(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170961
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】接合監視システムおよび測定方法
(51)【国際特許分類】
B23K 31/00 20060101AFI20241204BHJP
G01B 11/08 20060101ALI20241204BHJP
B23K 20/00 20060101ALI20241204BHJP
【FI】
B23K31/00 K
G01B11/08 H
B23K20/00 340
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087756
(22)【出願日】2023-05-29
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮内 貴章
【テーマコード(参考)】
2F065
4E167
【Fターム(参考)】
2F065AA12
2F065AA26
2F065CC15
2F065DD03
2F065FF04
4E167AA02
4E167AA06
(57)【要約】
【課題】接合部の外径寸法を正確に検出することが可能な固相接合装置を用いた接合監視システムおよび接合部の測定方法を提供する。
【解決手段】固相接合装置1は、第1ワークW10および第2ワークW20の加圧方向に対して略直角方向から第1ワークW10と第2ワークW20との接合部を撮影可能なカメラ50と、制御装置30とを備える。制御装置30は、カメラ50が撮影した画像から静止画を取得し、静止画を画像処理することによって接合部の外径端部を特定し、外径端部のうち一方の端部である第1端部P1と他方の端部である第2端部P2との間の距離から接合部の外径寸法を検出する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属からなる第1ワークおよび第2ワークを厚み方向における両側から押圧するとともに前記第1ワークおよび前記第2ワークに通電することによって前記第1ワークと前記第2ワークとを接合する固相接合装置を用いた接合監視システムであって、
前記接合監視システムは、
前記第1ワークおよび前記第2ワークの加圧方向に対して略直角方向から前記第1ワークと前記第2ワークとの接合部を撮影可能なカメラと、
制御装置とを備え、
前記制御装置は、
前記カメラが撮影した画像から静止画を取得し、前記静止画を画像処理することによって前記接合部の外径端部を特定し、
前記外径端部のうち一方の端部である第1端部と他方の端部である第2端部との間の距離から前記接合部の外径寸法を検出する、接合監視システム。
【請求項2】
前記制御装置は、前記静止画の画像処理を繰返すことによって時間に対する前記接合部の外径寸法の変化を検出する、請求項1に記載の接合監視システム。
【請求項3】
前記制御装置は、前記画像処理として前記静止画をエッジ検出することによって、前記接合部における前記第1端部および前記第2端部を特定する、請求項1または請求項2に記載の接合監視システム。
【請求項4】
前記制御装置は、時間に対する前記接合部の外径寸法の変化を可視化する処理を実行する、請求項3に記載の接合監視システム。
【請求項5】
金属からなる第1ワークおよび第2ワークを厚み方向における両側から押圧するとともに前記第1ワークおよび前記第2ワークに通電することによって前記第1ワークと前記第2ワークとを接合する固相接合装置を用いた接合部の測定方法であって、
カメラが撮影した画像から静止画を取得し、前記静止画を画像処理することによって前記接合部の外径端部を特定するステップと、
前記外径端部のうち一方の端部である第1端部と他方の端部である第2端部との間の距離から前記接合部の外径寸法を検出するステップとを実行する、測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、固相接合装置を用いた接合監視システムおよび接合部の測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特開平6-182565号公報(特許文献1)には、抵抗溶接機の溶接状態の監視方法として、監視カメラで撮影した映像を画像処理し溶接部での火花発生量を検知することによって溶接状態の異常を判定する方法が開示されている。