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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170884
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】ガバナ装置
(51)【国際特許分類】
   F02B 25/14 20060101AFI20241204BHJP
   F02M 35/10 20060101ALI20241204BHJP
   F02B 25/22 20060101ALI20241204BHJP
   F02D 33/00 20060101ALI20241204BHJP
   F02D 37/00 20060101ALI20241204BHJP
   F02D 35/00 20060101ALI20241204BHJP
   F02D 31/00 20060101ALI20241204BHJP
【FI】
F02B25/14 A
F02M35/10 301F
F02B25/22
F02D33/00 310E
F02D37/00 301E
F02D35/00 370J
F02D31/00 310A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087636
(22)【出願日】2023-05-29
(71)【出願人】
【識別番号】317019683
【氏名又は名称】株式会社Willbe
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】仲出川 大補
(72)【発明者】
【氏名】上野山 和之
(72)【発明者】
【氏名】木村 隆宏
(72)【発明者】
【氏名】加藤 利明
(72)【発明者】
【氏名】小牧 真也
(57)【要約】
【課題】層状掃気エンジンの回転数の上昇を早めることができる。
【解決手段】燃焼ガスを燃焼室から掃気するための先導空気が流通する先導空気通路、および燃料が混合されている混合気が流通する混合気通路を含む層状掃気エンジンの回転数を調整するためのガバナ装置は、層状掃気エンジンのクランク軸に連結され、層状掃気エンジンの回転数に応じたガバナ力を発生させるフライウェイトと、フライウェイトが発生させたガバナ力に応じて先導空気通路の開度を調整可能な先導空気バルブと、混合気通路の開度、および先導空気通路の開度を同時に調整可能なスロットルバルブと、を備え、フライウェイトは、ガバナ力をスロットルバルブに非伝達である。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼ガスを燃焼室から掃気するための先導空気が流通する先導空気通路、および燃料が混合されている混合気が流通する混合気通路を含む層状掃気エンジンの回転数を調整するためのガバナ装置であって、
前記層状掃気エンジンのクランク軸に連結され、前記層状掃気エンジンの回転数に応じたガバナ力を発生させるフライウェイトと、
前記フライウェイトが発生させた前記ガバナ力に応じて前記先導空気通路の開度を調整可能な先導空気バルブと、
前記混合気通路の開度、および前記先導空気通路の開度を同時に調整可能なスロットルバルブと、を備え、
前記フライウェイトは、前記ガバナ力を前記スロットルバルブに非伝達である、
ガバナ装置。
【請求項2】
前記先導空気バルブは、前記スロットルバルブよりも前記先導空気通路の下流側に位置する、
請求項1に記載のガバナ装置。
【請求項3】
前記先導空気バルブは、バタフライ弁である、
請求項1又は2に記載のガバナ装置。
【請求項4】
前記バタフライ弁は、弁体と、前記弁体を回動可能に保持する回動軸と、を含み、
前記先導空気通路を前記先導空気通路が延びる延在方向から視た場合に、前記回動軸は、前記先導空気通路の中心と前記混合気通路の中心とを通過する仮想の直線が延びる方向と交差する交差方向に沿って延びている、
請求項3に記載のガバナ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、層状掃気エンジンの回転数を調整するためのガバナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガバナ装置は、汎用エンジンの回転数に応じた力(ガバナ力)を発生させ、このガバナ力をスロットルバルブに伝達することで、汎用エンジンの回転数を調整する(特許文献1を参照)。そして、この汎用エンジンが層状掃気エンジンである場合、スロットルバルブは、先導空気通路を流通する先導空気の流量、および混合気通路を流通する混合気の流量を同時に調整可能となっている(特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-200471号公報
