IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社不二越の特許一覧

<>
  • 特開-熱処理に用いる油切り装置 図1
  • 特開-熱処理に用いる油切り装置 図2
  • 特開-熱処理に用いる油切り装置 図3
  • 特開-熱処理に用いる油切り装置 図4
  • 特開-熱処理に用いる油切り装置 図5A
  • 特開-熱処理に用いる油切り装置 図5B
  • 特開-熱処理に用いる油切り装置 図6
  • 特開-熱処理に用いる油切り装置 図7
  • 特開-熱処理に用いる油切り装置 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170921
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】熱処理に用いる油切り装置
(51)【国際特許分類】
   C23G 5/04 20060101AFI20241204BHJP
   C21D 1/58 20060101ALI20241204BHJP
   C21D 1/63 20060101ALI20241204BHJP
【FI】
C23G5/04
C21D1/58
C21D1/63
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087689
(22)【出願日】2023-05-29
(71)【出願人】
【識別番号】000005197
【氏名又は名称】株式会社不二越
(74)【代理人】
【識別番号】100176072
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 功
(74)【代理人】
【識別番号】100169225
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 明
(72)【発明者】
【氏名】石井 久貴
(72)【発明者】
【氏名】橋爪 剛士
(72)【発明者】
【氏名】園部 勝
(72)【発明者】
【氏名】前田 成一
【テーマコード(参考)】
4K053
【Fターム(参考)】
4K053PA02
4K053PA11
4K053QA04
4K053RA32
4K053SA06
4K053SA19
4K053TA22
4K053XA04
4K053YA04
4K053YA30
(57)【要約】
【課題】ワークに対して高効率で油切りができる熱処理に用いる油切り装置を提供する。
【解決手段】油切り装置は、熱処理後のワークが収容される油槽と、油槽内に貯留された油の油面の位置が油槽内の重力方向におけるワークの最上位置の高さ以下であり、かつ油面の位置が重力方向におけるワークの最下位置の高さ以上か否かを判定する判定部と、判定部による判定が肯定判定である場合、判定部による判定が否定判定である場合よりも遅い速度でワークを前記油面に対して通過させるか、油面をワークに対して通過させるかのうちいずれか一方を行う油面制御部とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱処理後のワークが収容される油槽と、
前記油槽内に貯留された前記油の油面の位置が前記油槽内の重力方向における前記ワークの最上位置の高さ以下であり、かつ前記油面の位置が前記重力方向における前記ワークの最下位置の高さ以上か否かを判定する判定部と、
前記判定部による前記判定が肯定判定である場合、前記判定部による前記判定が否定判定である場合よりも遅い速度で前記ワークを前記油面に対して通過させるか、前記油面を前記ワークに対して通過させるかのうちいずれか一方を行う油面制御部と、
を備えることを特徴とする熱処理に用いる油切り装置。
【請求項2】
前記油面制御部は、前記油槽から前記油を排出するための排出経路を有し、
前記判定部による前記判定が肯定判定である場合、前記判定部による前記判定が否定判定である場合よりも遅い排出速度で前記排出経路から前記油を排出することを特徴とする請求項1に記載の熱処理に用いる油切り装置。
【請求項3】
前記油面制御部は、前記油槽にガスを供給する供給経路を有し、
前記判定部による前記判定が肯定判定である場合、前記判定部による前記判定が否定判定である場合よりも低い圧力で前記供給経路に前記ガスを供給することを特徴とする請求項2に記載の熱処理に用いる油切り装置。
【請求項4】
前記油面制御部は、前記排出経路を複数有し、
前記判定部による前記判定が肯定判定である場合、前記判定部による前記判定が否定判定である場合よりも少ない数の前記排出経路から前記油を排出することを特徴とする請求項2又は3に記載の熱処理に用いる油切り装置。
【請求項5】
前記油面制御部は、管路径の異なる前記排出経路を複数有し、
前記判定部による前記判定が肯定判定である場合、前記判定部による前記判定が否定判定である場合よりも小径の前記排出経路から前記油を排出することを特徴とする請求項2又は3に記載の熱処理に用いる油切り装置。
【請求項6】
前記油面制御部は、前記ワークを前記油槽に貯留された前記油から前記重力方向の上方に引き上げる搬送台を含み、
前記判定部による前記判定が肯定判定である場合、前記判定部による前記判定が否定判定である場合よりも遅い移動速度で前記搬送台を引き上げることを特徴とする請求項1に記載の熱処理に用いる油切り装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱処理後のワークが収容される油槽を具備する熱処理に用いる油切り装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、熱処理に用いる油切り装置が知られている。
