(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170973
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】ロボットハンド
(51)【国際特許分類】
B25J 15/08 20060101AFI20241204BHJP
【FI】
B25J15/08 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087776
(22)【出願日】2023-05-29
(71)【出願人】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 安直
(72)【発明者】
【氏名】金田 侑
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS07
3C707BS10
3C707DS01
3C707ES03
3C707ET05
3C707EU07
3C707EU11
3C707EU12
3C707HS27
3C707KS33
3C707KX08
3C707LV10
3C707LW02
3C707LW07
(57)【要約】
【課題】把持状態に影響されることなく把持物体にかかる外力に対して力制御可能なロボットハンドを提供する。
【解決手段】少なくとも2本の指を有するハンド機構と、指に指先から指奥へ並んで配設された指に加わる力を検知する複数の力センサーと、複数の力センサーの検知した力に基づく力パターンにより力の印加状態を判断する力パターン判断手段と、力パターン判断手段の判断結果に基づき指にかかる力を制御する力制御手段とを有することを特徴とする。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2本の指を有するハンド機構と、
前記指に指先から指奥へ並んで配設された指に加わる力を検知する複数の力センサーと、
前記複数の力センサーの検知した力に基づく力パターンにより力の印加状態を判断する力パターン判断手段と、
前記力パターン判断手段の判断結果に基づき前記指にかかる力を制御する力制御手段と、を有するロボットハンド。
【請求項2】
前記力制御手段は、把持物体にかかる外力を制御する外力制御手段である、請求項1のロボットハンド。
【請求項3】
前記力パターンは、前記複数の力センサーの検知した力より計算した外力のパターンである、請求項2のロボットハンド。
【請求項4】
前記力パターン判断手段は、それぞれの力センサーで検知し、計算される外力の向きに基づいて前記力パターンを場合分けする、請求項3のロボットハンド。
【請求項5】
前記力パターン判断手段は、それぞれの力センサーで検知し、計算される外力の有無に基づいて前記力パターンを場合分けする、請求項3のロボットハンド。
【請求項6】
前記力制御手段は、把持物体にかかる把持力を制御する把持力制御手段である、請求項1のロボットハンド。
【請求項7】
前記力パターンは、前記複数の力センサーの検知した力より計算した把持力のパターンである、請求項6のロボットハンド。
【請求項8】
前記力パターン判断手段は、それぞれの力センサーで検知し、計算される把持力の大小に基づいて前記把持力のパターンを場合分けし、把持位置を推定する、請求項7のロボットハンド。
【請求項9】
前記力パターンは、前記複数の力センサーの検知した力のパターンであり、前記力パターン判断手段は、それぞれの力センサーで検知した力の有無に基づいて前記力パターンを場合分けする、請求項6のロボットハンド。
【請求項10】
前記力パターン判断手段は、前記力パターンに基づいて安定把持状態であるかどうかを判断する、請求項9のロボットハンド。
【請求項11】
前記指は、把持物体を動かす並進駆動機構を有する、請求項1のロボットハンド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットアームのエンドエフェクタとして物体の把持を行うロボットハンドに関する技術である。
【背景技術】
【0002】
2指グリッパなどのロボットハンドはロボットアームのエンドエフェクタとして様々な形式が開発され、工場作業などで活用されている。
【0003】
ロボットハンドでは、組立作業や設置・陳列作業において把持物体を外環境と接触させ倣う動作をさせるニーズが高まっており、把持物体にかかる外力を制御する力制御機能を有することが望ましい。
【0004】
ロボットハンドによる力制御に関しては特許文献1において、平行リンク機構による平行グリッパ構造で片指を位置制御し把持位置を移動し、もう片指を力制御で追従させることで把持物体の姿勢を回転させる技術が開示されている。
