(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170916
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】組立残存型枠、残存型枠の製造方法、壁高欄付床版の製造方法
(51)【国際特許分類】
E01D 19/10 20060101AFI20241204BHJP
E01D 21/00 20060101ALI20241204BHJP
【FI】
E01D19/10
E01D21/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087682
(22)【出願日】2023-05-29
(71)【出願人】
【識別番号】000200367
【氏名又は名称】川田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101890
【弁理士】
【氏名又は名称】押野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】寺島 太郎
(72)【発明者】
【氏名】溝口 勝
(72)【発明者】
【氏名】田島 久嗣
(72)【発明者】
【氏名】三好 一高
【テーマコード(参考)】
2D059
【Fターム(参考)】
2D059AA21
2D059DD16
2D059GG55
(57)【要約】
【課題】残存型枠及び壁高欄付床版を安全かつ効率的に製造することが可能な組立残存型枠、残存型枠の製造方法、壁高欄付床版の製造方法を提供すること。
【解決手段】組立残存型枠1であって、前縁部及び後縁部と一対の側縁部と、を有する底板11と、前記一対の側縁部に沿って延在し前記底板11に対して立設可能に配置される金属製側板21と、前記金属製側板21の立設状態における低部側に配置され、前記金属製側板21を前記底板11に対して回動可能に支持する回動支持部22と、前記金属製側板21の立設位置において前記金属製側板21の回動を制限する回動制限部25と、前記立設位置において前記金属製側板21を前記底板11と連結する連結部26と、を備えることを特徴とする。
【選択図】
図3C
【特許請求の範囲】
【請求項1】
床版に壁高欄が立設された壁高欄付床版を配置して延伸される構造物に用いられる組立残存型枠であって、
延伸方向の前方側及び後方側に位置される前縁部及び後縁部と、前記前縁部及び前記後縁部の両端を前記壁高欄付床版の延伸方向に沿って接続する一対の側縁部と、を有する底板と、
前記一対の側縁部の少なくともいずれか一方に沿って延在し前記底板に対して立設可能に配置される金属製側板と、
前記金属製側板の立設状態における低部側に配置され、前記金属製側板を前記底板に対して回動可能に支持する回動支持部と、
前記金属製側板の立設位置において前記金属製側板の回動を制限する回動制限部と、
前記立設位置において前記金属製側板を前記底板と連結する連結部と、
を備えることを特徴とする組立残存型枠。
【請求項2】
請求項1に記載の組立残存型枠であって、
前記回動制限部は、
前記金属製側板の前記側縁部側に前記立設位置と対応して形成されて前記底板上面と前記側縁部において当接する係止部を備え、
前記連結部は、前記底板及び前記係止部に形成されたボルト締結構造により構成されている
ことを特徴とする組立残存型枠。
【請求項3】
請求項1に記載の組立残存型枠の前記金属製側板を、
前記底板上において、前記金属製側板が前記底板に対して設定された立設位置まで立て起こし、
前記金属製側板を立設した後に、前記連結部により前記底板に前記金属製側板を連結して壁高欄外型枠を形成する
ことを特徴とする残存型枠の製造方法。
【請求項4】
請求項1に記載の組立残存型枠における前記金属製側板が立設した状態で前記金属製側板を吊り上げ可能に配置された吊り具を前記金属製側板の上部に接続して前記吊り具を吊り上げて前記金属製側板を前記底板に対して設定された立設位置まで立て起こし、
前記底板に前記金属製側板を連結して壁高欄外型枠を形成する
ことを特徴とする残存型枠の製造方法。
【請求項5】
請求項3または4に記載の残存型枠を用いた壁高欄付床版の製造方法であって、
前記壁高欄外型枠が形成された後に、構造物の建設予定位置において前記残存型枠内にコンクリートを打設してコンクリート床版を形成し、
前記金属製側板の内方に内型枠を設置した後にコンクリートを打設してコンクリート壁高欄を形成する
ことを特徴とする壁高欄付床版の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物(橋梁等)の建設において壁高欄付床版の残存型枠を形成(製造)するための組立残存型枠、残存型枠の製造方法、及び壁高欄付床版の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、橋梁や高速道路をはじめとする高架の構造物は、通行面をなす床版と床版の両側の側縁部に立設される壁高欄とを備えた壁高欄付床版を工事着工側から工事終了位置側に向かって構成することが一般的である。
【0003】
壁高欄付床版を形成する際には、例えば、
図11に示すような残存型枠510Sが用いられる。
そして、残存型枠510Sを用いた型枠を工事着工側から工事終了位置側に延伸方向Fに向かって順次接続して延伸し、その後型枠内にコンクリートを打設して一定区間の壁高欄付床版を形成する。
【0004】
残存型枠510Sは、
図11に示すように、例えば、床版の下側面をなす底板パネル510と、底板パネル510の両側の側縁部511Sに配置され底板パネル510に対して立設される壁高欄外型枠520とを備えている。
これら底板パネル510と壁高欄外型枠520は、トラック等の運搬手段を用いて別々に工事現場に運搬される。
【0005】
そして、底板パネル510は、
図12に示すように、底鋼板(底板)511の後縁部511Bを工事着工側に、前縁部511Aを工事終了位置側に位置させてハンチ部511Hを橋桁105と合わせて橋桁105上に設置し、その後、壁高欄外型枠520を底板パネル510の側縁部511Sに取り付けて残存型枠510Sを形成する。
そして、残存型枠510Sを延伸方向Fに沿って所定区間にわたり順次接続するとともに、その内方に内型枠を配置して壁高欄付床版の型枠を形成して、この型枠にコンクリートを打設して壁高欄付床版を形成する。
【0006】
底板パネル510は、例えば、底鋼板(底板)511と横リブ512とを備えていて、底鋼板(底板)511は、ハンチ部511Hにおいて分割される複数(例えば、3つまたは4つ以上)の部分から構成され、この3つの部分が横リブ512により接続されて一体構造をなしている。
また、壁高欄外型枠520は底鋼板(底板)511の両側の側縁部511Sに立設されて、例えば、ボルト等の連結部によって底鋼板(底板)511と連結される。
【0007】