【0003】
この油切り装置に関し、特許文献1には、複数の異種の焼入れ油と洗浄油とが混ざりあった混合油から洗浄油のみを分離する蒸留器を備えた熱処理装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6545883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、蒸留器を用いて洗浄油と焼き入れ油とを分離するため、蒸留器を動作させるためのコストが発生してしまう。また、特許文献1に記載の技術では、洗浄油によってワークを洗浄し、洗浄油の油切りを行った後に、ワークに残留する洗浄油が多く残ってしまうことによって、洗浄処理の後に行う熱処理の品質の低下を招いてしまうという問題があった。
【0006】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ワークに対して高効率で油切りができる熱処理に用いる油切り装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の熱処理に用いる油切り装置は、熱処理後のワークが収容される油槽と、前記油槽内に貯留された前記油の油面の位置が前記油槽内の重力方向における前記ワークの最上位置の高さ以下であり、かつ前記油面の位置が前記重力方向における前記ワークの最下位置の高さ以上か否かを判定する判定部と、前記判定部による前記判定が肯定判定である場合、前記判定部による前記判定が否定判定である場合よりも遅い速度で前記ワークを前記油面に対して通過させるか、前記油面を前記ワークに対して通過させるかのうちいずれか一方を行う油面制御部と、を備える。
【0008】
また、前記油面制御部は、前記油槽から前記油を排出するための排出経路を有し、前記判定部による前記判定が肯定判定である場合、前記判定部による前記判定が否定判定である場合よりも遅い排出速度で前記排出経路から前記油を排出する。
【0009】
また、前記油面制御部は、前記油槽にガスを供給する供給経路を有し、前記判定部による前記判定が肯定判定である場合、前記判定部による前記判定が否定判定である場合よりも低い圧力で前記供給経路に前記ガスを供給する。
【0010】
また、前記油面制御部は、前記排出経路を複数有し、前記判定部による前記判定が肯定判定である場合、前記判定部による前記判定が否定判定である場合よりも少ない数の前記排出経路から前記油を排出する。
【0011】
また、前記油面制御部は、管路径の異なる前記排出経路を複数有し、前記判定部による前記判定が肯定判定である場合、前記判定部による前記判定が否定判定である場合よりも大径の前記排出経路から前記油を排出する。
【0012】
また、前記油面制御部は、前記ワークを前記油槽に貯留された前記油から前記重力方向の上方に引き上げる搬送台を含み、前記判定部による前記判定が肯定判定である場合、前記判定部による前記判定が否定判定である場合よりも遅い移動速度で前記搬送台を引き上げる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ワークに対して高効率で油切りができる熱処理に用いる油切り装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第一実施形態に係る熱処理に用いる油切り装置の全体構成を概略的に示す図である。
図2図1に示す制御装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
図3図1に示す制御装置の機能的構成の一例を、油切り装置における他の構成とともに示す図である。
図4図1に示す油切り装置がワークに対して油切りを行う場合の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図5A】従来の油切り装置による油切り処理における洗浄油の残留液量及び時間の関係を示すグラフである。
図5B図1に示す油切り装置による油切り処理における洗浄油の残留液量及び時間の関係を示すグラフである。
図6】第二実施形態に係る熱処理に用いる油切り装置の全体構成を概略的に示す図である。
図7図6に示す制御装置の機能的構成の一例を、油切り装置における他の構成とともに示す図である。
図8図6に示す油切り装置がワークに対して油切りを行う場合の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照しながら本発明の複数の実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素及びステップに対しては可能な限り同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0016】
―――第一実施形態―――
まず、第一実施形態について説明する。
【0017】
<全体構成>
図1は、第一実施形態に係る熱処理に用いる油切り装置1Aの全体構成を概略的に示す図である。油切り装置1Aは、例えば浸炭処理や焼き入れ処理などを含む熱処理が行われたワーク2に対して、洗浄油による洗浄処理を行った後に洗浄油を油切りする。図1に示すように、熱処理に用いる油切り装置1Aは、油槽10と、制御装置20Aと、洗浄油タンク30と、ガス容器40と、ポンプ50と、油面制御部100とを含んで主要部が構成される。
【0018】
