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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170924
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】電力変換モジュール
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20241204BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087693
(22)【出願日】2023-05-29
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 宣幸
(72)【発明者】
【氏名】六浦 圭太
【テーマコード(参考)】
5H770
【Fターム(参考)】
5H770AA05
5H770BA02
5H770CA01
5H770CA02
5H770CA06
5H770JA17W
5H770PA12
5H770PA22
5H770PA42
5H770QA01
5H770QA02
5H770QA06
5H770QA22
5H770QA25
5H770QA28
5H770QA31
(57)【要約】
【課題】ノイズを抑制し、誤動作が生じる可能性を低減した電力変換モジュールを提供する。
【解決手段】車両駆動装置に設けられる電力変換モジュールは、スイッチング素子が実装された複数のスイッチング基板と、スイッチング素子を駆動する制御部4が実装された単一の制御基板4Sと、を備え、夫々のスイッチング基板は、スイッチング素子を含む回路に応じて設けられており、制御部4は、夫々の回路の属性に対応して区分けされた状態で、制御基板4Sにおいて電気的に分離して配置されている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両駆動装置に設けられる電力変換モジュールであって、
スイッチング素子が実装された複数のスイッチング基板と、
前記スイッチング素子を駆動する制御部が実装された単一の制御基板と、を備え、
夫々の前記スイッチング基板は、前記スイッチング素子を含む回路に応じて設けられており、
前記制御部は、夫々の前記回路の属性に対応して区分けされた状態で、前記制御基板において電気的に分離して配置されている電力変換モジュール。
【請求項2】
前記属性は、前記スイッチング素子のスイッチング周波数、及び、前記スイッチング基板における電力のうちの少なくともいずれか一方に基づいて設定されている請求項1に記載の電力変換モジュール。
【請求項3】
前記制御部は、前記スイッチング基板に対応して区分けされた区分毎に給電され、
前記制御基板は、前記区分毎にフィルタが設けられている請求項1又は2に記載の電力変換モジュール。
【請求項4】
前記回路は、車両に搭載されるバッテリからの直流電力によりモータに通電するインバータと、外部からの交流電力を直流電力に変換する交直変換部と、前記交直変換部にて変換された前記直流電力を、前記バッテリを充電可能な直流電力に変換するコンバータとを含み、
複数の前記スイッチング基板は、前記インバータが有する前記スイッチング素子が実装された第1基板と、前記交直変換部が有する前記スイッチング素子及び前記コンバータが有する前記スイッチング素子が実装された第2基板とを含む請求項1又は2に記載の電力変換モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両駆動装置に設けられる電力変換モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、走行駆動源としてモータを備えた自動車(ハイブリッド車(HEV:Hybrid Electric Vehicle)、プラグインハイブリッド車(PHEV:Plug-in Hybrid Electric Vehicle)、バッテリ車(BEV:Battery Electric Vehicle)、燃料電池車(FCEV:Fuel Cell Electric Vehicle)等)が普及している。これらの自動車は、モータ等を駆動する車両駆動装置が設けられ、この車両駆動装置には複数の電子部品を有する電力変換モジュールが備えられている。
