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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024017096
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】発電機
(51)【国際特許分類】
   F03B 13/14 20060101AFI20240201BHJP
【FI】
F03B13/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022119511
(22)【出願日】2022-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】505454111
【氏名又は名称】学校法人育英学院
(74)【代理人】
【識別番号】100147050
【弁理士】
【氏名又は名称】中原 亨
(72)【発明者】
【氏名】山下 健一郎
【テーマコード(参考)】
3H074
【Fターム(参考)】
3H074AA02
3H074AA12
3H074BB11
3H074BB30
3H074CC03
3H074CC16
(57)【要約】
【課題】
波浪への耐性が高く、かつ高効率な洋上発電手段を提供する。また、制御しやすい波力発電の実現手段を提供する。
【解決手段】
波力発電用の発電機100のマグナスタービンを動作させるためにマグナスブレード103を用いる。マグナスブレード103の上側に発電ユニット101、下側に発電ユニット102を配する。波面が上下することで発電機100が上下する際に、マグナスブレード103をマグナスブレード周方向に回動させることで、マグナスタービンを回動させることができる。この際マグナスタービンの回動方向を統一することでエネルギーの損失を防ぐことができる。
【選択図】 図3


【特許請求の範囲】
【請求項1】
1以上のマグナスブレードを含むマグナスタービンを備える発電機であって、
該発電機が波動により上下動することで生じる流速及び前記マグナスブレードがマグナスブレード周方向への回動により前記マグナスブレードにマグナス効果による揚力が生じることを特徴とする発電機。
【請求項2】
請求項1記載の発電機において、
前記揚力によって前記マグナスタービンがマグナスタービン周方向へ回動することを特徴とする発電機。
【請求項3】
請求項2記載の発電機において、
前記マグナスタービンが単一のマグナスタービン周方向へ回動することを特徴とする発電機。
【請求項4】
請求項3記載の発電機において、
上方向に該発電機が移動する際の前記マグナスブレード周方向への回動方向と、下方向に該発電機が移動する際の前記マグナスブレード周方向への回動方向と、が異なることを特徴とする発電機。
【請求項5】
1以上のマグナスブレードと、
負荷の調整が可能な第1の発電ユニットと、
負荷の調整が可能な第2の発電ユニットと、を含むマグナスタービンを備える発電機であって、
前記マグナスブレードが前記第1の発電ユニット及び前記第2の発電ユニットとベベルギアで接続されていることを特徴とする発電機。
【請求項6】
請求項5記載の発電機において、
該発電機が波動により上下動することで生じる流速及び前記マグナスブレードがマグナスブレード周方向への回動により前記マグナスブレードにマグナス効果による揚力がマグナスタービン周方向に生じることを特徴とする発電機。
【請求項7】
請求項6記載の発電機において、
上方向に該発電機が移動する際の前記第1の発電ユニットの負荷と前記第2の発電ユニットの負荷が異なることを特徴とする発電機。
【請求項8】
請求項6記載の発電機において、
下方向に該発電機が移動する際の前記第1の発電ユニットの負荷と前記第2の発電ユニットの負荷が異なることを特徴とする発電機。
【請求項9】
請求項6記載の発電機において、
上方向に該発電機が移動する際の前記第1の発電ユニットの回転速度と前記第2の発電ユニットの回転速度が異なることを特徴とする発電機。
【請求項10】
請求項6記載の発電機において、
下方向に該発電機が移動する際の前記第1の発電ユニットの回転速度と前記第2の発電ユニットの回転速度が異なることを特徴とする発電機。
【請求項11】
1以上のマグナスブレードと、
負荷の調整が可能な第1の発電ユニットと、
負荷の調整が可能な第2の発電ユニットと、を含むマグナスタービンを備える発電機であって、
初期加速時に前記第1の発電ユニットまたは前記第2の発電ユニットのいずれか一が前記マグナスタービンをマグナスタービン周方向に加速することを特徴とする発電機。
【請求項12】
1以上のマグナスブレードと、
負荷の調整が可能な第1の発電ユニットと、
負荷の調整が可能な第2の発電ユニットと、を含むマグナスタービンを備える発電機であって、
初期加速時に前記第1の発電ユニット及び前記第2の発電ユニットが前記マグナスタービンをマグナスタービン周方向に加速することを特徴とする発電機。
【請求項13】
1以上のマグナスブレードと、
負荷の調整が可能な第1の発電ユニットと、
負荷の調整が可能な第2の発電ユニットと、
CPUと、を含むマグナスタービンを備える発電機であって、
前記CPUが前記第1の発電ユニット及び前記第2の発電ユニットの負荷を調整することを特徴とする発電機。
【請求項14】
請求項13記載の発電機において、
さらにセンサを含み、
前記センサがCPUに発報すると前記CPUが前記第1の発電ユニット及び前記第2の発電ユニットの負荷を調整することを特徴とする発電機。
【請求項15】
請求項14記載の発電機において、
該発電機が最頂点に到達したことを前記センサが検知すると前記CPUが前記第1の発電ユニットの回転速度と前記第2の発電ユニットの回転速度が同じようになるように前記第1の発電ユニットの負荷と前記第2の発電ユニットの負荷を設定することを特徴とする発電機。
【請求項16】
請求項14記載の発電機において、