【特許文献2】特開2008-111363号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、先導空気は、混合気よりも小さい密度を有しているため、混合気よりもスロットルバルブの開度変化に対する応答が優れており、混合気よりも早く燃焼室内に到達する。このため、ガバナ装置によって層状掃気エンジンの回転数を上昇させる際に、一時的に空燃比が大きく(燃料が薄く)なり、層状掃気エンジンの回転数の上昇に時間がかかる虞がある。
【0005】
本開示は、上述の課題に鑑みてなされたものであって、層状掃気エンジンの回転数の上昇を早めることができるガバナ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本開示に係るガバナ装置は、燃焼ガスを燃焼室から掃気するための先導空気が流通する先導空気通路、および燃料が混合されている混合気が流通する混合気通路を含む層状掃気エンジンの回転数を調整するためのガバナ装置であって、前記層状掃気エンジンのクランク軸に連結され、前記層状掃気エンジンの回転数に応じたガバナ力を発生させるフライウェイトと、前記フライウェイトが発生させた前記ガバナ力に応じて前記先導空気通路の開度を調整可能な先導空気バルブと、を備え、前記フライウェイトは、前記ガバナ力を前記スロットルバルブに非伝達である。
【発明の効果】
【0007】
本開示のガバナ装置によれば、層状掃気エンジンの回転数の上昇を早めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態に係るガバナ装置を備える層状掃気エンジンの構成を概略的に示す図である。
図2】一実施形態に係る層状掃気エンジンのシリンダの構成を説明するための図である。
図3】一実施形態に係るガバナ装置の構成を概略的に示す図である。
図4】一実施形態に係る先導空気バルブの構成を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施の形態によるガバナ装置について、図面に基づいて説明する。かかる実施の形態は、本開示の一態様を示すものであり、この開示を限定するものではなく、本開示の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。
【0010】
本開示に係るガバナ装置1は、層状掃気エンジン100の回転数を調整する。層状掃気エンジン100は、後述するように燃料Fの燃焼によって発生する燃焼ガスGを燃焼室103から掃気するための先導空気A1が流通する先導空気通路3、および燃料Fが混合されている混合気A2が流通する混合気通路5を含んでいる。層状掃気エンジン100は、燃焼ガスGを燃焼室103から掃気する際に、先導空気A1が混合気A2と燃焼ガスGとの間の境界層となることで混合気A2と燃焼ガスGとの混合を避け、燃焼室103からの混合気A2の流出を低減させるようになっている。このような層状掃気エンジン100は、例えば、草刈機や刈払機のような利用者によって携行可能な作業機の動力源として用いられる。
【0011】
図1は、一実施形態に係るガバナ装置1を備える層状掃気エンジン100の構成を概略的に示す図である。図2は、一実施形態に係る層状掃気エンジン100のシリンダ102の構成を説明するための図である。
【0012】
図1に例示するように、層状掃気エンジン100は、シリンダ102と、クランクケース104と、燃料Fが貯蔵されている燃料タンク106と、エアクリーナ108と、キャブレータ110と、インシュレータ112と、マフラ114と、フライウェイト2および先導空気バルブ4を有するガバナ装置1と、を含む。
【0013】
シリンダ102は、内部に燃焼室103が形成されており、燃焼室103内にはピストン116が配置されている。クランクケース104は、内部にクランク室105が形成されており、クランク室105内にはクランク軸118が配置されている。クランク軸118は、コネクティングロッド120を介してピストン116と連結されている。シリンダ102およびクランクケース104のそれぞれは、アルミニウム合金のような金属製であり、成形型(鋳型)により成形される。以下では、ピストン116がシリンダ102内を往復する方向のうち燃焼室103を圧縮する方向を上下方向D1の上方とし、この圧縮方向とは反対方向を上下方向D1の下方とする。シリンダ102のさらに具体的な構成については後述する。
