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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170846
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】半導体装置および振動デバイス
(51)【国際特許分類】
   H03B 5/32 20060101AFI20241204BHJP
   H01L 25/00 20060101ALI20241204BHJP
   H01L 23/02 20060101ALI20241204BHJP
【FI】
H03B5/32 H
H01L25/00 B
H01L23/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087585
(22)【出願日】2023-05-29
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】竹内 淳一
【テーマコード(参考)】
5J079
【Fターム(参考)】
5J079AA04
5J079BA43
5J079BA47
5J079HA03
5J079HA07
5J079HA25
(57)【要約】
【課題】配線層の酸化を抑制することのできる半導体装置および振動デバイスを提供する。
【解決手段】半導体装置は、第1面と、前記第1面と表裏関係にある第2面と、を含む半導体基板と、前記半導体基板の前記第2面側に位置し、前記第2面側にある第3面と、前記第3面と表裏関係にある第4面と、を含む第1絶縁層と、前記第1面と前記第2面とを貫通する第1貫通孔と、前記第3面と前記第4面とを貫通し、前記第1貫通孔と連通する第2貫通孔と、を有する貫通孔と、前記第1絶縁層の前記第4面側に配置されている導電層と、前記第1面および前記貫通孔の内面に配置されている第2絶縁層と、前記第1面および前記内面上に位置する前記第2絶縁層上に配置され、前記導電層と電気的に接続されている配線層と、前記貫通孔内において前記配線層を覆う有機樹脂と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面と、前記第1面と表裏関係にある第2面と、を含む半導体基板と、
前記半導体基板の前記第2面側に位置し、前記第2面側にある第3面と、前記第3面と表裏関係にある第4面と、を含む第1絶縁層と、
前記第1面と前記第2面とを貫通する第1貫通孔と、前記第3面と前記第4面とを貫通し、前記第1貫通孔と連通する第2貫通孔と、を有する貫通孔と、
前記第1絶縁層の前記第4面側に配置されている導電層と、
前記第1面および前記貫通孔の内面に配置されている第2絶縁層と、
前記第1面および前記内面上に位置する前記第2絶縁層上に配置され、前記導電層と電気的に接続されている配線層と、
前記貫通孔内において前記配線層を覆う有機樹脂と、を有することを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記有機樹脂は、前記第1面上において前記貫通孔の前記第1面側の開口の周囲に配置されている前記配線層を覆っている請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記有機樹脂の表面を覆い、前記配線層との間で前記有機樹脂を包囲する金属層を有する請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記金属層は、前記有機樹脂の周囲において、前記第1面上に位置する前記配線層と接合されている請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記金属層は、前記第1面上に位置する前記配線層を覆っている請求項3に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記有機樹脂は、前記貫通孔内において、前記第1面側から前記第4面側に向けて厚さが漸増する部分を有する請求項3ないし5のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記配線層は、前記貫通孔内に、表面と前記第1面と平行な面との角度が90°より小さい傾斜部を有する請求項6に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記金属層の構成材料は、金である請求項3ないし5のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記配線層の構成材料は、銅またはアルミニウムである請求項1ないし5のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項10】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の半導体装置と、