特開平6-182565号公報(特許文献1)は、抵抗スポット溶接に関する技術であり、溶接対象の金属を電極で挟み込み加圧状態で大電流を流すことによって金属を溶融させる溶接方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特開平6-182565号公報(特許文献1)のように溶接部での火花発生量を検知する方法では、溶接の際の条件によって火花発生量が大幅に異なることが想定され、正確な溶接判定ができない可能性がある。特開平6-182565号公報(特許文献1)は、抵抗スポット溶接に関する技術であり、固相接合に関するものではなかった。ここで、本明細書においては、金属を溶融させて接合するものを「抵抗スポット溶接」と呼び、金属を溶融させずに低温域の固相状態で接合することによって、大電流による金属の溶融による強度低下等を防ぐ接合方法を「固相接合」と呼ぶ。このような、固相接合に関し、接合部の外径寸法を正確に検出することが望まれている。
【0005】
本開示の目的は、接合部の外径寸法を正確に検出することが可能な固相接合装置を用いた接合監視システムおよび接合部の測定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一局面の接合監視システムは、金属からなる第1ワークおよび第2ワークを厚み方向における両側から押圧するとともに第1ワークおよび第2ワークに通電することによって第1ワークと第2ワークとを接合する固相接合装置を用いた接合監視システムに関する。固相接合装置は、第1ワークおよび第2ワークの加圧方向に対して略直角方向から第1ワークと第2ワークとの接合部を撮影可能なカメラと、制御装置とを備える。制御装置は、カメラが撮影した画像から静止画を取得し、静止画を画像処理することによって接合部の外径端部を特定し、外径端部のうち一方の端部である第1端部と他方の端部である第2端部との間の距離から接合部の外径寸法を検出する。
【0007】
本開示の一局面の測定方法は、金属からなる第1ワークおよび第2ワークを厚み方向における両側から押圧するとともに第1ワークおよび第2ワークに通電することによって第1ワークと第2ワークとを接合する固相接合装置を用いた接合部の測定方法に関する。カメラが撮影した画像から静止画を取得し、静止画を画像処理することによって接合部の外径端部を特定するステップと、外径端部のうち一方の端部である第1端部と他方の端部である第2端部との間の距離から接合部の外径寸法を検出するステップとを実行する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、接合部の外径寸法を正確に検出することが可能な固相接合における接合監視システムおよび固相接合における測定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の一実施形態の固相接合装置において電流の通電工程を概略的に示す図である。
【
図3】モノクロ化、エッジ検出、グラフ化について説明するための第1例の図である。
【
図4】モノクロ化、エッジ検出、グラフ化について説明するための第2例の図である。
【
図5】モノクロ化、エッジ検出、グラフ化について説明するための第3例の図である。
【
図6】制御装置が実行する制御内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0011】
図1は、本開示の一実施形態の固相接合装置1において電流の通電工程を概略的に示す図である。固相接合装置1は、互いに重ね合わされた複数のワークW10,W20に通電することによって複数のワークW10,W20の界面に軟質化領域を形成しつつ、当該軟質化領域を塑性変形させることによって複数のワークW10,W20同士を溶融させずに固相状態のまま接合する装置である。
【0012】
複数のワークW10,W20は、第1ワークW10と、第2ワークW20とを含む。各ワークW10,W20は、鉄やアルミニウム等の金属からなる。各ワークW10,W20は、例えば平板状に形成されている。
【0013】
図1に示されるように、接合監視システムは、固相接合装置1とカメラ50とを備える。固相接合装置1は、一対の加圧軸11,12と、一対の電極21,22と、制御装置30と、センサ40とを備えている。
【0014】
一対の加圧軸11,12は、第1ワークW10と第2ワークW20とを板状のワークを重ねた厚み方向における両側から加圧することが可能である。一対の加圧軸11,12は、図示略の駆動源(サーボプレス機等)によって駆動される。一対の加圧軸11,12は、第1加圧軸11と、第2加圧軸12とを有している。
