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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170928
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】避難誘導システム
(51)【国際特許分類】
   G08B 27/00 20060101AFI20241204BHJP
   G08B 17/00 20060101ALI20241204BHJP
   A62B 3/00 20060101ALI20241204BHJP
   H04H 20/59 20080101ALI20241204BHJP
【FI】
G08B27/00 A
G08B17/00 F
A62B3/00 C
H04H20/59
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087701
(22)【出願日】2023-05-29
(71)【出願人】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100188514
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 隆裕
(74)【代理人】
【識別番号】100217021
【弁理士】
【氏名又は名称】馬場 進吾
(72)【発明者】
【氏名】中川 真
【テーマコード(参考)】
2E184
5C087
5G405
【Fターム(参考)】
2E184GG04
5C087AA09
5C087AA19
5C087DD04
5C087DD20
5C087EE05
5C087FF01
5C087FF02
5C087FF04
5C087GG09
5C087GG68
5C087GG82
5G405AA08
5G405AD07
5G405CA22
5G405CA28
(57)【要約】
【課題】火災発生などの有事の際に、施設利用者に対してより好適な避難経路を表示情報として提供することができる避難誘導システムを得ることができる。
【解決手段】避難誘導システム(100)は、施設(50)内に設置されているモニタ(M)と、火災発生場所を含む火災情報を外部から受信し、火災情報に基づいて、モニタ(M)の設置場所を起点として火災発生場所を避けた避難経路を導出し、導出した避難経路をモニタ(M)に表示させる制御部(2)とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
施設に設置されているモニタと、
火災発生場所を含む火災情報を外部から受信し、前記火災情報に基づいて、前記モニタの設置場所を起点として前記火災発生場所を避けた避難経路を導出し、導出した前記避難経路を前記モニタに表示させる制御部と
を備える避難誘導システム。
【請求項2】
前記モニタは、前記施設の各所にそれぞれ設置されており、
前記施設における各避難出口までの全避難経路のデータを含む施設構成情報が記憶された記憶部をさらに備え、
前記制御部は、前記火災情報及び前記記憶部に記憶された前記施設構成情報に基づいて、前記避難経路を、前記モニタごとに個別に導出し、個別に導出した前記避難経路を各前記モニタに表示させる
請求項1に記載の避難誘導システム。
【請求項3】
前記施設の各所に設置され、避難経路の状態を撮像する監視カメラ
をさらに備え、
前記制御部は、
各所に設置された前記監視カメラのそれぞれで撮像された、避難開始後の前記避難経路の状態に基づいて、各前記監視カメラの設置場所にどの程度の施設利用者がいるのかをあらわす指標値である混雑度合いを、各前記監視カメラの設置場所ごとに導出し、
当該混雑度合いをフィードバックすることで、個別に導出済みの前記避難経路に修正をかけ、混雑度合いを改善する新たな避難経路を個別に導出し、個別に導出した前記新たな避難経路を各前記モニタに表示させる
請求項2に記載の避難誘導システム。
【請求項4】
前記施設は、複数のフロアで構成されるとともに、複数箇所の避難出口を有しており、
前記記憶部には、各フロアに関して、前記複数箇所の避難出口のそれぞれに向かう複数方向の避難経路が前記施設構成情報として記憶されており、
前記制御部は、各フロアに在籍している施設利用者の予測人数である予測在籍者数を、前記フロアごとに導出し、当該フロアごとの予測在籍者数、前記火災発生場所、及び前記施設構成情報に基づいて、前記複数方向の避難経路の混雑度が均等化されるように、前記モニタごとの前記避難経路を個別に導出する
請求項2または3に記載の避難誘導システム。
