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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170974
(43)【公開日】2024-12-11
(54)【発明の名称】触覚提示装置
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/041 20060101AFI20241204BHJP
   G06F 3/01 20060101ALI20241204BHJP
   B06B 1/04 20060101ALI20241204BHJP
   B06B 1/06 20060101ALI20241204BHJP
【FI】
G06F3/041 480
G06F3/01 560
B06B1/04 S
B06B1/06 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087777
(22)【出願日】2023-05-29
(71)【出願人】
【識別番号】518078142
【氏名又は名称】上海天馬微電子有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001678
【氏名又は名称】藤央弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】竹内 伸
(72)【発明者】
【氏名】芳賀 浩史
【テーマコード(参考)】
5D107
5E555
【Fターム(参考)】
5D107AA06
5D107BB08
5D107CC02
5D107CD03
5E555AA08
5E555BA06
5E555BA25
5E555BB06
5E555BB25
5E555BC04
5E555CA13
5E555CB12
5E555CB42
5E555CB45
5E555CC05
5E555DA24
5E555DB02
5E555DB11
5E555DC13
5E555DD06
5E555FA00
(57)【要約】
【課題】パネルの表面において、触覚を与える位置を適切に制御する。
【解決手段】触覚提示装置は、ユーザによるタッチの対象領域を含むパネルと、対象領域の外側に配置された複数の振動子と、前記振動子に駆動信号を与える、駆動制御装置と、を含む。パネルの全外周端の少なくとも一部の領域は吸収端領域である。駆動制御装置は、複数の振動子に駆動信号を与えて対象領域に定在波を形成する。駆動信号は、搬送波と搬送波より低い周波数の変調波との合成波である。駆動制御装置は、複数の振動子の駆動信号の搬送波の位相差によって対象領域における定在波の節の位置を制御する。
【選択図】図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
触覚提示装置であって、
ユーザによるタッチの対象領域を含む、パネルと、
前記パネル上で前記対象領域の外側に配置された、複数の振動子と、
前記振動子に駆動信号を与える、駆動制御装置と、
を含み、
前記パネルの全外周端の少なくとも一部の領域は吸収端領域であり、
前記パネルの全外周端で前記複数の振動子それぞれに最も近い位置は、前記吸収端領域に含まれ、
前記駆動制御装置は、前記複数の振動子に駆動信号を与えて、前記対象領域に定在波を形成し、
前記駆動信号は、搬送波と前記搬送波より低い周波数の変調波との合成波であり、
前記駆動制御装置は、前記複数の振動子の前記駆動信号の搬送波の位相差によって、前記対象領域における定在波の節の位置を制御する、
触覚提示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の触覚提示装置であって、
前記駆動制御装置は、前記複数の振動子の前記駆動信号の搬送波の周波数及び位相差を変化させることによって、前記対象領域における定在波の節の位置を変化させる、
触覚提示装置。
【請求項3】
請求項1に記載の触覚提示装置であって、
前記吸収端領域の振動吸収率は、40%以上である、
触覚提示装置。
【請求項4】
請求項1に記載の触覚提示装置であって、
前記吸収端領域の振動吸収率は、70%以上である、
触覚提示装置。
【請求項5】
請求項1に記載の触覚提示装置であって、
前記駆動制御装置は、前記対象領域において、前記定在波の腹の最小振幅が節の最大振幅より大きくなるように、前記複数の振動子の振動を制御する、
触覚提示装置。
【請求項6】
請求項1に記載の触覚提示装置であって、
前記対象領域の任意の点から前記吸収端領域を見た視野角は180°以上である、
触覚提示装置。
【請求項7】
請求項1に記載の触覚提示装置であって、
前記パネルの全周における前記吸収端領域以外の領域は固定端領域であり、
前記駆動制御装置は、前記複数の振動子の前記駆動信号の搬送波の周波数及び位相差を変化させることによって、前記対象領域における定在波の節の位置を変化させる、
触覚提示装置。
【請求項8】
請求項1に記載の触覚提示装置であって、
前記パネルの全外周端は吸収端領域であり、
前記複数の振動子は3以上の振動子であり、
前記駆動制御装置は、前記複数の振動子の前記駆動信号の搬送波の周波数及び位相差を変化させることによって、前記対象領域における定在波の節の位置を変化させる、
触覚提示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、触覚提示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォン及びカーナビゲーション等、タッチパネルを搭載する電子機器が普及している。ユーザが、タッチパネルを介して表示されるユーザインタフェースに含まれるアイコン等のオブジェクトを操作した場合、電子機器は、当該オブジェクトに対応する機能を作動させる。
【0003】
タッチパネルの表面は一様に硬いため、ユーザの指がタッチパネルのどの部分に触れても同じ触覚を与える。そのため、オブジェクトの存在を知覚させる、又は、オブジェクトに対応する機能が作動した場合そのための操作を受け付けたことを知覚させる、フィードバックを、ユーザに提供する技術が知られている。当該技術は、タッチパネルの表面を振動させることで、タッチしている指に触覚を提示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2020/0133425号
【特許文献2】米国特許出願公開第2013/0229384号
【特許文献3】米国特許出願公開第2011/0115734号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
