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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170943
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】情報処理システム及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/27 20200101AFI20241204BHJP
   G06F 30/23 20200101ALI20241204BHJP
   G06F 111/04 20200101ALN20241204BHJP
   G06F 111/10 20200101ALN20241204BHJP
   G06F 119/14 20200101ALN20241204BHJP
【FI】
G06F30/27
G06F30/23
G06F111:04
G06F111:10
G06F119:14
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087727
(22)【出願日】2023-05-29
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】和田 怜
【テーマコード(参考)】
5B146
【Fターム(参考)】
5B146DC03
5B146DC05
5B146DJ02
5B146DJ07
(57)【要約】
【課題】サロゲートモデルの学習データを効果的に生成することができる情報処理システム及びプログラムを提供する。
【解決手段】実施形態によれば、情報処理システムは、インターフェースと、プロセッサと、を備える。インターフェースは、解析対象モデルを入力する。プロセッサは、前記解析対象モデルのパラメータのセットを生成し、前記セットに基づいてシミュレーションを実行することで固有値解析結果を生成し、基準モードごとに固有モードをクラスタに分類し、最もデータ数が少ない前記クラスタに対応する基準モードを生成するための第1制約式を生成し、前記第1制約式に従って前記パラメータの前記セットを生成し、前記セットに基づいてシミュレーションを実行することで前記固有値解析結果を生成し、前記セットと前記固有値解析結果とを対応付けた学習データを生成する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
解析対象モデルを入力するインターフェースと、
前記解析対象モデルのパラメータのセットを生成し、
前記セットに基づいてシミュレーションを実行することで固有値解析結果を生成し、
基準モードごとに固有モードをクラスタに分類し、
最もデータ数が少ない前記クラスタに対応する基準モードを生成するための第1制約式を生成し、
前記第1制約式に従って前記パラメータの前記セットを生成し、
前記セットに基づいてシミュレーションを実行することで前記固有値解析結果を生成し、
前記セットと前記固有値解析結果とを対応付けた学習データを生成する、
プロセッサと、
を備える情報処理システム。
【請求項2】
前記プロセッサは、
モード信頼性評価基準を用いて前記基準モードと前記固有モードとの類似度を示す指標を算出し、
前記指標に基づいて前記基準モードごとに前記固有モードを前記クラスタに分類する、
請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項3】
前記プロセッサは、
エラーとなったシミュレーションにおける前記パラメータの前記セットを抽出し、
前記セットに基づいてエラーを防止するための第2制約式を生成し、
前記第2制約式に従って前記パラメータの前記セットを生成し、
前記セットに基づいてシミュレーションを実行することで前記固有値解析結果を生成する、
請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項4】
前記プロセッサは、前記学習データに基づいて前記固有値解析結果を出力するサロゲートモデルを生成する、
請求項1乃至3の何れか1項に記載の情報処理システム。
【請求項5】
前記固有値解析結果は、前記解析対象モデルの振動形態を示す画像を含む、
請求項4に記載の情報処理システム。
【請求項6】
前記サロゲートモデルは、ディープラーニングによって生成される、前記画像を出力する第1モデルを含む、
請求項5に記載の情報処理システム。