【0015】
第1加圧軸11は、一方向(
図1における上下方向)に長く延びる形状を有している。第1加圧軸11は、第1ワークW10が塑性変形するように第1ワークW10を押圧可能である。具体的に、第1加圧軸11は、第1ワークW10に突起W11が形成されるように第1ワークW10を押圧可能である。第1加圧軸11は、例えばタングステンカーバイドからなる。本実施形態では、第1加圧軸11は、円柱状に形成されている。第1加圧軸11は、第1ワークW10を押圧する押圧面11aを有している。押圧面11aは、第1加圧軸11の端面である。押圧面11aは、円形に形成されている。
【0016】
第2加圧軸12は、第1加圧軸11の構成と同じ構成を有している。第2加圧軸12は、当該第2加圧軸12の中心軸が第1加圧軸11の中心軸の延長線上に位置し、かつ、第2加圧軸12の押圧面12aが第1加圧軸11の押圧面11aと対向する姿勢で配置されている。なお、第1加圧軸11および第2加圧軸12は、円柱状以外の形状であってもよい。
【0017】
センサ40は、例えば第1加圧軸11に設けられている。本実施形態では、センサ40として、ロードセルが用いられている。なお、センサ40の設置場所は、第1加圧軸11に限られない。
【0018】
一対の電極21,22は、第1ワークW10および第2ワークW20に接触した状態で第1ワークW10および第2ワークW20に通電させることが可能である。一対の電極21,22には、図示略の電源部から電圧および電流が供給されている。一対の電極21,22は、第1電極21と、第2電極22とを有している。
【0019】
第1電極21は、第1ワークW10のうち第1加圧軸11により加圧される部位の周囲の部位に接触することが可能である。本実施形態では、第1電極21は、第1加圧軸11を包囲する円筒状に形成されている。第1電極21の内周面と第1加圧軸11の外周面との間には、隙間が設けられている。第1電極21は、例えば銅からなる。第1電極21は、第1ワークW10に接触する接触面21aを有している。接触面21aは、円環状に形成されている。なお、接触面21aの形状は、円環状に限られない。
【0020】
第2電極22は、第1電極21の構成と同じ構成を有している。第2電極22は、第2ワークW20のうち第2加圧軸12により加圧される部位の周囲の部位に接触することが可能である。第2電極22は、当該第2電極22の中心軸が第1電極21の中心軸の延長線上に位置し、かつ、第2電極22の接触面22aが第1電極21の接触面21aと対向する姿勢で配置されている。
【0021】
カメラ50は、高速現象を撮影することが可能なハイスピードカメラにより構成される。カメラ50は、例えば、1秒間に1000枚の静止画を撮影可能なハイスピードカメラを用いることができる。カメラ50は、第1ワークW10および第2ワークW20の加圧方向に対して略直角方向から接合部を撮影する。カメラ50により撮影された画像は、制御装置30へ送信される。
【0022】
制御装置30は、CPU31(Central Processing Unit)と、メモリ32(ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory))と、各種信号を入出力するための図示しない入出力装置等を含んで構成される。CPU31は、ROMに格納されているプログラムをRAM等に展開して実行する処理回路(processing circuitry)として機能する。ROMに格納されるプログラムは、制御装置30の処理手順が記されたプログラムである。制御装置30は、これらのプログラムに従って、各機器の制御を実行する。この制御については、ソフトウェアによる処理に限られず、専用のハードウェア(電子回路)で処理することも可能である。
【0023】
制御装置30は、一対の加圧軸11,12および一対の電極21,22を制御する。具体的に、制御装置30は、一対の加圧軸11,12から第1ワークW10および第2ワークW20に作用する荷重と、一対の電極21,22から第1ワークW10および第2ワークW20に作用する荷重と、一対の電極21,22へ印加する電圧と、一対の加圧軸11,12および一対の電極21,22の押し込み量とを制御する。制御装置30は、一対の電極21,22へ印加する電圧を制御することによって一対の電極21,22に供給する電流を制御する。
【0024】