前記半導体基板の前記第1面側に配置され、前記配線層と電気的に接続されている振動素子と、
前記第2面側に配置され、前記振動素子を発振させる発振回路と、を有することを特徴とする振動デバイス。
【請求項11】
前記半導体基板の前記第1面側に位置し、前記半導体装置との間に前記振動素子を収容するリッドを有する請求項10に記載の振動デバイス。
【請求項12】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の半導体装置と、
前記半導体基板の前記第1面側に配置されている振動素子と、
前記第1面側に配置され、前記配線層と電気的に接続されており、前記振動素子を発振させる発振回路と、を有することを特徴とする振動デバイス。
【請求項13】
前記半導体基板の前記第1面側に位置し、前記半導体装置との間に前記振動素子を収容するリッドを有する請求項12に記載の振動デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置および振動デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、貫通孔を有するシリコン基板と、シリコン基板の上面に配置された第1端子と、シリコン基板の下面に配置された第2端子と、貫通孔を通って第1端子と第2端子とを電気的に接続する配線と、第1端子に接合された振動素子と、シリコン基板の上面に接合され振動素子を覆うリッドと、を有する振動デバイスが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-195116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような振動デバイスでは、配線が露出しているため、配線が酸化して劣化するおそれがある。特に、配線が酸化し易い金属を含む場合には、この問題が顕著となる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の半導体装置は、第1面と、前記第1面と表裏関係にある第2面と、を含む半導体基板と、
前記半導体基板の前記第2面側に位置し、前記第2面側にある第3面と、前記第3面と表裏関係にある第4面と、を含む第1絶縁層と、
前記第1面と前記第2面とを貫通する第1貫通孔と、前記第3面と前記第4面とを貫通し、前記第1貫通孔と連通する第2貫通孔と、を有する貫通孔と、
前記第1絶縁層の前記第4面側に配置されている導電層と、
前記第1面および前記貫通孔の内面に配置されている第2絶縁層と、
前記第1面および前記内面上に位置する前記第2絶縁層上に配置され、前記導電層と電気的に接続されている配線層と、
前記貫通孔内において前記配線層を覆う有機樹脂と、を有する。
【0006】
本発明の振動デバイスは、上述した半導体装置と、
前記半導体基板の前記第1面側に配置され、前記配線層と電気的に接続されている振動素子と、
前記第2面側に配置され、前記振動素子を発振させる発振回路と、を有する。
【0007】
本発明の振動デバイスは、上述した半導体装置と、
前記半導体基板の前記第1面側に配置されている振動素子と、
前記第1面側に配置され、前記配線層と電気的に接続されており、前記振動素子を発振させる発振回路と、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係る振動デバイスを示す断面図である。
図2】半導体基板に形成された貫通孔の拡大断面図である。
図3】半導体基板に形成された貫通孔の拡大断面図である。
図4】半導体装置の上面を示す平面図である。
図5】振動素子を示す平面図である。
図6】第2実施形態に係る振動デバイスを示す断面図である。
図7】第3実施形態に係る振動デバイスを示す部分拡大断面図である。
図8】第3実施形態に係る振動デバイスを示す部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の半導体装置および振動デバイスを添付図面に示す実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0010】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係る振動デバイスを示す断面図である。図2および図3は、それぞれ、半導体基板に形成された貫通孔の拡大断面図である。図4は、半導体装置の上面を示す平面図である。図5は、振動素子を示す平面図である。なお、説明の便宜上、各図には、互いに直交する3軸をX軸、Y軸およびZ軸として図示している。また、Z軸方向の矢印が向く側を「上」とも言い、反対側を「下」とも言う。また、Z軸方向からの平面視を単に「平面視」とも言う。
