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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170915
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】ガス分離装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/22 20060101AFI20241204BHJP
【FI】
B01D53/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087680
(22)【出願日】2023-05-29
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】矢敷 達朗
(72)【発明者】
【氏名】石田 直行
(72)【発明者】
【氏名】河原 洋平
(72)【発明者】
【氏名】渡部 亜由美
(72)【発明者】
【氏名】金 恩敬
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 秀宏
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 良平
【テーマコード(参考)】
4D006
【Fターム(参考)】
4D006GA41
4D006KA02
4D006KA15
4D006KA31
4D006KA52
4D006KA54
4D006KA55
4D006KA57
4D006KB30
4D006PA02
(57)【要約】
【課題】低コストで混合ガスから特定の取り出しガスを大流量かつ高濃度化して取り出す。
【解決手段】混合ガスから特定の取り出しガスを高濃度化して取り出すガス分離装置100であって、分離室を直列に2段以上接続し、1段目の第1分離室111の第1分離膜101は、ガス温度が上昇すると取り出しガスに対する透過速度が大きくなる特性を持ち、2段目の第2分離室112の第2分離膜102は、ガス温度が低下すると取り出しガスに対するガス分離選択性が大きくなる特性を持ち、1段目の第1分離室111の入口にガス加熱手段103を設置してガスを加熱し、2段目の第2分離膜102入口にガス冷却手段104を設置してガスを冷却し、2段目以降の分離膜は、上流側分離膜の透過側ガスを流入させ、透過側の取り出しガスのガス濃度を上昇させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
混合ガスから特定の取り出しガスを高濃度化して取り出すガス分離装置であって、
直列に2段以上接続された分離室のうち、ガス温度が上昇するにつれて前記取り出しガスに対する透過速度が大きくなる特性を持つ分離膜を備える1段目の分離室と、
ガス温度が低下するにつれて前記取り出しガスに対するガス分離選択性が大きくなる特性を持つ分離膜を備える2段目以降の分離室と、
前記1段目の分離室の入口に設置されてガスを加熱する加熱手段と、
2段目の分離室の入口に設置されてガスを冷却する冷却手段と、
を備えることを特徴とするガス分離装置。
【請求項2】
前記2段目以降の分離室は、上流側の分離室の透過側ガスを流入させ、透過側の前記取り出しガスのガス濃度を上昇させる、
ことを特徴とする請求項1に記載のガス分離装置。
【請求項3】
混合ガスから特定の取り出しガスを高濃度化して取り出すガス分離装置であって、
直列に2段以上接続された分離室のうち、ガス温度が上昇するにつれて前記取り出しガス以外のその他ガスに対する透過速度が大きくなる特性を持つ分離膜を備える1段目の分離室と、
ガス温度が低下するにつれて前記その他ガスに対するガス分離選択性が大きくなる特性を持つ分離膜を備える2段目以降の分離室と、
前記1段目の分離室の入口に設置されてガスを加熱する加熱手段と、
2段目の分離室の入口に設置されてガスを冷却する冷却手段と、
を備えることを特徴とするガス分離装置。
【請求項4】
前記2段目以降の分離室は、上流側の分離室の未透過側ガスを流入させ、未透過側の前記取り出しガスのガス濃度を上昇させる、
ことを特徴とする請求項3に記載のガス分離装置。
【請求項5】
前記加熱手段は、冷媒の凝縮熱によりガスを加熱する凝縮器であり、
前記冷却手段は、前記冷媒の蒸発過程で熱を吸収することでガスを冷却する蒸発器である、
ことを特徴とする請求項1から4のうち何れか1項に記載のガス分離装置。
【請求項6】