【請求項5】
前記制御部は、
前記施設の防災を統括管理し、施設内の防火戸の閉止制御を行う火災受信機から前記火災情報を受信し、
前記火災情報に基づいて個別に導出した前記避難経路の中で特定の避難経路を隔離するために前記施設内の防火戸の中から閉止すべき防火戸を特定し、
前記閉止すべき防火戸を示す情報を前記火災受信機に返送する
請求項2または3に記載の避難誘導システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、施設内で火災が発生した場合、施設利用者に避難経路の情報を提供する避難誘導システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
施設内で火災が発生すると、避難を促す音声が施設全体に発報される。
【0003】
ここで、音声によって施設利用者に避難を促す以外にも、視覚を通じて避難を促すシステムとして、次のものが開示されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に係る警報システムは、フラッシュ光を用いて視覚を通じて避難を促すシステムであり、聴覚に障害がある人にも火災の発生を知らせることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-186430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
避難を促す音声を聞いた施設利用者は、誘導灯に付されているマークを頼りに、個人の判断により避難経路を決めて避難を行う。このように個人の判断によって避難が行われると、たとえ複数の避難経路が存在していても、一部の避難経路に施設利用者が集中して混雑したり、避難するのに遅延が生じたりするおそれがある。
【0006】
特許文献1に開示されている技術においても、フラッシュ光の点滅のみでは、施設利用者に十分な情報を提供することができず、上記の課題を解決することができない。
【0007】
本開示は、上記の課題を解決するためになされたものであり、有事の際、施設利用者に対してより好適な避難経路を表示情報として提供することができる避難誘導システムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係る避難誘導システムは、施設に設置されているモニタと、火災発生場所を含む火災情報を外部から受信し、火災情報に基づいて、モニタの設置場所を起点として火災発生場所を避けた避難経路を導出し、導出した避難経路をモニタに表示させる制御部とを備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、有事の際、施設利用者に対してより好適な避難経路を表示情報として提供することができる避難誘導システムを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の実施の形態1における避難誘導システムの全体構成例を示す図である。
図2図1に示す操作盤の構成例を示すブロック図である。
図3図1に示す施設における避難経路及び避難出口を示す図であり、施設内で火災が発生したときの一場面を例示する図である。
図4図3に示す状況下において、モニタに表示される避難誘導画面を例示する図である。
図5図2に示す操作盤の動作例を示すフローチャートである。
図6】各避難経路の混雑度合いに基づいて誘導させることを示す説明図である。
図7】混雑している避難経路を隔離するため防火戸を作動させることを示す説明図である。
図8】施設のフロアに応じて避難経路を振り分けることを示す説明図である。
図9図8に示す振り分け方法に加え、避難経路を隔離するため防火戸を作動させることを示す説明図である。
図10】フロアごとの予測在籍者数に応じて、フロアごとに避難経路を振り分けることを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の防災制御盤の好適な態様につき、図面を用いて説明する。
本開示の実施の形態1に係る避難誘導システムは、施設に設置された1または複数のモニタを備えている。また、避難誘導システムは、有事の際に、モニタの設置位置を起点とした避難経路を導出する。そして避難誘導システムは、モニタに避難経路を表示させることを技術的特徴としている。
【0012】
このため、施設利用者に対してより好適な避難経路を表示情報として提供することができ、モニタを視認した施設利用者は、現在位置からの避難経路を即座に把握することができ、速やかに避難することができる。
【0013】
実施の形態1.