(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1では、把持物体の姿勢を回転させることはできるが、把持物体にかかる外力を制御することができないという課題がある。また、外力の制御では把持状態によって、力センサー等で検知した力を単純にフィードバックするだけでは目的とする動作とならない場合があるという課題があった。
【0007】
本発明の目的は、上記従来の課題を解決し、把持状態に影響されることなく把持物体にかかる外力に対して力制御可能なロボットハンドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は以下のように構成する。
本発明の態様によれば、少なくとも2本の指を有するハンド機構と、
前記指に指先から指奥へ並んで配設された指に加わる力を検知する複数の力センサーと、
前記複数の力センサーの検知した力に基づく力パターンにより力の印加状態を判断する力パターン判断手段と、
前記力パターン判断手段の判断結果に基づき前記指にかかる力を制御する力制御手段と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明のロボットハンドによれば、指先と奥側に複数の力センサーを配置し、外力パターンに基づいて外力および把持力を計算することで、指先を支点とするモーメントが発生し、外力制御により外力とは逆向きに指が動作するという課題に対し、検出した外力の向きを反転させて外力制御を行う。その結果、指の動作方向が外力と同じ向きとなり、正常な力制御の動作とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1実施形態におけるロボットハンドの構成を示す図
【
図2A】本発明の第1実施形態におけるロボットハンドの開閉動作を示す図
【
図2B】本発明の第1実施形態におけるロボットハンドの開閉動作を示す図
【
図3】本発明の第1実施形態におけるロボットハンド制御手段の構成を示すブロック線図
【
図4】本発明の第1実施形態におけるロボットハンド力制御手段の構成を示すブロック線図
【
図5】本発明の第1実施形態におけるロボットハンドの外力パターンを説明する図
【
図6】本発明の第1実施形態におけるロボットハンドの動作を示す図
【
図7】本発明の第1実施形態におけるロボットハンドの動作を説明するフローチャート
【
図8】本発明の第2実施形態におけるロボットハンド力制御手段の構成を示すブロック線図
【
図9】本発明の第2実施形態におけるロボットハンドの把持力パターンを説明する図
【
図10】本発明の第3実施形態におけるロボットハンド力制御手段の構成を示すブロック線図
【
図11A】本発明の第3実施形態におけるロボットハンドの各力パターンを説明する図
【
図11B】本発明の第3実施形態におけるロボットハンドの各力パターンを説明する図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明にかかる実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0012】
以下、図面を参照して本発明における実施形態を詳細に説明する前に、本発明の種々の態様について説明する。
【0013】
本発明の一態様に係るロボットハンドは、少なくとも2本の指を有するハンド機構と、前記指に指先から指奥へ並んで配設された指に加わる力を検知する複数の力センサーと、前記複数の力センサーの検知した力に基づく力パターンにより力の印加状態を判断する力パターン判断手段と、前記力パターン判断手段の判断結果に基づき前記指にかかる力を制御する力制御手段と、を備える。
【0014】
本態様によれば、力印加状態に応じた適切な力制御が可能となる。
【0015】
上記態様において、前記力制御手段は、把持物体にかかる外力を制御する外力制御手段であってもよい。
【0016】
本態様によれば、力の印加状態に応じた外力制御が可能となる。
【0017】
上記態様において、前記力パターンは、前記複数の力センサーの検知した力より計算した外力のパターンであってもよい。
【0018】
本態様によれば、把持物体にかかる外力の印加状態に応じた外力制御が可能となる。
【0019】
上記態様において、前記力パターン判断手段は、それぞれの力センサーで検知し、計算される外力の向きに基づいて前記力パターンを場合分けしてもよい。
【0020】
本態様によれば、把持状態にかかわらず、把持物体にかかる外力の印加方向と同じ方向に動作する外力制御が可能となる。
【0021】
上記態様において、前記力パターン判断手段は、それぞれの力センサーで検知し、計算される外力の有無に基づいて前記力パターンを場合分けしてもよい。
【0022】
