(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170930
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】レーザ光の光軸位置の評価装置及びそれを備えたレーザ発振器、レーザ加工装置、光軸位置の推定方法、光軸位置の調整方法
(51)【国際特許分類】
H01S 3/00 20060101AFI20241204BHJP
G02B 6/42 20060101ALI20241204BHJP
G02B 6/32 20060101ALI20241204BHJP
B23K 26/064 20140101ALI20241204BHJP
【FI】
H01S3/00 G
G02B6/42
G02B6/32
H01S3/00 B
B23K26/064 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087703
(22)【出願日】2023-05-29
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥村 大志
(72)【発明者】
【氏名】瀧 成治
【テーマコード(参考)】
2H137
4E168
5F172
【Fターム(参考)】
2H137AA13
2H137AB06
2H137BB08
2H137BB12
2H137BB17
2H137BC02
2H137BC53
2H137CB26
2H137CB32
2H137CB33
4E168AD07
4E168AD11
4E168BA00
4E168CA02
4E168CB03
4E168CB08
4E168CB19
4E168EA02
4E168EA17
4E168EA26
4E168KB02
5F172NN29
5F172NP06
5F172NR02
5F172ZA02
5F172ZZ01
(57)【要約】
【課題】簡便な構成でレーザ光の光軸位置を定量的に評価可能なレーザ光の光軸位置の評価装置を提供する。
【解決手段】光軸位置評価装置10は、受光センサ40と第1及び第2遮光板31、32と第1及び第2回転軸21、22とモータ20と演算部71とを備える。第1及び第2遮光板31、32は第1及び第2回転軸21、22にそれぞれ接続される。モータ20は第1及び第2遮光板31、32を互いに交差しないように回転させる。第1及び第2遮光板31、32が所定の角度回転する間に発生する第2の状態では、レーザ光LBの一部が遮光され、残部が受光センサ40に入射される。演算部71は、第2の状態での第1及び第2遮光板31、32の回転角度と受光センサ40の出力信号とに基づいて、レーザ光LBの光軸位置を算出する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の方向に進行するレーザ光の光軸位置を算出する光軸位置の評価装置であって、
前記レーザ光が入射される受光面を有し、前記受光面で受光した前記レーザ光の光量に基づいて電気信号を出力する受光センサと、
前記受光センサの前方に配置される第1遮光板と、
前記受光センサの前方であって、前記第1遮光板と間隔をあけて配置される第2遮光板と、
前記第1遮光板が接続された第1回転軸と、
前記第2遮光板が接続された第2回転軸と、
前記第1回転軸及び前記第2回転軸に接続され、前記第1回転軸及び前記第2回転軸を回転させるモータと、を少なくとも備え、
前記第2遮光板は、所定の角度回転するまでは、少なくとも前記第1遮光板と互いに交差しないように回転し、
前記モータによって、前記第1遮光板及び前記第2遮光板が前記所定の角度回転する間に、
前記第1遮光板及び前記第2遮光板によって遮蔽されずに、前記レーザ光が前記受光センサに入射される第1の状態と、
前記第1遮光板または前記第2遮光板によって前記レーザ光の一部が遮蔽される一方、前記レーザ光の残部が前記受光センサに入射される第2の状態と、
前記第1遮光板または前記第2遮光板によって遮蔽されて、前記レーザ光が前記受光センサに入射されない第3の状態と、がそれぞれ発生し、
前記第2の状態における前記第1遮光板及び前記第2遮光板の回転角度と前記受光センサから出力される前記電気信号の大きさとに基づいて、前記レーザ光の光軸位置を算出する演算部をさらに備えたことを特徴とする光軸位置の評価装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光軸位置の評価装置において、
前記所定の角度は、前記第1遮光板及び前記第2遮光板のそれぞれが、少なくとも1回は前記第1の状態を発生させる位置から前記第2の状態を発生させる位置に移動するまでの回転角度であることを特徴とする光軸位置の評価装置。
【請求項3】
請求項2に記載の光軸位置の評価装置において、
前記第1遮光板及び前記第2遮光板のそれぞれは、回転中に前記レーザ光を横切る直線状の辺部を有していることを特徴とする光軸位置の評価装置。
【請求項4】
請求項3に記載の光軸位置の評価装置において、
前記演算部は、前記第2の状態において、前記電気信号が第1電気信号となるときの前記第1遮光板の第1回転角度と前記第2遮光板の第2回転角度とに基づいて、前記レーザ光の光軸位置を算出し、
前記第1電気信号の大きさは、前記第1の状態における前記電気信号の大きさの半分であることを特徴とする光軸位置の評価装置。
【請求項5】
請求項2に記載の光軸位置の評価装置において、
前記受光センサの近傍であって、前記第1遮光板及び前記第2遮光板よりも前方に配置された別の受光センサをさらに有し、
前記レーザ光が出射されている間は、前記別の受光センサで前記レーザ光を受光し、別の電気信号を出力させることを特徴とする光軸位置の評価装置。
【請求項6】
請求項2に記載の光軸位置の評価装置において、
前記第1遮光板及び前記第2遮光板のそれぞれの単位回転角度当たりの前記受光センサでの測定時間は、前記レーザ光のパワーの揺らぎ時間よりも長くなるように設定されていることを特徴とする光軸位置の評価装置。
【請求項7】
請求項2ないし6のいずれか1項に記載の光軸位置の評価装置と、
前記レーザ光を出射するレーザ光源と、
前記レーザ光の光軸位置を調整する光軸調整レンズと、
前記光軸調整レンズを透過した前記レーザ光の一部を第1レーザ光として前記レーザ光の進行方向と交差する方向に反射させるとともに、前記レーザ光の残部を透過させる第1光分岐部材と、
前記第1レーザ光の一部を第2レーザ光として前記第1レーザ光の進行方向と交差する方向に反射させる第2光分岐部材と、
前記光軸調整レンズの位置を移動させるレンズ移動機構と、を少なくとも備え、
前記第1の状態では、前記第1遮光板及び前記第2遮光板によって遮蔽されずに、前記第2レーザ光が前記受光センサに入射し、
前記第2の状態では、前記第1遮光板または前記第2遮光板によって前記第2レーザ光の一部が遮蔽される一方、前記第2レーザ光の残部が前記受光センサに入射され、
前記第3の状態では、前記第1遮光板または前記第2遮光板によって遮蔽されて、前記第2レーザ光が前記受光センサに入射されず、
予め設定された前記レーザ光の光軸位置である理想光軸位置と前記演算部で算出された前記レーザ光の光軸位置との差分に基づいて、前記レンズ移動機構により前記光軸調整レンズを移動させて前記レーザ光の光軸位置を調整することを特徴とするレーザ発振器。
【請求項8】
請求項7に記載のレーザ発振器と、
前記レーザ発振器から出射された前記レーザ光を導光する光ファイバと、
前記光ファイバで導光された前記レーザ光をワークに向けて出射するレーザヘッドをと、を少なくとも備えたことを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項9】
請求項4に記載の光軸位置の評価装置を用いたレーザ光の光軸位置の推定方法であって、
前記所定の角度回転するまでは、前記第1遮光板及び前記第2遮光板を少なくとも互いに交差しないように回転させる第1ステップと、
受光した前記レーザ光の光量に基づいて、前記受光センサが出力した前記電気信号を測定する第2ステップと、
前記第1遮光板及び前記第2遮光板のそれぞれの回転角度を算出する第3ステップと、
前記第1遮光板の回転角度及び前記第2遮光板の回転角度が、それぞれ前記所定の角度を超えたか否かを判定する第4ステップと、
前記第4ステップの判定結果が否定的な場合は、前記第4ステップの判定結果が肯定的になるまで前記第1ステップから前記第3ステップまでの一連の処理を繰り返し実行し、
前記第4ステップの判定結果が肯定的な場合は、前記第2ステップで得られた前記第1電気信号と前記第3ステップで得られた前記第1回転角度と前記第2回転角度とに基づいて、前記レーザ光の光軸位置を算出する第5ステップと、
前記第5ステップで得られた前記光軸位置と予め設定された前記レーザ光の光軸位置である理想光軸位置との差分を算出する第6ステップと、
前記第6ステップで得られた前記差分が所定値以下である場合は、前記第5ステップで得られた前記光軸位置を前記レーザ光の光軸位置であると推定する第7ステップと、を少なくとも備えたことを特徴とする光軸位置の推定方法。
