロボットハンド7Dの補助部分72Dと対象物6Dとを示す拡大図である。なお、第4実施形態に係るロボットハンド7Dの構成において、第1実施形態に係るロボットハンド7の構成と同様のものには同一の符号を付して説明を省略し、異なる構成について以下に説明する。
【0097】
対象物6Dは、突出部62とは異なる位置に形成された第3突出部64を有する。より具体的に説明すると、第3突出部64は、第2の方向において、対象物本体部61から突出する突出部62の方向とは、反対方向に突出する。本実施形態に係る第3突出部64は、例えば三角柱状に形成され、上下方向に延在する。別の言い方をすると、第3突出部64は、上下方向から視た場合、三角形状に形成され、第3の方向から視た場合、四角形状に形成される。第3突出部64は、第4の部材の一例である。
【0098】
本実施形態に係るロボットハンド7Dは、ハンド部7aDを備える。また、本実施形態に係る補助部分72Dは、移動機構3を駆動して対象物6Dを横倒しの姿勢に変位させると、対象物6Dの対象物本体部61が接触する第1の部分72aと、第3突出部64が挿入される第2の部分(例えば、スリット72d)とを有する。第2の部分は、スリット72dでもよいし、穴でもよい。また、第1の部分72aは、例えば、補助部分72Dを分割して得られる複数の分割壁であり、第2の部分は、分割壁の間の空間であってもよい。
図22は、第2の部分がスリット72dである場合の例を示す図である。
図22に示す第2の部分は、補助部分72DのZ軸方向の+Z方向に位置する一方の端部から-Z方向に向かって凹むスリット72dが、Y軸方向に複数、形成されている。なお、これに限られず、スリット72dの形態は任意に変更可能であり、例えば、補助部分72DのZ軸方向の-Z方向に位置する他方の端部から+Z方向に向かって凹むスリットでもよい。また、
図22に示す例では、補助部分72Dにスリット72dが2つ形成されるものを説明したが、スリットは、単数でも3つ以上の複数でもよい。
【0099】
そして、本実施形態に係る補助部分72Dは、起立した姿勢の対象物6Dに対して非接触の状態にある。一方、対象物6Dを把持した後、移動機構3を駆動して対象物6Dを横倒しの姿勢に変位させると、第1の部分72aに対象物6Dの対象物本体部61が接触し、かつ、対象物6Dにおける第3突出部64がスリット72dに挿入される。また、補助部分72Dの第1の部分72aに対象物6Dの対象物本体部61が接触した接触状態では、第1の部分72aと対象物本体部61との接触点に発生する静止摩擦力によって、対象物6DがZ軸方向へ移動することが抑制される。
【0100】
本実施形態に係るロボットハンド7Dにおいて、ハンド部7aDは起立した姿勢の対象物6Dを把持可能であって、かつ、起立した姿勢から横倒しの姿勢に対象物6Dの姿勢を変更可能にロボット1に設けられる。そして、対象物6Dの姿勢を変更することで、対象物6Dが重力の作用で回転し、対象物本体部61が補助部分72Dに接触することで、対象物6Dの回転を制限することができる。
【0101】
本実施形態に係るロボットハンド7Dにおいて、補助部分72Dは、対象物6Dの第3突出部64を挿入可能なスリット72dを有する。そのため、ハンド部7aDは、第2の方向(V軸)において、対象物本体部61に対して、突出部62とは反対方向に突出する第3突出部64を有する対象物6Dを把持することができる。
【0102】
(第5実施形態)
次に、第5実施形態に係るロボットハンド7Eについて、
図23、
図24を用いて説明する。
図23は、第5実施形態のロボットハンド7Eにおいて、横倒しの姿勢の対象物6に、接触位置の補助部分72Eが接触している状態を示す図である。
図24は、横倒しの姿勢の対象物6に対して補助部分72Eを非接触位置に移動した状態を示す図である。なお、第5実施形態に係るロボットハンド7Eの構成において、第1実施形態に係るロボットハンド7の構成と同様のものには同一の符号を付して説明を省略し、異なる構成について以下に説明する。
【0103】
本実施形態に係るロボットハンド7Eが把持する対象物6は、例えば、
図2に示すものである。
【0104】
本実施形態に係るロボットハンド7Eは、ハンド部7aEを備える。また、本実施形態に係るハンド部7aEは、本体部分711と補助部分72Eと別体に形成してあり、本体部分711に対して補助部分72Eが移動可能に設けられる。より詳細に説明すると、補助部分72Eは、
図23に示す横倒しの姿勢の対象物6に対して接触した接触位置から、
図24に示す対象物6に対して非接触の位置となる非接触位置まで移動可能に連結部分712に設けられる。