油槽10は、ワーク2に対して洗浄油による洗浄処理を行うための槽であり、洗浄油が貯留され、熱処理後のワーク2が収容される。油槽10は、洗浄油タンク30から油面制御部100の給油制御弁31及び給油経路32を介して洗浄油が供給される。また、油槽10は、ガス容器40から油面制御部100のガス制御弁41及び供給経路42を介して窒素ガスが供給される。また、油槽10は、油面制御部100の排出経路52から洗浄油を油槽10の外部に排出する。また、油槽10は、ワーク2が載置される載置台11と、重量方向におけるワーク2の最上位置の高さに設けられる第1油検出部12と、重量方向におけるワーク2の最下位置の高さに設けられる第2油検出部13とを含んで構成される。
【0019】
載置台11は、ワーク2が載置される台であり、油槽10内の下部に設けられる。載置台11は、上面にワーク2が載置される。
【0020】
第1油検出部12及び第2油検出部13は、洗浄油などの炭化水素系の油を検出するセンサである。第1油検出部12及び第2油検出部13は、設置箇所が油によって覆われているか否かを検出し、当該検出の結果を制御装置20Aに伝達する。
【0021】
油面制御部100は、制御装置20Aの動作制御に従って、油槽10内に貯留された洗浄油の油面の位置が、油槽10内の重力方向におけるワーク2の最上位置の高さ以下であり、かつ油面の位置が重力方向におけるワーク2の最下位置の高さ以上である条件を満たす場合に、当該条件を満たさない場合よりも遅い速度で油面をワーク2に対して通過させる。油面制御部100は、ガス制御弁41と、供給経路42と、給油制御弁31と、給油経路32と、排出制御弁51と、排出経路52とを含んで構成される。
【0022】
洗浄油タンク30は、洗浄油が貯蔵されるタンクであり、油槽10とは異なる場所に設けられる。第一実施形態では、洗浄油タンク30は、油槽10の下部に設けられる。洗浄油タンク30は、給油制御弁31が開弁している間、給油制御弁31及び給油経路32を介して、貯蔵している洗浄油を油槽10に送る。また、洗浄油タンク30は、給油制御弁31が閉弁している間、洗浄油が外部に漏れないように保存する。なお、洗浄油タンク30に貯蔵される洗浄油は、例えば、炭化水素系の油である。
【0023】
給油制御弁31は、制御装置20Aの動作制御に従って、所定の流量の洗浄油を給油経路32から油槽10に給油するためのバルブである。給油制御弁31は、一端が配管を通じて洗浄油タンク30に接続され、他端が給油経路32に接続される。
【0024】
給油経路32は、洗浄油タンク30から洗浄油を油槽10内に給油するための経路であり、洗浄油タンク30と油槽10との間に設けられる。具体的には、給油経路32は、洗浄油タンク30から給油制御弁31を介して洗浄油を油槽10内に給油する。
【0025】
ガス容器40は、窒素ガスを保存するためのボンベである。ガス容器40は、ガス制御弁41が開弁している間、ガス制御弁41及び供給経路42を介して保存している窒素ガスを油槽10内に送る。また、ガス容器40は、ガス制御弁41が閉弁している間、窒素ガスが外部に漏れないように保存する。
【0026】
ガス制御弁41は、制御装置20Aの動作制御に従って、所定の流量の窒素ガスを供給経路42から油槽10に給油するためのバルブである。ガス制御弁41は、一端が配管を通じてガス容器40に接続され、他端が供給経路42に接続される。
【0027】
供給経路42は、油槽10外から窒素ガスを油槽10内に供給するための経路であり、油槽10とガス制御弁41との間に設けられる。具体的には、供給経路42は、ガス容器40からガス制御弁41を介して送られる窒素ガスを油槽10内に供給する。
【0028】
排出経路52は、油槽10内から洗浄油を油槽10外に排出させるための経路である。具体的には、排出経路52は、ポンプ50によって、排出制御弁51を介して油槽10内の洗浄油を油槽10外に排出する。
【0029】
排出制御弁51は、制御装置20Aの動作制御に従って、所定の流量の洗浄油を排出経路52から排出させるためのバルブである。排出制御弁51は、一端が配管を通じて排出経路52に接続され、他端が配管を通じてポンプ50の一端に接続される。
【0030】
ポンプ50は、油槽10内の洗浄油を排出するためのポンプであり、排出経路52から排出制御弁51を介して送られてくる洗浄油を油切り装置1Aの外部に排出する。ポンプ50は、一端が配管を通じて排出制御弁51の他端に接続され、他端が配管を通じて油切り装置1Aの外部に通じる。
【0031】
制御装置20Aは、ワーク2に対して洗浄油による洗浄処理、及びワーク2に対する油切り処理の制御を行う。制御装置20Aは、第1油検出部12及び第2油検出部13から、それぞれ油の検出結果を取得する。また、制御装置20Aは、給油制御弁31の開弁及び閉弁を制御することによって、洗浄油タンク30から油槽10内への洗浄油の流入及び流入の停止を制御する。また、制御装置20Aは、ガス制御弁41の開弁及び閉弁を制御することによって、ガス容器40から油槽10内への窒素ガスの流入、流入の停止及び流入させる場合の流量を制御する。また、制御装置20Aは、排出制御弁51の開弁及び閉弁を制御することによって、油槽10内から油槽10外への洗浄油の排気及び排気の停止を制御する。
【0032】
また、制御装置20Aは、制御装置20Aが予め記憶しているプログラムや制御装置20Aの操作者からの入力、制御装置20Aとは異なる外部の装置から伝達される制御信号に基づく制御命令に従って、上述した給油制御弁31、ガス制御弁41及び排出制御弁51に対する制御を行う。これによって、制御装置20Aは、油槽10に収容されたワーク2に対して、洗浄処理及び油切り処理の制御を行う。
【0033】
<ハードウェア構成>
