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  • 特開-防爆対応ドローンシステム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170932
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】防爆対応ドローンシステム
(51)【国際特許分類】
   B64U 70/83 20230101AFI20241204BHJP
   B64U 10/13 20230101ALI20241204BHJP
   B64U 10/60 20230101ALI20241204BHJP
   B64U 20/80 20230101ALI20241204BHJP
   B64U 50/34 20230101ALI20241204BHJP
   B64U 20/87 20230101ALI20241204BHJP
   B64U 80/30 20230101ALI20241204BHJP
   B64U 101/31 20230101ALN20241204BHJP
【FI】
B64U70/83
B64U10/13
B64U10/60
B64U20/80
B64U50/34
B64U20/87
B64U80/30
B64U101:31
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087706
(22)【出願日】2023-05-29
(71)【出願人】
【識別番号】713013777
【氏名又は名称】新村 稔
(71)【出願人】
【識別番号】511285440
【氏名又は名称】株式会社セイコーウェーブ
(72)【発明者】
【氏名】新村 稔
(72)【発明者】
【氏名】新村 波瑠
(57)【要約】      (修正有)
【課題】防爆性能を必要とされるゾーン2において、墜落することなく操縦に無線を使いながらも漏洩ガスに着火することなく運用することが可能な無人飛行体システムを提供する。
【解決手段】墜落防止のための索条つきのバルーンと、あるいは吊り下げ用索条と、給電線と、制御信号、映像情報のいずれか、ないし両方を安全に無線伝達するための手段と、漏洩ガスの最小着火エネルギー以下に制限する機能つきのドローンを制御するための制御装置と、安全地帯から電源を供給する装置と、可燃性ガスを検知するための検知器と、検知器に連動する電源遮断手段と、ガス検知器と連動し起動する強制排気ファンと、を有することを特徴とする無人飛行体システム。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無人飛行体(以降ドローンと称す)を利用するシステムにおいて、
ドローンは
1)墜落防止のための索条つきのバルーンを有し、
あるいは該バルーンの代わりに、上方から懸架するための索条を有し、
2)給電のための電線を有し、
3)制御信号と映像情報を通信するにあたり、いずれかを有線通信し、他方を赤外線通信や可視光通信を含む無線で通信し、ないし両方の情報を無線通信するための装置を有し、
安全地帯からドローンを制御し通信するための装置は
4)有線ないし無線によるドローンの制御機能および映像情報通信機能を有し、
5)該装置から発出されるのが電波である場合、該無線通信装置は、ドローンを運航するエリア内の設備で利用している可燃性ガスや可燃性液体の最小着火エネルギー以下で設定された空中線電力量に制限する機能を有し、
安全地帯からドローンへ給電するための装置は、
6)該電線を通して、ドローンへ電力を供給する機能を有し、
7)ドローンの運用エリアにおける可燃性ガスの濃度を検知するための検知器を有し、
8)該検知器に連動する供給電力遮断手段を有する
ことを特徴とする防爆対応ドローンシステム。
【請求項2】
請求項1のシステムにおいて、電波を利用する無線通信システムが、ドローンを運航するエリア内の設備で利用されている可燃性ガスや可燃性液体の最小着火エネルギー以下で設定された空中線電力量に到達したときに、ガス検知器に連動する供給電力遮断手段に遮断信号を送ることを特徴とする防爆対応ドローンシステム。
【請求項3】
請求項1、ないし請求項2で記載されたドローンシステムにおいて、該供給電力遮断手段が稼働しシステムへの電力供給を停止した直後から動作を開始する、強制排気ファンを備えたことを特徴とする防爆対応ドローンシステム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は防爆性能が必要とされる第2類危険個所(以降「ゾーン2」(労働安全衛生総合研究所技術指針「ユーザーのための工場防爆設備ガイド」 ISSN 1882-2703(平成24年11月1日発行)の定義による)において、墜落することなく、円滑に運用することが可能な、無人飛行体 (UAV; Unmanned Aviation Vehicle、以降ドローンと称す) システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ドローンの社会実装(社会的な意義をもった産業行動に移すこと)の試みが盛んになってきたが、以下のような大きな課題を抱えている。
