(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170922
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】電力変換モジュール
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20241204BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087690
(22)【出願日】2023-05-29
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】六浦 圭太
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 隆秀
(72)【発明者】
【氏名】竹本 敬介
(72)【発明者】
【氏名】勝谷 稜也
(72)【発明者】
【氏名】萩田 和洋
(72)【発明者】
【氏名】野村 将彦
(72)【発明者】
【氏名】山下 貢
【テーマコード(参考)】
5H770
【Fターム(参考)】
5H770BA02
5H770CA01
5H770CA02
5H770CA06
5H770DA03
5H770DA41
5H770JA17W
5H770JA19X
5H770PA12
5H770PA22
5H770PA42
5H770QA01
5H770QA02
5H770QA06
5H770QA22
5H770QA25
5H770QA28
5H770QA31
(57)【要約】
【課題】誤動作をすることがない電力変換モジュールを提供する。
【解決手段】車両駆動装置100に設けられる電力変換モジュールは、互いに並列に接続された複数のレグの夫々に設けられるスイッチング素子が実装された複数のスイッチング基板SSと、スイッチング素子を駆動する制御部4が実装された制御基板4Sと、を備え、複数のスイッチング基板SSの夫々が、車両駆動装置100のハウジング100H内において、互いに同じ高さの位置に設けられている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両駆動装置に設けられる電力変換モジュールであって、
互いに並列に接続された複数のレグの夫々に設けられるスイッチング素子が実装された複数のスイッチング基板と、
前記スイッチング素子を駆動する制御部が実装された制御基板と、を備え、
複数の前記スイッチング基板の夫々が、前記車両駆動装置のハウジング内において、互いに同じ高さの位置に設けられている電力変換モジュール。
【請求項2】
複数の前記スイッチング基板の夫々に沿って、冷却流体が内部に流通する冷却プレートが備えられており、
前記制御基板は、複数の前記スイッチング基板に対して前記冷却プレートと反対側に設けられている請求項1に記載の電力変換モジュール。
【請求項3】
前記スイッチング素子は、車両に搭載されるバッテリからの直流電力によりモータに通電するインバータが有する複数の前記レグの夫々と、外部からの交流電力を直流電力に変換する交直変換部が有する複数の前記レグの夫々と、前記交直変換部にて変換された前記直流電力を、前記バッテリを充電可能な直流電力に変換するコンバータが有する複数の前記レグの夫々とに設けられ、
前記コンバータは、前記交直変換部からの前記直流電力をトランスの一次巻線に入力する第1変換部と、前記トランスの二次巻線からの交流電力を、前記バッテリを充電可能な直流電力に変換する第2変換部とを有し、
複数の前記スイッチング基板は、前記交直変換部及び前記第1変換部が有する前記スイッチング素子が実装される第1基板と、前記第2変換部が有する前記スイッチング素子が実装される第2基板と、前記インバータが有する前記スイッチング素子が実装される第3基板と、を含む請求項1又は2に記載の電力変換モジュール。
【請求項4】
前記スイッチング基板とは異なる、スイッチング素子が実装された他の基板も、前記冷却プレートに対して複数の前記スイッチング基板が設けられている側に設けられている請求項2に記載の電力変換モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両駆動装置に設けられる電力変換モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、走行駆動源としてモータを備えた自動車(ハイブリッド車(HEV:Hybrid Electric Vehicle)、プラグインハイブリッド車(PHEV:Plug-in Hybrid Electric Vehicle)、バッテリ車(BEV:Battery Electric Vehicle)、燃料電池車(FCEV:Fuel Cell Electric Vehicle)等)が普及している。これらの自動車は、モータ等を駆動する車両駆動装置が設けられ、この車両駆動装置には複数の電子部品を有する電力変換モジュールが備えられている。
