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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024017092
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】リアクトル
(51)【国際特許分類】
   H01F 37/00 20060101AFI20240201BHJP
   H01F 27/28 20060101ALI20240201BHJP
   H01F 27/29 20060101ALI20240201BHJP
   H01F 5/04 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
H01F37/00 F
H01F37/00 J
H01F37/00 M
H01F27/28 133
H01F27/29 U
H01F5/04 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022119498
(22)【出願日】2022-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】390005223
【氏名又は名称】株式会社タムラ製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 光春
(74)【代理人】
【識別番号】100112564
【弁理士】
【氏名又は名称】大熊 考一
(74)【代理人】
【識別番号】100163500
【弁理士】
【氏名又は名称】片桐 貞典
(74)【代理人】
【識別番号】230115598
【弁護士】
【氏名又は名称】木内 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】坂本 和樹
【テーマコード(参考)】
5E043
【Fターム(参考)】
5E043EA04
5E043EA05
5E043EA06
5E043EB05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】部品点数を増加させることなく、容易に外部機器のリード線を固定することができるリアクトルを提供する。
【解決手段】リアクトルにおいて、リアクトル本体1は、コア4と、コア4に装着されるコイル2と、コア4の周囲を被覆する樹脂部材5と、コイル2と電気的に接続する外部機器の外部端子61を締結する締結部53と、を備える。外部端子61は、外部端子61と外部機器を繋ぐリード線と接続されている。リード線62は、コイル2が装着されていないコア4に沿って、当該コア4の上方に直線状に配線される。樹脂部材5は、上方にリード線62が配線されたコア4を挟むように締結部53の反対側に設けられ、リード線62を保持するガイド部54と、締結部63とガイド部54の間に設けられ、リード線62を保持する中間ガイド部55と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアと、
前記コアに装着されるコイルと、
前記コアの周囲を被覆する樹脂部材と、
前記コイルと電気的に接続する外部機器の外部端子を締結する締結部と、
を備え、
前記外部端子は、前記外部端子と前記外部機器を繋ぐリード線と接続され、
前記リード線は、前記コイルが装着されていないコアに沿って、当該コアの上方に直線状に配線され、
前記樹脂部材は、
上方に前記リード線が配線されたコアを挟むように前記締結部の反対側に設けられ、前記リード線を保持するガイド部と、
前記締結部と前記ガイド部の間に設けられ、前記リード線を保持する中間ガイド部と、
を有すること、
を特徴するリアクトル。
【請求項2】
前記中間ガイド部は、
前記コイルと対向して設けられ、前記樹脂部材から立ち上がる壁部と、
前記壁部の先端から前記コイルとは反対の方向に延びる庇部と、
を有すること、
を特徴とする請求項1に記載のリアクトル。
【請求項3】
前記リード線は、
金属線と、
前記金属線を被覆する被覆部と、
を有し、
前記被覆部を含む前記リード線の直径をd(mm)とし、曲げ位置から曲げ中心までの半径をR(mm)としたとき、R>3dを満たすこと、
を特徴とする請求項1又は2に記載のリアクトル。
【請求項4】
前記ガイド部は、前記リード線を前記ガイド部に挿入する切り欠き部を有し、
前記切り欠き部の大きさは、前記リード線の外径と略同一であること、