【0011】
図1に示すように、振動デバイス1は、半導体装置2と、半導体装置2の上面に配置された振動素子3と、振動素子3を覆って半導体装置2の上面に接合されたリッド4と、を有する。このような振動デバイス1では、半導体装置2とリッド4とで形成されたパッケージPが有する収容空間Sに振動素子3が収容されている。
【0012】
半導体装置2は、半導体基板5を有する。半導体基板5は、シリコン基板である。ただし、半導体基板5としては、特に限定されず、例えば、Ge、GaP、GaAs、InP等のシリコン以外の半導体材料で構成された基板を用いてもよい。また、半導体基板5は、表裏関係にある第1面としての上面5aおよび第2面としての下面5bを有する。また、半導体基板5には、上面5aと下面5bとを貫通する一対の第1貫通孔51、52が形成されている。第1貫通孔51、52は、それぞれ、上面5a側の開口が下面5b側の開口よりも大きいテーパー状をなす。
【0013】
また、半導体装置2は、半導体基板5の上面5aおよび第1貫通孔51、52の内面に形成された第2絶縁層6を有する。第2絶縁層6は、例えば、酸化シリコン(SiO)で構成されている。また、第2絶縁層6は、例えば、スパッタリングにより形成することができる。ただし、第2絶縁層6の構成材料や形成方法は、特に限定されない。
【0014】
また、半導体装置2は、半導体基板5の下面5b側に形成され、振動素子3と電気的に接続された発振回路7を有する。発振回路7は、振動素子3を発振させてクロック信号等の基準信号の周波数を生成する。これにより、振動デバイス1が発振器となり、高い汎用性および需要を期待することができる。
【0015】
発振回路7は、半導体基板5の下面5bに形成されたトランジスタ等の複数の素子70と、半導体基板5の下面5bに積層された積層体と、を有する。積層体は、半導体基板5の下面5bに形成された第1絶縁層71と、第1絶縁層71の下面に形成された配線層72と、配線層72の下面に形成された絶縁層73と、絶縁層73の下面に形成されたパッシベーション膜74と、パッシベーション膜74の下面に形成された端子層75と、を有する。そして、配線層72に含まれる配線や層間を貫通する貫通電極を介して、複数の素子70同士が電気的に接続されて発振回路7が構成されている。
【0016】
このように、半導体基板5に発振回路7を形成することで、半導体基板5のスペースを有効活用することができる。特に、下面5b側に発振回路7を形成することで、リッド4との接合領域がない分、上面5a側に発振回路7を形成する場合と比べて、発振回路7の形成可能領域が広くなる。そのため、発振回路7の設計自由度が増す。なお、本実施形態では、積層体に1つの配線層72が含まれた構成であるが、これに限定されず、複数の配線層72が絶縁層73を介して積層されていてもよい。つまり、第1絶縁層71とパッシベーション膜74との間に、配線層72と絶縁層73とが交互に複数回積層されていてもよい。これにより、配線の引き回し自由度が向上し、回路設計が容易となる。
【0017】
第1絶縁層71は、半導体基板5側に位置する第3面としての上面71aと、上面71aと表裏関係にある第4面としての下面71bと、を有する。また、第1絶縁層71には、上面71aと下面71bとを貫通する第2貫通孔711、712が形成されている。第2貫通孔711は、第1貫通孔51と同軸的に形成され、第1貫通孔51と連通している。以下では、第1貫通孔51および第2貫通孔711が連通してなり、半導体基板5の上面5aから第1絶縁層71の下面71bまでを貫通する貫通孔を「貫通孔H1」とも言う。同様に、第2貫通孔712は、第1貫通孔52と同軸的に形成され、第1貫通孔52と連通している。以下では、第1貫通孔52および第2貫通孔712が連通してなり、半導体基板5の上面5aから第1絶縁層71の下面71bまでを貫通する貫通孔を「貫通孔H2」とも言う。なお、本実施形態では、振動素子3の端子数に合わせて2つの貫通孔H1、H2が形成されているが、貫通孔の数は、特に限定されない。
【0018】
なお、第2貫通孔711は、第1貫通孔51の下側開口よりも小径であり、第1貫通孔51と第2貫通孔711との間に第1絶縁層71の上面71aからなる段差面が形成されている。同様に、第2貫通孔712は、第1貫通孔52の下側開口よりも小径であり、第1貫通孔52と第2貫通孔712との間に第1絶縁層71の上面71aからなる段差面が形成されている。
【0019】
また、配線層72は、貫通孔H1と重なり、貫通孔H1内に露出する導電層としての電極パッド721と、貫通孔H2と重なり、貫通孔H2内に露出する導電層としての電極パッド722と、を有する。また、端子層75は、発振回路7を外装装置と接続するための複数の外部端子751を有する。各外部端子751は、絶縁層73およびパッシベーション膜74を貫通して配線層72と電気的に接続されている。