制御装置30は、第1ワークW10および第2ワークW20の各々に互いに接触する突起W11,W21が形成されるように一対の加圧軸11,12から第1ワークW10および第2ワークW20に荷重F(
図1を参照)を作用させる操作を行う。制御装置30は、第1ワークW10および第2ワークW20に通電する操作も行う。具体的には、制御装置30が、一対の加圧軸11,12から第1ワークW10および第2ワークW20に対して荷重Fを作用させ、かつ、第1ワークW10のうち第1加圧軸11により加圧される部位の周囲の部位に第1電極21の接触面21aを接触させ、第2ワークW20のうち第2加圧軸12により加圧される部位の周囲の部位に第2電極22の接触面22aを接触させた状態で、第1ワークW10および第2ワークW20に通電する操作を行う。制御装置30は、一対の電極21,22の間を各突起W11,W21を介して破線で示す電流Xが流れるように制御する。
【0025】
各突起W11,W21は、電流Xが流れることによって軟質化する。本実施形態では、制御装置30は、電流Xを流し各突起W11,W21を軟質化させつつ第1ワークW10および第2ワークW20に対して荷重Fを作用させる。これによって、本実施形態では、第1ワークW10と第ワークW20とを各突起W11,W21の位置において接合することができる。
【0026】
次に、接合部の断面について説明する。
図2は、接合部の断面を示す図である。
図2に示すように、一対の加圧軸11,12によって加圧されることにより、第1ワークW10および第2ワークW20は、押圧面11aと押圧面12aとの間に突起W11,W21が形成される。接合部に対応する突起W11,W21は、加圧されることによって突起W11,W21同士の接触部分の外径としての外径端部が外側へ拡がっていく。
図2に示すように、外径端部のうち一方の端部を第1端部P1とし、他方の端部を第2端部P2とする。第1端部P1と第2端部P2との間の距離(第1端部P1と第2端部P2とを結ぶ直線)が接合部の外径寸法となる。
【0027】
次に、カメラ50によって撮影した画像に対する画像処理について説明する。制御装置30は、画像処理として例えば、モノクロ化、エッジ検出を実行する。モノクロ化とは、カメラ50により撮影したカラー画像をモノクロ化する処理である。エッジ検出とは、複数の画素(ピクセルとも称する)からなる画像データにおいて、画素の輝度が急激に変化している境界を検出する処理である。制御装置30は、画像処理した画像から接合部の外形端部を特定した後、時間に対する外形寸法の変化をグラフ化する。
【0028】
図3~
図5は、モノクロ化、エッジ検出、グラフ化について説明するための図である。
図3の第1例、
図4の第2例、
図5の第3例の順に時間が経過している。
図3(A),
図4(A),
図5(A)は、画像のモノクロ化を示す図である。
図3(B),
図4(B),
図5(B)は、画像のエッジ検出を示す図である。
図3(C),
図4(C),
図5(C)は、時間に対する外形寸法の変化をグラフ化した図である。
図3~5において、説明のために第1端部P1および第2端部P2に関する部分を四角の枠で示している。
【0029】
制御装置30は、カメラ50から受信したカラー画像を静止画として
図3(A),
図4(A),
図5(A)のようにモノクロ化する。次いで、制御装置30は、モノクロ化した画像を
図3(B),
図4(B),
図5(B)のようにエッジ検出する。制御装置30は、エッジ検出により画素の輝度の変化部分を検出し、第1端部P1と第2端部P2とを特定する。制御装置30は、カメラ50から受信した静止画の画像処理を繰返す。なお、輝度変化が生じる原因は、2つある。1つ目は外径端部が外側へ拡がっていくにつれて、照明からの反射光も追従するためである。2つ目は、材料に熱が入り軟質化する際に、材料が赤熱するためである。
【0030】
次いで、制御装置30は、第1端部P1と第2端部P2との距離である外径寸法の時間変化をグラフ化する。例えば、制御装置30は、
図3(C),
図4(C),
図5(C)に示すように、横軸をフレーム(時間の経過に対応)、縦軸をピクセル(接合部の外径寸法に対応)とするグラフを作成する。ここで、1秒間の動画が何枚の画像で構成されているかを示す単位をフレームレートという。カメラ50のフレームレートから1フレームの秒数を求めることができる。ここで、画像におけるピクセルの密度を解像度という。カメラ50の解像度から1ピクセルの長さを求めることができる。制御装置30は、最終的にフレームを秒、ピクセルをmmとして変換したグラフを作成可能である。なお、ピクセルの画素について実際に観察したサンプルを実測したmmで補完することによって、より接合部の外形寸法の測定の精度を高めることが可能となる。