【0003】
下記に出典を示す特許文献1には、このような電力変換モジュールに関する技術として蓄電システムが記載されている。この蓄電システムは、複数の蓄電モジュールを備えている。複数の蓄電モジュールは充電器で充電可能に構成されており、充電は制御回路により制御される。制御回路は、直流の供給電力に基づいて蓄電モジュールを充電する直流充電器や、交流の供給電力に基づいて蓄電モジュールを充電する交流充電器を制御すると共に、蓄電モジュールからの電力に基づいてモータを駆動するインバータを制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-80474号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の蓄電システムでは、直流充電器や交流充電器、インバータを制御する制御回路は、基板上でどのように構成されているか記載されておらず、仮に、これら複数の制御回路を単一の基板に配置すると、高い周波数で駆動され、低電流出力を行う直流充電器及び交流充電器の制御回路と、大電流を出力し、モータを駆動する制御回路とが混在することになる。これにより、互いにノイズの影響が懸念され、ノイズ対策が複雑となる可能性がある。また、フローティング電圧が大きくなった場合に、誤動作する可能性もある。
【0006】
そこで、ノイズを抑制し、誤動作が生じる可能性を低減した電力変換モジュールが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る電力変換モジュールの特徴構成は、車両駆動装置に設けられる電力変換モジュールであって、スイッチング素子が実装された複数のスイッチング基板と、前記スイッチング素子を駆動する制御部が実装された単一の制御基板と、を備え、夫々の前記スイッチング基板は、前記スイッチング素子を含む回路に応じて設けられており、前記制御部は、夫々の前記回路の属性に対応して区分けされた状態で、前記制御基板において電気的に分離して配置されている点にある。
【0008】
このような特徴構成とすれば、スイッチング素子を含む回路の属性に対応して区分けされた制御部が、制御基板において、当該区分けされた状態で、互いに分離して配置されるので、区分けされた制御部の夫々において生じるノイズが他に伝達されることを防止できる。したがって、ノイズの影響を低減することが可能となる。また、区分けされた制御部の夫々が、制御基板において電気的に分離されているので、区分けされた制御部の夫々が動作時のフローティング電圧を抑制することができる。したがって、電力変換モジュールの誤動作を無くす(防止する)または低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】電力変換モジュールを含む冷却回路を示す図である。
図2】電力変換モジュールの構成を示すブロック図である。
図3】車両駆動装置の縦断面図である。
図4】制御基板における制御部の配置を示す図である。
図5】その他の実施形態の制御基板における制御部の配置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る電力変換モジュールは、車両駆動装置に設けられる。以下、本実施形態の電力変換モジュール1について説明する。ただし、電力変換モジュール1は、以下の実施形態に限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。
【0011】
図1には、電力変換モジュール1を含む冷却回路Aが示される。冷却回路Aは、冷却流体により、電力変換モジュール1を冷却する。冷却流体とは、ロングライフクーラント(LLC)等の冷却水、パラフィン系等の絶縁油、又はハイドロフルオロカーボン(HFC)やハイドロフルオロオレフィン(HFO)等の冷媒である。本実施形態では、ロングライフクーラント(LLC)等の冷却水やフッ素系不活性液体等の電気絶縁性の高い液体を用いることが好ましく、絶縁油で構成される冷却液でもよい。冷却回路Aは、外部からの電力でバッテリB1(図2参照)を充電する車両に搭載されている。
【0012】