を特徴する請求項1又は2に記載のリアクトル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リアクトルに関する。
【背景技術】
【0002】
OA機器、太陽光発電システム、自動車、無停電電源など様々な用途にリアクトルが用いられている。リアクトルは、例えば、電気エネルギーを磁気エネルギーに変換して蓄積及び放出する電磁気部品である。この種のリアクトルは、コアとコイルとの絶縁を図るために、コアの周囲を樹脂部材によって被覆し、樹脂部材の外周にコイルを装着したものが知られている。
【0003】
リアクトルには外部機器から電力が供給される。外部機器は、コイルと電気的に接続する外部端子と、外部端子と外部機器を接続するリード線を有する。外部端子がバスバー等と接続することで、外部機器とリアクトルが電気的に接続される。このようにして、外部機器からリアクトルに電力が供給され、コイルに電流が流れてコイルを突き抜ける磁束が発生し、コア内に閉磁路が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭55-12727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
リード線を固定せずに配線すると、振動によって動いてリアクトルの部材やリアクトル以外の電気機器と干渉する虞がある。そのため、リード線が動かないように固定する必要がある。リード線は、所定の固定箇所に結束バンド等で固定する手法が用いられている。よって、部品点数の増加や固定作業に時間がかかり、生産効率が悪いという問題が生じている。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、部品点数を増加させることなく、容易に外部機器のリード線を固定することができるリアクトルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明の実施形態に係るリアクトルは、コアと、前記コアに装着されるコイルと、前記コアの周囲を被覆する樹脂部材と、前記コイルと電気的に接続する外部機器の外部端子を締結する締結部と、を備え、前記外部端子は、前記外部端子と前記外部機器を繋ぐリード線と接続され、前記リード線は、前記コイルが装着されていないコアに沿って、当該コアの上方に直線状に配線され、前記樹脂部材は、上方に前記リード線が配線されたコアを挟むように前記締結部の反対側に設けられ、前記リード線を保持するガイド部と、前記締結部と前記ガイド部の間に設けられ、前記リード線を保持する中間ガイド部と、を有すること、を特徴する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、部品点数を増加させることなく、容易に外部機器のリード線を固定することができるリアクトルを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】リアクトル本体の全体構成を示す斜視図である。
図2】モールドコアを示す図であり、(a)は全体構成を示す斜視図であり、(b)はモールドコアを分解した斜視図である。
図3】中間ガイド部の拡大図である。
図4】曲げ位置から曲げ中心までの半径Rを示す模式図である。
図5】リアクトル本体をケースに収容したリアクトルの全体構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施形態)
実施形態に係るリアクトルについて図面を参照しつつ説明する。図1は、リアクトル本体の全体構成を示す斜視図である。各図面においては、理解容易のため、厚み、寸法、位置関係、比率又は形状等を強調して示している場合があり、本発明は、それら強調に限定されるものではない。また、コイルの巻軸方向と直交し、コアの脚部の横並び方向を幅方向、コイルの巻軸方向及び幅方向と直交する方向を高さ方向又は上下方向と呼び、リアクトル本体をケースに収容したときに、ケースの底面に向かう方向を下方向、ケースの底面から離れる方向を上方向と呼ぶ。これらの方向は、リアクトルの各構成の位置関係を示すための表現であり、リアクトルが設置対象に設置される位置関係及び方向を限定するものではない。
【0011】
リアクトル10は、電気エネルギーを磁気エネルギーに変換して蓄積及び放出する電磁気部品であり、OA機器、太陽光発電システム、自動車など様々な用途で使用される。リアクトル10は、図1に示すように、リアクトル本体1を備える。リアクトル本体1は、コイル2、バスバー3、コア4及び樹脂部材5を有する。