前記凝縮器の下流に設置され、前記冷媒を膨張、減圧して前記蒸発器に流入させる膨張弁と、
前記蒸発器の下流に設置され、前記冷媒を圧縮、昇圧して前記凝縮器に流入させる圧縮機と、
を備えることを特徴とする請求項5に記載のガス分離装置。
【請求項7】
前記凝縮器と前記蒸発器は、単一の冷凍サイクルの一部を構成する、
ことを特徴とする請求項5に記載のガス分離装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数種類のガスを含む混合ガスから特定のガスを分離する方法として、ガスを選択的に透過する分離膜を利用する方法がある。分離膜には、例えば、セラミック膜に代表される分子径の差により分離する分子ふるい膜や、膜へのガスの溶解性の差を利用した高分子膜等がある。これらの分離膜では、混合ガスに含まれるガスの分離膜に対する透過速度の差を利用して特定のガスを分離する。例えば、メタンと水素を含む混合ガスを、分離膜を用いて分離するケースを考える。メタンよりも水素の透過速度が大きい分離膜を用いると、分離膜では水素がより多く透過するため、透過側では水素濃度が上昇し、未透過側ではメタン濃度が上昇する。これにより透過側で水素を高濃度化して取り出し、未透過側でメタンを高濃度化して取り出すことができる。
【0003】
特許文献1には、空気から窒素を分離する方法として、分離膜を直列に2段接続し、1段目分離膜の未透過側で窒素を高濃度化して取り出し、取り出しガスを2段目分離膜に供給して、未透過側で更に窒素を高濃度化して取り出す方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平2-194809号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
混合ガスから透過側で特定のガスを大流量かつ高濃度化して取り出すケースを考える。
ガスを高濃度化するためには、取り出しガスに対する透過速度が大きく、その他ガスに対する透過速度が小さい分離膜を用いる。取り出しガスの透過速度とその他ガスの透過速度の比をガス分離選択性と呼ぶ。ガスを高濃度化するためには、ガス分離選択性の大きい膜を用いる。分離膜の一般的な特性として、ガス分離選択性が大きくなると、取り出しガスに対する透過速度そのものは小さくなる。そのため、大流量の高濃度ガスを取り出すには、分離膜のサイズを大きくして取り出しガスの透過流量を増加させる必要がある。分離膜サイズが大きくなると、分離膜の設置コストと運用コストが増え、ガスを取り出すためのコストが増えるという課題がある。
【0006】
混合ガスから未透過側で特定のガスを大流量かつ高濃度化して取り出すケースに対しても同様であり、特許文献1に記載されている取り出し方法で特定のガスを大流量かつ高濃度化して取り出す場合、分離膜サイズが大きくなり、ガスを取り出すためのコストが増えるという課題があった。
【0007】
そこで、本発明は、分離膜サイズを大きくすることなく低コストで混合ガスから特定の取り出しガスを大流量かつ高濃度化して取り出し可能なガス分離装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記した課題を解決するため、本発明のガス分離装置は、混合ガスから特定の取り出しガスを高濃度化して取り出すガス分離装置であって、直列に2段以上接続された分離室のうち、ガス温度が上昇するにつれて前記取り出しガスに対する透過速度が大きくなる特性を持つ分離膜を備える1段目の分離室と、ガス温度が低下するにつれて前記取り出しガスに対するガス分離選択性が大きくなる特性を持つ分離膜を備える2段目以降の分離室と、前記1段目の分離室の入口に設置されてガスを加熱する加熱手段と、2段目の分離室の入口に設置されてガスを冷却する冷却手段と、を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明のガス分離装置は、混合ガスから特定の取り出しガスを高濃度化して取り出すガス分離装置であって、直列に2段以上接続された分離室のうち、ガス温度が上昇するにつれて前記取り出しガス以外のその他ガスに対する透過速度が大きくなる特性を持つ分離膜を備える1段目の分離室と、ガス温度が低下するにつれて前記その他ガスに対するガス分離選択性が大きくなる特性を持つ分離膜を備える2段目以降の分離室と、前記1段目の分離室の入口に設置されてガスを加熱する加熱手段と、2段目の分離室の入口に設置されてガスを冷却する冷却手段と、を備えることを特徴とする。