【0020】
また、図1ないし図3に示すように、半導体装置2は、半導体基板5の上面5a側から貫通孔H1内を通って電極パッド721と電気的に接続された配線層81と、半導体基板5の上面5a側から貫通孔H2内を通って電極パッド722と電気的に接続された配線層82と、を有する。配線層81は、上面5aおよび貫通孔H1の内面に形成された第2絶縁層6上に配置され、その下端部において電極パッド721と電気的に接続されている。同様に、配線層82は、上面5aおよび貫通孔H2の内面に形成された第2絶縁層6上に配置され、その下端部において電極パッド722と電気的に接続されている。このような配線層81、82によって発振回路7から振動素子3側に配線が引き出される。なお、半導体基板5と配線層81、82との間に第2絶縁層6が介在することにより、半導体基板5と配線層81、82とが絶縁されている。
【0021】
また、図4に示すように、配線層81は、上面5a上に位置し、振動素子3が接合される内部端子811を有する。同様に、配線層82は、上面5a上に位置し、振動素子3が接合される内部端子821を有する。
【0022】
配線層81、82の構成材料は、銅(Cu)またはアルミニウム(Al)である。これにより、半導体プロセスを用いて配線層81、82を容易に、かつ、安価に形成することができる。また、例えば、配線層81、82は、メッキ法、特に、無電解メッキ法により形成することができる。これにより、配線層81、82の形成が容易となる。ただし、配線層81、82の構成材料や形成方法は、特に限定されない。なお、構成材料が銅(Cu)であるとは、銅(Cu)を主材料として用いていることを意味し、主材料として銅(Cu)が用いられていれば、他の材料が添加されていてもよい。アルミニウム(Al)についても同様である。
【0023】
図1ないし図3に示すように、さらに、半導体装置2は、貫通孔H1内に配置され、配線層81を覆う有機樹脂91と、貫通孔H2内に配置され、配線層82を覆う有機樹脂92と、を有する。このように、有機樹脂91、92で配線層81、82を覆うことで、配線層81、82の酸化が抑制され、配線層81、82の電気特性の劣化、例えば、抵抗値の上昇を効果的に抑制することができる。そのため、信頼性の高い振動デバイス1となる。
【0024】
特に、本実施形態では、有機樹脂91は、貫通孔H1内に凹没した形状であり、貫通孔H1内に位置する配線層81の全域を覆っている。したがって、配線層81のより広い範囲が有機樹脂91で覆われ、酸化による配線層81の電気特性の劣化をより効果的に抑制することができる。また、有機樹脂91は、貫通孔H1の上側開口から上面5aにはみ出し、貫通孔H1の周囲においても上面5a上に位置する配線層81を覆っている。したがって、配線層81のさらに広い範囲が有機樹脂91で覆われ、酸化による配線層81の電気特性の劣化をさらに効果的に抑制することができる。
【0025】
同様に、有機樹脂92は、貫通孔H2内に凹没した形状であり、貫通孔H2内に位置する配線層82の全域を覆っている。したがって、配線層82のより広い範囲が有機樹脂92で覆われ、酸化による配線層82の電気特性の劣化をより効果的に抑制することができる。また、有機樹脂92は、貫通孔H2の上側開口から上面5aにはみ出し、貫通孔H2の周囲においても上面5a上に位置する配線層82を覆っている。したがって、配線層82のさらに広い範囲が有機樹脂92で覆われ、酸化による配線層82の電気特性の劣化をさらに効果的に抑制することができる。
【0026】
このような有機樹脂91、92の構成材料は、ポリイミド樹脂である。これにより、有機樹脂91、92の形成が容易となる。また、有機樹脂91、92は、フォトリソグラフィー技法を用いて形成することができる。ただし、有機樹脂91、92の構成材料および形成方法は、特に限定されない。
【0027】
さらに、半導体装置2は、有機樹脂91の表面を覆い、配線層81との間に有機樹脂91を包囲する金属層101と、有機樹脂92の表面を覆い、配線層82との間に有機樹脂92を包囲する金属層102と、を有する。これにより、有機樹脂91から発生するガス(以下、「アウトガス」とも言う。)を配線層81と金属層101との間に閉じ込めることができる。同様に、有機樹脂92から発生するアウトガスを配線層82と金属層102との間に閉じ込めることができる。そのため、アウトガスによる収容空間Sの環境変化、特に、圧力の上昇を抑制することができる。したがって、振動素子3の振動特性が安定し、信頼性の高い振動デバイス1となる。
【0028】