【請求項7】
前記固有値解析結果は、前記解析対象モデルの固有振動数を含む、
請求項5に記載の情報処理システム。
【請求項8】
前記サロゲートモデルは、応答局面法による、前記固有振動数を出力する第2モデルを含む、
請求項7に記載の情報処理システム。
【請求項9】
プロセッサによって実行されるプログラムであって、
前記プロセッサに、
解析対象モデルを入力する機能と、
前記解析対象モデルのパラメータのセットを生成する機能と、
前記セットに基づいてシミュレーションを実行することで固有値解析結果を生成する機能と、
基準モードごとに固有モードをクラスタに分類する機能と、
最もデータ数が少ない前記クラスタに対応する基準モードを生成するための第1制約式を生成する機能と、
前記第1制約式に従って前記パラメータの前記セットを生成する機能と、
前記セットに基づいてシミュレーションを実行することで前記固有値解析結果を生成する機能と、
前記セットと前記固有値とを対応付けた学習データを生成する機能と、
を実現させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、情報処理システム及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
CAE(Computer Aided Engineering)において、シミュレーションの代わりにサロゲートモデルを用いてモデルの固有振動数及び固有モード(振動形態など)を出力するシステムが提供されている。そのようなシステムは、シミュレーションによりモデルのパラメータ(問題)と固有振動数及び固有モード(回答)とを対応付けた学習データを生成する。システムは、生成された学習データを用いてサロゲートモデルを生成する。
【0003】
しかしながら、従来、生成された学習データにおいて固有モード)に偏りが生じることがある。そのため、システムは、学習データの数が少ない固有モードにおいてサロゲートモデルの推論精度が低下することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-82874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の課題を解決するため、サロゲートモデルの学習データを効果的に生成することができる情報処理システム及びプログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態によれば、情報処理システムは、インターフェースと、プロセッサと、を備える。インターフェースは、解析対象モデルを入力する。プロセッサは、前記解析対象モデルのパラメータのセットを生成し、前記セットに基づいてシミュレーションを実行することで固有値解析結果を生成し、基準モードごとに固有モードをクラスタに分類し、最もデータ数が少ない前記クラスタに対応する基準モードを生成するための第1制約式を生成し、前記第1制約式に従って前記パラメータの前記セットを生成し、前記セットに基づいてシミュレーションを実行することで前記固有値解析結果を生成し、前記セットと前記固有値解析結果とを対応付けた学習データを生成する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、実施形態に係るサロゲートモデル生成システムの構成例を示すブロック図である。
図2図2は、実施形態に係るサロゲートモデル生成システムの機能例を示すブロック図である。
図3図3は、実施形態に係る解析対象モデルの例を示す図である。
図4図4は、実施形態に係るサロゲートモデル生成システムが生成するパラメータの例を示す図である。
図5図5は、実施形態に係るサロゲートモデル生成システムが生成するパラメータの例を示す図である。
図6図6は、実施形態に係る解析対象モデルの失敗例を示す図である。
図7図7は、実施形態に係るサロゲートモデル生成システムの動作例を示す図である。
図8図8は、実施形態に係るサロゲートモデル生成システムのシミュレーション結果を示す図である。
図9図9は、実施形態に係るサロゲートモデル生成システムの動作例を示す図である。
図10図10は、実施形態に係るサロゲートモデル生成システムの動作例を示すフローチャートである。
図11図11は、実施形態に係るサロゲートシステムの動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態について、図面を参照して説明する。