本態様によれば、一部の力センサーの検知領域を外れた把持状態であっても外力の印加方向と同じ方向に動作する外力制御が可能となる。
【0023】
上記態様において、前記力制御手段は、把持物体にかかる把持力を制御する把持力制御手段であってもよい。
【0024】
本態様によれば、力の印加状態に応じた把持動作が可能となる。
【0025】
上記態様において、前記力パターンは、前記複数の力センサーの検知した力より計算した把持力のパターンであってもよい。
【0026】
本態様によれば、把持物体にかかる把持力の印加状態に応じた把持動作が可能となる。
【0027】
上記態様において、前記力パターン判断手段は、それぞれの力センサーで検知し、計算される把持力の大小に基づいて前記把持力パターンを場合分けし、把持位置を推定してもよい。
【0028】
本態様によれば、把持位置により適切な把持状態か判断でき、より確実な把持動作が可能となる。
【0029】
上記態様において、前記力パターンは。前記複数の力センサーの検知した力のパターンであり、前記力パターン判断手段は、それぞれの力センサーで検知した力の有無に基づいて前記力パターンを場合分けしてもよい。
【0030】
本態様によれば、把持物体の姿勢により適切な把持状態か判断でき、より確実な把持動作が可能となる。
【0031】
上記態様において、前記力パターン判断手段は、前記力パターンに基づいて安定把持状態であるかどうかを判断してもよい。
【0032】
本態様によれば、安定把持状態であるかどうかがわかるため、より確実な把持動作とすることができる。
【0033】
上記態様において、前記指は、把持物体を動かす並進駆動機構を有してもよい。
【0034】
本態様によれば、力パターンに基づき、より確実で安定な把持状態に持っていくことが可能となる。
【0035】
以下に、本発明にかかる実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0036】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態におけるロボットハンド1の構成を示す図である。ロボットハンド1は、2指のグリッパであり、ハンド土台部2、平行リンク機構6R、6Lと指先機構7R、7Lからなる指機構3R、3L、ハンド制御手段8から構成される。
【0037】
ハンド土台部2には手首接続部5がある。手首接続部5は、多自由度ロボットアーム等に接続され、エンドエフェクタとして機能することが可能である。また、ハンド土台部2には指駆動サーボモーター9R、9Lが配設され、その出力軸には平行リンク機構6R、6Lが接続されており、指関節4R、4Lが構成されている。
【0038】
平行リンク機構6R、6Lは指駆動サーボモーター9R、9Lの出力軸に接続され駆動力を伝える能動リンク10R、10Lとサーボモーターの出力軸に接続されない受動リンク11R、11Lから構成される。
【0039】
平行リンク機構6R、6Lの先には、指先機構7R、7Lが接続されている。指先機構7R、7Lは、指骨格12R、12L、指内側並進駆動機構13R、13Lと力センサー14Rf、14Rb、14Lf、14Lbとから構成される。
【0040】
指内側並進駆動機構13R、13Lは、指骨格12R、12Lの内側を通る並進駆動ベルト15R、15Lを駆動する機構である。並進駆動ベルト15R、15Lは、両端をそれぞれ、モーター側巻取りローラー17R、17Lとばね側巻取りローラー19R、19Lとに固定されており、指骨格12R、12Lの先端に配設された受動ローラー20R、20Lに掛かるように取り廻されている。モーター側巻取りローラー17R、17Lは、指骨格12R、12Lに配設された並進駆動機構サーボモーター16R、16Lの出力軸に接続される。ばね側巻取りローラー19R、19Lは、並進駆動機構巻きばね18R、18Lの出力軸に接続される。
【0041】
指骨格12R、12Lと並進駆動ベルト15R、15Lの間には、圧力に応じた電圧を出力する感圧シートと電圧回路で構成される力センサー14Rf、14Rb、14Lf、14Lbとが配設されている。指骨格12Rの先端側に位置する力センサー14Rfと、奥側に位置する力センサー14Rbとが並んで配設されている。また、指骨格12Lの先端側に位置する力センサー14Lfと、奥側に位置する力センサー14Lbとが並んで配設されている。
【0042】
以上の機構構成によれば、指駆動サーボモーター9R、9Lを駆動することにより平行リンク機構6R、6Lが揺動動作し、指機構7R、7Lが平行移動し、
図2Aおよび
図2Bに示すように開閉動作が実現する。
【0043】