該発電機が最下点に到達したことを前記センサが検知すると前記CPUが前記第1の発電ユニットの回転速度と前記第2の発電ユニットの回転速度が同じようになるように前記第1の発電ユニットの負荷と前記第2の発電ユニットの負荷を設定することを特徴とする発電機。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は波力発電、特にマグナスブレードを用いたもの、に関する。
【背景技術】
【0002】
近年電力の地産地消が叫ばれることが多く、資源エネルギー庁のホームページにも「激甚災害を契機にエネルギー供給の制約や集中型エネルギーシステムの脆弱性が顕在化され、こうした状況に対して、地域の特徴も踏まえた多様な供給力(再生可能エネルギー、コージェネレーション等)を組み合わせて最適に活用することで、エネルギー供給のリスク分散やCO2の排出削減を図ろうとする機運が高ま」っている旨記載されている。
【0003】
このホームページでは、電力の地産地消の一手法として「分散型エネルギー社会の実現」が提案されている。この「分散型エネルギー社会」とは、「比較的小規模で、かつ様々な地域に分散しているエネルギーの総称であり、従来の大規模・集中型エネルギーに対する相対的な概念」と定義されている。
【0004】
我が国は島国であり、四周を海に囲まれている。従って、洋上における発電手法を確立することは、上記分散型エネルギー社会の実現に資することは言うまでもない。
【0005】
洋上発電の手法としては、太陽光、風力、波力が考えられる。この中でエネルギー密度では波力が最大であり、これを用いるのが良いことは言うまでもない。
【0006】
波力発電の方式としては種々あるが、浮体の波による上下運動を利用するタイプとしてはポイントアブソーバ型が挙げられる。これは、波に対する指向性がないため波の向きを考える必要がない点で設置上有利と言える。また、ポイントアブソーバ型は発電効率が高いとされる。
【0007】
特開2021―161990号公報(特許文献1)では、該波力発電装置の設置された海域の海象に関する情報を取得し、その情報に応じて波力発電装置の発電態様を制御する発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2021―161990号特許公開公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】知ってる?電力の地産地消 資源エネルギー庁 URL:https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/solar-2019after/regional.html
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、ポイントアブゾーバ型波力発電は波への抵抗力が弱いとされることが多い。これは海底に設置したアンカー(錨)から海上に向けてドライブコラムを屹立させ、このドライブコラムをガイドレールとしてフロートを上下させることで発電機を動作させるため、フロートに加わる波浪の力がドライブコラムに直接影響を与えること、及びそれによりドライブコラム自体が湾曲破損する可能性があること、による。
【0011】
さらにポイントアブゾーバ型波力発電では、ドライブコラムの回転方向が波の上下のよって反転する。しかし、このように回転方向が反転する発電機の場合、制御が高難度化しやすい。
【0012】
本発明の目的は、波浪への耐性が高く、かつ高効率な波力発電手段を提供することにある。
【0013】
また本発明の別の目的は、制御しやすい波力発電の実現手段を提供することにある。
【0014】
さらに、マグナス効果による揚力発生を活用することで小電力を投入することで大電力を得られる手段を提供することにある。
【0015】
本発明の前記並びにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述及び添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明にかかわる代表的な発電機は1以上のマグナスブレードを含むマグナスタービンを備え、発電機が波動により上下動することで生じる流速及びマグナスブレードがマグナスブレード周方向への回動によりマグナスブレードにマグナス効果による揚力が生じることを特徴とする。
【0017】
この発電機は、揚力によってマグナスタービンがマグナスタービン周方向へ回動することを特徴としても良い。
【0018】
この発電機は、マグナスタービンが単一のマグナスタービン周方向へ回動することを特徴としても良い。
【0019】
この発電機は、上方向に該発電機が移動する際のマグナスブレード周方向への回動方向と、下方向に該発電機が移動する際のマグナスブレード周方向への回動方向と、が異なることを特徴としても良い。
【0020】
本発明にかかわる別の代表的な発電機は1以上のマグナスブレードと、負荷の調整が可能な第1の発電ユニットと、負荷の調整が可能な第2の発電ユニットと、を含むマグナスタービンを備え、マグナスブレードが第1の発電ユニット及び第2の発電ユニットとベベルギアで接続されていることを特徴とする。
【0021】
この発電機は、該発電機が波動により上下動することで生じる流速及びマグナスブレードがマグナスブレード周方向への回動によりマグナスブレードに対してマグナス効果による揚力がマグナスタービン周方向に生じることを特徴としても良い。
【0022】
この発電機は、上方向に該発電機が移動する際の第1の発電ユニットの負荷と第2の発電ユニットの負荷が異なることを特徴としても良い。
【0023】
この発電機は、下方向に該発電機が移動する際の第1の発電ユニットの負荷と第2の発電ユニットの負荷が異なることを特徴としても良い。
【0024】
この発電機は、上方向に該発電機が移動する際の第1の発電ユニットの回転速度と第2の発電ユニットの回転速度が異なることを特徴とする発電機。
【0025】