これら底板パネル510や壁高欄外型枠520などの工事資材は、鋼板をはじめとする材料を切断、曲げ加工、溶接等の多くの工程で形成されることから工場で製造してプレファブ化することが有利であるが、底板パネル510に壁高欄外型枠520を取り付けると高さ寸法が大きくなり、トラック等で運搬できる数が少なくなり輸送効率が低下するため、壁高欄外型枠520は工事現場で底板パネル510に取り付けることが有利とされている。
【0008】
工事現場で底板パネル510に壁高欄外型枠520を取り付ける際には、
図12に示すように、例えば、クレーン車CのブームC0から吊り下げたロープC1で壁高欄外型枠520を吊り上げて橋桁105上の底板パネル510の側縁部511Sに搬送する。
次に、作業者Mが壁高欄外枠520を受け取り、受け取った壁高欄外型枠520を手作業で底板パネル510の側縁部511Sに移動させて立設した状態で底板パネル510に対して位置決めして壁高欄外型枠520と底板パネル510を連結する。
【0009】
しかしながら、このような手作業よる壁高欄外型枠520の取り付けは、作業者Mが防護柵を配置できない底板パネル510の上で側縁部511Sに近寄る危険な高所作業であることから、親綱を設置したうえで命綱を用いてから作業する必要があり、多額の安全対策費用が必要である。
【0010】
また、底板パネル510上における壁高欄外型枠520の受け取り及び取り付け作業は、クレーン操作者が作業を視認することが困難であるため、壁高欄外型枠520の取り付けを効率的に進めることは困難であり、クレーンの重機賃料や労務費に多額の費用が必要となる。
【0011】
そこで、壁高欄付床版を形成する際に、壁高欄外型枠(型枠本体)を底板パネルに効率的に取り付けることが可能な技術として、例えば、特許文献1が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記特許文献1には、壁高欄付床版を形成する際に、内部にエキスパンドメタルを埋設して補強したコンクリートからなる壁高欄外型枠(型枠本体)を用いた残存型枠が記載されている。
そして、この残存型枠により壁高欄外型枠の剛性及び強度を向上して軽量化し取り付け作業を効率することが記載されている。
【0014】
しかしながら、特許文献1に記載の残存型枠は、コンクリートを用いていることからトラック等による輸送やクレーンによる搬送の際に壁高欄外型枠が損傷する虞がある。
また、重量の軽量化が困難であるので、延伸方向Fの寸法は1m程度が限界と考えられ、クレーンによる作業を効率的に行うことは困難である。
【0015】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、残存型枠及び壁高欄付床版を安全かつ効率的に製造することが可能な組立残存型枠、残存型枠の製造方法、壁高欄付床版の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
そこで、発明者らは、壁高欄付床版を備えた構造物を建設する際に、残存型枠及び壁高欄付床版を安全に形成(製造)するとともにクレーン作業を削減して効率的に残存型枠及び壁高欄付床版を製造することが可能な技術を鋭意研究し、上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
【0017】
(1)構成1の発明は、床版に壁高欄が立設された壁高欄付床版を配置して延伸される構造物に用いられる組立残存型枠であって、延伸方向の前方側及び後方側に位置される前縁部及び後縁部と、前記前縁部及び前記後縁部の両端を前記壁高欄付床版の延伸方向に沿って接続する一対の側縁部と、を有する底板と、前記一対の側縁部の少なくともいずれか一方に沿って延在し前記底板に対して立設可能に配置される金属製側板と、前記金属製側板の立設状態における低部側に配置され、前記金属製側板を前記底板に対して回動可能に支持する回動支持部と、前記金属製側板の立設位置において前記金属製側板の回動を制限する回動制限部と、前記立設位置において前記金属製側板を前記底板と連結する連結部と、を備えることを特徴とする。
【0018】
この発明に係る組立残存型枠によれば、底板と、ひとつの辺を底板の側縁部と対応させて配置される金属製側板と、底板の側縁部側に配置され金属製側板を底板に対して回動可能に支持する回動支持部と、を備え、金属製側板を底板に対して立設可能とされているので、金属製側板を底板の側縁部側を中心に回動させて底板に対して畳んだ状態、立設した状態とすることができる。
また、回動制限部を備えているので、金属製側板の回動を制限して停止させ、金属製側板を設定した位置で正確に立設させることができる。
また、連結部を備えているので、金属製側板を立設位置で容易かつ効率的に底板と連結させて金属製側板の立設状態を保持することができる。
【0019】
したがって、構造物の建設現場においてクレーンを用いて組立残存型枠所定位置に搬送することで、底板上に金属製側板を運搬して底板に立設連結させる場合のように、作業者が金属製側板を受け取る作業や金属製側板を底板の側縁部に位置決めして立設させるために底板の側縁部に近づいて作業することが抑制され、安全かつ効率的に残存型枠を形成することができる。
また、底板と金属製側板を別々にクレーン搬送して現場で金属製側板を底板の所定位置に立設姿勢で位置決めする必要がなくなり、残存型枠を容易かつ効率的に形成することができる。
また、底板と金属製側板を一緒にクレーン搬送することにより、クレーン搬送回数を削減するとともにクレーン搬送に要する時間を短縮することができる。
その結果、この発明に係る組立残存型枠によれば、残存型枠及び壁高欄付床版を安全かつ効率的に製造することができる。
また、残存型枠及び壁高欄付床版の製造に要する時間及び製造におけるリードタイムを短縮することができる。
【0020】
ここで、壁高欄付床版を配置して延伸される構造物とは、橋梁、高架道路等、壁高欄付床版を用いて構成されるあらゆる構造物を対象とすることができる。
また、延伸とは、構造物を建設する際に組立残存型枠、残存型枠、壁高欄付床版を工事着工側から工事終了位置側に向かって順次(接続して)伸ばすことをいい、これらを延伸させる方向を延伸方向という。
また、底板の平面視における形状は任意に設定することが可能である。例えば、側縁部に関しては、幅員増減や退避スペース確保等にともなって金属製側板が延伸方向に対して斜めに形成されていてもよい。また、前縁部(伸延既設壁高欄付床版を接続する側)や後縁部(既設壁高欄付床版と接続する側)に関しては、平面視円弧状の道路を接続するために、一対の側縁部を異なる長さとすることで前縁部や後縁部が延伸方向に対して90°以外で交差して形成されてもよい。
また、金属製側板は一対の側縁部の少なくともいずれか一方に配置されていればよく、底板の両側の側縁部に配置されていてもよいし、いずれか一方の側縁部に配置されていてもよい。
また、組立残存型枠で形成(製造)される残存型枠は、底板と、底板に対して立設された金属製側板を備えていればよく、組立残存型枠として備えている構成の一部が取り除かれていてもよい。具体的には、例えば、金属製側板を立設して連結した後に、回動支持部や回動制限部の全部または一部を取り外して残存型枠としてもよい。また、壁高欄付床版についても同様である。