図2は、図1に示す制御装置20Aのハードウェア構成の一例を示す図である。図2に示すように、制御装置20Aは、例えば、CPU22における処理の実行に必要な各種プログラムや各種情報及び処理結果の情報などを記憶する記憶装置21と、メモリ23或いは記憶装置21等に格納された所定のプログラムを実行することにより各種の機能手段として機能するCPU(Central Processing Unit)22と、所定のプログラムやCPU22が所定のプログラムを実行する際に必要なデータなどを一時的に記憶するメモリ23と、外部の装置と通信するための通信装置24と、油切り装置1Aの操作者からの操作を受け付けるとともに操作者に対して画面表示や音声などの出力を行う入出力装置25とを含んで主要部が構成される。
【0034】
なお、制御装置20Aは、専用又は汎用のコンピュータなどの情報処理装置を用いて実現することができる。また、制御装置20Aは、単一の情報処理装置より構成されるものであっても、複数の情報処理装置より構成されるものであってもよい。また、図2は、制御装置20Aが有する主要なハードウェア構成の一部を示しているに過ぎず、制御装置20Aは、コンピュータが一般的に備える他の構成を備えても良い。
【0035】
<機能的構成>
図3は、図1に示す制御装置20Aの機能的構成の一例を、油切り装置1Aにおける他の構成とともに示す図である。図3に示すように、制御装置20Aは、機能的構成として、例えば、給油調整部210と、判定部220と、油切り調整部230と、記憶部240と、入出力部250とを含んで構成される。記憶部240以外の機能的構成は、CPU22がプログラムをメモリ23上に展開して実行することにより実現される。記憶部240は、記憶装置21又は/及びメモリ23により実現される。
【0036】
給油調整部210は、記憶部240に記憶されているプログラム又は入出力部250から受け付けた制御命令に従って、給油制御弁31の開弁及び閉弁の動作を制御することによって、洗浄油タンク30から所定の流量の洗浄油を油槽10に給油し、油槽10内のワーク2を洗浄油によって洗浄する。給油調整部210は、洗浄処理において、所定量の洗浄油を油槽10内に流入させた後に給油制御弁31を閉弁し、所定時間が経過するまで待機する。給油調整部210は、ワーク2に対する洗浄処理を終えた後に、洗浄処理が終了したことを判定部220に伝達する。
【0037】
判定部220は、油槽10内に貯留された油の油面の位置が油槽10内の重力方向におけるワーク2の最上位置の高さ以下であり、かつ油面の位置が重力方向におけるワーク2の最下位置の高さ以上か否かを判定する。具体的には、判定部220は、給油調整部210からワーク2に対する洗浄処理が終了したことが伝達されると、第1油検出部12及び第2油検出部13から、それぞれ第1油検出部12及び第2油検出部13の設置箇所が油によって覆われているか否かの検出結果を取得する。判定部220は、第1油検出部12の設置箇所が油に覆われていないと第1油検出部12の検出結果が示しており、かつ第2油検出部13の設置箇所が油に覆われていると第2油検出部13の検出結果が示している場合、油槽10内に貯留された油の油面の位置が油槽10内の重力方向におけるワーク2の最上位置の高さ以下であり、かつ油面の位置が重力方向におけるワーク2の最下位置の高さ以上であると判定する。判定部220は、当該判定の結果を油切り調整部230に伝達する。
【0038】
なお、判定部220は、第1油検出部12及び第2油検出部13の設置箇所がいずれも油に覆われていると第1油検出部12及び第2油検出部13の検出結果が示す場合、油槽10内に貯留された油の油面の位置が油槽10内の重力方向におけるワーク2の最上位置の高さより上であると判定する。また、判定部220は、第1油検出部12及び第2油検出部13の設置箇所がいずれも油に覆われていないと第1油検出部12及び第2油検出部13の検出結果が示す場合、油槽10内に貯留された油の油面の位置が油槽10内の重力方向におけるワーク2の最下位置の高さより下であると判定する。さらに、判定部220は、第1油検出部12の設置箇所が油に覆われていると第1油検出部12の検出結果が示しており、かつ第2油検出部13の設置箇所が油に覆われていないと第2油検出部13の検出結果が示している場合、第1油検出部12及び第2油検出部13の検出結果のうち、いずれか又は両方が正常に動作していないものと判定する。
【0039】
油切り調整部230は、記憶部240に記憶されているプログラム又は入出力部250から受け付けた制御命令に従って、ガス制御弁41の開弁及び閉弁並びに排出制御弁51の開弁及び閉弁の動作を制御することによって、ワーク2に対する洗浄油の油切りを調整する。具体的には、油切り調整部230は、ガス容器40から判定部220の判定結果に従う圧力で窒素ガスを油槽10に流入させるとともに、排出経路52から洗浄油を排出させる。ここで、油切り調整部230は、判定部220が油槽10内に貯留された油の油面の位置が油槽10内の重力方向におけるワーク2の最上位置の高さ以下であり、かつ油面の位置が重力方向におけるワーク2の最下位置の高さ以上であると判定した場合、当該判定が否定判定である場合よりも低い圧力でガス容器40から窒素ガスを油槽10に流入させる。また、油切り調整部230は、洗浄油の排出を開始してから予め定められた時間が経過した場合、洗浄油の排出が終わったことを示す信号を入出力部250に伝達する。
【0040】
記憶部240は、給油調整部210による油槽10への洗浄油の給油の状況や判定部220による判定の結果、油切り調整部230によるワーク2に対する洗浄油の油切りの状況などを記憶する。また、記憶部240は、ガス容器40から油槽10に窒素ガスを流入させる際の圧力に関する情報や、洗浄油タンク30から油槽10に洗浄油を流入させる際の洗浄油の流量、排出経路52から洗浄油を排出する際の洗浄油の流量などを記憶する。