この発電機は、下方向に該発電機が移動する際の第1の発電ユニットの回転速度と第2の発電ユニットの回転速度が異なることを特徴としても良い。
【0026】
本発明にかかわる別の代表的な発電機は、1以上のマグナスブレードと、負荷の調整が可能な第1の発電ユニットと、負荷の調整が可能な第2の発電ユニットと、を含むマグナスタービンを備え、初期加速時に第1の発電ユニットまたは第2の発電ユニットのいずれか一がマグナスタービンをマグナスタービン周方向に加速することを特徴とする。
【0027】
本発明にかかわる別の代表的な発電機は、1以上のマグナスブレードと、負荷の調整が可能な第1の発電ユニットと、負荷の調整が可能な第2の発電ユニットと、を含むマグナスタービンを備え、初期加速時に第1の発電ユニット及び第2の発電ユニットがマグナスタービンをマグナスタービン周方向に加速することを特徴とする。
【0028】
本発明にかかわる別の代表的な発電機は、1以上のマグナスブレードと、負荷の調整が可能な第1の発電ユニットと、負荷の調整が可能な第2の発電ユニットと、CPUと、を含むマグナスタービンを備える発電機であって、このCPUが第1の発電ユニット及び第2の発電ユニットの負荷を調整することを特徴とする。
【0029】
この発電機はさらにセンサを含み、このセンサがCPUに発報するとCPUが第1の発電ユニット及び第2の発電ユニットの負荷を調整することを特徴としても良い。
【0030】
この発電機は、該発電機が最頂点に到達したことをセンサが検知するとCPUが第1の発電ユニットの回転速度と第2の発電ユニットの回転速度が同じようになるように第1の発電ユニットの負荷と第2の発電ユニットの負荷を設定することを特徴としても良い。
【0031】
この発電機は、該発電機が最下点に到達したことをセンサが検知するとCPUが第1の発電ユニットの回転速度と第2の発電ユニットの回転速度が同じようになるように第1の発電ユニットの負荷と第2の発電ユニットの負荷を設定することを特徴としても良い。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、慣性力が大きいタービンの回転を一方向に保つことができる高効率な発電システムを提供することができる。
【0033】
さらに本発明によれば、マグナス効果を発生させることで大揚力を発生させ投入した電力よりより大きな電力を回収できる手段を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】第1の実施の形態にかかわるマグナス波力発電システムの構成を表す模式図である。
図2】第1の実施の形態にかかわる発電機の構成を表す断面図である。
図3】第1の実施の形態にかかわる発電機の構成を表す斜視図である。
図4】マグナスブレードの斜視図である。
図5】発電ユニット101、102周辺の斜視図である。
図6】マグナスタービンにおけるベベルギアの組み合わせ及び動作方向を表す斜視図である。
図7】波の上下動に伴って上向きに発電機が移動する際にマグナス効果がどのように働くかを表す図である。
図8】波の上下動に伴って下向きに発電機が移動する際にマグナス効果がどのように働くかを表す図である。
図9】本発明の第1の実施の形態に関する電気的構成を表す概念図である。
図10】本発明の第1の実施の形態に関するタイミングチャートである。
図11】本発明の第1の実施の形態にかかわる処理に関する状態遷移図である。
図12】「初期加速」開始時におけるマグナスタービンの動作を表す斜視図である。
図13】「下降」処理開始時におけるマグナスタービンの動作を表す斜視図である。
図14】「上昇」処理開始時におけるマグナスタービンの動作を表す斜視図である。
図15】本発明の第2の実施の形態における水流が上から下に流れる際のマグナスブレード周辺の流体の様子を示す概念図である。
図16】本発明の第2の実施の形態における水流が下から上に流れる際のマグナスブレード周辺の流体の様子を示す概念図である。
図17】本発明の第2の実施の形態にかかわる発電機100の構成を表す斜視図である。
図18】本発明の別の「初期加速」開始時におけるマグナスタービンの動作を表す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
(第1の実施の形態)
以下図を用いて本発明の第1の実施の形態について説明する。なお、以下の説明では同一物体の「上方」とは波面に近い方、「下方」とは海底に近い方をいう。ただし浮体400については上方が空側、下方が海底側をいう。
【0036】
図1は、第1の実施の形態にかかわるマグナス波力発電システムの構成を表す模式図である。また図2は、第1の実施の形態にかかわる発電機100の構成を表す断面図、図3はその斜視図である。また図4はマグナスブレード103a、103bの斜視図である。図5は、発電ユニット101、102周辺の斜視図である。図6は、マグナスタービンにおけるベベルギアの組み合わせ及び動作方向を表す斜視図である。
【0037】
本システムは、発電機100、ウェイト200、アンカー300,浮体400を含んで構成される。これらは1ないし2以上の牽引ワイヤー(牽引チェーン)及び電気ケーブル等で接続される。またワイヤーには限らず、棒状のもので接続することも可能である。
以下それぞれの説明をする。
【0038】
発電機100はマグナスタービン及び発電ユニット101、102、フィン500を含んで構成される発電機である。
【0039】
この発電機100は該発電機上方に図5に示す発電ユニット101、下方に発電ユニット102が配置され、側方に図4で表すマグナスブレード103a、103bが配置される。そして発電ユニット101下方へ突き出たシャフト突端にベベルギア111、発電ユニット102上方に突き出たシャフト突端にベベルギア112が配置される。
【0040】
また上記の機構系とは別にセンサ601(図9参照)及びその出力結果により発電ユニット101、102を制御するCPU602(図9参照)が存在する。
【0041】