また、金属層101は、有機樹脂91の周囲において、上面5a上に位置する配線層81と接合されている。これにより、より確実に、配線層81と金属層101とで有機樹脂91を包囲することができ、配線層81と金属層101との間にアウトガスが漏れる隙間が形成され難くなる。同様に、金属層102は、有機樹脂92の周囲において、上面5a上に位置する配線層82と接合されている。これにより、より確実に、配線層82と金属層102とで有機樹脂92を包囲することができ、配線層82と金属層102との間にアウトガスが漏れる隙間が形成され難くなる。したがって、アウトガスによる収容空間Sの環境変化をより効果的に抑制することができる。
【0029】
さらに、本実施形態では、金属層101は、上面5a上に位置する配線層81を覆っている。つまり、金属層101は、配線層81の有機樹脂91からはみ出した部分を覆っている。これにより、配線層81の全域が、有機樹脂91および金属層101によって覆われるため、酸化による配線層81の電気特性の劣化をさらに効果的に抑制することができる。同様に、金属層102は、配線層82の有機樹脂92からはみ出した部分を覆っている。これにより、配線層82の全域が、有機樹脂92および金属層102によって覆われるため、酸化による配線層82の電気特性の劣化をさらに効果的に抑制することができる。
【0030】
このような金属層101、102の構成材料は、金(Au)である。これにより、金属層101、102の酸化を効果的に抑制することができる。また、金属層101、102が配線層81、82の一部として機能することで、電気抵抗を低めることもできる。また、金属層101、102は、スパッタリングにより形成することができる。ここで、貫通孔H1、H2に埋められた有機樹脂91、92によって上面5a側からの貫通孔H1、H2内への凹みが低減されている。そのため、スパッタリングのカバレッジが確保され、より確実に、金属層101、102をその全域にわたって所望の厚さで形成することができる。ただし、金属層101、102の構成材料および形成方法は、特に限定されない。なお、構成材料が金(Au)であるとは、金(Au)を主材料として用いていることを意味し、主材料として(Au)が用いられていれば、他の材料が添加されていてもよい。
【0031】
リッド4は、半導体基板5と同様、シリコン基板である。これにより、半導体基板5とリッド4との線膨張係数が等しくなり、熱膨張に起因する熱応力の発生が抑えられ、優れた振動特性を有する振動デバイス1となる。また、振動デバイス1を半導体プロセスによって形成することができるため、振動デバイス1を精度よく製造することができると共に、その小型化を図ることができる。ただし、リッド4としては、特に限定されず、シリコン以外の半導体基板、例えば、Ge、GaP、GaAs、InP等の半導体基板を用いてもよい。
【0032】
図1に示すように、リッド4は、その下面に開口し、内部に振動素子3を収容する有底の凹部41を有する。そして、リッド4は、その下面において接合部材を介して半導体装置2の上面に接合されている。これにより、リッド4と半導体装置2との間に振動素子3を収容する収容空間Sが形成される。収容空間Sは、気密であり、減圧状態、好ましくはより真空に近い状態となっている。これにより、粘性抵抗が減り、振動素子3の発振特性が向上する。ただし、収容空間Sの雰囲気は、特に限定されない。
【0033】
図5に示すように、振動素子3は、振動基板31と、振動基板31の表面に配置された電極と、を有する。振動基板31は、厚みすべり振動モードを有し、本実施形態ではATカット水晶基板から形成されている。ATカット水晶基板は、三次の周波数温度特性を有しているため、優れた温度特性を有する振動素子3となる。また、電極は、振動基板31の上面に配置された励振電極321と、下面に励振電極321と対向して配置された励振電極322と、を有する。また、電極は、振動基板31の下面に配置された一対の端子323、324と、端子323と励振電極321とを電気的に接続する配線325と、端子324と励振電極322とを電気的に接続する配線326と、を有する。
【0034】
なお、振動素子3の構成は、上述の構成に限定されない。例えば、振動素子3は、励振電極321、322に挟まれた振動領域がその周囲から突出したメサ型となっていてもよいし、逆に、振動領域がその周囲から凹没した逆メサ型となっていてもよい。また、振動基板31の周囲を研削するベベル加工や、上面および下面を凸曲面とするコンベックス加工が施されていてもよい。
【0035】
また、振動素子3としては、厚みすべり振動モードで振動するものに限定されず、例えば、複数の振動腕が面内方向に屈曲振動する振動素子であってもよい。つまり、振動基板31は、ATカット水晶基板から形成されたものに限定されず、ATカット水晶基板以外の水晶基板、例えば、Xカット水晶基板、Yカット水晶基板、Zカット水晶基板、BTカット水晶基板、SCカット水晶基板、STカット水晶基板等から形成されていてもよい。また、本実施形態では、振動基板31が水晶で構成されているが、これに限定されず、例えば、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム、四ホウ酸リチウム、ランガサイト、ニオブ酸カリウム、リン酸ガリウム等の圧電単結晶体により構成されていてもよいし、これら以外の圧電単結晶体で構成されていてもよい。更にまた、振動素子3は、圧電駆動型の振動素子に限らず、静電気力を用いた静電駆動型の振動素子であってもよい。
