(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170901
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】冷凍サイクル装置
(51)【国際特許分類】
F25B 1/00 20060101AFI20241204BHJP
F25B 41/20 20210101ALI20241204BHJP
【FI】
F25B1/00 321L
F25B1/00 101F
F25B41/20 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087661
(22)【出願日】2023-05-29
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】大西 徹
(72)【発明者】
【氏名】榎島 史修
(57)【要約】
【課題】インバータを効率良く冷却すること。
【解決手段】切換弁71は、インバータ関連温度が予め設定されている閾値温度を下回ると許容状態に切り換わる。吸入圧領域59に吸入される冷媒は、第1領域61からバイパス通路70を介して第2領域62へ流れ込む冷媒によって暖められる。その結果、吸入圧領域59に吸入される冷媒の温度が高くなるため、インバータ63の温度が閾値温度に対して極端に下回ってしまうことが回避される。切換弁71は、インバータ関連温度が閾値温度を上回ると遮断状態に切り換わる。よって、吸入圧領域59に吸入される冷媒が、第1領域61からバイパス通路70を介して第2領域62へ流れ込む冷媒によって暖められ過ぎてしまうことが回避される。その結果、インバータ63の温度が閾値温度に対して極端に上回ってしまうことが回避される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を圧縮して吐出する圧縮機と、
前記圧縮機から吐出された冷媒を凝縮する凝縮器と、
前記凝縮器で凝縮された冷媒を減圧する膨張弁と、
前記膨張弁で減圧された冷媒を蒸発させる蒸発器と、をこの順に環状に接続して構成される冷凍サイクルを備え、
前記圧縮機は、
冷媒を圧縮するために駆動する圧縮部と、
前記圧縮部を駆動するモータと、
前記モータを駆動するインバータと、
前記蒸発器からの冷媒が吸入される吸入圧領域、及び前記圧縮部の駆動により圧縮された冷媒が吐出される吐出圧領域を有するハウジングと、を備え、
前記インバータは、前記吸入圧領域に吸入される冷媒によって冷却される冷凍サイクル装置であって、
冷凍サイクルは、
前記吐出圧領域から前記凝縮器の入口までの間の領域である第1領域と、
前記蒸発器の出口から前記吸入圧領域までの間の領域である第2領域と、を有し、
前記第1領域と前記第2領域とを接続するバイパス通路と、
前記第1領域から前記バイパス通路を介した前記第2領域への冷媒の流れを許容する許容状態と、前記第1領域から前記バイパス通路を介した前記第2領域への冷媒の流れを遮断する遮断状態と、に切換可能な切換弁と、を備え、
前記切換弁は、前記インバータの温度に関連する温度であるインバータ関連温度が予め設定されている閾値温度を下回ると前記許容状態に切り換わるとともに、前記インバータ関連温度が前記閾値温度を上回ると前記遮断状態に切り換わることを特徴とする冷凍サイクル装置。
【請求項2】
前記インバータ関連温度は前記インバータの温度であり、
前記インバータの温度を検出するインバータ温度センサを備え、
前記切換弁は、前記インバータ温度センサにより検出される温度が前記閾値温度を下回ると前記許容状態に切り換わるとともに、前記インバータ温度センサにより検出される温度が前記閾値温度を上回ると前記遮断状態に切り換わることを特徴とする請求項1に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項3】
前記インバータ関連温度は前記吸入圧領域に吸入される冷媒の温度であり、
前記吸入圧領域に吸入される冷媒の温度を検出する冷媒温度センサを備え、
前記切換弁は、前記冷媒温度センサにより検出される温度が前記閾値温度を下回ると前記許容状態に切り換わるとともに、前記冷媒温度センサにより検出される温度が前記閾値温度を上回ると前記遮断状態に切り換わることを特徴とする請求項1に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項4】
前記切換弁は、前記インバータ関連温度が前記閾値温度を下回るとともに下降傾向である場合には前記許容状態に切り換わるとともに、前記インバータ関連温度が上昇傾向である場合には前記遮断状態に切り換わることを特徴とする請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の冷凍サイクル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍サイクル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、圧縮機と、凝縮器と、膨張弁と、蒸発器と、をこの順に環状に接続して構成される冷凍サイクルを備えた冷凍サイクル装置が知られている。圧縮機は、冷媒を圧縮して吐出する。凝縮器は、圧縮機から吐出された冷媒を凝縮する。膨張弁は、凝縮器で凝縮された冷媒を減圧する。蒸発器は、膨張弁で減圧された冷媒を蒸発させる。そして、冷凍サイクル装置は、冷凍サイクルを用いて、凝縮器及び蒸発器の少なくとも一方を介した冷媒と温調対象との熱交換を行うことにより、温調対象の温度を調節する。