触覚提示装置において、パネル上の特定の領域がタッチされた場合に触覚を提示し、それらの領域外では触覚を提示しないことが求められることがある。例えば、タッチパネル付き表示装置において、ユーザの選択肢を示すUI(User Interface)部品と、それ以外の背景領域が表示されることがある。UI部品の一つがユーザによりタッチされると、表示装置を含むシステムは、タッチされたUI部品に応じた処理を行う。このような構成において、システムは、UI部品において触覚を提示し、背景領域においては触覚を提示しない。
【0006】
上記例において、UI部品と背景領域とが、異なる指によって同時にタッチされることがある。このような場合、システムは、UI部品をタッチしている指には触覚を与え、背景領域をタッチしている指には触覚を提示しないことが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様の触覚提示装置は、ユーザによるタッチの対象領域を含む、パネルと、前記パネル上で前記対象領域の外側に配置された、複数の振動子と、前記振動子に駆動信号を与える、駆動制御装置と、を含み、前記パネルの全外周端の少なくとも一部の領域は吸収端領域であり、前記パネルの全外周端で前記複数の振動子それぞれに最も近い位置は、前記吸収端領域に含まれ、前記駆動制御装置は、前記複数の振動子に駆動信号を与えて、前記対象領域に定在波を形成し、前記駆動信号は、搬送波と前記搬送波より低い周波数の変調波との合成波であり、前記駆動制御装置は、前記複数の振動子の前記駆動信号の搬送波の位相差によって、前記対象領域における定在波の節の位置を制御する。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一態様は、パネルの表面において、触覚を与える位置を適切に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1A】触覚提示装置10の斜視図を示す。
図1B図1AにおけるIB-IB切断線での触覚提示装置の断面図を示す。
図2A】触覚提示装置10の斜視図を示す。
図2B図2AにおけるIIB-IIB切断線での触覚提示装置の断面図を示す。
図3】三つの振動子が触覚提示パネル上に配置され、触覚提示パネルの外周端の全領域が吸収端領域である構成例を示す。
図4】四つの振動子が触覚提示パネル上に配置され、触覚提示パネルの外周端の全領域が吸収端領域である構成例を示す。
図5】触覚提示パネル、固定部材及び吸振材の構成例を示す。
図6】触覚提示パネル、固定部材及び吸振材の構成例を示す。
図7】触覚提示パネル、固定部材及び吸振材の構成例を示す。
図8】触覚提示装置の駆動制御を説明するための模式図である。
図9】波形合成装置による駆動信号の生成及び振動子の振動による定在波を説明するための模式図である。
図10図2A及び2Bを参照して説明した構成例において、二つの振動子の位相差の変化に伴う定在波パターンの変化のシミュレーション結果を示す。
図11図2A及び2Bを参照して説明した構成例において、二つの振動子の周波数の変化に伴う定在波パターンの変化のシミュレーション結果を示す。
図12】三つの振動子が触覚提示パネル上に配置され、触覚提示パネルの外周端の全領域が吸収端領域である構成例での、定在波パターンの変化のシミュレーション結果を示す。
図13】四つの振動子が触覚提示パネル上に配置され、触覚提示パネルの外周端の全領域が吸収端領域である構成例での、定在波パターンの変化のシミュレーション結果を示す。
図14】四つの振動子が触覚提示パネル上に配置され、触覚提示パネルの外周端の全領域が吸収端領域である構成例での、四つの振動子の周波数の変化に伴う定在波パターンの変化のシミュレーション結果を示す。
図15図1A及び1Bを参照して説明した構成例において、二つの振動子の位相差の変化に伴う定在波パターンの変化のシミュレーション結果を示す。
図16図1A及び1Bを参照して説明した構成例において、二つの振動子の周波数の変化に伴う定在波パターンの変化のシミュレーション結果を示す。
図17】四つの振動子及び外周端の全域が吸収端領域である構成例についてのシミュレーション結果を示す。
図18】三つの振動子及び外周端の全域が吸収端領域である構成例についてのシミュレーション結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下において、図面を参照して実施形態を具体的に説明する。各図において共通の構成については同一の参照符号が付されている。説明をわかりやすくするため、図示した物の寸法、形状については、誇張して記載している場合もある。
【0011】
以下において、パネルにタッチしている指示体、例えば指に触覚を提示する触覚提示装置が説明される。触覚提示装置において、パネル上の特定の領域がタッチされた場合に触覚を提示し、それらの領域外では触覚を提示しないことが求められることがある。例えば、タッチパネル付き表示装置において、ユーザの選択肢を示す選択肢領域と、それ以外の背景領域が表示されることがある。
【0012】
選択肢領域の一つがユーザによりタッチされると、システムは、タッチされた選択肢に応じた処理を行う。このような構成において、システムは、選択肢領域において触覚を提示し、背景領域においては触覚を提示しない。上記例において、選択肢を示す領域とそれ以外の領域とが、異なる指によって同時にタッチされることがある。このような場合、システムは、選択肢領域をタッチしている指には触覚を与え、背景領域をタッチしている指には触覚を提示しないことが求められる。
【0013】
表示される画像は一定であるとは限らない。表示画像が変化すると、触覚を提示する選択肢領域と、触覚を提示しない背景領域も変化し得る。また、タッチ面を同時にタッチしている複数の指において、触覚を提示する指と触覚を提示しない指の位置は、常に一定ではない。タッチされている指の位置に応じて、触覚を提示する位置と触覚を提示しない位置とを制御することが求められることがあり得る。
【0014】
本明細書の一実施形態の触覚提示装置は、パネル上のユーザによりタッチされ得るタッチ対象領域において、選択した領域で触覚を提示する。パネルの外周端の全域の少なくとも一部は、吸収端領域である。吸収端領域は、パネル振動の一部又は全部を吸収する。吸収端領域の吸収率は、例えば、40%以上である。
【0015】
複数の振動子が、パネル上に配置されている。触覚提示装置は、複数の振動子の位相差を制御することで、触覚を提示する位置及び触覚を提示しない位置を制御する。触覚提示装置は、複数の振動子の位相差に加えて、それらの振動周波数を制御してもよい。これにより、触覚を提示する位置及び触覚を提示しない位置をより正確に制御することができる。触覚提示装置は、定常波の節(及び腹)の位置を制御することで、パネルにおける複数のタッチ位置から選択したタッチ位置のみに触覚を提示することができる。
<装置構成>
【0016】
図1A及び1Bは、本明細書の一実施形態に係る触覚提示装置10の構成例を模式的に示す。図1Aは、触覚提示装置10の斜視図を示し、図1Bは、図1AにおけるIB-IB切断線での触覚提示装置10の断面図を示す。図1A及び1Bにおいて、触覚提示装置10を駆動制御する駆動制御装置は省略されている。