【0041】
入出力部250は、油切り装置1Aの操作者による油切り装置1Aに対する各種命令を受け付け、受け付けた命令を給油調整部210、判定部220及び油切り調整部230に伝達する。
【0042】
<一連の処理の流れの一例>
以上、制御装置20Aの機能的構成について、油切り装置1Aにおける他の構成とともに説明した。次に、油切り装置1Aの一連の処理の流れについて、図4を参照しつつ説明する。図4は、図1に示す油切り装置1Aがワーク2に対して油切りを行う場合の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0043】
(ステップSP10)
油切り装置1Aは、制御装置20Aによって、油槽10内の載置台11に載置されたワーク2に対する洗浄油による洗浄処理を開始する。具体的には、油切り装置1Aは、制御装置20Aによって、給油制御弁31を開弁し、洗浄油タンク30から給油経路32を介して所定の流量の洗浄油を油槽10内に流入させる。そして、処理は、ステップSP12の処理に移行する。
【0044】
(ステップSP12)
油切り装置1Aは、制御装置20Aによって、ワーク2に対して洗浄油による洗浄処理を行う。具体的には、油切り装置1Aは、制御装置20Aによって、所定量の洗浄油を油槽10内に流入させた後に給油制御弁31を閉弁する。また、油切り装置1Aは、制御装置20Aによって、所定時間が経過するまで待機する。そして、処理は、ステップSP14の処理に移行する。
【0045】
(ステップSP14)
油切り装置1Aは、制御装置20Aによって、油槽10内のワーク2に対する洗浄油の油切り処理を開始する。具体的には、油切り装置1Aは、制御装置20Aによって、ガス制御弁41及び排出制御弁51を開弁する。そして、処理は、ステップSP16の処理に移行する。
【0046】
(ステップSP16)
油切り装置1Aは、制御装置20Aによって、油槽10内に貯留された油の油面の位置が所定の高さの範囲内であるか否かを判定する。具体的には、油切り装置1Aは、制御装置20Aによって、油槽10内に貯留された油の油面の位置が油槽10内の重力方向におけるワーク2の最上位置の高さ以下であり、かつ油面の位置が重力方向におけるワーク2の最下位置の高さ以上か否かを判定する。そして、当該判定が肯定判定である場合、処理は、ステップSP18の処理に移行し、当該判定が否定判定である場合、処理は、ステップSP20の処理に移行する。
【0047】
(ステップSP18)
油切り装置1Aは、制御装置20Aによって、第1速度で洗浄油を排出経路52から油槽10外に排出させる。具体的には、油切り装置1Aは、制御装置20Aによって、ガス容器40から油槽10内に窒素ガスが第1圧力で流入するようにガス制御弁41の動作を制御し、流入させる窒素ガスの圧力によって第1速度で洗浄油を排出経路52から油槽10外に排出させる。ここで、第1速度は、第1速度と異なる第2速度よりも遅い速度であり、少なくとも第2速度の半分以下の速度であり、好適には20%以下の速度である。また、第1圧力は、第1圧力と異なる第2圧力よりも低い圧力である。そして、処理は、ステップSP22の処理に移行する。
【0048】
(ステップSP20)
油切り装置1Aは、制御装置20Aによって、第2速度で洗浄油を排出経路52から油槽10外に排出させる。具体的には、油切り装置1Aは、制御装置20Aによって、ガス容器40から油槽10内に窒素ガスが第2圧力で流入するようにガス制御弁41の動作を制御し、流入させる窒素ガスの圧力によって第2速度で洗浄油を排出経路52から油槽10外に排出させる。そして、処理は、ステップSP22の処理に移行する。
【0049】
(ステップSP22)
油切り装置1Aは、制御装置20Aによって、油槽10内に貯留された油を排出し終えたか否かを判定する。具体的には、油切り装置1Aは、制御装置20Aによって、洗浄油の油切り処理を開始してから予め定められている時間が経過したか否かを判定する。そして、当該判定が肯定判定である場合、処理は、ステップSP16の処理に戻り、当該判定が否定判定である場合、図4に示す一連の処理は、終了する。
【0050】
<効果>
図5Aは、従来の油切り装置による油切り処理における洗浄油の残留液量及び時間の関係を示すグラフである。また、図5Bは、図1に示す油切り装置1Aによる油切り処理における洗浄油の残留液量及び時間の関係を示すグラフである。図5A及び図5Bに示すように、従来の油切り装置及び図1に示す油切り装置1Aによる油切り処理においては、時刻t50で油切り処理を開始し、時刻t51で、油面が重力方向におけるワーク2の最上位置まで低下する。
【0051】
ここで、従来の油切り装置による油切り処理においては、図5Aに示すように、時刻t52で、油面が重力方向におけるワーク2の最下位置まで低下し、時刻t52で油面が油槽の底面の高さまで低下し、洗浄油が排出される。そして、時刻t53から、時刻t51から時刻t53までに経過した時間とほぼ同じ時間が経過した時刻t54で、ワーク2に付着している洗浄油の残留液量がようやくほぼ0となる。
【0052】
これに対して、図1に示す油切り装置1Aによる油切り処理においては、図5Bに示すように、時刻t52よりも時間が経過した時刻t55で、油面が重力方向におけるワーク2の最下位置まで低下し、時刻t55の後の時刻t56で油面が油槽10の底面の高さまで低下し、洗浄油が排出される。そして、時刻t54よりも前の時刻である時刻t57で、ワーク2に付着している洗浄油の残留液量がようやくほぼ0となる。このように、油切り装置1Aは、油面の高さが重力方向におけるワーク2の最上位置から最下位置にある間、洗浄油の排出速度を遅くすることによって、ワーク2に付着している洗浄油の残留液量が従来の油切り装置よりも早くほぼ0となり、早く油切りができていることが分かる。
