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  • 特開-非鉄金属基材用プライマー組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024017095
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】非鉄金属基材用プライマー組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 163/00 20060101AFI20240201BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20240201BHJP
   C09D 7/65 20180101ALI20240201BHJP
   C09D 5/16 20060101ALI20240201BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20240201BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20240201BHJP
   B05D 7/14 20060101ALI20240201BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20240201BHJP
   B32B 15/092 20060101ALI20240201BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
C09D163/00
C09D5/00 D
C09D7/65
C09D5/16
C09D201/00
C09D7/61
B05D7/14 D
B05D7/24 302U
B32B15/092
B32B27/20 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022119503
(22)【出願日】2022-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】390033628
【氏名又は名称】中国塗料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩田 雄樹
【テーマコード(参考)】
4D075
4F100
4J038
【Fターム(参考)】
4D075BB24Z
4D075CA13
4D075CA34
4D075DB07
4D075DC06
4D075DC08
4D075EA41
4D075EB32
4D075EB33
4D075EC01
4D075EC11
4D075EC13
4D075EC23
4D075EC30
4D075EC54
4F100AB09B
4F100AB10B
4F100AK46A
4F100AK53A
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100CA02A
4F100CA13A
4F100CC00C
4F100EH46
4F100EJ65A
4F100EJ86
4F100GB31
4F100HB00A
4F100JB02
4F100JK06
4F100JL10A
4F100YY00A
4J038CG141
4J038DB001
4J038DB061
4J038JA69
4J038JB05
4J038JC30
4J038JC35
4J038KA03
4J038KA04
4J038KA06
4J038KA08
4J038KA10
4J038KA20
4J038NA05
4J038NA12
4J038PA07
4J038PB05
4J038PC02
(57)【要約】
【課題】非鉄金属基材との付着性、防食性および上塗り塗膜との付着性にバランスよく優れるプライマー塗膜を形成することができる非鉄金属基材用プライマー組成物を提供すること。
【解決手段】エポキシ樹脂(A)と、ジエチレントリアミンのポリアミドアミンおよびその変性物から選択される少なくとも1種の硬化剤(B)とを含む、非鉄金属基材用プライマー組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂(A)と、
ジエチレントリアミンのポリアミドアミンおよびその変性物から選択される少なくとも1種の硬化剤(B)と
を含む、非鉄金属基材用プライマー組成物。
【請求項2】
前記エポキシ樹脂(A)のエポキシ当量が160~700である、請求項1に記載の非鉄金属基材用プライマー組成物。
【請求項3】
さらに扁平状顔料を含有する、請求項1に記載の非鉄金属基材用プライマー組成物。
【請求項4】
前記プライマー組成物の顔料体積濃度(PVC)が20~45%である、請求項3に記載の非鉄金属基材用プライマー組成物。
【請求項5】
さらにビニル系(共)重合体を含有する、請求項1に記載の非鉄金属基材用プライマー組成物。
【請求項6】
さらに有機溶剤を含有し、該有機溶剤がプロピレングリコールモノメチルエーテルを含む、請求項1に記載の非鉄金属基材用プライマー組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の非鉄金属基材用プライマー組成物から形成されたプライマー塗膜。
【請求項8】
非鉄金属基材と、請求項7に記載のプライマー塗膜とを有する、プライマー塗膜付き基材。
【請求項9】
前記非鉄金属基材が船舶または水中構造物である、請求項8に記載のプライマー塗膜付き基材。
【請求項10】
請求項8または9に記載のプライマー塗膜付き基材上に、さらに上塗り塗膜を有する、積層塗膜付き基材。
【請求項11】
前記上塗り塗膜が実質的に亜酸化銅を含有しない、請求項10に記載の積層塗膜付き基材。
【請求項12】
前記上塗り塗膜が防汚塗膜である、請求項10に記載の積層塗膜付き基材。
【請求項13】
請求項1~6のいずれか1項に記載の非鉄金属基材用プライマー組成物を非鉄金属基材に塗布又は含浸し、塗布体又は含浸体を得る工程(I)、および、
前記塗布体又は含浸体を乾燥する工程(II)を有する、
プライマー塗膜付き基材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非鉄金属基材用プライマー組成物、プライマー塗膜、プライマー塗膜付き基材およびプライマー塗膜付き基材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
船舶や水中構造物等の基材としては、鉄鋼製の基材が多く使用されているが、アルミニウムなどの非鉄金属製の基材(以下「非鉄金属基材」という。)も使用されている。
船舶や水中構造物等の基材として用いられる非鉄金属基材の表面は、海水等の中に長期間曝されることにより、その表面に、カキ、イガイ、フジツボ等の動物類、海苔等の植物類、またはバクテリア類などの各種水棲生物が付着・繁殖し、また、海水成分などによる腐食等の問題があった。
【0003】
これらの問題の発生を抑制するために、非鉄金属基材表面には防汚塗料などの上塗り塗料が塗布され、上塗り塗膜が形成されるが、アルミニウム等の非鉄金属基材は、その表面に酸化被膜が形成されていることなどにより、表面活性が低いため、非鉄金属基材に上塗り塗膜を十分な付着強度で付着させることは困難であった。
【0004】
そこで、従来では、非鉄金属基材上に上塗り塗膜を形成する際には、当該基材表面から順に、非鉄金属基材への付着性に優れるプライマー塗膜、優れた防食性を有するバインダー塗膜を形成し、そのバインダー塗膜上に、上塗り塗膜を形成してきた。
なお、例えば、特許文献1や2には、前記バインダー塗膜を使用しなくても、付着性に優れる上塗り塗膜付き基材(積層防汚塗膜付き基材)を形成することができるプライマー塗膜が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014-148639号公報
【特許文献2】国際公開第2017/159740号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1や2に記載されているプライマー塗膜は、バインダー塗膜を使用しなくても、付着性に優れる上塗り塗膜付き基材を形成できる点で好ましいが、非鉄金属基材との付着性、防食性および上塗り塗膜との付着性の点で、改良の余地があった。
【0007】
本発明は以上のことに鑑みてなされたものであり、非鉄金属基材との付着性、防食性および上塗り塗膜との付着性にバランスよく優れるプライマー塗膜を形成することができる非鉄金属基材用プライマー組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決する方法について鋭意検討を重ねた結果、下記構成例によれば、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明の構成例は以下の通りである。