【0012】
コイル2は、エナメル被覆等の絶縁被覆が施された導電性部材を筒状に巻いた巻回体21を有する。巻回体21は、巻軸に沿って1ターンごとに巻位置をずらしながら螺旋状に巻回することで形成される。巻回体21は、コア4に装着されている。
【0013】
コイル2の導電性部材は、例えば平角線であり、導電性部材の幅広面がコイル2の巻軸との直交方向に拡がるように、導電性部材が巻回されて成る螺旋状のエッジワイズコイルである。もっとも、コイル2の線材や巻き方は、平角線のエッジワイズコイルに限定されず、他の形態であってもよい。巻軸と直交する巻回体21の端面から引出線22が巻軸と平行に延びている。
【0014】
バスバー3は、銅やアルミニウムなどの板状の導電性部材である。バスバー3は、コイル2の引出線22と外部機器(不図示)の外部端子61と接続する。バスバー3の一方端部は、引出線22と溶接等により接続している。バスバー3の他方端部には円形の取付孔が形成されており、後述する締結部53まで延び、外部端子61と接続している(図5参照)。外部機器から電力が供給されると、バスバー3を介してコイル2に電流が流れ、磁束が発生する。
【0015】
コア4は、圧粉磁心、フェライトコア、積層鋼板、又はメタルコンポジットコア等を用いることができる。メタルコンポジットコアとは、磁性粉末と樹脂とが混練され、樹脂が硬化されて成る磁性体である。コア4は、コイル2が発生させた磁束が通る磁路となる。
【0016】
図2(a)は、モールドコアの斜視図であり、図2(b)はモールドコアの分解斜視図である。コア4は、2つのコア部材41、42を接合することで環状形状となる。コア部材41は、中脚43、外脚44及びヨーク部45を有する。中脚43は、コイル2が巻回される。外脚44は、一対設けられており、中脚43と横並びに設けられている。一対の外脚44は、中脚43を挟むように設けられている。ヨーク部45は、中脚43と一対の外脚44を繋ぐ。このように、コア部材41は、概略E字型形状となっている。コア部材42は、直方体形状となっている。コア部材42と、コア部材41の中脚43及び外脚44を接着剤で接合することで、環状形状のコア4となる。
【0017】
なお、この接合箇所に磁気的なギャップを設けてもよい。磁気的なギャップとは、板状のスペーサ又はエアギャップを挙げることができる。板状のスペーサは、例えば、非磁性体、アルミナやジルコニアなどのセラミック、非金属、樹脂、炭素繊維、若しくはこれら二種以上の合成材が平板形状に成形されたもの、又はギャップ紙である。エアギャップは磁性体のない隙間である。
【0018】
樹脂部材5は、コア4の周囲を被覆する。樹脂部材5は、モールド成型によってコア部材41、42をそれぞれ被覆する樹脂体51、52から成る。即ち、コア部材41と樹脂体51から成るモールドコア4Aと、コア部材42と樹脂体52から成るモールドコア4Bが形成される。モールドコア4Aの中脚43にコイル2を装着し、モールドコア4Aとモールドコア4Bを接合して、リアクトル本体1を組み立てる。
【0019】
樹脂部材5を構成する樹脂の種類としては、例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、ウレタン樹脂、BMC(Bulk Molding Compound)、PPS(Polyphenylene Sulfide)、PBT(Polybutylene Terephthalate)、又はこれらの複合を挙げることができる。なお、樹脂に熱伝導性のフィラーを混ぜてもよい。
【0020】
樹脂部材5は、締結部53、ガイド部54、中間ガイド部55を有する。締結部53は、バスバー3と外部端子61を接続させ、固定する。締結部53は、円形の孔であり、この孔の周囲にカラーが設けられている。締結部53の上には、締結部53の孔とバスバー3の取付孔が重なり合うようにバスバー3が配置している。バスバー3の取付孔に外部端子61の孔を重ね合わせ、ボルト等でネジ締結することでバスバー3と外部端子61は接続され、固定される。
【0021】
締結部53は、概略矩形状のリアクトル本体1の角部に設けられている。締結部53は一対設けられている。一方の締結部53aは、樹脂体51の角部に設けられており、他方の締結部53bは、樹脂体52の角部に設けられており、この一対の締結部53a、53bは、リアクトル本体1の対角となる角部にそれぞれ設けられている。