【0003】
圧縮機は、圧縮部を備えている。圧縮部は、冷媒を圧縮するために駆動する。また、例えば特許文献1のように、圧縮機は、モータと、インバータと、を備えている場合がある。モータは、圧縮部を駆動する。インバータは、モータを駆動する。圧縮機のハウジングは、吸入圧領域、及び吐出圧領域を有している。吸入圧領域には、蒸発器からの冷媒が吸入される。吐出圧領域には、圧縮部の駆動により圧縮された冷媒が吐出される。インバータは、吸入圧領域に吸入される冷媒によって冷却されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、例えば、吸入圧領域に吸入される冷媒の温度が低過ぎると、インバータが、吸入圧領域に吸入される冷媒によって冷却され過ぎてしまうため、インバータに不具合が生じる虞がある。一方で、例えば、吸入圧領域に吸入される冷媒の温度が高いほど、インバータが、吸入圧領域に吸入される冷媒によって冷却され難くなってしまう。したがって、インバータを効率良く冷却することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する冷凍サイクル装置は、冷媒を圧縮して吐出する圧縮機と、前記圧縮機から吐出された冷媒を凝縮する凝縮器と、前記凝縮器で凝縮された冷媒を減圧する膨張弁と、前記膨張弁で減圧された冷媒を蒸発させる蒸発器と、をこの順に環状に接続して構成される冷凍サイクルを備え、前記圧縮機は、冷媒を圧縮するために駆動する圧縮部と、前記圧縮部を駆動するモータと、前記モータを駆動するインバータと、前記蒸発器からの冷媒が吸入される吸入圧領域、及び前記圧縮部の駆動により圧縮された冷媒が吐出される吐出圧領域を有するハウジングと、を備え、前記インバータは、前記吸入圧領域に吸入される冷媒によって冷却される冷凍サイクル装置であって、冷凍サイクルは、前記吐出圧領域から前記凝縮器の入口までの間の領域である第1領域と、前記蒸発器の出口から前記吸入圧領域までの間の領域である第2領域と、を有し、前記第1領域と前記第2領域とを接続するバイパス通路と、前記第1領域から前記バイパス通路を介した前記第2領域への冷媒の流れを許容する許容状態と、前記第1領域から前記バイパス通路を介した前記第2領域への冷媒の流れを遮断する遮断状態と、に切換可能な切換弁と、を備え、前記切換弁は、前記インバータの温度に関連する温度であるインバータ関連温度が予め設定されている閾値温度を下回ると前記許容状態に切り換わるとともに、前記インバータ関連温度が前記閾値温度を上回ると前記遮断状態に切り換わる。
【0007】
これによれば、切換弁は、例えば、インバータ関連温度が予め設定されている閾値温度を下回ると許容状態に切り換わる。すると、第1領域からバイパス通路を介した第2領域への冷媒の流れが許容されるため、吸入圧領域に吸入される冷媒が、第1領域からバイパス通路を介して第2領域へ流れ込む冷媒によって暖められる。その結果、吸入圧領域に吸入される冷媒の温度が高くなるため、インバータの温度が閾値温度に対して極端に下回ってしまうことを回避することができる。したがって、インバータが、吸入圧領域に吸入される冷媒によって冷却され過ぎてしまうことを回避することができる。
【0008】
一方で、切換弁は、例えば、インバータ関連温度が閾値温度を上回ると遮断状態に切り換わる。すると、第1領域からバイパス通路を介した第2領域への冷媒の流れが遮断されるため、吸入圧領域に吸入される冷媒が、第1領域からバイパス通路を介して第2領域へ流れ込む冷媒によって暖められ過ぎてしまうことが回避される。その結果、インバータの温度が閾値温度に対して極端に上回ってしまうことを回避することができる。したがって、インバータが、吸入圧領域に吸入される冷媒によって冷却され難くなってしまうことを回避することができる。以上により、インバータを効率良く冷却することができる。
【0009】
上記冷凍サイクル装置において、前記インバータ関連温度は前記インバータの温度であり、前記インバータの温度を検出するインバータ温度センサを備え、前記切換弁は、前記インバータ温度センサにより検出される温度が前記閾値温度を下回ると前記許容状態に切り換わるとともに、前記インバータ温度センサにより検出される温度が前記閾値温度を上回ると前記遮断状態に切り換わるとよい。このように、インバータ関連温度として、インバータ温度センサにより検出されるインバータの温度を用いる構成は、インバータを効率良く冷却する上で好適である。
【0010】
上記冷凍サイクル装置において、前記インバータ関連温度は前記吸入圧領域に吸入される冷媒の温度であり、前記吸入圧領域に吸入される冷媒の温度を検出する冷媒温度センサを備え、前記切換弁は、前記冷媒温度センサにより検出される温度が前記閾値温度を下回ると前記許容状態に切り換わるとともに、前記冷媒温度センサにより検出される温度が前記閾値温度を上回ると前記遮断状態に切り換わるとよい。吸入圧領域に吸入される冷媒の温度は、インバータの温度に関連する温度である。このように、インバータ関連温度として、冷媒温度センサにより検出される冷媒の温度を用いる構成は、インバータを効率良く冷却する上で好適である。
【0011】
上記冷凍サイクル装置において、前記切換弁は、前記インバータ関連温度が前記閾値温度を下回るとともに下降傾向である場合には前記許容状態に切り換わるとともに、前記インバータ関連温度が上昇傾向である場合には前記遮断状態に切り換わるとよい。これによれば、インバータをさらに効率良く冷却することができる。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、インバータを効率良く冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、実施形態における冷凍サイクル装置を示す概略構成図である。