【0053】
以上、第一実施形態では、油切り装置1Aは、油面が重力方向におけるワーク2の最上位置の高さから最下位置の高さまでの範囲内である場合に、範囲外の場合と比較して遅い速度で油面をワーク2に対して通過させる。したがって、油切り装置1Aは、ワーク2に対して高効率で油切りができる。
【0054】
また、油切り装置1Aは、判定部220による判定が肯定判定である場合、否定判定である場合と比べて遅い排出速度で油槽10から油を排出する。したがって、油切り装置1Aは、油槽10から油を排出する場合においても、ワーク2に対して高効率で油切りができる。
【0055】
また、油面制御部100は、油槽10にガスを供給する供給経路42を有し、判定部220による判定が肯定判定である場合、判定部220による判定が否定判定である場合よりも低い圧力で供給経路42にガスを供給する。
【0056】
したがって、油切り装置1Aは、ガスを供給経路42に供給することによって、油の排出速度を制御する場合においても、ワーク2に対して高効率で油切りができる。
【0057】
―――第二実施形態―――
続いて、第二実施形態について説明する。
【0058】
<全体構成>
図6は、第二実施形態に係る熱処理に用いる油切り装置1Bの全体構成を概略的に示す図である。油切り装置1Bは、浸炭処理などの熱処理が行われたワーク2に対して、焼入れ油による焼き入れ処理を行った後に焼き入れ油を油切りする。図6に示すように、熱処理に用いる油切り装置1Bは、例えば、制御装置20Bと、油槽60と、炉80と、油面制御部700とを含んで主要部が構成される。
【0059】
油槽60は、ワーク2の搬送及びワーク2に対する焼き入れ油による焼き入れ処理を行うための槽であり、ワーク2が収容され、下部に焼き入れ油が貯留される。油槽60は、上部に搬送室61が設けられ、下部に焼き入れ室62が設けられる。また、油槽60は、搬送室61から焼き入れ室62にわたって、焼入れ油の油面に対してワーク2を通過させる油面制御部700が設けられる。
【0060】
搬送室61は、油切り装置1Bにおいて、ワーク2を各所に搬送する際の中継地点となる部屋である。搬送室61は、下部が焼き入れ室62に接続されており、一の側面に油切り装置1Bの外部及び油槽60の間でワーク2を搬入出するための外扉64が設けられ、他の側面に油槽60及び炉80の間でワーク2を搬送するための中扉63が設けられる。また、搬送室61は、炉80及び搬送室61の間でワーク2を移動するための機構(図示せず)と、油切り装置1Bの外部及び搬送室61の間でワーク2を搬入出するための機構(図示せず)とを有する。
【0061】
焼き入れ室62は、油切り装置1Bにおいて、炉80において浸炭処理などが行われたワーク2に対して、焼き入れ油による焼き入れ処理を行うための部屋である。焼き入れ室62は、焼入れ油が貯留されており、上部が搬送室61に接続されている。
【0062】
油面制御部700は、制御装置20Bの動作制御に従って、油槽60内に貯留されている焼き入れ油の油面の位置が、油槽60内の重力方向におけるワーク2の最上位置の高さ以下であり、かつ油面の位置が重力方向におけるワーク2の最下位置の高さ以上である条件を満たす場合に、当該条件を満たさない場合よりも遅い速度でワーク2を油面に対して通過させる。油面制御部700は、例えば、搬送台71と、レール部72と、第3油検出部73と、第4油検出部74とを含んで構成される。
【0063】
搬送台71は、ワーク2を搬送するための台であり、上面にワーク2が載置される。搬送台71は、レール部72に移動可能に接続され、制御装置20Bの動作制御に従って、搬送室61及び焼き入れ室62の間をレール部72の軌道に沿って移動する。また、搬送台71は、側面に第3油検出部73及び第4油検出部74が接続される。
【0064】
レール部72は、搬送室61及び焼き入れ室62の間で搬送台71を移動させるための軌道である。レール部72は、搬送台71の左右にそれぞれ1つずつ、重力方向において上下方向に、搬送室61及び焼き入れ室62の間にわたって延在するように設けられる。
【0065】
第3油検出部73及び第4油検出部74は、焼き入れ油を検出するセンサである。第3油検出部73及び第4油検出部74は、設置箇所が油によって覆われているか否かを検出し、当該検出の結果を制御装置20Bに伝達する。第3油検出部73は、設置箇所が油槽60内において搬送台71に載置されたワーク2の重量方向における最上位置の高さになるように、搬送台71に接続される。また、第4油検出部74は、設置箇所が油槽60内において搬送台71に載置されたワーク2の重量方向における最下位置の高さになるように、搬送台71に接続される。
【0066】
炉80は、ワーク2に対して浸炭処理などの熱処理を行うための部屋であり、ワーク2が収容される。炉80は、側面に設けられている中扉63を介して、搬送室61と接続される。
【0067】
制御装置20Bは、ワーク2に対して焼き入れ油による焼き入れ処理、及びワーク2に対する油切り処理の制御を行う。制御装置20Bは、第3油検出部73及び第4油検出部74から、それぞれ油の検出結果を取得する。また、制御装置20Bは、制御装置20Bが予め記憶しているプログラムや制御装置20Bの操作者からの入力、制御装置20Bとは異なる外部の装置から伝達される制御信号に基づく制御命令に従って、上述した搬送台71に対する制御を行う。これによって、制御装置20Bは、搬送台71の移動を制御することによって、ワーク2に対する焼入れ処理及び油切り処理の制御を行う。