【0009】
[1] エポキシ樹脂(A)と、
ジエチレントリアミンのポリアミドアミンおよびその変性物から選択される少なくとも1種の硬化剤(B)と
を含む、非鉄金属基材用プライマー組成物。
【0010】
[2] 前記エポキシ樹脂(A)のエポキシ当量が160~700である、[1]に記載の非鉄金属基材用プライマー組成物。
【0011】
[3] さらに扁平状顔料を含有する、[1]または[2]に記載の非鉄金属基材用プライマー組成物。
[4] 前記プライマー組成物の顔料体積濃度(PVC)が20~45%である、[3]に記載の非鉄金属基材用プライマー組成物。
【0012】
[5] さらにビニル系(共)重合体を含有する、[1]~[4]のいずれかに記載の非鉄金属基材用プライマー組成物。
【0013】
[6] さらに有機溶剤を含有し、該有機溶剤がプロピレングリコールモノメチルエーテルを含む、[1]~[5]のいずれかに記載の非鉄金属基材用プライマー組成物。
【0014】
[7] [1]~[6]のいずれかに記載の非鉄金属基材用プライマー組成物から形成されたプライマー塗膜。
[8] 非鉄金属基材と、[7]に記載のプライマー塗膜とを有する、プライマー塗膜付き基材。
[9] 前記非鉄金属基材が船舶または水中構造物である、[8]に記載のプライマー塗膜付き基材。
【0015】
[10] [8]または[9]に記載のプライマー塗膜付き基材上に、さらに上塗り塗膜を有する、積層塗膜付き基材。
[11] 前記上塗り塗膜が実質的に亜酸化銅を含有しない、[10]に記載の積層塗膜付き基材。
[12] 前記上塗り塗膜が防汚塗膜である、[10]に記載の積層塗膜付き基材。
【0016】
[13] [1]~[6]のいずれかに記載の非鉄金属基材用プライマー組成物を非鉄金属基材に塗布又は含浸し、塗布体又は含浸体を得る工程(I)、および、
前記塗布体又は含浸体を乾燥する工程(II)を有する、
プライマー塗膜付き基材の製造方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、非鉄金属基材との付着性、防食性および上塗り塗膜との付着性にバランスよく優れるプライマー塗膜を形成することができる。
該プライマー塗膜によれば、前記バインダー塗膜を形成することなく、付着性に優れる上塗り塗膜付き基材(積層塗膜付き基材)を形成できるため、従来よりも塗装工程を削減することができ、また、工期を短縮できる。このため、経済的に有利な方法で、付着性に優れる上塗り塗膜付き基材(積層塗膜付き基材)を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、防食性試験で用いる試験板の平面図の一例を示す概略模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
≪非鉄金属基材用プライマー組成物≫
本発明に係る非鉄金属基材用プライマー組成物(以下「本組成物」ともいう。)は、エポキシ樹脂(A)と、ジエチレントリアミンのポリアミドアミンおよびその変性物から選択される少なくとも1種の硬化剤(B)とを含む。
【0020】
本組成物は、非鉄金属基材用プライマー組成物であり、本発明の効果がより発揮される等の点から、特に、アルミ基材に好適に用いられる。
また、本組成物は、本発明の効果がより発揮される等の点から、特に、船舶または水中構造物用のプライマー組成物として好適に用いられる。
【0021】
本組成物の下記式(1)から算出される反応比は、好ましくは0.1~1、より好ましくは0.2~0.9である。
反応比が前記範囲にあると、防食性および上塗り塗膜との付着性にバランスよく優れるプライマー塗膜を容易に形成することができる。
反応比={(硬化剤(B)の固形分の配合量/硬化剤(B)の固形分の活性水素当量)+(エポキシ樹脂(A)に対して反応性を有する成分の固形分の配合量/エポキシ樹脂(A)に対して反応性を有する成分の固形分の官能基当量)}/{(エポキシ樹脂(A)の固形分の配合量/エポキシ樹脂(A)の固形分のエポキシ当量)+(硬化剤(B)に対して反応性を有する成分の固形分の配合量/硬化剤(B)に対して反応性を有する成分の固形分の官能基当量)} ・・・(1)
【0022】
前記式(1)における「エポキシ樹脂(A)に対して反応性を有する成分」としては、例えば、後述するシランカップリング剤が挙げられ、また、「硬化剤(B)に対して反応性を有する成分」としては、例えば、後述するシランカップリング剤が挙げられる。
シランカップリング剤としては、反応性基としてアミノ基やエポキシ基を有するシランカップリング剤を使用することができるため、反応性基の種類によって、シランカップリング剤がエポキシ樹脂(A)に対して反応性を有するのか、硬化剤(B)に対して反応性を有するのかを判断し、反応比を算出する必要がある。
なお、ある成分の「官能基当量」とは、該成分1molにおける1官能基あたりの質量(g)を意味する。
【0023】
本組成物は、人体や環境への負荷等を考慮して水性塗料であってもよいが、低温環境下(例:5℃以下)での乾燥性・硬化性が不十分となる等の点から、溶剤系塗料であることが好ましい。
【0024】
本組成物の、ISO3233:1998準拠したボリュームソリッド(以下「不揮発分体積」ともいう。)は、好ましくは40~100%、より好ましくは50~85%である。
一般的に、組成物の不揮発分体積が70%以上であれば、ハイソリッド型の組成物であるといえ、本組成物中の溶剤等の含有量を調整することで、ハイソリッド型組成物、さらには無溶剤型組成物とすることもできる。
【0025】
本組成物は、一成分型の組成物であってもよいが、貯蔵安定性および貯蔵の容易性を考慮すると、第1剤および第2剤を含む多成分型の組成物であることが好ましく、例えば、前記エポキシ樹脂(A)を含有する第1剤と、前記硬化剤(B)を含有する第2剤とを含む二成分型の組成物が望ましい。また、本組成物は、前記第1剤および第2剤以外の第3剤等を含む三成分以上型の組成物であってもよい。
これら第1剤、第2剤や第3剤等は、通常、それぞれ別個の容器にて保存、貯蔵、運搬等され、使用直前に混合して用いられる。
【0026】
<エポキシ樹脂(A)>
エポキシ樹脂(A)としては特に制限されないが、例えば、分子内に2個以上のエポキシ基を含むポリマーまたはオリゴマー、およびそのエポキシ基の開環反応によって生成するポリマーまたはオリゴマーが挙げられる。
このようなエポキシ樹脂としては、例えば、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾール型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂、脂肪酸変性エポキシ樹脂が挙げられる。
エポキシ樹脂(A)は、1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0027】
これらの中でも、非鉄金属基材との付着性に優れるプライマー塗膜を容易に形成することができる等の点から、ビスフェノール型エポキシ樹脂が好ましく、ビスフェノールA型およびビスフェノールF型のエポキシ樹脂から選択される1種以上がより好ましく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂が特に好ましい。
【0028】
前記ビスフェノールA型エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型ジグリシジルエーテル類の重縮合物が挙げられる。該ビスフェノールA型ジグリシジルエーテル類としては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールA(ポリ)エチレンオキシドジグリシジルエーテル、ビスフェノールA(ポリ)プロピレンオキシドジグリシジルエーテルが挙げられる。
【0029】
エポキシ樹脂(A)は、常温(5~35℃の温度、以下同様。)で、液状から固形状のいずれでもよいが、半固形状のエポキシ樹脂および固形状のエポキシ樹脂から選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましく、1種または2種以上の半固形状のエポキシ樹脂および1種または2種以上の固形状のエポキシ樹脂を用いることがより好ましい。
【0030】
エポキシ樹脂(A)のエポキシ当量は、好ましくは150~1,000、より好ましくは160~700、さらに好ましくは170~600、特に好ましくは180~550である。