【0003】
下記に出典を示す特許文献1には、このような電力変換モジュールの一例として電圧変換装置が記載されている。この電圧変換装置は、仕切り部材によって第1空間と第2空間とに区画された筐体と、入力された電力の電圧を変圧して出力する電圧変換回路とを備えている。第1空間には、電圧変換回路のうち、入力された電力の電圧が印加される1次側回路が格納され、第2空間には、電圧変換回路のうち、入力された電力の電圧から変圧された変圧後の電圧が印加される2次側回路が格納されている。1次側回路と2次側回路とは、筐体内において、仕切り部材に設けられた開口部を介して電気的に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の電圧変換装置では、上記のように電圧変換回路の1次側回路と2次側回路とが、夫々、仕切り部材により隔てられた互いに別々の空間(第1空間及び第2空間)に格納されている。1次側回路には、電圧変換回路を構成する力率改善部、インバータ、及びトランスが含まれ、これらは第1空間に格納される。一方、力率改善部及びインバータを制御する第1制御部は第2空間に格納される。これにより、第1制御部と、力率改善部及びインバータの夫々とを接続する信号線が筐体内を引き回して配置されている。このため、第1制御部と力率改善部とを接続する信号線と、第1制御部とインバータとを接続する信号線とが互いに近接し、これら2つの信号線を介して伝送される制御信号同士が互いに影響しあって、力率改善部及びインバータが誤動作する可能性がある。
【0006】
そこで、誤動作をすることがない電力変換モジュールが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る電力変換モジュールの特徴構成は、車両駆動装置に設けられる電力変換モジュールであって、互いに並列に接続された複数のレグの夫々に設けられるスイッチング素子が実装された複数のスイッチング基板と、前記スイッチング素子を駆動する制御部が実装された制御基板と、を備え、複数の前記スイッチング基板の夫々が、前記車両駆動装置のハウジング内において、互いに同じ高さの位置に設けられている点にある。
【0008】
このような特徴構成とすれば、複数のスイッチング基板の夫々が、車両駆動装置のハウジング内において、互いに同じ高さの位置に設けられているので、制御基板からの配線の引き回しを簡便に行うことができる。これにより、複数のスイッチング基板の夫々に接続される配線を互いに離間して設けることができるので、夫々の配線を介して伝送される信号同士の影響を低減することが可能となる。したがって、電力変換モジュールの誤動作を無くす(防止する)または低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】電力変換モジュールを含む冷却回路を示す図である。
【
図2】電力変換モジュールの回路構成を示す図である。
【
図4】電力変換モジュールが備える基板の配置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る電力変換モジュールは、車両駆動装置に設けられる。以下、本実施形態の電力変換モジュール1について説明する。ただし、電力変換モジュール1は、以下の実施形態に限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。
【0011】
図1には、電力変換モジュール1を含む冷却回路Aが示される。冷却回路Aは、冷却流体により、電力変換モジュール1を冷却する。冷却流体とは、ロングライフクーラント(LLC)等の冷却水、パラフィン系等の絶縁油、又はハイドロフルオロカーボン(HFC)やハイドロフルオロオレフィン(HFO)等の冷媒である。本実施形態では、ロングライフクーラント(LLC)等の冷却水やフッ素系不活性液体等の電気絶縁性の高い液体を用いることが好ましく、冷却水又は絶縁油で構成される冷却液でもよい。冷却回路Aは、外部からの電力でバッテリB1(