冷却回路Aは、電力変換モジュール1、水冷コンデンサ81、オイルクーラ82、ウォータポンプ83、三方弁84、及びラジエータ85を含んで構成されている。冷却流体は、電力変換モジュール1を流通して加熱される。電力変換モジュール1から流出した冷却流体は、水冷コンデンサ81で冷媒と熱交換されて加熱され、その後オイルクーラ82で潤滑油と熱交換されて更に加熱される。冷却流体は、ウォータポンプ83で圧送され、冷却回路Aは、三方弁84により、冷却流体がラジエータ85に送られる流通状態と、冷却流体がラジエータ85をバイパスする流通状態とに切り替えられる。冷却流体がラジエータ85に送られた場合には、冷却流体はラジエータ85で冷却され、再度電力変換モジュール1に流入する。冷却流体がラジエータ85をバイパスされる場合には、冷却流体は冷却されることなく、加熱された状態で再度電力変換モジュール1に流入する。
【0013】
図2は、電力変換モジュール1の構成を示すブロック図である。図2に示されるように、電力変換モジュール1は、電源モジュール2とインバータ3と制御部4とを備えている。電源モジュール2は、交直変換部10と、コンバータ20とを備えている。コンバータ20は、第1変換部31と第2変換部41と第3変換部51とトランスTとを備えている。制御部4は、電力変換モジュール1の制御に係る処理を行うために、CPUを中核部材としてハードウェア又はソフトウェア或いはその両方で構築されている。
【0014】
インバータ3は、車両に搭載されるバッテリB1からの直流電力によりモータ(図1の「走行用モータ」に相当)Mに通電する。バッテリB1は、車両の動力源となる電力が蓄電されるバッテリである。インバータ3は互いに並列に接続された複数のレグを有し、複数のレグの夫々は互いに直列に接続されたハイサイドのスイッチング素子及びローサイドのスイッチング素子を有する。これらのスイッチング素子は、例えばn型MOS-FETを用いて構成することが可能である。
【0015】
交直変換部10は、外部からの交流電力を直流電力に変換する。外部とは、電力変換モジュール1の外部であって、車両に搭載されるバッテリB1とは異なる電力源である。また、交流電力とは、電圧値が所定の周期で振幅する交流電圧から構成される電力をいう。具体的には、交流電圧は、商用周波数(例えば50Hzや60Hz)で振幅し、単相三線式で供給される商用電源から取り出した200V(実行値)の交流電圧が相当する。直流電力とは、基準電圧に対して一定の電圧値(リップル電圧は除く)となる直流電圧で構成される電力をいう。交直変換部10は、このような交流電圧で構成される交流電力を、直流電圧で構成される直流電力に変換する。
【0016】
交直変換部10は互いに並列に接続された複数のレグを有し、複数のレグの夫々は互いに直列に接続されたハイサイドのスイッチング素子及びローサイドのスイッチング素子を有する。これらのスイッチング素子も、例えばn型MOS-FETを用いて構成することが可能である。交直変換部10は、リレーRyを介して充電口5に接続される。
【0017】
コンバータ20は、交直変換部10にて変換された直流電力を、バッテリB1を充電可能な直流電力に変換する。上述したように、コンバータ20は、第1変換部31、第2変換部41、第3変換部51、及びトランスTを有する。本実施形態では、トランスTは一次巻線と二次巻線と三次巻線とを有する、絶縁型のマルチポートトランスが用いられる。
【0018】
第1変換部31は、交直変換部10からの直流電力をトランスTの一次巻線に入力する。第1変換部31は互いに並列に接続された複数のレグを有し、複数のレグの夫々は互いに直列に接続されたハイサイドのスイッチング素子及びローサイドのスイッチング素子を有する。これらのスイッチング素子も、n型MOS-FETを用いて構成することが可能である。
【0019】
二次巻線には、一次巻線と二次巻線との巻数比に応じた電流(交番電流)が流れ、また、一次巻線と二次巻線との巻数比に応じた電圧(交番電圧)が生じる。二次巻線は第2変換部41に接続される。
【0020】
第2変換部41は、トランスTの二次巻線からの交流電力を整流し、バッテリB1を充電可能な直流電力に変換する。第2変換部41は互いに並列に接続された複数のレグを有し、複数のレグの夫々は互いに直列に接続されたハイサイドのスイッチング素子及びローサイドのスイッチング素子を有する。これらのスイッチング素子も、n型MOS-FETを用いて構成することが可能である。
