(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170935
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】無線通信端末、制御プログラム、及び制御方法
(51)【国際特許分類】
H04W 24/10 20090101AFI20241204BHJP
H04W 72/0453 20230101ALI20241204BHJP
【FI】
H04W24/10
H04W72/0453
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087712
(22)【出願日】2023-05-29
(71)【出願人】
【識別番号】390040187
【氏名又は名称】株式会社バッファロー
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】弁理士法人航栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 晃大
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA44
5K067EE02
5K067EE10
5K067LL05
5K067LL11
(57)【要約】
【課題】測定作業を増やさずに、電波環境に関する正確な情報を得ることが可能な無線通信端末、制御プログラム、及び制御方法を提供すること。
【解決手段】アクセスポイント10に対して少なくとも第1の帯域と第2の帯域で接続して通信可能な無線通信端末20は、アクセスポイント10と測定点との間の第1の帯域における無線品質を示す第1の無線環境情報と、アクセスポイント10と測定点との間の第2の帯域における無線品質を示す第2の無線環境情報と、に基づいて、アクセスポイント10と測定点との間の障害物の有無を判定し、障害物の有無の判定結果に基づいて、アクセスポイント10の無線通信環境に関する情報を出力する、プロセッサを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信装置に対して少なくとも第1の帯域と第2の帯域で接続して通信可能な無線通信端末であって、
前記無線通信装置と測定点との間の前記第1の帯域における無線品質を示す第1の無線環境情報と、前記無線通信装置と前記測定点との間の前記第2の帯域における無線品質を示す第2の無線環境情報と、に基づいて、前記無線通信装置と前記測定点との間の障害物の有無を判定し、
前記障害物の有無の判定結果に基づいて、前記無線通信装置の無線通信環境に関する情報を出力する、
プロセッサを備える無線通信端末。
【請求項2】
請求項1に記載の無線通信端末であって、
前記第1の無線環境情報及び前記第2の無線環境情報は、無線品質の実測値である、
無線通信端末。
【請求項3】
請求項2に記載の無線通信端末であって、
前記プロセッサは、
前記第1の無線環境情報に基づいて、前記無線通信装置と前記無線通信端末との間の前記第2の帯域における無線品質の理論値を算出し、
前記理論値と前記第2の無線環境情報との比較に基づいて前記障害物の有無を判定する、
無線通信端末。
【請求項4】
請求項2に記載の無線通信端末であって、
前記第1の無線環境情報及び前記第2の無線環境情報は、前記無線通信端末による無線品質の実測値であり、
前記測定点は前記無線通信端末の位置である、
無線通信端末。
【請求項5】
請求項1に記載の無線通信端末であって、
前記プロセッサは、前記無線通信端末が前記無線通信装置に対して前記第1の帯域と前記第2の帯域で同時接続した状態で前記第1の無線環境情報及び前記第2の無線環境情報を取得する制御を行う、
無線通信端末。
【請求項6】
請求項1に記載の無線通信端末であって、
前記無線通信装置の無線通信環境に関する情報は、前記障害物の有無に応じた、前記無線通信装置との間の無線通信における通信品質の分布を示すマップを含む、
無線通信端末。
【請求項7】
請求項6に記載の無線通信端末であって、
前記マップは、前記障害物の有無の判定結果に応じて決定された前記障害物の位置に応じて計算された前記通信品質の分布を示し、
前記プロセッサは、前記障害物の位置の変更をユーザから受け付けた場合に、前記通信品質の分布を再計算して前記マップを更新する、
無線通信端末。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の無線通信端末であって、
前記無線通信装置の無線通信環境に関する情報は、前記障害物の有無を示す情報を含む、
無線通信端末。
【請求項9】
無線通信装置に対して少なくとも第1の帯域と第2の帯域で接続して通信可能な無線通信端末の制御プログラムであって、
前記無線通信端末のプロセッサに、
前記無線通信装置と測定点との間の前記第1の帯域における無線品質を示す第1の無線環境情報と、前記無線通信装置と前記測定点との間の前記第2の帯域における無線品質を示す第2の無線環境情報と、に基づいて、前記無線通信装置と前記測定点との間の障害物の有無を判定し、
前記障害物の有無の判定結果に基づいて、前記無線通信装置の無線通信環境に関する情報を出力する、
処理を実行させるための制御プログラム。
【請求項10】
無線通信装置に対して少なくとも第1の帯域と第2の帯域で接続して通信可能な無線通信端末の制御方法であって、
前記無線通信端末のプロセッサが、
前記無線通信装置と測定点との間の前記第1の帯域における無線品質を示す第1の無線環境情報と、前記無線通信装置と前記測定点との間の前記第2の帯域における無線品質を示す第2の無線環境情報と、に基づいて、前記無線通信装置と前記測定点との間の障害物の有無を判定し、
前記障害物の有無の判定結果に基づいて、前記無線通信装置の無線通信環境に関する情報を出力する、