【0017】
触覚提示装置10は、ユーザに対して、少なくとも一つのオブジェクト(画像)を含むUI(ユーザインタフェース)を提示し、UIを介した操作を受け付ける。また、触覚提示装置10は、UIに含まれるオブジェクトの操作を知覚させるための触覚をユーザに提供する。図1A及び1Bに示す触覚提示装置10の構成要素は、例えば、任意の筐体内に格納されてよい。
【0018】
触覚提示装置10は、触覚提示パネル100及び表示装置103を含む。図1Aに示すように、触覚提示パネル100の表面に、タッチ対象領域104が存在する。タッチ対象領域104は、ユーザによってタッチされ得る領域である。触覚提示装置10は、タッチ対象領域104の一部において、実際に触覚を提示する。タッチ対象領域104において実際に触覚が提示される位置(触覚提示部分領域)及び触覚が提示されない位置(触覚不提示部分領域)は動的に変化してもよく、または、初期設定においてユーザに指定され、それらの位置が維持されてもよい。
【0019】
以下において、説明の容易化のため、触覚提示パネル100をタッチする指示体が指であるとする。図1Aにおいて、二本の指111、112によって同時に、タッチ対象領域104内の異なる位置がタッチされている。
【0020】
図1Bに示すように、触覚提示パネル100は、ガラスや樹脂で形成された絶縁基板102と絶縁基板102上に形成されたタッチ電極パターン101を含む。触覚提示パネル100は、触覚提示パネルであると同時に、タッチパネルでもある。タッチ電極パターン101は、その前面であるタッチ面にタッチしたユーザの指の位置を検知することを可能とする。タッチ電極パターン101の一部又は全部は、タッチ対象領域104内に存在する。
【0021】
タッチ電極パターン101は、指示体による触覚提示パネル100のタッチ位置を検出することを可能とする。タッチ電極パターン101によるタッチ検出は、任意の方式により実現可能であり、例えば、抵抗膜方式、表面静電容量方式又は投影静電容量方式を使用することができる。
【0022】
図1Bに示すように、触覚提示パネル100の後側(背面側)に、表示装置103が配置されている。以下において、触覚提示パネル100を使用するユーザが位置する側を、前側と呼ぶ。前側の反対側を、後側又は背面側と呼ぶ。
【0023】
表示装置103は、タッチ対象領域104において、オブジェクトを含むUI画像を表示する。表示装置103は、任意のタイプの表示装置であってよく、例えば、OLED(Organic Light Emitting Diode)表示装置、液晶表示装置、又はマイクロLED表示装置を使用することができる。
【0024】
触覚提示装置10は、触覚提示パネル100の外周に装着された吸振材108を含む。図1Aに示す例において、触覚提示パネル100の外周の全域が吸振材108により支持されている。つまり、触覚提示パネル100の外周端の全域が吸収端領域である。図1Aに示す例において、触覚提示パネル100は矩形であり、吸振材108は、触覚提示パネル100の4辺に装着されている。
【0025】
吸振材108は、触覚提示パネル100の端に接触し、触覚提示パネル100の表面の伝搬波の一部又は全部を吸収する。反射波がより多く減衰できるように、吸振材108は粘弾性を有する。触覚提示パネル100の端部は、吸振材108を介して不図示の支持部材により支持されてよい。
【0026】
吸振材108は、ゴム、エラストマ、又は樹脂で形成することができるが、これらに限定するものではない。吸振材108、粘弾性のある材料で構成される又はその構造によって粘弾性の性質が実現されてもよい。吸振材108の振動吸収率は、例えば30%以上であってもよく、さらには、60%以上であってもよい。
【0027】
図1A及び1Bに示す例において、二つの振動子105が、触覚提示パネル100上に配置されている。触覚提示パネル100の外周端で二つの振動子105それぞれに最も近い位置は、振動吸収領域に含まれている。図1Aに示す例において、二つの振動子105は、タッチ対象領域104の外側に配置されており、それらはタッチ対象領域104を挟んで対向している。二つの振動子105は、それぞれ、吸振材108とタッチ対象領域104との間に配置されている。
【0028】
振動発生装置である振動子105は、振動することによってタッチ対象領域104の表面を振動させ、タッチしている指示体に触覚を提示することを可能とする。図1A及び1Bに示す構成例において、触覚を提示するために触覚提示パネル100を振動させる振動発生装置は、二つの振動子105のみである。
【0029】
振動子105は、例えば、圧電素子であり、触覚提示パネル100の主面に垂直な方向に振動する。なお、振動子105の振動により触覚提示パネル100に目的の定在波を形成することができれば、振動子105の振動方向は限定されない。振動子105は、予め形成された素子を絶縁基板102上に配置することで実装してもよく、絶縁基板102上に薄膜形成プロセスにより直接形成してもよい。
【0030】
後述するように、二つの振動子105が振動することによって、二次元定在波を形成することができる。定在波の振幅は触覚提示パネルの主面に垂直な方向(図1BにおけるZ軸方向)である。例えば、二つの振動子105の間において(図1BにおけるX軸方向)に、節と腹とが交互に現れる。
【0031】
触覚提示パネル100の外周端が吸収端領域を含ことにより、二つの振動子105の振動の位相差を変化させることで、定在波の節の位置を大きく変化させることができる。加えて、振動子105の振動周波数を変化させることで、節の位置のさらに様々な変化が可能となる。つまり、振動子105の位相差、又は位相差及び周波数を制御することで、タッチ対象領域104において触覚を提示する位置(領域)と触覚不提示の位置(領域)とを好適に制御することができる。
【0032】
なお、図1A及び1Bが示す例において、定在波を形成するための振動子の数は2であり、触覚提示パネル100の外周端の全域が吸収端領域である。他の構成例において、3以上の振動子が離間して配置されてよい。後述するように、振動子の数を増やすことで、節の位置をより微細に制御することが可能となる。また、触覚提示パネル100の外周端の一部領域は、固定端領域又は自由端領域であってもよい。
【0033】
図2A及び2Bは、本明細書の一実施形態に係る触覚提示装置10の他の構成例を模式的に示す。図2Aは、触覚提示装置10の斜視図を示し、図2Bは、図2AにおけるIIB-IIB切断線での触覚提示装置10の断面図を示す。図2A及び2Bにおいて、触覚提示装置10を駆動制御する駆動制御装置は省略されている。以下においては、図1A及び1Bに示す構成例との差異を主に説明する。
【0034】