実施形態に係るサロゲートシステムは、解析の対象となるモデル(解析対象モデル)のパラメータ(設計変数)から固有値解析結果を出力するサロゲートモデルを生成する。ここでは、サロゲートモデルは、固有値解析結果として、固有振動数及び固有モード(振動形態)を出力する。
【0009】
サロゲートモデル生成システムは、シミュレーションにより、解析対象モデルのパラメータ(問題)と固有値解析結果(回答)とを対応付けた学習データを生成する。サロゲートシステムは、生成された学習データを用いた機械学習などによりサロゲートモデルを生成する。
【0010】
図1は、実施形態に係るサロゲートモデル生成システム1の構成例を示す。サロゲートシステム1は、情報処理システム10及びユーザ端末20などから構成される。
【0011】
情報処理システム10は、学習データを生成し、生成された学習データを用いてサロゲートモデルを生成する。図1が示すように、情報処理システム10は、プロセッサ11、ROM12、RAM13、NVM14、操作部15、表示部16及び通信インターフェース17などを備える。
【0012】
プロセッサ11と、ROM12、RAM13、NVM14、操作部15、表示部16、及び通信インターフェース17と、は、データバスなどを介して互いに接続する。
なお、情報処理システム10は、図1が示すような構成の他に必要に応じた構成を具備したり、情報処理システム10から特定の構成が除外されたりしてもよいし、クラウド上のサービスとして提供されてもよい。
【0013】
プロセッサ11は、情報処理システム10全体の動作を制御する機能を有する。プロセッサ11は、内部キャッシュ及び各種のインターフェースなどを備えてもよい。プロセッサ11は、内部メモリ、ROM12又はNVM14が予め記憶するプログラムを実行することにより種々の処理を実現する。
【0014】
なお、プロセッサ11がプログラムを実行することにより実現する各種の機能のうちの一部は、ハードウエア回路により実現されるものであってもよい。この場合、プロセッサ11は、ハードウエア回路により実行される機能を制御する。
【0015】
ROM12は、制御プログラム及び制御データなどが予め記憶された不揮発性のメモリである。ROM12に記憶される制御プログラム及び制御データは、情報処理システム10の仕様に応じて予め組み込まれる。
【0016】
RAM13は、揮発性のメモリである。RAM13は、プロセッサ11の処理中のデータなどを一時的に格納する。RAM13は、プロセッサ11からの命令に基づき種々のアプリケーションプログラムを格納する。また、RAM13は、アプリケーションプログラムの実行に必要なデータ及びアプリケーションプログラムの実行結果などを格納してもよい。
【0017】
NVM14は、データの書き込み及び書き換えが可能な不揮発性のメモリである。たとえば、NVM14は、たとえば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)又はフラッシュメモリなどから構成される。NVM14は、情報処理装置10の運用用途に応じて制御プログラム、アプリケーション及び種々のデータなどを格納する。
【0018】
操作部15は、オペレータから種々の操作の入力を受け付けるインターフェースである。操作部15は、入力された操作を示す信号をプロセッサ11へ送信する。たとえば、操作部15は、マウス、キーボード又はタッチパネルなどから構成される。
【0019】
表示部16は、プロセッサ11からの画像データを表示する。たとえば、表示部16は、液晶モニタから構成される。なお、操作部15がタッチパネルから構成される場合、表示部16は、操作部15としてのタッチパネルと一体的に形成されるものであってもよい。
【0020】
通信インターフェース17は、ユーザ端末20などとデータを送受信するインターフェースである。たとえば、通信インターフェース17は、ネットワークなどを介してユーザ端末20などに接続する。たとえば、通信インターフェース17は、有線又は無線のLAN(Local Area Network)接続をサポートする。
【0021】
ユーザ端末20は、情報処理システム10からサロゲートモデルを取得する。ユーザ端末20は、オペレータから入力されたパラメータをサロゲートモデルに入力して固有値解析結果を生成する。ユーザ端末20は、生成された固有値解析結果をオペレータに提示する。たとえば、ユーザ端末20は、PCなどから構成される。
【0022】
次に、サロゲートモデル生成システム1が実現する機能について説明する。