また、並進駆動機構サーボモーター16R、16Lを駆動することにより、並進駆動ベルト15R、15Lは、モーター側巻取りローラー17R、17Lに巻き取られて行き、指先側から奥側へと並進移動する。一方、並進駆動機構サーボモーター16R、16Lを前記とは逆回転させると、並進駆動ベルト15R、15Lは、モーター側巻取りローラー17R、17Lから解放され、並進駆動機構巻きばね18R、18Lによる回転張力のため、ばね側巻取りローラー19R、19Lに巻き取られ、奥側から指先側へと並進移動する。
【0044】
図3は、ロボットハンド制御手段8の構成を示すブロック線図である。ロボットハンド制御手段8は図に示す指機構7R、7Lの位置h=(h
R,h
L)と外力f
ex、把持力f
in、並進駆動ベルト15R、15Lの位置b=(b
R,b
L)を制御する。
【0045】
動作制御手段21は、動作シーケンス制御手段38と目標軌道生成手段39で構成され、指機構7R、7Lの目標位置hd=(hRd,hLd)と力制御目標力fd=(fexd,find)、並進駆動ベルト15R、15Lの目標位置bd=(bRd,bLd)を出力する。
【0046】
動作シーケンス制御手段38は、起動後のホームポジションへの移動動作、上位系41からの開閉指示Cgおよび目標把持力fdに基づく指機構7R、7Lの開閉動作、並進駆動ベルト15R、15Lの動作の制御を行う。また、ロボットアーム制御系などの上位系よりロボットハンド開閉の指示cuを、通信インターフェースを通じて受け、開閉動作を実行し、開閉状態Rhを上位系41へと通知する。
【0047】
目標軌道生成手段39は、位置制御により指機構7R、7Lの位置h=(hR,hL)を目標到達位置hp=(hRp,hLp)へ、並進駆動ベルト15R、15Lの位置b=(bR,bL)を目標到達位置bp=(bRp,bLp)へ動作させるための目標位置hd=(hRd,hLd)、目標ベルト位置bd=(bRd,bLd)を、多項式補間を使用し時系列データとして時々刻々生成する。
【0048】
指逆運動学計算手段22は、指機構7R、7Lの目標位置hd=(hRd,hLd)を逆運動学計算により、目標指関節角度qhd=(qhRd、qhLd)に変換する。
【0049】
指関節角度誤差計算手段23は、指関節角度誤差qhe=(qhRe、qhLe)=qhd-qhを計算する。
【0050】
指関節角度誤差補償手段24は、PDコントローラーであり、(式1)τh=Kpqhe+Kdqhe/dtにより指関節角度制御指令トルクτhが出力される。ただし、Kpは比例ゲイン、Kdは微分ゲインである。
【0051】
力センサー14Rf、14Rb、14Lf、14Lbからは、かかった力に応じた電圧VfA=(VfARf、VfARb、VfALf、VfALb)が出力され、A/D変換器37によりデジタル値VfD=(VfDRf、VfDRb、VfDLf、VfDLb)としてロボットハンドI/O34に取り込まれ、力fs=(fRf、fRb,fLf、fLb)へと変換され力制御手段40に入力される。
【0052】
力制御手段40の詳細を
図4に示す。外力・把持力計算手段46にはf
sが入力され、外力f
exと把持力f
inが計算される。
【0053】
外力fexに関しては、外力先端成分fexfが(式2)fexf=(fRf-fLf)/2によって計算され、外力奥側成分fexbが(式3)fexb=(fRb-fLb)/2によって計算される(外力計算手段47)。
【0054】
外力f
exは、外力パターン判断手段48において
図5に示す次の4つの外力パターンの場合分けで計算される。
【0055】
外力パターン(1)では、長尺把持物体かつ指先から離れた場所での接触を伴う作業において、fexb=0の場合、(式4)fex=-fexfで計算される。
【0056】
外力パターン(2)では、上記以外の作業において、fexb=0の場合、(式5)fex=fexfで計算される。
【0057】
外力パターン(3)では、sig(fexb)=sig(fexf)の場合、(式6)fex=fexf+fexbで計算される。
【0058】
外力パターン(4)では、sig(fexb)=-sig(fexf)の場合、(式7)fex=fexf-fexbで計算される。
【0059】
上記外力パターン(1)および(4)では、指先部分が支点となり、モーメントMが発生する効果が大きく現れるため、力センサーでは、印加される外力fexaとは逆向きの力が発生することになる。これに対応するため、外力パターン判断手段48は、外力パターン(1)および(4)では、力を反転して外力fexを計算することにより、外力制御において印加外力と同じ向きに指が動作するようにする。
【0060】
外力パターン(1)と(2)の判断に関しては、対象となる把持物体の形状情報および作業の動作内容より事前に計画されることで判断され、動作シーケンス制御手段38が信号pとして外力パターン判断手段48に指令する。あるいは、画像認識により把持物体の形状情報および作業の動作内容を認識することで外力パターン(1)と(2)の判断が行われ、動作シーケンス制御手段38が信号pとして外力パターン判断手段48に指令することも可能である。