本構成例において、触覚提示パネル100の外周端の一部領域は固定端領域であり、他の一部領域は吸収端領域である。固定端領域の振動吸収率は吸収端領域より小さく、固定端領域の振動反射率の絶対値は、吸収端領域の反射率の絶対値より大きい。固定端領域は、より少ない数の振動子により多様又は微細な節位置制御が可能となる。
【0035】
図2A及び2Bを参照して、触覚提示装置10は、触覚提示パネル100の外周端の一部領域を固定する固定部材107と、他の領域に装着された吸振材108を含む。固定部材107は、触覚提示パネル100の外周端に直接に接触し、触覚提示パネル100の表面の伝搬波(伝搬振動)が固定端反射するように、端部を固定して支持する。固定部材107は、例えば樹脂又は金属で形成することができるがこれらに限定されない。図2Aに示す構成例において、矩形の触覚提示パネル100の一辺が、固定部材107により固定支持され、固定端領域を構成している。他3辺は吸収端領域である。
【0036】
二つの振動子105は、タッチ対象領域104を挟んで、固定部材107(固定端領域)と対向する位置に配置されている。図2Aに示す例において、二つの振動子105は、触覚提示パネル100の辺に沿って離間して配置されている。二つの振動子105は、固定部材107と対向する吸振材108とタッチ対象領域104との間に配置されている。
【0037】
振動子105は、振動することによってタッチ対象領域104の表面を振動させ、タッチしている指示体に触覚を提示することを可能とする。図2A及び2Bに示す構成例において、触覚を提示するために触覚提示パネル100を振動させる振動発生装置は、振動子105のみである。
【0038】
後述するように、二つの振動子105が振動することによって、二次元定在波を形成することができる。固定部材107で固定された領域は固定端領域であって、定在波の節となる。固定端領域は、伝搬波を反射する反射端領域でもあり、反射において位相にずれが発生し反射率は負である。自由端領域の反射率は正である。最も効果が大きい固定端の反射率は-1、最も効果が大きい自由端の反射率は1である。
【0039】
触覚提示パネル100の外周端が固定端領域又は自由端領域を含むことで、二つの振動子105により、網目状の定在波の節を形成することが可能となる。二つの振動子105の振動の位相差を変化させることにより、定在波の節の位置を変化させることができる。加えて、振動子105の振動周波数を変化させることで、節の位置のさらに様々な変化が可能となる。つまり、振動子105の位相差、又は位相差及び周波数を制御することで、タッチ対象領域104において触覚を提示する位置(領域)と触覚不提示の位置(領域)とを好適に制御することができる。
【0040】
なお、図2A及び2Bが示す例において、定在波を形成するための振動子の数は2であり、触覚提示パネル100の外周端の一部が固定端領域である。他の構成例において、3以上の振動子が離間して配置されてよい。また、固定端領域の少なくとも一部は自由端領域でもよく、吸収端領域の一部は固定端領域又は自由端領域でもよい。
【0041】
図3及び4は、触覚提示パネル及び吸振材の構成例を示す。図3は、三つの振動子が触覚提示パネル100上に配置され、触覚提示パネル100の外周端の全領域が吸収端領域である構成例を示す。
【0042】
触覚提示パネル100は矩形であって、その4辺に吸振材108が装着されている。振動子105A、105B、105Cは、仮想的な三角形の頂点の位置にある。図3に示す例において、振動子105A、105B、105Cは、二等辺三角形の頂点位置である。また、振動子105A、105Bは、触覚提示パネル100の角の近傍にあり、振動子105Cは、触覚提示パネル100の1辺の中央近傍にある。
【0043】
Y軸(縦方向の軸)において、振動子105A、105Bの位置は共通であり、振動子105Cの位置は異なる。X軸(横方向の軸)において、振動子105Cの位置は、振動子105A、105Bの間のセンタにある。なお、三つの振動子の配置位置は三角形の頂点であればよく、図3に示すは例に限定されない。
【0044】
図4は、四つの振動子が触覚提示パネル100上に配置され、触覚提示パネル100の外周端の全領域が吸収端領域である構成例を示す。触覚提示パネル100は矩形であって、その4辺に吸振材108が装着されている。振動子105A~105Dは、仮想的な四角形の頂点の位置にある。図4示す例において、振動子105A~105Dは、長方形の頂点位置である。また、振動子105A~105Dは、触覚提示パネル100の角の近傍にある。なお、四つの振動子の配置位置は四角形の頂点であればよく、図4に示すは例に限定されない。図3及び4を示す例と異なる位置に3、4又は5以上の振動子が配置されてよい。
【0045】
図5、6、7は、触覚提示パネル、固定部材及び吸振材の構成例を示す。図5、6、7に示すように、触覚提示パネル100は矩形と異なる形状を有することができる。図5に示す構成例において、触覚提示パネル100の1辺は直線状であって、他の3辺は曲線状である。直線状の1辺に吸振材108Bが装着され、その対向辺は固定部材107で固定されている。他の二辺には、吸振材108A、108Cが装着されている。
【0046】
二つの振動子105それぞれが最も近い触覚提示パネル100の外周端位置は吸収端領域内である。二つの振動子105から最も遠い触覚提示パネル100の辺は、固定部材107で固定されている。不図示のタッチ対象領域は、例えば、二つの振動子105と固定部材107との間に存在する。
【0047】
図6に示す構成例において、触覚提示パネル100の外周端は楕円状である。その一部領域は固定部材107で固定されている。他の部分には吸振材108が装着されている。二つの振動子105それぞれが最も近い触覚提示パネル100の外周端位置は吸収端領域内である。不図示のタッチ対象領域は、例えば、二つの振動子105と固定部材107との間に存在する。
【0048】
図7に示す構成例において、触覚提示パネル100の外周端はより複雑な曲線で形成されている。三つの振動子105が触覚提示パネル100上に離間して配置されている。三つの振動子105それぞれが最も近い触覚提示パネル100の外周端位置は吸収端領域内である。三つの振動子105は、タッチ対象領域104と一つの吸振材108(吸収端領域)との間に配置されている。三つの振動子105と対向する領域は、交互に配列された吸収端領域と固定端領域とで構成されている。
【0049】
図7に示す構成例において、タッチ対象領域104の任意の点から、三つの振動子105に最も近い吸収端領域を見た視野角は180°以上である。つまり、タッチ対象領域104の任意の点から見て視野角180°以上の連続領域が吸収端領域であり、タッチ対象領域104全域から見て180°の範囲はすべて吸収端領域である。この点は、図1から4に示す構成例において同様である。これにより、定在波の節の位置をより適切に制御することができる。なお図3から5を参照して説明した構成例において、固定部材107による固定端領域は、開放された自由端領域であってもよい。