図2は、サロゲートモデル生成システム1が実現する機能の例を示す。
【0023】
まず、情報処理システム10が実現する機能について説明する。情報処理システム10が実現する機能は、プロセッサ11が内部メモリ、ROM12又はNVM14などに格納されるプログラムを実行することで実現される。
【0024】
プロセッサ11は、学習データを生成する学習データ生成部110と生成された学習データを用いてサロゲートモデルを生成する学習部120とを実現する。
【0025】
また、プロセッサ11は、学習データ生成部110として、第1サンプリング計画生成部111、シミュレーション実行部112、設計変数制約分析部113、第2サンプリング計画生成部114、固有モード分析部115及び第3サンプリング計画生成部116などを実現する。
【0026】
まず、第1サンプリング計画生成部111について説明する。
プロセッサ11は、第1サンプリング計画生成部111として、解析対象モデルのパラメータを生成する。
【0027】
プロセッサ11は、操作部15を通じて、解析対象モデルをオペレータから入力する。たとえば、プロセッサ11は、オペレータからの操作に従って、解析対象モデルのCAD(Computer Aided Design)データを生成する。
【0028】
また、プロセッサ11は、操作部15を通じて、解析対象モデルのパラメータを設定する操作をオペレータから入力する。即ち、プロセッサ11は、オペレータからの操作に従って、パラメータとして解析対象モデルにおいて変更可能な値を設定する。
【0029】
図3は、解析対象モデル300の例を示す。図3が示すように、解析対象モデル300は、板301、部材302乃至305及び錘306などから構成される。
【0030】
板301は、四角に形成された板である。板301の幅は、Bである。また、板301の高さは、Hである。また、板301は、上辺を除く周囲を固定されているものとする。
【0031】
板301の所定の面には、部材302乃至305及び錘306が形成されている。
【0032】
部材302は、所定の高さ(板301に垂直な方向の長さ)及び厚みを有する板である。部材302は、高さ方向において板301の一端から他端に架けて垂直に形成されている。部材302の高さ方向の長さは、Hである。
【0033】
部材303は、所定の高さ及び厚みを有する板である。部材303は、高さ方向において板301の一端から他端に架けて垂直に形成されている。部材303の高さ方向の長さは、Hである。部材303は、部材302の右側に形成されている。
【0034】
部材304は、所定の高さ及び厚みを有する板である。部材304は、水平方向において板301の一端から他端に架けて水平に形成されている。部材304の水平方向の長さは、Bである。
【0035】
部材305は、所定の高さ及び厚みを有する板である。部材305は、水平方向において板301の一端から他端に架けて水平に形成されている。部材305の水平方向の長さは、Bである。部材305は、部材304の上方に形成されている。
錘306は、所定の重量を有する。錘306は、板301の中央に形成されている。
【0036】
プロセッサ11は、解析対象モデル300のパラメータを設定する。ここでは、プロセッサ11は、部材302乃至305に関するパラメータP1乃至P10を設定する。
【0037】
パラメータP1は、板301の左端から部材302までの距離である。
パラメータP2は、部材302及び303の高さである。
パラメータP3は、部材302及び303の厚さである。
【0038】
パラメータP4は、板301の底辺から部材304までの距離である。
パラメータP5は、部材304の高さである。
パラメータP6は、部材304の厚さである。
【0039】
パラメータP7は、板301の底辺から部材305までの距離である。
パラメータP8は、部材305の高さである。
パラメータP9は、部材305の厚さである。
パラメータP10は、板301の厚さである。
【0040】
プロセッサ11は、各パラメータP(P1乃至P10)の具体的な値から構成されるセットを複数個生成する。
図4は、プロセッサ11が生成するパラメータPのセットの例を示す。図4は、代表してパラメータP1及びP2を示す。図4では、横軸は、パラメータP1を示し、縦軸は、パラメータP2を示す。各点は、パラメータPのセットを示す。
【0041】