エポキシ樹脂(A)のエポキシ当量が前記範囲にあると、本組成物中に含まれる塗膜形成成分の含有率を高めることで、人体や環境への負荷等を低減し、かつ、塗装を効率化できる組成物(ハイソリッド化の組成物)を容易に得ることができ、非鉄金属基材との付着性、防食性および上塗り塗膜との付着性にバランスよく優れるプライマー塗膜を容易に形成することができる。
なお、2種以上のエポキシ樹脂を用いる場合、2種以上のエポキシ樹脂全体(混合物)のエポキシ当量が前記範囲にあることが好ましい。
本発明におけるエポキシ当量は、JIS K 7236:2009(過塩素酸滴定法)に準拠して算出される固形分のエポキシ当量である。
【0031】
エポキシ樹脂(A)としては、非鉄金属基材との付着性、防食性および上塗り塗膜との付着性にバランスよく優れるプライマー塗膜を容易に形成することができる等の点から、エポキシ当量が400~700、好ましくは450~550の範囲にあるエポキシ樹脂(A1)を用いることが望ましい。
また、エポキシ樹脂(A)としては、人体や環境への負荷等を低減できる組成物(ハイソリッド化の組成物)を容易に得ることができる等の点から、エポキシ当量が160~350、好ましくは200~300の範囲にあるエポキシ樹脂(A2)を用いることが望ましい。
前記それぞれの効果を併有することができる等の点から、エポキシ樹脂(A1)およびエポキシ樹脂(A2)を併用することが好ましい。
【0032】
エポキシ樹脂(A)のE型粘度計(TOKIMEC社製、FMD型)で測定した25℃における粘度は、好ましくは1,500mPa・s以上、より好ましくは3,000mPa・s以上であり、好ましくは120,000mPa・s以下、より好ましくは30,000mPa・s以下である。
【0033】
前記エポキシ樹脂(A)は、従来公知の方法で合成して得た樹脂を用いてもよく、市販品を用いてもよい。
該市販品の内、常温で液状の樹脂としては、例えば、「E-028」(大竹明新化学(株)製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量180~190、粘度12,000~15,000mPa・s/25℃)、「jER807」(三菱化学(株)製、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、エポキシ当量160~180、粘度2,000~5,000mPa・s/25℃)、「フレップ60」(東レ・ファインケミカル(株)製、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、エポキシ当量280、粘度約17,000mPa・s/25℃)が挙げられる。常温で半固形状の樹脂としては、例えば、「jER834」(三菱化学(株)製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量230~270)が挙げられる。常温で固形状の樹脂としては、例えば、「jER1001」(三菱化学(株)製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量450~500)が挙げられる。
また、前述の半固形状または固形状のエポキシ樹脂を溶剤で希釈し、溶液とした「E-834-85X」(大竹明新化学(株)製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂のキシレン溶液(834タイプエポキシ樹脂溶液)、エポキシ当量230~270)、「E-001-75X」(大竹明新化学(株)製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂のキシレン溶液(1001タイプエポキシ樹脂溶液)、エポキシ当量450~500)なども使用することができる。
【0034】
本組成物の不揮発分100質量%に対する、エポキシ樹脂(A)の固形分の含有量は、非鉄金属基材との付着性および防食性にバランスよく優れるプライマー塗膜を容易に形成することができる等の点から、好ましくは10~70質量%、より好ましくは20~60質量%である。
【0035】
本組成物の不揮発分は、本組成物を十分に反応硬化(加熱)した後の塗膜(加熱残分)の質量百分率、または、該塗膜(加熱残分)自体を意味する。前記不揮発分は、本組成物(例えば、第1剤と第2剤とを混合した直後の組成物)1±0.1gを平底皿に量り採り、質量既知の針金を使って均一に広げ、23℃で24時間乾燥させた後、加熱温度108℃で3時間(常圧下)加熱した時の、加熱残分および該針金の質量を測定することで算出することができる。なお、この不揮発分は、本組成物に用いる原料成分の固形分(溶媒以外の成分)の総量と同等の値である。
【0036】
本組成物の不揮発分100質量%に対する、エポキシ樹脂(A1)の固形分の含有量は、非鉄金属基材との付着性、防食性および上塗り塗膜との付着性にバランスよく優れるプライマー塗膜を容易に形成することができる等の点から、好ましくは5~40質量%、より好ましくは10~30質量%である。
本組成物の不揮発分100質量%に対する、エポキシ樹脂(A2)の固形分の含有量は、人体や環境への負荷等を低減できる組成物(ハイソリッド化の組成物)を容易に得ることができる等の点から、好ましくは1~30質量%、より好ましくは3~20質量%である。
【0037】
<硬化剤(B)>
硬化剤(B)は、ジエチレントリアミン(DETA)のポリアミドアミンおよびその変性物から選択される少なくとも1種である。
本組成物では、硬化剤として、防食塗料分野において汎用の硬化剤(例:トリエチレンテトラミン(TETA)のポリアミドやメタキシリレンジアミン(MXDA)マンニッヒ変性アミン)ではなく、特定の硬化剤である、ジエチレントリアミンのポリアミドアミンまたはその変性物を用いるため、特に、非鉄金属基材との付着性、防食性および上塗り塗膜との付着性にバランスよく優れるプライマー塗膜を容易に形成することができる。
【0038】
ジエチレントリアミンのポリアミドアミンとしては特に制限されないが、例えば、ジエチレントリアミンと、一塩基性カルボン酸やダイマー酸などのカルボン酸との脱水縮合物であり、分子中に反応性の第1級または第2級のアミノ基を有する化合物が挙げられる。
【0039】
前記一塩基性カルボン酸としては特に制限されないが、例えば、油脂、特に、大豆油、トール油、リシノール酸またはこれらの組み合わせに由来する、炭素数16、炭素数18、炭素数19タイプの脂肪酸が挙げられる。
【0040】
前記ダイマー酸は、不飽和脂肪酸の二量体であり、通常は、少量の単量体または三量体を含んでいる。
不飽和脂肪酸としては、カルボキシ基の炭素原子も含む炭素数が、好ましくは12~24個、より好ましくは16~18個であり、かつ、1分子中に不飽和結合を1個または2個以上有するカルボン酸化合物が望ましい。このような不飽和脂肪酸としては、例えば、オレイン酸、エライジン酸、セトレイン酸等の不飽和結合を1個有する脂肪酸;ソルビン酸、リノール酸等の不飽和結合を2個有する脂肪酸;リノレン酸、アラキドン酸等の不飽和結合を3個以上有する脂肪酸が挙げられる。さらに、動植物から得られる脂肪酸も用いることができ、その具体例としては、大豆油脂肪酸、トール油脂肪酸、亜麻仁油脂肪酸、綿実脂肪酸が挙げられる。
【0041】
ジエチレントリアミンのポリアミドアミンの変性物としては、例えば、ジエチレントリアミンのポリアミドアミンの、エポキシ化合物とのアミンアダクト、マンニッヒ化合物(例:マンニッヒ変性ポリアミドアミン、フェナルカマイド等)、マイケル付加物、ウレタン変性物が挙げられる。
【0042】
硬化剤(B)は、従来公知の方法で得た化合物を用いてもよく、市販品を用いてもよい。
【0043】
本組成物の不揮発分100質量%に対する、硬化剤(B)の固形分の含有量は、前記反応比を満たす量であることが好ましいが、非鉄金属基材との付着性、防食性および上塗り塗膜との付着性にバランスよく優れるプライマー塗膜を容易に形成することができる等の点から、好ましくは2~40質量%、より好ましくは5~30質量%である。
【0044】
<その他の成分>
本組成物には、前記エポキシ樹脂(A)および硬化剤(B)以外のその他の成分を、本発明の効果を損なわない範囲で用いてもよい。
該その他の成分としては、例えば、扁平状顔料、扁平状顔料以外の顔料、ビニル系(共)重合体、エポキシ基含有反応性希釈剤、有機溶剤、シランカップリング剤、揺変剤(たれ止め・沈降防止剤)、硬化剤(B)以外の硬化剤、硬化促進剤、可塑剤(例:石油樹脂、キシレン樹脂、クマロン樹脂、テルペンフェノール樹脂、アクリル樹脂)、分散剤、表面調整剤、レベリング剤、消泡剤、無機脱水剤(安定剤)が挙げられる。
その他の成分はそれぞれ、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0045】
〔扁平状顔料〕
本組成物は、防食性により優れ、内部応力緩和による非鉄金属基材との付着性に優れるプライマー塗膜を容易に形成することができる等の点から、扁平状顔料を含有することが好ましい。