【0021】
(2)構成2の発明は、構成1の組立残存型枠であって、前記回動制限部は、前記金属製側板の前記側縁部側に前記立設位置と対応して形成されて前記底板上面と前記側縁部において当接する係止部を備え、前記連結部は、前記底板及び前記係止部に形成されたボルト締結構造により構成されていることを特徴とする。
【0022】
この発明に係る組立残存型枠によれば、回動制限部が金属製側板の側縁部側に立設位置と対応して形成され底板の側縁部において底板上面と当接する係止部を備えており、予め設定された回動位置で金属製側板の回動が制限されるので、底板に対する金属製側板の立設を正確に行うことができる。
また、回動制限部が金属製側板に形成され底板上面と当接する係止部を備え、連結部が底板及び係止部に形成されたボルト締結構造により構成されているので、係止部を介して底板と金属製側板を確実に連結することができる。
また、回動制限部が金属製側板の側縁部側に形成されているので、側縁部に沿った方向における回動制限部の長さ、数等を、金属製側板等の構成に応じて適切に形成して金属製側板を安定して立設させることができる。
【0023】
(3)構成3の発明は、残存型枠の製造方法であって、構成1に記載の組立残存型枠の前記金属製側板を、前記底板上において、前記金属製側板が前記底板に対して設定された立設位置まで立て起こし、前記金属製側板を立設した後に、前記連結部により前記底板に前記金属製側板を連結して壁高欄外型枠を形成する。
【0024】
この発明に係る残存型枠の製造方法によれば、底板上において金属製側板を設定位置まで立て起こし、金属製側板を底板に対して立設した後に、連結部により底板に金属製側板を連結して壁高欄外型枠を形成する。
したがって、底板と金属製側板を別々に搬送して残存型枠を製造する場合に比較してクレーン搬送回数および搬送時間を短縮することができる。
その結果、底板上で金属製側板を立て起こす際に、底板の側縁部から金属製側板の(立設時における)高さよりも離れた位置で立て起こし作業をすることができ、作業者が底板の側縁部に近づいて作業することが抑制され、安全かつ効率的に残存型枠を形成(製造)することができる。
【0025】
なお、金属製側板を立設させるタイミング、立設された金属製側板を底板と連結するタイミングは任意に設定することが可能であり、組立残存型枠を橋脚上に配置した後に残存型枠を形成してもよいし、橋桁上に配置する前(例えば、トラック等の運搬手段上や組立用スペース等の低所)に残存型枠を形成してもよい。
例えば、組立残存型枠を橋桁上に配置してから金属製側板を底板に対して立設、連結する場合には、橋桁上に配置した組立残存型枠における金属製側板の立設、連結と並行して組立残存型枠を順次クレーン搬送することができるので、クレーンの搬送効率を向上することができる。また、運搬手段(例えば、トラック)の停止時間を短縮することができる。
また、橋桁に配置する前に運搬手段上で金属製側板を立設、連結する場合には、高所作業を低減することができ残存型枠の製造における安全性を向上することができる。
また、低所に設定した複数の組立スペースで金属製側板を底板に対して立設、連結する場合には、高所作業を低減することができ残存型枠の製造における安全性を向上することができる。
また、橋桁上に配置する前に低所に設定した組立用スペースで(例えば、クレーンが保持したまま)金属製側板を立設、連結する場合には、複数の組立残存型枠において並行して金属製側板を立設、連結することができるので、高所作業がより軽減されて安全性をさらに向上することができる。
また、橋桁上に配置する前に低所に設定した複数の組立用スペースで金属製側板を立設、連結する場合には、高所作業が軽減されて安全性が向上するうえに、各残存型枠に関して2回のクレーン搬送が必要となるものの複数の残存型枠を並行して製造することでクレーンの搬送効率を向上することができ、さらに運搬手段(例えば、トラック)の停止時間を短縮して運搬手段の稼働率を向上することができる。
【0026】
(4)構成4の発明は、残存型枠の製造方法であって、構成1の組立残存型枠における前記金属製側板が立設した状態で前記金属製側板を吊り上げ可能に配置された吊り具を前記金属製側板の上部に接続して前記吊り具を吊り上げて前記金属製側板を前記底板に対して設定された立設位置まで立て起こし、前記底板に前記金属製側板を連結して壁高欄外型枠を形成することを特徴とする。
【0027】
この発明に係る残存型枠の製造方法によれば、金属製側板の立設状態における上部側に吊り具を取り付けて吊上げて底板に対して金属製側板を立て起こして立設し底板に金属製側板を連結して壁高欄外型枠を形成する。
したがって、残存型枠を製造する際のクレーン搬送回数および搬送時間を短縮することができる。また、作業者の手作業による金属製側板の立て起こしが不要となり、金属製側板の立設作業を省力することができる。
その結果、省力化して安全かつ効率的に残存型枠を形成(製造)することができる。
【0028】
なお、壁高欄外型枠を形成するための底板と金属製側板の連結は任意のタイミングで実施することが可能であり、金属製側板が立設されてトラックの上に位置されているタイミング、橋桁の上部に設置した後のタイミング、これらの間のいずれかのタイミングで実施してもよい。
【0029】
(5)構成5の発明は、構成3または構成4の残存型枠を用いた壁高欄付床版の製造方法であって、前記壁高欄外型枠が形成された後に、構造物の建設予定位置において前記残存型枠内にコンクリートを打設してコンクリート床版を形成し、前記金属製側板の内方に内型枠を設置した後にコンクリートを打設してコンクリート壁高欄を形成することを特徴とする。
【0030】
この発明に係る壁高欄付床版の製造方法によれば、壁高欄外型枠が形成された後に、構造物の建設予定位置において残存型枠内にコンクリートを打設してコンクリート床版を形成し、金属製側板の内方に内型枠を設置した後にコンクリートを打設してコンクリート壁高欄を形成するので、安全かつ効率的に短時間で壁高欄付床版を製造することができ、ひいては構造物を効率的に短時間で建設することができる。
【発明の効果】
【0031】
この発明に係る組立残存型枠、残存型枠の製造方法によれば、安全かつ効率的に残存型枠及び壁高欄付床版を製造することができる。
また、この発明に係る壁高欄付床版の製造方法によれば、安全かつ効率的に壁高欄付床版を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本発明に係る組立残存型枠を適用して構成される構造物の概略構成の一例を説明する斜視図である。
【
図2A】本発明の第1実施形態に係る組立残存型枠の概略構成の一例を説明する図であり、壁高欄外型枠を畳んだ状態を示す斜視図である。
【
図2B】第1実施形態に係る組立残存型枠の概略構成の一例を説明する図であり、壁高欄外型枠を立て起こした状態を示す斜視図である。
【