制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信端末、制御プログラム、及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、無線LAN(Local Area Network)の電波範囲や強度を測定する装置が知られている。また、通信可否エリアや、場所による通信パフォーマンスの違い等をユーザに提示するため、電波環境を可視化する手法としてヒートマップが知られている。例えば、特許文献1には、無線LANの電波範囲や電波強度を簡易的に自動測定し、測定した電波強度の分布をヒートマップのように表示することが可能な情報作成装置について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的なヒートマップでは、通信端末がアクセスポイントから受信した電波の強度を、測定した位置にプロットし、電波の強弱を色の違いで可視化している。また、測定位置とアクセスポイントの間の電波強度を全て測定することは困難であるため、測定位置とアクセスポイントの間では電波強度が一様に変化するものとして補完している。
【0005】
しかし、測定位置とアクセスポイントの間には障害物が存在したり、壁や通路で電波の回り込みが必要になったりする場合がある。このような場合、5GHzや6GHzといった周波数帯を用いる無線通信では電波強度等の急激な減衰が発生する。したがって、測定位置とアクセスポイントの間の電波強度は実際には障害物等の存在により一様に変化しない場合が多い。また、障害物等の付近など、一様に変化しない領域の電波強度を正確に描画するには、多くの測定点が必要であり測定作業が増加する。このため、周辺環境による影響を考慮した正確な電波強度を容易に測定できることが求められる。特許文献1の情報作成装置には、障害物が存在する場合の電波範囲や電波強度の測定については開示されていない。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、測定作業を増やさずに、電波環境に関する正確な情報を得ることが可能な無線通信端末、制御プログラム、及び制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の無線通信端末は、無線通信装置に対して少なくとも第1の帯域と第2の帯域で接続して通信可能な無線通信端末であって、
前記無線通信装置と測定点との間の前記第1の帯域における無線品質を示す第1の無線環境情報と、前記無線通信装置と前記測定点との間の前記第2の帯域における無線品質を示す第2の無線環境情報と、に基づいて、前記無線通信装置と前記測定点との間の障害物の有無を判定し、
前記障害物の有無の判定結果に基づいて、前記無線通信装置の無線通信環境に関する情報を出力する、
プロセッサを備えるものである。
【0008】
本発明の制御プログラムは、無線通信装置に対して少なくとも第1の帯域と第2の帯域で接続して通信可能な無線通信端末の制御プログラムであって、
前記無線通信端末のプロセッサに、
前記無線通信装置と測定点との間の前記第1の帯域における無線品質を示す第1の無線環境情報と、前記無線通信装置と前記測定点との間の前記第2の帯域における無線品質を示す第2の無線環境情報と、に基づいて、前記無線通信装置と前記測定点との間の障害物の有無を判定し、
前記障害物の有無の判定結果に基づいて、前記無線通信装置の無線通信環境に関する情報を出力する、処理を実行させるためのものである。
【0009】
本発明の制御方法は、無線通信装置に対して少なくとも第1の帯域と第2の帯域で接続して通信可能な無線通信端末の制御方法であって、
前記無線通信端末のプロセッサが、
前記無線通信装置と測定点との間の前記第1の帯域における無線品質を示す第1の無線環境情報と、前記無線通信装置と前記測定点との間の前記第2の帯域における無線品質を示す第2の無線環境情報と、に基づいて、前記無線通信装置と前記測定点との間の障害物の有無を判定し、
前記障害物の有無の判定結果に基づいて、前記無線通信装置の無線通信環境に関する情報を出力する、ものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、測定作業を増やさずに、電波環境に関する正確な情報を得ることが可能な無線通信端末、制御プログラム、及び制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態であるアクセスポイント10の構成を示す図である。
【
図2】無線通信端末の一例である無線通信端末20の構成を示す図である。
【
図3】無線通信端末20のプロセッサ21によるヒートマップ作成処理の一例を示すフローチャートである。
【
図4】障害物の有無の判定処理を示すフローチャートである。
【
図5】アクセスポイント10が設置される対象領域のレイアウト画像30の一例を示す図である。
【
図6】対象領域のレイアウト画像30に作成されたヒートマップの一例を示す図である。
【
図7】アクセスポイント10と測定点aとの間に障害物が存在すると判定された場合に作成されるヒートマップの一例を示す図である。
【
図8】RSSIを測定する地点を複数の地点とした場合に作成されるヒートマップの一例を示す図である。
【
図9】無線通信端末20のプロセッサ21によるヒートマップ作成処理の変形例を示すフローチャートである。
【
図10】障害物の位置の変更指示の一例を示す図である。
【
図11】位置を変更した障害物と更新されたヒートマップの一例を示す図である。
【
図12】無線通信端末20のプロセッサ21によるアンテナピクトの表示処理の一例を示すフローチャートである。
【
図13】アクセスポイント10と無線通信端末20との間に障害物が存在すると判定された場合に表示されるアンテナピクトの一例を示す図である。
【
図14】アクセスポイント10と無線通信端末20との間に障害物が存在しないと判定された場合に表示されるアンテナピクトの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0013】
(実施形態)
<アクセスポイント10の構成>
図1は、本発明の一実施形態であるアクセスポイント10の構成を示す図である。