【0021】
三次巻線には、一次巻線と三次巻線との巻数比に応じた電流(交番電流)が流れ、また、一次巻線と三次巻線との巻数比に応じた電圧(交番電圧)が生じる。第3変換部51は、三次巻線に生じる電圧(交番電圧)を整流し、第2変換部41から出力される直流電圧の電圧値よりも低い電圧値(例えば12V)の直流電圧で構成される直流電力に変換する。
【0022】
第3変換部51は、トランスTの三次巻線からの交流電力を整流し、バッテリB2を充電可能な直流電力に変換する。第3変換部51は、例えば2つのスイッチング素子を用いて同期整流により直流電力に変換するように構成することが可能である。この場合、これらのスイッチング素子もn型MOS-FETを用いることが可能である。
【0023】
インバータ3、交直変換部10、及びコンバータ20が有するスイッチング素子の夫々のゲート端子は、制御部4に接続される。制御部4は、夫々のスイッチング素子に対して制御信号を伝達し、スイッチング素子を駆動する。
【0024】
図2図4に示されるように、制御部4は、夫々の回路の属性に応じて設けられたスイッチング基板SSに対応して区分けされている。回路とはスイッチング素子を含んで構成された電気回路であって、本実施形態では、上述したインバータ3、交直変換部10、及びコンバータ20を構成する電気回路が含まれる。回路の属性とは、回路の種類(例えば用途や機能)や、回路の特性(例えば入出力特性)にあたる。夫々のスイッチング基板SSは、インバータ3、交直変換部10、コンバータ20に応じて設けられており、制御部4は、インバータ3を駆動するインバータ用制御部4A、交直変換部10及びコンバータ20を含む電源モジュール2を駆動する電源モジュール用制御部4Bに区分けされている。
【0025】
ここで、リレーRyは、コンバータ20の変換動作を切り替える。コンバータ20の変換動作とは、コンバータ20により行われる、交流電力を直流電力に変換する動作と、直流電力を交流電力に変換する動作とが相当する。
【0026】
本実施形態では、コンバータ20は、リレーRyにより、交直変換部10からの直流電力を所定の第1電圧値の直流電圧で構成される直流電力に変換する状態であって、電源モジュール2を充電器として使用する状態と、バッテリB1からの直流電力を所定の第2電圧値の直流電圧で構成される直流電力に変換する状態であって、電源モジュール2を交流電力出力器として使用する状態とに切り替える。
【0027】
リレーRyは、充電口5から供給された交流電力が交直変換部10に入力される状態と、バッテリB1からの直流電力に基づき生成した交流電力(例えば実効値が100Vの電圧値からなる交流電力)をコンセント6から取り出すことが可能な状態とに切り替える。
【0028】
図3は、車両駆動装置100の縦断面図である。
【0029】
上述したスイッチング素子は、複数のスイッチング基板SSに実装される。本実施形態では、複数のスイッチング基板SSには、第1基板SS1と、第2基板SS2とが含まれる。夫々のスイッチング基板SSは、スイッチング素子を含む回路に応じて設けられる。スイッチング素子を含む回路とは、本実施形態では、インバータ3、交直変換部10、及びコンバータ20の夫々を構成する電気回路である。なお、本実施形態では、第2基板SS2は、3枚の基板を含んで構成される。
【0030】
第1基板SS1には、インバータ3が有するスイッチング素子が実装される。この第1基板SS1には、当該第1基板SS1に実装されるスイッチング素子の夫々のソース端子とドレイン端子とに亘って設けられるダイオードも実装される。
【0031】
第2基板SS2には、交直変換部10及びコンバータ20が有するスイッチング素子が実装される。この第2基板SS2には、当該第2基板SS2に実装されるスイッチング素子の夫々のソース端子とドレイン端子とに亘って設けられるダイオード、及びコンデンサ11も実装される。
【0032】
制御部4は、制御基板4Sに実装される。制御部4は、上述したように、制御信号に基づいて、スイッチング素子の夫々を駆動する。したがって、制御基板4Sは、第1基板SS1、及び第2基板SS2の夫々と、制御信号を伝送する制御線142,143を介して接続される。
【0033】