ウェイト200は、マグナス波力発電システム全体の重量バランスを整えるためのバラストである。
【0042】
アンカー300は,発電機100が流されることを防ぐための重量物である。
【0043】
浮体400は、マグナス波力発電システムの浮力を得るための浮体である。この浮体400に送電システムを搭載することで発電した電気を外部に出力することになる。ただし、送電方法は本発明とは直接的な関連はない。
【0044】
フィン500は、マグナスタービンが動くことによって発電機100に生じる慣性モーメントを打ち消し、発電機100の上下動を円滑に行うための整流板である。
【0045】
次に、図5を用いて発電ユニット101、102周辺について説明する。図5で括弧のない図番は発電ユニット101に関連するものを、括弧書きの図番は発電ユニット102に関するものである。
【0046】
発電ユニット101、102は、ベベルギア111、112が回転することで、発電ユニットのシャフトが回転し発電する発電機であり、かつ、発電ユニットがベベルギア111,112を回転することで初期加速を行う発電ユニットである。本発明においては発電ユニットの回転速度の制御等の観点から発電ユニット101、102は同一のものを想定する。ただし、制御できるのであれば相違する仕様の発電ユニットを使用してもよい。発電ユニット101、102とベベルギア111、112の間にはギアボックス104、105が挿入される。
【0047】
ベベルギア111、112は、マグナスブレード103a、103bとかみ合う形でシャフト131、132の一方の軸端に配置されている。シャフト131、132の他方軸端はギアボックス104、105に動力を伝達するように配置されている。
【0048】
ギアボックス104、105は、変速機構を持たせることで、発電ユニット101、102の発電に最適な速度を調整するためのギアボックスである。このギアボックス104、105はなくても良い。
【0049】
本図上では、ギアボックス104、105の両端の軸を同軸に記載している。これは特にそのようにすべきであるというものでない設計事項である。回転軸から離れた位置に発電ユニット101、102のような重い重量のものを置くと慣性モーメントを生じることになるので、それを打ち消すための機構が求められることも考慮する必要はあるだろう。
【0050】
シャフト131、132は、ベベルギア111、112に伝達された駆動力をギアボックス104、105に伝達し、発電ユニット101、102の駆動力をベベルギア111、112に伝達するための構成部材である。
【0051】
次にマグナスブレード103について図4を用いて説明する。
マグナスブレード103は、粘性を有する流体中を移動または一様流中に置かれた際に表面に接する流体が粘性によって回転運動に引きずられ、回転速度および粘性に相応する循環が周りに発生し、移動方向または一様流に対して垂直の力を発生させるマグナス効果を発生させるための円柱形状である。マグナスブレード103の表面にディンプルなどを設けてもかまわない。
【0052】
シャフト133は、マグナスブレード103とベベルギア113とを接続し、発電時はマグナス効果によって生じる力をベベルギア111及び112経由でそれぞれ発電ユニット101、102に伝達し、初期加速(ステップS1002)時には発電ユニットからの駆動力をマグナスブレードに伝達するための構成部材である。
【0053】
ベベルギア113は、マグナス効果によって生じる力をベベルギア111及び112経由で発電ユニット101、102に伝達し、初期加速(ステップS1002)の発電ユニットからの駆動力をマグナスブレードに伝達するための機構部品(ベベルギア)である。マグナスブレード103のベベルギア113a、113bは発電ユニット102のベベルギア112及び発電ユニット101側のベベルギア111と嵌合することで各構成部材に動力の伝達を行う。
【0054】
次に図6を用いてベベルギアの組み合わせ方及び動作方向、用語の定義を行う。
本明細書におけるマグナスタービンとは、マグナスブレード103a、103b、ベベルギア111、112、113a、113b、ギアボックス104、105を含む機構系の総称をいう。このマグナスタービンを含む発電機100が波の上下動によって上下することで、マグナスタービンが回転し発電する。
【0055】
組立ての際、発電ユニット101に設けられたベベルギア111と発電ユニット102に設けられたベベルギア112が対向するように配置される。そして、このベベルギア111とベベルギア112を物理的に結びつけるようにマグナスブレード113a、113bが対向するように嵌合される。
【0056】
この際、マグナスブレードの軸と発電ユニット(=マグナスタービン)の軸の回転によってマグナスタービンが動作することになる。従って、図6のようにマグナスブレードの軸を中心にマグナスブレードの周方向に回動する方向を「マグナスブレード周方向」、発電ユニットの軸を中心に発電ユニットの周方向への動作を「マグナスタービン周方向」と定義する。
【0057】
次に、この発電機100の動作について説明する。
既述の通り、本発明は波による発電機100の上下動とマグナスブレードのマグナスブレード周方向への回動によって生じるマグナス効果による揚力を生かすことで発電する。従って、このマグナス効果を確認することは本発明の理解に欠かせない。よってここで説明する。
【0058】
図7は、波の上下動に伴って上向きに発電機が移動する際にマグナス効果がどのように働くかを表す図である。また、図8は、波の上下動に伴って下向きに発電機が移動する際にマグナス効果がどのように働くかを表す図である。両図とも、マグナスタービンの外側からマグナスブレード103を軸方向に向かって見た図となっている。
【0059】
まず、図7を用いて発電機100が上方に移動するときのことを説明する。
浮体400が波面の上昇に従って上昇すると、それに伴い発電機100も上方に移動する。これが図7の「発電機の移動方向」である。結果、移動方向と反対の方向、すなわち上方から下方、に発電機100に対して「相対的な水の流れ」が発生する。