その他の手段については、発明を実施するための形態のなかで説明する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、分離膜サイズを大きくすることなく、低コストで混合ガスから特定の取り出しガスを大流量かつ高濃度化して取り出すことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1の実施の形態に係るガス分離装置の概略構成図である。
図2】本発明の第2の実施の形態に係るガス分離装置の概略構成図である。
図3】本発明の第3の実施の形態に係るガス分離装置の概略構成図である。
図4】本発明の第4の実施の形態に係るガス分離装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の各図において共通する構成については、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【実施例0013】
図1は本発明の第1の実施の形態に係るガス分離装置の概略構成図である。
図1に示すように、ガス分離装置100は、第1分離膜101を備えた第1分離室111、第2分離膜102を備えた第2分離室112、ガス加熱手段103、ガス冷却手段104、混合ガス供給管105、第1透過ガス導出管106、第2透過ガス導出管107、第1未透過ガス導出管108、第2未透過ガス導出管109を備えている。ガス分離装置100は、第1分離膜101を備えた第1分離室111と、第2分離膜102を備えた第2分離室112が直列に接続されて構成される。このガス分離装置100は、混合ガスから透過側で特定の取り出しガスを高濃度化して取り出す装置である。
【0014】
1段目の第1分離室111に設置された第1分離膜101は、特定の取り出しガスを選択的に透過可能な分離膜であり、例えば高分子膜、セラミック膜等の分子ふるい膜の原理で分離する膜である。また、第1分離膜101は、ガス温度が上昇するにつれて、取り出しガスに対する透過速度が大きくなる特性をもつ。第1分離室111は、混合ガス供給管105から導かれた混合ガスを第1分離膜101で分離し、透過側ガスを第1透過ガス導出管106に導き、未透過側ガスを第1未透過ガス導出管108に導く。
【0015】
2段目の第2分離室112に設置された第2分離膜102は、特定の取り出しガスを選択的に透過可能な分離膜であり、例えば高分子膜、セラミック膜等の分子ふるい膜の原理で分離する膜である。また、第2分離膜102は、ガス温度が低下するにつれて、取り出しガスのガス分離選択性が大きくなる特性をもつ。第2分離室112は、第1透過ガス導出管106から導かれた混合ガスを第2分離膜102で分離し、透過側ガスを第2透過ガス導出管107に導き、未透過側ガスを第2未透過ガス導出管109に導く。
ガス加熱手段103は、第1分離室111に流入する混合ガスを加熱する装置であり、例えば熱交換器、あるいは電気ヒータである(加熱の原理は問わない)。ガス加熱手段103は、1段目の第1分離膜101の入口に設置されている。
【0016】
ガス冷却手段104は、第2分離室112に流入する第1分離室111の透過側ガスを冷却する装置であり、例えば冷却器、あるいは配管から大気への放熱による冷却機構である(冷却の原理は問わない)。ガス冷却手段104は、2段目の第2分離室112の入口に設置されている。
【0017】
混合ガス供給管105は、混合ガスをガス加熱手段103および第1分離室111に導くための配管である。
第1透過ガス導出管106は、第1分離室111の透過側ガスをガス冷却手段104および第2分離室112に導くための配管である。
第2透過ガス導出管107は、第2分離室112の透過側ガスを取り出すための配管である。
【0018】
第1未透過ガス導出管108は、第1分離室111の未透過側ガスと第2分離室112の未透過側ガスを合流させて、排出するための配管である。
第2未透過ガス導出管109は、第2分離室112の未透過側ガスを第1未透過ガス導出管108に導くための配管である。
【0019】
次に、ガス分離装置100により、混合ガスから透過側で特定の取り出しガスを高濃度化して取り出す処理の内容を説明する。
混合ガス供給管105より供給される混合ガスは、ガス加熱手段103にて加熱されてガス温度が上昇し、第1分離室111に流入する。第1分離室111に流入する混合ガス温度が上昇することで、取り出しガスに対する第1分離膜101の透過速度が大きくなるため、第1分離膜101を透過する取り出しガス流量が増える。
【0020】