【0061】
把持力finは、(式8)fin=(fRf+fRb+fLf+fLb)/2によって計算される(把持力計算手段49)。
【0062】
外力誤差計算手段42は、外力誤差fexe=fexd-fexを計算する。
【0063】
外力誤差補償手段43は、PDコントローラーであり、(式9)fexc=Kpfexfexe+Kdfexdfexe/dtにより外力制御指令力fexcが出力される。ただし、Kpfexは比例ゲイン、Kfdexは微分ゲインである。
【0064】
把持力誤差計算手段25は、把持力誤差fine=find-finを計算する。
【0065】
把持力誤差補償手段26は、PDコントローラーであり、(式10)finc=Kpfinfine+Kdfindfine/dtにより把持力制御指令力fincが出力される。ただし、Kpfinは比例ゲイン、Kdfinは微分ゲインである。
【0066】
外力制御指令力fexcは、外力制御切換手段44へ入力され、外力制御切換手段44は動作制御手段21からの位置・力制御選択指令sに基づき出力値を選択して切り替える。外力制御切換手段44は、s=1の場合、0を出力し、s=2の場合fexcを出力する。これにより、s=1の場合、把持力の力制御のみ行われ、s=2の場合、把持力と外力の同時制御が行われる。
【0067】
力-トルク変換手段27には、s=1の場合、(fRc,fLc)=(fexc+finc,fexc-finc)が入力され、s=2の場合、(fRc,fLc)=(fine、-fine)が入力される。(fRc,fLc)は、それぞれ右指機構3Rの力制御指令と左指機構3Lの力制御指令である。
【0068】
制御トルクτfへの変換は、(式11)τf=(fRclp/cosqhr,fLclp/cosqhL)によって行われる。ただし、lpは平行リンク機構6R、6Lのリンク長である。
【0069】
位置・力制御選択手段28は、動作制御手段21からの位置・力制御選択指令sに基づき出力値を選択して切り替える。s=0の場合、τhを出力し指位置を制御する位置制御が行われる。また、s=1あるいはs=2の場合、τfを出力し、s=1の場合、左右の指の中間位置がハンドの中央位置になるように保ったまま把持力を制御する力制御が行われ、s=2の場合、把持力と外力が同時制御される力制御が行われる。
【0070】
ベルト逆運動学計算手段29は、逆運動学計算により目標ベルト位置bd=(bRd,bLd)から目標巻取りローラー角qbd=(qbRd,qbLd)に変換する。
【0071】
ベルトローラー角度誤差計算手段30は、qbe=(qbRe,qbLe)=qbd-qbを計算する。
【0072】
45は指-ベルト連動手段であり、指の動きとベルトの動きを連動させる。s=2が指令され、外力・把持力制御が実行される際、左右の指の中間位置がハンド中央位置からずれる動きとなった時、平行リンク機構であるために左右の指先位置が指の長さ方向でずれことになる。これに対応するため、指-ベルト連動手段45は左右のベルトの位置を(式12)Δhbd=(lpcosqhR-lpconsqhRc,lpcosqhL-lpcosqhLc)に基づきΔhbd調整し、把持物体に剪断力が加わらないようにする。ただし、(qhRc,qhLc)は位置制御から力制御に切り替えた瞬間の(qhR、qhL)、lpは平行リンク機構6のリンク長である。
【0073】
ベルトローラー角度誤差補償手段31は、PDコントローラーであり、(式13)τb=Kbpqbe+Kbddqbe/dtによりベルトローラー角度制御指令力τbが出力される。ただし、Kbpは比例ゲイン、Kbvは微分ゲインである。
【0074】
以上の制御指令τhdまたはτf、およびτbは、ロボットハンドI/O34に入力され、モータードライバー36hR,36hL,36bR,36bL,に指令され、指駆動サーボモーター9R、9Lおよび並進駆動機構サーボモーター16R、16Lを駆動する。
【0075】
また、ロボットハンドI/O34は、モータードライバーから送信される指駆動サーボモーター9R、9Lおよび並進駆動機構サーボモーター16R、16Lのエンコーダ値の入力を受け、現在の指関節角度qh=(qhR、qhL)、現在のベルトローラー角度qb=(qbR、qbL)へ変換し出力する。
【0076】
指順運動学計算手段32は、現在の指関節角度qh=(qhR、qhL)から現在の指位置h=(hR,hL)へと変換する。
【0077】
ベルト順運動学計算手段33は、現在のベルトローラー角度qb=(qbR、qbL)から現在のベルト位置b=(bR,bL)へと変換する。
【0078】
以上説明した