扁平状顔料は、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0046】
扁平状顔料としては、より前記効果に優れる塗膜を形成することができる点から、メジアン径(D50)が好ましくは5~200μmであり、かつ、平均アスペクト比(メジアン径/平均厚さ)が、好ましくは5以上、より好ましくは10以上、好ましくは150以下、より好ましくは100以下である、顔料が望ましい。
D50は、レーザー散乱回折式粒度分布測定装置、例えば、「SALD 2200」((株)島津製作所製)を用いて測定することができる。
平均厚さは、走査電子顕微鏡(SEM)、例えば、「XL-30」(フィリップス社製)を用い、扁平状顔料の主面に対して水平方向から観察し、数10~数100個の顔料粒子の厚さの平均値として算出できる。
【0047】
扁平状顔料としては、例えば、タルク、マイカ、ガラスフレーク、アルミフレーク、鱗片状酸化鉄、ステンレスフレーク、プラスチックフレークが挙げられ、安価で入手容易性に優れ、より前記効果に優れるプライマー塗膜を形成することができる等の点から、タルク、マイカが好ましい。
【0048】
扁平状顔料を本組成物に配合する場合、その配合量は、防食性により優れ、内部応力緩和による非鉄金属基材との付着性に優れるプライマー塗膜を容易に形成することができる等の点から、本組成物の不揮発分100質量%に対し、好ましくは10~70質量%、より好ましくは10~50質量%である。
【0049】
〔扁平状顔料以外の顔料〕
本組成物は、扁平状顔料以外の顔料を含有してもよく、該顔料としては、体質顔料、着色顔料、防錆顔料等が挙げられ、有機系、無機系の何れであってもよい。
扁平状顔料以外の顔料は、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0050】
前記体質顔料としては、例えば、従来公知の、(沈降性)硫酸バリウム、(カリ)長石、カオリン、アルミナホワイト、クレー、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、ドロマイト、シリカを用いることができる。特に、シリカ、(沈降性)硫酸バリウム、(カリ)長石が好ましい。
【0051】
体質顔料を本組成物に配合する場合、その配合量は、本組成物の不揮発分100質量%に対し、好ましくは10~70質量%、より好ましくは10~50質量%である。
【0052】
前記着色顔料としては、例えば、従来公知の、カーボンブラック、二酸化チタン(チタン白)、酸化鉄(弁柄)、黄色酸化鉄、群青等の無機顔料、シアニンブルー、シアニングリーン等の有機顔料を用いることができる。特に、チタン白、カーボンブラック、弁柄が好ましい。
【0053】
着色顔料を本組成物に配合する場合、その配合量は、本組成物の不揮発分100質量%に対し、好ましくは0.01~30質量%、より好ましくは0.01~20質量%である。
【0054】
本組成物が、前記扁平状顔料および/または扁平状顔料以外の顔料を含有する場合、これら全ての顔料の合計の体積濃度(PVC)は、塗装作業性に優れる組成物を容易に得ることができ、応力緩和による非鉄金属基材との付着性および耐水性に優れるプライマー塗膜を容易に得ることができる等の点から、好ましくは20~45%、より好ましくは23~42%、さらに好ましくは25~37%である。
前記PVCとは、本組成物中の不揮発分の体積に対する、顔料の合計の体積濃度のことをいう。PVCは、具体的には下記式より求めることができる。
PVC[%]=本組成物中の全ての顔料の体積合計×100/本組成物中の不揮発分の体積
【0055】
前記本組成物中の不揮発分の体積は、本組成物の不揮発分の質量および真密度から算出することができる。該不揮発分の質量および真密度は、測定値でも、用いる原料から算出した値でも構わない。
前記顔料の体積は、用いた顔料の質量および真密度から算出することができる。前記顔料の質量および真密度は、測定値でも、用いる原料から算出した値でも構わない。例えば、本組成物の不揮発分より顔料と他の成分とを分離し、分離された顔料の質量および真密度を測定することで算出することができる。
【0056】
〔ビニル系(共)重合体〕
本組成物は、防食性および非鉄金属基材との付着性を維持したまま、上塗り塗膜との付着性に優れるプライマー塗膜を容易に形成することができる等の点から、ビニル系(共)重合体を含有していてもよい。
前記ビニル系(共)重合体としては特に制限されないが、例えば、下記式(2)で表されるビニルアルキルエーテル由来の構成単位を含有するポリビニルアルキルエーテル(共)重合体、塩化ビニル系(共)重合体、酢酸ビニル系(共)重合体が挙げられる。
ビニル系(共)重合体は、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0057】
【化1】
【0058】
式(2)中、Rは直鎖または分岐のアルキル基を示す。
前記式(2)中のアルキル基の炭素数は、1以上であり、好ましくは1~6、より好ましくは1~4、さらに好ましくは2~4、特に好ましくは2である。
【0059】
前記ポリビニルアルキルエーテル(共)重合体とは、前記式(2)で表されるビニルアルキルエーテルの単独重合体、または該ビニルアルキルエーテルをモノマー全量に対し50重量%以上の量で用い、その他のモノマーと重合して得られたポリビニルアルキルエーテル共重合体(これらをまとめて、単に「ポリビニルアルキルエーテル(共)重合体」ともいう。)を意味する。このようなポリビニルアルキルエーテル(共)重合体としては、上塗り塗膜との付着性に優れるプライマー塗膜を容易に形成することができる等の点から、前記式(2)で表されるビニルアルキルエーテルをモノマー全量に対し、75重量%以上の量で用いた共重合体が好ましく、単独重合体がより好ましい。
前記その他のモノマーとしては、前記式(2)で表されるビニルアルキルエーテル以外の化合物であって、該ビニルアルキルエーテルと共重合可能であれば制限なく使用することができる。
【0060】
前記ポリビニルアルキルエーテル(共)重合体の分子量は、重量平均分子量Mw(GPCにて測定したポリスチレン換算値。以下同様。)が500~300,000の範囲にあることが好ましい。Mwが前記範囲にあるポリビニルアルキルエーテル(共)重合体は、エポキシ樹脂(A)との相容性に優れ、Mwが前記範囲にあるポリビニルアルキルエーテル(共)重合体を用いることで、上塗り塗膜との付着性に優れるプライマー塗膜を容易に形成することができる。
【0061】
前記ポリビニルアルキルエーテル(共)重合体の具体例としては、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルエチルエーテル、ポリビニルイソプロピルエーテル、ポリビニルイソブチルエーテルが挙げられる。
【0062】
前記塩化ビニル系(共)重合体および酢酸ビニル系(共)重合体としては、例えば、塩化ビニル単独重合体、酢酸ビニル単独重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル-プロピオン酸ビニル共重合体、塩化ビニル-アルキルビニルエーテル共重合体、塩化ビニル-アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル-エチレン共重合体、塩化ビニル-無水マレイン酸共重合体、塩化ビニル-(メタ)アクリル酸アルキル共重合体(アルキル基:炭素数1~5程度)、塩化ビニル-スチレン共重合体、塩化ビニル-塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル-ステアリン酸ビニル共重合体、塩化ビニル-マレイン酸(またはマレイン酸エステル)共重合体、塩化ビニル-脂肪族ビニル共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル-ビニルアルコール共重合体が挙げられる。
【0063】
前記ビニル系(共)重合体としては、従来公知の方法で合成して得た(共)重合体を用いてもよく、市販品を用いてもよい。
【0064】
ビニル系(共)重合体を本組成物に配合する場合、その配合量は、塗装作業性に優れる組成物を容易に得ることができ、上塗り塗膜との付着性に優れるプライマー塗膜を容易に形成することができる等の点から、本組成物の不揮発分100質量%に対し、好ましくは1~10質量%、より好ましくは2~6質量%である。
【0065】
〔エポキシ基含有反応性希釈剤〕
本組成物は、エポキシ基含有反応性希釈剤を含んでいてもよい。
前記エポキシ基含有反応性希釈剤としては、E型粘度計(TOKIMEC社製、FMD型)で測定した25℃における粘度が500mPa・s以下のエポキシ化合物であれば特に制限されず、単官能型であっても、多官能型であってもよい。