ここでは、プロセッサ11は、ラテン超方格法などの実験計画法を用いてパラメータPのセットを生成する。たとえば、プロセッサ11は、各パラメータPの最大値及び最小値を設定する。各パラメータPの最大値及び最小値を設定すると、プロセッサ11は、各パラメータPの最大値と最小値との間を所定の個数に分割する。各パラメータPの最大値と最小値との間を所定の個数に分割すると、プロセッサ11は、分割によって生成された各ブロックに少なくとも1つのセットが含まれるようにパラメータPのセットを生成する。
【0042】
図5は、プロセッサ11が生成したパラメータPのセットを示す。図5が示すように、プロセッサ11は、ラテン超方格法などの実験計画法を用いて、パラメータP1乃至P10から構成されるセット(図5では、Design)を複数個生成する。
【0043】
なお、プロセッサ11がパラメータPのセットを生成する方法は、特定の方法に限定されるものではない。
【0044】
次に、シミュレーション実行部112について説明する。
プロセッサ11は、シミュレーション実行部112として、パラメータPのセットに基づいて解析対象モデルの固有値解析結果を算出する。
【0045】
たとえば、プロセッサ11は、解析対象モデル300とパラメータPの1つのセットとに基づいて、当該セットのパラメータPを有する解析対象モデル300のCADデータを生成する。CADデータを生成すると、プロセッサ11は、CADデータからメッシュを生成しソルバーで解析する。プロセッサ11は、解析結果に基づいて、固有値解析結果を算出する。プロセッサ11は、固有値解析結果として、解析対象モデル300の固有振動数及び固有モードを算出する。ここでは、プロセッサ11は、固有モードとして、濃淡又は色で振動の程度を示す画像を生成する。
プロセッサ11は、パラメータPの各セットについて同様に固有値解析結果を算出する。
【0046】
次に、設計変数制約分析部113について説明する。
プロセッサ11は、設計変数制約分析部113として、パラメータPに関する制約式(エラー防止制約式、第2制約式)を生成する。
【0047】
各セットについてシミュレーションを実行すると、プロセッサ11は、成功したシミュレーションにおいて、パラメータPのセットと生成された固有値解析結果とを対応付けた学習データを生成する。
【0048】
学習データを生成すると、プロセッサ11は、生成された学習データの個数が所定の閾値以上であるかを判定する。学習データの個数が所定の閾値未満であると判定すると、プロセッサ11は、エラーとなったシミュレーションにおけるパラメータPのセットを抽出する。
【0049】
図6は、エラーとなったシミュレーションにおけるパラメータPのセットの例を示す。図6が示す例では、パラメータP7がHよりも大きいため、板301と部材305とは、分離している。図6のように、解析対象モデル300が一体的に形成されない場合、シミュレーションは、エラーとなる。
【0050】
プロセッサ11は、人工知能などを用いて、抽出されたセットに基づいてシミュレーションがエラーとなるパラメータPの傾向を分析する。パラメータPの傾向を分析すると、プロセッサ11は、分析結果に基づいてシミュレーションのエラーを防止するようにパラメータPを制約するエラー防止制約式を生成する。
【0051】
たとえば、プロセッサ11は、エラー防止制約式として、パラメータPの範囲、パラメータP間の関係式などを生成する。
図6の例では、プロセッサ11は、エラー防止制約式として、パラメータP7<Hを生成する。
【0052】
次に、第2サンプリング計画生成部114について説明する。
プロセッサ11は、第2サンプリング計画生成部114として、生成されたエラー防止制約式に従って解析対象モデルのパラメータPを生成する。
【0053】
エラー防止制約式を生成すると、プロセッサ11は、エラー防止制約式に従ってパラメータPのセットを所定の個数、生成する。即ち、プロセッサ11は、エラー防止制約式を満たすようなパラメータPのセットを生成する。たとえば、プロセッサ11は、前述の通りラテン超方格法を用いてパラメータPのセットを生成する。
【0054】
パラメータPのセットを生成すると、プロセッサ11は、生成されたセットを用いてシミュレーションを実行して学習データを生成する。プロセッサ11は、学習データの個数が所定の個数以上となるまで、エラー防止制約式の生成、パラメータPのセットの生成、及び、シミュレーションを繰り返す。
【0055】
次に、固有モード分析部115について説明する。