【0068】
<機能的構成>
続いて、制御装置20Bの機能的構成について説明する。なお、制御装置20Bのハードウェア構成については、制御装置20Aとほぼ同じであるためその説明を省略する。図7は、図6に示す制御装置20Bの機能的構成の一例を油切り装置1Bにおける他の構成とともに示す図である。図7に示すように、制御装置20Bは、機能的構成として、例えば、搬送調整部260と、判定部220と、記憶部240と、入出力部250とを含んで構成される。記憶部240以外の機能的構成は、CPU22がプログラムをメモリ23上に展開して実行することにより実現される。記憶部240は、記憶装置21又は/及びメモリ23により実現される。
【0069】
搬送調整部260は、記憶部240に記憶されているプログラム又は入出力部250から受け付けた制御命令に従って、油面制御部700の搬送台71の動作を制御することによって、ワーク2に対する焼入れ油による焼き入れ処理、及びワーク2に対する焼き入れ油の油切り処理を行う。具体的には、搬送調整部260は、ワーク2が載置された搬送台71を搬送室61から焼き入れ室62に移動させて、ワーク2を焼き入れ油に浸すことによってワーク2に対して焼き入れ処理を行う。搬送調整部260は、搬送台71を焼き入れ室62に移動させてから予め定められた時間が経過後に、ワーク2に対して焼き入れを行う時間が経過したことを示す信号を判定部220に伝達する。
【0070】
また、搬送調整部260は、判定部220の判定結果に従う速度で搬送台71を焼き入れ室62から搬送室61に移動させる。ここで、搬送調整部260は、判定部220が油槽60内に貯留された油の油面の位置が油槽60内の重力方向におけるワーク2の最上位置の高さ以下であり、かつ油面の位置が重力方向におけるワーク2の最下位置の高さ以上であると判定した場合、当該判定が否定判定である場合よりも遅い速度で搬送台71を搬送室61に向かって移動させる。また、搬送調整部260は、搬送台71が搬送室61に到達してから予め定められた時間が経過した場合、焼入れ油の油切り処理が終わったことを示す信号を入出力部250に伝達する。
【0071】
判定部220は、油槽60内に貯留された油の油面の位置が油槽10内の重力方向におけるワーク2の最上位置の高さ以下であり、かつ油面の位置が重力方向におけるワーク2の最下位置の高さ以上か否かを判定する。具体的には、判定部220は、搬送調整部260からワーク2に対する焼入れ処理が終了したことが伝達されると、第3油検出部73及び第4油検出部74から、それぞれ第3油検出部73及び第4油検出部74の設置箇所が油によって覆われているか否かの検出結果を取得する。判定部220は、第3油検出部73の設置箇所が油に覆われていないと第3油検出部73の検出結果が示しており、かつ第4油検出部74の設置箇所が油に覆われていると第4油検出部74の検出結果が示している場合、油槽60内に貯留された油の油面の位置が油槽60内の重力方向におけるワーク2の最上位置の高さ以下であり、かつ油面の位置が重力方向におけるワーク2の最下位置の高さ以上であると判定する。判定部220は、当該判定の結果を搬送調整部260に伝達する。なお、他の第3油検出部73及び第4油検出部74の検出結果の組み合わせの場合における判定部220の判定については、第一実施形態と同様であるため、その説明を省略する。
【0072】
記憶部240は、搬送調整部260による搬送台71の油槽60内における位置の状況や判定部220による判定の結果などを記憶する。また、記憶部240は、搬送台71を移動させる際の移動速度に関する情報を記憶する。
【0073】
入出力部250は、油切り装置1Bの操作者による油切り装置1Bに対する各種命令を受け付け、受け付けた命令を搬送調整部260及び判定部220に伝達する。
【0074】
<一連の処理の流れの一例>
以上、制御装置20Bの機能的構成について、油切り装置1Bにおける他の構成とともに説明した。次に、油切り装置1Bの一連の処理の流れについて、図8を参照しつつ説明する。図8は、図6に示す油切り装置1Bがワーク2に対して油切りを行う場合の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0075】
(ステップSP50)
油切り装置1Bは、制御装置20Bによって、ワーク2が載置された搬送台71を搬送室61から焼き入れ室62に移動させる。そして、処理は、ステップSP52の処理に移行する。
【0076】
(ステップSP52)
油切り装置1Bは、制御装置20Bによって、搬送台71に載置されたワーク2に対する焼き入れ処理を開始する。具体的には、油切り装置1Bは、搬送台71に載置されたワーク2が焼き入れ室62の焼き入れ油に浸った状態で予め定められた時間が経過するまで待機する。そして、処理は、ステップSP54の処理に移行する。
【0077】
(ステップSP54)
油切り装置1Bは、制御装置20Bによって、油槽60内のワーク2に対する焼入れ油の油切り処理を開始する。具体的には、油切り装置1Bは、制御装置20Bによって、搬送台71の焼き入れ室62から搬送室61への移動を開始する。そして、処理は、ステップSP56の処理に移行する。
【0078】
(ステップSP56)
油切り装置1Bは、制御装置20Bによって、油槽60内に貯留された油の油面の位置が所定の高さの範囲内であるか否かを判定する。具体的には、油切り装置1Bは、制御装置20Bによって、油槽60内に貯留された油の油面の位置が油槽60内の重力方向におけるワーク2の最上位置の高さ以下であり、かつ油面の位置が重力方向におけるワーク2の最下位置の高さ以上か否かを判定する。そして、当該判定が肯定判定である場合、処理は、ステップSP58の処理に移行し、当該判定が否定判定である場合、処理は、ステップSP60の処理に移行する。