【0060】
この「相対的な水の流れ」とマグナスタービン外側から見て左回りのマグナスブレード周方向の回動によりマグナスブレード103はマグナス効果による揚力を同図左側に発生させることができる。
【0061】
一方、図8のように浮体400が波面に従って下降した場合はどうか?この場合も発電機100は降下する。これが図8の「発電機の移動方向」である。結果、移動方向と反対の方向、すなわち下方から上方、に発電機100に対して「相対的な水の流れ」が発生する。
【0062】
この「相対的な水の流れ」とマグナスタービン外側から見て右回りのマグナスブレード周方向の回動によりマグナスブレード103はマグナス効果による揚力を同図左側に発生させることができる。これらの揚力によってマグナスタービンは継続的にマグナスタービン周方向に回動する。
【0063】
また合わせて発電ユニット101、102への負荷を変えることで図7及び図8のマグナスブレードの回動方向を制御することができる。
【0064】
例えば、図7のように発電機100が上昇する場合、発電ユニット101の負荷を軽く、発電ユニット102の負荷を重くすると、発電ユニット101の回転速度が発電ユニット102のそれを上回ることになり、図のようにマグナスブレード周方向左回りにマグナスブレードが回動することとなる。一方、図8のように発電機100が下降する場合、発電ユニット101に対する負荷を重く、発電ユニット102に対する負荷を軽くすると、マグナスブレード103が図のようにマグナスブレード周方向右回りに回動するようになる。
【0065】
上記のように発電機100の上下動は「相対的な水の流れ」を生成するために重要な要素となる。裏を返すと上下動の頂点を感知できなければ、図7図8のマグナス効果を発生することも叶わない。
次にマグナスブレードの回動を生み出す発電ユニット101、102への負荷を電気的に変更することについて説明する。図9は、本発明の第1の実施の形態に関する電気的構成を表す概念図である。
【0066】
本実施の形態ではセンサ601、CPU602、電力変換器603a、603b、発電ユニット101、102が含まれる。なお発電ユニット101と発電ユニット102は、説明済みであるので他の要素について説明する。
【0067】
センサ601は、発電機100が最頂点、最下点に存在するか、あるいは上方あるいは下方に動いているかを感知するセンサである。すなわち図7図8で述べたように、水流の流れる方向、すなわち自身が動く方向を感知する必要がある為、このセンサ601が存在する。このセンサ601に用いられる一例としては加速度センサなどが考えられよう。
【0068】
センサ601の検知結果は随時CPU602が読みだす。その際、CPU602に割り込み処理を発生させ、優先的にセンサ読み出し動作を処理させるようにしてもよい。
【0069】
なお別の実施の形態として、センサ601が水流の流れる方向が「0」になったのをもって、波動の最頂点及び最下点を検知するやり方でも本発明は実施できる。いずれにしてもセンサ601が検知する対象に従ってCPU602が動作することとなる。
【0070】
CPU602は、センサ601の出力結果に基づいて発電ユニット101、102及び電力変換器603a、603bを制御する制御部である。
【0071】
CPU602は、発電ユニット101、102の負荷の制御も重要である。
図7図8でも説明したように揚力の発生にはマグナスブレード103のマグナスブレード周方向への回動が必要である為、発電ユニット101、102の負荷の変更が不可欠で、そのため電力変換器603a、603bの設定変更が必要だからである。
なお、CPU602の処理の流れについては後述する図11で説明する。
【0072】
電力変換器603a、603bは、いずれもパワーコンバータ・インバータに相当するものである。電力変換器603a、603bを発電ユニット101、102の出力端子に接続することで負荷の調整(正の負荷、負の負荷双方を含む)が可能になる。
【0073】
本発明においては、波の上下に伴う発電機の最頂点及び最下点において発電ユニット101、102に付随するベベルギア111,112の相対速度をゼロにすることで、マグナスブレード103のマグナスブレード周方向への回動をスムーズに行える。従って、CPU602が電力変換器603a、603bの負荷制御を行うことが重要になる。ただし、実際の制御の内容は設計事項である。
【0074】
次に、理想環境における発電時のタイミングチャートについて説明する。
図10は、本発明の第1の実施の形態に関するタイミングチャートである。本タイミングチャートはあくまでも一つの理想を実現するためであり、他の制御も考えられる。特に各発電ユニットの負荷の設定及び発電量については設計者によって差異が生じることは留意されたい。
【0075】
また図10は波が同じ周期・振幅を持つ同じ波形で動き続けることを想定している。しかし、実際の波は周期や振幅が刻々変わり同じ動作をすることが例外ではある。よって、肝になる制御を本図で説明する。
【0076】
発電機100は波の上下に従って自身も上下動する。これを表すのが図10最上段の「発電機の高さ」である。図10の説明においては発電機100の位置が「波」ではなく自身に関する波動の最頂点にいるところ(=t10)から始めたいと思う。
【0077】
発電機100の位置が最頂点にいるときに、図7及び図8で記した「相対的な水の流れ」の流速は0となる。この図10二段目の「流速」は、この図7及び図8の「相対的な水の流れ」となる。従って、この時に発生するマグナス効果の揚力の大きさは0になる。またこの「流速」は正の値と負の値の双方を取り得ることは言うまでもない。
【0078】
この流速がゼロの時は、ベベルギア111及びベベルギア112の相対速度は0になる。この時に、CPU602が発電ユニット101、102の負荷の設定を変更することで、図10最下段の「マグナスブレード103のマグナスブレード周方向の速度」の方向を図7及び図8の右回りにするか左回りにするかを設定する。