図1は、本開示の実施の形態1における避難誘導システムを示す図である。
【0014】
図1に示す避難誘導システム100は、4階建ての施設50に導入されており、火災受信機1、操作盤2、第1モニタM1、第2モニタM2、・・・、第12モニタM12、第1監視カメラC1、第2監視カメラC2、・・・、及び第9監視カメラC9を備えている。
【0015】
以降、第1モニタM1、第2モニタM2、・・・、第12モニタM12について、個別に特定する必要が無い場合はモニタMと総称する。また、第1監視カメラC1、第2監視カメラC2、・・・、第9監視カメラC9についても、個別に特定する必要が無い場合は監視カメラCと総称する。
【0016】
火災受信機1及び操作盤2は、施設50の防災センター内に設けられており、防災担当者によって管理されている。また、各モニタM、及び各監視カメラCは、施設利用者が立ち入ることができる各所に設けられている。
【0017】
ここで、施設利用者とは、施設50を訪れた者、施設50内の執務場所で仕事を行っている者など、施設50に滞在している者を指す総称である。
【0018】
火災受信機1は、施設50に設けられている図示しない各防災設備を制御し、統制する防災制御盤である。ここで、防災設備とは、火災が発生したことを知らせる設備、及び災害発生時に被害を抑えるために作動する設備であり、例えば、火災感知器、防火戸、排煙設備、非常放送設備、地区音響装置、消火設備などが挙げられる。火災受信機1は、火災感知器から火災発生信号を受信すると、被害を抑えるために設置されている各防災設備を作動させる。例えば、火災受信機1は、施設50内の防火戸が閉止するように制御する閉止制御を行う。
【0019】
操作盤2は、施設50の防災に関する情報を一元的に集約して表示する防災制御盤である。また、操作盤2は、防災担当者からの操作を受け付けて、当該操作の内容に応じた指令を、火災受信機1を介して各防災設備に送信する。これにより、施設50の防災担当者は、火災感知器等の警報動作を確認したり、現場状況に応じて、排煙口などの防災設備を遠隔制御したりすることができる。
【0020】
実施の形態1において、操作盤2は、火災発生などの有事の際には、以下の動作を行う制御部として機能する。すなわち、操作盤2は、火災発生場所を含む火災情報を外部の火災受信機1から受信する。そして、操作盤2は、受信した火災情報に基づいて、モニタMの設置場所を起点として火災発生場所を避けた避難経路を、モニタMごとに個別に導出する。そして、操作盤2は、個別に導出した避難経路を各モニタMに表示させる。
【0021】
なお、このような制御部の機能を有する装置を、操作盤2とは別に設けてもよい。
【0022】
各モニタMは、それぞれ、施設50の階段付近、通路沿いの壁面など、施設利用者が立ち入り、視認することができる避難経路上の各所に設けられている。モニタMは、デジタルサイネージなど、施設利用者が視認できるモニタであればよく、壁面、床面または天井面に映像を映し出す映写機であってもよい。
【0023】
モニタMには、STB(Set Top Box)が組み込まれており、自機に記憶されている画像以外にも、ネットワークを通じて映像を取得して表示することができる。
【0024】
この構成により、モニタMは、平常時の場合、外部から情報を取得して、天気、株価、ニュース、広告、フロアマップなどの映像を映し出すことができる。一方、火災発生などの有事の際、モニタMは、操作盤2によって導出された避難経路の画面を映し出すことができる。
【0025】
監視カメラCは、施設50の各所に設けられており、施設利用者の行動などの各種状況を監視する。また、監視カメラCは、広範囲を見渡すことができるように、各フロアの天井付近または天井面に設置されている。
【0026】
火災発生などの有事の際、監視カメラCによって撮像される映像は、各避難経路の混雑度合い、または各フロアの予測在籍者数を算出するために用いられる。ここで、混雑度合いとは、各監視カメラCの設置場所にどの程度の施設利用者がいるのかをあらわす指標値である。また、予測在籍者数とは、各フロアに在籍している施設利用者の予測人数である。
【0027】