<駆動制御構成>
【0050】
図8は、触覚提示装置10の駆動制御を説明するための模式図である。触覚提示装置10の駆動制御装置は、制御装置201及び駆動装置である波形合成装置203を含む。制御装置201は、表示装置103を制御して所望の画像を触覚提示パネルの透明絶縁基板102を介してユーザに提示する。
【0051】
制御装置201は、プログラムを実行する1以上の演算装置と1以上の記憶装置を含むことができる。演算装置は、例えば、プロセッサ、GPU(Graphics Processing Unit)、及びFPGA(Field Programmable Gate Array)等を含むことができる。記憶装置は、制御装置201が使用するプログラム及びデータを格納する。記憶装置は、揮発性又は不揮発性メモリを含むことができる。記憶装置は、プログラムが使用するワークエリアを含む。
【0052】
制御装置201は、表示装置103及び触覚提示パネル100を制御するための機能部(モジュール)として動作する。具体的には、制御装置201は、タッチ検出、表示制御及び触覚制御を行う。表示制御は、表示装置103でのUIの表示を制御する。具体的には、表示制御は、UIの設定情報を記憶装置から取得し、当該情報に基づいて、少なくとも一つのオブジェクトを含むUIが表示されるように表示装置103を制御する。
【0053】
制御装置201は、タッチ電極パターン101を駆動し、タッチ電極パターン101から受信した信号に基づいて、絶縁基板102上で1又は複数の指にタッチされている位置を検出する。制御装置201は、検出した指のタッチ位置にもとづいて表示装置103で表示する画像を制御すると共に、振動子105A、105Bを制御する。図8は、例として二つの振動子105A、105Bを示す。
【0054】
例えば、指112が特定のオブジェクト画像と対応する位置をタッチし、指111が背景領域をタッチしているとする。制御装置201は、指112における振幅が大きく、指111における振幅が小さい定在波を生成するように、振動子105A、105Bを制御する。
【0055】
制御装置201は、波形合成装置203を制御することによって、振動子105A、105Bを所望の周波数及び位相差で振動するように駆動信号V1、V2を生成する。波形合成装置203は、搬送波発振器211、変調波発生器212及び移相器213を含む。
【0056】
搬送波発振器211は、制御装置201から指定された周波数fcの正弦波を搬送波W1として出力する。周波数fcは、定在波の形状を変化させることができる変数の一つである。移相器213は、搬送波W1の位相を変化させて、搬送波W1と特定の位相差φを有する搬送波W2を出力する。位相差φは、定在波の形状を変化させることができる変数の一つである。位相差は、制御装置201により指定される。
【0057】
変調波発生器212は、搬送波W1及びW2をそれぞれ変調する変調波Sを出力する。変調波は所定の窓関数を有する。搬送波W1と変調波Sの合成波が振動子105Aを駆動する駆動信号V1である。搬送波W2と変調波Sの合成波が振動子105Bを駆動する駆動信号V2である。
【0058】
触覚提示パネル100(絶縁基板102)は、両端を支持部でそれぞれ支持されている。一方の支持部は吸振材108A及び支持部材235Aで構成され、他方の支持部は吸振材108B及び支持部材235Bで構成されている。支持部材235A、235Bは、例えば、固定部材107と同材料で形成されてよい。一方の支持部は、吸振材108Aを介して、支持部材235Aによって絶縁基板102の端部を支持する。他方の支持部は、吸振材108Bを介して、支持部材235Bによって絶縁基板102の端部を支持する。上述のように、一方の支持部は固定部材107で構成されてもよい。
【0059】
振動子105A、105Bの振動により、触覚提示パネル100上で定在波251が生成される。図8は、定在波251の最大振幅を示している。定在波251の周波数は、振動子105A、105Bの周波数に依存する。本例において、振動子105A、105Bの周波数は共通であるとする。これらは異なっていてもよい。振動子105A、105Bの周波数及び/又はそれらの間の位相差を変化させることで、所望の位置に節を有する定在波を生成することができる。以下においては、振動子105A、105Bの振動周波数及び位相差の双方が制御されるものとする。例えば、振動子105A、105Bの周波数が一定で位相差のみが変化されてもよい。
【0060】
複数の指がタッチ対象領域104をタッチしているとき、定在波の周波数及び位相差を選択することで、特定の指に選択的に触覚、例えば、クリック感を提示することができる。具体的には、クリック感を与える指の位置が腹の位置に近く、クリック感を与えない指の位置が節の近くになる定在波が生成される。
【0061】
なお、触覚提示パネル100は、さらに、力センサを含んでもよい。力センサは、触覚提示パネル100の主面に垂直な方向に対してユーザに加えられた力を検知する。制御装置201は、例えば、タッチ電極パターン101上で特定領域がタッチされ、かつ、力センサにより検知された値が閾値を超える場合に、振動子105A、105Bを振動させる。なお、制御装置201が有する各機能部については、複数の機能部を一つの機能部にまとめてもよいし、一つの機能部を機能毎に複数の機能部に分けてもよい。
<駆動波形の生成>
【0062】
図9は、波形合成装置203(図8参照)による駆動信号V1、V2の生成及び振動子105A、105Bの振動による定在波を説明するための模式図である。制御装置201(図8参照)は、タッチを検出した近接した2本の指のうち、触覚を知覚させない指の位置が定在波の節の近傍になるように、振動子105A、105Bの振動の周波数及び位相差を決定する。これにより、近接した2本の指のうち片方の指にのみ触覚を知覚させることが可能となる。
【0063】
制御装置201は、タッチ電極パターン101からの信号に基づき、同時に絶縁基板102をタッチしている2本の指のタッチ位置を検出する。設定に従って、制御装置201は、2つの指のうち触覚を提示しない指を決定する。例えば、背景領域をタッチしている指が選択される。
【0064】
制御装置201は、指位置が適切な定在波の腹や節となるfc、φを算出し、搬送波発振器211及び移相器213から搬送波W1、W2を生成する。制御装置201は、振動子105A、105Bへ与える駆動信号(搬送波)の周波数fc及び位相差φの組み合わせと生成される定在波の触覚提示パネル100の上の節及び腹の位置とを関連づける情報を予め保持している。
【0065】
例えば、情報は、節又は腹となるべき位置の入力に対して、周波数fc及び位相差φを出力するモデルであってもよい。また、周波数fc及び位相差φの組み合わせそれぞれに対する定在波のパターン(振幅と位置との関係)を示す情報が保持されていてもよい。制御装置201は、指定された節及び腹の位置を満たすパターンを検索し、周波数fc及び位相差φを決定することができる。