図1に示すアクセスポイント10は、Wi-Fi 7(登録商標)等の無線LANのアクセスポイントである。アクセスポイント10は、本発明の無線通信装置の一例である。
【0014】
アクセスポイント10は、プロセッサ11と、メインメモリ12と、補助メモリ13と、通信用無線I/F14a~14cと、有線I/F15,16と、を備える。
【0015】
プロセッサ11は、信号処理を行う回路であり、例えばアクセスポイント10の全体の制御を司るCPU(Central Processing Unit)である。なお、プロセッサ11は、FPGA(Field Programmable Gate Array)やDSP(Digital Signal Processor)などの他のデジタル回路により実現されてもよい。また、プロセッサ11は、複数のデジタル回路を組み合わせて実現されてもよい。
【0016】
メインメモリ12は、例えばRAM(Random Access Memory)である。メインメモリ12は、プロセッサ11のワークエリアとして使用される。補助メモリ13は、例えば磁気ディスク、光ディスク、フラッシュメモリなどの不揮発性メモリである。補助メモリ13には、アクセスポイント10を動作させる各種のプログラムが記憶されている。補助メモリ13に記憶されたプログラムは、メインメモリ12にロードされてプロセッサ11によって実行される。
【0017】
通信用無線I/F14a~14cは、無線通信端末との間で無線通信を行う通信インターフェースである。通信用無線I/F14aは、2.4GHzのバンド(周波数帯)を使用して無線通信を行う。通信用無線I/F14bは、5GHzのバンドを使用して無線通信を行う。通信用無線I/F14cは、6GHzのバンドを使用して無線通信を行う。アクセスポイント10は、通信用無線I/F14a~14cを用いて、無線通信端末との間で、複数のバンドでの同時接続(例えばMLO:Multi-Link Operation)が可能である。
【0018】
有線I/F15は、インターネット等のWAN(Wide Area Network)に接続し、WANを介して他の通信装置との通信を行う。有線I/F16は、LANに接続し、LANを介して他の通信装置との通信を行う。
【0019】
例えば、アクセスポイント10は、通信用無線I/F14a~14cにより無線通信端末と通信を行い、有線I/F15によりWAN側の通信装置と通信を行うことで、無線通信端末とWAN側の通信装置との間のデータ通信を中継する。また、アクセスポイント10は、有線I/F16によりLAN側の通信端末と通信を行い、有線I/F15によりWAN側の通信装置と通信を行うことで、LAN側の通信端末とWAN側の通信装置との間のデータ通信を中継する。
【0020】
<無線通信端末20の構成>
図2は、無線通信端末の一例である無線通信端末20の構成を示す図である。
図2に示す無線通信端末20は、Wi-Fi 7等の無線LANの無線通信に対応した無線通信端末である。無線通信端末20は、プロセッサ21と、メインメモリ22と、補助メモリ23と、通信用無線I/F24a~24cと、ユーザI/F25と、を備える。
【0021】
プロセッサ21は、信号処理を行う回路であり、例えば無線通信端末20の全体の制御を司るCPUである。なお、プロセッサ21は、FPGAやDSPなどの他のデジタル回路により実現されてもよい。また、プロセッサ21は、複数のデジタル回路を組み合わせて実現されてもよい。
【0022】
メインメモリ22は、例えばRAMである。メインメモリ22は、プロセッサ21のワークエリアとして使用される。補助メモリ23は、例えば磁気ディスク、光ディスク、フラッシュメモリなどの不揮発性メモリである。補助メモリ23には、無線通信端末20を動作させる各種のプログラムが記憶されている。補助メモリ23に記憶されたプログラムは、メインメモリ22にロードされてプロセッサ21によって実行される。
【0023】
通信用無線I/F24a~24cは、アクセスポイント(無線通信装置)10との間で無線通信を行う通信インターフェースである。通信用無線I/F24aは、2.4GHzのバンドを使用して無線通信を行うことが可能である。通信用無線I/F24bは、5GHzのバンドを使用して無線通信を行うことが可能である。通信用無線I/F24cは、6GHzのバンドを使用して無線通信を行うことが可能である。無線通信端末20は、通信用無線I/F24a~24cを用いて、アクセスポイント10との間で、複数のバンドでの同時接続(例えばMLO)が可能である。2.4GHzのバンドは、本発明の「第1の帯域」の一例である。5GHz、6GHzのバンドは、本発明の「第2の帯域」の一例である。なお、5GHz、6GHzのバンドが本発明の「第1の帯域」の一例であり、2.4GHzのバンドが本発明の「第2の帯域」の一例であってもよい。
【0024】
ユーザI/F25は、プロセッサ21との間で通信を行う通信インターフェースである。ユーザI/F25は、プロセッサ21の入力装置及び表示装置として機能する。ユーザI/F25は、例えばタッチパネル等で構成される。ユーザI/F25は、プロセッサ21に対する各種の指令を入力することができるように構成されている。また、ユーザI/F25は、プロセッサ21の制御内容に関する各種の画面を表示するように構成されている。
【0025】
無線通信端末20は、例えばアクセスポイント10を管理するユーザが所持する端末であり、アクセスポイント10との間で無線通信を行う機能を有する通信機器である。無線通信端末20は、一例としてはスマートフォンである。ただし、無線通信端末20は、スマートフォンに限らず、タブレット端末、PC(Personal Computer)、ウェアラブル端末など各種の端末とすることができる。
【0026】
無線通信端末20は、アクセスポイント10が設置される例えば自宅やオフィス等の対象領域における、無線LANの電波強度の分布を測定してユーザに表示することが可能である。この電波強度は、アクセスポイント10から送信される無線信号をどの程度の強度で受信可能であるかを示す無線品質であり、例えばRSSI(Received Signal Strength Indicator)等により表される。無線品質の指標としては、例えばデータの転送速度を示すスループット等であってもよい。