【
図3】
図3は、切換弁の動作に伴うインバータの温度及び冷媒の温度それぞれの変化を示すグラフである。
【
図4】
図4は、変更例における切換弁の動作に伴うインバータの温度及び冷媒の温度それぞれの変化を示すグラフである。
【
図5】
図5は、変更例における切換弁の動作に伴うインバータの温度及び冷媒の温度それぞれの変化を示すグラフである。
【
図6】
図6は、変更例における切換弁の動作に伴うインバータの温度及び冷媒の温度それぞれの変化を示すグラフである。
【
図7】
図7は、変更例における圧縮機を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、冷凍サイクル装置を具体化した一実施形態を
図1~
図3にしたがって説明する。本実施形態の冷凍サイクル装置は、例えば、燃料電池車に搭載されている。
<冷凍サイクル装置の基本構成>
図1に示すように、冷凍サイクル装置10は、冷凍サイクル11を備えている。冷凍サイクル11は、圧縮機12と、第1熱交換器13と、膨張弁14と、第2熱交換器15と、を備えている。
【0015】
圧縮機12と第1熱交換器13とは第1配管16によって接続されている。第1配管16の第1端は、圧縮機12の吐出口12aに接続されている。第1配管16の第2端は、第1熱交換器13の入口13aに接続されている。
【0016】
第1熱交換器13と膨張弁14とは第2配管17によって接続されている。第2配管17の第1端は、第1熱交換器13の出口13bに接続されている。第2配管17の第2端は、膨張弁14の入口14aに接続されている。
【0017】
膨張弁14と第2熱交換器15とは第3配管18によって接続されている。第3配管18の第1端は、膨張弁14の出口14bに接続されている。第3配管18の第2端は、第2熱交換器15の入口15aに接続されている。
【0018】
第2熱交換器15と圧縮機12とは第4配管19によって接続されている。第4配管19の第1端は、第2熱交換器15の出口15bに接続されている。第4配管19の第2端は、圧縮機12の吸入口12bに接続されている。
【0019】
このように、冷凍サイクル11は、圧縮機12と、第1熱交換器13と、膨張弁14と、第2熱交換器15と、をこの順に環状に接続して構成されている。冷凍サイクル11を流れる冷媒は、圧縮機12、第1熱交換器13、膨張弁14、及び第2熱交換器15の順に流れる。
【0020】
なお、第4配管19には、図示しないアキュムレータが設けられている。アキュムレータは、圧縮機12へのガス状の冷媒の流出を許容し、且つ、圧縮機12への液状の冷媒の流出を阻止する。
【0021】
冷凍サイクル装置10は、第1熱媒体回路20と、第2熱媒体回路30と、を備えている。第1熱媒体回路20は、第1熱媒体熱交換器21と、第1熱媒体ポンプ22と、を有している。第1熱媒体回路20には熱媒体が流れる。第1熱媒体回路20を流れる熱媒体は、例えば、水である。第1熱媒体回路20においては、第1熱媒体ポンプ22の駆動によって熱媒体が循環する。第1熱媒体回路20は、第1熱交換器13に連結されている。第1熱媒体回路20を流れる熱媒体は、第1熱交換器13を介して冷媒と熱交換可能である。第1熱媒体熱交換器21は、温調対象である電池40と熱的に結合されている。第1熱媒体熱交換器21を流れる熱媒体は、電池40と熱交換可能である。
【0022】
第2熱媒体回路30は、第2熱媒体熱交換器31と、第2熱媒体ポンプ32と、を有している。第2熱媒体回路30には熱媒体が流れる。第2熱媒体回路30を流れる熱媒体は、例えば、水である。第2熱媒体回路30においては、第2熱媒体ポンプ32の駆動によって熱媒体が循環する。第2熱媒体回路30は、第2熱交換器15に連結されている。第2熱媒体回路30を流れる熱媒体は、第2熱交換器15を介して冷媒と熱交換可能である。第2熱媒体熱交換器31は、電池40と熱的に結合されている。第2熱媒体熱交換器31を流れる熱媒体は、電池40と熱交換可能である。
【0023】
第1熱交換器13は、第1熱交換器13を流れる冷媒と外気との熱交換を行う第1状態と、第1熱交換器13を流れる冷媒と第1熱媒体回路20を流れる熱媒体との熱交換を行う第2状態と、に切換可能に構成されている。
【0024】
第2熱交換器15は、第2熱交換器15を流れる冷媒と外気との熱交換を行う第1状態と、第2熱交換器15を流れる冷媒と第2熱媒体回路30を流れる熱媒体との熱交換を行う第2状態と、に切換可能に構成されている。
【0025】
<圧縮機>
図2に示すように、圧縮機12は、ハウジング50を備えている。ハウジング50は、モータハウジング51と、インバータカバー52と、を有している。モータハウジング51及びインバータカバー52は、金属製である。モータハウジング51及びインバータカバー52は、例えば、アルミニウム製である。
【0026】
モータハウジング51は、板状の端壁51aと、筒状の周壁51bと、を有している。周壁51bは、端壁51aの外周部から延びている。周壁51bには、吸入口12bが形成されている。吸入口12bは、周壁51bにおける端壁51a寄りの部分に形成されている。モータハウジング51は、モータ室53を区画している。したがって、ハウジング50は、モータ室53を有している。また、ハウジング50は、吐出室54を有している。
【0027】