【0079】
すなわち発電機100が下方向に移動し始めるt10では図8に示すようにマグナスブレード103をマグナスブレード周方向右回りに回動させなければ望む方向にマグナス効果による揚力が発生しない。従って、ベベルギア111の回転数を低く、ベベルギア112の回転数を高くすべく発電ユニット101の負荷は高く、発電ユニット102の負荷は低く設定する。
【0080】
この発電ユニットに対する負荷設定を行うことで、発電機100降下時にマグナス効果による揚力が想定した方向、すなわち図7及び図8の左方向に、発生することになる。この際のベベルギア111の速度はベベルギア112よりも低速になる。これを表すのが図10における「発電ユニットのベベルギアの絶対速度」である。この図においては太破線がベベルギア112の絶対速度を、細実線がベベルギア111の絶対速度を表す。
【0081】
以降、発電機100の高さが最下点(=t11)に至るまでマグナス効果による揚力が発生し続け、かつ発電ユニット101、102が発電する。この際、負荷の高い方の発電ユニット、t10~t11は発電ユニット101、の方が高出力を、負荷の低い発電ユニット102が低出力になる。この出力を表すのが図10における「発電ユニットの発電量」である。この図においても太破線が発電ユニット102の発電量を、細実線が発電ユニット101の発電量を表す。
【0082】
なお、本図においては揚力の発生量が多いときに発電量を多くすべく設定されているように設定しているため、発電量は正弦波的な記載になっているが必ずしもこうならなければならないというものではない。どちらかというと発電機100の最下点(=t11)においてベベルギア111、112間の相対速度が0になるように制御することが重要である。発電ユニットの負荷の変更量が大きくなるのはマグナス効果による揚力が減速方向に効く可能性もあり揚力の同一方向への発生の面で好ましくないためである。
【0083】
また、この負荷設定を動的に変更する場合には検出するパラメータが多い方が好ましい場合も多い。よって、センサ601は図10に表す発電機100の「流速」情報を検知する。ただし位置情報なども検知できる方がよいが、それらについては設計事項でありここでは詳細は述べない。
【0084】
話を最下点の動作に戻す。
最下点においてCPU602はベベルギア111、112間の相対速度が0であるように負荷を設定もしくは微調整している。よって、このt11時点におけるマグナスブレード103のマグナスブレード周方向への回動、及び流速は0になり、負荷の設定を行っても揚力が減速方向に働くことはない。発電機100が最下点(=t11)に到達したとき、センサ601はその旨をCPU602に通知する。このt11時点でCPU602は発電ユニット101、102の負荷設定を変更する。結果マグナスブレード周方向の回動方向を効率よく反転させる。
【0085】
すなわち、ベベルギア112の絶対速度はベベルギア111の絶対速度よりも低くすべく、発電ユニット102の負荷を高く、発電ユニット101の負荷を低くする(図10「発電ユニットのベベルギアの絶対速度」参照)。これにより、発電ユニット101の発電量は低く、発電ユニット102の発電量は高くなる(図10「発電ユニット発電量」参照)。
【0086】
そして、発電機100が最頂点に位置するとき(=t12)に、ベベルギア111、112間の相対速度が0になるように必要であればCPU602は負荷を調整する。そして各発電ユニットは最頂点t12に至るまで発電を継続する。そしてt12=t10として、CPU602は凪ぐまで発電にかかわる処理を継続する。
【0087】
このように発電機100は動作することになる。
この処理及びその前段の加速処理を含むCPU602の処理をフロー化したものが、図11である。図11は、本発明の第1の実施の形態にかかわる処理に関する状態遷移図である。
【0088】
まずシステムを起動すると「静止状態」(ステップS1001)に移行する。この状態では、センサ601の検出のためにCPU602が待機しているだけであり、電力を消費するだけである。
【0089】
次に、波が発生し、発電機100が上下動し結果自身が波の最下点に位置することをセンサ601が検出したら、「初期加速」処理(ステップS1002)に移行する。本発明では、マグナス効果による揚力でマグナスタービンを回転するが、静止状態から上下動するだけではマグナスブレード周方向にマグナスブレードを回動させることはできない。よって、始動時には必ずこの初期加速が必要である。
【0090】
図12は、「初期加速」開始時におけるマグナスタービンの動作を表す斜視図である。「初期加速」処理(ステップS1002)に移行すると、発電ユニット102の負荷を極大にしてベベルギア112の回転数をほぼゼロにする。一方発電ユニット101は通電しモータとして動作するようにする。
【0091】
この際、図7に示すようにマグナスブレード103に対してマグナスブレード周方向左回り(図7の実線矢印の方向)に回転するように発電ユニット101,102から力を加える。このようにすることで、慣性力がマグナスタービンに対してマグナスタービン周方向に発電ユニット101,102を回動する力を与え発電すると同時に、マグナスブレード103に対してマグナスブレード周方向に回動する力を与える。このマグナスブレード周方向へマグナスブレードが回動することでマグナス効果による揚力をマグナスブレードに与えることができる。
【0092】
この際、どの程度の時間加速を行うかは設計事項である。また加速終了と同時にCPU602は発電ユニット101、102の負荷の調整を行い最頂点に達するまでに最頂点でのベベルギア111、112間の相対速度の差が0になるように負荷の調整を行う。
【0093】
当然加速時間及び波の周期との兼ね合いで最頂点でのベベルギア111、112間の相対速度の差が0にならない可能性もある。この場合、最頂点で発電ユニット101もしくは102またはその両方をモータとして動作させることで相対速度の差を打ち消すようにする。このように、最頂点あるいは最下点で相対速度がほぼ0になったときに「下降」処理(ステップS1003)あるいは「上昇」処理(ステップS1004)に移行する。