図2参照)を充電する車両に搭載されている。
【0012】
冷却回路Aは、電力変換モジュール1、水冷コンデンサ81、オイルクーラ82、ウォータポンプ83、三方弁84、及びラジエータ85を含んで構成されている。冷却流体は、電力変換モジュール1を流通して加熱される。電力変換モジュール1から流出した冷却流体は、水冷コンデンサ81で冷媒と熱交換されて加熱され、その後オイルクーラ82で潤滑油と熱交換されて更に加熱される。冷却流体は、ウォータポンプ83で圧送され、冷却回路Aは、三方弁84により、冷却流体がラジエータ85に送られる流通状態と、冷却流体がラジエータ85をバイパスする流通状態とに切り替えられる。冷却流体がラジエータ85に送られた場合には、冷却流体はラジエータ85で冷却され、再度電力変換モジュール1に流入する。冷却流体がラジエータ85をバイパスされる場合には、冷却流体は冷却されることなく、加熱された状態で再度電力変換モジュール1に流入する。
【0013】
図2は、電力変換モジュール1の回路図である。
図2に示されるように、電力変換モジュール1は、電源モジュール2とインバータ3と制御部4とを備えている。電源モジュール2は、交直変換部10と、コンバータ20とを備えている。コンバータ20は、第1変換部31と第2変換部41と第3変換部51とトランスTとを備えている。制御部4は、電力変換モジュール1の制御に係る処理を行うために、CPUを中核部材としてハードウェア又はソフトウェア或いはその両方で構築されている。
【0014】
インバータ3は、車両に搭載されるバッテリB1からの直流電力によりモータ(
図1の「走行用モータ」に相当)Mに通電する。インバータ3は、複数のレグ3A,3B,3Cを有する。複数のレグ3A,3B,3Cは、一対の電源ライン3P,3Nに対して、互いに並列に接続される。インバータ3の電源ライン3P,3Nは、夫々、バッテリB1の正極及び負極に接続される。バッテリB1は、車両の動力源となる電力が蓄電されるバッテリである。複数のレグ3A,3B,3Cの夫々は、互いに直列に接続されたハイサイドのスイッチング素子QH及びローサイドのスイッチング素子QLを有する。本実施形態では、スイッチング素子QH及びスイッチング素子QLは、n型MOS-FETが用いられる。スイッチング素子QH及びスイッチング素子QLのソース端子とドレイン端子とに亘ってダイオードDが設けられる。複数のレグ3A,3B,3Cの夫々のスイッチング素子QH及びスイッチング素子QLのノードは、モータMの端子に接続される。モータMは車両走行用のモータであって、ステータコイルSCがデルタ結線されているモータが利用される。しかしながら、モータMはステータコイルがスター結線であってもよい。
【0015】
交直変換部10は、外部からの交流電力を直流電力に変換する。外部とは、電力変換モジュール1の外部であって、車両に搭載されるバッテリB1とは異なる電力源である。また、交流電力とは、電圧値が所定の周期で振幅する交流電圧から構成される電力をいう。具体的には、交流電圧は、商用周波数(例えば50Hzや60Hz)で振幅し、単相三線式で供給される商用電源から取り出した200V(実行値)の交流電圧が相当する。直流電力とは、基準電圧に対して一定の電圧値(リップル電圧は除く)となる直流電圧で構成される電力をいう。交直変換部10は、このような交流電圧で構成される交流電力を、直流電圧で構成される直流電力に変換する。
【0016】
交直変換部10は、複数のレグ10A,10Bを有する。複数のレグ10A,10Bは、一対の電源ライン10P,10Nに対して、互いに並列に接続される。複数のレグ10A,10Bの夫々は、互いに直列に接続されたハイサイドのスイッチング素子QH及びローサイドのスイッチング素子QLを有する。本実施形態では、スイッチング素子QH及びスイッチング素子QLは、n型MOS-FETが用いられる。スイッチング素子QH及びスイッチング素子QLのソース端子とドレイン端子とに亘ってダイオードDが設けられる。複数のレグ10A,10Bの夫々のスイッチング素子QH及びスイッチング素子QLのノードは、リレーRy及びリアクトルコイルL1を介して充電口5に接続される。交直変換部10は、一対の電源ライン10P,10Nに亘ってコンデンサ11が設けられる。コンデンサ11は、交直変換部10により変換された直流電圧を平滑する。
【0017】