エポキシ基含有反応性希釈剤は、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0066】
単官能型エポキシ基含有反応性希釈剤としては、例えば、アルキルグリシジルエーテル(アルキル基の炭素数は、例えば1~13)、フェニルグリシジルエーテル、o-クレシルグリシジルエーテル、アルキルフェニルグリシジルエーテル(アルキル基の炭素数は、例えば1~20、好ましくは1~5、例:メチルフェニルグリシジルエーテル、エチルフェニルグリシジルエーテル、プロピルフェニルグリシジルエーテル、p-tert-ブチルフェニルグリシジルエーテル)、フェノールグリシジルエーテル、アルキルフェノールグリシジルエーテル(アルキル基の炭素数は、例えば1~20)、フェノール(EO)nグリシジルエーテル(繰り返し数nは、例えば3~20、EO:-C24O-)が挙げられる。
【0067】
多官能型エポキシ基含有反応性希釈剤としては、例えば、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、モノまたはポリアルキレングリコールジグリシジルエーテル(アルキレン基の炭素数は、例えば1~5、例:エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル)、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルが挙げられる。
【0068】
エポキシ基含有反応性希釈剤を本組成物に配合する場合、その配合量は、本組成物の固形分体積を高めることができる等の点から、本組成物の不揮発分100質量%に対し、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上であり、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。
【0069】
なお、本組成物がエポキシ基含有反応性希釈剤を含有する場合、本組成物より形成されたプライマー塗膜上に防汚塗膜を形成した積層防汚塗膜付き基材において、前記エポキシ基含有反応性希釈剤が未反応で残存すると、当該反応性希釈剤が防汚塗膜にブリード(移行)し、防汚塗膜の消耗性および防汚性が低下する場合がある。特に、本組成物の塗装が低温環境下で行われる場合には、エポキシ基含有反応性希釈剤と硬化剤との反応速度が遅くなり、未反応のエポキシ基含有反応性希釈剤の残存量が多くなり、その影響がさらに大きくなる傾向にある。よって、この観点からは、本組成物中のエポキシ基含有反応性希釈剤の含有量は、本組成物の不揮発分100質量%に対し、好ましくは3質量%以下、より好ましくは1質量%以下であり、本組成物は、実質的にエポキシ基含有反応性希釈剤を含有しないことが特に好ましい。
なお、本発明において、ある成分を実質的に含有しないとは、本組成物の不揮発分100質量%に対する該成分の含有量が、0.1質量%未満であることをいう。
【0070】
〔有機溶剤〕
前記有機溶剤としては特に限定されず、従来公知の有機溶剤を使用できる。
該有機溶剤としては、例えば、芳香族系、脂肪族系、ケトン系、エーテル系、エステル系、アルコール系等の従来公知の有機溶剤が挙げられ、具体的には、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤;ミネラルスピリット、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶剤;メチルイソブチルケトン(MIBK)、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエーテル又はエステル系溶剤;n-ブタノール、イソプロパノール、ベンジルアルコール等のアルコール系溶剤が挙げられる。
有機溶剤は、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0071】
前記有機溶剤としては、これらの中でも、上塗り塗膜との付着性に顕著に優れるプライマー塗膜を容易に形成することができる等の点から、プロピレングリコールモノメチルエーテルを用いることが好ましい。
【0072】
有機溶剤を本組成物に配合する場合、その配合量は、塗装作業性に優れる組成物を容易に得ることができる等の点から、本組成物100質量%に対し、好ましくは10~50質量%、より好ましくは15~40質量%である。
【0073】
プロピレングリコールモノメチルエーテルを本組成物に配合する場合、その配合量は、上塗り塗膜との付着性に優れるプライマー塗膜を容易に形成することができる等の点から、本組成物100質量%に対し、好ましくは5~15質量%、より好ましくは6~10質量%である。
【0074】
〔シランカップリング剤〕
前記シランカップリング剤としては特に制限されず、従来公知の化合物を用いることができるが、同一分子内に少なくとも2つの加水分解性基を有し、非鉄金属基材に対する付着性の向上、塗料粘度の低下等に寄与できる化合物であることが好ましく、例えば、式:X-SiMen3-n[nは0または1、Xは有機質との反応が可能な反応性基(例:アミノ基、ビニル基、エポキシ基、メルカプト基、ハロゲン基、炭化水素基の一部がこれらの基で置換された基、または炭化水素基の一部がエーテル結合等で置換された基の一部がこれらの基で置換された基。)を示し、Meはメチル基であり、Yは加水分解性基(例:メトキシ基、エトキシ基などのアルコキシ基)を示す。]で表される化合物であることがより好ましい。
シランカップリング剤は、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0075】
前記シランカップリング剤としては、従来公知の方法で合成して得た化合物を用いてもよく、市販品を用いてもよい。
【0076】
シランカップリング剤を本組成物に配合する場合、その配合量は、塗装作業性に優れる組成物を容易に得ることができ、非鉄金属基材との付着性に優れるプライマー塗膜を形成することができる等の点から、本組成物100質量%に対し、好ましくは0.1~10質量%、より好ましくは0.1~5質量%である。
【0077】
〔揺変剤〕
前記揺変剤は、本組成物に揺変性(チクソトロピー)を付与し、該組成物の非鉄金属基材への付着性を向上させることができる。
前記揺変剤としては特に制限されず、有機系揺変剤および無機系揺変剤が挙げられる。
揺変剤は、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0078】
前記有機系揺変剤としては、例えば、アマイドワックス系、水素添加ひまし油系、酸化ポリエチレン系、植物油重合油系、界面活性剤系の揺変剤、または、これらを2種以上併用した揺変剤が挙げられる。
【0079】
前記無機系揺変剤としては、例えば、微粉化シリカ、ベントナイト、シラン化合物などで表面処理したシリカ、第4級アンモニウム塩などで表面処理したベントナイト(有機ベントナイト)、極微細表面処理炭酸カルシウム、またはこれらの混合物が挙げられる。
【0080】
揺変剤を本組成物に配合する場合、その配合量は、本組成物の不揮発分100質量%に対し、好ましくは1~5質量%、より好ましくは1.5~3質量%である。
【0081】
〔硬化剤(B)以外の硬化剤〕
本組成物は、硬化剤(B)以外の硬化剤として、従来公知のアミン硬化剤、例えば、エポキシ樹脂硬化剤として通常使用されている、ポリアミン化合物、具体的には、脂肪族ポリアミン、変性脂肪族ポリアミン、脂環族ポリアミン、変性脂環族ポリアミン、芳香族ポリアミン、変性芳香族ポリアミン、熱潜在性硬化剤(例:ジシアンジアミド)などを用いることもできる。
硬化剤(B)以外の硬化剤を本組成物に配合する場合、その配合量は、前記反応比を満たす量であることが好ましく、具体的には、本組成物の不揮発分100質量%に対し、好ましくは1~20質量%、より好ましくは2~15質量%である。
【0082】
〔硬化促進剤〕
前記硬化促進剤としては、例えば3級アミン類、重合性(メタ)アクリレートモノマーなどが挙げられる。
硬化促進剤は、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0083】
前記3級アミン類としては、例えば、トリエタノールアミン、ジアルキルアミノエタノール、トリエチレンジアミン(1,4-ジアザシクロ[2.2.2]オクタン)、2,4,6-トリ(ジメチルアミノメチル)フェノールが挙げられ、市販品としては、例えば、「アンカミン K-54」(EVONIK社製、2,4,6-トリ(ジメチルアミノメチル)フェノール)などが挙げられる。
【0084】