図3A】第1実施形態に係る組立残存型枠の要部詳細を説明する延伸方向に沿って見た部分概略図であり、
図2AにIIIAで示す壁高欄外型枠を畳んだ状態を示す図である。
【
図3B】第1実施形態に係る組立残存型枠の要部詳細を説明する延伸方向に沿って見た部分概略図であり、壁高欄外型枠を立て起こす状態を示す図である。
【
図3C】第1実施形態に係る組立残存型枠の要部詳細を説明する延伸方向に沿って見た部分概略図であり、
図2BにおいてIIICで示す壁高欄外型枠を立設して、底板パネルと連結した状態を示す図である。
【
図4】第1実施形態に係る組立残存型枠の要部詳細を説明する図であり、連結部の一例を概念的に説明する斜視図及び平面図である。
【
図5A】第1実施形態に係る残存型枠製造方法の一例を説明する図であり、組立残存型枠運搬を示す概念図である。
【
図5B】第1実施形態に係る残存型枠製造方法の一例を説明する図であり、橋桁への組立残存型枠の移動を示す概念図である。
【
図5C】第1実施形態に係る残存型枠製造方法の一例を説明する図であり、壁高欄外型枠の立て起こしを示す概念図である。
【
図6】第1実施形態に係る壁高欄付床版の製造方法の一例を説明する図であり、組立てた残存型枠の構成を示す延伸方向に沿って見た概念図である。
【
図7】第1実施形態に係る壁高欄付床版の構成を説明する延伸方向に沿って見た概念図である。
【
図8】第1実施形態の第1変形例に係る組立残存型枠の連結部の一例を概念的に説明する斜視図及び平面図である。
【
図9A】第1実施形態の第2変形例に係る組立残存型枠の要部詳細を説明する延伸方向に沿って見た部分概略図であり、
図2AにおいてIIIAで示す壁高欄外型枠を畳んだ状態を示す図である。
【
図9B】第1実施形態の第2変形例に係る組立残存型枠の要部詳細を説明する延伸方向に沿って見た部分概略図であり、壁高欄外型枠を立て起こす状態を示す図である。
【
図9C】第1実施形態の第2変形例に係る組立残存型枠の要部詳細を説明する延伸方向に沿って見た部分概略図であり、
図2BにおいてIIICで示す壁高欄外型枠を立設した状態を示す図である。
【
図10A】本発明の第2実施形態に係る組立残存型枠による残存型枠製造方法の一例を説明する図であり、組立残存型枠の吊り上げを示す概念図である。
【
図10B】第2実施形態に係る組立残存型枠による残存型枠の製造方法の一例を説明する図であり、組立残存型枠の吊り上げを利用した壁高欄外型枠の立て起こしを示す概念図である。
【
図10C】第2実施形態に係る組立残存型枠による残存型枠の製造方法の一例を説明する図であり、組立てた残存型枠の移動を示す概念図である。
【
図11】橋梁における従来の残存型枠の構成の一例を説明する斜視図である。
【
図12】従来の橋梁建設における壁高欄付床版の残存型枠の構成作業の概略を説明する概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
<第1実施形態>
以下、
図1~
図4、
図5Aを参照して、本発明の第1実施形態について説明する。
まず、
図1を参照して組立残存型枠を用いて製造された残存型枠を適用して構成される橋梁(構造物)の概略構成の一例について説明する。
図1は、本発明に係る組立残存型枠を適用して構成される構造物の概略構成の一例を説明する斜視図である。
図1において、符号1Sは残存型枠を、符号100は橋梁(構造物)を、符号110は壁高欄付床版を、符号111はコンクリート床版を、符号120はコンクリート壁高欄を、符号Fは延伸方向を示している。
【0034】
橋梁(構造物)100は、本発明の組立残存型枠を適用して構成される橋梁(構造物)の一例であり、
図1に示すように、例えば、橋脚102と、支承104と、橋桁105と、壁高欄付床版110と、ハンチ部111Hと、を備えている。
【0035】
橋脚102は、
図1に示すように、地面から上方に向かって立設されている。
また、橋脚102の上部には支承104が配置され、橋桁105は支承104の上部に配置されている。
また、橋桁105の上部にはハンチ部111Hを介して壁高欄付床版110が配置されている。
【0036】
壁高欄付床版110は、
図1に示すように、コンクリート床版111と、コンクリート壁高欄120と、を備えている。
また、壁高欄付床版110の外面は、底板パネル10と立設された状態の壁高欄外型枠20とを備えた残存型枠1Sにより形成されている。
壁高欄付床版110は、工事開始位置側の後縁部(伸延既設壁高欄付床版を接続する側)110Bから工事完了位置側の前縁部(既設壁高欄付床版と接続する側)110Aに順次延伸することにより構成されている。
【0037】
コンクリート床版111は、例えば、底板パネル10の上面に形成されたコンクリート版と、コンクリート版の上面に形成されコンクリート版に雨水が浸透するのを防止するための防水層と、を備えている。
【0038】
ハンチ部111Hは、
図1に示すように、コンクリート床版111の下部に形成され、橋桁105の上部に配置されて橋桁105と連結されている。
また、ハンチ部111Hは、例えば、延伸方向Fに沿って見たときにコンクリート床版111の下部から下方に向かって幅が縮小する略逆台形に形成されている。
【0039】
コンクリート壁高欄120は、コンクリート床版111の延伸方向Fにおける幅方向両側の側縁部110Sに配置されている。
具体的には、壁高欄外型枠20の内側(コンクリート床版111側)に鉄筋コンクリートにより形成されていて、壁高欄外型枠20が金属により形成されていることでコンクリートにひび等が発生した場合であっても外側面におけるコンクリートの剥落が生じない構成とされている。
【0040】
次に、
図2A、
図2B、
図3A~
図3C、
図4を参照して第1実施形態に係る組立残存型枠の概略構成の一例について説明する。
図2A、
図2Bは、第1実施形態に係る組立残存型枠の概略構成の一例を説明する図であり、
図2Aは壁高欄外型枠を畳んだ状態を示す斜視図であり、
図2Bは壁高欄外型枠を立て起こした状態を示す斜視図である。
また、
図3A~
図3Cは、組立残存型枠の要部詳細を説明する延伸方向に沿って見た図であり、
図3Aは
図2AにおいてIIIAで示す壁高欄外型枠を畳んだ態を示す図であり、
図3Bは壁高欄外型枠を立て起こす状態を示す図であり、
図3Cは
図2BにおいてIIICで示す壁高欄外型枠を立設して、底板パネルと連結した状態を示す図である。
図において、符号1は組立残存型枠を、符号1Sは残存型枠を、符号10は底板パネルを、符号11は底鋼板(底板)を、符号11Sは側縁部を、符号20は壁高欄外型枠を、符号21は側鋼板(金属製側板)を、符号22はヒンジ部材(回動支持部)を、符号25は回動制限リブ(回動制限部)を、符号25Aは当接面(係止部)を、符号26はボルト締結構造(連結部)を、を示している。
【0041】
組立残存型枠1は、
図2A、
図2Bに示すように、例えば、底板パネル10と、壁高欄外型枠20と、回動制限リブ(回動制限部)25と、を備えている。
また、組立残存型枠1は、
図3A~