【0027】
また、無線通信端末20は、アクセスポイント10との無線LANにおける電波強度の分布、すなわちアクセスポイント10の無線通信環境を、例えばヒートマップにより表示することが可能である。
【0028】
無線LANの電波強度の分布をユーザに表示することにより、ユーザは、例えば、所望の各位置で十分な電波強度が得られるように、アクセスポイント10の位置を変更したり、新たな中継機を追加したりといった対応が容易になる。あるいは、ユーザは、自宅やオフィス等の対象領域内のいずれの位置に行けば十分な電波強度が得られるかを容易に把握することが可能である。
【0029】
<無線通信端末20のプロセッサ21によるヒートマップ作成処理>
図3は、無線通信端末20のプロセッサ21によるヒートマップ作成処理の一例を示すフローチャートである。本処理でヒートマップを作成するにあたり、まずユーザは無線通信端末20により、電波強度(RSSI)の測定の対象領域(例えばオフィス)において任意の測定点における現在のRSSIを実測し補助メモリ23に記憶する。無線通信端末20は、アクセスポイント10との間で、MLOにより、2.4GHz、5GHz、及び6GHzで同時に無線接続し、無線通信を行うものとする。測定点の位置及び数はユーザで設定してもよい。測定の際、ユーザは例えば予め補助メモリ23に登録してある対象領域の間取り図を選択して、対象領域における測定点の位置を指定する。また、測定の際に、対象領域に設置されているアクセスポイント10の位置を設定してもよい。対象領域におけるアクセスポイント10の位置は、変更されることが無ければ間取り図と共に予め登録しておいてもよい。
【0030】
プロセッサ21は、例えば無線通信のバンドが5GHz又は6GHzについてのヒートマップの表示指示を受け付けた場合に本処理を実行する。ヒートマップの表示指示は、例えば無線通信端末20のタッチパネルに表示されるヒートマップ表示ボタンのタッチ操作により受け付けられる。本処理が開始されると、プロセッサ21は、iを1に設定(初期化)する(ステップS11)。iは、RSSIの測定点のインデックスである。測定点は、測定端末として動作する無線通信端末20の位置のことである。
【0031】
次に、プロセッサ21は、測定点iのRSSIをマップの測定点iに設定する(ステップS12)。すなわち、プロセッサ21は、ヒートマップの作成のために実測した測定点のRSSIを補助メモリ23から読み出し、読み出したRSSIをその測定点における各バンドの実測値として設定する。
【0032】
次に、プロセッサ21は、
図4に示す障害物の有無の判定処理を行い、アクセスポイント10と測定点iとの間に障害物が存在するか否かを判定する(ステップS13)。障害物とは、アクセスポイント10と測定点iとの間の無線通信の障害となる物、例えば対象領域の壁、床、天井、柱、キャビネット、人体等のことである。ステップS13における障害物の有無の判定処理については、
図4等に後述する。
【0033】
次に、プロセッサ21は、iの値がNと等しいか否かを判定する(ステップS14)。iは、1~Nの値をとる。Nは、RSSIの測定点の数である。すなわち、プロセッサ21は、RSSIの測定点の全てについて、RSSIの実測値の設定及びアクセスポイント10との間の障害物の有無の判定を実行したか否かを判定する。
【0034】
ステップS14において、iの値がNと等しくない場合(ステップS14:No)には、RSSIの測定点のうち実測値の設定及び障害物の有無の判定を未実行の測定点が存在する状況であるため、プロセッサ21は、iをインクリメントし(ステップS15)、ステップS12に戻る。
【0035】
ステップS14において、iの値がNと等しい場合(ステップS14:Yes)には、プロセッサ21は、RSSIの測定点の全てについて実測値の設定及び障害物の有無の判定を実行した状況であるため、プロセッサ21は、アクセスポイント10の位置におけるRSSIと、ステップS12において各測定点に設定したRSSIと、ステップS13における障害物の有無の判定結果と、に基づいて、RSSIの高さを濃淡で表すヒートマップを作成し(ステップS16)、一連の処理を終了する。ヒートマップの作成については、
図5から
図8で後述する。
【0036】
次に、プロセッサ21は、作成したヒートマップを無線通信端末20のタッチパネルに表示して(ステップS17)、一連の処理を終了する。
【0037】
<プロセッサ21による障害物の有無の判定処理>
図4は、上記
図3のステップS13における「障害物の有無の判定処理」を示すフローチャートである。本判定処理は、測定点i毎(i=1~N)に実行される。すなわち、対象領域にN箇所の測定点を設定する場合には、N回実行される。
【0038】
まず、プロセッサ21は、測定点iにおいて、アクセスポイント10との間の無線通信のバンドとして使用している2.4GHzのRSSIの実測値と、無線通信のバンドとして使用している5GHzのRSSIの実測値と、を補助メモリ23から取得する(ステップS21)。この実測値は
図3のヒートマップ作成処理を開始する前に測定して記憶した現在のRSSIの実測値である。2.4GHzのRSSIの実測値は、本発明の「第1の無線環境情報」の一例である。5GHzのRSSIの実測値は、本発明の「第2の無線環境情報」の一例である。
【0039】
次に、プロセッサ21は、ステップS21で取得した2.4GHzのRSSIの実測値に基づいて、5GHzのRSSIの理論値を算出する(ステップS22)。5GHzのRSSIの理論値とは、障害物の影響を受けにくい低いバンドである2.4GHzのRSSIの値を基にして算出される理論値である。
【0040】
次に、プロセッサ21は、ステップS22で算出した5GHzのRSSIの理論値と、ステップS21で取得した5GHzのRSSIの実測値と、を比較する(ステップS23)。
【0041】