【0014】
エアクリーナ108は、層状掃気エンジン100の外部から吸入された空気から異物を除去する。キャブレータ110は、エアクリーナ108によって異物が除去された空気(以下、清浄空気Aとする)に燃料Fを混合して混合気A2を生成する。インシュレータ112は、断熱のためにシリンダ102とキャブレータ110との間に配置されている。
【0015】
一実施形態では、図1および図2に示すように、層状掃気エンジン100は、エアクリーナ108から燃焼室103まで延びる先導空気通路3を含んでいる。この先導空気通路3は、キャブレータ110、およびインシュレータ112の順に通過している。先導空気通路3は、清浄空気Aが先導空気A1として燃焼室103に向かって流通する。一実施形態では、先導空気通路3には、後述する先導空気バルブ4が設けられている。
【0016】
一実施形態では、層状掃気エンジン100は、上述した先導空気通路3とは別にエアクリーナ108から燃焼室103まで延びる混合気通路5を含んでいる。この混合気通路5は、キャブレータ110、およびインシュレータ112の順に通過している。混合気通路5は、先導空気通路3よりも下方に位置している。図2に示すように、混合気通路5は、混合気通路5の上流側に位置し、清浄空気Aがエアクリーナ108から流入する先行通路7を含む。先行通路7内には燃料タンク106から供給される燃料Fを噴射する燃料ノズル131が配置されている。先行通路7を流通する清浄空気Aに燃料Fが混合され、混合気A2が生成される。尚、一実施形態では、混合気通路5はエアクリーナ108から燃焼室103まで延びているが、本開示はこの形態に限定されない。幾つかの実施形態では、混合気通路5は、先導空気通路3から分岐している。この場合、混合気通路の上流端(分岐位置)は、スロットルバルブ150内であってもよいし、スロットルバルブ150よりも上流側(エアクリーナ108側)であってもよい。
【0017】
層状掃気エンジン100は、混合気通路5の開度、および先導空気通路3の開度を同時に調整可能なスロットルバルブ150を含む。一実施形態では、スロットルバルブ150は、ロータリーバルブであって、キャブレータ110に設けられている。スロットルバルブ150は、円柱形状を有しており、先導空気通路3と混合気通路5とを上下方向D1に貫通している。スロットルバルブ150には、先導空気通路3の一部を構成する第1の貫通孔152と、混合気通路5の一部を構成する第2の貫通孔154が形成されている。スロットルバルブ150は、不図示のスロットルレバーと接続されている。作業機の利用者がスロットルレバーを操作することでスロットルバルブ150を介して、混合気通路5の開度、および先導空気通路3の開度が同時に調整される。一実施形態では、スロットルバルブ150は、後述するフライウェイト2が発生させたガバナ力GFが非伝達であるように構成されている。つまり、ガバナ装置1は、スロットルバルブ150を回転させるようにはなっていない。
【0018】
一実施形態では、図1および図2に示すように、層状掃気エンジン100は、燃焼室103からマフラ114まで延びる排気通路11を含んでいる。排気通路11は、燃焼室103から排出された燃焼ガスGがマフラ114に向かって流通する。マフラ114は、燃焼ガスGの騒音を低減させる。
【0019】
図2を参照して、シリンダ102の具体的な構成について説明する。一実施形態では、図2に例示するように、シリンダ102には、混合気通路5に接続され燃焼室103に混合気A2を流入させるための吸気ポート122、および排気通路11に接続され燃焼ガスGを燃焼室103から排出するための排気ポート124が形成されている。
【0020】
シリンダ102は、燃焼室103とクランク室105とを連通させる掃気通路126と、一端が掃気通路126に接続され他端が先導空気通路3に接続されている空気分岐通路128と、を含んでいる。掃気通路126は、燃焼室103に開口する掃気ポート130を含んでいる。掃気ポート130は、排気ポート124の上端よりも下方に位置している。掃気ポート130は、吸気ポート122の上端よりも上方に位置している。空気分岐通路128の他端には、先導空気通路3に開口する入口128aが形成されている。
【0021】