第1基板SS1、第2基板SS2、及び制御基板4Sは、車両駆動装置100のハウジング100Hに収容される。車両駆動装置100は、第1空間111を有している。第1基板SS1、及び3枚の第2基板SS2は、互いに平行な姿勢で第1空間111に収容されている。以下、第1基板SS1の板面に垂直な方向を「垂直方向」と称する。また、図3における、垂直方向に沿う第1基板SS1、及び第2基板SS2から制御基板4Sを見た方向を「上方向」、「上側」等と称し、制御基板4Sから第1基板SS1、及び第2基板SS2を見た方向を「下方向」、「下側」等と称する。
【0034】
ハウジング100Hは、第1空間111と区画された第2空間112及び第3空間113を有している。第1空間111に対して、第2空間112と第3空間113は下側に位置している。第2空間112にはインバータ3により駆動されるモータMが収容され、第3空間113にはモータMの回転を減速して出力するギア機構87が収容されている。ハウジング100Hは、第1空間111の上側に開口Haを有しており、第1基板SS1、第2基板SS2、制御基板4S、及び冷却プレート60(後述する)が、開口Haから第1空間111内に収容される。
【0035】
開口Haは蓋114により閉じられており、第1空間111は閉空間になっている。第2空間112は、側方からモータMが収容され、ボルト115Aで締結されたモータカバー115で閉じられて閉空間になっている。モータMからは回転軸に沿って両側にモータシャフトMaが延出しており、一方のモータシャフトMaはモータカバー115を貫通してハウジング100Hの外部に露出している。他方のモータシャフトMaは、第3空間113にまで貫通している。第3空間113は、側方からギア機構87が収容され、ボルト116Aで締結されたギアカバー116で閉じられて閉空間になっている。ギア機構87には、第2空間112から延出した他方のモータシャフトMaが連結され、モータMの回転がモータシャフトMaを介して入力される。ギア機構87は、モータMの回転を減速させてギアシャフト87aから出力する。ギアシャフト87aは、ギアカバー116を貫通してハウジング100Hの外部に露出している。
【0036】
図3に示されるように、第1基板SS1、及び第2基板SS2の夫々は、車両駆動装置100のハウジング100H内において、垂直方向における互いに同じ高さの位置であって、車両の幅方向に沿って並んで設けられる。
【0037】
制御基板4Sは、縦断面がC字状に形成された金属製の支持体61における上側の面において支持される。支持体61は、冷却プレート60にボルト61Aにより固定される。第1基板SS1、及び第2基板SS2は、支持体61の下方に配置されている。制御基板4Sは、垂直方向に沿って見たときに(垂直方向視)、第1基板SS1と重複するように配置されている。
【0038】
上述したように、第2基板SS2にはコンデンサ11が実装されている。また、冷却プレート60の上側には、コンデンサ42とバッテリB1の正極及び負極と接続される接続端子(図示せず)が取り付けられる。
【0039】
また、冷却プレート60には、貫通孔60Hが形成されており、この貫通孔60Hに挿通された導線77を介して、リアクトルコイルL1と第2基板SS2とが接続され、トランスTと第2基板SS2とが接続される。
【0040】
図3に示されるように、車両駆動装置100のハウジング100H内には、冷却流体が内部に流通する冷却プレート60が備えられている。冷却プレート60は板状に形成されており、第1基板SS1、及び第2基板SS2は、冷却プレート60に平行な状態で、近接して設けられる。本実施形態では、冷却プレート60の上方に、これらの基板が設けられる。これにより、第1基板SS1、及び第2基板SS2の夫々に実装されるスイッチング素子を、冷却流体により冷却することが可能となる。
【0041】
本実施形態では、第1基板SS1、及び第2基板SS2は冷却プレート60を挟んでトランスTと反対側に設けられている。すなわち、トランスTは、冷却プレート60の下方に設けられる。
【0042】