【0066】
制御装置201は、例えば、検出された一方の指の位置が節から所定距離内にあり、他方の指の位置が節から所定距離より離れた位置にある定在波を選択する。制御装置201は、その定在波に対応する駆動信号V1、V2を生成するように、波形合成装置203を制御する。このように、制御装置201は、近接した2本の指のうち片方の指にのみ振動を伝えることが可能となる。すなわち、任意の場所で振動を起こし、同時に任意の場所で振動をなくすことが可能となる。
【0067】
上述のように、搬送波発振器211は、制御装置201からの指示に従って、周波数fcの正弦波である搬送波W1を生成する。周波数fcは、例えば、1kHzから数10kHzの範囲内にある、人が振動を触知覚できない周波数である。
【0068】
変調波発生器212は、人に知覚させたい振動波形の変調波Sを生成する。変調波発生器212は、予め設定された変調波Sを生成して出力する。変調波Sは、漸増及び漸減する窓関数波形を有する。窓関数波形は、触覚刺激を特徴づける、例えば1Hz~500Hzの周波数成分により構成される波形とする。これにより、より適切に選択的な指への触覚提示が可能となる。
【0069】
周波数fcの搬送波W1は、触感を知覚させる波形を有する変調波Sで変調され、駆動信号である、合成波形V1が生成される。駆動信号V1は、振動子105Aに与えられ、振動子105Aは、駆動信号V1に応じて振動する。また、周波数fcの搬送波W1は移相器213により位相差φが与えられ、搬送波W2が生成される。搬送波W2は、変調波Sで変調され、駆動信号である、合成波形V2が生成される。駆動信号V2は、振動子105Bに与えられ、振動子105Bは、駆動信号V2に応じて振動する。
【0070】
振動子105A、105Bから絶縁基板102に振動が伝わり、定在波251が形成される。指112は、定在波251の節から外れた位置にある。また、図9の例において、指112は、定在波251の腹の近傍に位置する。指112の位置において大きな振動が発生し、包絡線の振動がユーザに知覚される。一方、指111は、定在波251の節の近傍位置をタッチしている。節においては、伝搬波が打ち消しあうため、振動が非常に小さい。そのため、指111は、絶縁基板102表面での振動を感じない。
<パネル振動>
【0071】
以下において、触覚提示パネル100におけるタッチ対象領域104の定在波の振動を説明する。以下においては、複数の振動子の位相差又は周波数によって、定在波の節及び腹の位置が変化する様子を説明する。面内で定在波の節及び腹の位置が連続的に変化するため、より高精度に触覚提示位置及び触覚不提示位置を制御することができる。
【0072】
図10は、図2A及び2Bを参照して説明した構成例において、二つの振動子105の位相差の変化に伴う定在波パターンの変化のシミュレーション結果を示す。図2A及び2Bを参照して説明した構成例は、矩形の触覚提示パネル100の3辺が吸収端領域であり、1辺が固定端領域である。なお、固定端領域に代えて自由端領域を配置した場合も、定在波パターンは略同様の変化を示す。
【0073】
図10において、定在波パターン501から505は、二つの振動子105の周波数が1760Hzであり、位相差が0°から180°に段階的に変化した場合の、定在波パターンの変化を示す。定在波パターン501から505は、それぞれ、位相差が0°、45°、90°、135°、180°の定在波パターンを示す。
【0074】
定在波パターン501から505に示すように、定在波は、網目状のパターンを有する。定在波パターン501において、位置511A及び511Bは振動子が配置された位置を示す。円521は、一つの腹の位置を示す。定在波パターン502から505において、位置511A及び511Bの符号は省略されている。
【0075】
図10から理解されるように、円521の位置は、位相差が増加と共に、図8の左側に移動している。同様に、節の位置は、位相差が増加すると共に、左側に移動している。このように、振動子105の位相差を変化させることで、節及び腹の位置を連続的に変化させることができる。
【0076】
図11は、図2A及び2Bを参照して説明した構成例において、二つの振動子105の周波数の変化に伴う定在波パターンの変化のシミュレーション結果を示す。なお、固定端領域に代えて自由端領域を配置した場合も、定在波パターンは略同様の変化を示す。
【0077】
図11において、定在波パターン551から554は、二つの振動子105の位相差が0°であり、周波数が1760Hzから1218Hzに段階的に変化した場合の、定在波パターンの変化を示す。定在波パターン551から554は、それぞれ、周波数が1760Hz、1540Hz、1383Hz、1218Hzの定在波パターンを示す。
【0078】
定在波パターン551から554に示すように、定在波は、網目状のパターンを有する。定在波パターン551において、位置511A及び511Bは振動子が配置された位置を示す。円521は、一つの腹の位置を示す。定在波パターン552から554において、位置511A及び511Bの符号は省略されている。
【0079】
図11から理解されるように、円521の位置は、周波数が減少すると共に、図9の下に移動している。同様に、節の位置は、周波数が減少すると共に下側に移動している。節の間隔は、定在波パターンの上端を基準に、周波数の減少と共に広がり、増加と主に狭まる。このように、振動子105の周波数を変化させることで、節及び腹の位置を連続的に変化させることができる。
【0080】
図10を参照して説明したように、節の位置は、二つの振動子105の位相差の制御により横方向(X軸方向)に連続的に変化させることができる。また、図11を参照して説明したように、節の位置は、二つの振動子105の周波数の制御により縦方向(Y軸方向)に連続的に変化させることができる。したがって、振動子105の位相差及び周波数の制御により、より高精度に定在波の節の位置を連続的に制御することができる。
【0081】
図12は、三つの振動子105が触覚提示パネル100上に配置され、触覚提示パネル100の外周端の全領域が吸収端領域である構成例(例えば図3を参照)での、定在波パターンの変化のシミュレーション結果を示す。三つの振動子105の周波数は1760Hzで一定である。図12は、定在波パターン601から609を示し、これらは、三つの振動子105の間の位相差の変化に伴う定在波パターンの変化を示す。定在波パターン601から609に示すように、定在波は、網目状のパターンを有する。
【0082】
定在波パターン601は、三つの振動子の位置611A、611B及び611Cを示す。他の定在波パターン602から609において、振動子の位置611A、611B及び611Cの符号は省略されている。定在波パターン601から609において、円621は、一つの腹の位置を示す。