コンバータ20は、交直変換部10にて変換された直流電力を、バッテリB1を充電可能な直流電力に変換する。上述したように、コンバータ20は、第1変換部31、第2変換部41、第3変換部51、及びトランスTを有する。本実施形態では、トランスTは一次巻線T1と二次巻線T2と三次巻線T3とを有する、絶縁型のマルチポートトランスが用いられる。
【0018】
第1変換部31は、交直変換部10からの直流電力をトランスTの一次巻線T1に入力する。第1変換部31は、複数のレグ31A,31Bを有する。複数のレグ31A,31Bは、一対の電源ライン31P,31Nに対して、互いに並列に接続される。電源ライン31Pは電源ライン10Pと電気的に接続されており、電源ライン31Nは電源ライン10Nと電気的に接続されている。複数のレグ31A,31Bの夫々は、互いに直列に接続されたハイサイドのスイッチング素子QH及びローサイドのスイッチング素子QLを有する。本実施形態では、スイッチング素子QH及びスイッチング素子QLは、n型MOS-FETが用いられる。スイッチング素子QH及びスイッチング素子QLのソース端子とドレイン端子とに亘ってダイオードDが設けられる。複数のレグ31A,31Bの夫々のスイッチング素子QH及びスイッチング素子QLのノードは、トランスTの一次巻線T1に接続される。
【0019】
二次巻線T2には、一次巻線T1と二次巻線T2との巻数比に応じた電流(交番電流)が流れ、また、一次巻線T1と二次巻線T2との巻数比に応じた電圧(交番電圧)が生じる。二次巻線T2は、リアクトルコイルL2を介して、第2変換部41に接続される。
【0020】
第2変換部41は、トランスTの二次巻線T2からの交流電力を整流し、バッテリB1を充電可能な直流電力に変換する。第2変換部41は、複数のレグ41A,41Bを有する。複数のレグ41A,41Bは、一対の電源ライン41P,41Nに対して、互いに並列に接続される。電源ライン41P,41Nは、夫々、バッテリB1の正極及び負極に接続される。複数のレグ41A,41Bの夫々は、互いに直列に接続されたハイサイドのスイッチング素子QH及びローサイドのスイッチング素子QLを有する。本実施形態では、スイッチング素子QH及びスイッチング素子QLは、n型MOS-FETが用いられる。スイッチング素子QH及びスイッチング素子QLのソース端子とドレイン端子とに亘ってダイオードDが設けられる。複数のレグ41A,41Bの夫々のスイッチング素子QH及びスイッチング素子QLのノードは、トランスTの二次巻線T2に接続される。第2変換部41は、一対の電源ライン41P,41Nに亘ってコンデンサ42が設けられる。コンデンサ42は、コンバータ20により変換された直流電圧を平滑する。コンデンサ42としては、例えばフィルムコンデンサを用いることが可能である。
【0021】
三次巻線T3には、一次巻線T1と三次巻線T3との巻数比に応じた電流(交番電流)が流れ、また、一次巻線T1と三次巻線T3との巻数比に応じた電圧(交番電圧)が生じる。第3変換部51は、三次巻線T3に生じる電圧(交番電圧)を整流し、第2変換部41から出力される直流電圧の電圧値よりも低い電圧値(例えば12V)の直流電圧で構成される直流電力に変換する。
【0022】
本実施形態では、三次巻線T3は、第1三次巻線T31と第2三次巻線T32とを有する。第1三次巻線T31と第2三次巻線T32とは、スイッチング素子Q1及びスイッチング素子Q2を介して接続される。スイッチング素子Q1及びスイッチング素子Q2のソース端子とドレイン端子とに亘ってダイオードDが設けられる。第1三次巻線T31と第2三次巻線T32とが互いに接続されるノードは、リアクトルコイルL3を介してバッテリB2の正極に接続される。また、スイッチング素子Q1とスイッチング素子Q2とが互いに接続されるノードは、バッテリB2の負極に接続される。更に、バッテリB2の正極及び負極に亘ってコンデンサ52が設けられる。このコンデンサ52は、上述したコンデンサ42と共有して、例えばフィルムコンデンサを用いることが可能である。
【0023】
上述したスイッチング素子QH,QL,Q1,Q2は、夫々のゲート端子が制御部4に接続される。したがって、制御部4は、スイッチング素子QH,QL,Q1,Q2を駆動する。
【0024】
ここで、リレーRyは、コンバータ20の変換動作を切り替える。コンバータ20の変換動作とは、コンバータ20により行われる、交流電力を直流電力に変換する動作と、直流電力を交流電力に変換する動作とが相当する。
【0025】