インバータカバー52は、板状の端壁52aと、筒状の周壁52bと、を有している。インバータカバー52は、周壁52bにおける端壁52aとは反対側の端部がモータハウジング51の端壁51aの外面に接合されることにより、モータハウジング51に固定されている。そして、モータハウジング51の端壁51a、インバータカバー52の端壁52a、及びインバータカバー52の周壁52bによって、インバータ室55が区画されている。したがって、ハウジング50は、インバータ室55を有している。
【0028】
圧縮機12は、回転軸56と、圧縮部57と、モータ58と、を備えている。回転軸56は、回転軸56の軸方向がモータハウジング51の周壁51bの軸方向に一致した状態で、ハウジング50内に収容されている。回転軸56は、ハウジング50に回転可能に支持されている。回転軸56は、モータ室53をモータハウジング51の周壁51bの軸方向に横切った状態でハウジング50内に収容されている。
【0029】
圧縮部57は、回転軸56におけるモータハウジング51の端壁51aとは反対側に位置する端部に固定されている。圧縮部57は、回転軸56と一体的に回転するインペラである。したがって、本実施形態の圧縮機12は、遠心圧縮機である。圧縮部57は、冷媒を圧縮するために駆動する。
【0030】
モータ58は、モータ室53内に収容されている。モータ58は、回転軸56を回転させる。そして、モータ58によって回転軸56が回転することにより、圧縮部57が駆動する。したがって、モータ58は、圧縮部57を駆動する。
【0031】
第4配管19からの冷媒は、吸入口12bを介してモータ室53内に吸入される。モータ室53内に吸入された冷媒は、圧縮部57の駆動により圧縮される。そして、圧縮部57により圧縮された冷媒は、吐出室54及び吐出口12aを介して第1配管16に吐出される。
【0032】
吸入口12b及びモータ室53は、第2熱交換器15からの冷媒が吸入される吸入圧領域59である。吐出室54及び吐出口12aは、圧縮部57の駆動により圧縮された冷媒が吐出される吐出圧領域60である。したがって、圧縮機12は、第2熱交換器15からの冷媒が吸入される吸入圧領域59、及び圧縮部57の駆動により圧縮された冷媒が吐出される吐出圧領域60を有している。
【0033】
<第1領域及び第2領域>
吐出室54、吐出口12a、第1配管16、及び第1熱交換器13の入口13aは、冷凍サイクル11における吐出圧領域60から第1熱交換器13の入口13aまでの間の領域である第1領域61である。第2熱交換器15の出口15b、第4配管19、及び吸入口12b、及びモータ室53は、冷凍サイクル11における第2熱交換器15の出口15bから吸入圧領域59までの間の領域である第2領域62である。したがって、冷凍サイクル11は、吐出圧領域60から第1熱交換器13の入口13aまでの間の領域である第1領域61と、第2熱交換器15の出口15bから吸入圧領域59までの間の領域である第2領域62と、を有している。
【0034】
<インバータ>
圧縮機12は、インバータ63を備えている。インバータ63は、インバータ室55内に収容されている。インバータ63は、モータ58を駆動する。インバータ63は、回路基板64と、電子部品65と、伝熱部材66と、を有している。電子部品65は、回路基板64に実装されている。伝熱部材66は、シート状である。伝熱部材66は、モータハウジング51の端壁51aの外面に接触した状態でインバータ室55内に配置されている。電子部品65は、伝熱部材66に接触している。そして、電子部品65は、伝熱部材66を介してモータハウジング51の端壁51aに熱的に結合されている。電子部品65から発生する熱は、伝熱部材66を介してモータハウジング51の端壁51aに伝達されるとともに、吸入口12bからモータ室53内に吸入される冷媒に放熱される。このようにして、インバータ63は、吸入圧領域59に吸入される冷媒によって冷却される。
【0035】
<バイパス通路>
図1に示すように、冷凍サイクル装置10は、バイパス通路70を備えている。バイパス通路70は、例えば、配管である。バイパス通路70の第1端は、第1配管16に接続されている。バイパス通路70の第2端は、第4配管19に接続されている。したがって、バイパス通路70は、冷凍サイクル11において、第1領域61と第2領域62とを接続する。バイパス通路70は、第1配管16内を流れる冷媒を第4配管19内へ流す。したがって、バイパス通路70は、第1領域61の冷媒を第2領域62へ流す。
【0036】
<切換弁>
冷凍サイクル装置10は、切換弁71を備えている。切換弁71は、バイパス通路70に設けられている。切換弁71は、例えば、オンオフ弁である。切換弁71は、電磁弁である。切換弁71は、開状態になると、第1配管16内からバイパス通路70を介した第4配管19内への冷媒の流れを許容する。一方で、切換弁71は、閉状態になると、第1配管16内からバイパス通路70を介した第4配管19内への冷媒の流れを遮断する。よって、切換弁71は、第1配管16内からバイパス通路70を介した第4配管19内への冷媒の流れを許容する許容状態と、第1配管16内からバイパス通路70を介した第4配管19内への冷媒の流れを遮断する遮断状態と、に切換可能に構成されている。したがって、切換弁71は、第1領域61からバイパス通路70を介した第2領域62への冷媒の流れを許容する許容状態と、第1領域61からバイパス通路70を介した第2領域62への冷媒の流れを遮断する遮断状態と、に切換可能である。
【0037】
<制御>