このような層状掃気エンジン100では、ピストン116が上死点(上方)に向かう吸気行程時にクランク室105に混合気A2が充填され、同時に先導空気A1が掃気通路126(特に掃気通路126の上部)に充填される。そして、ピストン116が上死点から下降する燃焼行程や排気行程中に掃気ポート130が開口し、掃気通路126内の先導空気A1が燃焼室103内に混合気A2に先立って導入されて、燃焼ガスGを燃焼室103から掃気する。そして、クランク室105の混合気A2が、掃気通路126を通過して、燃焼室103内に導入される。このため、層状掃気エンジン100は、燃焼室103からの混合気A2の流出を低減させるようになっている。
【0022】
(構成)
一実施形態に係るガバナ装置1の構成について説明する。図3は、一実施形態に係るガバナ装置1の構成を概略的に示す図である。図3に示すように、ガバナ装置1は、フライウェイト2と、先導空気バルブ4と、を含む。一実施形態では、ガバナ装置1は、一対のフライウェイト2、2を含んでいる。
【0023】
以下、クランク軸118の軸線Oが延びる方向を軸線方向D2とする。軸線方向D2のうちクランク軸118の先端側(フライウェイト2側)を軸線方向D2の一方側とし、フライウェイト2側とは反対側を軸線方向D2の他方側とする。
【0024】
一実施形態では、図3に例示するように、ガバナ装置1は、クランク軸118の先端を含む先端部132に接続されている駆動プーリ134を含んでいる。駆動プーリ134は、不図示のレバーとも接続されている。作業機の利用者は、レバーを操作することで駆動プーリ134を介してクランク軸118を回転させて、層状掃気エンジン100を始動させる。
【0025】
フライウェイト2は、層状掃気エンジン100のクランク軸118に連結されている。このフライウェイト2は、層状掃気エンジン100の回転数に応じたガバナ力GFを発生させる。図3に例示する形態では、フライウェイト2は、クランク軸118の回転時に発生する遠心力を利用してガバナ力GFを発生させるものであり、アーム部6と、凸部8と、ウェイト部10と、を含む。
【0026】
アーム部6は、棒状形状を有しており、基端部12を中心として回動可能に構成されている。具体的には、基端部12には、駆動プーリ134に接続されているピン13が挿通される孔14が形成されている。アーム部6は、ピン13によって回動可能に支持されている。アーム部6は、基端部12からクランク軸118に向かって延びている。
【0027】
凸部8は、アーム部6の先端部16から軸線方向D2の他方側に突出している。ウェイト部10は、アーム部6の基端部12に取り付けられている。図3に例示する形態では、基端部12は折り曲げられており、ウェイト部10は基端部12よりも軸線方向D2の他方側に位置している。
【0028】
図3に例示する形態では、ガバナ装置1は、ガバナスリーブ136、ワイヤー138、およびスプリング140をさらに含んでいる。ガバナスリーブ136は、筒形状を有しており、クランク軸118の外周回りに配置されている。ガバナスリーブ136は、アーム部6が回動した際に凸部8が通過する軌道上に配置されている。このため、ガバナスリーブ136はフライウェイト2によってガバナ力GFで押圧され、軸線方向D2の他方側に移動するように構成されている。
【0029】
ワイヤー138は、ガバナスリーブ136と先導空気バルブ4とを接続している。ワイヤー138は、ガバナスリーブ136の移動によって発生する引張力によって先導空気バルブ4を回転させる。スプリング140は、一端が固定壁142に固定され、他端がガバナスリーブ136の軸線方向D2の他方側の端面に接続されている。固定壁142は、スプリング140の一端の軸線方向D2の位置を固定している。固定壁142は、例えば、クランクケース104と一体的に接続されているクランクケース104内の内壁である。
【0030】
先導空気バルブ4は、フライウェイト2が発生させたガバナ力GFに応じて先導空気通路の開度を調整する。一実施形態では、図3に例示するように、先導空気バルブ4は、スロットルバルブ150よりも先導空気通路3の下流側に位置する。そして、図2に示すように、先導空気バルブ4は、シリンダ102内に設けられている。幾つかの実施形態では、先導空気バルブ4は、インシュレータ112内に設けられている。尚、別の実施形態では、先導空気バルブ4は、スロットルバルブ150よりも先導空気通路3の上流側に位置している。
【0031】
先導空気バルブ4の具体的な構成の一例について説明する。図4は、一実施形態に係る先導空気バルブ4の構成を概略的に示す図であって、先導空気通路3を先導空気通路3が延びる延在方向の燃焼室103側から視ている。
【0032】