【0003】
第一に、防爆対応ではないドローンを、石油化学コンビナートの敷地内などで運用(航行)する場合、「プラントにおけるドローンの安全な運用方法に関するガイドライン」(石油コンビナート等災害防止3省連絡会議(総務省消防庁、厚生労働省、経済産業省))に則った厳格な運用が求められ、ゾーン2では運用ができないなど制約が多い。なぜなら、石油化学コンビナートに設備されている配管や圧力容器、貯槽などには、可燃性の気体・液体が保管されている場合が多く、万が一漏洩が発生した場合、ドローンを運用するためのエネルギー(主にドローン搭載のバッテリ)の漏洩(漏電やドローンの墜落など)により、着火・爆発する可能性があるからである。
【0004】
第二に、ドローンは、種々の要因により、墜落するリスクが存在する。その要因とは、(1)電源(主に、ドローン搭載のバッテリ)の出力低下による回転モーターの能力低下、ないし喪失、(2)異物や構造物への衝突によるプロペラの損傷、(3)制御不能、などである。墜落によってドローン機体が爆発するリスクや、コンビナート内機器を損傷させるリスクがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特願2019-122630
【0006】
特許文献1は、可燃性の気体や液体が保管されている設備の近傍(通常は防爆エリア、ゾーン2と定義される)での運用を可能とした特許である。該特許では、ドローンの駆動電力送出、機体制御や映像情報の通信に電線(有線)を採用している。
【0007】
特許文献1記載によれば、ドローンシステムを防爆エリア(ゾーン2エリア)内で運用する場合、バルーン吊り下げないし索条での吊り下げをするとともに、ガス濃度検知器と連動する供給電力のインターロック機構を備えることで、安全な運用を可能せしめている。
【0008】
ただし、特許文献1記載のシステムは、通信に電波を利用した場合の該通信電波の空中線電力に起因した予期しないガス爆発可能性を排除するため、ドローン駆動電力だけでなくドローンの制御信号や映像信号の伝達にも電線による伝送を選択している。そのため、電線による重量増加やその取り回しにくさによる不便さがつきまとう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
市販されているドローンを前記「プラントにおけるドローンの安全な運用方法に関するガイドライン」に則って運用すると、制御用と映像伝送用に電波を利用しているため、あらゆる場所に電波は到達する。このドローンシステムが電力供給用インターロック機構を備えていたとしても、もし可燃性ガスが漏洩し、ガス検知器から離れた場所で爆発濃度下限界の25%を超えてしまっても、その地点のガス濃度を検知できないので、インターロック機構は働かない。さらにドローンからの電波の放射エネルギーが建屋の構造等何らかの要因でガス濃度の高い地点に集中し持続してしまった場合、ガスの最小着火エネルギーレベルに到達する可能性を否定できない。電波の利用がガス漏洩の際のガス爆発に結び付く可能性があるという課題がある。
【0010】
特許文献1記載のシステムでは、通信に電波を利用した場合の該通信電波の空中線電力に起因した予期しないガス爆発可能性を排除するため、ドローン駆動電力だけでなくドローンの制御信号や映像信号の伝達にも電線による伝送を選択している。そのため、電線による重量増加やその取り回しにくさによる不便さという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の防爆対応ドローンシステムは、「ドローン」と、「安全地帯からドローンを制御し通信するための装置」と、「安全地帯からドローンへ給電するための装置」から構成され、
「ドローン」は、
1)墜落防止のための索条つきのバルーンを有し、
あるいは該バルーンの代わりに、上方から懸架するための索条を有し、
2)給電のための電線を有し、
3)制御信号と映像情報を通信するにあたり、いずれかを有線通信し、他方を赤外線通信や可視光通信を含む無線で通信し、ないし両方の情報を無線通信するための装置を有し、
「安全地帯からドローンを制御し通信するための装置」は
4)有線ないし無線によるドローンの制御機能および映像情報通信機能を有し、