【0031】
図3(C),
図4(C)に示すように、第1端部P1と第2端部P2とで結ばれる接合部の外形寸法は、時間の経過とともに大きくなり、
図5(C)のように第1ワークW10と第ワークW20とが接合されたときに時間が経過しても(フレーム数が増加しても)外径寸法の変化がなくなるようなグラフとなる。第1ワークW10と第ワークW20とは、外径寸法(ピクセル)の値が大きい程、接合の品質が高いと言える。本実施の形態の固相接合装置1を用いた固相接合における接合監視システムおよび固相接合における測定方法によれば、時間に対する接合部の変化を正確に検出することが可能である。
【0032】
次に、制御装置30が実行する処理について具体的に説明する。
図6は、制御装置30が実行する制御内容を示すフローチャートである。
図6のフローチャートの処理は、制御装置30の制御におけるメインルーチンから、サブルーチンとして繰返し呼び出されて実行される。制御装置30は、まずステップS(以下、単に「S」と示す)1において、一対の加圧軸11,12を第1ワークW10および第2ワークW20に向けて移動する。
【0033】
次いで、制御装置30は、カメラ50を制御し接合部の撮影を開始する(S2)。次いで、制御装置30は、一対の加圧軸11,12がそれぞれ突起形成位置まで到達したか否かを判定する(S3)。制御装置30は、例えば、一対の加圧軸11,12がそれぞれ第1ワークW10,第2ワークW20に接触したときの接触位置を記憶すればよい。制御装置30は、例えば、記憶された接触位置から第1ワークW10および第2ワークW20に突起W11,W21が形成される突起形成位置まで一対の加圧軸11,12がそれぞれ移動したか否かを判定すればよい。制御装置30は、S3において突起形成位置を基準位置として記憶する。制御装置30は、一対の加圧軸11,12が突起形成位置まで到達していないと判定した場合(S3のNO)、S1の処理へ戻る。
【0034】
制御装置30は、一対の加圧軸11,12がそれぞれ突起形成位置まで到達したと判定した場合(S3のYES)、S4の処理へ移行する。制御装置30は、S4において一対の加圧軸11,12をそれぞれ接合位置まで押し込むとともに接合のための通電をする処理を実行する。次いで、制御装置30は、センサ40の検出値に基づいて第1ワークW10および第2ワークW20における各突起W11,W21が軟質化したか否かを判定する(S5)。制御装置30は、例えば、センサ40の検出値が予め定めた閾値以下であるか否かによって各突起W11,W21が軟質化したか否を判定する。制御装置30は、各突起W11,W21が軟質化していないと判定した場合(センサ40の検出値が閾値より大きい場合)、S4に戻る。制御装置30は、各突起W11,W21が軟質化していると判定した場合(センサ40の検出値が閾値以下の場合)、S6の処理へ移行する。
【0035】
制御装置30は、S6において一対の加圧軸11,12がそれぞれ接合位置まで到達したか否かを判定する。制御装置30は、例えば、S3おいて記憶された突起形成位置から第1ワークW10および第2ワークW20が接合される接合位置まで一対の加圧軸11,12がそれぞれ移動したか否かを判定すればよい。制御装置30は、一対の加圧軸11,12がそれぞれ接合位置まで到達していないと判定した場合(S6のNO)、S4の処理へ戻る。制御装置30は、一対の加圧軸11,12がそれぞれ接合位置まで到達したと判定した場合(S6のYES)、S7の処理へ移行する。
【0036】
制御装置30は、S7においてカメラ50を制御し接合部の撮影を終了する。S7において、カメラ50により撮影されたカラー画像は、複数枚の静止画像の集合として記憶される。次いで、制御装置30は、画像処理としてカメラ50により撮影されたカラー画像をモノクロ化する処理を実行する(S8)。次いで、制御装置30は、モノクロ化した画像に対してエッジ検出する処理を実行する(S9)。次いで、制御装置30は、エッジ検出した画像から接合部の外形寸法を特定し、外径寸法の時間変化をグラフ化し(S10)、処理をサブルーチンからメインルーチンに戻す。
【0037】