次に、プロセッサ21は、ステップS23の比較の結果において、5GHzのRSSIの理論値と実測値との差が閾値よりも大きいか否かを判定する(ステップS24)。閾値は、例えば、アクセスポイント10と測定点iとの間に障害物がないと仮定した場合の、5GHzにおける、アクセスポイント10と測定点iとの間の距離による減衰差相当の値である。ただし、閾値は、これに限らず、5GHzと2.4GHzとの無線電波の特性差や、理論値に対する実測値の一般的なばらつき等に基づいて任意に設定することができる。
【0042】
ステップS24において5GHzにおけるRSSIの理論値とRSSIの実測値との差が閾値よりも大きい場合(ステップS24:Yes)には、プロセッサ21は、アクセスポイント10と測定点iとの間に障害物が存在していると判定して(ステップS25)、本処理を終了する。無線通信のバンドが5GHzのように高い場合には、障害物による影響を受けやすく、アクセスポイント10と測定点iとの間に障害物が存在するとRSSIの減衰量が大きくなる。
【0043】
ステップS24において5GHzのRSSIの理論値と実測値との差が閾値以下である場合(ステップS24:No)には、プロセッサ21は、アクセスポイント10と測定点iとの間に障害物が存在していないと判定して(ステップS26)、本処理を終了する。
【0044】
なお、上記ステップS22では、2.4GHzのRSSIの実測値に基づいて、5GHzのRSSIの理論値を算出しているが、これに限定されず、例えば5GHzのRSSIの実測値に基づいて、2.4GHzのRSSIの理論値を算出するようにしてもよい。その場合には、ステップS23において2.4GHzのRSSIの理論値と実測値とを比較する。
【0045】
また、上記処理では、5GHzのRSSIの実測値及び理論値を使用しているが、これに限定されず、例えば6GHzのRSSIの実測値及び理論値を使用するようにしてもよい。
【0046】
また、上記処理では、5GHzのRSSIの理論値と実測値との比較により障害物の有無を判定したが、これに限定されない。例えば、2.4GHzの実測値と5GHz(又は6GHz)の実測値から障害物の有無を判定可能なテーブルを用意しておいてもよい。また、2.4GHzの実測値と5GHzの実測値を入力とし、障害物の有無を出力とする学習モデルを用いてもよい。
【0047】
また、ステップS21では、測定点iにおいて無線通信端末20が各バンドのRSSIを実測する場合について説明したが、これに限定されない。例えば、無線通信端末20とは別の端末等によって各バンドのRSSIを実測し、その別の端末で実測した各バンドのRSSIを無線通信端末20が受信してもよい。
【0048】
<無線通信端末20に表示されるヒートマップ>
次に、
図5から
図8を参照して、無線通信端末20に表示されるヒートマップについて説明する。
【0049】
図5は、アクセスポイント10が設置される対象領域(例えば、オフィス)のレイアウト画像30の一例を示す図である。
図5に示すレイアウト画像30は、アクセスポイント10が設置されるオフィスを表している。レイアウト画像30は、無線通信端末20のタッチパネル上に表示される。対象領域のレイアウト画像30は、ユーザ操作により、対象領域を示す間取り図などとして作成可能な画像である。作成されたレイアウト画像30は、例えばレイアウト名と共に無線通信端末20の補助メモリ23に記憶される。
【0050】
図6は、対象領域のレイアウト画像30に作成されたヒートマップの一例を示す図である。
図6に示すように、対象領域のレイアウト画像30には、左領域にアクセスポイント10が設置されている。また、
図6において、丸印で示す地点はアクセスポイント10との間の無線通信のRSSIを測定する測定点aを示している。すなわち、測定点aは、無線通信端末20がRSSIを測定した地点を示している。本例では無線通信端末20は対象領域のレイアウト画像30における右領域に設置されている。アクセスポイント10の設置位置及び測定点aの位置は、ユーザ操作により設定される。
【0051】
図6において対象領域のレイアウト画像30に作成されたヒートマップ41は、アクセスポイント10と測定点aとの間に障害物が存在しないと判定された場合の、アクセスポイント10のRSSIの分布を示すヒートマップである。
図6に示すように障害物が存在しない場合のヒートマップ41は、アクセスポイント10の位置を中心とする円状に作成され、中心に近いほど濃く、中心から離れるにしたがって徐々に淡くなるヒートマップとして作成される。
【0052】
例えば、無線通信端末20は、アクセスポイント10の位置のRSSIと、測定点aのRSSIと、に基づいて、アクセスポイント10からの距離ごとのRSSIを導出する。アクセスポイント10の位置のRSSIは、予め設定される。無線通信端末20は、アクセスポイント10からの距離ごとのRSSIに基づいて、レイアウト画像30における各位置におけるRSSIを導出し、導出したRSSIに応じた濃さの画素値を設定することでヒートマップ41を作成することができる。
【0053】
アクセスポイント10と測定点aとの間に障害物が存在しない場合、RSSIは、アクセスポイント10と測定点aの間で一様に減衰する。ヒートマップ41が作成された対象領域のレイアウト画像30は、例えばレイアウト名と共に補助メモリ23に登録される。
【0054】
図7は、アクセスポイント10と測定点aとの間に障害物が存在すると判定された場合に作成されるヒートマップの一例を示す図である。
図7に示すように、アクセスポイント10と測定点aとの間に障害物が存在すると判定された場合、対象領域のレイアウト画像30においてアクセスポイント10と測定点aとの間に例えば仮想的な壁31が表示される。そして、アクセスポイント10の位置を中心として作成されるヒートマップ42は、壁31を境としてRSSIの分布を表す濃淡が大きく変化するヒートマップとして表示される。
【0055】
具体的には、ヒートマップ42においては、