制御部4は、単一の制御基板4Sに実装されている。制御部4は、インバータ3が有するスイッチング素子を駆動するインバータ用制御部4Aと、交直変換部10及びコンバータ20を含む電源モジュール2が有するスイッチング素子を駆動する電源モジュール用制御部4Bとに区分けされている。本実施形態では、図4に示されるように、制御部4は、制御基板4Sにおいて区分けられた毎に、すなわち、インバータ用制御部4A、及び電源モジュール用制御部4B毎に、電気的に分離して配置されている。電気的に分離されているとは、互いに導体で接続されない状態で配置されていることをいう。具体的には、インバータ用制御部4A、及び電源モジュール用制御部4Bは、互いに電源線や接地線や信号線で接続されていないことを意味する。したがって、インバータ用制御部4A、及び電源モジュール用制御部4Bの周囲が、制御基板4Sの内層を含んで、制御基板4Sにおける導体部分がくり抜かれた状態とされる。図4の例では、インバータ用制御部4A、及び電源モジュール用制御部4Bの周囲に、制御基板4Sの導体部分がくり抜かれた抜き部50が設けられている。
【0043】
制御部4は、制御基板4Sにおいてスイッチング基板SSに対応して区分けされた区分毎に給電される。本実施形態では、制御部4は、インバータ用制御部4A、及び電源モジュール用制御部4Bに区分けされており、これらはバッテリB2から給電される。スイッチング基板SSに対応して区分けされた区分毎に給電されるとは、図4に示されるように、インバータ用制御部4A、及び電源モジュール用制御部4Bは、バッテリB2から夫々、個別に給電される構成をいい、インバータ用制御部4A、及び電源モジュール用制御部4Bの一方から他方に給電されるような構成ではない。したがって、インバータ用制御部4Aは、バッテリB2から制御基板4Sに実装されるコネクタCAを介して給電され、電源モジュール用制御部4Bは、バッテリB2から制御基板4Sに実装されるコネクタCBを介して給電される。
【0044】
制御基板4Sは、スイッチング基板SSに対応して区分けされた区分毎(区分けされて給電される給電部毎)にフィルタFが設けられている。給電部とは、給電される部位を意味する。したがって、本実施形態では、制御基板4Sは、インバータ用制御部4Aにおける給電部に第1フィルタF1が設けられ、電源モジュール用制御部4Bにおける給電部に第2フィルタF2が設けられる。
【0045】
〔その他の実施形態〕
次に、電力変換モジュール1のその他の実施形態について説明する。
【0046】
上記実施形態では、制御部4は、インバータ用制御部4Aと電源モジュール用制御部4Bとに区分けされているとして説明した。制御部4は、図5に示されるように、インバータ用制御部4Aと、交直変換部用制御部4B1と、コンバータ用制御部4B2とに区分けすることも可能である。この場合、インバータ用制御部4Aと、交直変換部用制御部4B1と、コンバータ用制御部4B2とが、制御基板4Sにおいて、互いに電気的に接続されないように、インバータ用制御部4Aと、交直変換部用制御部4B1と、コンバータ用制御部4B2との周囲を抜き部50で囲むように構成するとよい。また、インバータ用制御部4Aは、上記実施形態と同様に、バッテリB2から制御基板4Sに実装されるコネクタCAを介して給電され、交直変換部用制御部4B1は、バッテリB2から制御基板4Sに実装されるコネクタCB1を介して給電され、コンバータ用制御部4B2は、バッテリB2から制御基板4Sに実装されるコネクタCB2を介して給電されるとよい。更に、制御基板4Sは、インバータ用制御部4Aにおける給電部に第1フィルタF1が設けられると共に、交直変換部用制御部4B1における給電部にフィルタF21が設けられ、コンバータ用制御部4B2における給電部にフィルタF22が設けられるとよい。
【0047】
上記実施形態では、制御部4は夫々の回路の属性に対応して区分けされているとして説明した。制御部4は、制御基板4Sにおいて、スイッチング周波数のスイッチング周波数、及び、スイッチング基板SSにおける電力のうちの少なくともいずれか一方に基づいて電気的に分離して構成することも可能である。スイッチング周波数とは、スイッチング素子を駆動する周波数であって、具体的には制御部4から各回路に伝送される制御信号の制御上の周波数(例えばPWM制御における周波数)にあたる。また、スイッチング基板SSにおける電力とは、スイッチング基板SSに入力される電力及び消費電力のうちの一方が相当する。制御部4は、制御基板4Sにおいて、このようなスイッチング周波数及び電力のうちの一方、又は、双方に基づいて電気的に分離して構成することも可能である。