操作盤2、各モニタM、及び各監視カメラCは、いずれも施設50に敷設されているLAN(Local Area Network)である施設LAN60を介して、相互に通信可能なように接続されている。また、操作盤2及び火災受信機1は、施設LAN60とは別に施設50に敷設されている図示しない防災LANを介して、相互に通信可能なように接続されている。
【0028】
なお、図1に示したモニタMの台数、監視カメラCの台数、施設50のフロア数については、あくまでも例示であり、これに限定されない。すなわち、モニタMは1台であってもよく、複数台であってもよい。監視カメラCについても、1台であってもよく、複数台であってもよい。
【0029】
また、火災受信機1及び操作盤2の台数についても、あくまで一例であり、これに限定されない。
【0030】
図2は、図1に示す操作盤2の構成例を示すブロック図である。
【0031】
図2において、操作盤2は、表示部20、操作部21、演算処理部22、記憶部23、防災LAN通信部24、及び施設LAN通信部25を備える。
【0032】
表示部20は、文字、記号、図形などを、GUI(Graphical User Interface)によって描画することができるディスプレイであり、各種の情報を防災担当者に対して表示する。
【0033】
操作部21は、マウス、トラックボールなどのポインティングデバイス、または表示部20の表示面に設けられているタッチパネルである。また、操作部21は、メンテナンスの際に使用されるキーボードを構成上含んでいてもよい。
【0034】
演算処理部22は、中央演算処理装置、及び主記憶装置を含んでおり、記憶部23に記憶されているソフトウェアを演算実行することにより、操作盤2の内部のハードウェアを統括的に制御する。
【0035】
記憶部23は、補助記憶装置を含んでおり、演算処理部22によって演算実行されるソフトウェアを記憶する。
【0036】
また、記憶部23には、施設構成情報30、第1画面データD1、第2画面データD2、第3画面データD3、・・・、第12画面データD12が記憶されている。
【0037】
施設構成情報30には、施設50の三次元構造データ、及び、施設50の任意の地点から各避難出口までの全避難経路のデータが含まれている。
【0038】
第1画面データD1、第2画面データD2、第3画面データD3、・・・、第12画面データD12は、有事の際に、演算処理部22によって、記憶部23内に記憶された施設構成情報30に基づいて作成されるデータであり、モニタMのそれぞれの設置場所を起点として火災発生場所を避けた避難経路を図示した画面データである。
【0039】
なお、第1画面データD1が第1モニタM1によって表示され、第2画面データD2が第2モニタM2によって表示されるなど、モニタMごとに、対応する適切な避難経路を表示させるための画面データが作成され、記憶部23に記憶される。
【0040】
以降、第1画面データD1、第2画面データD2、第3画面データD3、・・・、第12画面データD12を、画面データDと総称する。
【0041】
施設LAN通信部25は、施設LAN60を介して、モニタM、監視カメラCとの間でデータの送受信を行う。
【0042】
防災LAN通信部24は、防災LANを介して火災受信機1との間でデータの送受信を行う。
【0043】
図3は、図1に示す施設50における避難経路及び避難出口を示す図であり、施設50内で火災が発生したときの一場面を例示する図である。
【0044】
実施の形態1において例示する施設50には、1階の複数箇所に避難出口E1、E2及びE3が設けられており、複数箇所の避難出口E1、E2及びE3に向かう複数の避難経路として、避難経路R1、R2及びR3が設けられている。
【0045】
また、図3は、一例として、三人の施設利用者H1、H2及びH3が施設50に滞在している最中に、1階の中央付近、2階の中央付近で火災が発生した状況を示している。
【0046】
火災が発生した場合、各モニタMは、対応する画面データDを操作盤2から取得して、火災発生場所を表示し、及び、当該モニタMの設置場所を起点とした避難経路を表示する。
【0047】
図4は、図3に示す状況下において、各モニタに表示される避難誘導画面を例示する図である。
【0048】
ここで、図4(A)は、施設50の4階中央部に設置されている第2モニタM2の表示画面である。図4(B)は、施設50の3階右側に設置されている第6モニタM6の表示画面である。そして、図4(C)は、施設50の2階左側に設置されている第7モニタM7の表示画面である。