前記重合性(メタ)アクリレートモノマーとしては、市販品を用いてもよく、該市販品としては、例えば、「M-CURE 100」(単官能の芳香族アクリレート、官能基当量257~267)、「M-CURE 200」(二官能の芳香族アクリレート、官能基当量130~140)、「M-CURE 201」(二官能の脂肪族アクリレート、官能基当量95~105)、「M-CURE 300」(三官能の脂肪族アクリレート、官能基当量112~122)、「M-CURE 400」(四官能の脂肪族アクリレート、官能基当量80~90)(いずれも、SARTOMER COMPANY,INC製)が挙げられる。
【0085】
硬化促進剤を本組成物に配合する場合、その配合量は、本組成物の不揮発分100質量%に対し、好ましくは0.05~5質量%である。
【0086】
<本組成物の調製方法>
前記第1剤および第2剤等は、これらの剤に配合する各成分を混合(混練)することで、調製することができる。この混合(混練)の際には、各成分を一度に添加・混合してもよく、複数回に分けて添加・混合してもよい。また、季節、環境等に応じて加温、冷却等しながら混合してもよい。
本組成物は、これら第1剤、第2剤および必要に応じて用いられる第3剤等を混合(混練)することで、調製することができる。
前記混合(混練)の際には、従来公知の混合機、分散機、攪拌機等を使用でき、例えば、混合・分散ミル、モルタルミキサー、ロール、ペイントシェーカー、ホモジナイザーが挙げられる。
【0087】
≪プライマー塗膜、プライマー塗膜付き基材≫
本発明に係るプライマー塗膜(以下「本塗膜」ともいう。)は、前記本組成物を用いて形成され、本発明に係るプライマー塗膜付き基材(以下「本塗膜付き基材」ともいう。)は、本塗膜と非鉄金属基材とを含む積層体である。このような、本塗膜付き基材は、例えば、下記工程(I)および(II)を含む方法で製造することができる。
工程(I):本組成物を非鉄金属基材に塗布又は含浸し、塗布体又は含浸体を得る工程
工程(II):前記塗布体又は含浸体を乾燥する工程
【0088】
前記非鉄金属としては、例えば、銅、銅合金{例:青銅(ブロンズ)、アルミ青銅、ニッケル・アルミ青銅、マンガン青銅、黄銅(しんちゅう)、銅亜鉛合金、ベリリウム銅}、アルミニウム、アルミ合金、ニッケル合金(例:ニッケル・クロム)、ステンレス(例:SUS304、SUS410)、チタン合金が挙げられる。
また、該非鉄金属には、メッキ処理された金属も含まれる。すなわち、本組成物が接する面が鉄鋼材料以外の金属である金属も含まれる。
前記メッキ処理された金属としては、例えば、スズをメッキした鋼板(ブリキ)、亜鉛をメッキした鋼板(亜鉛メッキ鋼板、トタンなど)が挙げられる。
【0089】
前記非鉄金属基材としては、具体的には、船舶、水中構造物および漁具などが挙げられ、船舶、水中構造物が好ましい。
本組成物は、海洋中のごみを巻き込むことでダメージを受けたり、高速回転により発生する気泡のためキャビテーションを起こしやすいプロペラにも使用することができる。該プロペラの材質は、例えば、高力黄銅鋳物(JIS記号CAC301)、アルミニウム青銅鋳物(JIS記号CAC703)などの銅合金、または、アルミニウムである。
【0090】
本塗膜の膜厚は、所望の用途に応じて適宜調整すればよいが、好ましくは50~300μm、より好ましくは70~150μmである。
前記膜厚の本塗膜は、1回の塗装や含浸で形成してもよいし、2回以上の塗装や含浸(工程(I)および(II)を2回以上繰り返す方法)で形成してもよい。
【0091】
前記工程(I)における塗布としては特に制限されず、エアスプレー、エアレススプレー、刷毛塗り、ローラーコート等の公知の方法を用いることができる。
また、前記工程(I)における含浸体を得る方法としては、例えば、非鉄金属基材を本組成物に一定時間浸漬し、その後、該非鉄金属基材を本組成物から取り出す方法が挙げられる。
【0092】
なお、本組成物と非鉄金属基材との良好な付着性を確保するため、本組成物を非鉄金属基材上に塗装する前や、非鉄金属基材を本組成物に浸漬する前に、錆、油脂、水分、塵埃、スライム、塩分などの非鉄金属基材表面の付着物を清掃、除去することが好ましい。
【0093】
前記工程(II)における乾燥は、乾燥時間を短縮させるために5~60℃程度に加熱して行ってもよいが、常温下で、好ましくは1~10日間程度、より好ましくは1~7日間程度放置することが望ましい。
【0094】
≪積層塗膜付き基材≫
本発明に係る積層塗膜付き基材(以下「本積層塗膜付き基材」ともいう。)は、前述した本塗膜付き基材上に、具体的には、本塗膜付き基材の本塗膜上に、さらに上塗り塗膜を有する。つまり、本積層塗膜付き基材は、非鉄金属基材、本塗膜、上塗り塗膜をこの順で有する積層体である。
本積層塗膜付き基材に含まれる上塗り塗膜は、1層であってもよく、2層以上であってもよい。2層以上の場合、経時劣化等により、その外観等が劣化した上塗り塗膜(旧上塗り塗膜)と、その上に塗り重ねられた上塗り塗膜とを含んでいてもよい。
【0095】
本積層塗膜付き基材は、非鉄金属基材、本塗膜および上塗り塗膜以外の、例えば、本塗膜と上塗り塗膜との間に設けられるバインダー塗膜等の層(膜)を有していてもよいが、本塗膜によれば、前記バインダー塗膜を形成することなく、付着性に優れる積層塗膜付き基材を形成できるため、塗装工程等を削減することができ、工期を短縮でき、低コストで所望の積層塗膜付き基材を形成することができる等の点から、本塗膜と上塗り塗膜とは接していることが好ましく、非鉄金属基材、本塗膜および上塗り塗膜(のみ)からなることが好ましい。
【0096】
前記本積層塗膜付き基材は通常、本塗膜付き基材の本塗膜上に上塗り塗料組成物を塗装し、乾燥させて、上塗り塗膜を形成することで、製造することができる。
【0097】
前記上塗り塗料組成物の塗装、乾燥方法としては特に制限されず、従来公知の方法を制限なく使用可能である。具体例としては、前記工程(I)における塗布と同様の方法、前記工程(II)における乾燥と同様の方法が挙げられる。
なお、前記上塗り塗料組成物と本塗膜との良好な付着性を確保するために、上塗り塗料組成物を本塗膜上に塗装する前に、本塗膜上の、油脂、水分、塵埃などの表面付着物を清掃、除去してもよい。
【0098】
上塗り塗膜の膜厚は特に制限されず、使用用途または目的に応じて適宜選択すればよいが好ましくは20~300μmである。
該膜厚の上塗り塗膜は、1回の塗装で形成してもよいし、2回以上の塗装(塗装および乾燥を2回以上繰り返す方法)で形成してもよい。
【0099】
前記上塗り塗料組成物としては特に制限されないが、例えば、油性(アルキッド)樹脂系、フタル酸樹脂系、塩素化ポリオレフィン樹脂系(塩化ゴム系)、ビニル樹脂系、アクリル樹脂系、エポキシ樹脂系、ウレタン樹脂系、シリコーン樹脂系(シリコーンアルキッド樹脂系、アクリルシリコーン樹脂系等も含む。)、フッ素樹脂系等の上塗り塗料組成物の他に、各種防汚塗料組成物(例:塩化ゴム樹脂系、ビニル樹脂系、水和分解型、非有機錫系加水分解型[金属アクリル樹脂系、ポリエステル樹脂系等]、シリコーン樹脂系等の組成物)が挙げられる。
前記金属アクリル樹脂系組成物としては、例えば、亜鉛アクリル樹脂系、銅アクリル樹脂系、シリル樹脂系組成物などが挙げられ、具体的には、特開平11-323207号公報、国際公開第2011/118526号、国際公開第2014/189069号、国際公開第2016/084769、国際公開第2017/146193号、国際公開第2018/221266号等に記載の組成物が挙げられる。
【0100】
前記上塗り塗料組成物および上塗り塗膜としては、本塗膜との付着性に優れる上塗り塗膜を容易に得ることができる等の点から、亜酸化銅を実質的に含有しない塗料組成物および塗膜が好ましい。
亜酸化銅は、上塗り塗料組成物および上塗り塗膜に使用されることが多く、特に、防汚塗料組成物や防汚塗膜には、防汚剤として使用されることが多いが、本積層塗膜付き基材には、本発明の効果がより発揮される等の点から、亜酸化銅を実質的に含有しない上塗り塗料組成物および上塗り塗膜を用いることが好ましい。
なお、亜酸化銅を実質的に含有しないとは、亜酸化銅を意図して上塗り塗料組成物や上塗り塗膜に意図して配合しないことをいい、具体的には、上塗り塗料組成物の不揮発分100質量%に対し、また、上塗り塗膜100質量%に対し、亜酸化銅の含有量が、好ましくは0.5質量%以下であることをいう。
前記上塗り塗料組成物および上塗り塗膜は、亜酸化銅を含有しないことがより好ましい。
【0101】
従来のプライマー塗膜を用いた場合、その上に塗装される上塗り塗料組成物および上塗り塗膜に、ロジン系化合物が含まれていると、プライマー塗膜と上塗り塗膜との十分な層間付着性を確保することが困難であった。
一方で、本塗膜によれば、このようなロジン系化合物を含有する上塗り塗料組成物や上塗り塗膜を用いても、プライマー塗膜と上塗り塗膜との十分な層間付着性を確保することができる。このため、前記上塗り塗料組成物および上塗り塗膜としては、ロジン系化合物を含有していても、含有していなくてもよい。