本実施形態では、コンバータ20は、リレーRyにより、交直変換部10からの直流電力を所定の第1電圧値の直流電圧で構成される直流電力に変換する状態であって、電源モジュール2を充電器として使用する状態と、バッテリB1からの直流電力を所定の第2電圧値の直流電圧で構成される直流電力に変換する状態であって、電源モジュール2を交流電力出力器として使用する状態とに切り替える。
【0026】
リレーRyは、
図2に示されるように、0番端子と1番端子とが接続するよう操作されると、充電口5から供給された交流電力が、リアクトルコイルL1を介して、交直変換部10に入力される。また、図示はしないが、リレーRyは、0番端子と3番端子とが接続するよう操作されると、バッテリB1からの直流電力に基づき生成した交流電力(例えば実効値が100Vの電圧値からなる交流電力)を、リアクトルコイルL1を介して、コンセント6から取り出すことが可能となる。
【0027】
したがって、電力変換モジュール1に対して、バッテリB1を充電する充電要求があった場合に、リレーRyは、電源モジュール2を充電器として使用する状態に切り替え、交直変換部10から第2電圧値の直流電圧で構成される直流電力を出力する出力要求があった場合に、リレーRyは、電源モジュール2を交流電力出力器として使用する状態に切り替える。すなわち、リレーRyは、0番端子と1番端子とが接続するよう操作された場合はコンバータ20を交直変換部10からの直流電力を所定の第1電圧値の直流電圧で構成される直流電力に変換する状態に切り替え、0番端子と3番端子とが接続するよう操作された場合はバッテリB1からの直流電力を所定の第2電圧値の直流電圧で構成される直流電力に変換する状態に切り替える。
【0028】
図3は、車両駆動装置100の縦断面図である。
図4は、電力変換モジュール1が備えるスイッチング基板SSの配置を示す図である。
【0029】
上述した複数のレグ3A,3B,3C,10A,10B,31A,31B,41A,41Bの夫々に設けられるスイッチング素子QH,QL,Q1,Q2は、複数のスイッチング基板SSに実装される。本実施形態では、複数のスイッチング基板SSには、第1基板SS1と、第2基板SS2と、第3基板SS3とが含まれる。
【0030】
第1基板SS1は、交直変換部10及び第1変換部31が有するスイッチング素子が実装される。交直変換部10が有するスイッチング素子とは、レグ10Aに設けられるスイッチング素子QH,QLと、レグ10Bに設けられるスイッチング素子QH,QLとが相当する。また、第1変換部31が有するスイッチング素子とは、レグ31Aに設けられるスイッチング素子QH,QLと、レグ31Bに設けられるスイッチング素子QH,QLとが相当する。したがって、第1基板SS1には、レグ10Aに設けられるスイッチング素子QH,QLと、レグ10Bに設けられるスイッチング素子QH,QLと、レグ31Aに設けられるスイッチング素子QH,QLと、レグ31Bに設けられるスイッチング素子QH,QLとが実装される。なお、第1基板SS1には、スイッチング素子QH,QLの夫々のソース端子とドレイン端子とに亘って設けられるダイオードD、及びコンデンサ11も実装される。
【0031】
第2基板SS2は、第2変換部41が有するスイッチング素子が実装される。第2変換部41が有するスイッチング素子とは、レグ41Aに設けられるスイッチング素子QH,QLと、レグ41Bに設けられるスイッチング素子QH,QLとが相当する。したがって、第2基板SS2には、レグ41Aに設けられるスイッチング素子QH,QLと、レグ41Bに設けられるスイッチング素子QH,QLとが実装される。なお、第2基板SS2には、スイッチング素子QH,QLの夫々のソース端子とドレイン端子とに亘って設けられるダイオードDも実装される。
【0032】
第3基板SS3は、インバータ3が有するスイッチング素子が実装される。インバータ3が有するスイッチング素子とは、レグ3Aに設けられるスイッチング素子QH,QLと、レグ3Bに設けられるスイッチング素子QH,QLと、レグ3Cに設けられるスイッチング素子QH,QLとが相当する。したがって、第3基板SS3には、レグ3Aに設けられるスイッチング素子QH,QLと、レグ3Bに設けられるスイッチング素子QH,QLと、レグ3Cに設けられるスイッチング素子QH,QLとが実装される。なお、第3基板SS3には、スイッチング素子QH,QLの夫々のソース端子とドレイン端子とに亘って設けられるダイオードDも実装される。
【0033】