図6のヒートマップ41と同様に、アクセスポイント10の位置はアクセスポイント10でのRSSI(設定値)に対応する色となり、測定点aの位置は測定点aでのRSSI(実測値)に対応する色となる。アクセスポイント10の位置及び測定点aの位置以外の部分においては、アクセスポイント10の位置から離れるほど徐々に色が薄く(RSSIが低く)なるように計算されるが、壁31の位置を境として色が薄く(RSSIが低く)なるように計算される。
【0056】
ヒートマップ42aは、ヒートマップ42のうち壁31からアクセスポイント10の側の領域のヒートマップである。ヒートマップ42bは、ヒートマップ42のうち壁31から測定点aの側の領域のヒートマップである。ヒートマップ42a,42bのそれぞれは、アクセスポイント10から離れるほど色が薄く(RSSIが低く)なっているが、ヒートマップ42a,42bの境界である壁31の部分においては、色の濃さがアクセスポイント10からの距離に応じて連続していない。
【0057】
なお、RSSIの高さの濃淡を鮮明にするために壁31の左際あたりの濃さを高めてもよい。アクセスポイント10と測定点aとの間に障害物が存在する場合、RSSIは、アクセスポイント10と測定点aの間において障害物を境として、障害物よりもアクセスポイント10から遠い側で大きく減衰する。障害物による減衰度は、例えばアクセスポイント10の位置におけるRSSIと測定点aにおけるRSSIとに基づいて算出できる。ヒートマップ42が作成された対象領域のレイアウト画像30は、上記と同様にレイアウト名と共に補助メモリ23に登録される。
【0058】
図8は、RSSIを測定する地点を複数の地点とした場合に作成されるヒートマップの一例を示す図である。本例の場合、測定点aと測定点bの計2地点でアクセスポイント10との間の無線通信のRSSIを測定する。
図8に示すように、測定点bは、測定点aよりもアクセスポイント10に近い位置の測定点である。
【0059】
この測定において、例えばアクセスポイント10と測定点aとの間には障害物が存在すると判定され、アクセスポイント10と測定点bとの間には障害物が存在しないと判定されたとする。この場合、
図8に示すように対象領域のレイアウト画像30において測定点bと測定点aとの間に仮想的な壁31が表示される。アクセスポイント10の位置を中心として作成されるヒートマップ42が壁31を境としてRSSIの分布を表す濃淡が大きく変化し、ヒートマップ42aとヒートマップ42bとして作成される点については、上記
図7の場合と同様である。
【0060】
なお、例えばこの測定において、アクセスポイント10と測定点aとの間に障害物が存在すると判定され、さらにアクセスポイント10と測定点bとの間にも障害物が存在すると判定されたとする。この場合には、
図8において、例えば対象領域のレイアウト画像30におけるアクセスポイント10と測定点bとの間に仮想的な壁31が表示されることになる。
【0061】
このように、測定点を2地点にした場合、アクセスポイント10とそれぞれの測定点との間に障害物が存在するか否を判定することができるので、それらの判定結果に基づいて、さらに正確なヒートマップを作成することが可能になる。測定点の数は3つ以上にしてもよい。また、上述した例においては仮想的な壁31の形状が真っすぐに延びる単純な形状の壁として表示したが、これに限定されない。例えば複数の測定点について判定した各測定点とアクセスポイント10との間の障害物の有無に基づいて、より複雑な形状の仮想的な壁31を推測して表示してもよい。
【0062】
以上に説明したように無線通信端末20は、アクセスポイント10と測定点a,bとの間の2.4GHzのバンドにおける無線品質の実測値と、アクセスポイント10と測定点a,bとの間の5GHz(又は6GHz)のバンドにおける無線品質の実測値と、に基づいて、アクセスポイント10と測定点a,bとの間の障害物の有無を判定し、その判定結果に基づいて、アクセスポイント10との無線通信におけるRSSIの分布を示すヒートマップ42a,42bを表示する。この構成によれば、アクセスポイント10と測定点a,bの間に存在する障害物を検知することができる。このため、障害物の存在による影響を考慮した精度の高いヒートマップを作成することができる。したがって、通信環境に関する正確な情報を得ることができる。
【0063】
また、無線通信端末20は、アクセスポイント10に対して2.4GHzのバンドと5GHz(又は6GHz)のバンドで同時接続した状態(MLO)で、2.4GHzのバンドにおける無線品質の実測値及び5GHz(又は6GHz)のバンドにおける無線品質の実測値を取得する制御を行う。この構成によれば、各バンドの測定を同時に行うことが可能であるため、1回の測定で各バンドのヒートマップを作成できる。また、各バンドの測定を同時に行うことが可能であるため、バンド間における測定中の、外的な環境変化や、アクセスポイント10のアンテナと無線通信端末20のアンテナとの相対的な向きや角度の変化による影響の差異を抑制し、各バンドの測定条件を同じにすることができる。したがって、測定作業を増加させずに、通信環境に関する正確な情報を得ることができる。
【0064】
<ヒートマップ作成処理の変形例>
図9は、無線通信端末20のプロセッサ21によるヒートマップ作成処理の変形例を示すフローチャートである。
図9においてステップS11からステップS17までの各処理は、
図3で示したステップS11からステップS17までの各処理と同様の処理である。
【0065】
プロセッサ21は、ステップS17においてヒートマップを表示した対象領域のレイアウト画像30に対して、障害物の位置を変更させるための変更指示をユーザから受け付けたか否かを判定する(ステップS18)。障害物の位置の具体的な変更指示については、
図10及び
図11で後述する。
【0066】
ステップS18において障害物の位置の変更指示を受け付けていない場合(ステップS18:No)には、プロセッサ21は、ステップS18の処理を繰り返す。ステップS18において障害物の位置の変更指示を受け付けた場合(ステップS18:Yes)には、プロセッサ21は、対象領域のレイアウト画像30における障害物の位置を変更させ、変更した障害物の位置に基づいてRSSIの分布を再計算してヒートマップを更新する(ステップS19)。