図3Cに示すヒンジ部材(回動支持部)22と、支持部材27と、を備えている。
【0042】
この実施形態において、底鋼板(底板)11は、例えば、延伸方向Fの寸法が2.3m、延伸方向Fと直交する方向の寸法が橋梁100の通行幅と対応して形成されている。
また、壁高欄外型枠20は、例えば、延伸方向Fの寸法が2.3m、立設状態における高さ寸法が1.35mに形成されている。
また、組立残存型枠1を荷台に重ねて運搬する際の運搬効率及び運搬における安定性を考慮すると、例えば
図5Aに示すように、壁高欄外型枠20の厚さ(畳んだ時の上下方向寸法)がハンチ部11Hの高さ(上下方向寸法)以下に形成されていることが好適である。
また、壁高欄外型枠20の重量は、作業者2人による立て起こしを考慮すると、約170kg以下であることが好適である。
【0043】
また、底板パネル10は、
図2A、
図2Bに示すように、例えば、底鋼板(底板)11と、横リブ12と、を備えている。
底鋼板(底板)11は、例えば、延伸方向Fの前方側に位置される前縁部11A及び後方側に位置される後縁部11Bと、前縁部11A及び後縁部11Bの両端を壁高欄付床版の延伸方向Fに沿って接続する一対の側縁部11Sと、を有していて、外形が略矩形に形成されている。
【0044】
また、この実施形態では、底鋼板(底板)11は、
図2A、
図2Bに示すように、延伸方向Fの一方に位置される側縁部11S側に位置される第1部材と、他方の側縁部11S側に位置される第2部材と、第1部材と第2部材の間に配置される第3部材と、を備えている。
また、第1部材と第3部材、第2部材と第3部材は、ハンチ部11Hを介して配置されている。
なお、底鋼板(底板)11の構成(例えば、部材の数)は、橋桁105の数に対応して任意に設定してもよい。
【0045】
ハンチ部11Hは、
図2A、
図2Bに示すように、第1部材と第3部材の間と、第2部材と第3部材の間に配置され、延伸方向Fに沿って形成されている。
具体的には、第1部材の第3部材側、第2部材の第3部材側、第3部材の第1部材及び第2部材側に配置され、第1部材と第3部材、第2部材と第3部材が互いに近接するにしたがって下方に傾斜する傾斜面により形成されている。
【0046】
横リブ12は、例えば、底鋼板(底板)11の第1部材と第2部材と第3部材にわたって配置されたフラットバー等の形鋼により形成されていて、コンクリート床版111を形成するために底板パネル10にコンクリートを打設した際の底鋼板(底板)11にたわみが生じるのを抑制する構成とされている。
【0047】
壁高欄外型枠20は、
図2A、
図2Bに示すように、側鋼板(金属製側板)21を備え、底鋼板(底板)11の両側の側縁部11Sに沿って延在するとともに側縁部11S配置され、底板パネル10及び底鋼板(底板)11に対して回動し、底鋼板(底板)11に対して立設可能に構成されている。
なお、側鋼板(金属製側板)21には補強部材(不図示)が形成されていてもよい。
【0048】
ヒンジ部材(回動支持部)22は、
図3A~
図3Cに示すように、例えば、底鋼板(底板)11に形成された第1リンク部材22Aと、側鋼板(金属製側板)21に形成された第2リンク部材22Bと、第1リンク部材22Aと第2リンク部材22Bを連結する軸支部材22Cと、を備えている。
そして、ヒンジ部材(回動支持部)22は、側鋼板(金属製側板)21と底鋼板(底板)11とが軸支部材22Cを介して互いに回動可能に構成されている。
【0049】
次に、
図3A~
図3C、
図4を参照して第1実施形態に係る組立残存型枠の詳細構成の一例について説明する。
図4は組立残存型枠の連結部の一例を概念的に説明する斜視図及び平面図である。
図4において、符号25Tは取付け部材を、符号25Uは凹部を示している。
【0050】
回動制限リブ(回動制限部、係止部)25は、
図4に示すように、例えば、壁高欄外型枠20の立設位置と対応して、側鋼板(金属製側板)21の立設状態における低部側に配置されている。
また、回動制限リブ(回動制限部)25は、例えば、延伸方向Fに沿って見たときに、略L字形のアングルにより形成されていて、壁高欄外型枠20を畳んだ状態における壁高欄外型枠20の側縁部11S側(以下、壁高欄外型枠20の下部という場合がある)に配置され、例えば、ボルトとナットからなる取付け部材25Tにより取付けられている。
【0051】
また、回動制限リブ(回動制限部)25の下面には、側鋼板(金属製側板)21が立設されたときに、底鋼板(底板)11の側縁部11Sの上面と当接する当接面(係止部)25Aが形成されている。
【0052】
そして、回動制限リブ(回動制限部)25は、
図3Cに示すように、側鋼板(金属製側板)21を回動させて立設させたときに当接面(係止部)25Aが底鋼板(底板)11の上面と当接して壁高欄外型枠20の回動を制限して、壁高欄外型枠20を設定された回動位置で立設する。
【0053】
ボルト締結構造(連結部)26は、例えば、底鋼板(底板)11に形成されたスタッドボルト26Aと、スタッドボルト26Aと螺合されるナット26Bと、を備えている。
そして、壁高欄外型枠20が立設した状態で、回動制限リブ(回動制限部、係止部)25の上面から突出したスタッドボルト26Aにナット26Bを螺合させて、ナット26Bにより回動制限リブ(回動制限部、係止部)25を狭圧して回動制限リブ(回動制限部25を底鋼板(底板)11に連結する構成とされている。
【0054】
また、
図4に示すように、回動制限リブ(回動制限部)25及び当接面(係止部)25Aには、側鋼板(金属製側板)21を立設させる際の回動方向前方側に開口する凹部25Uが形成されている。
その結果、壁高欄外型枠20を立て起こす際に、スタッドボルト26Aの外周面と凹部25Uの間に適度な間隙が形成されて、回動制限リブ(回動制限部)25と干渉することなくスタッドボルト26Aが凹部25Uに収容(位置)されるとともに、スタッドボルト26Aが回動制限リブ(回動制限部)25の上面から突出するのでナット26Bにより回動制限リブ(回動制限部)25と底鋼板(底板)11とをボルト締結することができる。
【0055】
なお、側縁部11Sに沿った方向における凹部25Uの数、位置は任意に設定することが可能であり、凹部25Uを2つ又は3つ以上形成してもよい。
また凹部25Uを等間隔で配置し又は異なる間隔で配置してもよい。
【0056】
支持部材27は、
図3Cに示すように、例えば、底鋼板(底板)11に形成された第1ブラケット271と、側鋼板(金属製側板)21に形成された第2ブラケット272と、第1ブラケット271と第2ブラケット272を連結する支持ロッド273と、を備えている。
【0057】
また、第1ブラケット271には連結穴271Hが、第2ブラケット272には連結穴272Hが、支持ロッド273には連結穴273Hが形成されている。
そして、側鋼板(金属製側板)21が底鋼板(底板)11に対して立設させて支持ロッド273の連結穴273Hを第1ブラケット271の連結穴271H及び第2ブラケット272の連結穴272Hと重ね合わせて連結ピン274を嵌挿して、第1ブラケット271と第2ブラケット272を支持ロッド273により連結することにより側鋼板(金属製側板)21の立設状態を保持する構成とされている。