図3に示すフィードバック制御系により、s=0で位置制御が指定された場合、指機構7R、7Lの現在の指位置h=(h
R,h
L)が目標位置h
d=(h
Rd,h
Ld)へと制御される。また、s=1で把持力の力制御が指定された場合、左右の指の中間位置がハンドの中央位置になるように保ったまま、指機構7R、7Lによる現在の把持力f
inが目標把持力f
indに制御される。また、s=2の場合、指機構7R、7Lによる現在の把持力f
inが目標把持力f
indに制御されるとともに、現在の外力f
exが目標外力f
exdに外力が同時制御される力制御が行われる。さらに、並進駆動ベルト15R、15Lの現在のベルト位置b=(b
R,b
L)が目標ベルト位置b
d=(b
Rd,b
Ld)に制御される。
【0079】
ロボットハンド制御手段8は、ハードウェア的には制御プログラムを実行する制御コンピュータ35とモータードライバー36hR、36hL、36bR、36bLとA/D変換器37により構成されている。そして、ロボットハンド制御手段8のうちのモータードライバー36hR、36hL、36bR、36bLとA/D変換器37を除く部分は、制御コンピュータ35で実行される制御プログラムとしてソフトウェア的に実現される。よって、例えば、それぞれの動作を構成するステップを有するコンピュータプログラムとして、記憶装置(ハードディスク等)などの記録媒体に読み取り可能に記憶させ、そのコンピュータプログラムをコンピュータの一時記憶装置(半導体メモリ等)に読み込んでCPUを用いて実行することにより、後述する各ステップを実行することができる。
【0080】
指関節4R、4L、モーター側巻取りローラー17R、17Lの角度センサーである指駆動サーボモーター9R、9L、並進駆動機構サーボモーター16R、16Lのエンコーダより出力される角度パルス情報phR,phL,pbR、pbLは、モータードライバー36hR、36hL、36bR、36bLに取り込まれ、角度情報αhR、αhL,αbR、αbLへと変換されロボットハンド制御手段8に出力される。
【0081】
ロボットハンド制御手段8は、取り込んだ角度情報に基づいて、指関節4R,4Lおよびモーター側巻取りローラー17R、17Lの制御指令値をそれぞれ算出する。算出された各制御指令値は、モータードライバー36hR、36hL、36bR、36bLに与えられ、モータードライバー36hR、36hL、36bR、36bLによってロボットハンド1の指駆動サーボモーター9R、9L、並進駆動機構サーボモーター16R、16Lが駆動される。
【0082】
モータードライバー36hR、36hL、36bR、36bLおよびA/D変換器37は、EtherCAT(登録商標)などのネットワーク通信により制御コンピュータ35に接続されており、角度情報や制御指令値のやり取りが可能である。
【0083】
図6に示す動作を例にロボットハンドの動作について
図7のフローチャートを使って説明する。
【0084】
ステップS1では、ロボットハンドの起動後、モータードライバーの原点出し機能により指機構7R、7Lおよび並進駆動ベルト15R、15Lの可動機構限界まで動作させ当てて停止させる(
図6のS-1の動作)。
【0085】
ステップS2では、ロボットハンドI/O34は、可動機構限界で停止した状態を受け、ロボットハンドの中央線が指機構7R、7Lの原点に、並進駆動ベルト15R、15Lの全長の中央が原点になるように現在の指関節角度qh=(qhR、qhL)、ベルトローラー角度qb=(qbR、qbL)を調整し出力する。
【0086】
ステップS3では、可動機構限界への移動完了後、動作制御手段21は指機構7R、7Lをホームポジションh
H=(h
HR,h
HL)へ、並進駆動ベルト15R、15Lをホームポジションb
H=(0、0)へ移動する動作を生成し、動作させる(
図6のS-3の動作)。
【0087】
その後、ステップS4では、ロボットアームにより物体を把持するための位置にロボットハンドが移動され上位系からの把持指令がC
g=1に切り替わったらステップS5に進む(
図6のS-4の動作)。
【0088】
ステップS5では、動作シーケンス制御手段38がs=1を出力して制御系を把持力制御に切り替える。
【0089】
ステップS6では、位置・力制御選択手段がτ
fを選択してトルク指令τ
dとして出力することで、指機構7R、7Lが動作し、物体を力f
indにて把持する(
図6のS-6の動作)。
【0090】
ステップS7では、動作シーケンス制御手段38が到達時間t
bpdup、目標到達位置b
pd=(b
pdup、b
pdup)を出力し、並進駆動ベルト15R、15Lを動作させ、把持物体を距離b
pduだけ引き上げる(
図6のS-7の動作)。
【0091】