【0102】
前記上塗り塗料組成物および上塗り塗膜は、防汚塗料組成物および防汚塗膜であることが、本発明の効果がより発揮される等の点から好ましい。
前記防汚塗料組成物としては、例えば、加水分解型防汚塗料組成物が挙げられ、該加水分解型防汚塗料組成物は、塗膜形成用樹脂として加水分解型樹脂を含む組成物であることが好ましい。
【0103】
前記加水分解型樹脂としては、例えば、
アクリル樹脂またはポリエステル樹脂であって、下記式(I)で表される単量体から誘導される側鎖末端基および/または下記式(II)で表される単量体から誘導される構成単位と、これらの単量体と共重合し得る他の不飽和単量体から誘導される構成単位とを含む金属塩含有共重合体、
下記式(III)で表される単量体から誘導される構成単位と、該単量体と共重合し得る他の不飽和単量体から誘導される構成単位とを含むシリルエステル含有共重合体が挙げられる。
これらの加水分解型樹脂を含む防汚塗料組成物は、長期防汚性、長期塗膜物性が安定しているため好ましい。
【0104】
CH2=C(R2)COO-M-O-COR1・・・(I)
[式(I)において、Mは亜鉛または銅を示し、R1は有機基を示し、R2は水素原子またはメチル基を示す。]
【0105】
CH2=C(R2)-COO-M-O-CO-C(R2)=CH2・・・(II)
[式(II)において、Mは亜鉛または銅を示し、R2は水素原子またはメチル基を示す。]
【0106】
3-CH=C(R4)-COO-SiR567・・・(III)
[式(III)において、R4は水素原子またはメチル基を示し、R5、R6およびR7はそれぞれ独立に、ヘテロ原子を有してもよい炭素数1~20の1価の有機基を示し、R3は水素原子またはR8-O-CO(但し、R8はヘテロ原子を有してもよい炭素数1~20の1価の有機基またはSiR91011で示されるシリル基を示し、R9、R10およびR11はそれぞれ独立に、ヘテロ原子を有してもよい炭素数1~20の1価の有機基を示す。)を示す。]
【0107】
前記式(I)、(II)および(III)で表される単量体と共重合し得る他の不飽和単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル類、モノカルボン酸類、ジカルボン酸類またはこれらのハーフエステル(モノエステル)やジエステル、ビニルエステル類、スチレン類が挙げられる。
該不飽和単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチルエステル、(メタ)アクリル酸エチルエステル、(メタ)アクリル酸ブチルエステル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシルエステル、(メタ)アクリル酸ラウリルエステル、(メタ)アクリル酸トリデシルエステル、(メタ)アクリル酸ステアリルエステル、(メタ)アクリル酸アリルエステル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルエステル、(メタ)アクリル酸ベンジルエステル、(メタ)アクリル酸イソボルニルエステル、(メタ)アクリル酸メトキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸エトキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸グリシジルエステル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチルエステルなどの(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリル酸などのモノカルボン酸類;イタコン酸、マレイン酸等のジカルボン酸類またはこれらのハーフエステル(モノエステル)やジエステル;スチレン、α-メチルスチレンなどのスチレン類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類;が挙げられ、これらは1種をまたは2種類以上を用いてもよい。
【実施例0108】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【0109】
[調製例1]DETAポリアミド溶液の調製
反応器内に、ダイマー酸330.12質量部と、トール油脂肪酸27.00質量部とを仕込み、窒素気流下で得られた混合液を60℃まで昇温して、そこにジエチレントリアミン(DETA)68.40質量部を投入した。次いで、150℃まで昇温して30分間保持した後、ディーン・スターク装置を取り付け反応により生じた水を反応器外に除去しながら4時間かけて220℃まで昇温した。220℃で2時間保温した後冷却し、キシレン188.27質量部と、n-ブタノール80.68質量部とを加えて、DETAポリアミドの濃度が60.0質量%であるDETAポリアミド溶液を調製した。
【0110】
[実施例1~15および比較例1~5]
容器に、表1および2に記載の第1剤を構成する各成分を、表1および2に記載の量(数値)に従って入れ、ハイスピードディスパーを用いて攪拌した後、適量のガラスビーズを入れ、ペイントシェーカーで2時間分散させた。次いで、ガラスビーズを取り除くことで、第1剤を調製した。
また、容器に、表1および2に記載の第2剤を構成する各成分を、表1および2に記載の量(数値)に従って加え、ハイスピードディスパーを用いて十分に分散させることで第2剤を調製した。
塗装する際に、調製した第1剤および第2剤を混合し、プライマー組成物を調製した。
表1および2中の各成分の数値は、それぞれ質量部を示す。なお、表1および2に記載の各成分の説明を表3に示す。
【0111】
<非鉄金属基材との付着性>
寸法が150mm×70mm×3.0mm(厚)のアルミ板を用意した。
このアルミ板に、エアスプレーを用いて、調製したプライマー組成物を、乾燥膜厚が125μmとなるよう塗装し、7日間常温で乾燥させることでプライマー塗膜を形成し、試験板を作製した。
作製した試験板を、40℃の塩水(塩分濃度:3質量%)に90日間浸漬した後、該塩水から取り出した。塩水から取り出した試験板のプライマー塗膜に、クロスカット(1マスの大きさ:2mm×2mm、合計マス数:25マス)を、アルミ板に届く深さで入れ、JIS K 5600-5-6:1999の「付着性(クロスカット法)」に準拠して、形成したプライマー塗膜とアルミ板との付着性を確認し、下記評価基準に従って、非鉄金属基材に対する付着性を評価した。結果を表1および2に示す。
なお、実用に供する場合、下記評価基準が4または5であることが求められる。
【0112】
(評価基準)
5:アルミ板からのプライマー塗膜の剥離箇所の面積の合計が、25マスの面積100%に対し、1%以下であった。
4:アルミ板からのプライマー塗膜の剥離箇所の面積の合計が、25マスの面積100%に対し、1%より多く5%以下であった。
3:アルミ板からのプライマー塗膜の剥離箇所の面積の合計が、25マスの面積100%に対し、5%より多く30%以下であった。
2:アルミ板からのプライマー塗膜の剥離箇所の面積の合計が、25マスの面積100%に対し、30%より多く70%以下であった。
1:アルミ板からのプライマー塗膜の剥離箇所の面積の合計が、25マスの面積100%に対し、70%より多かった。
【0113】
<防食性>
寸法が150mm×70mm×3.0mm(厚)のアルミ板を用意した。
このアルミ板に、エアスプレーを用いて、調製したプライマー組成物を、乾燥膜厚が125μmとなるよう塗装し、7日間常温で乾燥させることでプライマー塗膜を形成した。形成したプライマー塗膜の、長辺の両端から1cm以外の部分であり、かつ、短辺の一方から2cmの位置(図1に示す位置)に、長さが5cmになるように、アルミ板の表面に届く深さの切込み(図1の11)を入れることで試験板を作製した。
作製した試験板を、40℃の塩水(塩分濃度:3質量%)に90日間浸漬した後、該塩水から取り出した。塩水から取り出した試験板の切込みからのクリープ幅(プライマー塗膜とアルミ板とが剥離している部分のうち、切込みから最も遠い箇所と切込みとの間の長さ)を計測し、下記評価基準に従って防食性を評価した。結果を表1および2に示す。
なお、実用に供する場合、下記評価基準が3、4または5であることが求められる。
【0114】
(評価基準)
5:切込みからのクリープ幅が、2mm以下であった。
4:切込みからのクリープ幅が、2mmより長く5mm以下であった。
3:切込みからのクリープ幅が、5mmより長く10mm以下であった。
2:切込みからのクリープ幅が、10mmより長く20mm以下であった。