【0058】
次に、
図5A~
図5Cを参照して、第1実施形態に係る残存型枠の製造方法について説明する。
図5A~
図5Cは、第1実施形態に係る残存型枠製造方法の一例を説明する図であり、
図5Aは組立残存型枠運搬を、
図5Bは橋桁への組立残存型枠の移動を、
図5Cは、壁高欄外型枠の立て起こしを示す概念図である。
図5A~
図5Cにおいて、符号C2はロープを示している。
【0059】
(1)まず、
図5Aに示すように、トラック(運搬手段)Pに組立残存型枠1を積載して橋梁(構造物)(不図示)の工事現場に運搬し、組立残存型枠1がクレーン(不図示)のブーム(不図示)の可動範囲内に位置させて停止する。
【0060】
(2)次に、
図5Bに示すように、クレーン(不図示)から懸下したロープC2の下端を組立残存型枠1に取付けて、組立残存型枠1を畳んだ状態で、橋梁(構造物)(不図示)の建設予定位置における橋桁105の設置予定位置に搬送して載置(配置)する。
具体的には、組立残存型枠1のハンチ部11Hを橋桁(設置予定位置)105に合わせて矢印G方向に下降して載置する。
【0061】
(3)次いで、
図5Cに示すように、作業者Mが底板パネル10上において手作業で壁高欄外型枠20を矢印T方向に回動させて底鋼板(底板)11に対して設定された立設位置まで立て起こす。
具体的には、
図3A~
図3Cに示す当接面(係止部)25Aを底鋼板(底板)11の側縁部11Sの上面に当接させて壁高欄外型枠20の立設の位置決めを行う。そして、支持部材(不図示)により壁高欄外型枠20を支持すると床にボルト締結構造(不図示)により底鋼板(底板)11と側鋼板(金属製側板)21とを連結する。
以上のようにして、残存型枠が形成(製造)される。
【0062】
なお、側鋼板(金属製側板)21を立設させるタイミング、立設された側鋼板(金属製側板)21を底鋼板(底板)11と連結するタイミングは任意に設定することが可能であり、組立残存型枠1を橋脚上に配置した後に残存型枠を形成してもよいし、橋桁上に配置する前(例えば、トラックP上や組立用スペース等の低所)において残存型枠1Sを形成してもよい。
【0063】
例えば、組立残存型枠1を橋桁上に配置してから側鋼板(金属製側板)21を底鋼板(底板)11に対して立設、連結する場合には、配置した組立残存型枠1における側鋼板(金属製側板)21の立設、連結と並行して組立残存型枠1を順次クレーン搬送することができるので、クレーンの搬送効率を向上することができる。また、トラックPの停止時間を短縮して稼働率を向上することができる。
【0064】
また、橋桁に配置する前にトラックP上で側鋼板(金属製側板)21を立設、連結する場合には、高所における作業が低減され残存型枠の製造における安全性を向上することができる。
【0065】
また、低所に設定した1ヶ所の組立用スペースで(例えば、クレーンが保持したまま)側鋼板(金属製側板)21を底鋼板(底板)11に対して立設、連結する場合には、高所作業を低減することができ残存型枠の製造における安全性を向上することができる。
【0066】
また、橋桁に配置する前に低所に設定した複数(好適にはトラック1台分の数)の組立用スペースにクレーン搬送して下してから側鋼板(金属製側板)21を立設、連結する場合には、複数の組立残存型枠1の側鋼板(金属製側板)21を並行して立設、連結することができる。したがって、高所作業が軽減されて安全性を向上することができる。また、各残存型枠に関して2回のクレーン搬送が必要となるものの、複数の残存型枠を順次クレーン搬送することでクレーンの搬送効率を向上することができる。また、トラックPの停止時間を短縮してトラックPの稼働率を向上することができる。
【0067】
次に、
図6、
図7を参照して、第1実施形態に係る壁高欄付床版110の製造方法について説明する。
図6は第1実施形態に係る壁高欄付床版の製造方法の一例を説明する図であり、組立てた残存型枠の構成を示す延伸方向に沿って見た概念図である。また、
図7は第1実施形態に係る壁高欄付床版の構成を説明する延伸方向に沿って見た概念図である。
【0068】
(1)まず、
図5A~
図5Cを実施して残存型枠1Sを形成し、その後、
図6に示すように、壁高欄の内部に配置される鉄筋の支持部材122を施工(形成)する。
支持部材122を形成したら、
図6に示すように、底板パネル10にコンクリートを打設してコンクリート床版111を形成する。
残存型枠1Sは、コンクリートを打設する所定区間にわたって延伸方向Fに順次接続して形成する。
【0069】
(2)次に、
図6に示すように、鉄筋の支持部材122を挟んで壁高欄外型枠20の反対側に例えばコンクリートパネル等を用いて内型枠72を形成し、この内型枠72を内型枠支持材74により支持してコンクリート壁高欄120を形成するための型枠を構成する。
【0070】
(3)次いで、
図6に示すように、橋梁(構造物)(不図示)の建設予定位置において、コンクリート壁高欄120を形成するための型枠(壁高欄外型枠20と内型枠72の間)にコンクリート140を打設することにより壁高欄が形成される。
そして、所定時間が経過してコンクリート140が固化したら内型枠72や内型枠支持材74を取り外す。
【0071】
(4)その結果、
図7に示すように、下面が底鋼板で構成され底板パネル10と一体的に形成されたコンクリート床版111と、内部に支持部材122が配置されたコンクリート壁高欄120と、を備えた壁高欄付床版110が一定の区間にわたって製造される。
【0072】
<第1実施形態の第1変形例>
次に、
図8を参照して、第1実施形態の第1変形例について説明する。
図8は、第1実施形態の第1変形例に係る組立残存型枠の連結部の一例を概念的に説明する斜視図及び平面図である。
【0073】
組立残存型枠1Aは、
図8に示すように、例えば、底板パネル10と、壁高欄外型枠20と、ヒンジ部材(回動支持部、不図示)と、回動制限リブ(回動制限部)250と、ボルト締結構造(連結部)26と、を備えている。
組立残存型枠1Aが第1実施形態に係る組立残存型枠1と異なるのは、回動制限リブ(回動制限部)25に代えて回動制限リブ(回動制限部)250を備えている点であり、その他は第1実施形態の回動制限リブ(回動制限部)25と同様であるので同じ符号を付して説明を省略する。
【0074】
また、回動制限リブ(回動制限部)250及び当接面(係止部)25Aには、
図8に示すように、例えば、壁高欄外型枠20が立設される際の回動方向に沿って長寸法とされた長円25Hが形成されている。
長円25Hの回動方向に沿った位置及び長さは、壁高欄外型枠20を回動、立設する際にスタッドボルト26Aが回動制限リブ(回動制限部)250と接触しない構成とされている。
【0075】