制御基板4Sは、制御部4が実装される。制御部4は、制御信号に基づいて、スイッチング素子QH,QL,Q1,Q2の夫々を駆動する。したがって、制御基板4Sは、第1基板SS1、第2基板SS2、及び第3基板SS3の夫々と、制御信号を伝送する制御線を介して接続される。
【0034】
第1基板SS1、第2基板SS2、第3基板SS3、及び制御基板4Sは、車両駆動装置100のハウジング100Hに収容される。車両駆動装置100は、第1空間111を有している。第1基板SS1、第2基板SS2、及び第3基板SS3は、互いに平行な姿勢で第1空間111に収容されている。以下、第1基板SS1の板面に垂直な方向を「垂直方向」と称する。また、
図3における、垂直方向に沿う第1基板SS1、第2基板SS2、及び第3基板SS3から制御基板4Sを見た方向を「上方向」、「上側」等と称し、制御基板4Sから第1基板SS1、第2基板SS2、及び第3基板SS3を見た方向を「下方向」、「下側」等と称する。
【0035】
ハウジング100Hは、第1空間111と区画された第2空間112及び第3空間113を有している。第1空間111に対して、第2空間112と第3空間113は下側に位置している。第2空間112にはインバータ3により駆動されるモータMが収容され、第3空間113にはモータMの回転を減速して出力するギア機構87が収容されている。ハウジング100Hは、第1空間111の上側に開口Haを有しており、第1基板SS1、第2基板SS2、第3基板SS3、制御基板4S、及び冷却プレート60(後述する)が、開口Haから第1空間111内に収容される。
【0036】
開口Haは蓋114により閉じられており、第1空間111は閉空間になっている。第2空間112は、側方からモータMが収容され、ボルト115Aで締結されたモータカバー115で閉じられて閉空間になっている。モータMからは回転軸に沿って両側にモータシャフトMaが延出しており、一方のモータシャフトMaはモータカバー115を貫通してハウジング100Hの外部に露出している。他方のモータシャフトMaは、第3空間113にまで貫通している。第3空間113は、側方からギア機構87が収容され、ボルト116Aで締結されたギアカバー116で閉じられて閉空間になっている。ギア機構87には、第2空間112から延出した他方のモータシャフトMaが連結され、モータMの回転がモータシャフトMaを介して入力される。ギア機構87は、モータMの回転を減速させてギアシャフト87aから出力する。ギアシャフト87aは、ギアカバー116を貫通してハウジング100Hの外部に露出している。
【0037】
図3に示されるように、複数のスイッチング基板SSの夫々は、車両駆動装置100のハウジング100H内において、互いに同じ高さの位置に設けられている。複数のスイッチング基板SSとは、本実施形態では、第1基板SS1、第2基板SS2、及び第3基板SS3である。これらのスイッチング基板SS(第1基板SS1、第2基板SS2、及び第3基板SS3)は、車両駆動装置100のハウジング100H内に設けられる。互いに同じ高さの位置とは、車両駆動装置100が車両に搭載された状態での高さであって、垂直方向における互いに同じ高さの位置を意味する。したがって、第1基板SS1、第2基板SS2、及び第3基板SS3は、垂直方向における互いに同じ高さの位置に設けられる。また、本実施形態では、
図4に示されるように、第1基板SS1、第2基板SS2、及び第3基板SS3は、車両の幅方向に沿って並んで設けられる。
【0038】
図3に示されるように、制御基板4Sは、縦断面がC字状に形成された金属製の支持体61における上側の面において支持される。支持体61は、冷却プレート60にボルト61Aにより固定される。第1基板SS1、第2基板SS2、及び第3基板SS3は、支持体61の下方に配置されている。制御基板4Sは、垂直方向に沿って見たときに(垂直方向視)、第2基板SS2及び第3基板SS3と重複するように配置されている。第2基板SS2と制御基板4Sとの接続、及び第3基板SS3と制御基板4Sとの接続には、ハーネス142が用いられている。これにより、第2基板SS2と第3基板SS3とに対する制御基板4Sの組付けが容易になる。
【0039】
なお、第1基板SS1と制御基板4Sとの接続には、ハーネス143が用いられている。また、第1基板SS1と第2基板SS2とは、図示しないハーネスにより接続される。
【0040】