第1分離室111にて第1分離膜101を透過した透過側ガスは、ガス冷却手段104にて冷却されて温度が低下し、第2分離室112に流入する。第2分離室112に流入する混合ガス温度が低下することで、取り出しガスに対する第2分離膜102のガス分離選択性が大きくなる。ガス分離選択性が大きくなると、取り出しガスは第2分離膜102を透過するが、その他ガスに対する第2分離膜102の透過流量が抑えられるため、透過側の取り出しガスのガス濃度が上昇する。
【0021】
本実施形態では、混合ガスから透過側で特定の取り出しガスを高濃度化して取り出す処理において、ガス加熱手段103にて混合ガスを加熱することで、第1分離室111に流入するガス温度が上昇する。ガス温度の上昇に伴い、取り出しガスに対する第1分離膜101の透過速度が大きくなるため、第1分離膜101を透過する取り出しガス流量が増える。これにより、混合ガスを加熱しない場合と比較して、分離膜での単位面積当たりの取り出しガス透過流量が増えるため、分離膜のサイズを小さくできる。
【0022】
また、ガス冷却手段104にて第1分離膜101を透過した透過側ガスを冷却することで、第2分離室112に流入するガス温度が低下し、取り出しガスに対する第2分離膜102のガス分離選択性が大きくなる。ガス分離選択性が大きくなると、取り出しガスは第2分離膜102を透過するが、その他ガスに対する第2分離膜102の透過流量が抑えられるため、取り出しガスのガス濃度が上昇する。これにより、混合ガスを冷却しない場合と比較して、分離膜での単位面積当たりの取り出しガスの濃度上昇幅が大きくなるため、分離膜サイズを小さくできる。
【0023】
上述の通り、本実施形態では、分離膜のサイズを大きくすることなく低コストで混合ガスから透過側で特定の取り出しガスを大流量化かつ高濃度化して取り出すことができる。
【実施例0024】
図2は本発明の第2の実施の形態に係るガス分離装置の概略構成図である。
図2に示すように、ガス分離装置200は、第1分離膜201を備えた第1分離室211、第2分離膜202を備えた第2分離室212、ガス加熱手段203、ガス冷却手段204、混合ガス供給管205、第1未透過ガス導出管206、第2未透過ガス導出管207、第1透過ガス導出管208、第2透過ガス導出管209を含んで構成される。ガス分離装置200は、第1分離膜201を備えた第1分離室211と、第2分離膜202を備えた第2分離室212が直列に接続されて構成される。ガス分離装置200は、混合ガスから未透過側で特定の取り出しガスを高濃度化して取り出す装置である。
【0025】
1段目の第1分離室111に設置された第1分離膜201は、特定の取り出しガス以外のその他ガスを選択的に透過可能な分離膜であり、例えば高分子膜、セラミック膜等の分子ふるい膜の原理で分離する膜である。また、第1分離膜201は、ガス温度が上昇するにつれて、取り出しガス以外のその他ガスに対する透過速度が大きくなる特性をもつ。第1分離室211は、混合ガス供給管205から導かれた混合ガスを第1分離膜101で分離し、未透過側ガスを第1未透過ガス導出管206に導き、透過側ガスを第1透過ガス導出管208に導く。
【0026】
2段目の第2分離室112に設置された第2分離膜202は、特定の取り出しガス以外のその他ガスを選択的に透過可能な分離膜であり、例えば高分子膜、セラミック膜等の分子ふるい膜の原理で分離する膜である。また、第2分離膜202は、ガス温度が低下するにつれて、取り出しガス以外のその他ガスに対するガス分離選択性が大きくなる特性をもつ。第2分離室212は、第1未透過ガス導出管206から導かれた混合ガスを第2分離膜102で分離し、未透過側ガスを第2未透過ガス導出管107に導き、透過側ガスを第2透過ガス導出管109に導く。
【0027】
ガス加熱手段203は、第1分離室211に流入する混合ガスを加熱する装置であり、例えば熱交換器、あるいは電気ヒータである。ガス加熱手段203は、1段目の第1分離膜201の入口に設置されている。
ガス冷却手段204は第2分離室212に流入する第1分離室211の未透過側ガスを冷却する装置であり、例えば冷却器、あるいは配管から大気への放熱による冷却機構である。ガス冷却手段104は、2段目の第2分離室112の入口に設置されている。
【0028】
混合ガス供給管205は混合ガスをガス加熱手段203および第1分離室211に導くための配管である。
第1未透過ガス導出管206は、第1分離室211の未透過側ガスをガス冷却手段204および第2分離室212に導くための配管である。