【0049】
各モニタMは、図4(A)~(C)に示すように、避難経路を矢印で表示するとともに、避難に関係しない箇所を薄く表示する。また、各モニタMは、避難経路R1、R2などの各避難経路を色分けして表示する。
【0050】
図4(A)~(C)に示すように、各モニタMは、火災発生場所を回避しつつ、当該モニタMの設置場所を起点とした避難経路を映し出す。また、図4の例において、各モニタMは、可能な限り避難距離が短くなるルートを避難経路として表示する。
【0051】
例えば、図3に示す第2モニタM2の設置位置の場合、本来、図3に示すように、中央の避難経路R3を通過して避難出口E3から避難するのが最短ルートである。しかしながら、施設利用者は、当該ルートを通過すると、火災の発生場所を経由することになる。
【0052】
このため、第2モニタM2は、図4(A)に示すように、次に避難距離の短いルートとして、右側の避難経路R2を通過して避難出口E2から避難する避難経路を表示する。
【0053】
第2モニタM2の近くにいる施設利用者H1は、第2モニタM2を視認することにより、図4(A)に示す内容を把握することができる。このため、施設利用者H1は、火災の発生している場所を通過することなく、且つ、好適な避難経路を通過して避難することができる。
【0054】
また、図3に示す第6モニタM6の設置位置の場合、右側の避難経路R2を通過して避難出口E2から避難するのが最短ルートであるが、当該ルートを通過しても火災発生場所を経由することは無い。このため、第6モニタM6は、図4(B)に示すように、この最短ルートを避難経路として表示する。
【0055】
また、図3に示す第7モニタM7の設置位置の場合、左側の避難経路R1を通過して避難出口E1から避難するのが最短ルートであるが、当該ルートを通過しても火災発生場所を経由することは無い。このため、第7モニタM7は、図4(C)に示すように、この最短ルートを避難経路として表示する。
【0056】
第6モニタM6の近くにいる施設利用者H2、及び、第7モニタM7の近くにいる施設利用者H3は、それぞれ近くの第6モニタM6または第7モニタM7を視認する。これにより、施設利用者H2及びH3は、火災の発生している場所を通過することなく、且つ、好適な避難経路を通過して避難することができる。
【0057】
このようにして、火災発生状況に応じて演算処理部22によって作成された各画面データDを各モニタMに表示させることにより、施設利用者は、火災発生場所、現在位置、避難経路、避難出口を瞬時に理解し、避難行動に移ることができる。
【0058】
図5は、図2に示す操作盤2の動作例を示すフローチャートである。なお、図5のフローチャートは、終了しても、所定の終了操作が行われない限り、復帰して繰り返し実行される。以下では、図2に示した構成を備える操作盤2を主体として、フローチャートによる一連動作を説明する。
【0059】
操作盤2は、ステップS101において、火災情報を火災受信機1から受信したか否かを判定する。操作盤2は、火災情報を受信しない場合、図5のフローチャートの処理を終了する。
【0060】
一方、操作盤2は、火災情報を受信したと判定すると、ステップS102に処理を進める。
【0061】
操作盤2は、ステップS102において、施設構成情報30及び火災発生場所に基づくルート検索を行うことにより、各モニタMを起点とし、避難出口E1~E3のいずれかを終点とする避難経路を、モニタMごとに導出する。この際、操作盤2は、受信した火災情報から火災発生場所に関する情報を抽出する。そして、操作盤2は、当該火災発生場所、及び記憶部23内に記憶された施設構成情報30に基づいて、火災発生場所を避けた避難経路を、各モニタMを起点としてそれぞれ導出する。
【0062】
操作盤2は、ステップS103において、導出したモニタMごとの避難経路に基づいて、各モニタMが表示する画面データDをそれぞれ作成する。そして、操作盤2は、作成した各画面データDを記憶部23に記憶する。
【0063】
操作盤2は、ステップS104において、施設LAN60を通じて、記憶部23に記憶した各画面データDを、対応する各モニタMに送信する。これにより、各モニタMは、自機の設置場所を起点とした避難経路を表示することができる。