1:切込みからのクリープ幅が、20mmより長かった。
【0115】
<上塗り塗膜aとの付着性>
寸法が150mm×70mm×3.0mm(厚)のアルミ板を用意した。
このアルミ板に、エアスプレーを用いて、調製したプライマー組成物を、乾燥膜厚が125μmとなるよう塗装し、塗装後すぐに、広島県大竹市にある中国塗料(株)の敷地内に設置した屋外暴露台(JIS K 5600-7-6:2002に準拠)に塗装面が暴露されるように設置した。屋外曝露を開始してから2日間経過した後のプライマー塗膜付きアルミ板を回収し、乾いた筆の先でプライマー塗膜表面の異物を取り除いた。
その後、フィルムアプリケーターを用いて、乾燥膜厚が150μmとなるように、前記プライマー塗膜上に下記上塗り塗料aを塗装した。次いで、常温で7日間乾燥させることで上塗り塗膜aを形成した後、上塗り塗膜a付き基材(積層塗膜付き基材)を、40℃の天然海水に3カ月間浸漬し、該天然海水から取り出した。天然海水から取り出した積層塗膜付き基材の上塗り塗膜aに、クロスカット(1マスの大きさ:4mm×4mm、合計マス数:25マス)を、アルミ板に届かない程度の深さ(但し、プライマー塗膜の途中までは届く深さ)で入れ、JIS K 5600-5-6:1999の「付着性(クロスカット法)」に準拠して、上塗り塗膜aとプライマー塗膜との付着性を確認し、下記評価基準に従って、上塗り塗膜aとの付着性を評価した。結果を表1および2に示す。
なお、実用に供する場合、下記評価基準が3、4または5であることが求められる。
【0116】
(評価基準)
5:プライマー塗膜からの上塗り塗膜aの剥離箇所の面積の合計が、25マスの面積100%に対し、1%以下であった。
4:プライマー塗膜からの上塗り塗膜aの剥離箇所の面積の合計が、25マスの面積100%に対し、1%より多く5%以下であった。
3:プライマー塗膜からの上塗り塗膜aの剥離箇所の面積の合計が、25マスの面積100%に対し、5%より多く30%以下であった。
2:プライマー塗膜からの上塗り塗膜aの剥離箇所の面積の合計が、25マスの面積100%に対し、30%より多く70%以下であった。
1:プライマー塗膜からの上塗り塗膜aの剥離箇所の面積の合計が、25マスの面積100%に対し、70%より多かった。
【0117】
<上塗り塗膜bとの付着性>
上塗り塗料aの代わりに、下記上塗り塗料bを用いて、上塗り塗膜bを形成した以外は、前記上塗り塗膜aとの付着性と同様にして、上塗り塗膜bとプライマー塗膜との付着性を確認し、上塗り塗膜bとの付着性を評価した。結果を表1および2に示す。
【0118】
<上塗り塗膜cとの付着性>
上塗り塗料aの代わりに、下記上塗り塗料cを用いて、上塗り塗膜cを形成した以外は、前記上塗り塗膜aとの付着性と同様にして、上塗り塗膜cとプライマー塗膜との付着性を確認し、上塗り塗膜cとの付着性を評価した。結果を表1および2に示す。
【0119】
<上塗り塗膜dとの付着性>
上塗り塗料aの代わりに、下記上塗り塗料dを用いて、上塗り塗膜dを形成した以外は、前記上塗り塗膜aとの付着性と同様にして、上塗り塗膜dとプライマー塗膜との付着性を確認し、上塗り塗膜dとの付着性を評価した。結果を表1および2に示す。
【0120】
[調製例2]亜鉛アクリル樹脂溶液a-1の調製
冷却器、温度計、滴下ロートおよび攪拌機を備えた四つ口フラスコに、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)85.4質量部および酸化亜鉛40.7質量部を仕込み、撹拌しながら75℃に昇温した。続いて、メタクリル酸(MAA)43.1質量部、アクリル酸(AA)36.1質量部、および水5質量部からなる混合物を滴下ロートから3時間かけて等速滴下した。滴下終了後、反応溶液は乳白色状態から透明となった。さらに2時間撹拌した後、プロピレングリコールモノメチルエーテル36質量部を添加して、金属含有単量体を含む反応液を得た。
その後、新たに、冷却器、温度計、滴下ロートおよび攪拌機を備えた四つ口フラスコに、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)15質量部およびキシレン57質量部を仕込み、撹拌しながら100℃に昇温した。続いて、前記金属含有単量体を含む反応液52質量部、メチルメタクリレート(MMA)1質量部、エチルアクリレート(EA)66.2質量部、2-メトキシエチルアクリレート(2-MEA)5.4質量部、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)((株)日本ファインケム製)2.5質量部、アゾビスメチルブチロニトリル(AMBN)((株)日本ファインケム製)7質量部、連鎖移動剤「ノフマーMSD」(日油(株)製)1質量部、およびキシレン10質量部からなる透明な混合物を滴下ロートから6時間かけて等速滴下した。滴下終了後にt-ブチルパーオクトエート0.5質量部とキシレン7質量部とを30分かけて滴下し、さらに1時間30分撹拌した後、キシレンを4.4質量部添加して、不溶物がなく、淡黄色透明な、亜鉛アクリル樹脂a-1を含む反応液(亜鉛アクリル樹脂溶液a-1)を得た。
【0121】
[調製例3]亜鉛アクリル樹脂溶液b-1の調製
冷却器、温度計、滴下ロートおよび攪拌機を備えた四つ口フラスコに、プロピレングリコールモノメチルエーテル59.9質量部および酸化亜鉛40.7質量部を仕込み、攪拌しながら75℃に昇温した。続いて、メタクリル酸43質量部、アクリル酸36質量部および水5質量部からなる混合物を滴下ロートから3時間かけて等速滴下した。滴下終了後、さらに2時間攪拌し、次いで、プロピレングリコールモノメチルエーテルを29.4質量部添加して、透明な金属原子含有重合性単量体混合物を得た。
その後、新たに、冷却器、温度計、滴下タンクおよび攪拌機を備えた加圧重合可能なオートクレーブに、プロピレングリコールモノメチルエーテル10質量部、キシレン35質量部およびエチルアクリレート4質量部を仕込み、攪拌しながら350kPaに加圧し、135℃に昇温した。続いて、滴下タンクから、メチルメタクリレート15質量部、エチルアクリレート48質量部、n-ブチルアクリレート15質量部、前記金属原子含有重合性単量体混合物40質量部、キシレン10質量部、連鎖移動剤「ノフマーMSD」(日油(株)製)1.8質量部、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)4質量部および2,2'-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)(AMBN)2質量部からなる透明な混合物を2.5時間かけて等速滴下した。滴下終了後、30分かけて110℃に降温し、t-ブチルパーオクトエート0.5質量部とキシレン5質量部とを30分かけて滴下し、さらに1時間30分攪拌した後、キシレンを3質量部添加した。得られた混合物を300メッシュでろ過することで、亜鉛アクリル樹脂b-1を含む反応液(亜鉛アクリル樹脂溶液b-1)を得た。
【0122】
[調製例4]亜鉛アクリル樹脂溶液c-1の調製
メタクリル酸亜鉛(Zn(MAA)2、浅田化学工業(株)製)10重量部、エチルアクリレート(EA)30重量部(これらの共重合性モノマー合計40重量部)を溶剤(酢酸ブチル40重量部、n-ブタノール20重量部)に溶解(合計100重量部)し、重合開始剤t-ブチルパーオクトエートの存在下、100℃で7時間共重合反応させることで、亜鉛アクリル樹脂溶液c-1を得た。
【0123】
[調製例5]シリル樹脂溶液d-1の調製
攪拌機、コンデンサー、温度計、滴下装置、窒素導入管および加熱冷却ジャケットを備えた反応容器にキシレン67質量部を仕込み、窒素気流下、85℃の温度条件下で加熱攪拌を行った。同温度を保持しつつ滴下装置より、前記反応容器内に、トリイソプロピルシリルメタアクリレート70質量部、メチルメタクリレート30質量部、および2,2'-アゾビスイソブチロニトリル0.3質量部からなる混合物を2時間かけて滴下した。その後、同温度で4時間攪拌を行った後、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル0.4質量部を加え、更に同温度で4時間攪拌を行い、無色透明のシリル樹脂溶液d-1を得た。
【0124】
[製造例1]上塗り塗料a~dの製造
前記調製例2~5により得られた亜鉛アクリル樹脂溶液またはシリル樹脂溶液と、下記表4に示す各成分とを、該表4に示す量で(表中の数値は質量部を示す。)で、ペイントシェーカーを用いて均一に混合することにより、上塗り塗料a~dを製造した。なお、表4に記載の各成分の説明を表5に示す。
【0125】
【表1】
【0126】
【表2】
【0127】
【表3】
【0128】
【表4】
【0129】
【表5】
【符号の説明】
【0130】
10:試験板
11:切込み
図1