ステップS8では、ロボットアームによりはめ合い動作を行うための位置に、ロボットハンドが移動される(
図6のS-8の動作)。
【0092】
ステップS9では、動作シーケンス制御手段38がs=2を出力して制御系を外力・把持力制御に切り替える。
【0093】
ステップS10では、動作シーケンス制御手段38が到達時間tbpddw、目標到達位置bpd=(bpddw、bpddwp)を出力し、並進駆動ベルト15R、15Lを動作させ把持物体を引き下げる。
【0094】
ステップS11では、把持物体の接触による停止を検知する。把持物体がそれ以上下降できなくなると、並進駆動機構サーボモーター16Rまたは16Lの負荷が増え、モーター駆動電流が増加するため、接触の検知が可能である。モータードライバー36bR,36bLは、並進駆動ベルト15R、15Lを停止させる。
【0095】
ステップS11において、接触による停止を検知しなかった場合、ステップS12に進み外力・把持力計算手段にて把持パターンの判断を行う。
【0096】
把持物体が降下しはめ合い部品に接触すると、外力f
exaが加わり、外力先端成分f
exfが発生すると共に、支点によるモーメント効果のため、f
exfとは逆向きの外力奥側成分f
exbが発生し、外力・把持力計算手段は、外力パターン(4)であると判断する。この判断により、外力f
exは式7により計算され、指機構はf
exaに押されるように右向きに動作し(
図6のS-12Aの動作)、把持物体はやがてはめ合いの穴に到達する。(
図6のS-12Bの動作)
【0097】
本作業での把持物体は長尺であり、ステップS12での動作では、指先より遠い位置での接触になるため、動作シーケンス制御手段はp=1を出力し、外力パターン(1)を候補として挙げる。そして、出力把持物体がさらに降下し、力センサー14Rb、14Lbの領域から外れf
exb=0となると、外力・内力計算手段は外力パターン(1)であると判断し、外力f
exは式4で計算され、外力の力制御が引き続き働くことではめ合い動作が実行される(
図6のS-12Cの動作)
【0098】
ステップS11において、接触による停止を検知した場合、ステップS13では動作シーケンス制御手段38が並進駆動ベルト15R、15Lの停止を検知すると、s=0を出力することで、指機構7R、7Lの制御を位置制御に切り替える(
図6のS-13の動作)。
【0099】
ステップS14では、動作シーケンス制御手段38がh
pb=(h
HR,h
HL)、t
ph=t
Hを出力すると、指機構7R、7LはtHの移動時間でホームポジションへと移動し把持物体を開放する(
図6のS-14の動作)。
【0100】
ステップS15では、動作シーケンス制御手段38は上位系にはめ合い動作完了を通知するために、把持完了信号RH=0を出力し、ステップS4に戻り次の動作へ進む。
【0101】
以上、本発明に係る実施形態によれば、指先と奥側に複数の力センサーを配置し、外力・把持力計算手段において外力パターン(1)~(4)に基づいて、外力fexおよび把持力を計算することに特徴がある。
【0102】
従来の1つの指に1つの力センサーを配置する構成では、
図5の外力パターン(4)に示すように、把持物体が指先方向に長く、指先から離れた位置に外力f
exaが加わると指先を支点とするモーメントMが発生し、その効果により力f
exbが発生し力センサーに検知される。このため、f
exbに対する外力制御により、外力f
exaとは逆向きに指が動作するという課題が発生する。
【0103】
この課題に対し、本発明に係る実施形態によれば外力パターン(4)の場合にfexaの向きを反転させて外力制御を行うため、指の動作方向は外力fexaと同じ向きとなり、正常な力制御の動作となる。これにより、把持状態に影響されることなく把持物体にかかる外力に対して力制御可能なロボットハンド1を提供することができる。
【0104】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態におけるロボットハンド1は、
図8に示すように外力・把持力計算手段46において、把持力パターン判断手段50が配設されていることが特徴である。その他の構成は第1実施形態の場合と同様であるので、詳細説明は省略する。
【0105】
把持力finに関しては、把持力先端成分finfが(式14)finf=(fRf+fLf)/2によって計算され、把持力奥側成分finbが(式15)finb=(fRb+fLb)/2によって計算される(把持力計算手段49)。
【0106】
把持力finは、(式16)fin=finf+finbによって計算される(把持力計算手段49)。
【0107】
把持力パターン判断手段50では、
図9に示す次の5つの把持力パターンの場合分けで概ねの把持位置を推定する。
【0108】