【0083】
振動子の位置611A、611B及び611Cは、仮想的な三角形の頂点の位置にある。図12の示す例において、位置611A、611B及び611Cは、正三角形の頂点位置である。また、位置611A、611Bは、触覚提示パネル100の角の近傍にあり、位置611Cは、触覚提示パネル100の1辺の中央近傍にある。Y軸(縦方向の軸)において、位置611A、611Bの値は共通であり、位置611Cの値は異なる。X軸(横方向の軸)において、位置611Cの値は、位置611A、611Bの間のセンタにある。なお、三つの振動子の配置位置は三角形の頂点であればよく、図12に示すは例に限定されない。
【0084】
位置611Aの振動子と位置611Bの振動子との間の位相差がφ1であり、位置611Aの振動子と位置611Cの振動子との間の位相差がφ2である。上述のように、三つの振動子の搬送波の周波数fcは1760Hzである。
【0085】
定在波パターン601において、位相差φ1は0°、位相差φ2は180°である。定在波パターン602において、位相差φ1は90°、位相差φ2は180°である。定在波パターン603において、位相差φ1は180°、位相差φ2は180°である。定在波パターン604において、位相差φ1は0°、位相差φ2は90°である。定在波パターン605において、位相差φ1は90°、位相差φ2は90°である。定在波パターン606において、位相差φ1は180°、位相差φ2は90°である。定在波パターン607において、位相差φ1は0°、位相差φ2は0°である。定在波パターン608において、位相差φ1は90°、位相差φ2は0°である。定在波パターン609において、位相差φ1は180°、位相差φ2は0°である。
【0086】
定在波パターン601、602及び603の位相差φ2は同一の180°であり、それらの位相差φ1が異なる。定在波パターン604、605及び606の位相差φ2は同一の90°であり、それらの位相差φ1が異なる。定在波パターン607、608及び609の位相差φ2は同一の0°であり、それらの位相差φ1が異なる。これら定在波パターンから分かるように、位相差φ1の変化は、節及び腹の位置を横方向(X軸方向)に大きく移動させる。
【0087】
定在波パターン601、604及び607の位相差φ1は同一の0°であり、それらの位相差φ2が異なる。定在波パターン602、605及び608の位相差φ1は同一の90°であり、それらの位相差φ2が異なる。定在波パターン603、606及び609位相差φ1は同一の180°であり、それらの位相差φ2が異なる。これら定在波パターンから分かるように、位相差φ2の変化は、節及び腹の位置を縦方向(Y軸方向)に大きく移動させる。
【0088】
このように、三つの振動子105の位相差φ1の変化により、節の位置は、横方向(X軸方向)に連続的に変化させることができる。また、位相差φ2の変化により、節及び腹の位置は、縦方向(Y軸方向)に連続的に変化させることができる。したがって、振動子105の位相差の制御により、より高精度に定在波の節の位置を連続的に制御することができる。
【0089】
図13は、四つの振動子105が触覚提示パネル100上に配置され、触覚提示パネル100の外周端の全領域が吸収端領域である構成例(例えば図4を参照)での、定在波パターンの変化のシミュレーション結果を示す。四つの振動子105の周波数は1760Hzで一定である。図11は、定在波パターン651から660を示し、これらは、四つの振動子105の間の位相差の変化に伴う定在波パターンの変化を示す。定在波パターン651から660に示すように、定在波は、網目状のパターンを有する。
【0090】
定在波パターン651は、四つの振動子の位置661A、661B、661C及び661Dを示す。他の定在波パターン652から660において、振動子の位置661A、661B、661C及び661Dの符号は省略されている。定在波パターン651から655において、円671は、一つの腹の位置を示す。定在波パターン656から660において、円672は、他の一つの腹の位置を示す。なお、説明のため、定在波パターン651から655の向きと、定在波パターン656から660の向きとの間に90°の違いがある。
【0091】
振動子の位置661A~661Dは、仮想的な四角形の頂点の位置にある。図13の示す例において、位置661A~661Dは、長方形の頂点位置である。また、位置661A~661Dは、触覚提示パネル100の角の近傍にある。なお、三つの振動子の配置位置は三角形の頂点であればよく、図12に示す例に限定されない。
【0092】
位置661Aの振動子と位置661Bの振動子との間の位相差がφ1であり、位置661Aの振動子と位置661Cの振動子との間の位相差がφ2であり、位置661Aの振動子と位置661Dの振動子との間の位相差がφ1+φ2である。上述のように、四つの振動子の搬送波の周波数fcは1760Hzである。
【0093】
定在波パターン651から655において、位相差φ2は共通の0°であり、位相差φ1が異なる。具体的には、定在波パターン651から655の位相差φ1は、それぞれ、0°、45°、90°、135°、180°である。定在波パターン656から660において、位相差φ1は共通の180°であり、位相差φ2が異なる。具体的には、定在波パターン656から660の位相差φ2は、それぞれ、0°、45°、90°、135°、180°である。
【0094】
定在波パターン651から655から理解されるように、位相差φ1の変化に伴い、節の位置は縦方向(Y軸方向)において連続的変化する。また、定在波パターン656から660から理解されるように、位相差φ2の変化に伴い、節の位置は横方向(X軸方向)において連続的変化する。したがって、振動子105の位相差の制御により、より高精度に定在波の節の位置を連続的に制御することができる。
【0095】
図14は、四つの振動子105が触覚提示パネル100上に配置され、触覚提示パネル100の外周端の全領域が吸収端領域である構成例(例えば図4を参照)での、四つの振動子の周波数の変化に伴う定在波パターンの変化のシミュレーション結果を示す。
【0096】
図14において、定在波パターン681から685は、四つの振動子105の位相差が0°であり、周波数が1760Hzから753Hzに段階的に変化した場合の、定在波パターンの変化を示す。定在波パターン681から685は、それぞれ、周波数が1760Hz、1383Hz、1089Hz、885Hz、753Hzの定在波パターンを示す。
【0097】
定在波パターン681から685に示すように、定在波は、網目状のパターンを有する。図14から理解されるように、節の間隔は、周波数の減少と共に、横方向(X軸方向)及び縦方向(軸方向)において広がり、増加と主に狭まる。このように、振動子105の周波数を変化させることで、節及び腹の位置を連続的に変化させることができる。四つの振動子の位相差及び周波数に双方を制御することで、より正確な触覚提示位置及び触覚非提示位置の制御が可能となる。