【0094】
マグナスタービン周方向に十分な速度が付加された状態で発電機100の最頂点においてベベルギア111、112間の相対速度がほぼ0になったときに、発電機100は「下降」処理(ステップS1003)に移行する。この「下降」処理(ステップS1003)では発電機100の発電ユニット101、102は発電を行う。
【0095】
図13は、「下降」処理開始時におけるマグナスタービンの動作を表す斜視図である。「下降」処理(ステップS1003)における駆動力はマグナスブレード103に与えられたマグナスタービン周方向への揚力及び慣性力である。そして発電ユニット101及び102の負荷の調整を行うことで同方向にベベルギア111,112が回動していてもベベルギア113a、113bに対してマグナスブレード周方向への回動を生じさせることができる。これにより図8に表したマグナスブレード周方向右回りの回転をマグナスブレード103に与え、マグナス効果による揚力をマグナスブレード103に与える。結果、発電により減少した慣性力を補充し、継続的にマグナスタービンを回動させ続けることができる。
【0096】
また、図8示すようにマグナスブレード103に対してマグナスブレード周方向右回り(図8の実線矢印の方向)に回転するように力を加える。このようにすることで、慣性力がマグナスタービンに対してマグナスタービン周方向に発電ユニット101,102を回動する力を与え発電すると同時に、マグナスブレード103に対してマグナスブレード周方向に回動する力を与える。このマグナスブレード周方向へマグナスブレードが回動することでマグナス効果による揚力をマグナスブレードに与えることができる。
【0097】
そして発電機100が最下点に到達し「下降」処理(ステップS1003)が終了する時点でベベルギア111、112間の相対速度がほぼ0になるようにCPU602は負荷を調整し続けることはすでに説明した通りである。
【0098】
同様に、マグナスブレード周方向に十分な速度が付加された状態で発電機100の最下点においてベベルギア111、112間の相対速度がほぼ0になったときに、発電機100は「上昇」処理(ステップS1004)に移行する。この「上昇」処理(ステップS1004)においても発電機100の発電ユニット101、102は発電を行う。
【0099】
図14は「上昇」処理開始時におけるマグナスタービンの動作を表す斜視図である。「上昇」処理(ステップS1004)開始時における駆動力もマグナスブレード103に与えられたマグナスタービン周方向への揚力及び慣性力である。そして発電ユニット101及び102の負荷の調整を行うことで、同方向にベベルギア111、112が回動してもベベルギア113a、113bに対してマグナスブレード周方向への回動を生じさせることができる。
【0100】
これによりマグナスタービン周方向の慣性力が「下降」時と同じ方向に働いていても図7に表したマグナスブレード周方向左回りの回転をマグナスブレード103に与えることでマグナス効果による揚力を与える。結果、発電により減少した慣性力を補充し、継続的にマグナスタービンを回動させ続けることができることは「下降」処理(ステップS1003)と同様である。
【0101】
発電機100が最頂点に到達し「上昇」処理(ステップS1004)が終了する時点でベベルギア111、112間の相対速度がほぼ0になるようにCPU602は負荷を調整し続けることもすでに説明した。
【0102】
以降、「下降」(ステップS1003)「上昇」(ステップS1004)をマグナスタービン周方向の慣性力が消滅するまで交互に継続することになる。当然振幅が大きいほど、周期が大きいほど1度の処理(ステップS1003、S1004)におけるマグナス効果によるマグナスタービン周方向へのマグナス効果による揚力の付与量が大きくなる為長期間発電が可能になるが、波の影響を受ける要因であるため初期加速(ステップS1002)に移行してから静止状態(ステップS1001)に戻るまでの発電時間の制御は困難な事項であろう。
【0103】
ただし、CPU602が負荷を増大させる、あるいは上下の負荷を等しくすることで、ステップS1003、ステップS1004から「静止状態」(ステップS1001)に強制的に移行することは可能である。
【0104】
ステップS1003、S1004で発電を行う一方、マグナス効果によるマグナスタービン周方向へのマグナス効果による揚力の付与が小さくなるといずれはマグナスブレード103のマグナスタービン周方向への慣性力を喪失する。ステップS1003またはステップS1004で一定期間マグナスタービン周方向またはマグナスブレード周方向への回動がなくなった場合、あるいは最頂部、最下部への到達が検知されなかった場合、CPU602は「静止状態」(ステップS1001)に移行したと判断する。これにより最初期の状態に戻り、「初期加速」処理(ステップS1002)への移行を待つことになる。
【0105】
このように本実施の形態では、発電ユニットによってマグナスブレードを回転させ水圧を変化させることでマグナスタービンを回転させ発電する。また、マグナスブレードのマグナスブレード周方向への回動方向を切り替えることでマグナスタービン周方向への回動方向を一定に保ちながら発電を継続することができる。
【0106】
以上のようにマグナスタービンを用いて高い効率で波力発電を行うことが可能になる。
【0107】
(第2の実施の形態)
次に本発明の第2の実施の形態について図を用いて説明する。
【0108】
本発明の第2の実施の形態では、波の上下動によってマグナスブレード103に当たる水流を適切なものとすること、すなわちマグナスブレードの上下にガイドベーンを設置し水流を制御すること、で効率よく発電する手段を提供することを目的とする。
【0109】