第2未透過ガス導出管207は、第2分離室212の未透過側ガスを取り出すための配管である。
【0029】
第1透過ガス導出管208は、第1分離室211の透過側ガスと第2分離室212の透過側ガスを合流させ、排出するための配管である。
第2透過ガス導出管209は、第2分離室212の透過側ガスを第1透過ガス導出管208に導くための配管である。
【0030】
次に、ガス分離装置200により、混合ガスから未透過側で特定の取り出しガスを高濃度化して取り出す処理の内容を説明する。
【0031】
混合ガス供給管205より供給される混合ガスは、ガス加熱手段203にて加熱されてガス温度が上昇し、第1分離室211に流入する。第1分離室211に流入する混合ガス温度が上昇することで、取り出しガス以外のその他ガスに対する第1分離膜201の透過速度が大きくなるため、第1分離膜201を透過するその他ガス流量が増える。結果、未透過側のガスから取り除かれるその他ガス流量が増える。
【0032】
第1分離室211にて第1分離膜201を透過しなかった未透過側ガスは、ガス冷却手段204にて冷却されて温度が低下し、第2分離室212に流入する。第2分離室212に流入する混合ガス温度が低下することで、取り出しガス以外のその他ガスに対する第2分離膜202のガス分離選択性が大きくなる。ガス分離選択性が大きくなると、その他ガスは第2分離膜202を透過するが、取り出しガスに対する第2分離膜202の透過流量が抑えられるため、未透過側の取り出しガスのガス濃度が上昇する。
【0033】
本実施形態では、混合ガスから未透過側で特定の取り出しガスを高濃度化して取り出す処理において、ガス加熱手段203にて混合ガスを加熱することで、第1分離室211に流入するガス温度が上昇する。ガス温度の上昇に伴い、取り出しガス以外のその他ガスに対する第1分離膜201の透過速度が大きくなるため、第1分離膜201を透過するその他ガス流量が増える。これにより、混合ガスを加熱しない場合と比較して、分離膜での単位面積当たりの未透過側のガスから取り除かれるその他ガス流量が増えるため、分離膜サイズを小さくできる。
【0034】
また、ガス冷却手段204にて第1分離膜201を透過しなかった未透過側ガスを冷却することで、第2分離室212に流入するガス温度が低下し、取り出しガス以外のその他ガスに対する第2分離膜202のガス分離選択性が大きくなる。ガス分離選択性が大きくなると、その他ガスは第2分離膜202を透過するが、取り出しガスに対する第2分離膜202の透過流量が抑えられるため、未透過側の取り出しガスのガス濃度が上昇する。これにより、混合ガスを冷却しない場合と比較して、分離膜での単位面積当たりの取り出しガス濃度上昇幅が大きくなるため、分離膜サイズを小さくできる。
【0035】
上述の通り、本実施形態では、分離膜サイズを大きくすることなく低コストで混合ガスから未透過側で特定の取り出しガスを大流量かつ高濃度化して取り出すことができる。
【実施例0036】
図3は本発明の第3の実施の形態に係るガス分離装置の概略構成図である。
第1の実施の形態と同様の部分については同図において既出図面と同符号を付して説明を省略する。
本実施の形態が第1の実施の形態と相違する点は、ガス加熱手段103、ガス冷却手段104の代わりに、凝縮器301、蒸発器302、圧縮機303、膨張弁304、冷媒配管305を有する点である。
【0037】
凝縮器301は、冷媒を凝縮させ、凝縮過程で発生する凝縮熱を利用して第1分離室111に流入する混合ガスを加熱する装置である。
蒸発器302は、冷媒を蒸発させ、蒸発過程で熱を吸収することで第2分離室112に流入する第1分離室111の透過側ガスを冷却する装置である。
【0038】
圧縮機303は、冷媒を圧縮、昇圧させる装置である。
膨張弁304は、冷媒を膨張、減圧させる装置である。
冷媒配管305は、冷媒を凝縮器301、膨張弁304、蒸発器302、圧縮機303のサイクルで循環させるための配管である。
【0039】
第1の実施の形態ではガスを加熱、冷却するために、ガス加熱手段103とガス冷却手段104を稼働させる必要があるのに対して、本実施形態では圧縮機303を稼働することで、ガスの加熱と冷却が可能である。これにより、ガスを加熱、冷却するための動力を抑えることができる。
【0040】
上述の通り、本実施形態では第1実施形態で得られる各効果に加えて、圧縮機303を稼働することで、ガスの加熱と冷却が可能であり、ガスを加熱、冷却するための動力を抑えることができる。これにより、より低コストで混合ガスから透過側で特定の取り出しガスを大流量かつ高濃度化して取り出すことができる。