【0036】
このような振動素子3は、導電性の接合部材B1、B2によって半導体装置2の上面に固定されている。また、接合部材B1は、内部端子811と端子323とを電気的に接続し、接合部材B2は、内部端子821と端子324とを電気的に接続している。これにより、振動素子3と発振回路7とが接合部材B1、B2および配線層81、82を介して電気的に接続される。
【0037】
接合部材B1、B2としては、導電性と接合性とを兼ね備えていれば、特に限定されず、例えば、金バンプ、銀バンプ、銅バンプ、はんだバンプ等の各種金属バンプ、ポリイミド系、エポキシ系、シリコーン系、アクリル系の各種接着剤に銀フィラー等の導電性フィラーを分散させた導電性接着剤等を用いることができる。接合部材B1、B2として前者の金属バンプを用いると、接合部材B1、B2からのガスの発生を抑制でき、収容空間Sの環境変化、特に圧力の上昇を効果的に抑制することができる。また、接合部材B1、B2が濡れ広がらないので、接合部材B1、B2およびこれらの離間距離を小さくすることができ、振動デバイス1の小型化を図ることができる。一方、接合部材B1、B2として後者の導電性接着剤を用いると、接合部材B1、B2が金属バンプに比べて柔らかくなり、振動素子3に応力が伝わり難くなる。
【0038】
以上、振動デバイス1について説明した。このような振動デバイス1が有する半導体装置2は、前述したように、第1面である上面5aと、上面5aと表裏関係にある第2面である下面5bと、を含む半導体基板5と、半導体基板5の下面5b側に位置し、下面5b側にある第3面である上面71aと、上面71aと表裏関係にある第4面である下面71bと、を含む第1絶縁層71と、上面5aと下面5bとを貫通する第1貫通孔51と、上面71aと下面71bとを貫通し、第1貫通孔51と連通する第2貫通孔711と、を有する貫通孔H1と、第1絶縁層71の下面71b側に配置されている導電層である電極パッド721と、上面5aおよび貫通孔H1の内面に配置されている第2絶縁層6と、上面5aおよび貫通孔H1の内面上に位置する第2絶縁層6上に配置され、電極パッド721と電気的に接続されている配線層81と、貫通孔H1内において配線層81を覆う有機樹脂91と、を有する。このような構成によれば、有機樹脂91で配線層81が覆われる。そのため、配線層81の酸化を抑制し、配線層81の電気特性の劣化を効果的に抑制することができる。したがって、信頼性の高い振動デバイス1となる。
【0039】
また、前述したように、有機樹脂91は、上面5a上において貫通孔H1の上面5a側の開口の周囲に配置されている配線層81を覆っている。これにより、配線層81のより広い範囲が有機樹脂91で覆われ、酸化による配線層81の電気特性の劣化をさらに効果的に抑制することができる。
【0040】
また、前述したように、有機樹脂91の表面を覆い、配線層81との間で有機樹脂91を包囲する金属層101を有する。これにより、有機樹脂91から発生するアウトガスが配線層81と金属層101との間に閉じ込められる。そのため、アウトガスによる収容空間Sの環境変化、特に、圧力の上昇を抑制することができる。したがって、振動素子3の振動特性が安定し、信頼性の高い振動デバイス1となる。
【0041】
また、前述したように、金属層101は、有機樹脂91の周囲において、上面5a上に位置する配線層81と接合されている。これにより、より確実に、配線層81と金属層101とで有機樹脂91を包囲することができ、配線層81と金属層101との間にアウトガスが漏れる隙間が形成され難くなる。したがって、アウトガスによる収容空間Sの環境変化をより効果的に抑制することができる。
【0042】
また、前述したように、金属層101は、上面5a上に位置する配線層81を覆っている。これにより、配線層81の全域が有機樹脂91および金属層101によって覆われるため、酸化による配線層81の電気特性の劣化をさらに効果的に抑制することができる。
【0043】
また、前述したように、金属層101の構成材料は、金(Au)である。これにより、金属層101の酸化を抑制することができる。
【0044】
また、前述したように、配線層81の構成材料は、銅(Cu)またはアルミニウム(Al)である。これにより、半導体プロセスを用いて配線層81を容易に、かつ、安価に形成することができる。半面、配線層81が酸化し易くなるが、配線層81を有機樹脂91や金属層101で覆うことで、そのデメリットを解消することができる。