【請求項10】
請求項7に記載のレーザ発振器を用いたレーザ光の光軸位置の調整方法であって、
前記所定の角度回転するまでは、前記第1遮光板及び前記第2遮光板を少なくとも互いに交差しないように回転させる第1ステップと、
受光した前記レーザ光の光量に基づいて、前記受光センサが出力した前記電気信号を測定する第2ステップと、
前記第1遮光板及び前記第2遮光板のそれぞれの回転角度を算出する第3ステップと、
前記第1遮光板の回転角度及び前記第2遮光板の回転角度が、それぞれ前記所定の角度を超えたか否かを判定する第4ステップと、
前記第4ステップの判定結果が否定的な場合は、前記第4ステップの判定結果が肯定的になるまで前記第1ステップから前記第3ステップまでの一連の処理を繰り返し実行し、
前記第4ステップの判定結果が肯定的な場合は、前記第2ステップで得られた第1電気信号と前記第3ステップで得られた第1回転角度と第2回転角度とに基づいて、前記第2レーザ光の光軸位置を前記レーザ光の光軸位置として算出する第5ステップと、
前記第5ステップで得られた前記光軸位置と前記理想光軸位置との差分を算出する第6ステップと、
前記第6ステップで得られた前記差分が所定値以下であるか否かを判定する第7ステップと、
前記第7ステップでの判定結果が否定的である場合は、前記レンズ移動機構により前記光軸調整レンズを移動させて前記レーザ光の光軸位置を調整する第8ステップと、を少なくとも備え、
前記第1電気信号の大きさは、前記第1の状態における前記電気信号の大きさの半分であり、
前記第1回転角度及び前記第2回転角度は、それぞれ、前記第2の状態で、前記電気信号が前記第1電気信号となるときの前記第1遮光板の回転角度及び前記第2遮光板の回転角度であり、
前記第8ステップの実行後は、前記第7ステップの判定結果が肯定的になるまで前記第1ステップから前記第6ステップまでの一連の処理を繰り返し実行し、
前記第7ステップの判定結果が肯定的な場合は、前記レーザ光の光軸位置の調整作業を終了することを特徴とする光軸位置の調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レーザ光の光軸位置の評価装置及びそれを備えたレーザ発振器、レーザ加工装置、光軸位置の推定方法、光軸位置の調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レーザ発振器から出射されたレーザ光を光ファイバで導光してレーザヘッドに入射し、レーザヘッドからワークに向けてレーザ光を出射するレーザ加工装置が良く知られている。光ファイバを用いることで、レーザ発振器から離れた場所に置かれたワークに対してレーザ加工を行うことができる。
【0003】
一方、光ファイバにおける光導波路、つまりコアは、通常、直径が十数μm~100μm程度と細く、コアに対して漏れ出ることなくレーザ光を入射させるには、光ファイバの光軸中心とレーザ光の光軸とを精度良く位置合わせする必要があった。また、当該位置合わせ作業は、レーザ発振器を組み立てる度に行う必要がある。これは、レーザ発振器の光学系の配置関係や、各部品の寸法、さらに光ファイバの寸法にもそれぞれ個体差が存在するためである。
【0004】
また、光ファイバは、レーザ加工装置の使用時間に応じて定期的に交換することが多く、交換時にも前述の位置合わせ作業が必要になる。しかし、現在、この位置合わせ作業は、作業者の経験や勘に頼った手動での作業であり、光ファイバの光軸中心とレーザ光の光軸との位置合わせ精度を確保することが難しかった。
【0005】
一方、この点を改善するために、種々の技術が提案されている。例えば、特許文献1には、コアと同じ径の貫通孔が設けられた薄板状の遮光板とレーザ光の出力測定器とを用いて、光ファイバの光軸中心とレーザ光の光軸との位置合わせを行う構成が開示されている。具体的には、レーザ光源から出射されたレーザ光を集光レンズで集光し、遮光板の貫通孔を通って測定器に達するように、レーザ光源と集光レンズと遮光板と測定器とを配置する。さらに、測定器で測定されたレーザ光の出力値が最大となるように、レーザ光源と集光レンズと遮光板との少なくとも1つの位置を調整し、調整した位置にて、レーザ光源の位置と集光レンズの位置とを固定する。続けて、貫通孔の位置にコアの端面の中心が位置するように遮光板と光ファイバとを入れ替えて光ファイバの入射面の位置を固定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示された従来の構成によれば、ファイバの光軸中心とレーザ光の光軸との位置合わせ精度と従来の手動の作業を行う場合に比べて高めることができる。
【0008】
しかし、この構成では、遮光板の貫通孔に対して光ファイバを正確に位置合わせした後、両者を入れ替える作業が必要になる。この入れ替え作業の際に、光ファイバの光軸中心とレーザ光の光軸との位置合わせ作業精度を低下させるおそれがある。また、貫通孔の位置に対して光ファイバの位置をずらさずに、遮光板と光ファイバとの入れ替えを行うことは、難易度が高く、作業者の熟度に依存してしまうおそれがあった。
【0009】
また、光ファイバを用いない場合も、レーザ光が入射される光学部品に対してレーザ光の光軸を精度良く位置合わせしなければならない場合は多い。例えば、レーザ発振器の内部において反射ミラーで反射された後、レーザ光がレーザ発振器の外部に出射される場合、レーザ光の光軸と反射ミラーの反射面との位置関係を正確に設定しないと、レーザ光の進行方向が所望の方向から外れてしまう。
【0010】
本開示はかかる点に鑑みてなされたもので、その目的は、簡便な構成でレーザ光の光軸位置を定量的に評価可能なレーザ光の光軸位置の評価装置及びそれを備えたレーザ発振器、レーザ加工装置を提供することにある。また、この光軸位置の評価装置を用いて単純なアルゴリズムで光軸位置を精度良く定量的に推定できる光軸位置の推定方法を提供する。また、この光軸位置の評価装置を用いて単純なアルゴリズムで光軸位置を精度良く推定できるとともに、簡便な構成で光軸位置を調整できる光軸位置の調整方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本開示に係るレーザ光の光軸位置の評価装置は、所定の方向に進行するレーザ光の光軸位置を算出する光軸位置の評価装置であって、前記レーザ光が入射される受光面を有し、前記受光面で受光した前記レーザ光の光量に基づいて電気信号を出力する受光センサと、前記受光センサの前方に配置される第1遮光板と、前記受光センサの前方であって、前記第1遮光板と間隔をあけて配置される第2遮光板と、前記第1遮光板が接続された第1回転軸と、前記第2遮光板が接続された第2回転軸と、前記第1回転軸及び前記第2回転軸に接続され、前記第1回転軸及び前記第2回転軸を回転させるモータと、を少なくとも備え、前記第2遮光板は、所定の角度回転するまでは、少なくとも前記第1遮光板と互いに交差しないように回転し、前記モータによって、前記第1遮光板及び前記第2遮光板が前記所定の角度回転する間に、前記第1遮光板及び前記第2遮光板によって遮蔽されずに、前記レーザ光が前記受光センサに入射される第1の状態と、前記第1遮光板または前記第2遮光板によって前記レーザ光の一部が遮蔽される一方、前記レーザ光の残部が前記受光センサに入射される第2の状態と、前記第1遮光板または前記第2遮光板によって遮蔽されて、前記レーザ光が前記受光センサに入射されない第3の状態と、がそれぞれ発生し、前記第2の状態における前記第1遮光板及び前記第2遮光板の回転角度と前記受光センサから出力される前記電気信号の大きさとに基づいて、前記レーザ光の光軸位置を算出する演算部をさらに備えたことを特徴とする。
【0012】
本開示に係るレーザ発振器は、前記光軸位置の評価装置と、前記レーザ光を出射するレーザ光源と、前記レーザ光の光軸位置を調整する光軸調整レンズと、前記光軸調整レンズを透過した前記レーザ光の一部を第1レーザ光として前記レーザ光の進行方向と交差する方向に反射させるとともに、前記レーザ光の残部を透過させる第1光分岐部材と、前記第1レーザ光の一部を第2レーザ光として前記第1レーザ光の進行方向と交差する方向に反射させる第2光分岐部材と、前記光軸調整レンズの位置を移動させるレンズ移動機構と、を少なくとも備え、前記第1の状態では、前記第1遮光板及び前記第2遮光板によって遮蔽されずに、前記第2レーザ光が前記受光センサに入射し、前記第2の状態では、前記第1遮光板または前記第2遮光板によって前記第2レーザ光の一部が遮蔽される一方、前記第2レーザ光の残部が前記受光センサに入射され、前記第3の状態では、前記第1遮光板または前記第2遮光板によって遮蔽されて、前記第2レーザ光が前記受光センサに入射されず、予め設定された前記レーザ光の光軸位置である理想光軸位置と前記演算部で算出された前記レーザ光の光軸位置との差分に基づいて、前記レンズ移動機構により前記光軸調整レンズを移動させて前記レーザ光の光軸位置を調整することを特徴とする。