プロセッサ11は、固有モード分析部115として、学習データに含まれる固有モードを分類して、割合が所定の閾値未満である固有モードを生成するための制約式(固有モード生成制約式、第1制約式)を生成する。
【0056】
たとえば、プロセッサ11は、各学習データに含まれる固有モード(評価対象モード)を基準となる固有モード(基準モード)の何れかに分類する。
【0057】
図7は、プロセッサ11は、評価対象モードを基準モードの何れかに分類する動作例を示す。
【0058】
ここでは、プロセッサ11は、モード信頼性評価基準(MAC(Modal Assurance Criterion))を用いて評価対象モードと基準モードとの類似性を判定する。即ち、プロセッサ11は、類似度を示す指標(MAC値)を以下の式に従って算出する。
【0059】
【数1】
【0060】
プロセッサ11は、1つの評価対象モードと各基準モードとを上記の式に代入して各基準モードに対する指標を算出する。プロセッサ11は、所定の閾値(たとえば、0.9)を超える指標が存在する場合、当該評価対象モードを当該指標に対応する基準モードに分類する。
【0061】
なお、プロセッサ11は、所定の閾値を超える指標が存在しない場合、エラーを出力してもよいし、当該評価対象モードを新たな基準モードとしてもよい。
プロセッサ11は、各評価対象モードについて同様に分類する。即ち、プロセッサ11は、基準モードごとに、評価対象モードをクラスタに分割する。
【0062】
図7が示す例では、評価対象モードS1について、基準モードC2の指標は、0.998である。従って、プロセッサ11は、評価対象モードS1を基準モードC2に分類する。
【0063】
同様に、プロセッサ11は、評価モードS2を基準モードC1に分類する。また、プロセッサ11は、評価モードS3を基準モードC3に分類する。また、プロセッサ11は、評価モードS4を基準モードC4に分類する。また、プロセッサ11は、評価モードS5を基準モードC5に分類する。
【0064】
図8は、プロセッサ11によって分類された評価対象モードを示す。図8が示す例では、基準モードC1のクラスタに分類される評価対象モードの個数は、非常に多い。また、基準モードC2のクラスタに分類される評価対象モードの個数は、比較的多い。基準モードC4のクラスタに分類される評価対象モードの個数は、極めて少ない。
【0065】
各評価対象モードを分類すると、プロセッサ11は、データ数が最も少ないクラスタ(たとえば、基準モードC4のクラスタ)の割合(当該データ数/学習データ数)を算出する。データ数が最も少ないクラスタの割合を算出すると、プロセッサ11は、当該割合が所定の閾値以上であるかを判定する。
【0066】
当該割合が所定の閾値未満であると判定すると、プロセッサ11は、人工知能などを用いて、当該クラスタの基準モードを生成するパラメータPの傾向を分析する。パラメータPの傾向を分析すると、プロセッサ11は、分析結果に基づいて、当該基準モードを生成するための固有モード生成制約式を生成する。たとえば、プロセッサ11は、固有モード生成制約式として、パラメータPの範囲、パラメータP間の関係式などを生成する。
【0067】
次に、第3サンプリング計画生成部116について説明する。
プロセッサ11は、第3サンプリング計画生成部116として、生成された固有モード生成制約式に従って解析対象モデルのパラメータPを生成する。
【0068】
固有モード生成制約式を生成すると、プロセッサ11は、固有モード生成制約式に従ってパラメータPのセットを所定の個数、生成する。即ち、プロセッサ11は、固有モード生成制約式を満たすようなパラメータPのセットを生成する。たとえば、プロセッサ11は、前述の通りラテン超方格法などの実験計画法を用いてパラメータPのセットを生成する。
【0069】
パラメータPのセットを生成すると、プロセッサ11は、生成されたセットを用いてシミュレーションを実行して学習データを生成する。プロセッサ11は、割合が所定の閾値未満であるクラスタがなくなるまで、固有モード生成制約式の生成、パラメータPのセットの生成、及び、シミュレーションを繰り返す。
【0070】
次に、学習部120について説明する。
プロセッサ11は、学習部120として、生成された学習データに基づいてサロゲートモデルを生成する。
【0071】
プロセッサ11は、学習データのパラメータPのセットを問題とし固有値解析結果を回答としてサロゲートモデルを生成する。たとえば、プロセッサ11は、重回帰、ランダムフォレスト、応答局面法又はディープラーニングなどによりサロゲートモデルを生成する。
【0072】