【0064】
ここまでは、避難距離が短くなる避難経路を導出し、各モニタMに表示させるものとして説明したが、以下では、各避難経路が混雑しないように施設利用者を誘導する手法について説明する。
【0065】
なお、以下の説明では、施設50の1階中央部で火災が発生したものとして説明する。また、以下の説明では、1階中央部が火災により不通となることから、図3に示す中央の避難経路R3及び避難出口E3は使用しないものとして、説明を省略する。
【0066】
図6は、各避難経路R1及びR2の混雑度合いに基づいて誘導させることを示す説明図である。
【0067】
火災が発生した場合、操作盤2は、避難距離が短くなるような避難経路を一旦作成し、各モニタMに表示させる。一方、操作盤2は、各監視カメラCによって撮像される監視映像を逐次取得することで、各映像に基づいて、避難開始後の各避難経路の混雑度合いの現状を動的に求めることができる。
【0068】
図6の例では、操作盤2は、第4監視カメラC4、第6監視カメラC6、及び第8監視カメラC8の映像により、左側の避難経路R1の混雑度合いを求めることができる。また、操作盤2は、第5監視カメラC5、第7監視カメラC7、及び第9監視カメラC9の映像により、右側の避難経路R2の混雑度合いの現状を動的に求めることができる。
【0069】
また、図6の例の場合、操作盤2は、避難経路R1、R2の混雑度合いの現状を動的に求めた結果、一方の避難経路R1においては混雑が生じ、他方の避難経路R2においては余裕があると判定する。この場合、操作盤2は、記憶部23に記憶されている画面データDを、避難経路R2に誘導する画面データに更新し、更新後の画面データDをモニタMに表示させる。
【0070】
これにより、例えば、第4モニタM4付近にいる施設利用者H4は、表示が切り替わった後の第4モニタM4を視認することにより、避難経路R2を経由するルートで避難するようになる。また、第8モニタM8付近にいる施設利用者H5も同様に、表示が切り替わった後の第8モニタM8を視認することにより、避難経路R2を経由するルートで避難するようになる。
【0071】
このように、操作盤2は、各所に設置された監視カメラCのそれぞれで撮像された、避難開始後の避難経路の状態に基づいて、各監視カメラCの設置場所における現状の混雑度合いを動的に導出する。
【0072】
そして、操作盤2は、当該混雑度合いをフィードバックすることにより、個別に導出済みの避難経路に修正をかけ、混雑度合いを改善する新たな避難経路を個別に導出する。そして、操作盤2は、個別に導出した新たな避難経路を、各モニタMに表示させる。
【0073】
このため、混雑度合いに偏りが生じないように、避難開始後の状況に応じた新たな避難経路を利用して、施設利用者を適切に誘導することができる。
【0074】
上記に加え、防火戸を作動させて閉止することにより、混雑している避難経路を隔離してもよい。すなわち、操作盤2は、導出した混雑度合いが予め設定された許容閾値を超えた避難経路に関しては、防火戸を作動させて隔離することで、他の避難経路が利用可能な避難者の進入を物理的に制限することができる。
【0075】
図7は、混雑している避難経路を隔離するため防火戸を作動させることを示す説明図である。
【0076】
防火戸は、火災が発生している場所を遮蔽して隔離する機能を備えているが、火災の発生場所から離れたところに設置されている防火戸は、作動しておらず開いたままとなっている。
【0077】
図7の例では、火災の発生場所から離れた防火戸を利用して、混雑している避難経路に施設利用者が向かわないように規制する。
【0078】
上記のように、操作盤2は、一方の避難経路R1が混雑している場合、他方の避難経路R2に施設利用者を誘導するように、各モニタMの表示を切り替える。これに加え、操作盤2は、火災受信機1を介して防火戸W1及びW2を閉止し、避難経路R1を他のエリアから隔離する。
【0079】
これにより、図7に示す施設利用者H6及びH7は、混雑している避難経路R1には行かず、避難経路R2を経由して避難するようになる。
【0080】
なお、閉止すべき防火戸は、混雑している避難経路に応じて予め設定されており、操作盤2内の記憶部23に記憶されている。
【0081】