5)該装置から発出されるのが電波である場合、該無線通信装置は、ドローンを運航するエリア内の設備で利用している可燃性ガスや可燃性液体の最小着火エネルギー以下で設定された空中線電力量に制限する機能を有し、
「安全地帯からドローンへ給電するための装置」は、
6)該電線を通して、ドローンへ電力を供給する機能を有し、
7)ドローンの運用エリアにおける可燃性ガスの濃度を検知するための検知器を有し、
8)該検知器に連動する供給電力遮断手段を有する
ことを特徴とするシステムである。
【0012】
さらに、該無線通信システムが、ドローンを運航するエリア内の設備で利用している可燃性ガスや可燃性液体の最小着火エネルギー以下で設定された空中線電力量に到達したときに、ガス検知器に連動して電源を遮断する手段に遮断信号を送る手段を有する。
【0013】
さらに、上記記載されたドローンシステムにおいて、該電源遮断手段が稼働し、システムへの電力供給を停止した直後から動作を開始する、強制排気手段を有する。
【発明の効果】
【0014】
バルーンは爆発を防ぐためヘリウムガスで充填し、ドローンと索条で連結する。バルーンの高度と索条の長さは、ドローンの運用高度に応じて変更する。たとえば、ドローン運用高度が地上高さ10メートルから20メートルであれば、バルーン高度を30メートルにし、長さ15メートルの索条を連結することで、ドローンの運動性を保ったまま、墜落の危険を回避することができる。バルーンの運用高度はバルーンに連結したロープ紐で制御する。
【0015】
ドローン本体とドローンに搭載する可能性のある計測装置、たとえば3次元計測装置、は、ドローンに接続した電力供給用電線で駆動する。可燃性ガスを検知しない、あるいは、爆発下限界濃度の25%以下の状態で初めて電力供給を開始することで、ゾーン2での運用が可能となる。この仕組みは前述の文献「ユーザーのための工場防爆設備ガイド」では、「インターロック」という名称で規定されている。
【0016】
ドローンの制御、ないし映像伝送のために電波を利用する場合、日本国内で、無線従事者免許なしに運用できる周波数帯は、73MHz帯、920MHz帯、2.4GHz帯であり、送信機の最大電界強度ないし最大空中線電力は、それぞれ、200μV/m@500m、20mW、10mW/MHzと規定されている。
【0017】
一方、可燃性ガスの最小着火エネルギーは、メタンの場合0.28mJ、ブタンの場合、0.25mJ、ベンゼンの場合0.20mJ、水素の場合0.019mJ、二硫化炭素の場合0.009mJなどとなっている。
【0018】
ドローンを運航するエリア内の設備で、例えばベンゼンを運用している場合、ベンゼンが空中に漏れた場合の最小着火エネルギーは0.20mJであり、ドローンで利用する電波の空中線電力が20mWの場合、0.01秒の運用で、0.20mJに到達する可能性がある。これは送信機側の送出電波がすべて漏洩ガス近傍に集中し、かつ100%の効率でガスの着火エネルギーとして変換された場合に相当する。
【0019】
本発明のシステムは、可燃性ガスの最小着火エネルギー以下に電波の空中線電力の蓄積を制限できるため、万が一可燃性ガスが漏洩していて、それがガス検知器で検出できなかった場合でも、安全にドローンシステムの電波稼働を停止し、またはドローンシステムへの電力供給を遮断し、さらに、強制排気ファンを起動させることができる。
【0020】
例えば、電波の空中線電力を20μWに制限した場合、最小着火エネルギー20mJに到達する1,000秒未満の連続運航時限設定を制御装置に施すことで、ドローンを電波で制御する場合でも可燃性気体への着火を防ぐことができる。
【0021】
連続運転可能時間に到達した場合は、ドローンの運用を停止させる。ガス検知器が反応していない場合でも、ドローン運航エリア内の強制排気を実施したのちドローン運航を再開させることで、安全を担保しつつゾーン2内におけるドローン運用を継続させることが可能となる。


【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】従来のドローン構成(特願2019-122630記載の事例)
図2】本発明のドローンの構成
【発明を実施するための形態】
【0023】
省略
【実施例0024】
省略
【産業上の利用可能性】
【0025】
省略
【符号の説明】
【0026】
20・・・バルーン
21・・・バルーン索条
22・・・ドローン本体
23・・・電線(電力供給と通信用)
24・・・インターロックシステム
25・・・ガス検知器
26・・・制御装置(有線経由)
27・・・電源供給装置
28・・・バルーン係留用ロープ
29・・・電線(電力供給)
30・・・無線制御装置(電波の空中線電力量を制限する機構付き)
31・・・強制排気用ファン
32・・・電波





図1
図2