図5に示すように、制御装置30は、カメラ50によって撮影した画像を用いてS8,S9の画像処理により接合部の外形寸法を正確に特定することができる。制御装置30は、S10の処理により外径寸法の時間変化をグラフ化することによって固相接合における時間に対する接合部の変化を検出することができる。
【0038】
上記実施形態では、センサ40としてロードセルの検出値を用いたが、ロードセルとは異なるセンサにより各ワークW10,W20の軟質化が検知されてもよい。このようなセンサとして、接触式または非接触式の温度計を用いてもよい。制御装置30は、接触部の温度に基づいて各ワークW10,W20が軟質化したか否かを判定してもよい。あるいは、制御装置30は、予め取得された各ワークW10,W20の熱量計算の結果と、電源のタイマと、に基づいて各ワークW10,W20が軟質化したか否を判定してもよい。
【0039】
上記実施形態では、カメラ50としてハイスピードカメラを用いたが、通常の動画撮影が可能なカメラを用いてもよい。カメラの代わりに例えばライダー(LiDAR:light detection and ranging)を用いてもよい。ライダーとは、レーザー光を照射し、物体に当たって跳ね返ってくるまでの時間を計測し、物体までの距離などを計測する装置である。制御装置30は、ライダーにより接合部の外形端部を特定し、時間に対する外形寸法の変化を検出してもよい。
【0040】
<まとめ>
(1) 本開示の接合監視システムは、金属からなる第1ワークW10および第2ワークW20を厚み方向における両側から押圧するとともに第1ワークW10および第2ワークW20に通電することによって第1ワークW10と第2ワークW20とを接合する固相接合装置1を用いた接合監視システムに関する。接合監視システムは、第1ワークW10および第2ワークW20の加圧方向に対して略直角方向から第1ワークW10と第2ワークW20との接合部を撮影可能なカメラ50と、制御装置30とを備える。制御装置30は、カメラ50が撮影した画像から静止画を取得し、静止画を画像処理することによって接合部の外径端部を特定し、外径端部のうち一方の端部である第1端部P1と他方の端部である第2端部P2との間の距離から接合部の外径寸法を検出する。
【0041】
(2) (1)の接合監視システムにおいて、制御装置30は、静止画の画像処理を繰返すことによって時間に対する接合部の外径寸法の変化を検出する。
【0042】
(3) (1)または(2)の接合監視システムにおいて、制御装置30は、画像処理として静止画をエッジ検出することによって、接合部における第1端部P1および第2端部P2を特定する。
【0043】
(4) (1)から(3)のいずれかの接合監視システムにおいて、制御装置30は、時間に対する接合部の外径寸法の変化を可視化する処理を実行する。
【0044】
(5) 本開示の測定方法は、金属からなる第1ワークW10および第2ワークW20を厚み方向における両側から押圧するとともに第1ワークW10および第2ワークW20に通電することによって第1ワークW10と第2ワークW20とを接合する固相接合装置1を用いた接合部の測定方法に関する。測定方法では、カメラ50が撮影した画像から静止画を取得し、静止画を画像処理することによって接合部の外径端部を特定するステップと、外径端部のうち一方の端部である第1端部P1と他方の端部である第2端部P2との間の距離から接合部の外径寸法を検出するステップとを実行する。
【0045】
本開示の固相接合装置1を用いた接合監視システムおよび接合部の測定方法によれば、静止画を画像処理することによって接合部の外径端部を特定し、外径端部のうち一方の端部である第1端部P1と他方の端部である第2端部P2との間の距離から接合部の外径寸法を正確に検出することができる。
【0046】
本開示の固相接合装置1を用いた接合監視システムおよび接合部の測定方法によれば、接合部に火花などが発生しない。このため、火花など輝度が高いものによって白飛びして輪郭などの形状が正確に撮影できない点を考慮した特殊なカメラを用いずに、通常のカメラにより撮影が可能となる。
【0047】
今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0048】
1 固相接合装置、11,12 加圧軸、11a,12a 押圧面、21,22 電極、21a,22a 接触面、30 制御装置、31 CPU、32 メモリ、40 センサ、50 カメラ、F 荷重、P1 第1端部、P2 第2端部、W10,W20 ワーク、W11,W21 突起、X 電流。