図4に例示するように、一実施形態では、先導空気バルブ4は、バタフライ弁であり、弁体20と、弁体20を回動可能に保持する回動軸22と、を含む。図4に例示する形態では、弁体20は、円板形状を有しており、ボルトのような締結具24によって回動軸22に連結されている。より具体的には、弁体20は楕円形状を有しており、閉弁時に弁体20が全閉を通り越して開いてしまうことを防ぐストッパーが不要となっている。また、閉弁時に必要なワイヤー138の引きストロークを短くでき、ガバナ装置1を小型化することができる。
【0033】
回動軸22は、棒形状を有しており、先導空気通路3の中心C1と混合気通路5の中心C2とを通過する仮想の直線Lが延びる延在方向と交差する交差方向D3に沿って延びている。一実施形態では、この延在方向は上下方向D1に沿って延びており、交差方向D3は上下方向D1と直交する左右方向である。回動軸22は、右端が左端よりも上方に位置するように、左右方向に沿って延びている。幾つかの実施形態では、回動軸22は、弁体20が取り付けられる組付部の断面がD形状となるようにDカットされている。このような構成によれば、閉弁時の開口面積を小さく、開弁時の開口面積を大きくすることができる。
【0034】
図4に例示する形態では、ガバナ装置1は、回動軸22とワイヤー138とを接続する接続部材26をさらに含んでいる。ワイヤー138は上下方向D1に沿って延びている。接続部材26は、回動軸22の交差方向D3の右側に接続されており、ワイヤー138の引張力によって回動軸22を回動させる。回動軸22が回動すると弁体20が回動し、先導空気通路3の開度が変化する。
【0035】
(作用・効果)
一実施形態に係るガバナ装置1の作用・効果について説明する。先導空気A1は混合気A2よりも小さい密度を有しており、混合気A2よりも流通速度が大きい。このため、従来からのスロットルバルブ150の開度を調整するガバナ装置では、層状掃気エンジン100の回転数を上昇させる際に、先導空気通路3の開度および混合気通路5の開度の両方が大きくなり、一時的に燃焼室103内の空燃比が大きく(燃料Fが薄く)なる。このため、層状掃気エンジン100の回転数の上昇に時間がかかる虞がある。
【0036】
このような虞に対して、一実施形態によれば、ガバナ装置1は、層状掃気エンジン100の回転数に応じて発生したガバナ力GFで先導空気バルブ4を回転させ、先導空気通路3の開度を調整する。このため、ガバナ装置1が作動し層状掃気エンジン100の回転数を上昇させる際に、ガバナ装置1によってスロットルバルブ150の開度が調整されないので、ガバナ装置1に関係なく回転上昇に必要な量の燃料が混合気通路5を流れる。よって、一時的に燃焼室103の空燃比が大きくなることを抑制できる。よって、層状掃気エンジン100の回転数の上昇を早めることができる。例えば、層状掃気エンジン100が草刈機や刈払機に搭載されている場合、草を刈り取りにいくとき(いったん、層状掃気エンジン100の回転数が低下させられたとき)の層状掃気エンジン100の回転数の復帰を速めることができる。
【0037】
一実施形態によれば、先導空気バルブ4は、スロットルバルブ150とは独立して設けられる。このため、ガバナ力GFをスロットルバルブ150に伝達させるための機構が不要となり、既存キャブレータの構造を変更することなくガバナ装置1を層状掃気エンジン100にとりつけることができる。
【0038】
通常、層状掃気エンジン100では、シリンダ102の熱がキャブレータ110に伝わることを抑制するため、シリンダ102とキャブレータ110との間に断熱部材が設けられている。このため、先導空気通路3は、スロットルバルブ150の下流側がスロットルバルブ150の上流側よりも長くなっている。よって、先導空気バルブ4がスロットルバルブ150よりも先導空気通路3の下流側に位置することで、層状掃気エンジン100の寸法の拡大を抑制することができる。また、先導空気バルブ4から燃焼室103までの距離を短くすることで、先導空気A1の応答性の感度を向上させることができる。
【0039】
一実施形態によれば、先導空気バルブ4としてバタフライ弁が適用されることで、先導空気バルブ4を設置することによるコスト上昇を抑制することができる。一実施形態によれば、回動軸22を交差方向D3に沿って延ばすことで、回動軸22の軸線方向がワイヤー138の引張方向(上下方向D1)に垂直に近い角度に設定されるので、フライウェイト2から回動軸22に伝達されるガバナ力GFの損失を抑制することができる。また、回動軸22が混合気通路5に干渉することを抑制できる。
【0040】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0041】