図7の例の場合、操作盤2は、第4監視カメラC4、第6監視カメラC6、及び第8監視カメラC8の映像により、避難経路R1が混雑していると判定する。そして、操作盤2は、記憶部23に記憶されている情報に基づいて、当該避難経路R1を隔離するための防火戸として、閉止すべき防火戸W1及びW2を特定する。
【0082】
そして、操作盤2は、閉止すべき防火戸W1及びW2を示す情報を、火災受信機1に送信する。これにより、防火戸W1及びW2は、火災受信機1によって閉止される。
【0083】
引き続き、各避難経路の混雑を和らげる別の手法について説明する。
【0084】
図8は、施設50のフロアに応じて避難経路を振り分けることを示す説明図である。
【0085】
図8の例において、操作盤2は、各モニタMに表示させる避難経路を決定する際、施設利用者を分散させるため、フロアに応じて避難経路を振り分ける。
【0086】
例えば、操作盤2は、施設50の4階に設置されている各モニタMに対し、左側の避難経路R1を経由して避難するルートを表示させる。また、操作盤2は、施設50の3階に設置されている各モニタMに対し、右側の避難経路R2を経由して避難するルートを表示させる。また、操作盤2は、施設50の2階に設置されている各モニタMに対し、4階と同様に左側の避難経路R1を経由して避難するルートを表示させる。
【0087】
このように、フロアの階数順に、避難経路R1、R2に振り分けることにより、施設利用者を分散させて各避難経路の混雑を和らげることができる。なお、この方法においても、防火戸を閉止して施設利用者の移動を規制してもよい。
【0088】
図9は、図8に示す振り分け方法に加え、避難経路を隔離するため防火戸を作動させることを示す説明図である。
【0089】
図9の例においては、操作盤2は、4階の施設利用者が右側の避難経路R2に向かわないようにするため、防火戸W3を閉止する。また、操作盤2は、3階の施設利用者が左側の避難経路R1に向かわないようにするため、防火戸W1を閉止する。そして、操作盤2は、2階の施設利用者が右側の避難経路R2に向かわないようにするため、防火戸W4を閉止する。
【0090】
このように防火戸を用いて移動を規制することにより、施設利用者は、フロアの階数に応じた避難経路を経由して避難するようになる。
【0091】
次に、フロアごとの施設利用者数を考慮した振り分け方法について説明する。
【0092】
図10は、フロアごとの予測在籍者数に応じて、フロアごとに避難経路を振り分けることを示す説明図である。
【0093】
操作盤2は、監視カメラCの映像により、各フロアにいる施設利用者の予測人数を、予測在籍者数として求める。そして、操作盤2は、求めた各フロアの予測在籍者数及び火災発生場所に基づいて、避難経路R1またはR2に施設利用者を振り分ける。なお、各フロアの施設利用者数は、監視カメラCの映像によらず、各階のテナントなどにより予め推定される人数を予測値として採用することもできる。
【0094】
図10の例において、操作盤2は、第1監視カメラC1、第2監視カメラC2、及び第3監視カメラC3の映像により、4階に14名の施設利用者がいると予測する。また、操作盤2は、第4監視カメラC4、第5監視カメラC5の映像により、3階に3名の施設利用者がいると予測する。2階及び1階についても同様に、操作盤2は、各階に設置されている監視カメラCの映像により、2階に8名、及び1階に2名の施設利用者がいると予測する。
【0095】
操作盤2は、火災発生場所が1階中央であるため、左側の避難経路R1及び右側の避難経路R2を、避難経路として選定する。そして、操作盤2は、避難経路R1及びR2で混雑度が均等化されるように、避難人数を割り振る。
【0096】
図10の例においては、操作盤2は、最も人数の多い4階の施設利用者が左側の避難経路R1を経由するように、画面データDを作成し、4階に設置されている各モニタMに表示させる。
【0097】
そして、操作盤2は、次に人数の多い2階の施設利用者が右側の避難経路R2を経由するように、画面データDを作成し、2階に設置されている各モニタMに表示させる。
【0098】