【0067】
<障害物の位置の変更指示とヒートマップの更新>
図10は、障害物の位置の変更指示の一例を示す図である。
図10におけるヒートマップ42は、上記
図7で説明したヒートマップと同様に、アクセスポイント10と測定点aとの間に障害物が存在する場合に作成されたヒートマップであり、ヒートマップ42aとヒートマップ42bで表示されている。また、
図10における壁31は、障害物が存在すると判定されたことに応じてプロセッサ21により決定された仮想的な壁である。
【0068】
図10に示すように、障害物の位置を変更させるための手段として、例えばスライドボタン51が仮想的に示した壁31に重ねられるように表示される。スライドボタン51は、ユーザがタッチ操作して例えば矢印で示される方向、すなわちアクセスポイント10に近づける方向又はアクセスポイント10から遠ざける方向へスライド操作することにより、仮想的な壁31の位置を移動させることが可能なボタンである。例えばプロセッサ21による障害物判定処理の結果に基づいて表示された仮想的な壁31の位置が対象領域のレイアウト画像30における実際の壁の位置と相違する場合に、ユーザはスライドボタン51の操作により仮想的な壁31の位置を変更することができる。この操作によって仮想的な壁31の位置が変更されると、その変更後におけるRSSIの分布が再計算され、再計算後のRSSIの分布に基づくヒートマップが作成される。
【0069】
図11は、位置を変更した障害物と更新されたヒートマップの一例を示す図である。
図11に示す仮想的な壁31は、
図10に示す壁31をユーザによるスライドボタン51の操作によってアクセスポイント10に近づける方向(図において左方向)へ移動させた状態を示している。
図11に示すように、仮想的な壁31の位置が左方向へ移動したことにより、壁31を境界としてRSSIの弱い分布状態を示す淡いヒートマップ42bの領域が広くなっている。このように障害物の位置の変更に伴って新たに作成されたヒートマップは、更新されて補助メモリ23に登録される。
【0070】
なお、本例では障害物としての仮想的な壁31の位置のみを設定する場合について説明したが、これに限定されない。例えば、ユーザの操作により仮想的な壁31の形状や数などを設定できるようにしてもよい。
【0071】
以上説明したようにヒートマップ作成処理の変形例によれば、無線通信端末20は、対象領域のレイアウト画像30に表示された障害物の位置の変更指示をユーザから受け付けた場合に、変更後の障害物の位置に対応したRSSIの分布を再計算してヒートマップを更新する。このため、ユーザの操作により障害物の位置を指示された任意の位置に設定することが可能であり、指示された障害物の位置を考慮してさらに精度の高いヒートマップを作成することができる。また、例えばプロセッサ21により決定された障害物の表示位置をスライドボタン51のスライド操作だけで変更が可能であるため、最初から障害物の指定をユーザが行う場合に比べて、障害物の設定が容易である。
【0072】
<プロセッサ21によるアンテナピクト表示処理>
図12は、無線通信端末20のプロセッサ21によるアンテナピクトの表示処理の一例を示すフローチャートである。無線通信端末20は、アクセスポイント10の無線通信環境に関する情報を、アクセスポイント10との無線通信中にアクセスポイント10との間の障害物の有無を示す例えばアンテナピクトにより表示することが可能である。プロセッサ21は、アクセスポイント10への接続時に繰り返し本処理を実行する。
【0073】
まず、プロセッサ21は、アクセスポイント10と無線通信端末20との間に障害物が存在するか否かの判定を行う(ステップS31)。本ステップS31の判定処理は、例えば
図4に示した障害物の有無の判定処理である。
【0074】
次に、プロセッサ21は、ステップS31の判定結果から、アクセスポイント10と無線通信端末20との間に障害物が存在するか否かを判定する(ステップS32)。
【0075】
ステップS32において、アクセスポイント10と無線通信端末20との間に障害物が存在すると判定された場合(ステップS32:Yes)には、障害物が存在することを報知する障害物ありのアンテナピクトを無線通信端末20のタッチパネル上に表示する(ステップS33)。
【0076】
ステップS32において、アクセスポイント10と無線通信端末20との間に障害物が存在しないと判定された場合(ステップS32:No)には、障害物が存在しないことを報知する障害物なしのアンテナピクトを無線通信端末20のタッチパネル上に表示する(ステップS34)。
【0077】
<無線通信端末20に表示されるアンテナピクト>
次に、
図13と
図14を参照して、無線通信端末20に表示されるアンテナピクトについて説明する。
【0078】
図13は、アクセスポイント10と無線通信端末20との間に障害物が存在すると判定された場合に表示されるアンテナピクトの一例を示す図である。
図13に示すように、アンテナピクト61は、例えば無線通信端末20のタッチパネル20aの右上部に表示される。なお、破線内に示すアンテナピクトは、拡大して見やすく図示したアンテナピクト61である。アンテナピクト61は、例えば電波の周りを四角い枠で囲った態様の絵柄として表示される。電波を枠で囲った絵柄とすることで、現在地点の無線通信端末20によるアクセスポイント10との無線通信において障害物があることを報知することができる。
【0079】
図14は、アクセスポイント10と無線通信端末20との間に障害物が存在しないと判定された場合に表示されるアンテナピクトの一例を示す図である。
図14に示すように、アンテナピクト62は、上記のアンテナピクト61と同様にタッチパネル20aの右上部に表示される。また、破線内に示すアンテナピクトは、拡大して見やすく図示したアンテナピクト62である。アンテナピクト62は、例えば複数の電波が拡がる態様の絵柄として表示される。枠で囲われていない電波の絵柄とすることで、現在地点の無線通信端末20によるアクセスポイント10との無線通信において障害物がないことを報知することができる。