【0045】
また、前述したように、振動デバイス1は、半導体装置2と、半導体基板5の上面5a側に配置され、配線層81と電気的に接続されている振動素子3と、下面5b側に配置され、振動素子3を発振させる発振回路7と、を有する。このような構成によれば、半導体装置2の効果を享受することができ、信頼性の高い振動デバイス1となる。
【0046】
また、前述したように、振動デバイス1は、半導体基板5の上面5a側に位置し、半導体装置2との間に振動素子3を収容するリッド4を有する。これにより、振動素子3を保護することができる。
【0047】
<第2実施形態>
図6は、第2実施形態に係る振動デバイスを示す断面図である。
【0048】
本実施形態に係る振動デバイス1は、半導体装置2の構成が異なること以外は、前述した第1実施形態の振動デバイス1と同様である。なお、以下の説明では、本実施形態の振動デバイス1に関し、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項に関してはその説明を省略する。また、本実施形態の図では、前述した実施形態と同様の構成について、同一符号を付している。
【0049】
図6に示すように、本実施形態の半導体装置2では、第1実施形態と上下が反転しており、半導体基板5の上面5a側に発振回路7が形成されている。以下、半導体装置2について説明する。
【0050】
半導体基板5は、表裏関係にある第1面としての下面5bおよび第2面としての上面5aを有する。また、半導体基板5には、下面5bと上面5aとを貫通する2つの第1貫通孔51、52が形成されている。第1貫通孔51、52は、それぞれ、下面5b側の開口が上面5a側の開口よりも大きいテーパー状をなす。そして、半導体基板5の下面5bおよび第1貫通孔51の内面に第2絶縁層6が形成されている。
【0051】
発振回路7は、半導体基板5の上面5a側に、リッド4との接合領域を除くようにして形成されている。発振回路7は、半導体基板5の上面5aに形成された素子70と、半導体基板5の上面5aに形成された第1絶縁層71と、第1絶縁層71の上面に形成された配線層72と、配線層72の上面に形成された絶縁層73と、絶縁層73の上面に形成されたパッシベーション膜74と、パッシベーション膜74の上面に形成された端子層75と、を有する。半導体基板5の上面5a側に発振回路7を形成することで、発振回路7がパッケージP内に収容され、保護される。
【0052】
また、端子層75は、発振回路7を振動素子3と接続するための2つの内部端子752、753を有する。内部端子752、753は、それぞれ、絶縁層73およびパッシベーション膜74を貫通して配線層72と電気的に接続されている。また、図示しないが、内部端子752は、接合部材B1を介して振動素子3の端子323と電気的に接続され、内部端子753は、接合部材B2を介して振動素子3の端子324と電気的に接続されている。これにより、振動素子3と発振回路7とが接合部材B1、B2および内部端子752、753を介して電気的に接続される。
【0053】
また、電極パッド721は、発振回路7から外部へ発振信号などを出力するための出力信号用のパッド、または外部から発振回路7へ電源電圧やグランド電位を供給するための入力信号用のパッドである。そして、配線層81は、半導体基板5の下面5b側から貫通孔H1内を通って電極パッド721と電気的に接続されており、配線層82は、半導体基板5の下面5b側から貫通孔H2内を通って電極パッド722と電気的に接続されている。このような発振回路7に電気的に接続された配線層81、82によって、発振回路7から外部に配線が引き出される。
【0054】
また、有機樹脂91は、貫通孔H1内に配置され、貫通孔H1内において配線層81を覆っている。同様に、有機樹脂92は、貫通孔H2内に配置され、貫通孔H2内において配線層81を覆っている。これにより、配線層81、82の酸化が抑制され、配線層81、82の電気特性の劣化を効果的に抑制することができる。そのため、信頼性の高い振動デバイス1となる。
【0055】
また、金属層101は、有機樹脂91の表面を覆い、配線層81との間で有機樹脂91を包囲する。同様に、金属層102は、有機樹脂92の表面を覆い、配線層82との間で有機樹脂92を包囲する。
【0056】
以上のように、本実施形態の振動デバイス1は、半導体装置2と、半導体基板5の上面5a側に配置されている振動素子3と、上面5a側に配置され、配線層81と電気的に接続されており、振動素子3を発振させる発振回路7と、を有する。このような構成によれば、半導体装置2の効果を享受することができ、信頼性の高い振動デバイス1となる。
【0057】
また、前述したように、半導体基板5の上面5a側に位置し、半導体装置2との間に振動素子3を収容するリッド4を有する。これにより、振動素子3を保護することができる。