【0013】
本開示に係るレーザ加工装置は、前記レーザ発振器と、前記レーザ発振器から出射された前記レーザ光を導光する光ファイバと、前記光ファイバで導光された前記レーザ光をワークに向けて出射するレーザヘッドをと、を少なくとも備えたことを特徴とする。
【0014】
本開示に係る光軸位置の推定方法は、前記光軸位置の評価装置を用いたレーザ光の光軸位置の推定方法であって、前記所定の角度回転するまでは、前記第1遮光板及び前記第2遮光板を少なくとも互いに交差しないように回転させる第1ステップと、受光した前記レーザ光の光量に基づいて、前記受光センサが出力した前記電気信号を測定する第2ステップと、前記第1遮光板及び前記第2遮光板のそれぞれの回転角度を算出する第3ステップと、前記第1遮光板の回転角度及び前記第2遮光板の回転角度が、それぞれ前記所定の角度を超えたか否かを判定する第4ステップと、前記第4ステップの判定結果が否定的な場合は、前記第4ステップの判定結果が肯定的になるまで前記第1ステップから前記第3ステップまでの一連の処理を繰り返し実行し、前記第4ステップの判定結果が肯定的な場合は、前記第2ステップで得られた前記第1電気信号と前記第3ステップで得られた前記第1回転角度と前記第2回転角度とに基づいて、前記レーザ光の光軸位置を算出する第5ステップと、前記第5ステップで得られた前記光軸位置と予め設定された前記レーザ光の光軸位置である理想光軸位置との差分を算出する第6ステップと、前記第6ステップで得られた前記差分が所定値以下である場合は、前記第5ステップで得られた前記光軸位置を前記レーザ光の光軸位置であると推定する第7ステップと、を少なくとも備えたことを特徴とする。
【0015】
本開示に係る光軸位置の調整方法は、前記レーザ発振器を用いたレーザ光の光軸位置の調整方法であって、前記所定の角度回転するまでは、前記第1遮光板及び前記第2遮光板を少なくとも互いに交差しないよう回転させる第1ステップと、受光した前記レーザ光の光量に基づいて、前記受光センサが出力した前記電気信号を測定する第2ステップと、前記第1遮光板及び前記第2遮光板のそれぞれの回転角度を算出する第3ステップと、前記第1遮光板の回転角度及び前記第2遮光板の回転角度が、それぞれ前記所定の角度を超えたか否かを判定する第4ステップと、前記第4ステップの判定結果が否定的な場合は、前記第4ステップの判定結果が肯定的になるまで前記第1ステップから前記第3ステップまでの一連の処理を繰り返し実行し、前記第4ステップの判定結果が肯定的な場合は、前記第2ステップで得られた第1電気信号と前記第3ステップで得られた第1回転角度と第2回転角度とに基づいて、前記第2レーザ光の光軸位置を前記レーザ光の光軸位置として算出する第5ステップと、前記第5ステップで得られた前記光軸位置と前記理想光軸位置との差分を算出する第6ステップと、前記第6ステップで得られた前記差分が所定値以下であるか否かを判定する第7ステップと、前記第7ステップでの判定結果が否定的である場合は、前記レンズ移動機構により前記光軸調整レンズを移動させて前記レーザ光の光軸位置を調整する第8ステップと、を少なくとも備え、前記第1電気信号の大きさは、前記第1の状態における前記電気信号の大きさの半分であり、前記第1回転角度及び前記第2回転角度は、それぞれ、前記第2の状態で、前記電気信号が前記第1電気信号となるときの前記第1遮光板の回転角度及び前記第2遮光板の回転角度であり、前記第8ステップの実行後は、前記第7ステップの判定結果が肯定的になるまで前記第1ステップから前記第6ステップまでの一連の処理を繰り返し実行し、前記第7ステップの判定結果が肯定的な場合は、前記レーザ光の光軸位置の調整作業を終了することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本開示のレーザ光の光軸位置の評価装置によれば、簡便な構成でレーザ光の光軸位置を定量的に評価することができる。本開示のレーザ発振器及びレーザ加工装置によれば、レーザ光の光軸位置を簡便な方法で調整できる。また、本開示の光軸位置の推定方法によれば、単純なアルゴリズムで光軸位置を精度良く定量的に推定できる。本開示の光軸位置の調整方法によれば、光軸位置を精度良く推定し、簡便な構成で光軸位置を調整できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施形態に係るレーザ加工装置の概略構成図である。
【
図3】光軸位置の評価装置における第1遮光板及び第2遮光板のそれぞれの位置の時間変化を示す模式図である。
【
図4】光軸位置の評価装置における第1遮光板及び第2遮光板のそれぞれの位置の別の時間変化を示す模式図である。
【
図5】レーザ光の光軸位置の調整手順を示すフローチャートである。
【
図6】第1遮光板及び第2遮光板で遮光されていない場合の受光センサに入射するレーザ光を示す模式図である。
【
図7A】第1遮光板で半分、遮光された場合の受光センサに入射するレーザ光を示す模式図である。
【
図7B】第2遮光板で半分、遮光された場合の受光センサに入射するレーザ光を示す模式図である。
【
図8】受光センサに入射するレーザ光の光軸位置を決定する原理を説明する模式図である。
【
図9】受光センサの受光面における理想光軸中心の位置と算出光軸中心の位置とを示す図である。
【
図10】レーザ発振器の別の内部構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本開示の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本開示、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0019】
(実施形態)
[レーザ加工装置の構成]
図1は、実施形態に係るレーザ加工装置の概略構成を示し、レーザ加工装置100は、レーザヘッド50と、マニピュレータ60と、制御装置70と、レーザ発振器80と、光ファイバ90とを備えている。
【0020】
レーザヘッド50は、光ファイバ90で伝送されたレーザ光LBをワークWに向けて照射する。レーザヘッド50の構成については後で詳しく述べる。
【0021】
マニピュレータ60は、多関節軸ロボットであり、先端にレーザヘッド50が取り付けられ、レーザヘッド50を移動させる。なお、各関節軸(図示せず)には、サーボモータ(図示せず)が取り付けられており、制御装置70からの指令信号により、サーボモータの駆動制御が行われる。
【0022】
制御装置70は、1または複数のCPU(Central Processing Unit)またはMCU(Micro Controller Unit)(いずれも図示せず)を有している。また、制御装置70は、記憶部としてROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)やSSD(Solid State Drive)等の半導体メモリまたはHDD(Hard Disk Drive)あるいはその両方(いずれも図示せず)を有している。
【0023】
制御装置70は、マニピュレータ60の動作と、レーザ発振を含むレーザ発振器80の動作と、レーザヘッド50の動作と、を制御する。具体的には、制御装置70は、前述したマニピュレータ60の各サーボモータの動作を制御する。また、制御装置70は、レーザ発振器80における電源(図示せず)を動作させ、レーザ光LBのパワーやオンオフのタイミング等を制御する。さらに、制御装置70は、レーザ発振器80の内部に設けられたモータ20(
図2参照)の動作を制御する。
【0024】
また、制御装置70は、演算部71を有している。演算部71は、1または複数のCPUで構成される。演算部71は、レーザ光LBの光軸位置の評価装置10(以下、単に光軸位置評価装置10と呼ぶ。)での検出結果に基づいて、レーザ光LBの光軸中心(以下、算出光軸中心と呼ぶことがある。)の位置を算出する。また、演算部71は、算出光軸中心の位置と予め設定されたレーザ光LBの光軸中心(以下、理想光軸中心と呼ぶことがある。)の位置(以下、理想光軸位置と呼ぶことがある。)との差分を算出する。制御装置70は、演算部71で算出された前述の差分に応じて、レンズ移動機構84を動作させる。これについては、後で詳しく述べる。また、演算部71は、光軸位置評価装置10の一部をなしている。
【0025】
また、レーザヘッド50の内部に可動部品としての光学部品(図示せず)が配置されている場合、制御装置70は、当該光学部品の動作を制御する。
【0026】
なお、制御装置70は、少なくともレーザ発振器80の動作を制御すればよい。例えば、マニピュレータ60の動作を制御する制御装置と、レーザヘッド50の動作を制御する制御装置とを、制御装置70と別個に設けてもよい。
【0027】
レーザ発振器80は、レーザ発振によりレーザ光LBを発生させ、光ファイバ90に出力する。光ファイバ90は、レーザ発振器80から出力されたレーザ光LBをレーザヘッド50まで伝送する。