【0022】
ガイド部54は、リアクトル本体1の領域内に導入される外部機器のリード線62をガイドする部材である。リアクトル本体1の領域内とは、高さ方向におけるリアクトル本体1の延長領域内を指す。ガイド部54は、コイル2が装着されていないコア4を挟むように、締結部53の反対側の角部に設けられている。なお、ここでいう締結部53の反対側の角部とは、ガイド部54が後述する外部機器のリード線62が、コア4の上方を直線状に配線されるようにガイドできる位置であれば足りる。
【0023】
ガイド部54は、一対設けられている。一方のガイド部54aは、樹脂体52の角部に設けられており、他方のガイド部54bは、樹脂体51の角部に設けられており、一対のガイド部54a、54bは、リアクトル本体1の対角となる角部にそれぞれ設けられている。即ち、締結部53aとガイド部54a、締結部53bとガイド部54bは、それぞれ外脚44を挟んで対向に配置されている。
【0024】
ガイド部54は、リアクトル本体1の角部から外部に向けて延在している。ガイド部54は、内面が円形に孔が開いたリング形状となっている。ガイド部54の円形の孔の軸は高さ方向と平行である。リング状のガイド部54は、その一部が切り欠かれている。即ち、ガイド部54は、切り欠き部541を有する。切り欠き部541は、ガイド部54の内部に外部機器のリード線62を挿入できる程度の大きさがあれば足りるが、リード線62の外径と略同一の大きさであることが好ましい。
【0025】
切り欠き部541の位置は、ガイド部54にリード線62を挿入した後、リード線62が逃げようとする方向ではない場所に設けることが好ましい。本実施形態では、ガイド部54aの切り欠き部541は、締結部53bとは反対側に設けられており、ガイド部54bの切り欠き部541は締結部53a側に設けられている。なお、ガイド部54のリングの内径は、リード線62の外径によって適宜の大きさにすればよい。
【0026】
中間ガイド部55は、締結部53とガイド部54の間に設けられ、締結部53とガイド部54の間を延びるリード線62をガイドする部材である。中間ガイド部55は、締結部53とガイド部54の間の中間地点に設けられている。即ち、中間ガイド部55は、外脚44上に設けられている。中間ガイド部55は、コイル2と対向する位置に、外脚44を被覆する樹脂部材5から上方に向かって延出する。図3は、中間ガイド部55の拡大図である。中間ガイド部55は、図3に示すように、壁部551と庇部552を有する。
【0027】
壁部551は、外脚44を被覆する樹脂体51の上面から上方に向かって延びている。壁部551の延び方向の長さは、リード線62の外径以上である。壁部551は、コイル2と対向して配置されている。庇部552は、壁部551の延び先端から壁部551と直交する方向に延びており、外脚44を被覆する樹脂体51の上面と対向している。庇部552は、コイル2とは反対方向、即ち、コイル2から離れる方向に向かって延びている。庇部552の延び方向の長さはリード線62の外径よりも長い方が好ましい。庇部552の先端と樹脂体51の上面の間には部材が何ら設けられておらず、隙間Sが設けられている。つまり、隙間Sは、壁部551よりコイル2から離れた位置に壁部551と対向するように設けられている。この隙間Sからリード線62が挿入され、樹脂体51の上面、壁部551及び庇部552で囲われたスペースにリード線62が収容される。
【0028】
なお、樹脂部材5は、更に固定部56を有する。固定部56は、リアクトル本体1をケース7に固定する。ケース7にも、固定部56に対応する位置に固定部を有しており、樹脂部材5の固定部56とケース7の固定部を重ね合わせ、ネジ等によって締結することで、リアクトル本体1はケース7に固定される。
【0029】
外部機器(不図示)は、コイル2と電気的に接続し、リアクトル10に電力を供給する部材である。外部機器は、外部端子61とリード線62を有する。外部端子61は、導電性部材から成る。外部端子61には取付孔が形成されており、外部端子61は、この取付孔がバスバー3の取付孔に重なるように、バスバー3の上に設けられている。
【0030】
リード線62は、外部端子61と外部機器を繋ぐ部材である。即ち、リード線62の一方端部は外部端子61と接続しており、他方端部は外部機器と接続している。リード線62は、締結部53から巻軸方向に沿って外脚44の上方に配線されている。即ち、リード線62は、巻軸方向に沿って直線状に延びている。ここでいう直線状とは、完全な一直線状の状態ではなく、大きく湾曲や屈曲していない状態を指し、ガイド部54や中間ガイド部55に保持させるため多少の湾曲、屈曲している状態も含まれる。