【0098】
図15は、図1A及び1Bを参照して説明した構成例において、二つの振動子105の位相差の変化に伴う定在波パターンの変化のシミュレーション結果を示す。図1A及び1Bを参照して説明した構成例は、矩形の触覚提示パネル100の外周端の全域が吸収端領域である。
【0099】
図15において、定在波パターン701から705は、二つの振動子105の周波数が1760Hzであり、位相差が0°から180°に段階的に変化した場合の、定在波パターンの変化を示す。定在波パターン701から705は、それぞれ、位相差が0°、45°、90°、135°、180°の定在波パターンを示す。
【0100】
定在波パターン701において、位置711A及び711Bは振動子が配置された位置を示す。円721は、一つの腹の位置を示す。定在波パターン702から705において、位置711A及び711Bの符号は省略されている。
【0101】
図15から理解されるように、円721の位置は、位相差が増加と共に、図15の左側に移動している。同様に、節の位置は、位相差が増加すると共に、左側に移動している。このように、振動子105の位相差を変化させることで、節及び腹の位置を連続的に変化させることができる。
【0102】
図16は、図1A及び1Bを参照して説明した構成例において、二つの振動子105の周波数の変化に伴う定在波パターンの変化のシミュレーション結果を示す。図16において、定在波パターン751から754は、二つの振動子105の位相差が0°であり、周波数が1760Hzから753Hzに段階的に変化した場合の、定在波パターンの変化を示す。定在波パターン751から755は、それぞれ、周波数が1760Hz、1383Hz、1089Hz、885Hz、753Hzの定在波パターンを示す。
【0103】
定在波パターン751において、位置711A及び711Bは振動子が配置された位置を示す。円722は、一つの節の位置を示す。定在波パターン752から755において、位置711A及び711Bの符号は省略されている。
【0104】
図16から理解されるように、円722の位置は、周波数が減少すると共に、図16の下に移動している。節の間隔は、周波数の減少と共に横方向(X軸方向)広がり、増加と主に狭まる。このように、振動子105の周波数を変化させることで、節及び腹の間隔を連続的に変化させ、それにより、それらの位置を連続的に変化させることができる。振動子105の位相差及び周波数の制御により、より高精度に定在波の節の位置を連続的に制御することができる。
【0105】
以下において、吸収端領域の吸収率を説明する。吸収端伝搬波の反射率の絶対値を低減することができる。最も効果が大きい吸収端は、伝搬波の反射率が0(吸収率が100)である。最も効果が大きい固定端の伝搬波の反射率は-1であり、自由端の伝搬波の反射率は1である。反射率が負であることは、反射波の位相が入射波の位相と逆、つまり、変位の方向が逆であることを意味する。本明細書の実施形態における吸収端領域の吸収率は、100より小さくてもよい。
【0106】
上述のように、振動子の位相差又は周波数を変化させることで、タッチ対象領域104内で節及び腹の位置を連続的に変化させることができる。また、振動子の周波数と位相差を組み合わせることで、タッチ対象領域104内の2点に節と腹に割り当てることが可能である。タッチ対象領域104内の任意の位置の組み合わせで、節の振幅の最大値が腹の振幅の最小値を超えなければ、節の最大値を触覚弁別の閾未満となるように制御し、タッチ対象領域104内の任意位置での触覚の局在化が可能である。
【0107】
図17は、図4、13及び14を参照して説明した、四つの振動子及び外周端の全域が吸収端領域である構成例についてのシミュレーション結果を示す。シミュレーションは、異なる周波数及び異なる吸収率の組み合わせそれぞれにおいて、位相差φ2を0に維持し、位相差φ1を0°から360°まで変化させた。吸収率が小さくなるにつれて、任意位置の組み合わせで、節の最大値が腹の最小値より小さい領域(触覚提示可能領域とする)が小さくなっていった。
【0108】
図17に示すように、周波数1760Hzにおいて、吸収率が100%から70%では、腹の振幅と節の振幅の差が大きいため、あらゆる位置で実際に触覚を提示する領域の局在化が可能となる。吸収率が60%以下になると、この周波数では振動子の位置近くで節の振幅が大きくなり、腹の振幅の最小値に近くなる。なお、この場合でも、触覚提示パネル100の中央をタッチ対象領域104とすることで、その中では触覚局在化が可能となる。
【0109】
さらに吸収率が小さくなり30%以下となると、触覚提示可能領域はさらに狭くなり実用的ではなくなる。10%以下の吸収率では触覚提示パネル100の中央部でのみ触覚の局在化が可能である。吸収率100%から60%では、振動子より内側で腹の振幅と節の振幅の差が大きいためあらゆる位置で触覚局在化が可能となる。
【0110】
周波数615Hzにおいて、吸収率が100%から30%では、腹の振幅と節の振幅の差が大きいため、あらゆる位置で実際に触覚を提示する領域の局在化が可能となる。さらに吸収率が小さくなり10%以下となると、触覚提示可能領域はさらに狭くなり実用的ではなくなる。
【0111】
図18は、図3及び12を参照して説明した、三つの振動子及び外周端の全域が吸収端領域である構成例についてのシミュレーション結果を示す。シミュレーションは、異なる周波数及び異なる吸収率の組み合わせそれぞれにおいて、位相差φ1を0に維持し、位相差φ2を0°から360°まで変化させた。吸収率が小さくなるにつれて、任意位置の組み合わせで、節の最大値が腹の最小値より小さい領域(触覚提示可能領域とする)が小さくなっていった。
【0112】
図18に示すように、周波数1760Hz及び1057Hzにおいて、吸収率が100%から30%では、腹の振幅と節の振幅の差が大きいため、あらゆる位置で実際に触覚を提示する領域の局在化が可能となる。さらに吸収率が小さくなり10%以下となると、触覚提示可能領域はさらに狭くなり実用的ではなくなる。
【0113】
以上、本願の実施形態を説明したが、本開示が上記の実施形態に限定されるものではない。当業者であれば、上記の実施形態の各要素を、本開示の範囲において容易に変更、追加、変換することが可能である。ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。
【符号の説明】
【0114】
10 触覚提示装置
100 触覚提示パネル
101 タッチ電極パターン
102 絶縁基板
103 表示装置
104 タッチ対象領域
105 振動子
107 固定部材
108 吸振材
201 制御装置
203 波形合成装置
図1A
図1B
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18