【0080】
なお、アクセスポイント10と無線通信端末20との間の障害物の有無を示す情報は、アンテナピクトの表示に限定されず、例えばアンテナピクト以外の画像情報、テキスト情報、音声情報等であってもよい。また、ユーザへの報知情報は、障害物の有無を示す情報だけでなく、例えば「障害物をどけてください」、「障害物を避けてください」等の案内メッセージによる情報を含んでもよい。
【0081】
以上に説明したようにアンテナピクトの表示処理における無線通信端末20は、アクセスポイント10の無線通信環境に関する情報を、アクセスポイント10との無線通信中にアクセスポイント10との間に障害物が存在するか否かを示すアンテナピクトにより表示する。この構成によれば、無線通信端末20とアクセスポイント10との間に障害物が存在するか否か、すなわち現在地点における無線通信の環境状態をアンテナピクトに基づいてユーザが容易に認識することが可能である。
【0082】
(変形例)
本発明の無線通信端末20では、複数のバンドでの同時接続(MLO)による場合について説明したが、これに限定されない。例えば無線通信端末20は、アクセスポイント10と接続するバンドを切り替えながら各バンドの無線環境情報を取得するようにしてもよい。
【0083】
(制御プログラムについて)
前述した実施形態で説明した制御方法は、予め用意された制御プログラムをコンピュータで実行することにより実現できる。本制御プログラムは、コンピュータが読み取り可能な記憶媒体に記録され、記憶媒体から読み出されることによって実行される。また、本制御プログラムは、フラッシュメモリ等の非一過性の記憶媒体に記憶された形で提供されてもよいし、インターネット等のネットワークを介して提供されてもよい。本制御プログラムを実行するコンピュータは、無線通信端末に含まれるものであってもよいし、無線通信端末と通信可能なスマートフォン、タブレット端末、又はパーソナルコンピュータ等の電子機器に含まれるものでもあってもよいし、これら制御装置及び電子機器と通信可能なサーバ装置に含まれるものであってもよい。
【0084】
以上のように本明細書には以下の事項が開示されている。
【0085】
開示された無線通信端末は、無線通信装置に対して少なくとも第1の帯域と第2の帯域で接続して通信可能な無線通信端末であって、前記無線通信装置と測定点との間の前記第1の帯域における無線品質を示す第1の無線環境情報と、前記無線通信装置と前記測定点との間の前記第2の帯域における無線品質を示す第2の無線環境情報と、に基づいて、前記無線通信装置と前記測定点との間の障害物の有無を判定し、前記障害物の有無の判定結果に基づいて、前記無線通信装置の無線通信環境に関する情報を出力する、プロセッサを備えるものである。
【0086】
開示された無線通信端末は、前記第1の無線環境情報及び前記第2の無線環境情報が、無線品質の実測値であるものである。
【0087】
開示された無線通信端末は、前記プロセッサが、前記第1の無線環境情報に基づいて、前記無線通信装置と前記無線通信端末との間の前記第2の帯域における無線品質の理論値を算出し、前記理論値と前記第2の無線環境情報との比較に基づいて前記障害物の有無を判定するものである。
【0088】
開示された無線通信端末は、前記第1の無線環境情報及び前記第2の無線環境情報が、前記無線通信端末による無線品質の実測値であり、前記測定点は前記無線通信端末の位置であるものである。
【0089】
開示された無線通信端末は、前記プロセッサが、前記無線通信端末が前記無線通信装置に対して前記第1の帯域と前記第2の帯域で同時接続した状態で前記第1の無線環境情報及び前記第2の無線環境情報を取得する制御を行うものである。
【0090】
開示された無線通信端末は、前記無線通信装置の無線通信環境に関する情報が、前記障害物の有無に応じた、前記無線通信装置との間の無線通信における通信品質の分布を示すマップを含むものである。
【0091】
開示された無線通信端末は、前記マップが、前記障害物の有無の判定結果に応じて決定された前記障害物の位置に応じて計算された前記通信品質の分布を示し、前記プロセッサが、前記障害物の位置の変更をユーザから受け付けた場合に、前記通信品質の分布を再計算して前記マップを更新するものである。
【0092】
開示された無線通信端末は、前記無線通信装置の無線通信環境に関する情報が、前記障害物の有無を示す情報を含むものである。
【0093】
開示された制御プログラムは、無線通信装置に対して少なくとも第1の帯域と第2の帯域で接続して通信可能な無線通信端末の制御プログラムであって、前記無線通信端末のプロセッサに、前記無線通信装置と測定点との間の前記第1の帯域における無線品質を示す第1の無線環境情報と、前記無線通信装置と前記測定点との間の前記第2の帯域における無線品質を示す第2の無線環境情報と、に基づいて、前記無線通信装置と前記測定点との間の障害物の有無を判定し、前記障害物の有無の判定結果に基づいて、前記無線通信装置の無線通信環境に関する情報を出力する、処理を実行させるためのものである。
【0094】
開示された制御方法は、無線通信装置に対して少なくとも第1の帯域と第2の帯域で接続して通信可能な無線通信端末の制御方法であって、前記無線通信端末のプロセッサが、前記無線通信装置と測定点との間の前記第1の帯域における無線品質を示す第1の無線環境情報と、前記無線通信装置と前記測定点との間の前記第2の帯域における無線品質を示す第2の無線環境情報と、に基づいて、前記無線通信装置と前記測定点との間の障害物の有無を判定し、前記障害物の有無の判定結果に基づいて、前記無線通信装置の無線通信環境に関する情報を出力するものである。
【符号の説明】
【0095】
10 アクセスポイント
11,21 プロセッサ
12,22 メインメモリ
13,23 補助メモリ
14a~14c,24a~24c 通信用無線I/F
15,16 有線I/F
20 無線通信端末
20a タッチパネル
25 ユーザI/F
30 レイアウト画像
31 壁
41,42,42a,42b ヒートマップ
51 スライドボタン
61,62 アンテナピクト