【0031】
リード線62は、金属線とそれを被覆する被覆部とからなる。金属線としては、例えば、銅、ニッケル、アルミ、銀、金など又はこれら2種以上を含むことができる。金属線は、1本のみの単線、または複数本をより合わせたより線を使用できる。被覆部は、ビニール、シリコンゴム、フッ素ゴムなどの絶縁性部材で金属線を被覆する。
【0032】
図4に示すように、被覆部を含むリード線62の直径をd(mm)とし、曲げ位置から曲げ中心Cでの半径をR(mm)としたとき、R>3dを満たす。この条件を満たす方が好ましい。リード線62は、剛性が大きいため、屈曲など変形させにくい。
【0033】
図5は、リアクトル10の全体構成を示す斜視図である。リアクトル10は、図5に示すように、ケース7を備える。ケース7は、リアクトル本体1を収容する。ケース7は、例えばアルミニウム合金等、熱伝導性が高く軽量な金属で構成されており、放熱性を有する。なお、ケース7は、必ずしも金属である必要はなく、熱伝導性に優れた樹脂や、樹脂の一部に金属製の放熱板を埋め込んだものや、金属製のフィラーを含有した樹脂を使用したものでもよい。
【0034】
ケース7は、上方が開口している箱型形状を有する。具体的には、ケース7は、4つの辺を有する概略矩形状の底面と、底面の4辺の縁から立ち上がった4つの側壁を有し、上面が開口している。底面と側壁によって囲われたスペースが、リアクトル本体1を収容する収容スペースである。ケース7の上面の開口からリアクトル本体1がケース7の収容スペースに挿入される。
【0035】
ケース7にリアクトル本体1が収容された後、ケース7内に充填材を充填させてもよい。充填材としては、リアクトル本体1の放熱性能の確保及び振動伝搬の軽減のため、比較的柔らかく熱伝導性の高い樹脂が適している。具体的には、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂などが挙げられる。充填材を充填することで、ケース7とリアクトル本体1の隙間に充填材が固化した充填成形部が形成される。そのため、リアクトル本体1から生じた熱を充填成形部を介してケース7に伝搬させることができ、リアクトル10の放熱性が向上する。
【0036】
(リード線の配線)
外部機器の外部端子61を締結部53に配置されているバスバー3に重ね合わせ、ボルト等で締結する。これにより、外部端子61とバスバー3が接続されるとともに、固定される。外部端子61と接続するリード線62は、外脚44に沿って延び、中間ガイド部55の隙間Sから樹脂体51の上面、壁部551及び庇部552で囲われたスペースに収容され、保持される。このとき、リード線62とコイル2の間には壁部551が設けられているので、リアクトル10の振動などによってリード線62が動いた場合であっても、コイル2との絶縁距離を確保できる。
【0037】
また、締結部53とは反対側の角部に配置されるリード線62は、切り欠き部541からガイド部54内に収容され、ガイド部54に保持される。この時、図1に示す矢印のように、ガイド部54aに保持されるリード線62は締結部53bの方向に、また、ガイド部54bに保持されるリード線62はリアクトル10の巻軸方向外側に、動こうとする。この動こうとする方向を逃げ方向ともいう。しかし、各ガイド部54の切り欠き部541は、この逃げ方向には設けられておらず、リード線62はガイド部54によって保持される。よって、リード線62がガイド部54から抜けることを防止できる。
【0038】
特に、本実施形態のリード線62は、被覆部を含むリード線62の直径をd(mm)とし、曲げ位置から曲げ中心までの半径をR(mm)としたとき、R>3dを満たす。つまり、リード線62は曲げにくい。そのため、リード線62を屈曲させて配置させると時間がかかり生産性が悪化する。しかし、本実施形態では、リード線62は外脚44に沿って直線状に配線されるので、作業者による曲げ作業は不要となり、生産性が上がる。このように、本発明は、曲げにくいリード線62を用いる場合により効果を発揮する。
【0039】
(効果)