【0079】
(ステップSP58)
油切り装置1Bは、制御装置20Bによって、第3速度で搬送台71を搬送室61に向かって移動させる。ここで、第3速度は、第3速度と異なる第4速度よりも遅い速度であり、少なくとも第4速度の半分以下の速度であり、好適には20%以下の速度である。そして、処理は、ステップSP62の処理に移行する。
【0080】
(ステップSP60)
油切り装置1Bは、制御装置20Bによって、第4速度で搬送台71を搬送室61に向かって移動させる。そして、処理は、ステップSP62の処理に移行する。
【0081】
(ステップSP62)
油切り装置1Bは、制御装置20Bによって、搬送台71が搬送室61に到達して、さらに予め定められた時間が経過したか否かを判定する。そして、当該判定が肯定判定である場合、処理は、ステップSP56の処理に戻り、当該判定が否定判定である場合、図8に示す一連の処理は、終了する。
【0082】
<効果>
以上、第二実施形態では、油切り装置1Bは、油切り装置1Bは、油面が重力方向におけるワーク2の最上位置の高さから最下位置の高さまでの範囲内である場合に、範囲外の場合と比較して遅い速度でワーク2を油面に対して通過させる。したがって、油切り装置1Bは、ワーク2に対して高効率で油切りができる。
【0083】
また、油面制御部700は、油切り装置1Bは、油槽60に貯留されている油に対して搬送台71を移動させる場合においても、ワーク2に対して高効率で油切りができる。
【0084】
<変形例>
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。すなわち、上記の実施形態に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。また、上記実施形態及び後述する変形例が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【0085】
例えば、第一実施形態では、熱処理に用いる油切り装置1Aは、ガス容器40から窒素ガスを第1圧力又は第2圧力で油槽10内に流入させることによって、洗浄油を第1速度又は第2速度で排出経路52から排出させるが、これに限られるものではない。熱処理に用いる油切り装置1Aは、油面制御部100が排出経路52を複数有し、判定部220による判定が肯定判定である場合、判定部220による判定が否定判定である場合よりも少ない数の排出経路52から油を排出しても良い。
【0086】
この構成によれば、油切り装置1Aは、制御装置20Aによって、判定部220による判定に応じて、排出経路52毎に設けられている複数の排出制御弁51の開弁及び閉弁を制御する。したがって、油切り装置1Aは、排出制御弁51の開弁及び閉弁の制御によって洗浄油の排出速度を調整するため、簡易な制御かつ高効率でワーク2に対して油切りができる。
【0087】
また、油切り装置1Aは、油面制御部100は、管路径の異なる排出経路52を複数有し、判定部220による判定が肯定判定である場合、判定部220による判定が否定判定である場合よりも小径の排出経路52から油を排出しても良い。
【0088】
この構成によれば、油切り装置1Aは、判定部220による判定に応じて、制御装置20Aによって、複数の排出経路52のうち1つの排出経路52を選択し、選択した排出制御弁51を開弁する。したがって、油切り装置1Aは、開弁する排出制御弁51の選択によって洗浄油の排出速度を調整するため、簡易な制御かつ高効率でワーク2に対して油切りができる。
【0089】
また、第二実施形態では、熱処理に用いる油切り装置1Bは、判定部220が第3油検出部73及び第4油検出部74の検出結果に基づいて油面の位置を判定したが、これに限られるものではない。油切り装置1Bは、レール部72に設けられている、搬送台71のレール部72における位置を検出するための位置センサの検出結果に基づいて、判定部220が油面の位置を判定しても良い。
【0090】
具体的には、レール部72は、焼入れ油の油面の位置に上側位置センサが設けられ、当該油面からワーク2の高さの分だけ重力方向において下側にある位置に下側位置センサが設けられる。上側位置センサ及び下側位置センサは、搬送台71が焼き入れ室62から搬送室61に移動する場合において、位置センサが設置されている高さに搬送台71が到達した際に搬送台71を検出したことを示す検出結果を制御装置20Bの判定部220に伝達する。
【0091】
判定部220は、下側位置センサから搬送台71を検出したこと示す検出結果が伝達されてから、上側位置センサが搬送台71を検出したことを示す検出結果が伝達されるまでの間、油槽60内に貯留された油の油面の位置が油槽60内の重力方向におけるワーク2の最上位置の高さ以下であり、かつ油面の位置が重力方向におけるワーク2の最下位置の高さ以上であると判定する。
【0092】
この構成によれば、油切り装置1Bは、搬送台71に第3油検出部73及び第4油検出部74を設けることなく、レール部72の所定の位置における搬送台71の通過状況に応じて、判定部220が判定を行う。したがって、油切り装置1Bは、簡素な構成かつ高効率でワーク2に対して油切りができる。
【符号の説明】
【0093】
1A…油切り装置、1B…油切り装置、2…ワーク、10…油槽、42…供給経路、52…排出経路、60…油槽、71…搬送台、100…油面制御部、220…判定部、700…油面制御部


図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8