【0048】
上記実施形態では、制御部4は、スイッチング基板SSに対応して区分けされた区分毎に給電されているとして説明した。しかしながら、制御部4は、まとめて給電することも可能である。この場合には、フィルタFは、個別に設けなくてもよい。
【0049】
上記実施形態では、電力変換モジュール1が有する回路が、インバータ3と、交直変換部10と、コンバータ20とを含むとして説明した。しかしながら、電力変換モジュール1が有する回路は、インバータ3と、交直変換部10と、コンバータ20とのうちの少なくともいずれか2つであってもよいし、これら以外の回路を含んでいてもよい。
【0050】
〔上記実施形態の概要〕
以下、上記において説明した電力変換モジュール1の概要について説明する。
【0051】
(1)車両駆動装置100に設けられる電力変換モジュール1は、スイッチング素子が実装された複数のスイッチング基板SSと、スイッチング素子を駆動する制御部4が実装された単一の制御基板4Sと、を備え、夫々のスイッチング基板SSは、スイッチング素子を含む回路に応じて設けられており、制御部4は、夫々の回路の属性に対応して区分けされた状態で、制御基板4Sにおいて電気的に分離して配置されている。
【0052】
本構成によれば、スイッチング素子を含む回路の属性に対応して区分けされた制御部4が、制御基板4Sにおいて、当該区分けされた状態で互いに分離して配置されるので、区分けされた制御部4の夫々において生じるノイズが他に伝達されることを防止できる。したがって、ノイズの影響を低減することが可能となる。また、区分けされた制御部4の夫々が、制御基板4Sにおいて電気的に分離されているので、区分けされた制御部4の夫々が動作時のフローティング電圧を抑制することができる。これにより、電力変換モジュール1の誤動作を無くす(防止する)または低減することが可能となる。
【0053】
(2)(1)に記載の属性は、スイッチング素子のスイッチング周波数、及び、スイッチング基板SSにおける電力のうちの少なくともいずれか一方に基づいて設定されていると好適である。
【0054】
本構成によれば、区分けされた制御部4の夫々を、ノイズの原因に応じて容易に配置することができる。したがって、制御基板4Sにおける制御部4の配置を容易に行うことが可能となる。
【0055】
(3)(1)又は(2)に記載の制御部4は、スイッチング基板SSに対応して区分けされた区分毎に給電され、制御基板4Sは、区分毎にフィルタFが設けられていると好適である。
【0056】
本構成によれば、区分けされた制御部4毎に、最適な特性を有するフィルタFを選定することができる。したがって、適切なノイズ対策を簡便に行うことができるので、誤動作を防止するまたは低減することが可能となる。
【0057】
(4)(1)又は(2)に記載の回路は、車両に搭載されるバッテリB1からの直流電力によりモータMに通電するインバータ3と、外部からの交流電力を直流電力に変換する交直変換部10と、交直変換部10にて変換された直流電力を、バッテリB1を充電可能な直流電力に変換するコンバータ20とを含み、複数のスイッチング基板SSは、インバータ3が有するスイッチング素子が実装された第1基板SS1と、交直変換部10が有するスイッチング素子及びコンバータ20が有するスイッチング素子が実装された第2基板SS2とを含むと好適である。
【0058】
本構成によれば、インバータ3が実装された第1基板SS1と、交直変換部10及びコンバータ20が実装された第2基板SS2との間におけるノイズの影響を低減することが可能となる。したがって、インバータ3、交直変換部10、及びコンバータ20の夫々に実装されるスイッチング素子の誤動作を防止するまたは低減することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本開示に係る技術は、車両駆動装置に設けられる電力変換モジュールに利用することができる。
【符号の説明】
【0060】
1:電力変換モジュール、3:インバータ、4:制御部、4S:制御基板、10:交直変換部、20:コンバータ、100:車両駆動装置、B1:バッテリ、F:フィルタ、M:モータ、SS:スイッチング基板、SS1:第1基板、SS2:第2基板
図1
図2
図3
図4
図5