把持力パターン(1)は、finf>0、finb=0の場合のパターンであり、指先端側での把持(力センサー14Rf、14Lfの領域での把持)位置となるパターンである。
【0109】
把持力パターン(2)は、finf>finb>0の場合のパターンであり、中央付近指先寄りでの把持位置となるパターンである。
【0110】
把持力パターン(3)は、finf≒finbの場合のパターンであり、中央付近での把持(力センサー14Rf、14Rbの境界付近)位置となるパターンである。
【0111】
把持力パターン(4)は、finb>finf>0の場合のパターンであり、中央付近指奥側寄りでの把持位置となるパターンである。
【0112】
把持力パターン(5)は、finb>0、finf=0の場合のパターンであり、指奥側での把持(力センサー14Rb、14Lbの領域での把持)位置となるパターンである。
【0113】
本発明の第2実施形態によれば、把持力パターン判断手段50を有することにより、概ねの把持位置を推定できるため、把持力パターン信号sinを動作制御手段21に送信し、並進駆動ベルト15R、15Lを駆動することで、どのような把持状態からでも指中央付近での把持である把持力パターン(3)に持ち込むことができ、安定で確実な把持を実現することができる。
【0114】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態におけるロボットハンド1は、
図10に示すように外力・把持力計算手段46において、各力パターン判断手段51が配設されていることが特徴である。その他の構成は、第1実施形態の場合と同様であるので詳細説明は省略する。
【0115】
各力パターン判断手段51では、
図11Aおよび
図11Bに示す3点で支持される安定把持状態か2点で支持される不安定把持状態かを判断する。
【0116】
各力パターン(A)は、fLf>0、fLb>0、fLf>0の場合のパターンであり、安定把持状態を示すパターンである。
【0117】
各力パターン(B)は、fLf=0、fLb>0、fLf>0の場合のパターンであり、不安定把持状態を示すパターンである。
【0118】
上記以外にも物体の他の姿勢に対する各力パターンが存在するが、同様であるため詳細は省略する。
【0119】
本発明の第3実施形態によれば、各力パターン判断手段51を有することにより安定把持状態であるかどうかを推定できるため、各力パターン信号sstを動作制御手段21に送信し、並進駆動ベルト15R、15Lを駆動することで、安定把持状態に持ち込むことができるため、物体を落下させることなく確実な把持を実現することができる。
【0120】
なお、上記実施形態では指機構を平行リンク機構としたが、これに限られるわけではなく、例えば直動機構で平行指駆動を行うなど他の機構でも効果を発揮する。
【0121】
また、上記様々な実施形態又は変形例のうちの任意の実施形態又は変形例を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0122】
本発明のロボットハンド、ロボットハンドの制御装置、制御方法、及び制御プログラムは、ロボットアームのエンドエフェクタとして物品の把持に使用可能な、グリッパハンド、グリッパハンド制御装置、制御方法、及び制御プログラムとして有用である。
【符号の説明】
【0123】
1 ロボットハンド
2 ハンド土台部
3 指機構
4 指関節
5 手首接続部
6 平行リンク機構
7 指先機構
8 ロボットハンド制御手段
9 指駆動サーボモーター
10 能動リンク
11 受動リンク
12 指骨格
13 指内側並進駆動機構
14 力センサー
15 並進駆動ベルト
16 並進駆動機構サーボモーター
17 モーター側巻取りローラー
18 並進駆動機構巻きばね
19 ばね側巻取りローラー
20 受動ローラー
21 動作制御手段
22 指逆運動学計算手段
23 指関節角度誤差計算手段
24 指関節角度誤差補償手段
25 把持力誤差計算手段
26 把持力誤差補償手段
27 力-トルク変換手段
28 位置・力制御選択手段
29 ベルト逆運動学計算手段
30 ベルトローラー角度誤差計算手段
31 ベルトローラー角度誤差補償手段
32 指順運動学計算手段
33 ベルト順運動学計算手段
34 ロボットハンドI/O
35 制御コンピュータ
36 モータードライバー
37 A/D変換器
38 動作シーケンス制御手段
39 目標軌道生成手段
40 力制御手段
41 上位系
42 外力誤差計算手段
43 外力誤差補償手段
44 外力制御切換手段
45 指-ベルト連動手段
46 外力・把持力計算手段
47 外力計算手段
48 外力パターン判断手段
49 把持力計算手段
50 把持力パターン判断手段
51 各力パターン判断手段