上述したように、第1基板SS1にはコンデンサ11が実装されている。また、冷却プレート60の上側には、コンデンサ42とバッテリB1の正極及び負極と接続される接続端子(図示せず)が取り付けられる。
【0041】
また、冷却プレート60には、貫通孔60Hが形成されており、この貫通孔60Hに挿通された導線77を介して、リアクトルコイルL1と第1基板SS1とが接続され、トランスTと第2基板SS2とが接続される。
【0042】
本実施形態では、複数のスイッチング基板SSの夫々に沿って、冷却流体が内部に流通する冷却プレート60が備えられている。上述したように、第1基板SS1、第2基板SS2、及び第3基板SS3は、車両の幅方向に沿って並んで設けられている。冷却プレート60は板状に形成されており、これらのスイッチング基板SS(第1基板SS1、第2基板SS2、及び第3基板SS3)に平行な状態で、近接して設けられる。本実施形態では、冷却プレート60の上方に、これらのスイッチング基板SSが設けられる。これにより、複数のスイッチング基板SSの夫々に実装されるスイッチング素子を、冷却流体で冷却することが可能となる。
【0043】
本実施形態では、スイッチング基板SSとは異なる、スイッチング素子が実装された他の基板も、冷却プレート60に対して複数のスイッチング基板SSが設けられている側に設けられている。スイッチング基板SSとは異なる、スイッチング素子が実装された他の基板とは、第1基板SS1、第2基板SS2、及び第3基板SS3とは異なる、スイッチング素子Q1,Q2が実装された第4基板SS4である。冷却プレート60に対して複数のスイッチング基板SSが設けられている側とは、本実施形態では、冷却プレート60よりも上方である。したがって、第4基板SS4は、第1基板SS1、第2基板SS2、及び第3基板SS3と同様に、冷却プレート60よりも上方に設けられる。なお、第4基板SS4には、スイッチング素子Q1,Q2の夫々のソース端子とドレイン端子とに亘って設けられるダイオードDも実装される。
【0044】
〔その他の実施形態〕
次に、電力変換モジュール1のその他の実施形態について説明する。
【0045】
上記実施形態では、電力変換モジュール1が、複数のスイッチング基板SSの夫々に沿って、冷却流体が内部に流通する冷却プレート60を備えているとして説明した。しかしながら、電力変換モジュール1は、冷却プレート60を備えずに構成することも可能である。
【0046】
上記実施形態では、制御基板4Sは、複数のスイッチング基板SSに対して冷却プレート60と反対側に設けられているとして説明した。しかしながら、制御基板4Sは、複数のスイッチング基板SSの夫々と同じ高さの位置に設けられていてもよい。また、制御基板4Sは、複数のスイッチング基板SSよりも、冷却プレート60側に設けてもよい。
【0047】
上記実施形態では、スイッチング素子は、インバータ3が有する複数のレグ3A,3B,3Cの夫々と、交直変換部10が有する複数のレグ10A,10Bの夫々と、コンバータ20が有する複数のレグ31A,31B,41A,41Bの夫々とに設けられるとして説明した。しかしながら、スイッチング素子は、インバータ3が有する複数のレグ3A,3B,3Cと、交直変換部10が有する複数のレグ10A,10Bと、コンバータ20が有する複数のレグ31A,31B,41A,41Bとのうちの少なくともいずれか一つに設けられるように構成することも可能である。
【0048】
上記実施形態では、コンバータ20は、第1変換部31と、第2変換部41と、第3変換部51とを有するとして説明した。しかしながら、コンバータ20は、第1変換部31のみを設けて構成することも可能である。
【0049】
上記実施形態では、スイッチング基板SSとは異なる第4基板SS4が、冷却プレート60に対して複数のスイッチング基板SSが設けられている側に設けられているとして説明した。しかしながら、スイッチング基板SSとは異なる第4基板SS4が、冷却プレート60に対して複数のスイッチング基板SSが設けられている側とは反対側に設けるように構成することも可能である。なお、冷却プレート60はその内部に流体を流通させるものとして説明したが、流体を流さずに構成することも可能である。
【0050】
〔上記実施形態の概要〕
以下、上記において説明した電力変換モジュール1の概要について説明する。
【0051】