操作盤2は、避難経路R1と避難経路R2との避難人数の差を縮めるようにするため、3階の施設利用者が避難経路R2を経由するように、画面データDを作成し、3階に設置されている各モニタMに表示させる。1階については、操作盤2は、最も近い避難出口E1またはE2へ誘導するように、画面データDを作成し、1階に設置されている各モニタMに表示させる。
【0099】
これにより、各避難経路の混雑度を均等化することができる。
【0100】
なお、図10の例においても、上記と同様に、防火戸を閉止して施設利用者の移動を規制してもよい。
【0101】
このような避難誘導システム100の特徴を整理すると、以下のような構成を有し、効果を実現できることとなる。
【0102】
実施の形態1における避難誘導システム100は、施設50に設置されているモニタMを備える。また、避難誘導システム100は、火災発生場所を含む火災情報を外部から受信し、火災情報及び施設構成情報に基づいて、モニタMの設置場所を起点として火災発生場所を避けた避難経路を導出し、導出した避難経路をモニタMに表示させる操作盤2を備える。
【0103】
このため、有事の際、施設利用者に対してより好適な避難誘導を行うことができる。
【0104】
また、モニタMは、施設50の各所にそれぞれ設置されている。操作盤2は、施設50における各避難出口までの全避難経路のデータを含む施設構成情報30が記憶された記憶部23をさらに備えている。また、操作盤2は、火災情報及び記憶部23に記憶された施設構成情報30に基づいて、避難経路を、モニタMごとに個別に導出し、個別に導出した避難経路を各モニタMに表示させる。
【0105】
このため、施設50の各所に応じた避難誘導を行うことができる。
【0106】
また、避難誘導システム100は、施設50の各所に設置され、避難経路の状態を撮像する監視カメラCをさらに備える。操作盤2は、各所に設置された監視カメラCのそれぞれで撮像された、避難開始後の避難経路の状態に基づいて、各監視カメラCの設置場所にどの程度の施設利用者がいるのかをあらわす指標値である混雑度合いを、各監視カメラCの設置場所ごとに導出する。
【0107】
また、操作盤2は、避難開始後における各避難経路上の混雑度合いをフィードバックすることで、個別に導出済みの避難経路に修正をかけ、混雑度合いを改善する新たな避難経路を個別に導出し、個別に導出した新たな避難経路を各モニタMに表示させる。
【0108】
このため、避難開始後の現状に応じて、避難経路の混雑度を和らげ、より均等化することができ、速やかに避難させることができる。
【0109】
また、施設50は、複数のフロアで構成されるとともに、複数箇所の避難出口を有している。また、記憶部23には、各フロアに関して、複数箇所の避難出口のそれぞれに向かう複数方向の避難経路が施設構成情報30として記憶されている。操作盤2は、各フロアに在籍している施設利用者の予測人数である予測在籍者数を、フロアごとに導出し、当該フロアごとの予測在籍者数、火災発生場所、及び施設構成情報に基づいて、複数方向の避難経路の混雑度が均等化されるように、モニタMごとの避難経路を個別に導出する。
【0110】
このため、避難経路の混雑度を和らげることができ、速やかに避難させることができる。
【0111】
また、操作盤2は、施設50の防災を統括管理し、施設50内の防火戸の閉止制御を行う火災受信機1から火災情報を受信する。操作盤2は、火災情報に基づいて個別に導出した避難経路の中で特定の避難経路を隔離するために施設50内の防火戸の中から閉止すべき防火戸を特定する。そして、操作盤2は、閉止すべき防火戸を示す情報を火災受信機1に返送する。
【0112】
このため、特定の避難経路を隔離して避難誘導を行うことができ、混雑度の高い避難経路に施設利用者が向かわないように、施設利用者の移動を規制することができる。
【0113】
なお、上記においては、避難経路を隔離するものとして防火戸を用いて説明したが、火災発生時に区画を仕切る設備であればよく、例えば防火シャッターが用いられてもよい。すなわち、防火戸には、同様の用途として用いられる防火シャッター等も、概念上含まれる。
【符号の説明】
【0114】
1 火災受信機、2 操作盤(制御部)、50 施設、100 避難誘導システム、C 監視カメラ、E1~E3 避難出口、M モニタ、R1~R3 避難経路、W1~W4 防火戸。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10