ここでは、プロセッサ11は、サロゲートモデルとして、固有モードを出力するモデル(第1モデル)と、固有振動数を出力するモデル(第2モデル)と、を生成する。
【0073】
プロセッサ11は、ディープラーニングにより、学習データのパラメータPのセットを問題とし固有モード(画像)を回答として第1モデルを生成する。
また、プロセッサ11は、応答局面法により、学習データのパラメータPのセットを問題とし固有振動数を回答として第2モデルを生成する。
【0074】
サロゲートモデルを生成すると、プロセッサ11は、通信インターフェース17を通じてサロゲートモデルをユーザ端末20に送信する。
【0075】
なお、プロセッサ11は、学習データの一部を検証用データにしてサロゲートモデルを評価してもよい。
図9は、プロセッサ11がサロゲートモデルを評価する動作例を示す。
【0076】
たとえば、プロセッサ11は、学習データを生成すると、所定の比率で学習データを学習用データと検証用データとに分割する。
【0077】
学習データを学習用データと検証用データとに分割すると、プロセッサ11は、上記の通り、学習用データを用いてサロゲートモデルを生成する。サロゲートモデルを生成すると、プロセッサ11は、検証用データにおけるパラメータPのセットをサロゲートモデルに入力して固有値解析結果を算出する。
【0078】
固有値解析結果を算出すると、プロセッサ11は、検証用データにおける固有値解析結果と算出された固有値解析結果とを比較することでサロゲートモデルを評価する。
【0079】
次に、ユーザ端末20が実現する機能について説明する。ユーザ端末20が実現する機能は、ユーザ端末20が備えるプロセッサが内部メモリ、ROM又はNVMなどに格納されるプログラムを実行することで実現される。
ユーザ端末20は、入力部21、算出部22及び出力部23などを実現する。
【0080】
まず、入力部21について説明する。
ユーザ端末20は、入力部21としてオペレータからパラメータPのセットを入力する。
【0081】
たとえば、オペレータは、解析対象モデル300のパラメータP1乃至P10(パラメータPのセット)をユーザ端末20に入力する。ユーザ端末20は、入力されたパラメータPのセットを取得する。
【0082】
つぎに、算出部22について説明する。
ユーザ端末20は、算出部22として、入力されたパラメータPのセットから固有値解析結果を算出する。
【0083】
ユーザ端末20は、情報処理システム10からのサロゲートモデルを予め格納する。
ユーザ端末20は、入力されたパラメータPのセットをサロゲートモデルに入力して固有値解析結果を算出する。
【0084】
次に、出力部23について説明する。
ユーザ端末20は、出力部23として、算出された固有値解析結果を出力する。
たとえば、ユーザ端末20は、算出された固有値解析結果をモニタなどに表示する。また、ユーザ端末20は、算出された固有値解析結果を外部装置に送信するものであってもよい。
【0085】
次に、情報処理システム10の動作例について説明する。
図10及び図11は、情報処理システム10の動作例について説明するためのフローチャートです。
【0086】
まず、情報処理装置10のプロセッサ11は、解析対象モデル300のパラメータPのセットを複数個生成する(S11)。パラメータPのセットを複数個生成すると、プロセッサ11は、各セットに基づいてシミュレーションを実行する(S12)。
【0087】
シミュレーションを実行すると、プロセッサ11は、エラーとなったシミュレーションの個数をカウントする(S13)。エラーとなったシミュレーションの個数をカウントすると、プロセッサ11は、成功したシミュレーションにおける学習データの個数が所定の閾値以上であるかを判定する(S14)。
【0088】
学習データの個数が所定の閾値未満であると判定すると(S14、NO)、プロセッサ11は、シミュレーションがエラーとなるパラメータPの傾向を分析する(S15)。パラメータPの傾向を分析すると、プロセッサ11は、分析結果に基づいてシミュレーションのエラーを防止するようにパラメータPを制約するエラー防止制約式を生成する(S16)。
【0089】
エラー防止制約式を生成すると、プロセッサ11は、エラー防止制約式に従ってパラメータPのセットを生成する(S17)。パラメータPのセットを生成すると、プロセッサ11は、S12に戻る。
【0090】