【実施例0041】
図4は本発明の第4の実施の形態に係るガス分離装置の概略構成図である。
第2の実施の形態と同様の部分については同図において既出図面と同符号を付して説明を省略する。
本実施の形態が第2の実施の形態と相違する点は、ガス加熱手段203、ガス冷却手段204の代わりに、凝縮器401、蒸発器402、圧縮機403、膨張弁404、冷媒配管405を有する点である。これら凝縮器401、蒸発器402、圧縮機403、膨張弁404、冷媒配管405は、単一の冷凍サイクルを構成する。
【0042】
凝縮器401は、冷媒を凝縮させ、凝縮過程で発生する凝縮熱を利用して第1分離室211に流入する混合ガスを加熱する装置である。
蒸発器402は、同一の冷媒を蒸発させ、蒸発過程で熱を吸収することで第2分離室212に流入する第1分離室211の未透過側ガスを冷却する装置である。
【0043】
圧縮機403は、冷媒を圧縮、昇圧させる装置である。
膨張弁404は、同一の冷媒を膨張、減圧させる装置であり、
冷媒配管405は、冷媒を凝縮器401、膨張弁404、蒸発器402、圧縮機403のサイクルで循環させるための配管である。これら凝縮器401と蒸発器402は、同一の冷凍サイクルの一部を構成する。
【0044】
第2の実施の形態ではガスを加熱、冷却するために、ガス加熱手段203とガス冷却手段204をそれぞれ稼働させる必要があるのに対して、本実施形態では圧縮機403を稼働することで、ガスの加熱と冷却が可能である。これにより、ガスを加熱、冷却するためのエネルギーを抑えることができる。
【0045】
上述の通り、本実施形態では第2実施形態で得られる各効果に加えて、圧縮機403を稼働することで、ガスの加熱と冷却が可能であり、ガスを加熱、冷却するためのエネルギーを抑えることができる。これにより、より低コストで混合ガスから未透過側で特定の取り出しガスを大流量かつ高濃度化して取り出すことができる。
【0046】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、ガス分離装置100、あるいはガス分離装置300において、第2分離室112の下流側に、ガス温度が低下すると、取り出しガスのガス分離選択性が大きくなる特性をもつ分離膜を有する分離室を1段以上直列に接続し、上流側の分離室の透過側ガスを流入させ、透過側の取り出しガスのガス濃度を上昇させる構成としてもよい。このとき、第2分離室112とその下流側の分離室は、上流側の分離室の透過側ガスを流入させ、透過側の取り出しガスのガス濃度を上昇させる。
【0047】
例えば、ガス分離装置200、あるいはガス分離装置400において、第2分離室212の下流側に、取り出しガス以外のその他ガスに対するガス分離選択性が大きくなる特性をもつ分離膜を有する分離室を1段以上直列に接続し、上流側の分離室の未透過側ガスを流入させ、未透過側の取り出しガスのガス濃度を上昇させる構成としてもよい。このとき、第2分離室112とその下流側の分離室は、上流側の分離室の未透過側ガスを流入させ、未透過側の取り出しガスのガス濃度を上昇させる。
【0048】
また、分離室が直列に3段以上接続される場合において、「2段目以降の分離室」である直列第3段目や直列第4段目の分離室は、必ずしも第2分離室(直列第2段目の分離室)と同じ特性の分離膜を備える構成でなくともよい。例えば、直列第3段目や第4段目の分離室の分離膜が、第1分離室の分離膜と同じ特性を有する構成としてもよいし、第1分離室や第2分離室の分離膜とは異なる特性を有する分離膜を有する構成としてもよい。また、分離室が直列に3段以上接続される場合において、第1段目と第2段目が第1分離室の分離膜と同じ特性を有するもので、第3段目が第2分離室の分離膜と同じ特性を有する構成としてもよい。また、第1段目の分離室の上流側に分離室が備わっている構成としてもよい。
【符号の説明】
【0049】
100,200,300,400:ガス分離装置
101,201:第1分離膜
102,202:第2分離膜
103,203:ガス加熱手段 (加熱手段)
104,204:ガス冷却手段 (加熱手段)
105,205:混合ガス供給管
106,208:第1透過ガス導出管
107,209:第2透過ガス導出管
108,206:第1未透過ガス導出管
109,207:第2未透過ガス導出管
111,211:第1分離室
112,212:第2分離室
301,401:凝縮器
302,402:蒸発器
303,403:圧縮機
304,404:膨張弁
305,405:冷媒配管
図1
図2
図3
図4