[1]本開示に係るガバナ装置(1)は、
燃焼ガス(G)を燃焼室(103)から掃気するための先導空気(A1)が流通する先導空気通路(3)、および燃料(F)が混合されている混合気(A2)が流通する混合気通路(5)を含む層状掃気エンジン(100)の回転数を調整するためのガバナ装置であって、
前記層状掃気エンジンのクランク軸(118)に連結され、前記層状掃気エンジンの回転数に応じたガバナ力(GF)を発生させるフライウェイト(2)と、
前記フライウェイトが発生させた前記ガバナ力に応じて前記先導空気通路の開度を調整可能な先導空気バルブ(4)と、
前記混合気通路の開度、および前記先導空気通路の開度を同時に調整可能なスロットルバルブ(150)と、を備え、
前記フライウェイトは、前記ガバナ力を前記スロットルバルブに非伝達である。
【0042】
先導空気は混合気よりも小さい密度を有しているため、層状掃気エンジンの回転数を上昇させる際に、混合気よりも早く燃焼室内に到達する。このため、一時的に空燃比が大きく(燃料が薄く)なり、層状掃気エンジンの回転数の上昇に時間がかかる虞がある。このような虞に対して、上記[1]に記載の構成によれば、先導空気バルブは、フライウェイトが発生させたガバナ力に応じて先導空気通路の開度を調整する。このため、層状掃気エンジンの回転数を上昇させる際に、一時的に空燃比が大きくなることを抑制し、層状掃気エンジンの回転数の上昇を早めることができる。
【0043】
さらに、上記[1]に記載の構成によれば、先導空気バルブは、スロットルバルブとは独立して設けられる。このため、ガバナ力をスロットルバルブに伝達させるための機構が不要となり、ガバナ装置の設計を簡易化することができる。
【0044】
[2]幾つかの実施形態では、上記[1]に記載の構成において、
前記先導空気バルブは、前記スロットルバルブよりも前記先導空気通路の下流側に位置する。
【0045】
通常、層状掃気エンジンでは、シリンダ(内部に燃焼室が形成されている)の熱がキャブレータ(スロットルバルブが設けられている)に伝わることを抑制するため、シリンダとキャブレータとの間に断熱部材が設けられている。このため、先導空気通路は、スロットルバルブの下流側がスロットルバルブの上流側よりも長くなっている。よって、上記[2]に記載の構成によれば、層状掃気エンジンの寸法の拡大を抑えて先導空気バルブを設けることができる。また、先導空気バルブから燃焼室までの距離を短くすることで、先導空気の応答性の感度を向上させることができる。
【0046】
[3]幾つかの実施形態では、上記[1]又は[2]に記載の構成において、
前記先導空気バルブは、バタフライ弁である。
【0047】
上記[3]に記載の構成によれば、先導空気バルブを設置することによるコスト上昇を抑制することができる。
【0048】
[4]幾つかの実施形態では、上記[3]に記載の構成において、
前記バタフライ弁は、弁体(20)と、前記弁体を回動可能に保持する回動軸(22)と、を含み、
前記先導空気通路を前記先導空気通路が延びる延在方向から視た場合に、前記回動軸は、前記先導空気通路の中心(C1)と前記混合気通路の中心(C2)とを通過する仮想の直線(L)が延びる方向(D1)と交差する交差方向に沿って延びている。
【0049】
上記[4]に記載の構成によれば、フライウェイトから回動軸に伝達されるガバナ力の損失を抑制することができる。また、回動軸が混合気通路に干渉することを抑制できる。
【符号の説明】
【0050】
1 ガバナ装置
2 フライウェイト
3 先導空気通路
4 先導空気バルブ
5 混合気通路
20 弁体
22 回動軸
24 締結具
26 接続部材
100 層状掃気エンジン
102 シリンダ
103 燃焼室
104 クランクケース
105 クランク室
106 燃料タンク
108 エアクリーナ
110 キャブレータ
112 インシュレータ
114 マフラ
116 ピストン
118 クランク軸
120 コネクティングロッド
122 吸気ポート
124 排気ポート
126 掃気通路
128 空気分岐通路
130 掃気ポート
131 燃料ノズル
134 駆動プーリ
136 ガバナスリーブ
138 ワイヤー
140 スプリング
142 固定壁
150 スロットルバルブ
152 第1の貫通孔
154 第2の貫通孔
A 清浄空気
A1 先導空気
A2 混合気
C1 先導空気通路の中心
C2 混合気通路の中心
D1 上下方向
D2 軸線方向
D3 交差方向
F 燃料
G 燃焼ガス
GF ガバナ力
L 直線
O 軸線

図1
図2
図3
図4