【0028】
図1に示すレーザ加工装置100は、ワークWの切断や溶接、穴あけ加工等を行うのに使用される。レーザ加工装置100では、制御装置70により、レーザ発振器80を動作させてレーザ光LBを発生させる。さらに、制御装置70によりマニピュレータ60を動作させるか、または、レーザヘッド50とマニピュレータ60の両方を動作させて、ワークWにレーザ光LBを照射し、レーザ加工を行う。
【0029】
[レーザ発振器の内部構成]
図2は、レーザ発振器の内部構成を示す図である。なお、説明の便宜上、
図2において、レーザ光LBを発生させるレーザ光源の図示を省略している。なお、レーザ発振器80の内部に他の部品、例えば、レーザ光LBの光路を変更させる反射ミラー(図示せず)が設けられていてもよい。
【0030】
図2に示すように、レーザ発振器80の内部には、光軸調整レンズ81と第1部分透過ミラー(第1光分岐部材)82と第2部分透過ミラー(第2光分岐部材)83とレンズ移動機構84とが収容されている。また、レーザ発振器80の内部には、光軸位置評価装置10が収容されている。
【0031】
光軸調整レンズ81は、レーザ光源から出射されたレーザ光LBを集光し、レーザ発振器80に接続された光ファイバ90に入射させる。レーザ光LBの光軸が光軸調整レンズ81の中心を通り、かつ光軸調整レンズ81が予め設定された位置に正しく配置されている場合、レーザ光LBの光軸と光ファイバ90の光軸中心とが一致するように、光ファイバ90がレーザ発振器80に取り付けられている。
【0032】
第1部分透過ミラー82は、光軸調整レンズ81を透過したレーザ光LBの大部分を透過して光ファイバ90に向かわせる。一方、レーザ光LBの一部を反射して第2部分透過ミラー83に向かわせる。
【0033】
第1部分透過ミラー82の光入射面(光反射面でもある。)は、レーザ光LBの光軸に対して45°の角度をなすように配置されている。したがって、第1部分透過ミラー82で反射されたレーザ光LB(以下、第1レーザ光LB1と呼ぶ。)の光軸と、光軸調整レンズ81を透過したレーザ光LBの光軸とのなす角度は、90°である。
【0034】
また、本実施形態において、第1部分透過ミラー82は、入射したレーザ光LBの99.99%を透過し、0.01%を反射するように構成されている。例えば、レーザ光LBのパワーが4kWの場合、第1レーザ光LB1のパワーは、0.4Wとなる。
【0035】
第2部分透過ミラー83は、第1レーザ光LB1の大部分を透過する一方、第1レーザ光LB1の一部を反射して光軸位置評価装置10の受光センサ40に向かわせる。
【0036】
第2部分透過ミラー83の光入射面(光反射面でもある。)は、第1レーザ光LB1の光軸に対して45°の角度をなすように配置されている。したがって、第2部分透過ミラー83で反射された第1レーザ光LB1(以下、第2レーザ光LB2と呼ぶ。)の光軸と、第2部分透過ミラー83に入射した第1レーザ光LB1の光軸とのなす角度は、90°である。つまり、第2レーザ光LB2の進行方向は、レーザ光LBの進行方向と同じである。また、第2レーザ光LB2の光軸は、光軸調整レンズ81を透過したレーザ光LBの光軸と平行である。
【0037】
また、本実施形態において、第2部分透過ミラー83は、入射した第1レーザ光LB1の99.99%を透過し、0.01%を反射するように構成されている。例えば、第1レーザ光LB1のパワーが0.4Wの場合、第2レーザ光LB2のパワーは、400μWとなる。なお、第2部分透過ミラー83を透過した第1レーザ光LB1は、レーザ発振器80の内部に設けられたダンパ(図示せず)に吸収される。
【0038】
レンズ移動機構84は、光軸調整レンズ81を保持するとともに、演算部71で算出された算出光軸中心と理想光軸中心の位置、つまり、理想光軸位置との差分に基づいて、制御装置70からの制御信号により光軸調整レンズ81を移動させる。
【0039】
本実施形態において、レンズ移動機構84による光軸調整レンズ81の移動方向は、以下の3方向である。まず、レンズ移動機構84は、光軸調整レンズ81をレーザ光LBの光軸と平行な方向に移動させる。また、レンズ移動機構84は、光軸調整レンズ81をレーザ光LBの光軸と直交する一の方向に移動させる。また、レンズ移動機構84は、光軸調整レンズ81をレーザ光LBの光軸方向及び前述した一の方向のそれぞれに直交する方向(別の方向)に移動させる。ただし、特にこれに限定されず、例えば、レンズ移動機構84が、一の方向及び別の方向のそれぞれに光軸調整レンズ81を移動させてもよい。
【0040】
レンズ移動機構84を動作させて、光軸調整レンズ81の位置を変更することで、光軸調整レンズ81を透過したレーザ光LBの光軸位置を変更することができる。
【0041】
光軸位置評価装置10は、モータ20と第1回転軸21と第2回転軸22と第1遮光板31と第2遮光板32と受光センサ40とを有している。これらのうち、少なくとも受光センサ40は、レーザ発振器80の筐体とは別の筐体(図示せず)の内部に収容されているのが好ましい。受光センサ40を別の筐体に収容することで、光軸調整レンズ81を透過したレーザ光LBの迷光が受光センサ40に入射されるのを防止できる。なお、この場合、別の筐体(図示せず)における第2レーザ光LB2の入射面には、第2レーザ光LB2が通過する開口が設けられる。開口は、第2レーザ光LB2の光路幅よりも十分に広くなるように設定される。なお、第1遮光板31及び第2遮光板32は、別の筐体の内部に配置されていてもよいし、外部に配置されていてもよい。
【0042】
モータ20は、第1回転軸21及び第2回転軸22をそれぞれ回転させる。なお、第1回転軸21及び第2回転軸22のうち、一方には、回転方向変換機構(図示せず)が取り付けられてもよい。例えば、第2回転軸22に回転方向変換機構が取り付けられると、第2回転軸22は、モータ20によって回転される方向と逆方向に回転する。つまり、モータ20によって、第1回転軸21が時計回り方向に回転しているとき、第2回転軸22は反時計回り方向に回転する。なお、回転方向が異なっていても、第1回転軸21及び第2回転軸22の回転速度は同じである。回転方向変換機構は、例えば、複数のカムや歯車等で構成される。
【0043】
モータ20は、制御装置70からの制御信号によって動作する。また、モータ20の回転量は、図示しないエンコーダ等で測定されており、その測定値は、演算部71に入力される。
【0044】
演算部71は、入力された測定値に基づいて、モータ20の回転を開始した時点からの第1回転軸21及び第2回転軸22の回転角度をそれぞれ算出する。
【0045】
第1遮光板31は、第1回転軸21の先端に、第1回転軸21に回転一体に接続され、受光センサ40の前方に配置されている。
図2及び後で示す
図3から明らかなように、第1遮光板31の平面形状は1/4円の扇形である。
【0046】
第2遮光板32は、第2回転軸22の先端に、第2回転軸22に回転一体に接続され、受光センサ40の前方に配置されている。
図2及び後で示す
図3から明らかなように、第2遮光板32の平面形状は1/4円の扇形である。また、第2遮光板32は、第1遮光板31と間隔をあけて配置されている。
【0047】
モータ20の回転に伴って、第1遮光板31は第1回転軸21を中心として第1回転軸21と同じ方向に回転する。同様に、モータ20の回転に伴って、第2遮光板32は第2回転軸22を中心として第2回転軸22と同じ方向に回転する。一方、前述したように、第2回転軸22は、第1回転軸21と逆方向に回転する。よって、第2遮光板32は、第1遮光板31と逆方向に回転する。なお、回転方向が異なっていても、第1遮光板31及び第2遮光板32の回転速度は同じである。また、第2回転軸22は、第1回転軸21と同じ方向に回転してもよい。つまり、第2遮光板32は、第1遮光板31と同じ方向に回転してもよい。回転方向によらず、第2遮光板32は、第1遮光板31と互いに交差しないように回転すればよい。
【0048】
また、第1遮光板31及び第2遮光板32とも、第2部分透過ミラー83から受光センサ40に向かう第2レーザ光LB2の光路上及び光路外に周期的に位置するように、それぞれ配置されている。
【0049】
受光センサ40は、例えば、フォトダイオードやフォトダイオードアレイ等の光電変換素子で構成される。受光センサ40は、所定の大きさの受光面を有しており、第2部分透過ミラー83で反射された第2レーザ光LB2を当該受光面で受光し、その光量に応じた電気信号を制御装置70に出力する。当該電気信号の大きさと第1遮光板31及び第2遮光板32における回転角度に基づいて、演算部71は、算出光軸中心の位置を算出する。この点については後で述べる。
【0050】
また、第1遮光板31または第2遮光板32によって、第2レーザ光LB2が遮蔽されない場合、受光センサ40の受光面の中心と第2レーザ光LB2の光軸とが一致するように、受光センサ40が配置されている。
【0051】
[光軸位置評価装置の動作について]