以上のとおり、本実施形態のリアクトル10は、コア4と、コア4に装着されるコイル2と、コア4の周囲を被覆する樹脂部材5と、コイル2と電気的に接続する外部機器の外部端子61を締結する締結部53と、を備える。外部機器は、外部端子61と接続するリード線62を有し、リード線62は、コイル2が装着されていない外脚44に沿って、当該外脚44の上方に直線状に配線される。樹脂部材5は、上方にリード線62が配線された外脚44を挟むように締結部53の反対側に設けられ、リード線62を保持するガイド部54と、締結部53とガイド部54の間に設けられ、リード線62を保持する中間ガイド部55と、を有する。
【0040】
これにより、リード線62をガイド部54及び中間ガイド部55に挿入するだけでリード線62を固定させることができ、作業効率が上がる。また、従来のように、結束バンド等によって固定していないので、部品点数も削減でき、生産コストも削減できる。
【0041】
中間ガイド部55は、コイル2と対向して設けられ、樹脂部材5から立ち上がる壁部551と、壁部551の先端からコイル2とは反対の方向に延びる庇部552と、を有する。
【0042】
このように、リード線62とコイル2の間には壁部551が設けられているので、リード線62がリアクトル10の振動などによって動いたとして壁部551が障壁となり、コイル2と干渉することを防止できる。また、庇部552を設けることで、リード線62が壁部551を乗り越え、コイル2と干渉することを防止できる。
【0043】
リード線62は、金属線と、金属線を被覆する被覆部と、を有する。そして、被覆部を含むリード線の直径をd(mm)とし、曲げ位置から曲げ中心までの半径をR(mm)としたとき、R>3dを満たす。そのため、リード線62は、曲げにくい。本実施形態では、リード線62は外脚44に沿って直線状に延びているので、大きく湾曲や屈曲させる作業は必要なく、ガイド部54や中間ガイド部55に固定させるだけである。よって、容易にリード線の配線を行うことができる。
【0044】
ガイド部54は、リード線62をガイド部54に挿入する切り欠き部541を有し、切り欠き部541の大きさは、リード線62の外径と略同一である。これにより、リード線62の配線の作業性が向上するとともに、リード線62がガイド部54から抜け落ちることを防止できる。
【0045】
切り欠き部541の大きさがリード線62の外径よりも大きければ、リード線62を切り欠き部541からガイド部54に挿入しやすいが、リアクトル10の振動などによりリード線62が動いた場合、リード線62は切り欠き部541から抜け落ちる虞がある。一方、切り欠き部541の大きさがリード線62の外径よりも小さければ、リード線62が動いても抜け落ちることは防止できるが、リード線62をガイド部54に挿入するのに時間がかかる。よって、切り欠き部541の大きさをリード線62の外径と略同一とすることで、リード線62の配線作業を効率良く行うことができると同時に、ガイド部54に挿入したリード線62が切り欠き部541から抜けることを防止できる。
【0046】
(他の実施形態)
本明細書においては、本発明に係る実施形態を説明したが、この実施形態は例として提示したものであって、発明の範囲を限定することを意図していない。上記のような実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の範囲を逸脱しない範囲で、種々の省略や置き換え、変更を行うことができる。実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0047】
本実施形態では、リード線62は、外脚44に沿って巻軸方向と平行となるように直線状に延びていたがこれに限定されず、コア部材41のヨーク部45やコア部材42に沿って延びていてもよい。即ち、締結部53aから延びるリード線62は、樹脂体51のガイド部54bに向かってヨーク部45に沿って延び、締結部53bから延びるリード線62は、樹脂体52のガイド部54aに向かって樹脂体52(コア部材42)に沿って延びてもよい。
【0048】
本実施形態では、中間ガイド部55は、締結部53とガイド部54の間に1つだけ設けられていたが、2つ以上設けてもよい。
【符号の説明】
【0049】
10 リアクトル
1 リアクトル本体
2 コイル
21 巻回体
22 引出線
3 バスバー
4 コア
41 コア部材
42 コア部材
43 中脚
44 外脚
45 ヨーク部
4A モールドコア
4B モールドコア
5 樹脂部材
51 樹脂体
52 樹脂体
53、53a、53b 締結部
54、54a、54b ガイド部
55 中間ガイド部
61 外部端子
62 リード線
S 隙間
7 ケース
図1
図2
図3
図4
図5