【0058】
以上のような第2実施形態によっても、前述した第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0059】
<第3実施形態>
図7および図8は、それぞれ、第3実施形態に係る振動デバイスを示す部分拡大断面図である。
【0060】
本実施形態に係る振動デバイス1は、半導体装置2の構成が異なること以外は、前述した第1実施形態の振動デバイス1と同様である。なお、以下の説明では、本実施形態の振動デバイス1に関し、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項に関してはその説明を省略する。また、本実施形態の各図では、前述した実施形態と同様の構成について、同一符号を付している。
【0061】
図7および図8に示すように、配線層81、82をメッキ法により形成すると、上面5a側が厚く、貫通孔H1、H2の底に向かうほど薄くなる場合がある。特に、図示の例では、配線層81、82が反り返って貫通孔H1、H2の上側開口の径が狭まり、上側開口付近において、その表面と上面5aと平行な面との角度θが90°より小さい傾斜部812、822が形成されている。つまり、傾斜部812、822は、上面5a側ではなく、下面5b側を向いている。
【0062】
これに対して、有機樹脂91、92は、上面5a側が薄く、貫通孔H1、H2の底に向かうほど厚くなるように形成されている。つまり、上面5a側から下面71b側に向けて厚さが漸増するように形成されている。これにより、有機樹脂91、92によって配線層81、82の反り返りが解消され、金属層101、102のカバレッジを確保することができる。したがって、より確実に、金属層101、102をその全域にわたって所望の厚さで形成することができる。特に、有機樹脂91、92をフォトリソグラフィー技法により形成すると、容易に図示のように形成することができる。
【0063】
このように、有機樹脂91、92は、配線層81、82の酸化を抑制する機能だけではなく、金属層101、102のカバレッジを確保する機能を発揮することができ、特に重要な役割を担っている。
【0064】
以上のように、本実施形態の振動デバイス1では、有機樹脂91、92は、貫通孔H1、H2内において上面5a側から下面71b側に向けて厚さが漸増する部分を有する。これにより、金属層101、102のカバレッジを確保することができる。したがって、より確実に、金属層101、102をその全域にわたって所望の厚さで形成することができる。
【0065】
また、前述したように、配線層81、82は、貫通孔H1、H2内に、表面と上面5aと平行な面との角度θが90°より小さい傾斜部812、822を有する。このような場合であっても、有機樹脂91、92によって配線層81、82の反り返りが解消され、金属層101、102のカバレッジを確保することができる。したがって、より確実に、金属層101、102をその全域にわたって所望の厚さで形成することができる。
【0066】
以上のような第3実施形態によっても、前述した第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0067】
以上、本発明の半導体装置を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、本発明に、他の任意の構成物が付加されていてもよい。また、本発明は、前記各実施形態のうちの、任意の2以上の構成を組み合わせたものであってもよい。
【0068】
また、前述した実施形態では、半導体装置2を振動デバイス1に適用した例について説明したが、半導体装置2の適用例は、特に限定されず、如何なる機器にも適用することができる。また、半導体装置2を単体で用いることもできる。
【符号の説明】
【0069】
1…振動デバイス、2…半導体装置、3…振動素子、31…振動基板、321…励振電極、322…励振電極、323…端子、324…端子、325…配線、326…配線、4…リッド、41…凹部、5…半導体基板、5a…上面、5b…下面、51…第1貫通孔、52…第1貫通孔、6…第2絶縁層、7…発振回路、70…素子、71…第1絶縁層、71a…上面、71b…下面、711…第2貫通孔、712…第2貫通孔、72…配線層、721…電極パッド、722…電極パッド、73…絶縁層、74…パッシベーション膜、75…端子層、751…外部端子、752…内部端子、753…内部端子、81…配線層、811…内部端子、812…傾斜部、82…配線層、821…内部端子、822…傾斜部、91…有機樹脂、92…有機樹脂、101…金属層、102…金属層、B1…接合部材、B2…接合部材、H1…貫通孔、H2…貫通孔、P…パッケージ、S…収容空間、θ…角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8