図3は、光軸位置の評価装置における第1遮光板及び第2遮光板のそれぞれの位置の時間変化を示す模式図である。
図4は、光軸位置の評価装置における第1遮光板及び第2遮光板のそれぞれの位置の別の時間変化を示す模式図である。
図3は、第1遮光板31と第2遮光板32とが互いに逆方向に回転する場合のそれぞれの位置の時間変化を示している。
図4は、
図3は、第1遮光板31と第2遮光板32とが同じ方向に回転する場合のそれぞれの位置の時間変化を示している。まず、
図3について説明する。
【0052】
図3における一番上の図に示すように、モータ20が回転する前の初期位置では、第2遮光板32は、第1遮光板31に対して概ね180°回転した位置にある。なお、第1回転軸21と第2回転軸22とが、第2レーザ光LB2の光軸に沿って見て、離間した位置に配置されている。このため、
図3に示すように、第1遮光板31の回転範囲と第2遮光板32の回転範囲とは一致しない。
【0053】
また、初期位置では、第1遮光板31及び第2遮光板32の両方とも、第2レーザ光LB2の光路外に配置される。つまり、受光センサ40の受光範囲、言い換えると、受光センサ40の受光面は、第1遮光板31及び第2遮光板32のいずれにも覆われていない。よって、前述したように、受光センサ40の受光面に第2レーザ光LB2の全量が入射される。この状態を第1の状態と呼ぶ。
【0054】
モータ20を動作させると、所定の回転速度で第1回転軸21及び第1遮光板31が回転する。同時に、同じ回転速度で第2回転軸22及び第2遮光板32が、第1回転軸21及び第1遮光板31の回転方向と逆方向に回転する。
図3に示す例では、第1遮光板31は時計回り方向に回転し、第2遮光板32は反時計回り方向に回転する。
【0055】
図3における上から2番目の図に示すように、モータ20が90°回転すると、受光センサ40に向かう第2レーザ光LB2の光路上に第1遮光板31が位置する。このため、第2レーザ光LB2は、受光センサ40に入射しない。この状態を第3の状態と呼ぶ。
【0056】
図3における上から3番目の図に示すように、モータ20が180°回転した場合も、第1遮光板31及び第2遮光板32の両方とも、第2レーザ光LB2の光路外に配置される。つまり、前述したように、受光センサ40の受光面に第2レーザ光LB2の全量が入射される第1の状態となる。
【0057】
図3における一番下の図に示すように、モータ20が270°回転した場合は、受光センサ40に向かう第2レーザ光LB2の光路上に第2遮光板32が位置する。このため、第2レーザ光LB2は、受光センサ40に入射しない。この状態も第3の状態と呼ぶ。
【0058】
つまり、第3の状態とは、第1遮光板31または第2遮光板32によって遮蔽されて、第2レーザ光LB2が受光センサ40に入射されない状態を言う。
【0059】
また、
図3から明らかなように、モータ20が初期位置から90°回転するまでの間に、第1遮光板31が第2レーザ光LB2の光路を横切る期間がある。同様に、モータ20が180°回転してから270°回転するまでの間に、第2遮光板32が第2レーザ光LB2の光路を横切る期間がある。これらの期間では、第1遮光板31または第2遮光板32によって第2レーザ光LB2の一部が遮蔽される一方、第2レーザ光LB2の残部が受光センサ40に入射される。以下、この状態を第2の状態と呼ぶ。
【0060】
【0061】
図4における一番上の図に示すように、モータ20が回転する前の初期位置では、第2遮光板32は、第1遮光板31に対して時計回り方向に概ね90°回転した位置にある。なお、第1回転軸21と第2回転軸22とが、第2レーザ光LB2の光軸に沿って見て、離間した位置に配置されている。このため、
図4に示すように、第1遮光板31の回転範囲と第2遮光板32の回転範囲とは一致しない。
【0062】
なお、第1遮光板31及び第2遮光板32が、それぞれ、中心角度がn度の扇形の場合、2つの遮光板31、32の初期位置は、以下のように設定される。まず、2つの遮蔽版31、32は回転方向にn度離れて配置される。また、2つの遮光板31、32のうち、回転方向で見て、前方に位置する遮光板が先行して回転する。例えば、
図4に示す例では、回転方向は時計回り方向であり、第2遮光板32が先行して回転する。
【0063】
また、初期位置では、第1遮光板31及び第2遮光板32の両方とも、第2レーザ光LB2の光路外に配置され、受光センサ40の受光面に第2レーザ光LB2の全量が入射される第1の状態である。これは、
図3に示したのと同様である。
【0064】
モータ20を動作させると、所定の回転速度で第1回転軸21及び第1遮光板31が回転する。同時に、同じ回転速度で第2回転軸22及び第2遮光板32が、第1回転軸21及び第1遮光板31の回転方向と同方向に回転する。
図4に示す例では、第1遮光板31、第2遮光板32ともには時計回り方向に回転する。
【0065】
図4における上から2番目の図に示すように、モータ20が90°回転すると、受光センサ40に向かう第2レーザ光LB2の光路上に第1遮光板31が位置し、第2レーザ光LB2が受光センサ40に入射しない第3の状態となる。
【0066】
図4における上から3番目の図に示すように、モータ20が180°回転した場合も、第1遮光板31及び第2遮光板32の両方とも、第2レーザ光LB2の光路外に配置され、第1の状態となる。なお、この場合、第2レーザ光LB2の進行方向から見て、第1遮光板31と第2遮光板32とは互いに重なる位置にある。
【0067】
図4における一番下の図に示すように、モータ20が270°回転した場合は、受光センサ40に向かう第2レーザ光LB2の光路上に第2遮光板32が位置し、第2レーザ光LB2が受光センサ40に入射しない第3の状態となる。
【0068】
また、
図4から明らかなように、モータ20が初期位置から90°回転するまでの間に、第1遮光板31が第2レーザ光LB2の光路を横切る期間がある。同様に、モータ20が180°回転してから270°回転するまでの間に、第2遮光板32が第2レーザ光LB2の光路を横切る期間がある。つまり、前述した第2の状態が発生する。
【0069】
また、第1回転軸21及び第2回転軸22が180°回転するまでは、第1遮光板31と第2遮光板32とは互いに交差しないように回転する。
【0070】
以上説明したように、第1回転軸21及び第2回転軸22のそれぞれの回転方向に関わらず、第1回転軸21及び第2回転軸22が所定の角度回転する間に、前述した第1の状態と第2の状態と第3の状態とがそれぞれ発生する。
図3及び
図4に示す例では、第1の状態→第2の状態→第3の状態→第2の状態→第1の状態の順にそれぞれ状態が変化する。
【0071】
なお、本実施形態における所定の角度とは、第2遮光板32が、第1遮光板31と逆方向に回転する場合は、360°であり、第2遮光板32が、第1遮光板31と同じ方向に回転する場合は、180°である。
【0072】
[光軸位置の調整手順]
前述した第2の状態において、受光センサ40で発生する電気信号の大きさと第1回転軸21及び第2回転軸22のそれぞれの回転角度とに基づいて、レーザ光LBの光軸位置を算出することができる。また、算出光軸中心の位置と理想光軸位置との差分に基づいて、レーザ光の光軸位置を調整することができる。このことについて、さらに説明する。
【0073】
第2レーザ光LB2における実際の光軸位置と理想光軸位置とにずれがある場合、レーザ光LBにおける実際の光軸位置と理想光軸位置との間にもずれが発生している。また、
図2に示す例では、両方の場合において、同じ方向に位置ずれが生じ、ずれ量も同じ大きさとなる。
【0074】
つまり、第2レーザ光LB2の光軸位置を算出することで、レーザ光LBの光軸位置を算出することができる。なお、この場合の光軸位置は、理想光軸位置を基準とした相対位置である。また、第2レーザ光LB2における算出光軸中心の位置と理想光軸位置との差分をずれの方向も含めて求めることで、レーザ光LBの光軸位置を理想光軸位置に合わせるように調整することができる。以下、図面を用いてさらに説明する。
【0075】
図5は、レーザ光の光軸位置の調整手順を示すフローチャートである。なお、
図5では、第2遮光板32が第1遮光板31と逆方向に回転する場合を例に取って説明している。
【0076】
レーザ光LBの光軸位置を調整するにあたって、まず、レーザ光LBの実際の光軸位置を評価、算出する必要がある。
【0077】
図5に示すように、まず、モータ20を動作させて、第1回転軸21に接続された第1遮光板31と第2回転軸22に接続された第2遮光板32とを回転させる(ステップS1)。
【0078】
回転開始と同時に受光センサ40の出力を測定する(ステップS2)。具体的には、つまり、受光センサ40で発生した電気信号を演算部71に入力し、その大きさをモニターする。また、受光センサ40の出力測定と並行して、第1遮光板31の回転角度と第2遮光板32の回転角度とを計算する(ステップS3)。具体的には、モータ20に設けられたエンコーダからの信号に基づいて、演算部71でそれぞれの回転角度を計算する。