冷凍サイクル装置10は、制御装置80を備えている。制御装置80は、中央処理制御装置(CPU)を備えている。制御装置80は、各種プログラムやマップ等を予め記憶した読出専用メモリ(ROM)、CPUの演算結果等を一時記憶するランダムアクセスメモリ(RAM)等により構成されるメモリを備えている。制御装置80は、タイマカウンタ、入力インターフェース、出力インターフェース等を備えている。
【0038】
冷凍サイクル装置10は、インバータ温度センサ81を備えている。インバータ温度センサ81は、インバータ63の温度を検出可能に構成されている。したがって、インバータ温度センサ81は、インバータ63の温度を検出する。具体的には、インバータ温度センサ81は、インバータ63の電子部品65の温度を検出可能に構成されている。インバータ温度センサ81は、インバータ室55内において、電子部品65の温度が検出可能な位置に配置されている。インバータ温度センサ81は、制御装置80に電気的に接続されている。インバータ温度センサ81によって検出されたインバータ63の温度に関する検出信号は、制御装置80に送信される。
【0039】
冷凍サイクル装置10は、冷媒温度センサ82を備えている。冷媒温度センサ82は、モータ室53内に吸入される冷媒の温度を検出可能に構成されている。したがって、冷媒温度センサ82は、吸入圧領域59に吸入される冷媒の温度を検出する。冷媒温度センサ82は、モータ室53内において、モータ室53内に吸入される冷媒の温度が検出可能な位置に配置されている。冷媒温度センサ82は、制御装置80に電気的に接続されている。冷媒温度センサ82によって検出された冷媒の温度に関する検出信号は、制御装置80に送信される。
【0040】
図3は、切換弁71の動作に伴うインバータ63の温度、及びモータ室53内に吸入される冷媒の温度それぞれの変化を示すグラフである。
図3では、インバータ63の温度の変化を実線L1で示している。また、モータ室53内に吸入される冷媒の温度の変化を実線L2で示している。
【0041】
図3に示すように、制御装置80には、インバータ温度センサ81により検出される温度が予め設定されている閾値温度Txを下回ると、切換弁71を開状態に切り換える弁切換プログラムが予め記憶されている。したがって、制御装置80は、インバータ温度センサ81により検出される温度が閾値温度Txを下回ると、切換弁71を許容状態に切り換える。なお、「閾値温度Tx」とは、インバータ63の動作保証温度の下限温度Tminよりも高い温度であり、且つ、インバータ63の動作保証温度の上限温度よりも低い温度である。
【0042】
制御装置80には、インバータ温度センサ81により検出される温度が閾値温度Txを上回ると、切換弁71を閉状態に切り換える弁切換プログラムが予め記憶されている。したがって、制御装置80は、インバータ温度センサ81により検出される温度が閾値温度Txを上回ると、切換弁71を遮断状態に切り換える。
【0043】
このように、切換弁71は、インバータ温度センサ81により検出される温度が閾値温度Txを下回ると許容状態に切り換わるとともに、インバータ温度センサ81により検出される温度が閾値温度Txを上回ると遮断状態に切り換わる。したがって、切換弁71は、インバータ63の温度に関連する温度であるインバータ関連温度が予め設定されている閾値温度Txを下回ると許容状態に切り換わるとともに、インバータ関連温度が閾値温度Txを上回ると遮断状態に切り換わる。本実施形態のインバータ関連温度はインバータ63の温度である。
【0044】
図1に示すように、制御装置80は、圧縮機12に電気的に接続されている。制御装置80は、圧縮機12の駆動を制御する。制御装置80には、圧縮機12の起動及び停止を指令するための指令信号を圧縮機12に送信する圧縮機駆動プログラムが予め記憶されている。圧縮機12は、制御装置80からの起動指令信号を受信すると起動するとともに、制御装置80からの停止指令信号を受信すると停止する。
【0045】
制御装置80は、第1熱媒体ポンプ22に電気的に接続されている。制御装置80は、第1熱媒体ポンプ22の駆動を制御する。制御装置80は、第2熱媒体ポンプ32に電気的に接続されている。制御装置80は、第2熱媒体ポンプ32の駆動を制御する。
【0046】
制御装置80は、電池40を冷却する電池冷却モードと、電池40を暖機する電池暖機モードと、に冷凍サイクル装置10を切り換え可能である。電池冷却モードでは、第1熱交換器13が第1状態に切り換わっているとともに、第2熱交換器15が第2状態に切り換わっている。電池暖機モードでは、第1熱交換器13が第2状態に切り換わっているとともに、第2熱交換器15が第1状態に切り換わっている。
【0047】
制御装置80には、電池冷却モードのときに、第1熱媒体ポンプ22の駆動を停止し、且つ、第2熱媒体ポンプ32を駆動させるプログラムが予め記憶されている。したがって、電池冷却モードでは、第1熱媒体回路20においては熱媒体が循環しておらず、第2熱媒体回路30においては熱媒体が循環している。
【0048】
制御装置80には、電池暖機モードのときに、第1熱媒体ポンプ22を駆動させ、且つ、第2熱媒体ポンプ32の駆動を停止させるプログラムが予め記憶されている。したがって、電池暖機モードでは、第1熱媒体回路20においては熱媒体が循環しており、第2熱媒体回路30においては熱媒体が循環していない。
【0049】
<電池冷却モード>
例えば、制御装置80によって冷凍サイクル装置10が電池冷却モードに切り換えられているとする。圧縮機12は、低温低圧の冷媒を圧縮して高温高圧のガス冷媒を吐出する。したがって、圧縮機12は、冷媒を圧縮して吐出する。圧縮機12の吐出口12aから第1配管16内へ吐出されたガス冷媒は、第1配管16及び第1熱交換器13の入口13aを介して第1熱交換器13に供給される。