その結果、壁高欄外型枠20を回動、立設させて当接面(係止部)25Aを底鋼板(底板)11の上面に当接させる際に、スタッドボルト26Aを長円25H内に位置させるとともに回動制限リブ(回動制限部)250の上面から突出させて、ナット26Bにより回動制限リブ(回動制限部)250と底鋼板(底板)11をボルト締結して連結することができる。
【0076】
なお、側縁部11Sに沿った方向における長円25Hの数、位置は任意に設定することが可能であり、長円25Hを2つ又は3つ以上形成してもよく、また長円25Hを等間隔で配置しまたは異なる間隔で配置してもよい。
【0077】
<第1実施形態の第2変形例>
次に、
図9A~
図9Cを参照して、第1実施形態の第2変形例について説明する。
図9Aは、第1実施形態の第2変形例に係る組立残存型枠の要部詳細を説明する延伸方向に沿って見た部分概略図であり、
図9Aは
図2AにおいてIIIAで示す壁高欄外型枠を畳んだ状態を、
図9Bは壁高欄外型枠を立て起こす状態を、
図9Cは
図2BにおいてIIICで示す壁高欄外型枠を立設した状態を示す図である。図において、符号28は支持部材を示している。
【0078】
組立残存型枠1Bは、
図9A~
図9Cに示すように、例えば、底板パネル10と、壁高欄外型枠20と、ヒンジ部材(回動支持部)22と、回動制限リブ(回動制限部)25と、支持部材28と、を備えている。
組立残存型枠1Bが第1実施形態に係る組立残存型枠1と異なるのは、組立残存型枠1Bが支持部材27に代えて支持部材28を備えている点であり、その他は第1実施形態と同様であるので同じ符号を付して説明を省略する。
【0079】
支持部材28は、
図9A~
図9Cに示すように、例えば、底鋼板(底板)11に形成された第1ブラケット281と、側鋼板(金属製側板)21に形成された第2ブラケット282と、第1ブラケット281と第2ブラケット282を連結する第1支持ロッド283及び第2支持ロッド284と、第1支持ロッド283と第2支持ロッド284を互いに回動可能に連結する回動軸支ピン285と、係止ピン286と、を備えている。
【0080】
第1ブラケット281と第1支持ロッド283、第2ブラケット282と第2支持ロッド284、第1支持ロッド283と第2支持ロッド284は、回動軸支ピン285を介して互いに回動可能とされている。
また、第1支持ロッド283、第2支持ロッド284にはそれぞれ係止穴28Hが形成されている。
【0081】
(1)まず、
図9Aに示すように、側鋼板(金属製側板)21が底鋼板(底板)11に対して畳まれた状態では、第1支持ロッド283と第2支持ロッド284は屈曲された態とされている。
(2)次に、
図9Bに示すように、側鋼板(金属製側板)21を立て起こしてゆくと、第1支持ロッド283と第2支持ロッド284がなす交差角度が大きくなり、側鋼板(金属製側板)21を立て起こしてゆくにつれて、第1支持ロッド283と第2支持ロッド284は、しだいに直線状に配置される。
(3)そして、側鋼板(金属製側板)21が底鋼板(底板)11に対して立設されると、
図9Cに示すように、第1支持ロッド283と第2支持ロッド284は直線的に配置されるとともに、支持ロッド283と第2支持ロッド284の係止穴28Hが重なり合う。
次に、重なり合った係止穴28Hに係止ピン286を嵌挿することにより、第1支持ロッド283と第2支持ロッド284は直線的に一体に形成され底鋼板(底板)11に対する側鋼板(金属製側板)21の立設状態が保持される。
【0082】
第1実施形態の第2変形例に係る組立残存型枠1Bによれば、側鋼板(金属製側板)21が底鋼板(底板)11に対して立設すると、第1支持ロッド283と第2支持ロッド284が直線的な配置となるので、側鋼板(金属製側板)21の立設状態を容易かつ安定的に支持することができる。
【0083】
また、重なり合った係止穴28Hに係止ピン286を嵌挿することにより、第1支持ロッド283と第2支持ロッド284が直線的に一体に連結されるので、側鋼板(金属製側板)21の立設状態を容易に保持することができる。
【0084】
<第2実施形態>
以下、
図10A~
図10Cを参照して、本発明の第2実施形態について説明する。
図10A~
図10Cは、本発明の第2実施形態に係る組立残存型枠による残存型枠製造方法の一例を説明する図であり、
図10Aは組立残存型枠の吊り上げを、
図10Bは組立残存型枠の吊り上げを利用した壁高欄外型枠の立て起こしを、
図10Cは組立てた残存型枠の移動を示す概念図である。
【0085】
(1)まず、トラック(運搬手段)Pに組立残存型枠1を積載して橋梁(構造物)(不図示)の工事現場に運搬し、組立残存型枠1が工事用クレーン(不図示)のブーム(不図示)の可動範囲内となる位置にトラック(運搬手段)Pを停止させる。
【0086】
(2)次に、
図10Aに示すように、クレーンのブームから懸下したロープC1の下端に位置されるフックに吊り下げたロープC2を吊天秤C3に接続する。
吊天秤C3は、立設した壁高欄外型枠20と対応する位置にロープC4の上端を取り付ける。
また、ロープC4の下端は、立設状態における壁高欄外型枠20の上端部、具体的には、壁高欄外型枠20が畳まれた状態では、壁高欄外型枠20の底板パネル10における幅方向の内方側端に接続する。
【0087】
(3)次いで、
図10Bに示すように、ロープC2を矢印G1方向に吊り上げるとロープC2により壁高欄外型枠20の立て起こしが開始され、ロープC2を矢印G1方向にさらに吊り上げると壁高欄外型枠20が立て起こされて立設された状態となる。
【0088】
(4)次いで、
図10Cに示すように、ロープC2をさらに矢印G1方向に吊り上げると壁高欄外型枠20が立て起こされ、
図3Cに示すように、当接面(係止部)25Aが底鋼板(底板)11の側縁部11Sの上面に当接して壁高欄外型枠20が回動方向における立設位置に位置決めされる。
そして、支持部材27により壁高欄外型枠20を支持するとともにスタッドボルト(連結部)26Aにナット部材(連結部)26Bを螺合して底鋼板(底板)11に側鋼板(金属製側板)21を取り付ける。
以上のように、残存型枠1Sが製造される。
【0089】
ここで、立設された側鋼板(金属製側板)21を底鋼板(底板)11に連結するタイミングは任意に設定することが可能であり、組立残存型枠1を吊り上げて壁高欄外型枠20が立設された状態(トラックP上やその他の作業スペース)でもよいし、組立残存型枠1を橋桁の上部に設置したタイミングのいずれで実施してもよい。
【0090】
第2実施形態に係る残存型枠の製造方法によれば、側鋼板(金属製側板)21の立設状態における上部側に吊り具C4を取り付けて吊上げて側鋼板(金属製側板)21を立て起こして立設するので、側鋼板(金属製側板)21を作業者Mの手作業により立て起こす必要がなくなり、側鋼板(金属製側板)21の立て起こしを省力化して安全かつ効率的に短時間で立設させることができ、ひいては残存型枠を安全かつ効率的に短時間で製造することができる。
また、残存型枠を製造する際のクレーン搬送回数および搬送時間を短縮することができる。