【0079】
次に、第1遮光板31の回転角度と第2遮光板32の回転角度がそれぞれ360°を超えたか否かを判定する(ステップS4)。ステップS4は、ステップS3で算出された回転角度に基づいて、演算部71で実行される。
【0080】
ステップS4での判定結果が肯定的、つまり、第1遮光板31の回転角度と第2遮光板32の回転角度がそれぞれ360°を超えた場合は、第2レーザ光LB2、さらにレーザ光LBの光軸位置を計算する(ステップS5)。この計算は、演算部71で実行される。
【0081】
以下、レーザ光LBの光軸位置の計算を行うにあたっての考え方を説明する。
【0082】
図6は、第1遮光板及び第2遮光板で遮光されていない場合の受光センサに入射するレーザ光を示す模式図である。
図7Aは、第1遮光板で半分、遮光された場合の受光センサに入射するレーザ光を示す模式図である。
図7Bは、第2遮光板で半分、遮光された場合の受光センサに入射するレーザ光を示す模式図である。
図8は、受光センサに入射するレーザ光の光軸位置を決定する原理を説明する模式図である。なお、
図6~
図8では、第2レーザ光LB2の光軸が受光センサ40の受光面の中心に一致している、つまり、第2レーザ光LB2の光軸が理想光軸位置に一致している場合を図示している。
【0083】
図6に示すように、第2レーザ光LB2が、第1遮光板31及び第2遮光板32で遮光されていない場合、つまり、第1の状態では、第2レーザ光LB2の全量が、受光センサ40の受光センサに入射し、光電変換されて電気信号が発生する。
【0084】
一方、第2の状態では、第2レーザ光LB2の一部が第1遮光板31または第2遮光板32で遮光され、残部が受光センサ40に入射する。このため、受光センサ40で発生した電気信号の大きさは、第1の状態における電気信号の大きさよりも小さくなる。
【0085】
図7A,7Bに示す例では、第2レーザ光LB2の半分が第1遮光板31または第2遮光板32で遮光される。つまり、第2レーザ光LB2の全量の半分が、受光センサ40の受光センサに入射し、光電変換されて電気信号が発生する。この電気信号の大きさは、
図5に示す第1の状態における電気信号の大きさの半分である。
【0086】
また、受光センサ40の受光面を正方形とした場合、
図7Aに示す第1遮光板31の回転角度θ
Aは45°である。また、同様に、
図7Bに示す第2遮光板32の回転角度θ
Bは45°である。なお、以降の説明において、これらの回転角度θ
A及びθ
Bを第1回転角度θ
A及び第2回転角度θ
Bと呼ぶことがある。第1回転角度θ
Aは、第2レーザ光LB2の半分が第1遮光板31で遮光され、残りの半分が受光センサ40の受光センサに入射されるときの第1遮光板31の回転角度である。第2回転角度θ
Bは、第2レーザ光LB2の半分が第2遮光板32で遮光され、残りの半分が受光センサ40の受光センサに入射されるときの第2遮光板32の回転角度である。
【0087】
図7Aに示す状態で受光面に重なる第1遮光板31の一辺(以下、辺部と呼ぶことがある。)と
図7Bに示す状態で受光面に重なる第2遮光板32の辺部との交点が、第2レーザ光LB2の光軸中心の位置、つまり、レーザ光LBの光軸中心の位置に相当する。つまり、理想光軸中心の位置を基準として、この交点の位置を求めることで、レーザ光LBの光軸位置を算出することができる。
図8に示す例では、レーザ光LBの光軸位置は、受光面の中心、つまり、理想光軸中心の位置に一致している。
【0088】
これらのことから明らかなように、
図5のステップS5では、演算部71が第2レーザ光LB2の光軸位置を計算するにあたって、第1回転角度θ
A及び第2回転角度θ
B、つまり、第2レーザ光LB2の半分が遮光され、残り半分が受光センサ40に入射される場合の第1遮光板31及び第2遮光板32のそれぞれの回転角度が用いられる。
【0089】
図9は、受光センサの受光面における理想光軸中心の位置と算出光軸中心の位置とを示す図である。
図9に示す例では、理想光軸中心の位置と算出光軸中心の位置とは一致しておらず、ずれが生じている。言い換えると、θ
A≠45°、またはθ
B≠45°、あるいはθ
A≠45°かつ、θ
B≠45°である。
【0090】
図9に示すグラフは、受光センサ40の受光面に対応しており、受光面の一の辺(x方向)の長さをxとし、一の辺と直交する他の辺(y方向)の長さをyとしている。
【0091】
図9から明らかなように、算出光軸中心の位置は、直線L1と直線L2の交点にあたる。直線L1は、
図7Aに示した第2レーザ光LB2を横切る第1遮光板31の辺に対応し、直線L2は、
図7Bに示した第2レーザ光LB2を横切る第2遮光板32の辺に対応している。
【0092】
ここで、理想光軸中心の位置を(x’、y’)とし、算出光軸中心の位置を(x’’、y’’)とする。また、グラフの原点を基準とすると、x’’は、x方向に沿った原点距離x’’Aに相当する。よって、以降の説明において、算出光軸中心の位置を(x’’A、y’’)と表記する場合もある。
【0093】
図9から明らかなように、x’’、y’’に関し、式(1)、(2)に示す関係が成り立つ。
【0094】
【0095】
【0096】
ここで、式(3)に示すように、x’’Bは、受光面のx方向の長さxから前述の距離x’’Aを差し引いた値である。このことに鑑みれば、算出光軸中心の位置(x’’A、y’’)は、(x-x’’B、y’’)と記述することもできる。
【0097】
【0098】
式(1)~(3)から、x’’は、式(4)に示す形で、y’’ は、式(5)に示す形で、それぞれ記述できる。
【0099】
【0100】
【0101】
ステップS5では、演算部71は、まず、ステップS2で求めた受光センサ40の出力信号の大きさと、ステップS3で求めた回転角度とを用いて、第1回転角度θAと第2回転角度θBとをそれぞれ算出する。算出されたこれらの値と既知の値であるxとを、式(4)、(5)に代入してx’’とy’’をそれぞれ算出することができる。つまり、算出光軸中心の位置(x’’、y’’)を導出できる。
【0102】
なお、正接関数tanθA、tanθBを直接扱う代わりに、これらをマクローリン展開等の級数展開で近似した近似式に置き換えれば、より単純な実数の四則演算でx’’とy’’をそれぞれ算出することができる。
【0103】
ステップS5の実行後、演算部71は、理想光軸中心の位置(x、y)と算出光軸中心の位置(x’’、y’’)との差分を算出し(ステップS6)。さらに算出された差分が所定値以下であるか否かを判定する(ステップS7)。なお、この所定値は、レーザ光LBの光軸と光ファイバ90の光軸中心とのずれの許容値に応じて決定される。
【0104】
ステップS7の判定結果が肯定的、つまり、ステップS6で算出された差分が所定値以下であれば、ステップS5で得られた算出光軸中心の位置をレーザ光LBの光軸位置であると推定し、光軸調整作業を終了する。なお、ステップS1から開始してステップS7で作業を終了する場合、ステップS1からステップS7までの一連の処理は、レーザ光LBの光軸位置の推定方法でもある。
【0105】
一方、ステップS7の判定結果が否定的、つまり、ステップS6で算出された差分が所定値を超えていれば、制御装置70は、レンズ移動機構84を動作させて光軸調整レンズ81を移動させる。この移動方向と移動量は、ステップS6で算出した差分に基づいて決定される。光軸調整レンズ81が移動することで、光軸調整レンズ81を透過したレーザ光LBの光軸位置が変化する。つまり、レーザ光LBの光軸が調整される(ステップS8)。
【0106】
ステップS8の実行後は、ステップS1に戻って、ステップS7の判定結果が肯定的になるまで一連の処理を繰り返し実行する。
【0107】
[効果等]
以上説明したように、本実施形態に係る光軸位置評価装置10は、所定の方向に進行するレーザ光LBの光軸位置を算出する。
【0108】
光軸位置評価装置10は、受光センサ40と第1遮光板31と第2遮光板32と第1回転軸21と第2回転軸22とモータ20と演算部71とを少なくとも備えている。
【0109】
受光センサ40は、レーザ光LBが入射される受光面を有し、受光面で受光したレーザ光LBの光量に基づいて電気信号を出力する。
【0110】
第1遮光板31は、第1回転軸21の先端に、第1回転軸21に回転一体に接続され、受光センサ40の前方に配置されている。
図2及び後で示す
図3から明らかなように、第1遮光板31の平面形状は1/4円の扇形である。
【0111】
第2遮光板32は、第2回転軸22の先端に、第2回転軸22に回転一体に接続され、受光センサ40の前方に配置されている。また、第2遮光板32は、第1遮光板31と間隔をあけて配置されている。
【0112】
モータ20は、第1回転軸21及び第2回転軸22に接続され、第1回転軸21及び第2回転軸22を回転させる。
【0113】