【0050】
電池冷却モードでは、第1熱交換器13は第1状態に切り換わっているため、第1熱交換器13に供給されたガス冷媒は、外気との第1熱交換器13を介した熱交換が行われることにより凝縮して液化する。したがって、第1熱交換器13は、圧縮機12から吐出された冷媒を凝縮する凝縮器として機能している。
【0051】
第1熱交換器13で凝縮されて液化した高温高圧の液冷媒は、第1熱交換器13の出口13bを介して第2配管17内に流れるとともに、第2配管17及び膨張弁14の入口14aを介して膨張弁14内を通過する。膨張弁14内を通過する液冷媒は、膨張弁14によって減圧され、低温低圧の液冷媒となる。したがって、膨張弁14は、第1熱交換器13で凝縮された冷媒を減圧する。
【0052】
膨張弁14によって減圧された低温低圧の液冷媒は、膨張弁14の出口14bから第3配管18内に流れるとともに、第3配管18及び第2熱交換器15の入口15aを介して第2熱交換器15に供給される。電池冷却モードでは、第2熱交換器15は第2状態に切り換わっているため、第2熱交換器15を流れる液冷媒は、第2熱媒体回路30を流れる熱媒体との熱交換が行われることにより蒸発する。したがって、第2熱交換器15は、膨張弁14で減圧された冷媒を蒸発させる蒸発器として機能している。
【0053】
第2熱媒体回路30を流れる熱媒体は、第2熱交換器15にて液冷媒に放熱する。これにより、第2熱媒体回路30を流れる熱媒体が冷却される。その結果、電池40は、第2熱媒体回路30を流れる熱媒体と第2熱媒体熱交換器31を介した熱交換が行われることにより熱媒体によって冷却される。
【0054】
第2熱交換器15を流れた冷媒は、第2熱交換器15の出口15bから第4配管19内に流れるとともに、第4配管19及び圧縮機12の吸入口12bを介して圧縮機12に吸入される。
【0055】
<電池暖機モード>
例えば、制御装置80によって冷凍サイクル装置10が電池暖機モードに切り換えられているとする。圧縮機12は、低温低圧の冷媒を圧縮して高温高圧のガス冷媒を吐出する。圧縮機12の吐出口12aから第1配管16内へ吐出されたガス冷媒は、第1配管16及び第1熱交換器13の入口13aを介して第1熱交換器13に供給される。
【0056】
電池暖機モードでは、第1熱交換器13は第2状態に切り換わっているため、第1熱交換器13に供給されたガス冷媒は、第1熱媒体回路20を流れる熱媒体との第1熱交換器13を介した熱交換が行われることにより凝縮して液化する。
【0057】
第1熱媒体回路20を流れる熱媒体は、第1熱交換器13にてガス冷媒から吸熱する。これにより、第1熱媒体回路20を流れる熱媒体が暖められる。その結果、電池40は、第1熱媒体回路20を流れる熱媒体と第1熱媒体熱交換器21を介した熱交換が行われることにより熱媒体によって暖機される。このように、冷凍サイクル装置10は、冷凍サイクル11を用いて、第1熱交換器13及び第2熱交換器15を介した冷媒と電池40との熱交換を行うことにより、電池40の温度を調節する。
【0058】
第1熱交換器13で凝縮されて液化した高温高圧の液冷媒は、第1熱交換器13の出口13bを介して第2配管17内に流れるとともに、第2配管17及び膨張弁14の入口14aを介して膨張弁14内を通過する。膨張弁14内を通過する液冷媒は、膨張弁14によって減圧され、低温低圧の液冷媒となる。
【0059】
膨張弁14によって減圧された低温低圧の液冷媒は、膨張弁14の出口14bから第3配管18内に流れるとともに、第3配管18及び第2熱交換器15の入口15aを介して第2熱交換器15に供給される。電池暖機モードでは、第2熱交換器15は第1状態に切り換わっているため、第2熱交換器15を流れる液冷媒は、外気との熱交換が行われることにより蒸発する。第2熱交換器15を流れた冷媒は、第2熱交換器15の出口15bから第4配管19内に流れるとともに、第4配管19及び圧縮機12の吸入口12bを介して圧縮機12に吸入される。
【0060】
[実施形態の作用]
次に、本実施形態の作用について説明する。
図3に示すように、冷凍サイクル装置10は、モータ室53内に吸入される冷媒の温度がインバータ63の動作保証温度の下限温度Tminよりも下回る状態で運転される場合がある。このとき、制御装置80は、例えば、インバータ温度センサ81により検出される温度が閾値温度Txを下回ると、切換弁71を開状態に切り換える。よって、切換弁71は、例えば、インバータ温度センサ81により検出される温度が閾値温度Txを下回ると許容状態に切り換わる。
【0061】
すると、第1領域61からバイパス通路70を介して第2領域62への冷媒の流れが許容されるため、モータ室53内に吸入される冷媒が、第1領域61からバイパス通路70を介して第2領域62へ流れ込む冷媒によって暖められる。その結果、モータ室53内に吸入される冷媒の温度が高くなるため、インバータ63の温度が閾値温度Txに対して極端に下回ってしまうことが回避される。したがって、インバータ63が、モータ室53内に吸入される冷媒によって冷却され過ぎてしまうことが回避されている。
【0062】
一方で、制御装置80は、例えば、インバータ温度センサ81により検出される温度が閾値温度Txを上回ると、切換弁71を閉状態に切り換える。よって、切換弁71は、例えば、インバータ温度センサ81により検出される温度が閾値温度Txを上回ると遮断状態に切り換わる。
【0063】