(1)車両駆動装置100に設けられる電力変換モジュール1は、互いに並列に接続された複数のレグの夫々に設けられるスイッチング素子QH,QLが実装された複数のスイッチング基板SSと、スイッチング素子QH,QLを駆動する制御部4が実装された制御基板4Sと、を備え、複数のスイッチング基板SSの夫々が、車両駆動装置100のハウジング100H内において、互いに同じ高さの位置に設けられている。
【0052】
本構成によれば、複数のスイッチング基板SSの夫々が、車両駆動装置100のハウジング100H内において、互いに同じ高さの位置に設けられているので、制御基板4Sからの配線の引き回しを簡便に行うことができる。これにより、複数のスイッチング基板SSの夫々に接続される配線を互いに離間して設けることができるので、夫々の配線を介して伝送される信号同士の影響を低減することが可能となる。したがって、電力変換モジュール1の誤動作を無くす(防止する)または低減することが可能となる。
【0053】
(2)(1)に記載の電力変換モジュール1は、複数のスイッチング基板SSの夫々に沿って、冷却流体が内部に流通する冷却プレート60が備えられており、制御基板4Sは、複数のスイッチング基板SSに対して冷却プレート60と反対側に設けられていると好適である。
【0054】
本構成によれば、複数のスイッチング基板SSの夫々を冷却プレート60を流通する冷却流体により冷却することが可能となる。また、制御基板4Sと複数のスイッチング基板SSの夫々との間の配線を短くできる。したがって、当該配線の引き回しを簡便に行うことができ、また当該配線により伝送される信号の耐ノイズ性を向上することが可能となる。
【0055】
(3)(1)又は(2)に記載の電力変換モジュール1は、スイッチング素子が、車両に搭載されるバッテリB1からの直流電力によりモータMに通電するインバータ3が有する複数のレグ3A,3B,3Cの夫々と、外部からの交流電力を直流電力に変換する交直変換部10が有する複数のレグ10A,10Bの夫々と、交直変換部10にて変換された直流電力を、バッテリB1を充電可能な直流電力に変換するコンバータ20が有する複数のレグ31A,31B,41A,41Bの夫々とに設けられ、コンバータ20は、交直変換部10からの直流電力をトランスTの一次巻線T1に入力する第1変換部31と、トランスTの二次巻線T2からの交流電力を、バッテリB1を充電可能な直流電力に変換する第2変換部41とを有し、複数のスイッチング基板SSは、交直変換部10及び第1変換部31が有するスイッチング素子QH,QLが実装される第1基板SS1と、第2変換部41が有するスイッチング素子QH,QLが実装される第2基板SS2と、インバータ3が有するスイッチング素子QH,QLが実装される第3基板SS3と、を含むと好適である。
【0056】
本構成の電力変換モジュール1には、交直変換部10、コンバータ20の第1変換部31、第2変換部41、及びインバータ3の夫々が有する、互いに並列に接続された複数のレグの夫々に、複数のスイッチング素子が設けられる。したがって、交直変換部10、コンバータ20の第1変換部31、第2変換部41、及びインバータ3の夫々に実装されるスイッチング素子の誤動作を防止するまたは低減することが可能となる。
【0057】
(4)(2)に記載の電力変換モジュール1は、スイッチング基板SSとは異なる、スイッチング素子Q1,Q2が実装された他の第4基板SS4も、冷却プレート60に対して複数のスイッチング基板SSが設けられている側に設けられていると好適である。
【0058】
本構成によれば、複数のスイッチング基板SSだけでなく、制御基板4Sと他の第4基板SS4との間の配線も短くできる。したがって、当該配線の引き回しを簡便に行うことができ、また当該配線により伝送される信号の耐ノイズ性を向上することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本開示に係る技術は、車両駆動装置に設けられる電力変換モジュールに利用することができる。
【符号の説明】
【0060】
1:電力変換モジュール、3:インバータ、3A:レグ、3B:レグ、3C:レグ、4:制御部、4S:制御基板、10:交直変換部、10A:レグ、10B:レグ、20:コンバータ、31:第1変換部、31A:レグ、31B:レグ、41:第2変換部、41A:レグ、41B:レグ、60:冷却プレート、100:車両駆動装置、100H:ハウジング、B1:バッテリ、M:モータ、QH:スイッチング素子、QL:スイッチング素子、SS:スイッチング基板、SS1:第1基板、SS2:第2基板、SS3:第3基板、T:トランス、T1:一次巻線、T2:二次巻線