第2回転軸22及び第2遮光板32は、第1回転軸21及び第1遮光板31と同方向もしくは逆方向に回転する。さらに言うと、前述した所定の角度回転するまでは、少なくとも第2遮光板32は、第1遮光板31と互いに交差しないように回転する。
【0114】
モータ20によって、第1遮光板31及び第2遮光板32が所定の角度回転する間に、第1の状態と第2の状態と第3の状態とが発生する。
【0115】
第1の状態は、第1遮光板31及び第2遮光板32によって遮蔽されずに、レーザ光LBが受光センサ40に入射される状態である。
【0116】
第2の状態は、第1遮光板31または第2遮光板32によってレーザ光LBの一部が遮蔽される一方、レーザ光LBの残部が受光センサ40に入射される状態である。
【0117】
第3の状態は、第1遮光板31または第2遮光板32によって遮蔽されて、レーザ光LBが受光センサ40に入射されない状態である。
【0118】
演算部71は、第2の状態における第1遮光板31及び第2遮光板32の回転角度と受光センサ40から出力される電気信号の大きさとに基づいて、レーザ光LBの光軸位置を算出する。
【0119】
具体的には、演算部71は、第2の状態において、第1遮光板31の第1回転角度θAと第2遮光板32の第2回転角度θBとに基づいて、レーザ光LBの光軸位置を算出する。
【0120】
第1回転角度θA及び第2回転角度θBは、それぞれ、受光センサ40から出力される電気信号が第1電気信号となるときの第1遮光板31及び第2遮光板32の回転角度である。また、第1電気信号の大きさは、第1の状態における受光センサ40から出力される電気信号の大きさの半分である。
【0121】
本実施形態によれば、簡便な構成でレーザ光LBの光軸位置を定量的に評価することができる。また、本実施形態によれば、レーザ光LBの光軸位置を精度良く評価できる。例えば、従来の手動での光軸位置の評価作業は、作業者の経験や勘に頼ったものとなっており、精度や再現性の面で問題があった。また、複数の受光センサをレーザ光の周囲に配置して、その信号強度等により光軸位置を評価する技術も提案されているが、評価のための装置コストが高くなるという問題がある。また、複数の受光センサの出力信号を測定し、その値を比較して光軸位置を評価するため、演算処理が複雑になると言う問題がある。
【0122】
一方、本実施形態によれば、第1遮光板31と第2遮光板32とを同時にかつ同方向もしくは逆方向に回転させ、それぞれがレーザ光LBを横切る前後での受光センサ40の出力信号を測定する。また、出力信号の大きさが最大値の半分になる第1電気信号が出力されたときの第1遮光板31の第1回転角度θAと第2遮光板32の第2回転角度θBとに基づいて、レーザ光LBの光軸位置を評価する。つまり、第1遮光板31及び第2遮光板32が1回転する間に、1つの受光センサ40から出力される電気信号と第1遮光板31及び第2遮光板32の回転角度を継続して測定すると言う簡便な手順で、レーザ光LBの光軸位置を評価することができる。また、電気信号の大きさが特定の値となる場合の第1遮光板31及び第2遮光板32の回転角度を求め、これに基づいて簡便なアルゴリズムで、レーザ光LBの光軸位置を評価することができる。また、レーザ光LBの光軸位置を評価するにあたって、1つの受光センサ40と、2枚の遮光板、つまり、第1遮光板31及び第2遮光板32と、これらを回転させる第1回転軸21及び第2回転軸22及びモータ20と言う簡便な構成を用いている。つまり、評価装置のコストを低減できる。
【0123】
第1遮光板31及び第2遮光板32のそれぞれは、回転中にレーザ光LBを横切る直線状の辺部を有している。
【0124】
図6~
図9を用いて説明したように、第1遮光板31及び第2遮光板32のそれぞれがレーザ光LBを横切る過程で、辺部がレーザ光LBの光軸を通過する。第1遮光板31及び第2遮光板32のそれぞれの辺部が直線状であれば、レーザ光LBの光軸に重なるときの第1遮光板31及び第2遮光板32のそれぞれ辺部の交点から、簡便にレーザ光LBの光軸位置を求めることができる。
【0125】
なお、本実施形態では、第1回転軸21及び第2回転軸22が180°または360°回転する間に、第1の状態と第2の状態と第3の状態とが発生する例を示した。しかし、第1回転軸21及び第2回転軸22の回転角度はこれらの角度より大きくても小さくてもよい。言い換えると、第1回転軸21及び第2回転軸22が所定の角度回転する間に、第1の状態と第2の状態と第3の状態とが発生すればよい。つまり、本願明細書における「所定の角度」とは、第1遮光板31及び第2遮光板32のそれぞれが、少なくとも1回は第1の状態を発生させる位置から第2の状態を発生させる位置に移動するまでの回転角度を言う。また、第1回転軸21及び第2回転軸22が所定の角度回転する間に、第1遮光板31と第2遮光板32とは互いに交差しないように回転する。
【0126】
本実施形態に係るレーザ発振器80は、レーザ光LBを出射するレーザ光源と、光軸位置評価装置と、レーザ光LBの光軸位置を調整する光軸調整レンズ81と、を少なくとも備えている。レーザ発振器80は、さらに、第1部分透過ミラー(第1光分岐部材)82と、第2部分透過ミラー(第2光分岐部材)83と、光軸調整レンズ81の位置を移動させるレンズ移動機構84と、を備えている。
【0127】
第1部分透過ミラー82は、光軸調整レンズ81を透過したレーザ光LBの一部を第1レーザ光LB1としてレーザ光LBの進行方向と交差する方向に反射させるとともに、レーザ光LBの残部を透過させる。
【0128】
第2部分透過ミラー83は、第1レーザ光LB1の一部を第2レーザ光LB2として第1レーザ光LB1の進行方向と交差する方向に反射させる。レーザ光LBの進行方向と第2レーザ光LB2の進行方向とは同じである。ただし、これに限定されず、レーザ光LBの進行方向は、第2レーザ光LB2の進行方向と異なっていてもよい。例えば、第2レーザ光LBの進行方向がレーザ光LBの進行方向と直交していてもよい。
【0129】
この場合、前述した第1の状態では、第1遮光板31及び第2遮光板32によって遮蔽されずに、第2レーザ光LB2が受光センサ40に入射される。
【0130】
第2の状態では、第1遮光板31または第2遮光板32によって第2レーザ光LB2の一部が遮蔽される一方、第2レーザ光LB2の残部が受光センサ40に入射される。
【0131】
第3の状態では、第1遮光板31または第2遮光板32によって遮蔽されて、第2レーザ光LB2が受光センサ40に入射されない。
【0132】
レーザ発振器80では、予め設定されたレーザ光LBの光軸位置である理想光軸位置と演算部71で算出されたレーザ光LBの光軸位置との差分に基づいて、レンズ移動機構84により光軸調整レンズ81を移動させてレーザ光LBの光軸位置を調整する。
【0133】
本実施形態のレーザ発振器80によれば、簡便な構成でレーザ光LBの光軸位置を精度良く評価でき、また、当該光軸位置を簡便な方法で調整することができる。このことにより、所望の方向及び位置に対してレーザ光LBを出射させることができる。
【0134】
本実施形態に係るレーザ加工装置100は、レーザ発振器80と、レーザ発振器80から出射されたレーザ光LBを導光する光ファイバ90と、光ファイバ90で導光されたレーザ光LBをワークWに向けて出射するレーザヘッド50をと、を少なくとも備えている。
【0135】
本実施形態のレーザ加工装置100によれば、レーザ光LBの光軸位置を精度良く評価でき、また、当該光軸位置を簡便な方法で調整することができる。このことにより、レーザ光LBの光軸と光ファイバ90の光軸中心とを簡便にかつ精度良く位置合わせを行え、出力ロスを抑制しつつ、ワークWの所望の位置に対してレーザ光LBを照射できる。
【0136】
本実施形態に係るレーザ光LBの光軸位置の推定方法は、光軸位置評価装置10を用いて行われる。
【0137】
具体的には、この光軸位置の推定方法は、以下に示す第1~第7ステップを少なくとも備えている。
【0138】
第1ステップ(
図5のステップS1)では、モータ20を動作させて、第1遮光板31及び第2遮光板32を少なくとも互いに交差しないように回転させる。
【0139】
第2ステップ(
図5のステップS2)では、受光したレーザ光LBの光量に基づいて、受光センサ40が出力した電気信号を測定する。
【0140】
第3ステップ(
図5のステップS3)では、第1遮光板31及び第2遮光板32のそれぞれの回転角度を算出する。
【0141】
第4ステップ(
図5のステップS4)では、第1遮光板31の回転角度及び第2遮光板32の回転角度が、それぞれ所定の角度を超えたか否かを判定する。
【0142】
第4ステップの判定結果が否定的な場合は、第4ステップの判定結果が肯定的になるまで第1ステップから第3ステップまでの一連の処理を繰り返し実行する。
【0143】
第4ステップの判定結果が肯定的な場合は、第5ステップ(
図5のステップS5)を実行する。第5ステップでは、第2ステップで得られた第1電気信号と第3ステップで得られた第1回転角度θ
Aと第2回転角度θ