学習データの個数が所定の閾値以上であると判定すると(S14、YES)、プロセッサ11は、学習データの固有モードを分類する(S18)。学習データの固有モードを分類すると、プロセッサ11は、最もデータ数が少ないクラスタの割合が所定の閾値以上であるかを判定する(S19)。
【0091】
最もデータ数が少ないクラスタの割合が所定の閾値未満であると判定すると(S19、NO)、プロセッサ11は、人工知能などを用いて、当該クラスタの基準モードを生成するパラメータPの傾向を分析する(S20)。パラメータPの傾向を分析すると、プロセッサ11は、分析結果に基づいて、当該基準モードを生成するための固有モード生成制約式を生成する(S21)。
【0092】
固有モード生成制約式を生成すると、プロセッサ11は、固有モード生成制約式に従ってパラメータPのセットを生成する(S22)。パラメータPのセットを生成すると、プロセッサ11は、各セットに基づいてシミュレーションを実行して学習データを生成する(S23)。シミュレーションを実行して学習データを生成すると、プロセッサ11は、S18に戻る。
【0093】
最もデータ数が少ないクラスタの割合が所定の閾値以上であると判定すると(S19、YES)、プロセッサ11は、生成された学習データに基づいてサロゲートモデルを生成する(S24)。
【0094】
サロゲートモデルを生成すると、プロセッサ11は、通信インターフェース17を通じてサロゲートモデルをユーザ端末20に送信する(S25)。
サロゲートモデルをユーザ端末20に送信すると、プロセッサ11は、動作を終了する。
【0095】
なお、プロセッサ11は、エラー防止制約式を生成しなくともよい。即ち、プロセッサ11は、S13乃至S17を実行しなくともよい。
また、プロセッサ11は、サロゲートモデルを用いて、入力されたパラメータPのセットから固有値解析結果を算出するものであってもよい。即ち、プロセッサ11は、ユーザ端末20の機能を実現するものであってもよい。
【0096】
また、プロセッサ11は、所定のクラスタリング手法を用いて、評価対象モードを分類してもよい。
また、プロセッサ11は、オペレータからの操作に従って、いくつかのエラー防止制約式を予め設定するものであってもよい。
【0097】
以上のように構成されたサロゲートモデル生成システムは、シミュレーションによって生成された固有モードに偏りがある場合、割合が少ない固有モードを生成する固有モード生成制約式を生成する。サロゲートモデル生成システムは、固有モード生成制約式に従ってパラメータを生成して再度シミュレーションを行う。その結果、サロゲートモデル生成システムは、学習データにおいて固有モードの偏りを解消することができる。
【0098】
また、サロゲートモデル生成システムは、シミュレーションがエラーとなるパラメータを分析してエラー防止制約式を生成する。サロゲートモデル生成システムは、エラー防止制約式に従ってパラメータを生成して再度シミュレーションを行う。その結果、サロゲートモデル生成システムは、シミュレーションのエラーを防止することができる。よって、サロゲートモデル生成システムは、学習データを増加させることができる。
【0099】
本実施形態に係るプログラムは、電子機器に記憶された状態で譲渡されてよいし、電子機器に記憶されていない状態で譲渡されてもよい。後者の場合は、プログラムは、ネットワークを介して譲渡されてよいし、記憶媒体に記憶された状態で譲渡されてもよい。記憶媒体は、非一時的な有形の媒体である。記憶媒体は、コンピュータ可読媒体である。記憶媒体は、CD-ROM、メモリカード等のプログラムを記憶可能かつコンピュータで読取可能な媒体であればよく、その形態は問わない。
【0100】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0101】
1…サロゲートモデル生成システム、10…情報処理システム、11…プロセッサ、12…ROM、13…RAM、14…NVM、15…操作部、16…表示部、17…通信インターフェース、20…ユーザ端末、21…入力部、22…算出部、23…出力部、110…学習データ生成部、111…第1サンプリング計画生成部、112…シミュレーション実行部、113…設計変数制約分析部、114…第2サンプリング計画生成部、115…固有モード分析部、116…第3サンプリング計画生成部、120…学習部、300…解析対象モデル、301…板、302…部材、303…部材、304…部材、305…部材、306…錘。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11