【0105】
そして、本実施形態に係る補助部分72Eは、例えば、初期状態において非接触位置に配置される。そして、移動機構3を駆動して、吸着パッド711bで対象物6を把持する。その後、移動機構3を駆動して対象物6を横倒しの姿勢に変位させる前に、補助部分72Eを接触位置へ移動させることで、対象物6が横倒しの姿勢に変位した際に補助部分72Eに対象物6の対象物本体部61が接触する。また、補助部分72Eに対象物6の対象物本体部61が接触した接触状態では、補助部分72Eと対象物本体部61との接触点に発生する静止摩擦力によって、対象物6がX軸方向へ移動することが抑制される。そして、対象物6を所定の位置へ移動後、制御部5は、本体部分711に対して補助部分72Eを非接触位置まで移動し、補助部分72Eと対象物本体部61との接触状態を解除する。その後、制御部5は、正圧発生源を駆動することによって吸着パッド711bにおける内部の気圧を上昇することで、本体部分711で把持していた対象物6を開放する。
【0106】
本実施形態に係るロボットハンド7Eにおいて、ハンド部7aEは起立した姿勢の対象物6を把持可能であって、かつ、起立した姿勢から横倒しの姿勢に対象物6の姿勢を変更可能にロボット1に設けられる。そして、対象物6の姿勢を変更することで、対象物6を重力の作用で回転し、対象物本体部61が補助部分72Eに接触することで、対象物6の回転を制限することができる。
【0107】
本実施形態に係るロボットハンド7Eにおいて、補助部分72Eは、連結部分712において本体部分711に対して移動可能に設けられる。そのため、吸着パッドが対象物6に接触する前に、本体部分711に対して補助部分72Eを移動させれば、直立状態(起立した姿勢)にある対象物6を把持するためにロボットハンド7Eが下方へ移動する際、補助部分72Eに相当する領域を削減でき、複数の対象物6がより少ない間隔で隣接して配置された状態であっても、隣接する他の対象物6に本体部分711が接触することなく、目的とする対象物6を把持することができる。
【0108】
本実施形態に係るロボットハンド7Eにおいて、補助部分72Eは、吸着パッド711bが起立した姿勢の対象物6を把持する際、対象物6に対して非接触状態となる非接触位置へ退避可能であり、対象物6を一時的に保管する(パレタイジングされる)所定の位置へ到着し、対象物6を所定の位置へ格納する際、対象物6に対して非接触状態となる非接触位置へ退避可能である。そのため、把持していた対象物6を開放する際においては、開放した対象物6の位置にバラつきが発生することを抑制することができる。
【0109】
なお、本実施形態に係るロボットハンド7Eは、
図16に示した対象物6Aを把持してもよいし、
図17に示した対象物6Bを把持してもよい。
【0110】
以上、本発明に係るロボットハンド7、7A、7B、7C、7D、7Eの実施形態に基づいて説明したが、本発明は実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲での種々の変更が可能であることも言うまでもない。その上、上述した各実施形態の構成要素および変形例の構成を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。そのような要旨を逸脱しない範囲での種々の変更を行ったものも本発明の技術的範囲に含まれるものであり、そのことは、当業者にとって特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0111】
5 制御部、6、6A、6B 対象物、6L 対象物の第2の方向のサイズ、61 対象物本体部、61f1、61f2 面、62 突出部、62f 吸着面、62f1 上面、63 第2突出部、64 第3突出部、7、7A、7B、7C、7D、7E ロボットハンド、7a、7aA、7aB、7aC、7aD、7aE ハンド部、711 本体部分、711a 支持部分、711b 吸着パッド、LA 吸着パッドの軸芯と補助部分とのZ軸方向の距離、LB1 吸着パッドの軸芯から、対象物本体部のうち突出部と接触する部分の第1面(面)と相反する側の第2面(面)までのZ軸方向の距離、LB2 対象物の上面のうち、吸着パッドの軸芯から上面の端部までの本体部分と補助部分とが対向する方向の距離、11bx 軸心、72、72B、72C、72D、72E 補助部分、72a 基部(第1の部分)、72b 移動規制部、72c 凹部、72cf 内面、72d スリット(第2の部分)、U 第1の方向、V 第2の方向