すると、第1領域61からバイパス通路70を介した第2領域62への冷媒の流れが遮断されるため、モータ室53内に吸入される冷媒が、第1領域61からバイパス通路70を介して第2領域62へ流れ込む冷媒によって暖められ過ぎてしまうことが回避される。その結果、インバータ63の温度が閾値温度Txに対して極端に上回ってしまうことが回避されている。したがって、インバータ63が、モータ室53内に吸入される冷媒によって冷却され難くなってしまうことが回避されている。
【0064】
[実施形態の効果]
上記実施形態では以下の効果を得ることができる。
(1)切換弁71は、例えば、インバータ63の温度に関連する温度であるインバータ関連温度が予め設定されている閾値温度Txを下回ると許容状態に切り換わる。すると、第1領域61からバイパス通路70を介した第2領域62への冷媒の流れが許容されるため、吸入圧領域59に吸入される冷媒が、第1領域61からバイパス通路70を介して第2領域62へ流れ込む冷媒によって暖められる。その結果、吸入圧領域59に吸入される冷媒の温度が高くなるため、インバータ63の温度が閾値温度Txに対して極端に下回ってしまうことを回避することができる。したがって、インバータ63が、吸入圧領域59に吸入される冷媒によって冷却され過ぎてしまうことを回避することができる。
【0065】
一方で、切換弁71は、例えば、インバータ63の温度に関連する温度であるインバータ関連温度が閾値温度Txを上回ると遮断状態に切り換わる。すると、第1領域61からバイパス通路70を介した第2領域62への冷媒の流れが遮断されるため、吸入圧領域59に吸入される冷媒が、第1領域61からバイパス通路70を介して第2領域62へ流れ込む冷媒によって暖められ過ぎてしまうことが回避される。その結果、インバータ63の温度が閾値温度Txに対して極端に上回ってしまうことを回避することができる。したがって、インバータ63が、吸入圧領域59に吸入される冷媒によって冷却され難くなってしまうことを回避することができる。以上により、インバータ63を効率良く冷却することができる。
【0066】
(2)切換弁71は、インバータ温度センサ81により検出される温度が閾値温度Txを下回ると許容状態に切り換わるとともに、インバータ温度センサ81により検出される温度が閾値温度Txを上回ると遮断状態に切り換わる。このように、インバータ関連温度として、インバータ温度センサ81により検出されるインバータ63の温度を用いる構成は、インバータ63を効率良く冷却する上で好適である。
【0067】
[変更例]
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0068】
○
図4に示すように、制御装置80は、インバータ温度センサ81により検出される温度が閾値温度Txを下回るとともに下降傾向である場合には切換弁71を開状態に切り換えてもよい。さらに、制御装置80は、インバータ温度センサ81により検出される温度が上昇傾向である場合には切換弁71を閉状態に切り換えてもよい。要は、切換弁71は、インバータ関連温度が閾値温度Txを下回るとともに下降傾向である場合には許容状態に切り換わるとともに、インバータ関連温度が上昇傾向である場合には遮断状態に切り換わってもよい。
図4に示す実施形態では、制御装置80は、所定温度範囲A1内においてインバータ温度センサ81により検出される温度が下降傾向である場合には切換弁71を開状態に切り換える。さらに、制御装置80は、所定温度範囲A1内においてインバータ温度センサ81により検出される温度が上昇傾向である場合には切換弁71を閉状態に切り換える。「所定温度範囲A1」とは、例えば、閾値温度Tx以下であって、且つ、インバータ63の動作保証温度の下限温度Tmin以上の温度の範囲である。これによれば、インバータ63をさらに効率良く冷却することができる。
【0069】
なお、
図4に示す実施形態では、制御装置80は、インバータ温度センサ81により検出される温度が閾値温度Txを上回る温度である場合には、インバータ温度センサ81により検出される温度が下降傾向であったとしても、切換弁71は閉状態が維持されている。そして、制御装置80は、インバータ温度センサ81により検出される温度が閾値温度Txを下回ると、切換弁71を開状態に切り換える。
【0070】
○
図5に示すように、制御装置80は、冷媒温度センサ82により検出される温度がインバータ63の動作保証温度の下限温度Tminを下回ると切換弁71を開状態に切り換えてもよい。また、制御装置80は、冷媒温度センサ82により検出される温度がインバータ63の動作保証温度の下限温度Tminを上回ると切換弁71を閉状態に切り換えてもよい。この場合、インバータ63の動作保証温度の下限温度Tminは、予め設定されている閾値温度である。このように、切換弁71は、冷媒温度センサ82により検出される温度が閾値温度を下回ると許容状態に切り換わるとともに、冷媒温度センサ82により検出される温度が閾値温度を上回ると遮断状態に切り換わってもよい。
【0071】
制御装置80には、モータ室53内に吸入される冷媒の温度とインバータ63の温度とが関係付けられたマップが予め記憶されている。モータ室53内に吸入される冷媒の温度とインバータ63の温度とが関係付けられたマップは、例えば実験等によって予め求められている。このように、モータ室53内に吸入される冷媒の温度は、インバータ63の温度に関連する温度であるインバータ関連温度である。したがって、
図5に示す実施形態では、インバータ関連温度は吸入圧領域59に吸入される冷媒の温度である。
【0072】