図15は、本発明の第2の実施の形態における水流が上から下に流れる際のマグナスブレード周辺の流体の様子を示すマグナスブレード先端側から見た概念図である。また、図16は本発明の第2の実施の形態における水流が下から上に流れる際のマグナスブレード周辺の流体の様子を示すマグナスブレード先端側から見た概念図である。これらの図はマグナスブレード103の任意の箇所の切断面を表す。また図17は本発明の第2の実施の形態にかかわる発電機100の構成を表す斜視図である。
【0110】
本実施の形態の発電機100は基本的な構成はこれまでの実施の形態の発電機100と同じである。ただしガイドベーン701、702がついたことに特徴がある。このガイドベーンは、水流を制御しマグナスブレード103本体の後端に斜めから水流をぶつけることを目的とした静止構造物である。
【0111】
発電機100降下時(図16)、ガイドベーン702によって流れの向きが変更され、マグナスブレード103下方の斜め後方から流体(海水もしくは湖水)が流入する。このように水流を流すことでマグナスタービン周方向に移動するマグナスブレードに対してほぼ垂直に水流が当たることになり、結果マグナスブレードに発生する揚力を弱めることなくブレードに作用する抗力を抑制することが可能になる。
【0112】
一方、発電機100上昇時(図15)、ガイドベーン701によって流れの向きが変更され、マグナスブレード103上方の斜め後方から流体(海水もしくは湖水)が流入する。このように水流を流すことでマグナスタービン周方向に移動するマグナスブレードに対してほぼ垂直に水流が当たることになり、結果マグナスブレードに発生する揚力を弱めることなくブレードに作用する抗力を抑制することが可能になるのは降下時と同様である。
【0113】
従って、ガイドベーンは図17のガイドベーン701,702のようにマグナスブレード103の上下に設けられることが好ましい。ただし、上下のガイドベーンが同じものである必要はない。例えば上昇時及び下降時のギアボックス104,105の負荷の軽重を変えることでマグナスブレードのマグナスブレード周方向及びマグナスタービン軸方向の回転速度が異なる場合、その速度に適した異なる形のガイドベーンをそれぞれ適用してもかまわない。当然同じ形状のガイドベーンを上下双方に用いてもかまわない。またいずれか一方のみを設けた場合も本発明の射程に含まれることは言うまでもない。なお、図17はガイドベーン701とガイドベーン702の羽根の形状を変更している。
【0114】
これまでにも述べた通り、上昇時及び下降時でマグナスタービン周方向に同じ向きで回転することが本発明の要旨である。従って、ガイドベーンも可動する必要はない。ただしマグナスタービン周方向の速度を可変にできる場合にはそれに合わせてガイドベーンの羽根の取り付け角を可変にすることも考えられるであろう。
【0115】
以上述べたように本発明の特徴としては、1)上下動のいずれの場合においてもマグナスタービン周方向には同一の方向にマグナスタービンを回転させること(第1の実施の形態)、2)上下動のいずれの場合においても発電を行うこと(同)、3)ガイドベーンにより水流をマグナスブレードの好ましい箇所に当てること(第2の実施の形態)、が挙げられる。これらを適宜好ましい形に組み合わせることも本発明の射程に含まれることは言うまでもない。
【0116】
また、構成部材の数量の拡大なども考えられるであろう。一番容易なところではマグナスブレード103の数の増加が挙げられる。このように構成部材の単純な数の増減によって本発明の射程から逃れられないことは言うまでもない。カウンターウェイトを用いればマグナスブレードが1つでも発電機として構成することは可能である。
【0117】
また図18は、本発明の別の「初期加速」開始時におけるマグナスタービンの動作を表す斜視図である。
図12と異なり、本図では初期加速時にマグナス効果の発揮を期待せず、続く処理(「下降」「上昇」処理)の開始時において、ベベルギア111、112の相対速度を容易に0にすることを意図する。
【0118】
すなわち発電ユニット101、102を同速度で同方向に回動させることでマグナスタービン周方向へ高スピードを与えること、及び続く処理の開始時に相対速度を「0」にする手間を省くことが可能である。
【0119】
また、上記では発電ユニットの負荷の増減によって、最頂点最下点におけるベベルギア111,112の相対速度を「0」にしていた。しかし、使用電力の収支さえ合うのであれば、発電ユニットに負の負荷を与え(=発電ユニットをモータとして駆動し)ベベルギア間の相対速度を調整するようにしてもよい。
【0120】
また、上記の説明では筐体等の構造を保持するための要素については説明を省略した。しかし、実際の構成ではそれらは不可欠なものであり、本発明の実施の形態に関する動作を妨げない範囲でどのような形態をとってもよいことは言うまでもない。
【0121】
また、有意無意にかかわらず、ギアの段数の増減をすることで本発明の射程から外れることはない。
【産業上の利用可能性】
【0122】
本発明は洋上波力発電の発電機に関するものであるが、必ずしもそれに限られない。湖水等の淡水での使用であっても本発明の適用が可能なことは言うまでもない。
【0123】
また上記では波力発電にのみ焦点を当てたが、その他の波動する環境で用いられる発電機も本発明の射程に含まれることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0124】
100 発電機
101、102 発電ユニット
103、103a、103b マグナスブレード
104、105 ギアボックス
111、112、113、113a、113b ベベルギア
131、132、133 シャフト
200 ウェイト
300 アンカー
400 浮体
500 フィン
601 センサ
602 CPU
603a、603b 電力変換器
701、702 ガイドベーン

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18