【0091】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変更をすることが可能である。
例えば、上記実施形態においては、底板、金属製側板が鋼板である場合について説明したが、底板、金属製側板については任意に設定することが可能であり鋼板以外により構成されてもよい。
【0092】
また、上記実施形態においては、底鋼板(底板)11が平面視して矩形(長方形)である場合について説明したが、底鋼板(底板)11の形状については任意に設定することが可能である。例えば、側縁部110Sに関して、幅員増減や退避スペース確保に応じたコンクリート壁高欄120が延伸方向Fに対して斜めに配置されるのにともなって、側縁部110Sが延伸方向Fに対して斜めに形成されていてもよい。また、壁高欄付床版110の前縁部(伸延既設壁高欄付床版を接続する側)110Aや後縁部(既設壁高欄付床版と接続する側)110Bに関して、平面視円弧状の道路を接続するために、一対の側縁部を異なる長さとすることで前縁部110Aや後縁部110Bが延伸方向に対して90°以外で交差して(例えば、平行四辺形等)に形成されてもよい。
【0093】
また、上記実施形態においては、底板パネル10が横リブ12を備えている場合について説明したが、底板パネル10が横リブ12を備えるかどうかは任意に設定することが可能であり、横リブ12を備えずに底鋼板(底板)11のみで構成されてもよいし、横リブ12に代え、または横リブ12に加えて他の補強部材を備えてもよい。
【0094】
また、上記実施形態においては、組立残存型枠1が、両側の側縁部110Sに壁高欄外型枠20が形成されている場合について説明したが、組立残存型枠1における壁高欄外型枠20の構成は任意に設定することが可能であり、例えば壁高欄外型枠20が底板パネル10の一方の側縁部110Sに形成されていてもよい。
【0095】
また、上記実施形態においては、残存型枠1Sが、組立残存型枠1の構成をすべて備えている場合について説明したが、残存型枠1Sの構成は任意に設定することが可能であり、組立残存型枠1の一部の構成が取り除かれていてもよい。例えば、底鋼板(底板)11に側鋼板(金属製側板)21を連結した後に、ヒンジ部材(回動支持部)22や回動制限リブ(回動制限部)25の全部または一部を取り外して残存型枠1Sを構成してもよい。また、残存型枠1Sにより形成(製造)する壁高欄付床版110についても同様であることはいうまでもない。
【0096】
また、上記実施形態においては、ヒンジ部材22の第1リンク部材22Aが側鋼板21に配置され、第1リンク部材22Aが底鋼板11に配置されている場合について説明したが、ヒンジ部材22の構成は任意に設定することが可能であり、例えば第1リンク部材22Aを横リブ12に配置してもよい。
【0097】
また、上記実施形態においては、回動支持部がヒンジ部材22である場合について説明したが、ヒンジ部材22に限定されず、種々のリンク機構が適用可能であり、例えば長孔やだるま穴を備えることで回動の中心以外に移動する動作が可能な構成としてもよい。
【0098】
また、上記実施形態においては、回動制限部が、延伸方向Fに沿って見たときに略L字形に形成され底鋼板(底板)11の上面と当接する当接面(係止部)25Aを有する回動制限リブ25、250である場合について説明したが、回動制限部の構成は任意に設定することが可能であり、例えば底鋼板(底板)11の上面に突出して形成され、または底鋼板(底板)11の下面と当接することにより、立設された側鋼板(金属製側板)21の回動を制限する構成としてもよい。
【0099】
また、回動制限部が、側鋼板(金属製側板)21の下部が底鋼板(底板)11の端面(直角断面と当接して回動を制限し、または側鋼板(金属製側板)21の下部と底鋼板(底板)11の端面に形成され、それぞれ延伸方向Fに沿って見たときに互いに対応する傾斜面により構成とされてもよい。
【0100】
また、上記実施形態においては、回動制限リブ25に凹部25Uが形成されたくし形とされ、回動制限リブ250に長孔25Hが形成された構成とされている場合について説明したが、ボルト締結構造が適用可能な範囲で任意に設定してもよい。
【0101】
また、上記実施形態においては、連結部がボルト締結構造26により構成されている場合について説明したが、連結部の構成は任意に設定することが可能であり、立設された側鋼板(金属製側板)21を底鋼板(底板)11に連結する溶接部やクランプ部材等により構成してもよく、連結部の位置(例えば、横リブへの配置等)や数についても任意に設定してもよい。
【0102】
また、上記実施形態においては、ボルト締結構造26が底鋼板(底板)11に形成されたスタッドボルト26Aと、ナット26Bにより構成される場合について説明したが、ボルト締結構造の構成は任意に設定することが可能である。例えば、底鋼板(底板)11に形成されたねじ穴(溶接されたナットを含む)と、このねじ穴に螺合させるボルトにより構成されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0103】
この発明に係る組立残存型枠、残存型枠の製造方法によれば、安全かつ効率的に残存型枠及び壁高欄付床版を、壁高欄付床版の製造方法によれば、安全かつ効率的に壁高欄付床版を製造することができ、ひいては安全かつ効率的に高架構造物等を建設することができるので産業上利用可能である。
【符号の説明】
【0104】
1、1A、1B 組立残存型枠
1S 残存型枠
10 底板パネル
11 底鋼板(底板)
11A 前縁部
11B 後縁部
11S 側縁部
11H ハンチ部
12 横リブ
20 壁高欄外型枠
21 側鋼板(金属製側板)
22 ヒンジ部材(回動支持部)
22A 第1リンク部材
22B 第2リンク部材
22C 軸支部材
25、250 回動制限リブ(回動制限部)
25A 当接面(係止部)
25U 連結凹部
25H 長穴
26 ボルト締結構造(連結部)
26A スタッドボルト(連結部)
26B 連結ナット(連結部)
27 支持部材
271 第1ブラケット
272 第2ブラケット
273 支持ロッド
274 連結ピン
28 支持部材
281 第1ブラケット(底板パネル側)
282 第2部材受ブラケット(壁高欄外型枠側)
283 第1支持ロッド
284 第2支持ロッド
285 軸支部材
286 係止ピン
28H 係止穴
72 内型枠
74 内型枠支持材
100 橋梁(構造物)
102 橋脚
104 支承
105 橋桁
110 壁高欄付床版
110A 前縁部(伸延壁高欄付床版を接続する側)
110B 後縁部(既設壁高欄付床版と接続する側)
110S 側縁部
111 コンクリート床版
111H ハンチ部
120 コンクリート壁高欄
122 鉄筋の支持部材
140 コンクリート
500 橋梁(構造物)
510 底板パネル
511 底鋼板(底板)
511A 前縁部
511B 後縁部
511S 側縁部
511H ハンチ部
512 横リブ
520 壁高欄外型枠
C クレーン車
C0 ブーム
C1、C2 ロープ
C3 吊天秤
C4 ロープ
M 作業者