このように、切換弁71は、吸入圧領域59に吸入される冷媒の温度が閾値温度であるインバータ63の動作保証温度の下限温度Tminを下回ると許容状態に切り換わる。また、切換弁71は、吸入圧領域59に吸入される冷媒の温度が閾値温度であるインバータ63の動作保証温度の下限温度Tminを上回ると遮断状態に切り換わる。このように、インバータ関連温度として、冷媒温度センサ82により検出される冷媒の温度を用いる構成は、インバータ63を効率良く冷却する上で好適である。
【0073】
なお、
図5に示す実施形態では、インバータ63の動作保証温度の下限温度Tminを、予め設定されている閾値温度として用いたが、これに限らず、例えば、インバータ63の動作保証温度の下限温度Tminよりも僅かに高い温度を閾値温度としてもよい。また、例えば、インバータ63の動作保証温度の下限温度Tminよりも僅かに低い温度を閾値温度としてもよい。
【0074】
○
図6に示すように、制御装置80は、冷媒温度センサ82により検出される温度が第1所定温度Tx1を下回るとともに下降傾向である場合には切換弁71を開状態に切り換えてもよい。さらに、制御装置80は、冷媒温度センサ82により検出される温度が上昇傾向である場合には切換弁71を閉状態に切り換えてもよい。この場合、第1所定温度Tx1は、予め設定されている閾値温度である。要は、切換弁71は、インバータ関連温度が閾値温度を下回るとともに下降傾向である場合には許容状態に切り換わるとともに、インバータ関連温度が上昇傾向である場合には遮断状態に切り換わってもよい。
図6に示す実施形態では、制御装置80は、所定温度範囲A2内において冷媒温度センサ82により検出される温度が下降傾向である場合には切換弁71を開状態に切り換える。さらに、制御装置80は、所定温度範囲A2内において冷媒温度センサ82により検出される温度が上昇傾向である場合には切換弁71を閉状態に切り換える。「所定温度範囲A2」とは、例えば、インバータ63の動作保証温度の下限温度Tminよりも高い第1所定温度Tx1以下であって、且つ、インバータ63の動作保証温度の下限温度Tminよりも低い第2所定温度Tx2以上の温度の範囲である。これによれば、インバータ63をさらに効率良く冷却することができる。
【0075】
なお、
図6に示す実施形態では、制御装置80は、冷媒温度センサ82により検出される温度が第1所定温度Tx1を上回る温度である場合には、冷媒温度センサ82により検出される温度が下降傾向であったとしても、切換弁71は閉状態が維持されている。そして、制御装置80は、インバータ温度センサ81により検出される温度が第1所定温度Tx1を下回ると、切換弁71を開状態に切り換える。
【0076】
○
図7に示すように、例えば、ハウジング50にバイパス通路70が形成されていてもよい。バイパス通路70には、切換弁71が設けられている。バイパス通路70は、例えば、吐出口12aと吸入口12bとを接続している。要は、バイパス通路70は、冷凍サイクル11において、第1領域61と第2領域62とを接続していればよい。
【0077】
○ 実施形態において、冷凍サイクル装置10は、第1熱媒体回路20及び第2熱媒体回路30を備えていない構成であってもよい。そして、例えば、第2熱交換器15に温調対象である電池40が熱的に結合されていてもよい。この場合、電池40を冷却する場合には、冷凍サイクル11において、圧縮機12、第1熱交換器13、膨張弁14、及び第2熱交換器15の順に冷媒を流す。このようにして、第1熱交換器13を凝縮器として機能させるとともに第2熱交換器15を蒸発器として機能させる。一方で、電池40を暖機する場合には、冷凍サイクル11において、圧縮機12、第2熱交換器15、膨張弁14、第1熱交換器13の順に冷媒を流す。このようにして、第1熱交換器13を蒸発器として機能させるとともに第2熱交換器15を凝縮器として機能させる。このような構成の場合、冷凍サイクル11は、冷媒の流れを切り換える四方弁を備えている。
【0078】
○ 実施形態において、例えば、切換弁71が、第1配管16とバイパス通路70との接続箇所に設けられる三方弁であってもよい。要は、切換弁71は、第1領域61からバイパス通路70を介した第2領域62への冷媒の流れを許容する許容状態と、第1領域61からバイパス通路70を介した第2領域62への冷媒の流れを遮断する遮断状態と、に切換可能な構成であればよい。
【0079】
○ 実施形態において、切換弁71は、機械式であってもよい。
○ 実施形態において、圧縮部57がインペラでなくてもよく、例えば、圧縮部57がスクロール式であったり、ベーン式であったりしてもよい。要は、圧縮機12の型式は特に限定されるものではない。
【0080】
○ 実施形態において、冷凍サイクル装置10の温調対象は、電池40に限らず、例えば、車両の室内空気であってもよい。
○ 実施形態において、冷凍サイクル装置10は、燃料電池車に搭載されていなくてもよい。要は、冷凍サイクル装置10は、車両に搭載されるものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0081】
10…冷凍サイクル装置、11…冷凍サイクル、12…圧縮機、13…凝縮器として機能する第1熱交換器、13a…入口、14…膨張弁、15…蒸発器として機能する第2熱交換器、15b…出口、50…ハウジング、57…圧縮部、58…モータ、59…吸入圧領域、60…吐出圧領域、61…第1領域、62…第2領域、63…インバータ、70…バイパス通路、71…切換弁、81…インバータ温度センサ、82…冷媒温度センサ。