Bとに基づいて、レーザ光LBの光軸位置を算出する。
【0144】
第6ステップ(
図5のステップS6)では、第5ステップで得られたレーザ光LBの光軸位置と予め設定されたレーザ光LBの光軸位置である理想光軸位置との差分を算出する。
【0145】
第6ステップ(
図5のステップS7において判定結果が肯定的な場合)では、第6ステップで得られた差分が所定値以下である場合は、第5ステップで得られた光軸位置をレーザ光LBの光軸位置であると推定する。
【0146】
本実施形態の光軸位置の推定方法によれば、単純なアルゴリズムでレーザ光LBの光軸位置を精度良く、かつ定量的に推定できる。
【0147】
本実施形態に係るレーザ光LBの光軸位置の調整方法は、第1~第8ステップを少なくとも備えている。このうち、第1~第6ステップは、光軸位置の推定方法における第1~第6ステップと同じである。
【0148】
第7ステップ(
図5のステップS7)は、第6ステップで得られた差分が所定値以下であるか否かを判定する。
【0149】
第8ステップ(
図5のステップS8)は、第7ステップでの判定結果が否定的である場合に、レンズ移動機構84により光軸調整レンズ81を移動させてレーザ光LBの光軸位置を調整する。
【0150】
第8ステップの実行後は、第7ステップの判定結果が肯定的になるまで第1ステップから第6ステップまでの一連の処理を繰り返し実行し、第7ステップの判定結果が肯定的な場合は、レーザ光LBの光軸位置の調整作業を終了する。
【0151】
本実施形態の光軸位置の調整方法によれば、レーザ光LBの光軸位置を精度良く推定し、その結果に基づいて、簡便な構成でレーザ光LBの光軸位置を調整できる。
【0152】
<変形例>
実施形態では、第1遮光板31及び第2遮光板32がそれぞれ1回転して、レーザ光LBの光路を横切るときの受光センサ40から出力される電気信号と第1遮光板31及び第2遮光板32の回転角度とを利用して、レーザ光LBの光軸位置を評価している。
【0153】
しかし、第1遮光板31及び第2遮光板32が、それぞれレーザ光LBの光路を横切るときに、第1遮光板31及び第2遮光板32の回転速度によっては、受光センサ40の出力信号にレーザ光LBのパワーの時間揺らぎの影響が大きく現れることがある。
【0154】
一般に、レーザ光LBは、誘導放出光と自然放出光の干渉による強度の時間的な揺らぎ(強度雑音)を含んでいる。よって、前述した第2の状態において、第1遮光板31及び第2遮光板32のそれぞれがレーザ光LBを横切る時間が、レーザ光LBのパワーの揺らぎ時間よりも短いと、第1電気信号を決める際に、レーザ光LBのパワーの時間揺らぎの影響を受ける。このため、第1回転角度θAや第2回転角度θBを正確に決められず、レーザ光LBの光軸位置を正確に評価できないおそれがある。
【0155】
そこで、この影響を低減するために、2つの方策を取ることができる。1つは、受光センサ40で第2レーザ光LB2を測定するにあたって、第1遮光板31及び第2遮光板32のそれぞれの単位回転角度当たりの受光センサ40での測定時間を、レーザ光LBのパワーの揺らぎ時間よりも長くなるように設定することである。
【0156】
このようにすることで、受光センサ40に入射される第2レーザ光LB2のパワーの時間揺らぎが平均化されて、当該時間揺らぎの影響を低減できる。
【0157】
別の方策として、
図10に示すように、受光センサ40の近傍であって、第1遮光板31及び第2遮光板32よりも前方に別の受光センサ41を配置することである。
【0158】
レーザ光LBが出射されている間は、受光センサ41で第2レーザ光LB2を受光し、別の受光センサから電気信号を出力させる。
【0159】
このようにすることで、第2レーザ光LB2、ひいてはレーザ光LBに変動がある場合、時間揺らぎも含めてその変動状態をモニターできる。このことにより、時間揺らぎの影響を補正する形で、第1電気信号や第1回転角度θAや第2回転角度θBを正確に決定でき、レーザ光LBの光軸位置を正確に評価できる。
【0160】
なお、一般に、第1遮光板31及び第2遮光板32の回転速度が高い程、受光センサ40での第2レーザ光LB2の測定が安定せず、その結果、光軸位置の評価時間が長引くことがある。これは、前述したレーザ光LBのパワーの時間揺らぎや受光センサ40の応答速度が影響するためである。したがって、第1遮光板31及び第2遮光板32の回転速度、つまり、モータ20の回転速度は、光軸位置の評価時間の安定度と評価精度とを考慮して、適切に決定される必要がある。
【0161】
なお、レーザ光LBの波長が短い程、光軸位置の評価精度は向上する傾向にある。レーザ光LBの波長が長くなると、第1遮光板31や第2遮光板32のそれぞれの辺部において、第2レーザ光LB2が回折される度合いが大きくなり、受光センサ40の受光面の外に第2レーザ光LB2の一部が漏れ出るおそれがあるためである。
【0162】
(その他の実施形態)
実施形態では、レーザ発振器80の内部に光軸位置評価装置10を配置する構成を示したが特にこれに限定されない。例えば、複数のレーザ発振器80から出射されたレーザ光LBを合成して光ファイバ90に導光する構成のレーザ加工装置100では、複数のレーザ発振器80と光ファイバ90との間に、複数のレーザ光LBを合成するビーム合成器(図示せず)と、合成後の結合レーザ光を光ファイバ90に光学結合させる集光光学ユニット(図示せず)とが設けられる。この場合、複数のレーザ発振器80のそれぞれに光軸位置評価装置10を設けてもよい。
【0163】
また、光軸位置評価装置10を集光光学ユニットの内部に配置してもよい。なお、集光光学ユニットの内部には、
図2に示す光軸調整レンズ81、第1部分透過ミラー82、第2部分透過ミラー83及びレンズ移動機構84に相当する各部品が配置される。
【0164】
また、レーザ加工装置100は、1または複数のレーザ発振器80から出射されるレーザ光LBを、光ファイバ90を介さずに、直接、ワークWに照射する構成であってもよい。なお、複数のレーザ発振器80から出射されるレーザ光LBをワークWに照射する場合。前述したように、複数のレーザ光LBが合成された結合レーザ光がワークWに照射される。
【0165】
また、レーザ光LBの出力が数百W以下であれば、
図2に示す第2部分透過ミラー83を省略して、第1部分透過ミラー82で反射された第1レーザ光LB1の光路上に受光センサ40を配置してもよい。この場合、第1回転軸21、第2回転軸22及びモータ20の位置も変更される。なお、この場合、レーザ光LBの進行方向に対して、第1レーザ光LB1の進行方向は直交するため、レーザ光LBの光軸位置を調整する際に光軸調整レンズ81を移動させる方向も変更されることに留意する必要がある。
【0166】
また、実施形態では、レーザ光LBの一部を分岐させるのに第1部分透過ミラー82を、第1レーザ光LB1の一部を分岐させるのに第2部分透過ミラー83を、それぞれ用いていた。ただし、これに限定されず、他の光学部品、例えば、回折格子等を用いてもよい。
【0167】
また、実施形態では、第1遮光板31及び第2遮光板32の平面形状をそれぞれ1/4円の扇形としたが、特にこれに限定されない。例えば、第1遮光板31及び第2遮光板32の平面形状が、それぞれ1/8円の扇形であってもよいし、N角形(Nは3以上の整数)であってもよい。第1遮光板31及び第2遮光板32の形状及びサイズは、以下に示す2つの条件を満たせばよい。
【0168】
まず、回転中の一の時点で、受光センサ40に入射される第2レーザ光LB2の光路を完全に覆う一方、一の時点と異なる別の時点で、第2レーザ光LB2の光路を覆わないサイズであることが必要である。
【0169】
また、第1遮光板31及び第2遮光板32のそれぞれにおいて、第2レーザ光LB2を通過する辺部が直線である。
【0170】
第1遮光板31及び第2遮光板32の形状及びサイズがこれらの条件を満たすことで、レーザ光LBの光軸位置を評価する際に、前述した第1~第3の状態を発生させることができる。
【0171】
なお、第1遮光板31及び第2遮光板32のそれぞれにおいて、第2レーザ光LB2を通過する辺部が、第1回転軸21及び第2回転軸22をそれぞれ通っていることまでは必須ではない。これらの辺部が、第1回転軸21及び第2回転軸22をそれぞれ通っていると、前述した算出光軸中心の位置(x’’、y’’)の算出作業が簡略化される。
【産業上の利用可能性】
【0172】
本開示のレーザ光の光軸位置の評価装置は、簡便な構成でレーザ光の光軸位置を定量的に評価でき、有用である。
【符号の説明】
【0173】
10 光軸位置評価装置
20 モータ
21 第1回転軸
22 第2回転軸
31 第1遮光板
32 第2遮光板
40 受光センサ
50 レーザヘッド
60 マニピュレータ
70 制御装置
71 演算部
80 レーザ発振器
81 光軸調整レンズ
82 第1部分透過ミラー(第1光分岐部材)
83 第2部分透過ミラー(第2光分岐部材)
84 レンズ移動機構
90 光ファイバ
100 レーザ加工装置